ページ番号1008740 更新日 令和2年4月28日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
4月22日の憲法改正国民投票日を延期
- プーチン大統領は、3月25日、4月22日に予定されていた憲法改正の承認に関する国民投票日を延期することを決めた。プーチン大統領は、3月17日、大統領令に署名し、4月22日に国民投票を実施することとしていたが、新型コロナウイルスの感染が広がる中、市民への健康リスクを回避するため、投票日の延期を決定した。延期後の投票日がいつになるかは定められていない。
- また、プーチン大統領は、国民投票日の延期を伝えたテレビ演説で、3月28日から4月5日までの1週間を非稼働日とし、生活に必要は組織以外を休業させて新型コロナウイルス拡大を止めるために自宅待機をするよう国民に呼びかけた。同時に、失業手当の引き上げや、中小企業に対する財政支援など、新型コロナウイルスによる影響への支援策も発表した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/63061
金融
中央銀行は年間GDP成長率はプラスを維持と予測
- ロシア中央銀行のNabiullina総裁は、3月20日、会見でロシアの経済成長率は、第2四半期でGDP成長は鈍化し、第1四半期を下回るものの、年間の成長率はプラスになる可能性が高いと述べた。(ジョンホプキンス大学のデータによると、ロシアでは3月20日時点では新たに感染者が54名見つかり、累計253人の感染が確認され、感染拡大のペースが速まっているものの、感染が広まっている一部の欧州諸国よりも感染者数は少なく抑えられているという状況であった。)
- 同日、中央銀行は新型コロナウイルスの影響を考慮して、個人や中小企業を支援する措置も発表した。この支援策には、個人に対しては、2020年9月30日まで融資返済の遅延に基づく担保を回収しないこと、個人間送金手数料の上限を設定することが含まれ、中小企業に対しては、一部融資の金利に関して中央銀行金利相当を6%から4%に引き下げることなどが含まれる。
- また、中央銀行は同日の理事会で主要金利を6%で維持することを決めた。一方、中央銀行は、ルーブルの弱体化は一時的なインフレ要因であると声明で述べ、2月から3月にかけてロシア銀行の基本的な予測シナリオとは大きく異なる新型コロナウイルスの蔓延と原油価格の急激な下落に起因する外部要因による事象が発生したとし、年間インフレ率は現在の目標レベルを超える可能性があると認めた。しかし、ロシア政府と中央銀行の措置が財政を安定させ、経済を支えると付け加え、2021年にはインフレ率が4%に戻るとの見通しを示した。
(2) 対外関係
1) 米国
トランプ大統領との電話会談
- プーチン大統領は、3月30日、米国のトランプ大統領と電話による会談を行った。両大統領は、世界での新型コロナウイルスの蔓延に深刻な懸念を表明し、この脅威に対抗するためにロシアと米国で取られた措置について情報交換を行った。また、両国間のより緊密な協力の可能性が議論された。
- さらに、両大統領は世界の石油市場の現状についても意見交換を行い、両国のエネルギー大臣を通じて協議をすることについて合意した。
ロシアの石油企業2社の制裁を解除
- 米国財務省は、3月2日、ロシア企業2社への制裁を解除すると発表した。対象となるのは、Independent Petroleum Companyとその子会社のAO NNK-Primornefteproductの2社。
- 同2社は、2017年6月1日に、北朝鮮に100万USD超の石油製品を輸出したとして、米国の制裁リストに加えられていた。米国財務省は今般、同2社が全ての北朝鮮への輸出を停止し、北朝鮮に利益をもたらす活動に従事しないと確認できたことから、制裁の解除を決定した。
2) サウジアラビア
Saudi AramcoのNovomet買収を延期
- 報道によると、3月16日、ロシア直接投資基金(RDIF)は、Saudi Aramcoのコンソーシアムがロシアの石油生産設備製造企業Novomet社の株式30.76%の買収を延期したと発表した。RDIFは、マクロ経済情勢の変化のためとしている。
- これまで、2019年10月にプーチン大統領がサウジアラビアを訪問した際に拘束力のある文書に署名し、11月にはロシアの外国投資委員会の承認を得られていた。契約条件は、サウジアラビア側が50億ルーブルでNovomet社の20.5%を取得し、RDIFは25億ルーブルで10.2%を取得することとなっていた。この取引に関連して、Novomet社の30.76%を保有しているRusnano社が株式を売却することが想定されており、同社の取締役会ですでに承認されていた。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2020年3月、原油輸出税はUSD9.2/バレルに引き下げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 3月の石油製品輸出税はUSD20/トン、ガソリンについてはUSD36.7/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 3月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,776万トン(約3億4,865万バレル、平均日量1,129万バレル)で、前年同月比0.1%減。
- 3月、原油輸出量は2,144万トン(約1億5,650万バレル)で、前年同月比6.4%増。
(3) 減産合意
OPEC+の減産合意は2020年3月までで終了
- 3月6日、OPEC+の減産合意に関する閣僚会合がウィーンで開催されたが、減産について合意に至らなかった。このため、2016年末から続いてきたOPEC+での減産は、現在の合意期限である3月末で、減産義務がなくなることになる。サウジアラビアは交渉の中で、現在の減産量から更に150万バレル/日の追加減産を主張していたが、ロシアは新型コロナウイルスの影響を向こう数か月見極めるべく現在の交渉時点での減産量の継続を主張したため、合意に至らなかった。
- Novak大臣は、3月10日のテレビのインタビューで、減産が延長されなかったことは、OPEC+の協力の終了を意味するものではなく、必要に応じて、生産量の削減、増加を含む様々な手段があり、新しい合意をすることができると述べた。また、ロシアは世界で最も低い石油生産コストを持っていて、世界市場で競争力があると主張し、ロシアの石油企業は短期的に20万~30万バレル/日を増産することができ、近い将来には50万バレル/日の増産が可能との考えを示した。
- なお、3月の生産量は、ロシアは1,129万バレル/日、サウジアラビアは約970万バレル/日とされている。報道によると、3月12日、サウジアラビアはSaudi Aramcoに4月からの持続的最大生産能力を1,200万バレル/日から1,300万バレル/日に引き上げるように指示し、さらに、Saudi Aramcoはロシア原油の買い手である欧州の石油精製企業への販売拡大の交渉をしている。
(4) 天然ガス生産量
- 3月、天然ガス生産量は594億立方メートル(約2.1TCF)で、前年同月比で12.3%減。
(5) 税制・法制
Priobskoyeの税控除は現在の油価では適用されない
- 報道によると、財務省はPriobskoye鉱区の税控除について、Rosneftに年間465億ルーブル、Gazprom Neftに年間135億ルーブル、合計年間600億ルーブルとし、税控除はウラル原油価格が連邦政府の予算上の基準価格である42.4ドル/バレルを上回った場合にのみ適用する方針とした。控除は最大10年間継続される。
- 財務省は以前、控除額を原油価格と連動させ、原油価格が42.4ドル/バレルを超えた場合に控除額を徐々に引き上げ、65ドル/バレルを超えた場合に控除額が最大の600億ルーブルとなる案を提示していたが、原油価格と連動する案を撤回し、財務省が譲歩した形となった。一方、控除が受けられる生産量の義務は設定する予定。
- しかし、3月の平均ウラル原油価格は29.17ドル/バレルで、42.4ドル/バレルを下回っており、税控除は受けられない水準に落ち込んでいる。財務省のSazanov次官は、3月23日、2週間以内にこの案を実行することを望んでいると述べたが、3月末時点で、まだ法案は政府に提出されていない。
プーチン大統領が北極圏の税制優遇法案に署名
- プーチン大統領は、3月18日、北極圏での石油ガスプロジェクトの税金を優遇するための税法改正法案に署名をした。当該法案は極東・北極圏発展省によって、北極圏投資支援パッケージの1つとして起草され、北極圏地域での炭化水素埋蔵量の調査、探査、開発プロジェクトを促進することを目的とし、北極圏で進められているRosneftの石油開発プロジェクトやNovatekのガス開発LNG生産プロジェクトなどが加速することが期待されている。
- この税制改正法では、商業生産開始から15年間、鉱物抽出税(MET)を減税(石油は基準の5%、LNG生産をするガスは基準の1%、その他のガスは基準の4.5%)する対象として、2020年1月1日以降に商業生産を開始する鉱区面積の50%以上が白海、ペチョラ海、オホーツク海、バレンツ海南部(北緯72度より南)に位置する鉱区が追加される。また、新たな石油開発地域を作るため、北緯70度以北のクラスノヤルスク地方、サハ共和国、チュクチ自治管区に位置する鉱区ついては、生産開始から12年間免税し、13年目から17年目まで課税を段階的に引き上げる。
- 他方、LNG生産、ガス化学に利用されるガス生産プロジェクトについても、アルハンゲリスク州、ネネツ自治管区、コミ共和国、ヤマロネネツ自治管区、クラスノヤルスク地方、サハ共和国、チュクチ自治管区において、METを12年間、または生産量250BCMに達するまで免除する。
対象 | 石油 | 天然ガス | 期間 | 備考 |
---|---|---|---|---|
面積が完全にアゾフ海に位置する、または50%以上がバルト海に位置する新たな沖合鉱区(注1) | METを30%まで減税 | METを30%まで減税 | 商業生産開始から5年 | |
鉱区面積の50%以上が黒海(水深100m以内)、日本海、カスピ海(ロシア部分)に位置する新たな沖合鉱区(注1) | METを15%まで減税 | METを15%まで減税 | 商業生産開始から7年 | 今回の改正では、2020年1月1日以降に商業生産開始した白海、ペチョラ海、オホーツク海(北緯55より南)を除外。 |
鉱区面積の50%以上が黒海(水深100m超過)に位置する新たな沖合鉱区(注1) | METを10%まで減税 | METを1.3%まで減税 | 商業生産開始から10年 | 今回の改正では、2020年1月1日以降に商業生産開始したオホーツク海(北緯55以北)、バレンツ海(北緯72度より南)を除外。 |
鉱区面積の50%以上がカラ海、バレンツ海北部(北緯72度以北)、ラプテフ海、東シベリア海、チュクチ海、ベーリング海に位置する新たな沖合鉱区(注1)、及び2020年1月1日以降に商業生産を開始する鉱区面積の50%以上が白海、ペチョラ海、オホーツク海、バレンツ海南部(北緯72度より南)に位置する沖合鉱区 | METを5%まで減税 | METを1%まで減税LNG輸出資格がない場合は4.5%) | 商業生産開始から15年 | 今回の改正では、2020年1月1日以降に商業生産開始した白海、ペチョラ海、オホーツク海、バレンツ海南部(北緯72度より南)の沖合鉱区を追加。 |
鉱区の一部または全部がヤマロ・ネネツ自治管区に位置する鉱区 | - | MET0%(LNG生産のために利用する天然ガスの場合) | 最初のLNG販売から12年間、または累計250BCM生産するまで。 | 今回の改正では、免税の開始を天然ガスの最初の利用から、LNGの最初の販売に変更。 |
鉱区がアルハンゲリスク州、ネネツ自治管区、コミ共和国、ヤマロ・ネネツ自治管区、クラスノヤルスク地方、サハ共和国、チュクチ自治管区の境界の内側に完全に位置する鉱区 | - | MET0%(LNG生産または石油化学製品の原材料生産のために利用する天然ガスの場合(注2) | 最初のLNG販売から12年間、または累計250BCM生産するまで。 | 新規。 |
鉱区の一部または全部がヤマロ・ネネツ自治管区のヤマルまたはギダン半島に位置する鉱区 | MET0%(LNG生産のために利用する天然ガスに随伴するコンデンセートの場合) | - | LNGの最初の出荷から12年間、または累計2,000万トン生産するまで。 | 今回の改正では、免税の開始をLNG生産のために利用する天然ガスに随伴するコンデンセートの最初の利用から、LNGの最初の販売に変更。 |
鉱区がアルハンゲリスク州、ネネツ自治管区、コミ共和国、ヤマロ・ネネツ自治管区、クラスノヤルスク地方、サハ共和国、チュクチ自治管区の境界の内側に完全に位置する鉱区 | MET0%(LNG生産または石油化学製品の原材料生産のために利用する天然ガスに随伴するコンデンセートの場合(注2) | - | LNGの最初の出荷から12年間、または累計2,000万トン生産するまで。 | 新規。 |
クラスノヤルスク地方、サハ共和国、チュクチ自治管区内で、一部または全部が北緯70度以北に位置する鉱区(注3) | 12年間免税・13年目から段階的に引き上げ | - | 埋蔵量減退が1%を超えてから12年間METを免除し、13年目から17年目まで課税を段階的に引き上げ。 | 新規。課税される場合は超過利潤税となる。 |
クラスノヤルスク地方で、北緯67度以北、北緯69度以南に一部または全部が位置する鉱区 | 鉱区取得や周辺インフラ建設等のコスト分を税控除 | - | 10年間 | 新規。税控除は原油価格等を考慮して上限が設定される(原油価格がロシア政府が設定する基礎原油価格下回った場合は税控除は受けられない)。 |
注1 2016年1月1日以降に商業生産を開始した鉱区
注2 2022年1月1日以降に開始する新たな生産容量に限る
注3 埋蔵量減退が2019年1月1日時点で0.1%以下、または2019年1月1日以降に埋蔵量が登録された鉱区に限る
プーチン大統領が2035年まで北極圏の基本国家政策に関する文書に署名
- プーチン大統領は、3月5日、ロシアにおける2035年まで北極圏の基本国家政策に関する法令に署名した。この北極圏の基本国家政策では、ロシアの北極圏における主要な国家的優先事項を規定し、北極圏の領土と主権の保全、世界の領土としての北極圏の保護、相互に有益なパートナーシップ、住民の高水準な生活と福祉の確保、経済成長を加速するための戦略的資源基盤の開発と利用、競争力のある輸送手段としての北極海航路の開発、環境保護、先住民の伝統的生活様式の保護などが含まれる。また、北極圏の国家安全保障を評価し、国家安全保障に対する主な脅威と課題を規定している。
- また、資源開発に関しては、国家及び民間投資により炭化水素個体鉱物の地質調査を増加させ、回収困難な炭化水素埋蔵量の開発、石油とガスの抽出率の向上、石油精製、LNGとガス化学製品の生産を促進する方向性が定められている。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
ベネズエラ事業をロシア国営企業に譲渡
- Rosneftは、3月28日、ベネズエラに保有する資産(5つの上流プロジェクト、ベネズエラの油田関連サービス、マーケティングや石油取引事業)をすべてロシア政府が100%保有する企業に売却することに合意し、ベネズエラにおける事業から撤退すると発表した。事業の売却先は公表されていない。また、Rosneftは、この取引の対価として自社株9.6%を得ると述べている。
- Rosneftの広報担当は、株主の利益に基づいてベネズエラのすべての資産を売却することを決定したとし、また、関連子会社への制裁解除への期待を示した。米国財務省は、ベネズエラとの原油取引に関与したとして、今年2月18日にRosneft Trading、3月12日にTNK Trading Internationalへ制裁を課すことを発表していた。
- なお、報道によると、この同日、Roszarubezhneftという石油石油ガスの生産・輸送に従事する国営企業が設立されたことが法人データベースで確認されている。この会社の資本金が3,227億ルーブルで、Rosneft株9.6%の市場価値と近いことから、Rosneftベネズエラ事業の譲渡先との関係があるのではないかとの意見もある。
役員候補にOreshkin大統領補佐官とLooney BP社長
- 3月5日のRosneft取締役会資料によると、Rosneftの新たな役員としてOreshkin大統領補佐官と、Looney BP社長が候補に含まれている。一方、2015年からRosneftの役員を務めていたBelousov第一副首相、BPでブラジル、ウルグアイ、ベネズエラ、コロンビアの地域代表等を務めていたQuintero氏は、候補から外れた。その他の9名の現行役員は取締役の候補に含まれている。取締役の決定は、次の定時株主総会において行われる見通しである。
(2) Gazprom
プーチン大統領とMiller社長が面談
- Miller社長は、3月27日、プーチン大統領と面談し、2019年の成果と2020年の計画について説明した。
- Miller社長によると、2019年の生産量は、500.1BCMで、199.3BCMを輸出し、欧州市場でのシェアは35.6%を占めている。輸出量は2018年の201.8BCMからわずかに減少した。現在の市場については穏やかな落ち込みがあるものの、第3四半期第4四半期については当初計画通りの需要があるとみており、楽観的な見方を示した。
- また、同社長は、2020年の投資計画は合計1兆80億ルーブルを予定していて、EBITDA有利子負債倍率は1.3と、優れた指標であると述べた。この投資により、1,942キロメートルのパイプラインを建設し、114の井戸で生産を開始し、合計2,750万立方メートルの能力となる3ヶ所のガス処理施設の稼働を開始させる予定。また、地下ガス貯蔵施設の容量も1億8,000万立方メートル拡張する。
- さらに、同社長はモンゴルを経由して中国にガスを輸送するシベリアの力2の実現可能性調査について、年間最大50BCMとなると報告した。プーチン大統領は、同プロジェクトのフィージビリティ調査と設計を開始することに同意した。

出典:https://www.gazprom.com/press/news/2020/march/article502475/
Yamalでガス化学プラント建設を検討
- 報道によると、GazpromはYamal半島で投資額141億ドルのガス化学プラントの建設を検討している。同プロジェクトについては、2019年末時点では、サウジアラビアのSaudi Basic Industries Corporation(SABIC)、アゼルバイジャンのSOCARとの協力が議論されていたとされる。
- プロジェクトは、Yamal半島のBovanenkovskoye鉱区、Kharasaveiskoye鉱区、Kruzenshternskoye鉱区を含むBovanenkovskyクラスターの資源基盤を利用する。また、プロジェクトには2つのプラント建設が含まれており、一方は40BCMのガス処理施設で、投資額は43億ドルと見積もられている。もう一方は、210万トンのポリエチレンのガス化学施設で、投資額は98億ドルと見積もられている。投資額のうち、99億ドルは借入れによる資金調達で、残りは出資者から調達される計画。
- 3月2日時点の報道では、政府関係者は、本プロジェクトの投資決定はされていないものの、計画は詳細に検討されており、実現の可能性は高いとコメントしている。
OMVへのUrengoyskoye鉱区譲渡交渉を延長
- GazpromのMiller社長とオーストリアのOMV社のSeele社長は、3月6日、サンクトペテルブルクで面談し、Gazpromが保有するAchimov層のUrengoyskoye鉱区の4A、5Aブロックの権益24.98%をOMVに譲渡する基本合意を改定することに合意した。これにより、交渉期限は2022年6月まで延長された。
- GazpromとOMVの基本合意は2018年10月3日に締結されていた。この契約により、Gazpromの同鉱区の権益は50.01%まで減少することになる。残りの25.01%の権益はWintershall社が保有している。面談の中で、両社長は実施中の協力事業についても議論し、特にGazpromからOMVに対する2019年及び2020年1月~2月のガス供給量の増加に留意した。両社は2018年6月に、ロシアからオーストリアのガス供給計画を2040年まで延長し、2019年には14.1BCMを供給している。

出典:https://www.gazprom.com/projects/urengoyskoye/
(3) Gazprom Neft
Priobskoye油田南部の探査・開発権を拡大
- Gazprom Neftは、3月30日、子会社のGazpromneft-Khantosがハンティマンシ自治管区のPriobskoye油田の南部にある地層の開発権を獲得し、埋蔵量を1,040万トン以上増加させたと発表した。
- Gazpromneft-Khantosは、これまで2,700メートルまでの地層を対象としてきたが、より深い地層の炭化水素の探査と生産の権利を得るために、3,300メートルの井戸を掘削して石油を確認し、連邦地下資源利用庁(Rosnedra)がライセンスの条件に変更を加えた。これにより、対象が深度3,200メートルまで拡大し、新たにBazhenov層と呼ばれる地層の開発も可能となり、埋蔵量は石油1,040万トン(内、回収可能埋蔵量250万トン)増加した。
北極圏での生産が増加
- Gazprom Neftは、2019年に北極圏の資産が生産量を伸ばし、同社のポートフォリオの約3割の石油を北極圏内で生産したと発表した。
- Novoportovskoye鉱区では、液体炭化水素の生産量は約8%増加し、770万トンを生産した。2020年には、800万トンまで増加させることを計画している。また、随伴ガスの利用率は2019年に31%増加し、8.95BCMとなり、将来的にはガス処理施設を15BCMまで拡張し、随伴ガス利用率を95%に引き上げる。
- Rosneftと共同で開発しているVostochno-Messoyakhskoye鉱区では、生産量が22%以上増加し、560万TOEに達した。この鉱区では、回収が困難な粘性の高い石油に対する最先端のエンジニアリング技術により、生産性を上げている。同鉱区では2020年にコンプレッサーステーション、47キロメートルのパイプライン、地下随伴ガス貯蔵施設の建設が委託される予定。
- Prirazlomnoye鉱区では安定的な生産が継続されており、2019年は314万トンの石油が生産された。同鉱区では過去6年間に19の井戸が掘削され、1,200万トンが生産されている。2020年にはさらに3つの井戸の掘削が委託される予定。

出典:https://www.gazprom-neft.com/company/exploration-and-production/new-projects_old/new-port/
(4) Novatek
ノルウェーでのLNG積み替えを再開
- 報道によると、3月末、Novatekは、ノルウェーでのLNGの積み替え作業を再開した。Novatekはノルウェーでの積み替えを2018年11月から2019年6月まで利用していたが、米国がノルウェーでの積み替えが欧州のガスの調達先多様化を阻害していると批判していた。
- Novatekはノルウェーでの積み替えに代わり、ロシア国内のムルマンスクでの積み替えを行う計画をしていたが、ロシア政府が新型コロナウイルス対策として、3月18日から外国人の入国を制限する措置をとっており、積み替え作業に必要とされる外国人専門家もロシアの入国ができない状況となった。このためNovatekは、一時的にノルウェーでの積み替えを再開することが安全で合理的な決定だとしている。ロシアから欧州へのLNG輸送を行うにあたり、輸送途中で砕氷タンカーから在来型のタンカーに積み替えることで、LNGの効率的な輸送が可能になる。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Arctic LNG 2
Utrenny LNG基地への投資を610億ルーブルに拡大
- 報道によると、NovatekはArctic LNG2で利用されるUtrenny LNG基地への投資を200億ルーブル追加し、610億ルーブルに引き上げた。同プロジェクトの浚渫等を行うためのロシア政府予算は変更されず、1,030億ルーブルとなっている。また、LNG基地の完成時期は当初予定の2022年から、2024年に後ろ倒しされた。
- 完成時期が変更された理由は、Novatekの今後のプロジェクトのためにLNG生産能力を拡大したためだとされているが、これによるArctic LNG 2プロジェクトの影響はないとされている。

出典:http://www.novatek.ru/common/tool/stat.php?doc=/common/upload/doc/IR_April_2020_Investor_Meetings_M[2].pdf
(2) Nord Stream 2
Gryazovets-Slavyanskayaガスパイプラインの容量を82.4BCMに拡大
- ロシア政府は、3月19日、連邦パイプライン輸送の分野における地域計画を改定し、Nord Stream 2に接続するGryazovets-Slavyanskayaガスパイプラインの容量を55BCMから82.4BCMに変更した。パイプラインは全長867キロメートルとなり、欧州諸国へのガス輸出の増加、Ust Luga工業地帯レニングラード地域のガス消費者への輸送することを目的としている。Gazpromは8月末までに完成させる予定。
- Slavyanskayaコンプレッサー基地は、レニングラード地域に位置し、約1,200キロメートルのNor Stream 2パイプラインを経由してドイツにガスを輸送するために、合計352MWの11個のコンプレッサーを利用してガスを圧縮する。また、同基地は、レニングラード地域のガス配送システム及びUst-Luga工業地区にガスを送る。

出典:https://invest.gazprom.ru/about/projects/gryazovets-ks-slavyanskaya/にJOGMEC加筆
OMVが7億1,200万ユーロを融資実行
- 報道によると、Nord Stream 2へ10%を出資しているオーストリアのOMV社が、Nord Stream 2と9億5000万ユーロの融資契約を締結し、7億1,200万ユーロをすでに融資実行した。同社は、インタビューに対し、プロジェクト会社がプロジェクト実施計画の改訂をしている、OMVはパイプラインの完成を信じている、と語った。Nord Stream 2に10%ずつ出資をしている欧州のパートナー、Shell、OMV、Engie、Uniper、Wintershallの5社は、2019年4月にそれぞれ9億5,000万ユーロを融資することを決めた。残りの費用はGazpromが負担する。
- なお、同プロジェクトにおけるパイプ敷設への船舶サービスの提供については、2019年12月に米国の制裁対象になると発表されたことを受け、パイプラインの敷設を行っていたAllseas社が作業を中止している。Gazpromは自社で保有するパイプライン敷設が可能なAkademik Cherskiyをロシア極東からバルト海に向かわせており、3月末時点で、南アフリカ付近を移動している。
(3) シベリアの力P/L
3月16日から4月1日まで定期メンテナンスのために休止
- Gazpromは、3月16日、2019年12月に運用が開始されたシベリアの力パイプラインを3月からメンテナンスのために、4月1日まで休止すると発表した。GazpromとCNPCは、シベリアの力パイプラインは春と秋に年に2回、設備とシステムの定期メンテナンスを行うことを中国と合意済みだとされている。
- 報道によると、欧州向けのパイプラインの定期メンテナンスは、通常年に1度、需要が下がる夏に実施されることが多く、稼働を開始した3ヶ月後にメンテナンスを行うことは異例だとされる。中国は、2月に新型コロナウイルスの影響に伴う天然ガスの需要の低下のため、輸入継続が困難となった一部LNG売買契約についてフォースマジュールを宣言したとされている。しかし、Gazpromは3月初旬、シベリアの力を通じたガス売買について、中国側からフォースマジュールについて連絡は受けておらず、通常通りにガス輸送されていると報じられていた。
- シベリアの力は、2019年2月に稼働開始し、2019年に3億2,800万立方メートルのガスを輸送し、契約では2020年は年間5BCMを輸送することになっている。また、Take or Pay条項もあり、中国側は契約量の85%以上を買い取るか、買い取れない場合も規定分はペナルティとして支払いを行う必要があるとされる。
以上
(この報告は2020年4月27日時点のものです)
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