ページ番号1008783 更新日 令和2年6月22日

ウガンダ、ケニアにおける油田開発状況及び各社の動向

レポート属性
レポートID 1008783
作成日 2020-06-22 00:00:00 +0900
更新日 2020-06-22 12:18:10 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業探鉱開発
著者 橋本 知世
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 9
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 ウガンダ
地域2
国2 ケニア
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,ウガンダ,ケニア
2020/06/22 橋本 知世
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概要

  • ウガンダでは2006年に商業規模の石油が発見され、Lake Albert開発プロジェクトがTullow、Total、CNOOCの3社により進められてきた。Tullowによる権益売却に係るキャピタルゲイン税の問題等で進展には時間を要してきた。
  • 2017年にTullowはTotalとCNOOCに権益の一部を売却することで合意した。ウガンダ政府は当該ファームアウトによる収入にキャピタルゲイン税を課税したが、Tullowは課税の対象ではないとして支払を拒否したため、ウガンダ政府はファームアウトを承認しなかった。このためプロジェクトは停滞し2019年8月に当該ファームアウトは期限切れを迎えた。
  • しかし、2020年4月にTotalがTullowのLake Albert開発プロジェクトの全ての権益を買収することで両社は合意した。Totalの発表によれば、当該取引に係る税務上の措置はすでにウガンダ政府と原則的に合意に達している模様である。ウガンダ政府もプロジェクトの進展を望んでおり、今回の合意で待望のFIDに近づいたものと見られる。
  • 一方、ケニアではTullow、Total、Africa Oil(加)によりSouth Lokichar油田開発プロジェクトが進展している。これまでEOPSにより生産された原油がトラック輸送でMombasa港まで運ばれ、2019年8月には初出荷された。しかし、2019年12月から1月下旬にかけて地元住民による抗議行動や悪天候のため陸路の一部区間を通行することができず、トラック輸送を中断せざるを得ない状況が頻発していた。そして、2020年6月2日にトラック輸送の2年間の契約が満了したとしてTullowとそのパートナーはEOPSを停止させた。
  • COVID-19の影響や最近のケニアの税制改正により、2020年5月にはTullowが鉱区のJVを代表してケニア政府にフォースマジュール宣言を発出した。さらに、TullowとTotalが権益売却手続きを進めている。Tullowのケニア資産にCNOOCが関心を持っているとの報道もある。
  • ウガンダではTotalがプレゼンスを高め、待望のFIDへとこぎつけ開発が進むか期待される一方、ケニアではウガンダでのプロジェクトパートナーのCNOOCがプレゼンスを高めるのか、東アフリカでの各社の動きにも注目される。

(Oil News Kenya、Upstream、AfrOil、各社HP他)


1. ウガンダLake Albert プロジェクトのこれまでの経緯

石油ガス事業については、2006~2007年に、同国西部陸上Lake Albert周辺鉱区で商業規模の石油が発見されたものの、開発作業の進展には時間を要している。これまで、Lake AlbertプロジェクトはTullow、Total、CNOOCの3社により進められてきた(図1、表1参照)。

図1:ウガンダ鉱区図
図1:ウガンダ鉱区図
出所:Tullow Oil

表1:プロジェクトの概要
 

Tilenga PJ(EA-1/1A、EA-2)

Kingfisher PJ(旧EA-3A)

確認可採埋蔵量

12億1,900万バレル

2億バレル

プラトー生産量(予定)

約20万b/d

約4万b/d

オペレーター/参画企業

Total/CNOOC、Tullow

CNOOC/Total、Tullow

権益比率

各社33%

各社33%

発見年

2008年、2006年

2006年

FEED

完了

FID(予定)

2020年8月から2022年半ば[1]

生産開始(予定)

FIDから4年後

各種資料からJOGMEC作成      

2004年から始まった探鉱の結果、2008年にはすでに開発対象となる石油資源の存在は確認されていたが、ウガンダの油田開発は、下記に述べるように、Tullowによる権益売却に係るキャピタルゲイン税の問題等で停滞してきた。

2017年1月、Tullowが保有する3鉱区の権益33.33%のうち、21.57%を9億ドルでTotal、CNOOCに等分して売却することで合意した。この時、ウガンダ政府はTullowが得る収入に対しキャピタルゲイン税として3億ドルを課税した。しかし、Tullowは当該ファームアウトによる収入は課税の対象ではないとして、支払要求に応じなかった。これを不服とするウガンダ政府は当該ファームアウトを承認せず、これがプロジェクトの遅延の主な要因となった。結局、当該ファームアウトに係るウガンダ政府との税制措置の観点で合意に至らず、2019年8月には当該ファームアウト契約の有効期限が切れ、取引は成立しなかった。


[1]” Uganda hopes Total will reach FID stage by August”(AfrOil、2020年5月20日)の中でウガンダ政府は2020年8月または2020年末までのFID締結を望むと述べた。一方、専門家からは2022年半ばとの指摘もある。


2. TotalによるTullow Oilのウガンダ資産買収発表

2020年4月、改めてTotalは、Lake Albert projectにおけるTullowの保有権益のすべてを5億7,500万ドルで買収することで合意した。TullowのLake AlbertプロジェクトのEA1、EA1A、EA2、EA3A鉱区と輸出パイプラインシステムの保有権益33.33%の全てをTotalが獲得する予定である。また、Tullowの権益譲渡に伴い、同プロジェクトのパートナーは、TotalとCNOOCの2社となる見込みである。

IHSによれば、低油価の中でも体力のあるTotalが、2017年の取引金額と比べて低い譲渡対価で収益性の高い資産を追加的に入手し、またその収益性を担保するために不可欠な東アフリカ原油輸出パイプラインプロジェクト(EACOP)[2](投資額35億ドル)を推進しようとしている一方、Tullowは4.にて詳述する業績悪化により、財務の立て直しが急務だったことで両社の利害が一致したと分析する。

また、プロジェクトの進展に大きな障害となっていた譲渡対価への課税に関しては、Totalの発表によれば、Tullow権益の売却条件はウガンダ政府及び税務当局と協議され、取引の税制上の取り扱いは原則的に合意に達した模様であるがその詳細は現時点では不明である。

また、もう一つのパートナーであるCNOOCは、Totalと同条件でTullow権益を取得できる先買権を有しており、CNOOCの動向にも注目されたが、最終的に2020年5月、CNOOCは先買権を放棄したとTullowにより発表された。

この合意により、Lake Albertプロジェクトと東アフリカ原油輸出パイプラインは待望の最終投資決定(FID)に近づいたものと考えられる。

そのFIDの時期について、2020年5月、ウガンダ石油協会(Petroleum Authority of Uganda:PAU)の立ち上げセレモニーにて、Kitutu鉱物エネルギー大臣は、「ウガンダ政府は、TotalとそのパートナーCNOOCが2020年8月、あるいは2020年末までにFIDすることを望んでいる」と話した。

また、5月に開催されたイベント「Africa Oil & Power webinar」で、民間鉱業石油業界団体のウガンダ鉱業石油評議会[3]会長(Chairman of Chamber of Mines and Petroleum)Dr. Elly Karuhangaは、この合意はウガンダの石油・ガス部門に多くの希望をもたらすものであり、今後の探鉱開発の進展に期待している旨を述べた。

COVID-19による危機の状況において、世界のほとんどの石油開発事業で開発案件への投資判断がが極めて慎重に行われ、各石油会社が投資節減に努めようとしている中、今回のTotalの発表は多くの人を驚かせたとも言われているが、今回のTotalのTullow権益取得により開発が加速し、FIDされることが期待されている。

一方で、このような進展にもかかわらず、ウガンダもCOVID-19の影響を受けており[4]、そのプロジェクト遅延の懸念はあることから、ウガンダのエネルギー鉱物開発省は、プロジェクト救済のため、契約期間の延長(現在のPS契約では25年の期間設定)を検討していると一部報道されている。

また、ウガンダ政府は早くから原油の生産開始に合わせて、同国内の石油製品需要を賄うため、同国初となる6万b/dの国内製油所(初期精製能力は3万b/d)の立ち上げを計画している。ただし、Lake Albertプロジェクトを推進するTullow,Total、CNOOC(製油所計画においても60%のシェアを保有し、同割合の資金負担に応じる。残り40%はウガンダ国営石油会社UNOCを中心に協議が進められている模様)はパイプラインによる原油輸出を優先させたい考えのため、ウガンダ政府との間に温度差があった。Lake Albertプロジェクト自体がなかなか進展しないため、製油所の計画も進まず、その計画の現状は今も明らかではない。


[2] アルバート湖の油田近くの町Hoimaからインド海に面する港のTangaまで1445キロメートルでウガンダとタンザニアをつなぐ予定。完成すれば、21万6000b/dを取り扱う見込み。2020年5月、タンザニアのMedard Kalemani大臣はEACOPの建設を2021年4月に開始すると発表した。

[3] ウガンダの鉱業石油部門における民間企業の利益を代表する非営利・非政府組織。同国の鉱業石油部門の発展のために国家と協力関係にある。2010年に設立。

[4] 在ウガンダ日本国大使館によれば、2020年6月12日時点で感染者数686名(死者なし)、規制は徐々に緩和しつつあるものの、空港閉鎖や外出禁止措置は継続中である。


3. ケニアにおける油田開発と参画企業の動き

3-1. ケニアSouth Lokichar油田開発プロジェクトのこれまでの経緯

2012年3月、10BB鉱区(オペレーターTullow)の試掘井Ngamia1/1Aでケニア初となる商業規模のNgamia油田が発見された。その後、2014年にかけて同10BB鉱区でAmosing油田、西に隣接する13T鉱区(オペレーターTullow)でTwinga油田が発見された(図2)。これらの油田開発は「South Lokicharプロジェクト」と呼ばれている。10BB鉱区及び13T鉱区のTullow 50%、Africa Oil 25%、Total 25%の権益比率で探鉱・開発作業が進められてきた。

図2:ケニア鉱区図
図2:ケニア鉱区図
出所:Tullow Oil

South Lokichar油田開発プロジェクトでは、上流開発と原油輸出パイプライン(Lokichar-Lamu Crude Oil pipeline[5](LLCOP))建設を一体として進め、最終的にはパイプラインによる輸出を目指している。これまではEOPS[6](Early Oil Pilot Scheme)として、生産された原油(約2,000b/d)をMombasa港までトラック輸送し、もともとは製油所であった貯蔵施設で貯蔵してきた。なお、2019年8月に25万バレルのカーゴがMombasa港から初出荷された。買い手は中国のChemChinaとされる。しかし、2019年12月から2020年1月にかけて、地元住民の抗議行動や悪天候により陸路の一部区間を通行することができず、トラック輸送を中断せざるを得ない状況が頻発していた。そして、2020年6月2日にTullow Oilとそのパートナーはトラック輸送の2年間の契約が満了したとしてEOPSを停止させた。


[5] South Lokichar亜堆積盆からLamu港へ至る原油輸出パイプライン。

[6]Ngamia、Amosing油田から生産された原油の早期収益化を図ることを目的として2018年6月3日にMombasa港までのトラック輸送が開始された。


3-2. Tullow及びTotalのファームダウンの動き

2019年11月に、Tullowが10BA鉱区、10BB鉱区、13T鉱区で保有権益を50%から30%まで最大20%の売却を検討していると報じられるようになった。しかし、2020年に入り、Tullowの業績悪化を受けて(4.で詳述)South Lokicharプロジェクトの権益全体を売却する用意があると報じられた。また、パートナーのTotalもTullowと共同で権益を売却する見込みとされている。

TullowのDorothy Thompson氏は「TullowとTotalによる部分的ファームダウンは進行中だが、COVID-19をはじめとする様々な理由で遅れている」と述べたが、取引は今年中にまとめられる見込みとの見方もある。

2020年4月末には、CNOOCがTullowのケニア資産に興味を示していると報じられるようになった。

なお、今のところSouth Lokicharプロジェクトに残留する意向のAfrica Oil社によると、2020年5月17日、Tullowが10BB鉱区及び13T 鉱区のJVを代表してケニア政府にフォースマジュールを宣言した。この宣言はケニア政府による国内外での移動の制限を含むオペレーションに対するCOVID-19の影響やプロジェクトの経済性に悪影響を及ぼす最近の税制改正[7]が理由となっている。

そのほかにも、Tullowがコスト回収費として求めていた費用が、ケニア政府によって高額で不当であるとして却下され、これがTullowとケニア政府の間の争いの種となっていると言われている。

また、Tullow、Total、Africa Oilの3社はSouth Lokichar プロジェクトの税制について、2019年中に石油鉱物省(The Ministry of Petroleum and Mining)の担当書記官と合意して「Heads of Terms」(覚書)を結んでいたが、拘束力を持つ形にはなっていなかった。このため、2020年1月に新財務長官に任命されたUkur Yatani Kanacho氏は、財務省がその合意内容を関知しないまま、South Lokicharプロジェクトの税制が取り決められることに反対しており、その覚書の内容を見直す方針と言われている。この問題について、石油会社3社と石油鉱物省は、Kenyatta大統領による調整を期待しているが、今のところ大統領側に動きはない。この問題はプロジェクトの進捗を遅らせ、さらに現在進行中のTullowとTotalの権益売却のプロセスをより困難にすると見られる。


[7]2020年4月25日に大統領により承認されたThe Tax Laws (Amendment) Act,2020を指す。当該改正法はCOVID-19による財政逼迫を緩和するための救済措置として発出された。これまで、石油・天然ガスの探鉱・探査に従事する企業が使用する物品はVAT(付加価値税)の支払いが免除されていたが、今回の税制改正により、輸入品・現地調達品を問わず全ての課税対象物品に14%のVATを課すことが可能になった。 


4. 東アフリカでの各社の動き

4-1. Tullow Oilの経営悪化

2019年12月、Tullow Oilにとって主要アセットのガーナ・Jubilee油田とTEN油田で、技術的問題及び操業上の問題の影響により期待を著しく下回る生産パフォーマンスだったことを受け、同社のCEO Paul McDade氏(当時)と Chief Exploration Officerの Angus McCoss氏(当時)が辞任した。いかなる「技術的問題及び操業上の問題」があるのかに関しては明らかにされていない。これにより、同社の株価は暴落し(前月217ポンドから39ポンドまで下落)、20年ぶりの低レベルまで落ち込んだ。

この後、non-executive Chair のDorothy Thompson氏[8]が暫定CEOに指名された。同社はポートフォリオ全体及び財務の見直しを行い、2020年3月の報道ではケニアやウガンダの資産売却を検討し、ガーナの生産業務に集中すると報じられていた。

翌4月には、同社の新CEOにRahul Dhir氏が指名された。同氏はアフリカに焦点を当てる独立系Delonex EnergyのCEOを務めている。Tullowには7月1日に着任する予定である。


[8] Dorothy Thompson氏は2018年4月にnon-executive ChairとしてTullowに入社。2005年から2017年までの12年間は国際電力エネルギートレーディング会社のDrax GroupのCEOを務めた。


4-2. 東アフリカでの各社の動き

前述のように経営悪化に苦しむTullowはウガンダ、ケニア両国での主な権益を売却し撤退する方針である。一方で、TotalはTullowのウガンダ資産を買収し、ウガンダでのプレゼンスを拡大すると見られる。Tullowのウガンダ資産売却時に先買権を行使するか注目されたCNOOCだが、先買権を行使せずウガンダでは現状維持の構えである。しかし、CNOOCはTullowのケニア資産に関心をもっているとの報道もあり、ケニアでのプレゼンス拡大を狙うのかもしれない。

ウガンダのLake Albert開発プロジェクト及びケニアのSouth Lokichar油田開発プロジェクトの進展と合わせて、東アフリカでの各社の動向に引き続き注目したい。


<主な参考資料>

  • 「ウガンダにおける油田開発と原油輸出パイプライン及び製油所建設計画―東アフリカ最大の未開発石油資源保有国のゆくえ―」(古川ゆかり、石油・天然ガス資源情報 2019年2月15日付)
  • 「ウガンダ、ケニアにおける油田開発の現況と課題」(古川ゆかり、石油・天然ガス資源情報 2019年4月25日付)
  • 「ケニアにおける油田開発の現状と課代」(古川ゆかり、石油・天然ガス資源情報 2019年5月15日付)

以上

(この報告は2020年6月19日時点のものです)

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