ページ番号1007900 更新日 令和1年10月24日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
東方経済フォーラムの開催
- 9月4日から6日にかけて、ウラジオストクで東方経済フォーラム2019が開催された。2015年から毎年開催されており、今回で5回目の開催となる。プーチン大統領は講演の中で、今年の参加者は65ヶ国から8,500人と、第一回の規模から倍増しており、これがロシア極東の関心の高まりの証拠だと述べた。また、同大統領は、この5年間の極東への投資額は6,120億ルーブルとなり、242の新たな工場が稼働し、39,000人以上の雇用が生まれたと、これまでの成果を語った。今回のフォーラムでは、過去最高となる合計投資額3.4兆ルーブル(公開金額のみ)となる270の合意に署名された。
- 同フォーラムには、日本の安倍首相、インドのモディ首相、モンゴルのバトトルガ大統領、マレーシアのマハティール首相など、各国の首脳も参加し、講演を行った。公式発表では、日本からの参加が588名と最も多く、ついで中国395名、韓国285名、インド204名が参加した。
- 東方経済フォーラムの期間、ロシア企業とアジアの企業の間で、様々なエネルギー関連の協力合意が行われた。Novatekは西部ガスと、日本とアジア向けの天然ガスの販売、バンカリング、火力発電所の検討、ひびきLNGターミナルでのLNG貯蔵タンクの建設運営のためのジョイントベンチャー設立に向けた協力に合意した。また、NovatekはインドのPetronet社と、NovatekのLNGプロジェクトへの投資、及びインドでの自動車燃料としてのLNG共同販売、ガス供給基地ネットワークの開発等に関して合意した。さらに、同社はインドのH-Energy Global社とも、LNGターミナル及びLNGプロジェクトへの共同出資、インド、バングラデシュ等への天然ガス販売のジョイントベンチャーの設立の協力について合意した。
- また、造船会社のZvezdaは、Samsung Heavy Industries社と、Zvezda造船所で42,000~120,000トン級のシャトルタンカーを建設するプロジェクトを管理するためのジョイントベンチャーを設立することを発表した。さらに、両社はArctic LNG 2プロジェクトで利用するLNGタンカーの設計についての契約も締結した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61451
ロシアがパリ協定を批准
- ロシア政府は9月21日付けの決議で、温室効果ガス排出削減のための国際的な枠組みであるパリ協定を批准することを決定した。ロシアは2016年4月のパリ協定の署名に参加していたが、これまで批准はしていなかった。
- メドベージェフ首相は、9月23日、副大統領との会談の中で、「我々の国のためにこの参加プロセスは重要である。気候変動の脅威は、自然災害の増加、生態系バランスの破壊、農業を含む主要産業の成功発展リスクの増加、なにより、永久凍土に暮らす人々の安全を脅かす。」と述べた。また、Gordeev副首相は、この会議の中で、「パリ協定の批准により、ロシアが現代の地球規模の議論の形成に完全に参加する機会が与えられた。ロシアは現在、温室効果ガスの排出に関して世界で4番目に位置しているため、これは特に重要である。そして、導入される規制措置は国益を最大限に考慮して策定されるべきである。」と述べた。
- 同副大臣によると、温室効果ガス排出規制の連邦法はすでにドラフトが出来上がっており、1年以内に採択される予定。加えて、2050年までの低レベル温室効果ガス排出長期開発戦略のドラフトは、この年末までに作成される予定。
(2) 対外関係
1) 米国
ロシアに対する追加制裁を発表
- 9月26日、米国財務省は、シリアでのロシアの軍事行動に関与したとして、企業1社、船舶5隻、ロシア人3名を制裁対象リストに追加することを発表した。
- また、続く9月30日にも、2018年の米国中間選挙に介入を行ったことに対する追加制裁が発表され、選挙へ介入したとされるロシア企業のInternet Research Agency 及びYevgeniy Viktorovich氏に関わる企業3社、船舶1隻、航空機3機、ロシア人2名が新たに制裁対象リストに追加された。
- 9月30日の制裁に対して、ロシア外務省は、極度の当惑を表明する、との声明をウェブサイトに掲載した。ロシア外務省はこの声明の中で、制裁は米国の内部政治危機の反映であり一部の米国政権の日和見的な目標を達成するためのツールとしてロシアの問題が意図的に使用されている、彼らの行動が二国間関係と、国際舞台で高まっている緊張を正常化したいという米国指導者の公式声明と矛盾すると考えるべき、と述べた。また、反ロシア攻撃は解決にならない、ロシアは結果がゼロとなる制裁ゲームを止めて、常識の立場に戻るよう米国の政治家たちに促す、としている。
2) EU
ウクライナ領土侵害への制裁を6ヶ月延長
- 欧州連合理事会は、9月12日、ウクライナの領土保全、主権、独立を損なった、または脅かした行為に対する制裁を6ヶ月延長することを決定したと発表した。制裁は現在、170名、44法人に適用されており、EUに存在する資産の凍結、EUへの渡航の制限を行っている。
- 本制裁は2014年3月に導入されたもので、今回の延長により、制裁の期限は2020年3月15日までとなる。
欧州司法裁判所がOPALパイプラインのガス輸送を制限する決定
- 欧州司法裁判所は、9月10日、これまで認められてきたGazpromのOPALパイプラインの拡大利用許可を撤回する結論を下した。OPALパイプラインはロシアからNord Streamパイプラインでドイツに輸送されるガスを、ドイツ国内及びチェコに輸送している。
- ガス価格の競争性を担保するため、EUでは2009年からガスの供給者と輸送者を分離する規制を導入しており、同パイプラインの出資者となっているGazpromの利用枠は、同社出資分の50%が制限されるが、欧州委員会は、2016年10月、同制限を2033年まで緩和する決定を下した。しかし、ロシアからベラルーシ経由でガスを輸入しているポーランドは、この決定により、ポーランドのガス供給が脅かされる恐れがあることから、ポーランドの国営ガス会社のPGNiGが、この決定を無効にする訴えを起こしていた。
- 今回の裁判所の決定では、2016年の欧州委員会の決定は、Gazpromの利用枠の拡大によるポーランドのエネルギー安全保障を考慮しなかったとして、EUのエネルギー連帯の原則に反すると判断された。これにより、Gazpromのパイプライン利用枠は制限されることになる。

出典:https://www.opal-gastransport.de/en/our-network/
3) ウクライナ
ウクライナと互いの拘束者を開放
- 9月7日、ロシアとウクライナは互いに拘束していた相手国の拘束者35名ずつを交換した。ウクライナ側には、2018年11月にロシアがケルチ海峡で拿捕したウクライナ海軍艦の乗組員24名全員が含まれている。
- プーチン大統領は、9月7日、ゼレンスキー大統領と電話会談を行い、拘束者の交換について、二国間関係の正常化と改善にとって非常に重要であると評価した。また、会談では、ウクライナでの停戦を監視と戦力の撤退の重要性が確認された。さらに、プーチン大統領は、ノルマンディーフォーマット(ロシア・ウクライナ・ドイツ・フランスでウクライナ情勢を協議する形式)での首脳会談の実施に関し、この会議を効果的に実施するために、包括的な準備作業を継続する必要があると述べ、両国の対話を継続することで合意した。
- ロシア外務省のZakharova報道官は、同日、この拘束者の交換について、SNS上でコメントを掲載し、非常に重要なステップであると評価し、問題を悪化させず解決するために、この態度を最大限支持することが必要であると述べた。また、ウクライナがすべての問題をロシアの責任にする習慣は政治経済問題の解決につながっていない、と批判し、具体的な行動が解決のために必要だと語った。
4) インド
モディ首相との首脳会談
- プーチン大統領は、9月4日、東方経済フォーラムに出席するためにウラジオストクを訪れたインドのモディ首相と、会談を行った。
- 会談後の記者会見の中で、プーチン大統領は、ロシアがインド市場への信頼できるエネルギーの供給者であることを強調した。同大統領によると、2018年、ロシアは原油230万トン、石油製品55万トン、石炭450万トンをインドに出荷している。さらに、同大統領は、インドのエネルギー企業が、Arctic LNG 1やArctic LNG 2などの上流プロジェクトに参加するように招待されていることを明かした。
- これに対し、モディ首相は、石油ガスの貿易だけではなく、炭化水素に対する両国からの前例のないレベルの投資について議論していると語った。また、極東・北極圏の炭化水素生産及びLNG開発分野の協力に関する5年間のロードマップに合意した、と明かした。
- 両者は、会談後に、インドでの製油所、LNG輸送、石油ガスの共同探査についての協力を含む「信頼とパートナーシップを通じて‐新たなレベルの協力へ‐」という共同声明を採択した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61438
5) 日本
ウラジオストクで首脳会談を実施
- プーチン大統領は、9月5日、東方経済フォーラムに出席するためウラジオストクを訪問した安倍首相と会談を行った。
- 会談の中で、両首脳は、平和条約締結問題について意見交換を行い、未来志向で作業することを再確認した。また、両首脳は、交渉責任者である両外務大臣に対して、双方が受け入れられる解決策を見つけるための共同作業を進めていくよう、改めて指示した。
- さらに、両首脳は、8項目の「協力プラン」の具体的成果について確認した。特に,Arctic LNG 2の最終投資決定等を歓迎した。
- 両首脳は、11月にチリで開催されるAPEC首脳会議の際に、次回の首脳会談を実施することで合意した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61449
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2019年9月、原油輸出税はUSD12.4/バレルに引き下げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 9月の石油製品輸出税はUSD27.2/トン、ガソリンについてはUSD49.8/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 9月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,604万トン(約3億3,609万バレル、平均日量1,125万バレル)で、前年同月比4.6%減。
- 9月、原油輸出量は2,239万トン(約1億6,348万バレル)。前年同月比6.0%増。
サウジアラビアの事件後、OPEC+の緊急対策は不要
- 9月14日にサウジアラビアの石油施設が攻撃された事件を受け、9月16日、Novakエネルギー大臣は、OPEC+で緊急対策をとる必要はないと語った。同大臣は、サウジアラビアによる迅速な査定が行われた後でなければ、原油の生産と供給量にどれほどの影響があるかは分からないとした上で、現在のところ、サウジアラビアの供給を中期的に補うための原油の商業備蓄が世界中で十分にある、と説明した。
- また、同大臣は、9月24日に、前週にサウジアラビアのエネルギー大臣と電話会談を行い、状況は平常だと評価し、追加の対策は不要だと議論した、と明かした。
- ロシア外務省は、9月16日、ウェブサイトに声明文を発表し、この事件が、ロシアでも深刻な懸念を引き起こしているとして、非軍事施設への攻撃、社会経済インフラの破壊、エネルギー需給バランスを崩す可能性のある攻撃を強く非難した。一方で、誰がこの攻撃を実行したかについては結論を急ぐべきでないとして、米国で議論されている報復措置について、受け入れがたいと声明で述べた。
(3) 天然ガス生産量
- 9月、天然ガス生産量は559億立方メートル(約2.0TCF)で、前年同月比3.1%増。
(4) 減産合意
ロシアはOPEC+で合意した減産を9月は順守する見込み
- Novakエネルギー大臣は、9月23日、9月の平均原油生産量はOPEC+で合意した割当量を順守する見込みであると記者に語った。
- 報道によると、ロシアの9月前半の平均生産量は1,127万bpdで、OPEC+で合意している1,117万bpdよりも10万bpd多かった。5月から7月はDruzhbaパイプラインの原油汚染問題の影響から、ロシアの生産量は減少していたが、8月には増産をして9月初旬に1,134万bpdに達し、その後、徐々に減産している。
- 8月の平均原油生産量は1,129万bpdで、OPEC+の割当量を超えていた。
(5) 税制・法制
Priobsky油田へのインセンティブについて政府が承認か
- 財務省のAlexey Sazanov税務政策部門長は、9月12日、政府がRosneftとGazprom Neftに対してのPriobsky油田のインセンティブを承認したとメディアに語った。詳細条件についてはまだ議論されている。Priobskyへの減税については、歳入が5,000億ルーブル減少することを理由に、財務省が反対していた。
- 同部門長は、鉱物抽出税を石油の随伴ガスにも適用することで、歳入の減少を埋め合わせることができると語ったが、その他の案も検討する用意があると述べた。同部門長によると、原油価格が55~60ドル/バレルであれば、歳入の埋め合わせは320~340億ルーブル必要になり、随伴ガスへの鉱物抽出税の課税により、この不足を補うことができる。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
インド企業がVostok Oilプロジェクトに関心表明
- RosneftのSechin社長は、9月17日、インドのニューデリーを訪問し、インドのPradhan石油天然ガス大臣と会談を行った。訪問には、9月4日にウラジオストクで開催された両国の首脳会談で合意されたエネルギー協力をさらに発展させる目的があった。
- インドの訪問中、Rosneftはインド企業と拘束力のない合意書に署名し、Vostok Oilプロジェクトにインド企業が参入する関心を表明した。Vostok OilプロジェクトはVankor、Suzun、Tagul、Lodochnoe鉱床を含むVankor鉱床群、Payakha鉱床群、West-Irkinskiyライセンス鉱区、その他クラスノヤルスク州の探鉱プロジェクトを統合して開発する予定。Rosneftによると、同プロジェクトは2030年までに原油生産が1億トンに達し、プーチン大統領が掲げている北極海航路の輸送確保に貢献する見込み。
- Rosneftとインド企業の間では、Vankor(ONGC Videsh等が49.9%を保有)、Taas Yuyakh(Oil India等が29.9%の権益を保有)、Sakhalin-1(ONGC Videshが20%の権益を保有)ですでに共同事業を行っている。また、Rosneftはインド企業のNayara Energyの49.13%を保有しており、同社が保有するVadinar製油所は年間2,000万トンの生産量があり、インドで2番目に大きな生産量がある。

写真出典:https://www.rosneft.com/press/releases/item/197093/
(2)Gazprom
モンゴル経由で中国へのガス輸出を検討
- プーチン大統領は、9月9日、GazpromのMiller社長と会談し、シベリアの力-2(アルタイパイプライン)プロジェクトに関してモンゴル経由で中国にガスを輸出するルートを検討するように指示をした。また、このガス供給に必要な資源確保のため、Yamalの資源量について確認するように述べた。
- モンゴルのバトトルガ大統領は、9月5日、東方経済フォーラムにおいて、モンゴルが提案したロシアからモンゴル経由で中国にガス輸送するパイプライン建設について、中国の大統領が検討を約束し、ロシアの大統領が支援を表明したと語っていた。プーチン大統領は、9月3日、モンゴルを訪れ、バトトルガ大統領との会談を行っている。
(3)Gazprom Neft
Chayandinskoyeの開発を開始
- Gazprom Neftは、9月5日、サハ共和国にあるロシア最大の石油ガスコンデンセート田の一つであるChayandinskoyeでの井戸の掘削を開始したと発表した。Gazprom NeftはGazprom Dobycha Noyabrsk LLC.とのオペレーター契約に基づき、Chayandinskoyeの原油開発を行っている。Gazprom Neftの井戸掘削により、物理学的調査が行われ、開発を開始する前に必要な主要な技術的地質的指標を明確にする。
- 同油田の本格開発は2021年第4四半期に開始される予定。ピーク生産量は石油換算290万トンに達する見込み。プロジェクトでは、既存の石油処理施設の拡張と、ESPOパイプラインに石油を供給するための圧力パイプラインの建設が想定されている。Gazprom Neftは随伴ガスをChayandinskoyeの既存ガスインフラ施設に輸送するためのコンプレッサー基地とパイプラインも建設し、シベリアの力パイプラインに供給する予定。

出典:https://www.gazprom-neft.com/press-center/news/3457761/ (JOGMECが一部加筆)
(4) Novatek
Sovcomflotとジョイントベンチャー設立を合意
- Novatekは9月4日、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムにおいて、国営海運企業のSovcomflotとジョイントベンチャーModern Maritime Arctic Transport(SMART)社を設立することで合意した。
- SMART社は、Yamal LNG及びArctic LNG 2を含むNovatekの将来の北極海でのLNGプロジェクトからのLNG輸送を最適化するため、砕氷LNG船の建設と運用を管理することを目的としている。同社はZvezdaにおいて、Arctic LNG 2向けの17隻のLNGタンカーを建設し、2023~2026年の間に完成させる予定。Mikhelson社長によると、SMART社はムルマンスク及びカムチャツカのLNG積み替え基地までのロシア海域を担当し、6月に中国企業と設立すると発表したジョイントベンチャー、Maritime Arctic Transport(MART)社は国際市場を担当する。
- Novatekはプレスリリースで、北極海航路を実行可能な通年航路として効率的に開発するために、氷海航行の経験を統合し、新しい技術を用いて最高基準の航海の安全性と訓練を実施する必要がある、とジョイントベンチャーの背景を説明している。また、ロシアの北極海航路を経由してアジア太平洋地域を含む主要な世界の市場への最適化されたLNG輸送モデルは、Novatekの北極圏のLNGプロジェクトの成功を支援し、プーチン大統領が掲げた2024年までに北極海航路の年間貨物輸送量を8,000万トンまで増加させる目標を達成する、としている。
カムチャツカ及びムルマンスクでのLNG積み替え基地で日本企業と協力
- Novatekは、9月26日、商船三井及び日本国際協力銀行と、カムチャツカとムルマンスクでのLNG積み替え基地について協力する旨の覚書に署名したと発表した。覚書には、プロジェクトの権益の取得、プロジェクトへファイナンスの可能性も含んでいる。
- Mikhelson社長は、プレスリリースの中で、我々はYamal LNG、Arctic LNG 2を含む大型LNGプロジェクトで日本企業と協力を開始しており、相互の有益な協力をさらに拡大する大きな可能性があると考えている、と述べた。
- Novatekは、カムチャツカとムルマンスクのLNG積み替え基地の建設は、Yamal LNG、Arctic LNG 2等のLNGプロジェクトから、日本を含むアジア太平洋地域の主要なLNG市場にLNG輸送を最適化し、効率化を最大化する助けとなる、としている。
- これらのLNG積み替え基地の最終調整は年末までに行われる予定。
4. 東シベリア・極東・サハリン情勢
(1) サハリン
Rosneftがサハリンで新たな油田を発見
- Rosneftは9月30日、サハリンのVostochno-Pribrezhnyライセンス鉱区で最初の試掘井の掘削を終え、新たな油田を発見したと発表した。この鉱区の地質探査開発・生産ライセンスは2016年12月に発行され、Rosneftは2019年5月に試掘を開始した。Vostochno-Pribrezhnyライセンス鉱区はオホーツク海のNabilsky湾に位置する。
- Rosneftは、試掘井の地球物理学的調査により、生産可能な油飽和率が確認した。予備的な推定によると、原油埋蔵量は最大200万トンとなる。

出典:https://www.rosneft.ru/business/Upstream/offshore/ (JOGMECが一部加筆)
5. 新規LNG・P/L事業
(1) Yamal LNG
砕氷LNG船
- 米国財務省は、9月25日、禁止されているイランと石油取引をしたとして、中国の海運会社COSCOの2つの子会社、COSCO Shipping Tanker(Dalian)社及びCOSCO Shipping Tanker(Dalian)Seaman & Ship Management社を制裁リストに追加した。COSCO Shipping Tanker(Dalian)社は、China LNG Shipping(Holdings)社(CLNG)の株式を50%保有しており、このCLNGはカナダのTeekay社と50%ずつのジョイントベンチャーで、Yamal LNGプロジェクトで利用される砕氷LNG船によるLNG輸送に参画している。米国制裁のルールによると、制裁対象者の50%以上の子会社は同じく制裁の対象となるため、このジョイントベンチャーについても制裁の対象となる。ジョイントベンチャーは既にYamal LNGプロジェクトの砕氷LNG船を4隻完成させており、この他2隻を準備している。
- Novatekは、9月30日のプレスリリースで、Yamal LNGプロジェクトのLNG輸送は制裁とは関連していないとした上で、Yamal LNGプロジェクトは、契約義務に従って予定通りにLNGを顧客に届ける必要な能力を有している、と述べている。
(2) Arctic LNG 2
最終投資決定を合意
- Novatekは、9月5日、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで、Arctic LNG 2プロジェクトの参加者が、Utrenneyeガス田の開発、Gydan半島での天然ガス液化プラントの建設を含む最終投資決定を承認したと発表した。プロジェクトの参加者は、それぞれの保有権益に応じた割合の長期LNGオフテイク権を有する。
- 天然ガス液化プラントは3トレインから成り、合計生産能力は年間1,980万トンとなる。第1トレインの開始は2023年、第2、第3トレインの開始はそれぞれ2024年、2026年を予定している。最大生産能力でプロジェクトを開始するための資本支出は213億米ドルになると見積もられている。
- プロジェクトは、既にTechnipFMC、Saipem、NIPIGASとのコンソーシアムとEPC契約を締結している。現在、ロングリード製品(極低温熱交換器、ガスタービン、液化プラント用コンプレッサー等)の90%以上が発注され、生産井の掘削、道路の建設、生産インフラの建設が開始されている。
(3) 極東LNG
- RosneftのSechin社長は、9月4日、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムの中で、Sakhalin 1プロジェクトのコンソーシアムが極東LNGプロジェクトのFEEDを開始する予定であると述べた。また、同社が9月5日に発表したプレスリリースの中で、今年、Sakhaline 1の株主が同プロジェクト独自での天然ガス液化プラントを建設する決定をしたとしている。Sakhaline 1プロジェクトはRosneftが20%、ExxonMobilが30%、日本企業のコンソーシアムのサハリン石油ガス開発が30%、インドのONDCが20%を保有している。また、極東LNGプロジェクトの費用は約80~100億ドル、LNG輸送開始は2025年以降と報じられている。
以上
(この報告は2019年10月23日時点のものです)
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