ページ番号1008597 更新日 平成31年12月27日

Liza油田生産開始で産油国となるガイアナ

レポート属性
レポートID 1008597
作成日 2019-12-27 00:00:00 +0900
更新日 2019-12-27 11:13:36 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2019
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 中南米
国1 ガイアナ
地域2
国2 スリナム
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ガイアナ,スリナム
2019/12/27 舩木 弥和子
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概要

  • ExxonMobilは、2019年12月20日、ガイアナ沖合Stabroek Block、Liza油田の生産を開始したと発表した。油田発見からわずか4年7か月での生産開始で、生産量は数か月のうちに12万b/dに達する見通しである。
  • ExxonMobilは2019年5月に、Liza油田開発第2フェーズの最終投資決定を行った。石油生産能力22万b/dのFPSOを用い、Liza油田を中心に開発を行い、2022年中頃より生産を行う計画である。ExxonMobilは第3フェーズについて、生産能力22万b/dのFPSOを用いて、Payara油田を中心に開発を行い、2023年に生産を開始する計画であるが、最終投資決定は2020年3月以降となる見通しである。
  • ExxonMobilはLiza油田発見後もStabroek Blockでの探鉱を継続し、これまでに同鉱区内で掘削した15坑で油層を確認しており、同鉱区の可採埋蔵量を60億bbl以上としている。隣接する鉱区での探鉱も進展しており、Orinduik BlockにおけるJethro-1号井とJoe-1号井(オペレーター:Tullow Oil)で原油が確認されたが、産出される原油が重質で硫黄分を多く含むため、開発に移行できない可能性もあるという。
  • 2020年3月2日に実施されるガイアナ議会の総選挙や鉱区付与が正しく行われてきたかに関する調査の結果次第では、ガイアナの投資環境に影響が及ぶ可能性があり、状況を注視する必要がある。

(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas、Business Monitor International他)


1. ExxonMobil、Liza油田生産開始

ExxonMobilは2019年12月20日、ガイアナ沖合190キロメートルに位置するStabroek Block、Liza油田の生産を開始したと発表した。

ExxonMobilは、1999年にStabroek Blockを取得、2013年より地震探鉱を実施、2015年3月よりLiza-1号井の掘削を開始し、5月にLiza油田を発見した。そして、2017年6月に、Liza油田開発第1フェーズの最終投資決定を行った。ExxonMobilは、第1フェーズの投資額は44億ドルで、生産井8坑、水圧入井6坑、ガス圧入井3坑の合計17坑を掘削し、浮体式石油・ガス生産貯蔵積出設備(Floating Production, Storage and Offloading system:FPSO)Liza Destinyによって、2020年初に生産を開始、原油4億5,000万bblを開発する計画であるとした。FPSO Liza Destinyは、現代重工業で1999年に建造されたVLCC Tinaを、SBM Offshoreが2017年11月より20か月かけてシンガポールのKeppel造船所で改造したものである。FPSO Liza Destinyの石油生産能力は12万b/d、天然ガス処理能力は170MMcf/d、石油貯蔵能力は160万bblとなっている。FPSO Liza Destinyは、シンガポールから42日の航海を経て、2019年8月にStabroek Blockに到着した。

2019年10月末に、ExxonMobilのパートナーであるHessは、ExxonMobilコンソーシアムはStabroek Blockでの生産を、予定していた2020年第1四半期よりも早く、2019年12月に開始する見通しであることを一早く発表していた。それによると、開発井の掘削は予定通り行われており、海底の設備はほぼ完成しているとのことであった。そして、Liza油田開発第1フェーズのランプアップの期間は3~4か月であるとコメントしていた。

図1.ガイアナ及びスリナム沖合の鉱区図
図1.ガイアナ及びスリナム沖合の鉱区図
各種資料を基に作成

結果的には、Hessの発表通り、Liza油田は2019年12月中に生産を開始した。深海での油田開発の平均的な期間よりも早く、油田発見からわずか4年7か月での生産開始となった。ExxonMobilは、生産量は数か月のうちにFPSO Liza Destinyの生産能力12万b/dに達する予定であるとしている。

なお、Stabroek Blockの権益保有比率は、ExxonMobilが45%、Hessが30%、CNOOC Nexenが25%となっている。


2. Stabroak鉱区開発計画

ExxonMobilは、FPSO Liza Destinyに続いて、Stabroak Block開発の第2フェーズ、第3フェーズでそれぞれ1基のFPSOを導入、これにより、同鉱区の生産量を50万b/dに引き上げる計画である。さらに、ExxonMobilは、同鉱区は2025年までに5基のFPSOを用いて原油75万b/d以上を生産するポテンシャルがあるとしている。

2019年5月、ガイアナ政府はStabroak Block開発の第2フェーズを承認した。これを受け、ExxonMobilが最終投資決定を行った。ExxonMobilは、FPSO Liza Unity(石油生産能力22万b/d、天然ガス処理能力400MMcf/d、貯蔵能力200万bbl)を用いて、Liza油田を中心に開発を行い、2022年中頃より6億bblを生産する計画である。ExxonMobilは、第2フェーズで合計30坑を掘削することを計画、うち15坑が生産井、9坑が水圧入井、6坑がガス圧入井であるという。FPSOのリース費用含め総コストは60億ドルとされている。投資決定時にLiza Unityの船体は中国で建造中、完成間近であり年末までにシンガポールに到着し、シンガポールでトップサイドモジュールを搭載する計画であることが明らかにされた。当初、第2フェーズの最終投資決定は2019年第1四半期に行われる予定であったが、5月にずれ込んだ。しかし、生産開始時期については当初予定の2022年中頃で、変更はないという。

Stabroak Block開発の第3フェーズについてExxonMobilは、FPSO Prosperity(石油生産能力22万b/d、天然ガス処理能力400MMcf/d、原油貯蔵能力200万bbl)を用いて、Payara油田を中心にPacora、Liza Deepの開発を行い、2023年に生産を開始する計画である。第3フェーズは開発井数が45坑と多く、第2フェーズに比べ開発コストが高くなる見通しであるという。ExxonMobil は2019年11月に、第3フェーズの開発計画と環境影響評価レポートを環境保護庁(Environmental Protection Agency:EPA)に提出した。また、SBM OffshoreにFPSOの基本設計業務を発注した。さらに、SaipemとPayara油田開発用の海底の生産設備、ライザー、フローラインについての契約を締結した。第3フェーズの最終投資決定は2019年に行われる予定であったが、2020年3月に実施される総選挙を前に政府の意思決定が遅れていることから、2020年3月以降となる見通しである。

なお、Hess COO のGreg Hill氏によると、Liza油田開発の損益分岐点(Brentの価格)は、フェーズ1が35ドル/bbl、フェーズ2が25ドル/bblであるという。

表1. Stabroek Blockの開発計画
フェーズ FID 生産開始 FPSO(生産能力) 主要油田 開発コスト
1 2017年6月 2019年12月 Liza Destiny (12万b/d) Liza 44億ドル
2 2019年5月 2022年中頃 Liza Unity (22万b/d) Liza 60億ドル
3 2020年3月以降 2023年 Prosperity(22万b/d) Paraya 60億ドル超

(各種資料を基に作成)                        


3. ガイアナ、スリナムでの探鉱状況

ExxonMobilはLiza油田発見後もStabroek Blockでの探鉱を継続し、これまでに同鉱区内で掘削した抗井のうち15坑で油層を確認している(図1、表2参照)。同社は、油田発見に伴い、2018年12月に50億bbl、2019年3月に55億bbl、7月に60億bbl、現在は60億bbl以上と同鉱区の可採埋蔵量の上方修正を重ねている。当初1隻であったドリルシップも次第に増加し、2019年10月初めからは4隻(Stena Carron、Noble Tom Madden、Noble Bob Douglas、Noble Don Taylor)体制となり、同時進行で掘削が進められるようになっている。

表2. 2019年にガイアナ及びスリナムで掘削された主な坑井
鉱区 坑井 掘削時期 水深 掘削長 結果等
ガイアナ Stabroek Haimara-1 2019/1~2 1,399 5,575

63メートルの砂岩の油層を確認

Tilapia-1 2019/1~2 1,783 5,726 93メートルの砂岩の油層を確認
Yellowtail-1 2019/3~4 1,843 5,622 89メートルの砂岩の油層を確認
Tripletail-1 ~2019/9 2,003 N.A. 33メートルの砂岩の油層を確認
Mako-1 2019/11~12 1,620 N.A. 50メートルの砂岩の油層を確認
Orinduik Jethro-1 2019/7~8 1,350 4,400 net oil pay 55 m
Joe-1 2019/8~9 780 2,175 net oil pay 14 m
Kanuku Carapa-1 2019/9~ N.A. N.A. N.A.
スリナム Block 58 Maka Central-1 2019/9~12 N.A. 6,200 さらに調査を行うため6,900メートルまで掘削を継続

水深、掘削長の単位:メートル、各社websiteを基に作成    

 

また、Stabroek Blockに隣接する鉱区での探鉱も進展を見せている。

Tullow Oilは2019年第3四半期にOrinduik BlockでJethro-1号井とJoe-1号井を掘削した。Orinduik Blockは、Stabroek鉱区で2018年8月に掘削され、原油が確認されたHammerhead-1号井からわずか7キロメートルの海域に位置していることから、同鉱区でも大規模な油田が発見されるのではないかと期待が高まっていた。Tullow Oilは8月12日、Jethro-1号井で、原油を確認し、可採埋蔵量は推定していた1億bblを上回ると発表した。さらに、9月には、Joe-1号井でも原油の埋蔵を発見、2020年には原油生産を開始できる予定であると発表した。

また、Kanuku Blockでは2019年第3四半期にCarapa-1号井の掘削が開始された。

両鉱区の権益保有比率は、Orinduik BlockがオペレーターのTullow Oil 60%、Total25%、Eco Atlantic15%、Kanuku BlockがオペレーターのRepsol 37.5%、Tullow Oil 37.5%、Total 25%となっていた。しかし、2019年7月にQatar PetroleumがTotalからOrinduik Blockの権益10%、Kanaku Blockの権益10%を取得し、ファームインしたことで、Orinduik BlockがTullow Oil 60%、Total15%、EcoAtlantic15%、Qatar Petroleum 10%、Kanaku BlockがRepsol 37.5%、Tullow Oil 37.5%、Total 15%、Qatar Petroleum 10%となっている。

さらに、10月初めには、CGX ResourcesがPGSとCorentyne Block北部で10月半ばから11月27日に3D地震探鉱(582平方キロメートル)を実施する契約を締結した。同鉱区ではUtakwaaka-1号井の掘削が予定されていたが、これについては地震探鉱の結果が得られた後の2020年に延期されることになった。同鉱区の権益保有比率はCGX 66.667%、Frontera 33.333%となっている。両社はDemerara Blockでも2020年に掘削を行う計画である。

加えて、Hess/ExxonMobilはKaieteur Blockで2020年に掘削を行う予定である。

順調に進んでいるように見えるガイアナの探鉱であるが、Tullow Oilは11月に、Orinduik Blockで掘削したJethro-1号井及びJoe-1号井で発見された原油は硫黄分が多く重質で商業的な価値があるか疑わしいと発表した。Liza油田で生産される原油はAPI比重が32~34度で、硫黄分は0.51%であるのに対し、Tullowが掘削した2抗井で確認された原油はAPI比重が10~15度、硫黄分の含有率ははるかに高く、ベネズエラのOrinoco Oil Beltで生産される超重質油やカナダのオイルサンドに性状が近いという。

さらに、その後、Stabroek Blockで発見されたHammerhead井から産出される原油も同鉱区内の他の坑井から産出される原油に比べ重質であることが、Hessより明らかにされた。同鉱区では、Liza油田に2基、Payara油田に1基のFPSOが設置される計画で、それに続く4基目のFPSOをHammerheadかTurbotに設置することが検討されていた。現在、HammerheadにFPSOを設置し生産を行うに値するか否かについて評価が行われているが、HessのCEO、John Hess氏は、HammerheadにFPSOが設置されることに自信を持っていると語っている。

国境を隔てたスリナムでは、Apacheが、Block 58で9月よりMaka Central-1号井の掘削を行っている。Apacheは12月初めに、掘削長が約6,200メートルに達したが、さらに調査を行うため、6,900メートルまで掘り進めると発表した。そして、12月末にはTotalがApache より同鉱区の権益50%を取得することが明らかにされた。Maka Central-1号井を含め最初の探鉱井3坑についてはApacheがオペレーターを務め、その後はTotalがオペレーターとなる。TotalはApacheに 1億ドルを支払うとともに、Apacheがこれまで同鉱区に投じた探鉱費の50%を支払う。さらに、油田が発見され開発に移行した場合には、TotalはApache にさらに7, 500万ドルを支払い、Apacheの将来の開発コスト50億ドル以上をカバーする等の条件が設定されている。

スリナム浅海では、国営石油会社Staatsolieが、2019年4月よりSeadrillのWest Castor掘削プラットフォームを用いBlock A、B、C、Dで探鉱井6坑(Marai 1、Electric Ray 1、Kankantrie 1、Powisie 1、Gonini 1、Tukunari 1)を掘削したが、商業規模の油田は発見されなかった。Staatsolieは貴重なデータが取集でき、4坑で油徴を見たとし、当初9坑予定されていた掘削計画を6抗の掘削に縮小した。

スリナムではさらに2020 年に、Tullow/Pluspetrol/Ratio ExplorationがBlock 47で、KosmosがBlock 42で掘削を行う計画である。


終わりに

ガイアナでは2018年12月21日に国会でGranger政権に対する不信任案が成立したものの、Granger政権がこれを受け入れず、最高裁にあたるカリブ共同体の司法機関、カリブ司法裁判所(Caribbean Court of Justice:CCJ、トリニダード・トバゴ)でこの不信任決議についての審理が行われていた。2019年6月にCCJはこの不信任案は成立し、有効であると判断した。これを受け、8月には選挙管理委員会の委員長選出について与野党間で合意が成立し、Granger大統領は9月に、2020年3月2日に総選挙を実施すると発表した。Stabroek Block開発第3フェーズの承認だけでなく、Granger政権が取り組んできた石油法や規制の見直しについても承認されるのは、この選挙後となる見通しだ。また、野党、人民進歩党/シビック(People’s Progressive Party/Civic:PPP/C)が選挙で勝利することになれば、Stabroek Block開発第2フェーズの承認を含む2018年12月の不信任投票以降のGranger政権の決定について無効とされる可能性があるのではないかと懸念する向きもある。

一方で、ガイアナ政府の腐敗防止機関State Assets Recovery Agencyが、ExxonMobilがオペレーターを務める Stabroek、Kaieteur、Canje Block等がどのように付与されたかについて調査を行っているという。Kaieteur、Canj Blockは、2015年にJHI Associates(カナダ)とMid-Atlantic Oil and Gas(ガイアナ)に付与されたが、両社はともに鉱区取得前5年以内に設立された新しい企業で、石油やガスを生産した経験や深海の炭化水素プロジェクトに参加した経験がない。鉱区付与は入札を経ずに、選挙前で解散中であったことから議会の承認も得ておらず、サインボーナスも支払われていない。また、ExxonMobilがStabroek BlockでLiza油田を発見したことを公表した数日後に両鉱区が付与され、後にExxonMobilがその権益を取得した経緯についても不透明な取引であると見る向きもある。Stabroek Blockについては、サインボーナスが1,800万ドルと相場から考えれば比較的安価と言える水準であるし、また、ロイヤルティも2%と低いレートに設定されていることが批判されている。

Liza油田の生産が始まり、産油国の仲間入りを果たしたガイアナであるが、総選挙やState Assets Recovery Agencyの調査の結果次第では、今後の投資環境に影響が及ぶ可能性があり、注視していく必要があろう。

以上

(この報告は2019年12月26日時点のものです)

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