ページ番号1008685 更新日 令和2年1月28日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
プーチン大統領が2020–2022年の連邦予算案に署名
- プーチン大統領は、12月2日、2020–2022年の連邦予算案に署名をした。 各年の予算について、2020年の歳入は20兆3,794億ルーブル、歳出は19兆5,033億ルーブル、2021年の歳入は21兆2,465億ルーブル、歳出は20兆6,340億ルーブル、2021年の歳入は22兆583億ルーブル、歳出は21兆7,633億ルーブルとなった。
- 2020年の歳入のうち、石油天然ガス関連の歳入は7兆4,722兆ルーブルで、歳入全体の36.7%を占める。2020年のウラル原油価格は57.0USDと見積もられており、原油価格が42.4USDを上回る分については、国民福祉基金に繰り入れられる。主な歳出では、国民の生活水準の向上のための予算が5.01兆ルーブル、国防関係の予算が3.1兆ルーブルとなっている。
- GDPは2020年に112.9兆ルーブル、2021年に120.4兆ルーブル、2022年に128.5兆ルーブルとなる予測となっており、インフレ率は2020年には3.0%以下、2021年から2022年は4.0%以下と予測されている。
プーチン大統領の定例年次会見
- プーチン大統領は、12月19日、毎年12月に定例で行う記者会見を開催した。15回目となる今回は、ロシア地方紙や外国紙の記者も含め1,895名が参加登録した。プーチン大統領は、4時間18分間の質疑応答に応じ、参加者からの71の質問に答えた。会場からの質問は、ロシアが関係する国際問題やロシア国内問題などの幅広い話題に及んだ。
- プーチン大統領は、質疑冒頭に、気候変動に関する質問に対して、気候変動の原因は誰にも分からず、我々がパリ協定の目標を達成できるかどうかは分からないとしつつも、気候が急変化しないよう、あらゆる努力をする必要があると述べた。
- 他方、同大統領は米国についての質問に対しては、米国は彼らにとって興味深く有益な場合には我々と協力し、同時に制裁でロシアを拘束する、我々もこれを知っており、鏡のように行動すると回答し、制裁については制裁で対抗する姿勢を示した。一方、新戦略兵器削減条約については、この条約がなければ世界の軍拡競争を妨げるものは何もない、と述べ、ロシアは同条約の延長の準備ができていると述べた。
- また、中国との関係に関しては、ロシアと中国との間でここ数年での最も重要なことは、両国の信頼がこれまでにない水準に達したことであると述べた。また、露中の協力は間違いなく世界を安定にする要素になるとしつつ、購買力平価でみれば中国経済は米国経済の規模を上回ることを引き合いに、国際関係は一極集中ではなく、中露両国の戦略的連携を強めていくことが両国民の利益になると述べた。
- 国内経済について、同大統領は、未解決の経済の問題が多くある、最も重要なのは労働生産性を向上させることであり、これを基礎に経済成長率が向上すると述べた。また、我々はロシアが安定的に発展していくことに自信を持っていると述べた。
- また、ロシア国内のサンクトペテルブルク近郊におけるごみ処理問題に関しては、東京を例に出し、最新の技術を活用すればごみ処理施設が居住地域に近接しても近隣住民が問題なく生活をできるとし、最新技術を活用した解決を目指していくとした。
- 日本との平和条約に関する質問に対しては、北方領土に米国のミサイル配備がなされることへの懸念を述べるとともに、柔道で使われる「引き分け」を例に出し、民意も賛同するような解決策を70年もの間を見つけられていないが、我々は答えを見出す方向へ動き出そうとしていると答えた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/62366
(2) 対外関係
1) 米国
Nord Stream 2、Turk Streamが制裁対象に
- 米国のトランプ大統領は、12月20日、2020年の国防授権法案に署名した。この法律には、Nord Stream 2及びTurk Streamプロジェクトについて、パイプライン建設のために海底100フィート(約30.5メートル)以深でパイプ敷設に従事する船舶を提供する企業への制裁を課す条文も含まれた結果、Nord Stream 2及びTurk Streamのパイプライン敷設を請け負っているのはスイス登記のAllseas社(1985年設立。大水深パイプ敷設及びオフショアメジャー企業。2011年稼働を開始した最初のNord Streamも同社による敷設)は翌21日に、Nord Stream 2について作業をサスペンドする旨のリリースを行っている。
- ロシアのLavrov外務大臣は、12月22日、米国の制裁に関わらず、Nord Stream 2及びTurk Streamプロジェクトは開始されると述べた。さらに、ロシアはこの措置に対して対抗する計画があると述べた。また、同大臣は、12月27日、メディアのインタビューで、米国の制裁の狙いについて、欧州のエネルギー安全保障に対する懸念ではなく、米国のLNGを欧州市場で推し進めることであり、これはエネルギー分野での不公平な競争と政治化の明白な事例である、と米国の対応を批判した。
- Nord Stream 2プロジェクトは、デンマークからのパイプライン敷設許可を受け、11月末から同区域で最後の海底パイプライン敷設作業をしているところだった。
2) EU
EUが対露経済制裁を6ヶ月延長
- EU理事会は12月19日、2020年1月に期限を迎えるロシアに対する経済制裁について、2020年7月31日まで延長することを決定した。この制裁は、2014年7月31日、ロシアのウクライナとの武力衝突を理由にロシアの企業と個人に対して導入され、幾度も期限を延長されてきたもの。
- 今回、12月9日にパリで開催されたノルマンディーフォーマット(ロシアウクライナ・ドイツ・フランスでウクライナ情勢を協議する形式)が開催されたが、ミンスク合意が完全に履行されていないことから、EU理事会は制裁の延長を決定した。
3) ウクライナ
5年間のガス輸送契約を締結
- GazpromとウクライナのNaftogaz及びGas Transmission System Operator of Ukraineは、12月30日、ウクライナ領土を横断するガスの輸送契約を締結した。合意されたガス輸送量は2020年は年間65BCM、2021年~2024年は年間40BCM、5年間で合計225BCMとなる。これまでのガス輸送契約は2019年12月31日に期限切れを迎えるため、両国は契約延長の交渉を行っていた。
- また、当事者間のすべての未解決の仲裁及び司法請求を中止し、当事者が2009年1月19日付けの供給及び輸送契約に基づくあらゆる将来の請求を放棄することを定めた和解契約を締結した。この和解契約の調印により、Gazpromは、ストックホルム仲裁裁判所の判決に基づき、議定書で指定された期間内にNaftogazに対して29億米ドルを支払った。
- プーチン大統領とゼレンスキー大統領は、12月31日に電話会談を行い、2020年1月1日以降も途切れずにウクライナ経由で欧州へロシアのガスを輸送するための契約の重要性を強調した。また、この結果がその他の二国間問題を解決するための好ましい環境を作ることに留意し、2020年に両国の関係を発展させていくことに合意した。
ノルマンディーフォーマット首脳会合を開催
- ロシアのプーチン大統領、ウクライナのゼレンスキー大統領、ドイツのメルケル首相、フランスのマクロン大統領は、12月9日、ウクライナの紛争について協議するためパリでノルマンディーフォーマット(ロシアウクライナ・ドイツ・フランスでウクライナ情勢を協議する形式)の首脳会談を開催した。この形式での会談は3年ぶりとなる。
- 会談では、ウクライナの紛争を安定させるための即時措置、ミンスク協定を履行するための措置、さらに4ヶ月以内に再度ノルマンディーフォーマットの会合を開催することを合意した。プーチン大統領は会談後の記者会見で、ロシアはすべての問題が解決され、紛争が最終的に終結することを確実にするために、全力を尽くすと述べた。
- また、プーチン大統領は、ゼレンスキー大統領とも二国間の会談を行い、ゼレンスキー大統領が就任して以来、初めての会談となった。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/62275
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2019年12月、原油輸出税はUSD12.4/バレルに引き上げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 12月の石油製品輸出税はUSD27.1/トン、ガソリンについてはUSD49.7/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 12月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,763万トン(約3億4,770万バレル、平均日量1,126万バレル)で、前年同月比1.7%減。2019年の原油、ガス・コンデンセート生産量は56,020万トン(約40億8,946万バレル、平均日量1,125万バレル)で、前年比0.8%の増加となった。
- 12月、原油輸出量は2,183万トン(約1億5,938万バレル)で、前年同月比5.2%減。
(3) 減産合意
ロシアが7万バレルの追加削減をOPEC+で合意
- OPEC+は、12月6日、ウィーンで会合を開き、2018年12月に合意した日量120万バレルの減産について、原油市場価格の押し上げのため、さらに日量50万バレルを追加で減産することで合意した。合意内容は2020年1月から3月まで適用され、3月初旬に再度会合を開き、その後の協力について協議をする予定。今回の合意により、ロシアは、2018年10月の生産量を基準として、さらに日量7万バレルを減産することになり、減産量は合計日量約30万バレルとなる。
- ロシアのNovakエネルギー大臣は、会合後、我々は2020年の第1四半期における需要減少を再均衡させるため、さらなる原油供給削減が適切だと結論付けたと述べた。
- 一方、12月27日、同大臣はメディアに対し、生産削減は無期限のプロセスではない、ロシア企業が市場シェアを維持し、将来のプロジェクトを実行できるように、出口の決定を徐々に行う必要があると述べ、2020年中にも生産制限を終了させる可能性を示した。
(4) 天然ガス生産量
- 12月、天然ガス生産量は672億立方メートル(約2.4TCF)で、前年同月比でほぼ同量。2019年のガス生産量は、7,376億立方メートル(約26.1TCF)で、前年比で1.7%増となった。
(5) 税制・法制
回収困難な資源の探査・開発を促進するための法案に署名
- プーチン大統領は、12月2日、回収困難な資源の探査開発を促進するため、地下資源法の改正法案に署名した。法案は公布の180日後に有効となる。
- 今回の改正では、回収困難な鉱物の探査開発に取り組むため、地質探査及び採掘の技術開発のために、別のタイプの地下資源のライセンスを付与できるようになる。回収困難な鉱物と分類される鉱区については、入札に基づいて、新規鉱区が割り当てられる。また、既存鉱区においては、回収困難な鉱物が存在する認定される場合、その区画を分離して、別のライセンスが付与される。入札により新規鉱区が割り当てられる場合、期間は15年間で、5年間の延長が複数回可能。既存の鉱区から鉱区を分離する場合、期間は7年間で、1度だけ3年間の延長が可能。
- 回収困難な鉱物の定義はロシア政府が別途決めることになっている。
(6) 北極海航路
2035年までの北極海航路インフラ開発計画を承認
- ロシア政府は、12月21日付けで、2035年までの北極海航路インフラ開発計画を承認した。計画は、Novatek、Gazprom Neft、Norilsk Nickel等の既存のプロジェクトに加えて、将来の北極海航路を通じた輸送貨物の増加を考慮して作成された。
- 承認された計画では、北極海航路で利用される港湾インフラの整備、必要となる船舶建造、航法、気象、救助、情報通信インフラなどの84項目について、担当する政府機関と実施期限が定められた。また、ロシア政府は、財務省、運輸省、産業商務省、経済発展省、Rosatomが同計画の実施に必要な来年度以降の政府予算を作成するよう指示した。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
Taimyrの3鉱区を61億ルーブルで落札
- Rosneftは、12月12日、クラスノヤルスク北部、TaimyrのDolgano-Nenets市に位置するMezeninskoye鉱区、Severo-Dzhangodskoye鉱区、Yangodskoye鉱区の3つの鉱区をオークションによって取得したと発表した。獲得した鉱区の総面積は6,400平方キロメートルとなる。同社は、これらの鉱区の資源を、原油1億7,700万トンと、天然ガス448BCMと推定している。
- 報道によると、オークションは2,000万ルーブルから開始されたが、他にも応札する企業がいたため、Rosneftは価格を61億ルーブルまで引き上げて落札した。
North Komsomolskoye鉱区の開発を決定
- Rosneftは、12月23日、North Komsomolskoye鉱区の開発の第一段階を開始すると発表した。North Komsomolskoyeプロジェクトは、2013年にRosneftとEquinorが合意した戦略的協力協定の一部で、ライセンスを保有する合弁会社のSevKomNeftegaz社は、Rosneftが66.67%、Equinorが33.33%を保有している。
- 同鉱区はヤマロネネツ自治管区に位置し、鉱区の面積は約1,369平方キロメートル。2019年1月1日時点での可採埋蔵量(А+В1+В2)は原油2億100万トン、コンデンセート400万トン、天然ガス168BCMとされる。Equinorによると、第一段階での総回収可能量は、原油2億5,000万バレル(約3,380万トン)及び天然ガス23BCM。
- 第一段階では、今後数年間をかけ、石油及びガスの処理と輸送施設、電力施設、及び井戸の掘削を含む、インフラの建設を想定している。

出典:https://www.equinor.com/en/news/2019-12-investment-decision-north-komsomolskoye.html
(2) Gazprom
Kruzenshternskoye鉱床の埋蔵量が2兆立方メートルに
- Gazpromは、2019年12月27日、ヤマロネネツ自治管区に位置するKruzenshternskoye鉱床のガスの可採埋蔵量(C1+C2)が、当初の1兆6,400億立方メートルから22%増加し、2兆立方メートルとなったと発表した。
- 鉱床は一部がYamal半島の陸上だが、ほとんどがKara海に位置する。Kruzenshternskoye鉱床はBovanenkovskoye、Kharasaveyskoyeとともに、Bovanenkovo生産地帯を形成していて、GazpromのYamal半島のガス生産の中心となっている。
- また、報道によると、Gazpromは同地域で約150億ドルのガス化学工場の建設を計画している。すでに海外のパートナー候補と議論しており、サウジアラビアのSBICやアゼルバイジャンのSOCARが候補に挙がっているとみられている。

出典:https://www.gazprom.com/press/news/2019/december/article497130/
Amurガス処理プラントで114億ユーロのプロジェクトファイナンス契約を締結
- Gazpromは、12月24日、Amurガス処理プラントのプロジェクトファイナンス契約を締結したと発表した。借入総額は114億ユーロ。この取引規模はGazpromで過去最大となり、欧州においてもここ数年で最大のものとなる。
- 資金は、ヨーロッパ、アジア、ロシアの22の銀行から提供され、Gazprom Pererabotka Blagoveshchensk社が借り手となる。借入先の内訳は、欧州と日本の14の銀行が46.6億ユーロ(うち、36.6憶ユーロは各国貿易保険機関が17年間の付保)、中国の3銀行が34億ユーロ、ロシアの5銀行が10.8億ユーロと1,700億ルーブルを供給する。
- Amurガス処理プラントは年間42BCMの処理能力で、世界最大のガスプラントの一つとなる。同プラントは合計6ラインで設計されており、現在、54%が完成している。2021年には2ラインの試運転を行い、2025年の完全稼働に向けて、順次生産規模を拡大する予定。
(3) Gazprom Neft
Chayandinskoyeでの生産を開始
- Gazprom Neftは、12月4日、子会社のGazpromneft-Zapolyaryeがサハ共和国に位置するChayandinskoyeの商業用原油の出荷を開始した。 同社によると、最初の生産量は一日当たり150トン以上で、将来的には、原油換算で年間300万トンの生産を計画している。
- 現在稼働中の井戸は6つあり、抽出された炭化水素は中央処理施設に送られて処理されたあと、Gazprom Dobycha Noyabrskの統合ガス処理施設に輸送され、そこでコンデンセートと混合され、東シベリア太平洋(ESPO)パイプラインに送られる。
- Gazpromneft-Zapolyaryeは2021年末までに自社の圧力パイプラインの建設を完了し、同社は油田で生産された原油をTransneftのパイプラインネットワークに直接供給することができるようになる。また、生産は2022年までに拡張近代化することが計画されている。
- Gazprom Neftによると、同鉱床の原油は重く、粘性が高く、硫黄含有量が多い。埋蔵量は2億6,300万トンと推定されている。
新規取得したKhambateyskyの生産は2026年に開始予定
- Gazprom Neftは、12月5日、Khambateiskyの探査生産ライセンスを獲得したと発表した。同国はヤマロネネツ自治管区のYamalsky地区にあり、面積は340平方キロメートル、ライセンスは30年間有効。
- ライセンスにはKhambateiskoye鉱区が含まれており、同鉱区は連邦的意義を有する地下資源鉱区に指定されていて、ロシア政府が50%以上を保有する企業のみが保有することができる。同鉱区は、可採埋蔵量は天然ガス34BCM、ガスコンデンセート260万トンとされている。鉱区はOb湾に広がっているが、報道によると、同地域のオフショア区域では漁業の重要水域となっているため、掘削は陸上のみに制限されている。
- 同鉱区は、Gazprom Neftが保有するNovoportovskoye鉱区を核とするYamalクラスターの一部として開発されることが計画されている。Khambateiskoye鉱区での調査、生産計画の調整は2022年までに行われる計画で、同鉱区での生産は2026年に開始される予定。
(4) Novatek
Arctic LNG 1がBukharinskiyの探査・生産ライセンスを取得
- Novatekは、12月27日、子会社のArctic LNG 1社が、Bukharinskiyの探査生産ライセンスをオークションで取得したと発表した。同ライセンス地区はGydan半島に位置し、一部がヤマロネネツ自治管区のOb湾及びTaz湾の浅海に位置する。ライセンス期間は27年間で、落札価格は23億4,700万ルーブル。
- 報道によると、同オークションの参加には、天然ガス液化施設にガスを供給することが義務となっているYamal半島またはGydan半島に位置するライセンスを既に保有していることが条件となっていた。この条件を満たすのはNovatekの子会社しかおらず、Arctic LNG 1社及びNovatek- Yurkharovneftegas社のみがオークションに参加した。
- 同ライセンス地区は、Novatekが保有するGydan半島のSoletsko-KhanaveyskoyeとTrekhbugorniyに隣接しており、Utrenniy天然ガス液化ターミナルを利用した次のLNGプロジェクトの資源基盤を増加することができる。
- 同ライセンス地区では、天然ガス119BCM及び液体炭化水素7,400万トン、原油換算で84億バレル相当の炭化水素資源が賦存すると推定されている。
East-Ladertoyskiy及びSouth-Yamburgskiyのライセンスを取得
- Novatekは、12月17日、子会社のNOVATEK-Yurkharovneftegas社がEast-Ladertoyskiy及びSouth-Yamburgskiyの2つの探査生産ライセンスをオークションで取得したと発表した。
- East-Ladertoyskiyは、ヤマロネネツ自治管区のGydan半島に位置する。同地区は、天然ガス184BCM及び駅探炭化水素3,200万トン、原油換算で15億バレル相当の炭化水素資源が賦存すると推定される。ライセンス期間は25年で、同社が8,100万ルーブルで落札した。同地区は、Novatekが既に保有するGydan半島のLadertoyskiy、Nyavuyahskiy、West-Solpatinskiy、Central-Nadoyakhskiyと隣接しており、同地区に同社の資源基盤を強化することが期待されている。
- South-Yamburgskiyはヤマロネネツ自治管区のNadym地区に位置し、Novatekが50%、Gazprom Neftが50%を所有する合弁会社Nortgasgaが保有するNorth-Urengoyskoye鉱区に隣接している。同地区は、天然ガス560BCM及び液体炭化水素1億2,600万トン、原油換算で43億バレル相当の炭化水素資源が賦存すると推定される。ライセンス期間は25年で、同社が10億6,600万ルーブルで落札した。
North-Russkoye鉱区でパイロット生産を開始
- Novatekは、12月19日、子会社のNOVATEK-TarkosaleneftegasがNorth‐Russkoye鉱区でパイロット生産を開始したと発表した。推定年間生産能力は天然ガス5.7BCM及びガスコンデンセート70万トンとされている。同鉱区はヤマロネネツ自治管区のTazovskiy地区に位置し、埋蔵量は、2018年末時点で、天然ガス104BCM、液体炭化水素650万トンとされている。
- ガス輸送会社のGazprom Transgaz Surgut社によると、同鉱区で生産されたガスは、Zapolyarnoye-Urengoiパイプラインを通じて、ロシアの統合ガス供給システムに供給される。ガス輸送は1日あたり350万立方メートルから開始され、2020年第2四半期には、1日あたり2,000万立方メートルに拡大する。
- North-Russkoye鉱区は、North-Russkiy地区での最初の生産となり、Novatekによると、同地区のDorogovskoye鉱区、East-Tazovskoye鉱区、Kharbeyskoye鉱区についても、2020年、2021年に順次生産を開始し、生産能力は合計で年間13BCMになる。これらの鉱区は互いに隣接しており、ガス処理や輸送のインフラの費用を最適化することができるとされる。
4. 東シベリア・極東・サハリン情勢
(1) 東シベリア
Igor Kobzev氏がイルクーツク州知事代行に就任
- ロシア大統領府は、12月12日、プーチン大統領が大統領令に署名し、民間防衛問題非常事態・自然災害復旧省のIgor Kobzev副大臣をイルクーツク州の知事代行に任命したと発表した。イルクーツク州の前知事のSergey Levchenko氏は自ら辞職を申し出、12月12日付で受理された。
- Levchenko前知事の辞任理由は明確にされていないが、2019年6月、7月にイルクーツク州で起きた洪水への不手際が要因ではないかと報道されている。プーチン大統領は、12月19日の年次記者会見で辞任の受理理由について記者に問われた際、Levchenko氏が共産党の代表であったことは無関係だとし、イルクーツクには多くの問題が多くあり、洪水対応も不十分だったことを指摘した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/62312
5. 新規LNG・P/L事業
(1) Yamal LNG
15隻全てのArc 7砕氷船が利用可能に
- Yamal LNGからArc 7クラスの砕氷船6隻の建造を請け負っていたTeekay社は、12月5日、6隻目となる砕氷船Yakov Gakkelを納入したと発表した。これにより、Yamal LNGプロジェクトが発注したArc 7クラスの砕氷船15隻は全て利用可能となった。
- 報道によると、Yakov Gakkelは354番目のLNGカーゴとして、LNGを積んでサベッタ港から出発した。

写真出典:https://www.teekay.com/blog/2019/12/05/delivery-of-yakov-gakkel-the-last-arc7-lng-carrier-newbuilding/
(2) 「シベリアの力」P/L
シベリアの力パイプラインの運用開始式典を実施
- プーチン大統領と習近平国家主席は、12月2日、シベリアの力パイプラインの運用開始式典のため、ソチ、北京、各地のガス圧縮基地を中継で繋いだ。シベリアの力パイプラインは、ロシアから中国に繋がる初めてのガスパイプラインとなる。
- 2014年5月にGazpromは中国のCNPCの間で30年のガス売買契約を締結し、将来的に年間38BCMのガスを供給することで合意し、5年間をかけて約2,200キロメートルのパイプラインが建設された。パイプラインのガスは、まずサハ共和国最大のChayandinskoye鉱区から供給される。また、もう一つのガス供給源であるKovyktinskoye鉱区が開発中であり、2022年後半には、Kovyktinskoye鉱区からChayandinskoyeまでのパイプラインも敷設され、同鉱区からの供給が開始される見込み。ガス輸送は徐々に増加することになり、2020年は5BCM、2021年に10BCM、2020年に15BCMを予定している。
- プーチン大統領は式典で、同パイプラインの完成は、世界のエネルギー市場だけでなく、ロシアと中国にとって、重要で真に歴史的な出来事であると述べ、エンジニア、建設者、全てのGazprom、CNPC、委託会社の職員に対し、スケジュールを前倒しして完成させた高い専門性と素晴らしい仕事に、心から感謝すると述べた。
- 習近平国家主席は、パイプラインは2国間エネルギー協力の画期的なプロジェクトであり、両国間の深い統合と相互に有益な強力な例となる、と述べ、パイプラインの管理と運用について、安全性と信頼性を第一に置くこと、環境へは慮すること、社会的経済効果を促進すること、友情を構築することを希望すると伝えた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/62163

出典:https://www.gazprom.com/press/news/2019/december/article493743/
(3) Nord Stream 2
米国の制裁により敷設作業を中断
- 米国で12月20日に署名された2020年の国防授権法案でNord Stream 2が制裁対象になったことを受け、Nord Stream 2の海底パイプライン敷設を行っていたAllseas社は、12月21日、敷設作業を中断したと発表した。Nord Stream 2 AG社によると、パイプラインの敷設は2,460キロメートル中の2,300キロメートル、約93.5%を終えており、残り160キロメートルの作業が残っている。
- メドベージェフ首相は、12月23日、制裁の影響で、Nord Stream 2の完成までに少し時間が必要になるが、Gazpromはパイプラインを完成する手段を有していると語った。報道によると、GazpromはNord Stream 2のパイプラインを敷設できる船舶を自社で保有している。Novakエネルギー大臣は、12月26日、もしもAllseas社がパイプラインの敷設を完了できない場合、ロシアが自らパイプラインの建設を完了できると語り、これにはいくつかの追加の組織的な作業が必要になるが、数ヶ月以内に実施することができると加えた。
以上
(この報告は2020年1月27日時点のものです)
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