ページ番号1007950 更新日 平成31年12月4日

カナダにおける原油パイプライン及びオイルサンド事業の最近の動き

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レポートID 1007950
作成日 2019-12-04 00:00:00 +0900
更新日 2019-12-04 14:08:16 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2019
Vol
No
ページ数 19
抽出データ
地域1 北米
国1 カナダ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,カナダ
2019/12/04 舩木 弥和子
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概要

  1. 各種機関は、地層内回収法プロジェクトがオイルサンド生産量の増加を支え、オイルサンド生産量が今後も伸びると見ている。ただし、IEAとカナダエネルギー研究所(Canadian Energy Research Institute:CERI)は、生産の見通しを前年のものよりも大きく下方修正した。
  2. カナダ西部から原油を輸送するパイプラインの輸送能力の不足から、2018年後半にWTI(West Texas Intermediate)とWCS(Western Canadian Select)の価格差が一時52ドル/bblまで拡大した。Alberta州政府は企業に生産削減を実施させたり、鉄道による原油輸送量を増やしたりすることで、対応しようとしている。
  3. 原油輸送能力不足を解消しようと、Enbridgeの Line 3修繕・拡張、Trans Mountainパイプライン拡張、TC EnergyのKeystone XLパイプライン敷設の3件のプロジェクトが計画されているが、環境保護団体の反対等で進展が遅れている。
  4. 2016年末以降続いていた国際石油企業(International Oil Company:IOC)がオイルサンドプロジェクトを主にカナダ企業に売却する動きが一段落した。IOCよりオイルサンドプロジェクトを取得したカナダ企業は、低油価環境に対応するためにも、合理化とコスト削減を図っており、また、パイプライン建設の遅れやAlberta州政府の生産削減措置に伴い、投資額を削減している。カナダの石油・ガス関連企業の中には、倒産するものやカナダ離れを進めようとするものが現れるようになっている。
  5. 石油会社や業界は、温室効果ガス排出等環境面への配慮、取り組みを進めている。一方で、欧州系の金融機関の中には、環境への配慮から、オイルサンドプロジェクトへの融資等を制限するものがある。

(バンクーバー事務所情報、Platts Oilgram News、International Oil Daily、NorthAmOil他)


1. 原油及びオイルサンド生産見通し

国家エネルギー委員会(National Energy Board:NEB)、IEA、カナダ石油生産者協会(Canadian Association of Petroleum Producers:CAPP)、カナダエネルギー研究所(Canadian Energy Research Institute:CERI)が、2018年10月以降にそれぞれ発表したオイルサンド生産見通しを以下に紹介する。いずれの機関の見通しも、オイルサンド生産量が今後も伸びるとする点、地層内回収法プロジェクトがオイルサンド生産の伸びを支えるとの見方で共通している。NEBとCAPPのオイルサンド生産見通しは前回の見通しとほぼ同じ傾向を示しているが、IEAとCERIの見通しは前回の見通しを下方修正している。

図1.オイルサンド(ビチューメン)生産見通し(単位:千b/d)
図1. オイルサンド(ビチューメン)生産見通し(単位:千b/d)
点線は前回発表の見通し 各機関の見通しを基に作成

(1) NEB

NEBは2018年10月に発表した”Canada's Energy Future 2018”で、カナダの石油生産量は2017年の440万b/dから、2040年には「リファレンスケース」で660万b/d(2017年比58%増)、「高価格ケース(安定した供給が得られず油価が120ドル/bblに上昇、長期間120ドル/bblを維持)」で910万b/dまで増加、「低価格ケース(供給が十分なため価格が40ドル/bblを下回り、長期間40ドル/bblを維持)」では380万b/dに減少するとしている。前年の”Canada's Energy Future 2017”の「リファレンスケース」の2040年の生産見通しは630万b/dで、”Canada's Energy Future 2018”では前年の見通しに比べ5%生産量が増加する見通しとなっている。

図2.カナダ石油生産量実績及び見通し
図2. カナダ石油生産量実績及び見通し
出所:Canada's Energy Future 2018

ビチューメン生産量は2017年の280万b/dから、2040年には「リファレンスケース」で450万b/d(2017年比58%増)、「高価格ケース」で540万b/dまで増加するとしている。いずれのケースも、生産増の多くは既存の地層内回収法プロジェクトの拡張によるものとし、露天掘りの新規プロジェクトは立ち上がらないとしている。ただし、「高価格ケース」では、既存の露天掘りプロジェクト拡張によっても生産増が見込まれるとしている。「低価格ケース」では、オイルサンドの生産量は2021年に340万b/dのピークを迎え、その後は生産量が減少、2040年には2017年と同量の280万b/dとなるとしている。

図3.オイルサンド生産量実績及び見通し
図3. オイルサンド生産量実績及び見通し
出所:Canada's Energy Future 2018

(2) IEA

IEAは2019年3月に発表した“Oil 2019 Analysis and Forecasts to 2024”で、カナダの石油生産量は、2018年の520万b/dから2024年には550万b/dに増加するとしている。2018年発表の“Oil 2018 Analysis and Forecasts to 2023”では、石油生産量は2017年の480万b/dから2023年には560万b/dに増加すると見ていたので、最終年の生産量見通しも6年間の生産の伸びも、前年の発表から引き下げられたことになる。

IEAは、EnbridgeのLine 3修繕・拡張、Trans Mountain拡張、Keystone XL敷設のパイプライン3プロジェクトの進展が遅れているため、長期間の見通しになればなるほど、不確実性が高まるとしている。また、原油輸送能力不足からカナダの原油価格が低く抑えられているため、新たなプロジェクトが進展せず、2018年までの6年間に比べ、2024年までの6年間は生産増のペースが半減するとしている。また、生産増はCenovusのChristina Lake拡張プロジェクトフェーズ2、SuncorのMeadow Creekプロジェクト、Canadian Natural ResourcesのKirby North プロジェクト等数年前に生産を開始したプロジェクトによるとしている。

図4.石油生産量実績及び見通し
図4. 石油生産量実績及び見通し
出所:Oil 2019 Analysis and Forecasts to 2024

(3) CAPP

CAPPは、2019年6月に“Crude Oil Forecast, Markets and Transportation”を発表した。

CAPPはこの中で、カナダ東部の原油生産量は2026年の35.4万b/dをピークに減少するものの、西部の生産量が東部の減産分以上に増加を続けるため、カナダの原油生産量は2018年の459万b/dから2035年には586万b/dに増加するとしている。カナダ全体として見た場合、原油生産量は2021年までは年率3%の割合で増加するが、その後の伸び率は年率1.44%と低下すると見ている。2019年のCAPPの原油生産見通しは、2017年、2018年に発表された見通しに比べると高く推移しているが、原油価格が下落する直前の2014年6月の見通しに比べるとまだ低い数字となっている。

図5.カナダ原油生産実績及び見通し
図5. カナダ原油生産実績及び見通し
出所:Crude Oil Forecast, Markets and Transportation

オイルサンド生産量は2018年の291万b/dから2035年には425万b/dに増加し、オイルサンド生産量がカナダの原油生産量に占める割合は、2018年の63%から2035年には75%に増加する見通しであるとしている。オイルサンド生産量は2021年までは年率4%の割合で増加するが、これは2017年、2018年の増加率の半分以下の伸び率となっている。さらに、2022年以降は生産増加の割合は2%程度で推移すると見ている。

CAPPは、オイルサンド生産の内訳を、2018年は露天掘りが135万b/d、地層内回収法が156万b/dであるが、2035年には露天掘りが182万b/d、地層内回収法が244万b/dになるとしており、オイルサンドの生産増は露天掘りよりも地層内回収法によるところが大きいとしている。

図6.オイルサンド生産実績及び見通し
図6. オイルサンド生産実績及び見通し
出所:Crude Oil Forecast, Markets and Transportation

(4) CERI

CERIは2019年7月に“Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2019-2039)”を発表した。

CERIは、ビチューメンの供給コストを、SAGD法を用いたプロジェクトが40.61カナダドル/bbl、拡張プロジェクトが27.60カナダドル/bblとした。希釈、輸送を加味し調整した米国Cushingでの供給コストはSAGD法新規プロジェクトが52.84ドル/bbl、拡張プロジェクトが45.88ドル/bblとなり、報告書発表時点のWTI価格(60ドル/bbl)では経済性があるとしている。

図7.ビチューメン供給コスト
図7. ビチューメン供給コスト
出所:Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2019-2039)

ビチューメン生産量は、2017年の284万b/dから7%増加し、2018年には300万b/dに達した。現在のビチューメン生産量の内訳は地層内回収法が約160万b/d、露天掘りが約150万b/dとなっている。CERIは、「ハイケース」、「リファレンスケース」、「ローケース」の3つのシナリオを用意、2020年、2030年、2039年のビチューメン生産量について、「ハイケース」シナリオでは、330万b/d、490万b/d、580万b/d、「リファレンスケース」シナリオでは、320万b/d、400万b/d、470万b/d、「ローケース」シナリオでは、310万b/d、330万b/d、410万b/dになると見ている。「リファレンスケース」の生産量の伸びは年2%となっており、前年発表の見通しの年3%より縮まっている。

図8. ビチューメン生産見通し
図8. ビチューメン生産見通し
出所:Canadian Oil Sands Supply Costs and Development Projects(2019-2039)

2. パイプライン輸送能力不足によるWCS価格下落へのAlberta州政府の対応

カナダ西部から石油を出荷するパイプラインの輸送能力の不足や新たなパイプラインの敷設・拡張計画の遅れは、従来よりオイルサンドプロジェクトの課題とされていた。2018年後半にはカナダ西部からの原油輸出可能量がパイプラインの輸送能力や鉄道による輸送能力を上回り、通常、10ドル/bblを若干上回る程度で推移しているWTIとWCSの価格差が一時52ドル/bblまで拡大した。

図9. WTIとWCSの推移(2014年10月~2019年10月)
図9. WTIとWCSの推移(2014年10月~2019年10月)
出所:Alberta州website

Alberta州政府は企業に生産削減を実施させたり、鉄道による原油輸送量を増やしたりすることで、価格下落に対処しようとしている。

Alberta州のRachel Notley首相(当時、新民主党)は2018年12月2日に、WTIとWCSの価格差により1日当たり8,000万ドル以上の経済損失が生じており、これを回避するための一時的な措置として、2019年1月1日より32.5万b/dの減産措置を講じると発表した。Alberta州政府によると、同州の原油・ビチューメンの生産量はパイプラインや鉄道による輸送能力を19万b/d上回っており、また、同州内の貯蔵量は通常の2倍にあたる3,500万bblで、貯蔵施設もほぼ満杯状態にある。そのため、32.5万b/d(生産量の8.7%)の減産を短期間(予定では3か月間)実施することで過剰在庫を減らし、その後は9.5万b/dの減産を2019年末まで継続することで、生産と在庫のバランスを保ちつつ、WCSを適正な状態に戻すとした。具体的には、生産量1万b/d以上の企業を対象に過去1年間の生産実績の上位6カ月分の生産量の平均から1万b/dを差し引き、その残量に対して32.5万b/dを比例配分で割り振る[1]こととされた。

このようにして、2019年1月の生産量は356万b/dに設定されたが、生産削減措置をとったことで、石油在庫が減少、WCSとWTIの価格差が縮小した。また、気温上昇に伴い希釈油の使用量が減少しパイプラインの空きが増えたこと等を理由に、Alberta州政府は、生産削減量を2月に7.5万b/d、4月、5月、6月、8月、9月にそれぞれ2.5万b/dずつと、次第に緩和した。

Alberta州は2019年8月20日に、建設・拡張中パイプラインの稼働時期が不確実なため、生産削減期間を1年延長し2020年12月まで継続すると発表した。Alberta州政府は、生産削減を行わなければ生産量が、輸出可能量を15万b/d上回ってしまうことも、生産削減期間を延長する必要がある理由として挙げた。Alberta州の生産上限は今年8月に374万b/d、9月は376万b/d、10月は379万b/dとされた。そして、10月より、減産対象を生産量10,000b/d以上の企業から20,000b/d以上の企業に変更するとした。これにより、減産対象企業は29社から16社に減少することとなった[2]。さらに、Alberta州は、生産上限を11月に380万b/d、12月に381万b/dと引き上げることとした。

なお、Alberta州政府は11月8日、新しい在来型坑井の生産については減産措置を適用しないと発表した。効力は直ちに生じるとともに、全ての石油企業に適用されることとなった。

一方で、Notley首相は、2018年11月28日、WCSとWTIの価格差が拡大していることを受け、石油を輸送するための鉄道車両を調達する予定であると発表した。Alberta州はこの車両導入により2019年12月に輸送能力15,000b/dの車両が配備され、2020年8月までには12万b/dを輸送できる車両が整うとした。さらに、Alberta州は、この車両購入により、WTIとWCSの価格差は4ドル/bbl縮まり、連邦政府の税収は1日100万ドル増加すると見込んだ[3]。Notley首相はJustin Trudeau首相に対して、連邦政府もAlberta州の車両導入に加わるよう求めたが、連邦政府は車両が準備できるころには輸送能力不足の問題は緩和しているとし、鉄道車両導入には加わらないことを表明した。

その後、2019年2月19日に、Alberta 州政府がCanadian National鉄道及びCanadian Pacific鉄道と7月より3年間にわたり4,400台の車両を調達する契約を締結、2020年までに追加で12万b/dの原油の鉄道輸送が可能になるとした。Alberta州政府は生産者から原油を購入、原油を車両に積み込み、市場に輸送する。これにより、小規模な生産者も容易に原油の鉄道輸送を行うことができるとした。投資額は37億ドルだが、Alberta州政府は3年間で歳入を59億ドル増加させることができるとした[4]

ところが、4月16日のAlberta州議会選挙で、Jason Kenney党首率いる連合保守党(UCP)が過半数の議席を獲得、4月30日にUCPによる新政権が誕生した。新政権のSonya Savageエネルギー相は6月27日、前政権が行ってきた原油の鉄道輸送計画に関し、「政府の干渉なしに民間セクターが自ら行うべきものだとUCPは主張してきており、同計画の民間部門への移行が今秋に完了する見込みである」とのコメントを発表した[5]。そして、原油を鉄道輸送する契約の移管についてAlberta州政府と石油会社の間で協議が行われていたが、石油会社側は、この契約を民間企業で引き受ける代わりに、この鉄道輸送分については生産量削減対象外とするようAlberta州政府に求めた。この結果、10月31日、Alberta州政府は、12月よりこの鉄道輸送分については、減産措置で定められている上限を上回って生産することを認めた。ただし、月次ベースで申請を行い、承認を得ることを条件とした。

紆余曲折を経て、Alberta州政府が生産削減措置並びに原油の鉄道輸送の仕組みを策定したわけだが、10月29日に米国North Dakota州でAlberta州から米国メキシコ湾岸に原油を輸送するKeystoneパイプラインから150万リットルの原油が流出する事故が発生した。このパイプラインを保有するTC Energy社が同パイプラインの操業を停止したことを受け、10月31日には、WTIが54.18ドル/bblであったのに対し、WCSは34.18ドル/bblと、再び両者の価格差が拡大した。TC Energyは11月10日に、米国パイプライン・有害物質安全庁(PHMSA)の補修・再稼働計画の承認を受けて、Keystoneパイプラインが操業を再開したと発表した。稼働再開当初は圧力を落として稼働、次第に通油量を増やすとしたが、通油量や増加の割合については明らかにしなかった。11月11日以降、WCSの価格は回復傾向にあるものの40ドル/bbl台には達していない。

なお、カナダエネルギー規制当局(Canada Energy Regulator:CER、8月末にNEBから変更)によると、カナダ産原油の鉄道輸送・輸出量は2018年12月の353,789b/dをピークに2019年2月には122,292b/dに減少し、その後、再び増加、9月には319,593b/dとなっている。

図10. カナダ産原油の鉄道による輸出量推移
図10. カナダ産原油の鉄道による輸出量推移
Canada Energy Regulator websiteを基に作成

[1] https://www.alberta.ca/release.cfm?xID=621526E3935AA-08A2-6F45-72145AEBDF115BDF

[2] https://www.alberta.ca/release.cfm?xID=64334E345B437-9D7E-8BAA-1B711C38AC1D4891

[3] https://www.alberta.ca/release.cfm?xID=621219274B4EB-DED2-A223-DFAB9D9D8A6BD355

[4] https://www.alberta.ca/release.cfm?xID=6256048D0EC27-CBAA-DF69-4D21382C624F4105

[5] https://www.alberta.ca/release.cfm?xID=6412300B80A96-08EB-E879-DCE1A5652B9C7518


3. パイプラインをめぐる動向

カナダ西部から原油を輸送するパイプラインには、EnbridgeのMainlineパイプライン(原油輸送能力285.1万b/d)やExpressパイプライン(同28万b/d)、Trans Mountainパイプライン(同30万b/d)、TC EnergyのKeystoneパイプライン(同59.1万b/d)があり、原油輸送能力は合計で402.2万b/dとなっている。2018年のカナダ西部からの原油供給量は466万b/dで、パイプラインの輸送能力を上回った量は主に鉄道で、Alberta州やSaskatchewan州など近隣の製油所等へは域内のパイプライン網やローリーで輸送されている。

このように原油輸送能力が不足するにもかかわらず、2016年11月にNorthern Gatewayパイプラインの建設計画が、また、2017年10月にEnergy Eastパイプライン建設計画が頓挫したことで、現在、計画されているパイプラインは、Enbridgeの Line 3修繕・拡張プロジェクト、Trans Mountainパイプライン拡張プロジェクト、TC EnergyのKeystone XLパイプライン敷設プロジェクトの3件のみとなっている。

 

表1. カナダ西部から原油を輸送するパイプラインの計画
  パイプライン 企業等 拡張される輸送能力(b/d) 総延長(キロメートル)
米国 Keystone XL敷設 TC Energy 83万 526
Line3修繕・拡張 Enbridge 37万 1,659
太平洋岸 Trans Mountain拡張 連邦政府 59万 1,183

各種資料を基に作成      

図11. カナダ及び米国の主要原油パイプライン
図11. カナダ及び米国の主要原油パイプライン
出所:Canadian Association of Petroleum Producers, Crude Oil Forecast, Markets and Transportation

(1) Line3修繕・拡張

EnbridgeのMainlineパイプラインの一部であるLine 3パイプラインは、Alberta州Hardisty~米国Wisconsin州Superior間全長1,659キロメートル、口径34インチ、輸送能力76万b/dのパイプラインで、1968年に敷設された。同パイプラインでSuperiorに輸送されたカナダ西部産原油は、Minnesota州やその周辺の州、メキシコ湾岸、カナダ東部に供給されている。しかし、老朽化により同パイプラインの輸送能力は39万b/dまで低下しており、現在の輸送量を維持するにしても広範にわたるメンテナンスが必要な状況となっている。そこで、カナダ部分について53億カナダドル、米国部分に29億ドルを投じ、同パイプラインを修繕・拡張し、輸送能力を当初の76万b/dまで回復させることが計画されている。カナダ及びWisconsin 州部分については修繕・拡張工事が終了したものの、Minnesota州でパイプライン建設について合意が得られないため、North Dakota州及びMinnesota州での敷設が進んでいない。2018年6月28日にMinnesota州公共事業委員会(Minnesota Public Utilities Commission:MPUC)が同プロジェクトを承認したものの、Minnesota州控訴裁判所は2019年6月3日、MPUCのこの承認の大部分を支持しながらも、Superior湖に原油が流出した際の影響を十分に検討していないとの判決を下した。これを受けMPUCは、10月1日、Minnesota州商務省に対しSuperior湖流域での油流出の潜在的影響のさらなる分析を実施し、60日以内に報告するよう求めた[6]。なお、9月17日にはMinnesota州最高裁判所が、他の理由から同プロジェクトに反対するグループの異議申し立てを受け付けないことを決定している。現在、同パイプラインは、2020年後半に運用開始予定とされている。



(2) Trans Mountain拡張

Trans Mountainパイプライン拡張(TMX)プロジェクトは、Alberta州Edmonton~British Columbia州Burnaby間全長1,150キロメートル、口径24~36インチ、輸送能力30万b/dのTrans Mountainパイプラインに全長994キロメートル、口径36インチの新たなパイプラインを並走させるとともに、既存のパイプラインの輸送能力を拡張することで、輸送能力を89万b/dまで増強する計画だ。2017年3月の推計で、総工費は74億カナダドルとされている。2016年11月29日に連邦政府から承認を得、2017年5月30日に最終投資決定がなされ、9月から建設が開始される計画であった。しかし、British Columbia州、Vancouver市、Burnaby市、環境保護団体、先住民の反対を受けてプロジェクトは遅延、事業主であったKinder Morganは2018年5月に、Trans Mountainパイプライン及び拡張プロジェクトを45億カナダドルで売却することで連邦政府と合意した。同年8月30日には、連邦控訴裁判所が、NEBによる承認は、事業拡大に伴うタンカーの交通量増大に対する環境影響評価や先住民との協議が不十分であったとして、審査のやり直しを命じた。NEBは2019年2月22日、再審査報告書を連邦政府に提出、タンカーによる海上輸送により温室効果ガス排出量の増加など、環境への悪影響が懸念されるものの、カナダ産原油の輸出先多様化や、カナダ全土での雇用創出、連邦政府や州政府の歳入拡大など経済的利益が見込まれることから、TMXプロジェクトは公共の利益にかなっており、承認されるべきだと勧告した。6月18日には、Trudeau首相が、TMXプロジェクトを再度承認すると発表した。連邦政府は、本プロジェクトが完了すれば、新たに年間5億ドルの法人税が課税できると試算、本事業から得る収益全てをクリーンエネルギーへの転換プロジェクトに投資すると強調した。しかし、TMXプロジェクトには引き続きBritish Columbia州政府や環境保護団体、先住民団体等により複数の提訴がなされている。たとえば、9月にはBC州控訴裁判所が、BC州政府にBC州前政権がNEB作成の環境評価報告書を基に行った環境評価を再検討し、さらに条件を付加する必要があるか否かを検討するよう命じており、プロジェクトの進展には時間がかかるとの見方もある。なお、連邦政府は、Trans Mountainパイプライン及び拡張プロジェクト買収にあたり、長期間同プロジェクトを保有するつもりはなく、適切な時期に新たな事業主に売却する計画であるとしていたものの、まだ、同プロジェクトを保有している。同パイプラインを支持する先住民族がその一部を保有する可能性があると伝えられている。同パイプラインは2022年中に運用開始とされている。


(3) Keystone XL建設

Keystone XLパイプライン建設プロジェクトは、Alberta州 Hardisty~米国Nebraska州Steel City間全長526キロメートルに口径36インチ、輸送能力83万b/dのパイプラインを敷設する計画だ。2014年の推計で総工費は108.5億カナダドルとされている。米国との国境をまたぐパイプラインであるため、米国政府の承認が必要とされる。2015年11月、Obama大統領(当時)が同パイプラインの建設計画を却下する方針を示したものの、Trump大統領は同パイプラインの建設を推進するとし、2017年3月24日、同パイプラインの建設計画を承認した。ところが、2018年11月8日、Montana連邦地裁はこの承認を無効とした。これに対しTrump大統領は、2019年3月29日、再度同プロジェクトを承認した。6月6日には、米合衆国第9控訴裁判所はTrump大統領の考えを是認する判決を下した。また、2017年にNebraska州公共サービス委員会(Nebraska Public Service Commission)は、TC Energyがもともと提案していたルートではなく代替のルート案で建設許可を与えたが、審議対象となるのはTC Energyが提案したルートのみだとして、反対派より承認の撤回を求められていた。これに対して、2019年8月23日、Nebraska州最高裁判所が、Keystone XLパイプラインの代替ルート案は有効であるとし、パイプライン建設の承認を支持する判決を下した。Keystone XLパイプライン建設をめぐっても、この他にも環境保護団体が複数の訴訟を提起している。現時点で、Keystone XLパイプラインは2022年中に運用開始予定とされている。

 

このように3プロジェクトに当初予定通りの進展が見られない中、8月2日、EnbridgeがMainlineパイプラインの利用システムを変更する提案を行った。MainlineパイプラインはAlberta州Edmontonと米国Wisconsin州 Superior等を結ぶ全長3,100マイル、送油能力はLine3修繕・拡張プロジェクトが完成すれば323万b/dとなるパイプラインで、カナダの原油輸出量の75%を輸送している。Mainlineパイプラインは、毎月、送油量を申請(入札)するシステムとなっているが、Enbridgeは2021年7月以降、通油量の90%を契約期間20年の長期契約に変更、残りの10%を月ごとに入札する方式へ変更することを提案した。これに対して、SuncorやShell等20社以上の石油会社が、Enbridgeは、Trans Mountain拡張プロジェクトやKeystone XLパイプライン敷設に関して先行きが不透明なことを利用、支配的地位を乱用しており、他のパイプラインが開通してもそれを利用できない状況が生まれるとして、CERの介入を求めた。9月27日、CERは、Enbridgeが申請していたMainlineパイプラインの原油輸送システムの変更を却下したが、Enbridgeは長期契約システムへの移行を引き続き検討すると表明している。


4. オイルサンド企業等の動向

(1) IOCのオイルサンド資産売却

2016年末から2017年3月にかけて、IOCがオイルサンドプロジェクトを主にカナダ企業に売却する動きが頻繁にみられた。IOCは、2014年半ば以降の原油価格下落後、コストを削減し、収益を向上させる努力を続けており、コスト高のオイルサンドプロジェクトがポートフォリオ上、不要になってきたことと考えられる。また、原油生産の際に二酸化炭素を多く排出するオイルサンドプロジェクトには環境保護団体等が反対しており、IOCは株主からこのようなプロジェクトを売却するようにとの圧力を受けていること等により、オイルサンドプロジェクト売却に至ったものと思われる。

2018年に入っても、パイプラインの輸送能力不足によりカナダの原油価格の下落が続いたため、2016年末から2017年3月に比べると数は少ないが、オイルサンドプロジェクトの売却が続いた。

ところが、2018年9月にTotal(38.25%)/Suncor Energy (36.75%)/Joslyn Partnership(15%)/Inpex(10%)がJoslynオイルサンドプロジェクト(生産能力10万b/d)をCanadian Natural Resourcesに2.25億カナダドル(1.73億ドル)で売却した後は、特筆すべきオイルサンド事業の売却は行われていない。

 

表2. 2015年以降のオイルサンド資産の主な売買
時期 売り手 買い手 金額 対象資産
2015.9 Total Suncor C$3.1億 Fort Hillsの権益10%
2016.6 Murphy Oil Suncor $9.37億 Syncrudeの権益5%
2016.12 Statoil Athabasca Oil C$8.32億
($6.17億)
Kai Kos DehsehのLeismer、Cornerの権益100%
2017.3 Shell Canadian Natural Resources $85億 Athabasca Oil Sands Project (AOSP)の権益50%
Peace River Complexの権益100%
未開発オイルサンドのリース
2017.3 Marathon Oil Shell、Canadian Natural Resources $25億 Marathon Oil Canada
2017.3 Conoco Phillips Cenovus Energy $133億

Foster Creek-Christina Lakeの権益50%

Deep Basinのガス資産
2018.1 Total Suncor C$3億 Fort Hillsの権益2.26%
Teck C$1.2億 Fort Hillsの権益0.89%
2018.2 Mocal Suncor $9.25億 Syncrudeの権益5%
2018.5 Shell $33億 Canadian Natural Resourcesの株式8%(9,760万株)
2018.9 Total、Suncor、Joslyn Partnership、Inpex Canadian Natural Resources $1.73億 Joslyn(生産能力10万b/d)

各種資料を基に作成      


(2) カナダ企業の動向

オイルサンドプロジェクトをIOCから取得したカナダ企業は、多数のプロジェクトの中でより効率的なロケーションに集中して生産することが可能となり、低油価環境に対応するためにも、合理化とコスト削減を図っているという。CAPPは、2019年6月に発表した“Crude Oil Forecast, Markets and Transportation”で、石油会社各社はコストを35~55%削減したとしている。また、パイプライン建設の遅れが原因となって、オイルサンドプロジェクトへの投資額も減少していると考えられる。さらに、Alberta州政府が石油会社に生産削減を実施するよう求めたことにより、石油会社は生産削減枠を上回って生産を行えないので、追加のプロジェクトやフェーズを調整することとなり、これも投資額の減少に影響していると考えられる。

例えば、Husky Energyは2019年5月28日に、2019~2023年の5か年計画で年間平均の資本投資額を、2018~2022年の5か年計画の35億ドルから31.5億ドルに引き下げると発表した。さらに、10月24日には、Alberta州への投資を遅らせ、一方、生産量を増やすためにSaskatchewan州やカナダ大西洋岸沖合、アジアへの投資を増やすことを明らかにした。同社CEOのRobert Peabody氏は、Alberta州へ投資を行いたいが、石油生産削減措置が取られていることから投資を控える、と語った。Husky Energyは前々日の10月22日には、Calgaryの社員を中心に数百名を解雇している。解雇した人数は明らかにされていないが、2018年末時点での同社の正社員数は5,157名となっている。同社は資本投資を低く抑えるために人員削減を行ったと説明した。

また、2014年後半の油価下落以降、新たなプロジェクトの最終投資決定はほとんど行われてこなかったが、2018年11月に、Imperial OilがAspenオイルサンドプロジェクトの最終投資決定を行った。Imperial Oilは、投資額26億カナダドル(18.3億ドル)で、2018年末までに建設を開始、2022年に第1フェーズの生産を開始する予定で、第1フェーズのビチューメン生産量は75,000 b/dを計画している。ここでは、次世代オイルサンド回収技術solvent-assisted, steam-assisted gravity drainage(SA-SAGD)を初めて商業生産に適用し、温室効果ガスの排出を削減、水の利用を25%削減できるという。Imperial Oilは、採算価格はWTI 35~40ドル/bblで、WTIが40ドル/bblであれば2桁のリターンが期待でき、Brentが60ドル/bblで年間5億ドルのフリーキャッシュフローを見込めるとしていた。ところが、Imperial Oilは、最終投資決定のわずか5か月後の2019年3月15日、Aspenオイルサンドプロジェクトを保留とすると発表した。同社は、Alberta州政府が2019年1月1日から原油減産を打ち出したことで、先行きが不確実になったことを理由に挙げ、少なくとも1年は延期すると述べた。さらに、Imperial Oilは11月に、Alberta州政府が生産削減を完全に終了するまでは、Aspenプロジェクトは進めないと発表した。

その結果、オイルサンド事業への資本投資は2014年の339億カナダドルをピークに5年連続で減少し、2019年は120億ドルとなる見通しである。

図12. オイルサンドへの資本投資
図12. オイルサンドへの資本投資
出所:CAPP, 2019 Crude Oil Forecast, Markets and Transportation

(3) 倒産やカナダ離れを進めようとするカナダの石油・ガス関連企業

オイルサンドを主たる事業とする企業ではないが、カナダの石油・ガス関連企業の中には、倒産するものやカナダ離れを進めようとするものが目立つようになっている。

2018年3月には、Alberta州Bruce、Hazelbluff、Camrose/Big Bendエリアに資産を保有するSequoia Resourcesが倒産した。Alberta州を中心に天然ガスの探鉱・開発を進めていたTrident Explorationは、ガス価格の低迷から倒産、2019年4月29日にライセンスを付与された約4,400か所での操業を4月30日で停止するとAlberta州規制当局(Alberta Energy Regulator:AER)に伝えた。10月にはAlberta州、British Columbia州、Saskatchewan州で探鉱・開発にあたっていたBellatrix Explorationが債権者保護手続きに入った。また、11月初めには、Calgaryに本社を置くHouston Oil & Gasが操業を停止して従業員を解雇することをAERに報告、破産管財人の管理下に置かれたことが報じられた。

これらの企業の中には、廃坑手続きを取らないものもある。例えば、Trident Explorationの倒産で約4,700坑の油・ガス井が放置され、Houston Oil & Gasの倒産で約1300坑の油・ガス井が処理を行われずに捨て置かれた。そのような油・ガス井やパイプライン、設備の管理にあたるためのファンドOrphan Well Assosication(OWA)が設立されているが、5年前より企業の倒産が続き、2017年にはAlberta州はOWAに2億3500万ドルを貸し出したという。

一方、2019年1月、TransCanadaは企業名からCanadaを外し、第2四半期からTC Energyと名称を変更すると発表した。1951年創業のCalgaryを本社とし、パイプライン、発電、エネルギー事業に従事する企業だが、収益の60%は米国から上がっており、今後ますますその傾向が強まると見られている。

また、11月には、Encanaは本社をCalgaryから米国(当初、場所は明らかにされなかったが、のちにDenverとすることが明らかにされた)に移し、社名をOvintivに変更することを計画していると発表した。同社は、Ovintivの普通株1株とEncanaの普通株5株とを交換することを株主に提案した。2020年の株主総会で決議されることになるが、変更には2/3以上の賛成が必要となる。また、株式取引所及び米国裁判所の承認も必要となる。EnCanaは、2002年にAlberta Energy CompanyとPanCanadian Energyの合併により設立された。2014年にAthlon Energyを59億ドルで買収、2019年にNewfield Explorationを55億ドルで買収する等により、Permian Basin等有望な米国のシェール層に活動拠点を広げていた。2019年第3四半期のEncanaの生産量は、米国Permian及びAnadarkoの合計で273,000boe/d、カナダMontneyが210,000boe/dとなっている。CEOのDoug Suttles氏は、米国に本社を置くことでより資金を集めやすくなるだけでなく、米国の同業者とより良い関係を築けると説明した。


5. カナダ企業、オイルサンド業界の環境への配慮、取り組み

石油会社や石油業界は温室効果ガス排出等環境面への配慮、取り組みを進めている。

温室効果ガスの排出については、Canadian Natural Resourcesが2019年7月、革新的な技術を用いることでオイルサンドの操業からの温室効果ガス排出を最終的に0にすることを計画していると発表した。Canadian Natural Resourcesはすでに、温室効果ガスの排出を2014年から20%削減している。今回の温室効果ガス排出量を0にする計画について、同社は期間を設定していない。そして、時間はかかり、容易ではないが、実現は可能としている。

オイルサンド企業の中には水の使用量を減らす研究を行っている企業が多く、Suncorは水を使用せずにビチューメンを抽出する"non aquenous extraction"の小規模パイロットプロジェクトを実施中、Cenovus Energyは水を使わない"purely solvent-based"のビチューメン抽出法を開発中である。

なお、石油業界は、二酸化炭素の排出量減少等のためクリーンテクノロジーの分野に年間約14億ドルを拠出、また、オイルサンド企業は環境テクノロジーの研究等を行うCanada's Oil Sands Innovation Allianceに14億ドルを拠出したという[7]

オイルサンドへの融資等を制限するとしている主な金融機関を表3にまとめた。この表からも分かるように、オイルサンドプロジェクトへの融資等を制限しているのは、これまでのところ、いずれも欧州系の金融機関となっている。その他地域の金融機関にも同様の動きが広がっていく可能性があり、動向を注視する必要がある。


[7] Vancouver Sun 2019/7/6

表3. オイルサンドプロジェクトへの融資停止を決定した主な金融機関
金融機関 発表時期 内容
INGグループ
(オランダ)
2012/12 オイルサンドに直接関連する採掘、輸送、加工プロジェクトには一切投融資しない
2017/6/28 KeystoneXLパイプライン、Energy Eastパイプライン建設、LINE 3パイプライン修繕・拡張等、カナダの主要パイプラインプロジェクトから投融資撤退
BNP パリバ
(フランス)
2017/10/11 シェールオイル、シェールガス、オイルサンドの採掘、輸送、生成、流通、小売、貿易を主業務とする企業に関連するビジネス、同資源のパイプライン、LNGターミナルに関するプロジェクト、北極圏での石油ガス開発に関するプロジェクトへの融資禁止。
ナティクシス
(フランス)
2017/12/11 オイルサンド関連や北極海石油採掘事業への投融資を停止。
アクサ
(フランス)
2017/12/12 ダイベストメントの対象を、保有する石油埋蔵量に占めるオイルサンドの割合が30%以上の会社、及びオイルサンド事業に付随するパイプライン事業に拡大。保険引受停止の対象を、オイルサンド採掘事業、パイプライン事業などのオイルサンド輸送事業とし、新規の全ての事業のみならず、一部の例外を除いて既存事業も対象にする。
HSBC
(イギリス)
2018/4/20 ベトナム、インドネシア、バングラデシュ以外の国の新規石炭火力発電所建設へのファイナンスを禁止。北極海での新規石油・ガスプロジェクト、新規オイルサンドプロジェクト、オイルサンド輸送用新規パイプライン建設に対するファイナンスを全面的に禁止。既存のオイルサンドに関するものは継続。
Royal Bank of Scotland
(イギリス)
2018/5/29 新規石炭火力発電所または一般炭炭鉱、オイルサンド、北極海での石油プロジェクト、持続可能ではない植生または泥炭地プロジェクトには、直接的な融資は行わない。
チューリッヒ保険グループ
(スイス)
2018/6 オイルサンドの製造企業、パイプライン企業、原油の列車輸送に関連する企業が適切な地球温暖化対策を講じない限り、これらの個々の企業への投資を2年以内に控える

各種資料を基に作成      


終わりに

カナダでは、2019年10月21日に下院議員選挙が実施された。Trudeau首相率いる自由党は157議席を獲得し、第一党を維持した。しかし、自由党は議席数を27議席減らし、過半数(170議席)を獲得することができず、得票率でも最大野党である保守党の34.4%を下回り、33.1%という結果になった。Alberta州及びSaskatchewan州では自由党は大敗し、現職のSohi天然資源大臣(Alberta州選出)も落選、両州の石油・ガス業界を代弁する自由党議員がいなくなってしまった。Trudeau首相は、「カナダの国益にかない、また環境と経済の二つを同時に進める必要があることから、我々はTMXを進める決断を行ったし、今後も工事を継続する。カナダの原油価格と国際市場価格のギャップが拡大し、またアメリカ以外の市場に輸出することもできず、この数年はAlberta州とSaskatchewan州の人々にとって大変厳しい年月となった。これらの課題解決のため我々は共に歩んでいく」と語っているが、カナダ西部で分離独立を目指すWEXITEの動きが広がっていると伝えられている。

今後のオイルサンドプロジェクトの動向については、Trudeau政権がマイノリティ政権となったことによりどのように政権を運営していくのか、TMX等エネルギー関連のプロジェクトに関してどのような政策をとっていくのか、Alberta州等西部諸州との関係をどのように改善していくのか等も併せて見ていく必要があろう。

以上

(この報告は2019年12月3日時点のものです)

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