ページ番号1008758 更新日 令和2年5月18日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
財務大臣は、国民福祉基金は2024年まで十分な残高があると予測
- Siluanov財務大臣は、4月19日、テレビのインタビューの中で、国民福祉基金は、現在の油価(発言当時は約28ドル/バレル)が継続しても、ロシア連邦政府の歳入不足を補っても2024年まで十分な残高があると述べた。また、現在の支出を考慮すると、年末の国民福祉基金の残高は7兆ルーブルとなると予測している。
- 2020年の予算では、ウラル原油価格が42.4ドル/バレルと想定されているため、この価格を下回る場合には歳入に不足が生じる。国民福祉基金は2020年4月1日時点の残高は、12兆8,558億ルーブル(1,654億ドル)とされているが、4月10日、ロシア政府が国民福祉基金を活用してロシア中央銀行が保有していたズベルバンク株式50%+1株を約2.1兆ルーブルで購入することが発表されている。また、Siluanov大臣は、4月25日、新聞のインタビューで、石油天然ガス以外の歳入の減少を補うため、2020年に1兆ルーブル以上の追加の借り入れが必要になるとの認識を示した。
- 他方、ロシア政府は、4月21日、新型コロナウイルス対応のための追加経済対策パッケージを発表した。経済支援としては、新型コロナウウイルスの蔓延により影響を受けた中小企業等を対象とした付加価値税以外の最大6ヶ月の支払い猶予、社会保険料の最大6ヶ月の支払い猶予、社会保険料の税率引き下げ、従業員給与のための無利子融資、従業員給与の政府一部負担などが実施されている。今後、更なる経済対策を行うとされており、新型コロナウイルス対策関連の追加支出も見込まれる。
金融
中央銀行が政策金利を5.5%に引き下げ
- ロシア中央銀行は、4月24日、政策金利を6%から5.5%に引き下げることを決定した。
- 中央銀行は、3月20日の理事会で主要金利の維持を決定したが、4月24日に開催された理事会では、3月から状況が大きく変化したとして、主要金利の引き下げを決定した。また、今後の状況次第で、次回の理事会においても主要金利の更なる引き下げの可能性があるとしている。
- 中央銀行は、新型コロナウイルスの蔓延により、世界及びロシア国内で重大な制限措置が課され、経済活動に否定的な影響が出ており、これは需要面で持続的なデフレ効果を生み出し、原油価格の下落を含む一時的なインフレ要因の効果を打ち消すと分析している。中央銀行は、金融政策を考慮した2020年のインフレ率は3.8%~4.8%とし、将来的には4%で安定すると予測している。
- また、中央銀行は基本予測シナリオを大幅に修正した。同日に発表された中期予測によると、2020年のロシアのGDPはマイナス4~6%、2021年には2.8~4.8%、2020年に1.5~3.5%の成長率となると予測した。平均ウラル原油価格は2020年に27ドル/バレル、2021年に35ドル/バレル、2022年に45ドル/バレルとしている。
(2) 対外関係
1) 米国・サウジアラビア
プーチン大統領、サルマン国王との電話会談を実施
- ロシアのプーチン大統領は、4月10日、米国のトランプ大統領と、サウジアラビアのサルマン国王と、3国間での電話会談を行った。首脳らは、OPEC+の臨時閣僚会合での交渉や、G20エネルギー大臣のテレビ会議などを考慮に入れ、石油市場の情勢について議論した。また、世界の石油貿易の状況を安定させ、世界経済への原油価格の変動の悪影響を最小限に抑えるための行動を調整していくことを確認した。さらに、同日に、プーチン大統領は、トランプ大統領、サルマン国王とそれぞれ2国間での電話会談も行い、OPEC+の減産協議等について意見交換を行った。
- また、同首脳らはOPEC+での減産合意後の4月12日にも3国間で電話会談を行い、世界市場を安定させ、世界経済全体の持続可能性を確保するための石油生産の段階的自主的制限に関してOPEC+で達した合意を支持した。また、首脳らは引き続き連絡を続けていくことで合意した。
(減産合意の内容については、「4. 石油ガス産業情勢(3)減産合意」に記載。)
2) ベネズエラ
マドゥーロ大統領と電話会談を実施
- プーチン大統領は、4月20日、ベネズエラのマドゥーロ大統領との電話会談を行った。電話会談では、まず新型コロナウイルスへの対策について議論され、マドゥーロ大統領はロシアからの検査システムの供与等の支援について感謝の意を表明した。また、医薬品、食料、機器、技術の供給のため、貿易戦争と制裁のない「緑の回廊」の創設を含む、国際社会が世界的脅威と戦うための協調的措置をとる重要性に留意した。
- 「緑の回廊」については、プーチン大統領が3月26日に開催されたG20のテレビ会議においても、パンデミックの危機の中で、必要な医薬品、食料、機器、技術のサプライチェーンを確保するために貿易戦争と制裁のないモラトリアムを導入することを提唱している。
- また、世界の石油市場の意見交換の中で、OPEC+の枠組みでの減産合意の重要性が強調された。
- 両首脳は、主に貿易と経済の分野におけるロシアとベネズエラの戦略的パートナーシップのさらなる強化についても議論した。ロシアは、全国的な対話に基づいた政治的差異の平和的解決のためのベネズエラの努力を支持し、ベネズエラ問題における破壊的な外部干渉は受け入れられないことが強調された。
3) イラン
ローハニ大統領と電話会談を実施
- プーチン大統領は、4月21日、イランのローハニ大統領と電話会談を行った。
- 両首脳は、新型コロナウイルス感染拡大防止について議論し、ローハニ大統領はロシアがイランに提供した支援に感謝の意を示した。また、保健省間の協力を強化することで合意した。
- また、新型コロナウイルスのパンデミックを阻止するための国際社会の対策を統合していく努力、危機の中で医薬品、機器、技術の円滑な供給のために「緑の回廊」を創設するロシアのイニシアティブ、並びに重要な商品のあらゆる輸出制限のモラトリアムの重要性が強調された。
- さらに、エネルギー、農業、輸送の分野での大規模な共同プロジェクトの実施を含む二国間協力のいくつかの問題についても検討が行われた。
- シリア情勢についての意見交換では、有効性が証明されたアスタナ会合(ロシア,トルコ及びイランが仲介するシリア政府とシリア反体制派を含めた一連の会合)の枠組みの中で、長期的な解決を達成するためのさらなる協力が表明された。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2020年4月、原油輸出税はUSD7.1/バレルに引き下げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 4月の石油製品輸出税はUSD15.6/トン、ガソリンについてはUSD28.6/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 4月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,645万トン(約3億3,909万バレル、平均日量1,135万バレル)で、前年同月比0.1%減。
- 4月、原油輸出量は2,223万トン(約1億6,225万バレル)で、前年同月比0.3%増。
(3) 減産合意
OPEC+で5月から970万バレル/日の減産に合意
- OPEC+は4月12日にテレビ会議形式で開かれた第10回大臣会合で、現在のファンダメンタルズと市場の展望を考慮して、減産することを合意したと発表した。減産量は、2020年5月~6月は970万バレル/日、2020年7月~12月は770万バレル/日、2021年1月~2022年4月は580万バレル/日となる。減産の基準は以前と同様、2018年10月時点の各国の生産量を基準とするが、ロシアとサウジアラビアについては、1,100万バレル/日を基準とする。この合意の延長については、2021年12月に見直すこととされている。また、2020年6月10日に再度テレビ会議を開催し、市場のバランスをとるために、必要に応じて更なる行動を決定することとした。
- OPEC+は4月10日に第9回の大臣会合を開催し、2020年5月~6月に1,000万バレル/日の減産することで、メキシコ以外の参加国で合意されたとし、メキシコの合意を条件としてこの合意が有効となると発表していた。しかし、12日の会合では、当初40万バレル/日だったメキシコの減産を、10万バレル/日とすることで最終的な合意に至った。12日の合意に先立ち、米国のトランプ大統領は、メキシコの減産を一部肩代わりすることを示唆していた。
- 一方、OPEC+以外の国の減産については、具体的な数量が公にされていないが、Novakエネルギー大臣は、4月11日、エネルギー省が発行する雑誌「エネルギー政治」の中で、カナダは100万バレル/日削減し、米国、ノルウェー、アルゼンチン、その他の国も減産する、結果としてOPEC+の1,000万バレル/日に加えOPEC+に含まれない国がさらに500万バレル/日を削減し、5月~6月の減産は合計で1,500万バレル/日となると述べている。
全生産者の比例分配により、ロシアは5月から200万バレル/日を減産
- Novakエネルギー大臣は、4月29日、新聞のインタビューの中で、ロシアはOPEC+の減産合意に基づき、2020年2月を基準として、19%の減産を行うと語った。これは200万バレル/日に相当するとされる。
- 同大臣によると、この削減については、小規模企業や生産分与契約のオペレーターも含め、すべての生産者で比例配分される。同大臣は、市場を均衡させ、危機的状況から早く脱するために全員が同じ負担で、同じ貢献をすることが適切だとしている。
- また、Novak大臣は、ガスコンデンセートについては、以前議論されたように減産の対象に含まれない見解を示している。OPEC+の5月からの各国の減産の分担については、メキシコ以外は一律23%とされている。ロシアについては、1,100万バレル/日の23%となるため、生産上限は約850万バレル/日となるが、この生産量にはガスコンデンセートは含まれない。
(4) 天然ガス生産量
- 4月、天然ガス生産量は551億立方メートル(約1.9TCF)で、前年同月比で14.3%減。
(5) 税制・法制
ガス輸出法改正法にプーチン大統領が署名
- プーチン大統領は、4月24日、ガス輸出法改正法に署名をした。これにより、Novatekが輸出できるLNGの資源基盤が拡大される。
- これまで、ガス輸出法に基づき、Gazpromを除いて、LNG輸出を許可されているのは、2013年1月1日以前に取得した天然ガス液化プラントの建設や生産されたガスを天然ガス液化プラントへ供給することが規定された鉱区に限られる。今回の法改正より、2013年1月1日以降に取得した鉱区のガスについても輸出許可を与える。また、現在LNG輸出権を与えられている企業の別の子会社(直接又は間接的に50%超の議決権を有する)についても、LNGを輸出する権利が与えられる。
- 報道によると、NovatekのMikhelson社長は、2019年11月にプーチン大統領にガス輸出法の改正を要望し、プーチン大統領はエネルギー省に検討を指示していた。
2035年までのエネルギー戦略を策定
- ロシア政府は、4月2日、2035年までのエネルギー戦略を承認した。これまでは、2009年に2030年までのエネルギー戦略が定められていた。
- この戦略においては、(1)石油製品、ガス燃料、電力の効率性やアクセシビリティを向上させ、ロシア国内需要を満たす、(2)ヤマル半島やギダン半島でのLNGクラスターの更なる発展、水素やヘリウムの生産や消費を発展させ、ロシアを水素の生産や輸出のリーダーとなる、(3)東シベリアや極東のガスネットワークの発展、(4)エネルギー企業のイノベーション促進、行政分野へのデジタル技術の導入、スマートメーターや電力ネットワークの管理効率化、などを進めるとしている。
2018年実績 | 2024年目標 | 2035年目標 | ||
---|---|---|---|---|
石油部門 | ||||
原油・ガスコンデンセート生産(百万トン) | 555.9 | 555 - 560 | 490 - 555 | |
ロシア製石油製品による国内需要充足度(%) | 100 | 100 | 100 | |
西シベリアの原油・ガスコンデンセート生産レベルの比率(%) | 1 | 0.99 | 0.9 - 0.95 | |
東シベリア、極東、ロシア領北極圏の原油・ガスコンデンセート生産レベルの比率(%) | 1 | 1.075 | 1.1 - 1.15 | |
天然ガス部門 | ||||
非規制価格による販売ガスの割合(%) | 33 | 35 | 40 | |
LNG生産量(百万トン) | 18,9 | 46 - 65 | 80 - 140 | |
世界におけるガス輸出量順位 | 1 | 2-Jan | 2-Jan | |
東シベリア及び極東のガス生産レベル比率(%) | 1 | 0.99 | 0.9 - 0.95 | |
輸出用ガスパイプラインの計画輸送力(BCM) | 240 | 363 | 405 | |
うち西向け | 240 | 325 | 325 | |
アジア太平洋地域諸国向け | - | 38 | 80 | |
ロシア連邦構成主体ガス化レベル(%) | 68.6 | 74.7 | 82.9 |
単位 | 2018年実績 | 予測 | 2035年における2018年実績に対する割合(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
2024年 | 2035年 | |||||||
最小 | 最大 | 最小 | 最大 | 最小 | 最大 | |||
石油部門 | ||||||||
原油生産 | 百万トン | 555.7 | 556 | 560 | 490 | 555 | 88.2 | 99.9 |
原油輸入 | 百万トン | 0.5 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 0.7 | 140 | 140 |
原油輸出 | 百万トン | 260.6 | 267.2 | 269.2 | 243.7 | 251.9 | 93.5 | 96.7 |
天然ガス部門 | ||||||||
ガス生産 | BCM | 727,6 | 795,1 | 820,6 | 859,7 | 1000,7 | 118,2 | 137,5 |
ガス輸入 | BCM | 220,6 | 243,9 | 250,4 | 255,4 | 300,6 | 115,8 | 136,3 |
パイプラインガス輸出 | BCM | 26,9 | 59,8 | 65,1 | 108 | 189 | 401,5 | 702,6 |
(6) 北極海航路
Zvezdaが原子力砕氷船の建設を受注
- Rosatomは、4月23日、Rosatomの子会社のFSUE AtomflotとZvezda造船所が原子力砕氷船「Leader」の建設に関する契約を締結したと発表した。原子力砕氷船は、2027年に就航する予定。
- FSUE Atomflotによると、原子力砕氷船は出力120MWで、4mの厚さの氷の中でも航行できるため、この砕氷船の利用により北極海航路の東回りルートの安全な定期的な運航を保証し、北極海航路での年間を通じた航海を提供し、商業用高緯度航路の新たな機会を開くとしている。
- この砕氷船のプロジェクトについては、2019年3月の政令によりZvezdaが建造することが決定されており、メドベージェフ前首相は、2020年1月、2020年から2027年にかけて砕氷船建設のために約1,270億ルーブルの予算配分を行う決定をしていた。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/61438
カムチャツカのLNG積み替えターミナルに35億ルーブルを政府が追加拠出
- ロシア政府は、4月12日付の政令で、2020年予算でカムチャツカのLNG積み替えターミナル建設のために追加で35億ルーブルを拠出することを決定した。予算は連邦海洋河川運輸局にあてられる。
- カムチャツカでは、Novatekが北極圏から砕氷船で輸送したLNGを、従来型タンカーに積み替えることでコストを軽減する計画をしており、政府は2019年3月にNovatekの投資計画を承認している。NovatekはカムチャツカのLNG積み替えターミナルの投資額を約700億ルーブルと見積もっている。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
2019年の配当は過去最大に
- Rosneftは、4月23日、取締役会において2019年の下半期の配当を普通株式1株当たり18.07ルーブルを株主総会へ提案するとした。2019年上半期の配当は15.34ルーブルで、通年では33.41ルーブルとなり、これはRosneftの過去最大の配当金額となる。合計3,541億ルーブルとなり、これは同社の国際会計基準の純利益の50%に相当する。Rosneftは6月2日に開催する株主総会で決定する予定であり、配当金は6月15日時点の株主名簿に基づいて支払われる。
- Rosneftは2017年に配当をIFRS純利益の35%から50%に引き上げ、2017年は10.48ルーブルを配当し、2018年の配当は25.91ルーブルに増加したが、2019年はこれをさらに上回る結果となった。Rosneftによると、2019年は前年比で原油価格が6.2%減少したものの、原油の販売量が20.1%増加したため、売上高は5.3%増加した。
- なお、他社の動向としては、Tatneftは、石油需要の大幅な減少を踏まえ、企業の正常な運営に必要な財源を確保するため、普通株式所有者には、2019年の中間配当以降の追加配当は行わない方針を示した。Lukoilについては、配当は減額しないものの、一部の大株主が配当の一部または全部をLukoilの投資プログラムのための基金に寄付をする方針をメディアで語っている。
(2) Gazprom
2020年の統一ガス供給システムの供給量は現状維持
- Gazpromは、4月15日、2020年~2021年の統一ガス供給システムの最大供給能力を現状維持とするとプレスリリースの中で伝えた。GazpromのMiller社長は、3月27日に行われたプーチン大統領との面談の中では、2020年の1兆80億ルーブルの投資計画について、問題なく実行すると伝えていた。
- 統一ガス供給システムの最大供給能力は、年々増加してきており、2019年~2020年の需要期の終わりに8億4,330万立方メートルに達している。同社は、統一ガス供給システムの最大供給能力を将来的に10億立方メートルに拡大することを計画している。
- また、Gazpromは、2020年~2021年の秋季冬季に安定的な運用を確保するため、ロシアの地下貯蔵施設に少なくとも72.322BCM、ベラルーシに1.09BCM、アルメニアに0.091BCMの備蓄を行うこととしている。2019年~2020年の需要期開始までに、Gazpromはロシアの地下貯蔵施設に72.2BCM、ベラルーシに1.09BCM、アルメニアに0.085BCMを備蓄していたため、ほぼ同水準となる。

出典:https://www.gazprom.com/about/production/underground-storage/
(3) Gazprom Neft
ShellがMeretoyakhaneftegazプロジェクトへの参入を中止
- Gazprom Neftは、4月13日、ジョイントベンチャーの交渉を進めていたMeretoyakhaneftegazプロジェクトからShellが撤退することを発表した。Gazprom Neftは、Shellが撤退する理由を、困難な外部環境のためだとしている。Gazprom Neftは、引き続き同プロジェクトを単独で進めていく方針。
- 同プロジェクトには、ヤマロネネツ自治管区のMeretoyakhinskoye、Tazovsky、North Samburg、Zapadno-Yubelieny2鉱区が含まれる。Tazovsky鉱区については、2020年末までに商業生産の開始が予定されている。
- Gazprom Neftは、2019年6月のサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで、Meretoyakhaneftegazの50%をShellに売却することで合意し、必要な許認可を得たのち、2019年末から2020年初頭に契約が成立する予定とされていた。
- なお、Gazprom Neftは、今回のShellの撤退はShellと共同で進めているSalym Petroleum Development社のプロジェクトを含む、現在及び将来の協力には影響しないと述べている。
(4)Novatek
Yamal LNGの第4トレインの開始とOb LNGの最終投資決定を延期
- NovatekのCFOのGyetvay氏は、4月30日、Yamal LNGの第4トレインの運転開始とOb LNGの最終投資決定を延期すると、同社のカンファレンスコールの中で述べた。
- Yamal LNGの第4トレインの運転開始は、当初は2019年末に予定されていたのが2度にわたり延期が発表されており、今年の2月時点で2020年第3四半期に運転開始予定とされていたが、今回の発表では2020年末までとされた。第4トレインについては、Novatek独自の液化技術であるArctic Cascadeを利用することになっている。
- Ob LNGの最終投資決定についても、検討に更に数ヶ月が必要だとし、2022年~2023年に生産を開始するとしていた第1トレインについても2024年に後ろ倒しする可能性に触れた。同プロジェクトの最終投資決定についても2019年末の予定とされていたが、2019年7月に2020年第1四半期に最終投資決定を行うと発表していた。一方、この延期による長期的な目標への影響はないと述べた。
- また、Gyetvay氏は、2020年の投資プログラムを20%削減する可能性があるとも述べた。同社の2020年の設備投資額2,500億ルーブルと計画されているが、投資削減後の額は2,000億ルーブルとなる可能性がある。一方、同氏はLNG生産については削減されないとの見方を示した。Novatekは、2020年の液体炭化水素の生産は2019年と同等と予測しているが、ガス生産を2〜3%増やす計画となっている。
(5) Transneft
Tokarev社長の任期を5年延長することを決定
- TransneftのTokarev社長の5年間の任期は、2020年4月で期限となっていたが、4月20日、政府の任命及び同社の臨時株主総会の決定を経て任期が5年間延長されたことが発表された。同社長は2007年10月から同社の社長に就任している。
- 同社長は、4月20日、新聞のインタビューの中で、任期が延長されたことについて、Transneft全体の仕事に対する国のリーダーシップからの高い評価の結果だと述べた。また、今後の計画について、新型コロナウイルスの流行という前例のない状況の中で、人々の健康と、信頼できるシステムの運用を確実にすることだと述べた。OPECの減産合意については、エネルギー省と石油会社と緊密に協力し、生産計画の変更に関連するコストを最小限に抑える必要があり、仕事の効率を高め、コストを削減する努力を続けていくと述べた。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Yamal LNG
Yamal LNGは2019年に1,840万トンを輸出、7%を東回りで出荷
- Novatekによると、Yamal LNGは2019年に253カーゴ、合計1,840万トンのLNGを輸出し、このうち、17カーゴ、約7%にあたる120万トンを北極海航路の東回りでアジア大洋州市場向けに出荷した。東回り航路の利用は前年に比べて4倍となった。また、日本、韓国、バングラデシュ向けに初めて出荷を行っている。Yamal LNGプロジェクトが発注したArc 7クラスの砕氷船15隻は、2019年12月に15隻全て利用可能となった。
- Yamal LNGで稼働している第3トレインまでの天然ガス液化施設の設計能力は1,650万トンとされているため、2019年の実績はこれを約11%上回る。ガスコンデンセートについては、42カーゴで合計120万トンを出荷した。
(2) Arctic LNG 2
Utrennyターミナルの計画容量を4,320万トンに倍増
- ロシア政府は、4月12日付けの政令で連邦の領土利用計画を変更し、年間2,160万トンとしていたギダン半島の液化天然ガス及びガスコンデンセート用のUtrennyターミナルの容量を4,320万トンとした。同ターミナルは、Arctic LNG 2が生産するLNG1,980万トン(660万トンを3系列)と、160万トン以上のコンデンセートを取扱う予定となっていたが、今後の同地域での生産量増加を見込んで計画が変更された。同港の官民の予算も1,442億ルーブルから1,641億ルーブルに引き上げられ、プロジェクトの期間も2019年~2022年から2019年~2024年に変更されている。
- Novatekは2030年のLNG年間生産量の目標を5,700万トン~7,000万トンとしている。

出典:http://www.novatek.ru/common/upload/doc/IR_April_2020_Investor_Meetings_M.pdf
(3) シベリアの力P/L
KovyktinskoyeとChayandinskoye間のパイプライン建設を第3四半期に開始
- Gazpromは、4月10日、シベリアの力パイプラインの第2フェーズとして、KovyktinskoyeとChayandinskoye間のパイプラインの建設を2020年の第3四半期に開始するとプレスリリースの中で伝えた。現在のシベリアの力パイプラインはChayandinskoyeからBlagoveshchenskを経由して中国にガスを輸出しているが、Chayandinskoyeからイルクーツク州のKovyktinskoyeまでパイプラインを伸ばし、ガス資源基盤を強化する。このパイプラインは約800㎞となる。
- また、Chayandinskoyeでのガス処理施設も拡張を行い、ヘリウムの除去設備については2020年中に稼働開始を予定している。
- Gazpromは、2014年5月に中国のCNPCとの間で30年のガス売買契約を締結し、将来的に年間38BCMのガスを供給することで合意した。シベリアの力パイプラインは2019年末から運用が開始され、2020年は5BCM、2021年に10BCM、2022年に15BCMの輸送を予定している。2022年後半までには、KovyktinskoyeからChayandinskoyeまでのパイプラインが完成し、Kovyktinskoyeからのガス供給が開始される見込み。

出典:https://www.gazprom.com/press/media/2019/308796/
以上
(この報告は2020年5月13日時点のものです)
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