ページ番号1008800 更新日 令和2年7月20日

原油価格下落にもかかわらず探鉱・開発が進展するメキシコ

レポート属性
レポートID 1008800
作成日 2020-07-08 00:00:00 +0900
更新日 2020-07-20 07:54:46 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 17
抽出データ
地域1 中南米
国1 メキシコ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,メキシコ
2020/07/08 舩木 弥和子
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概要

  • 原油価格下落と石油需要の減少により、石油会社は設備投資を削減し、多くの国で探鉱・開発が停滞しているが、メキシコでは多少ペースが落ちているものの、他国に比して活発な探鉱・開発が続けられている。
  • メキシコ沖大水深での探鉱は、Repsol、Shell、CNOOCにより進められている。Murphy Oilは掘削を延期したが、今のところメキシコでの探鉱を引き続き進めていく方針のようだ。
  • メキシコ湾浅海では、BP関連会社やEniが予定よりも早く油田の生産を開始したり、生産量を増加させようとしたりしている。しかし、Talos EnergyのZama油田開発はPemexとのユニタイゼーションの交渉に進展がなく、思うように進んでいない。
  • 政府は、Pemex中心にメキシコの探鉱・開発を進めようとしているが、Pemexによる探鉱・開発は計画通りに行われていない。石油生産量の伸び率もPemex以外の企業によるそれに比べはるかに低いものとなっている。
  • メキシコで、相対的に活発に探鉱・開発が進んでいる背景には、多くの国でロックダウンが行われていた期間も、メキシコ政府が石油・ガスの生産減退を食い止め、増加させようと、探鉱・開発を継続させたことがあると考えられる。また、探鉱・開発の中心となっているPemexが他の石油会社のように設備投資を大幅に削減する等、油価下落に対応した動きをとっていないことがあるとの見方もある。さらに、新型コロナウイルス感染防止のため、国家炭化水素委員会(CNH)が3月中旬から約1ヶ月間閉鎖されていたため、油価下落による計画変更がCNHに承認されておらず、探鉱・開発が油価下落以前のペースで行われている可能性もあると思われる。

(ヒューストン事務所、Platts Oilgram News、International Oil Daily、BNamericas、LatAmOil他)


2020年2月頃から新型コロナウイルス感染拡大による経済の減速や石油需要の減少に対する懸念が広まり、また、3月にはOPECプラス協調減産枠組み崩壊により供給過剰懸念が高まったことで、原油価格が下落した。その後、原油価格は若干回復したものの、バレルあたり40ドル前後で推移している。このような状況から、石油会社各社は設備投資を削減し、多くの国で探鉱・開発が停滞している。

中南米でもその傾向は見られる。Baker Hughesによると、5月の中南米の稼働リグ数は3月より107基、4月より27基減少し、62基となった。これは、Baker Hughesが1982年1月にデータを取り始めて以来、最低の数字であるという。陸上の稼働リグ数の落ち込みが大きく、3月の135基から5月には32基に減少した。一方、沖合の稼働リグ数は34基から30基にわずかに減少している。国別の稼働リグ数を見てみると、中南米最大の産油国となったブラジルが3月17基、4月13基、5月11基、Vaca Muertaシェールの開発が盛んに行われていたアルゼンチンが3月38基、4月0基、5月2基となり、米国と同様シェール開発に使用されているリグ数が急減した。また、米国の制裁を受け探鉱・開発が停滞を続けるベネズエラが3月25基、4月14基、5月2基となっている。

このように中南米各国の稼働リグ数が減少する中、稼働リグ数に大きな変動がないのがメキシコだ。メキシコの稼働リグ数は3月42基、4月46基、5月42基と、40基台で推移している。5月の稼働リグ数42基は、前年同月の34基と比べると8基増加している。

各国の探鉱・開発が停滞する中、なぜ、メキシコの稼働リグ数は横ばいで推移し、探鉱・開発はこれまでと変わらぬペースで実施されているのだろうか。本稿では、メキシコで活動中の石油会社各社の最近の探鉱・開発の状況を紹介するとともに、メキシコで探鉱・開発が継続的に実施されている背景について考えてみた。

図1.中南米主要国の稼働リグ数推移
図1.中南米主要国の稼働リグ数推移
Baker Huges websiteを基に作成

1. Repsol、Shell、CNOOCが大水深の探鉱を牽引

メキシコ沖大水深では、Repsol、Shell、CNOOCが過去の入札で獲得した権益において、スケジュール通りに探鉱中で、試掘がその佳境に入ってきている。また、Murphy Oilは、2020年に予定していた2坑の掘削を2021年に延期することとしたが、2022年にさらに1坑を掘削する計画で、メキシコでの探鉱・開発についての前向きな姿勢を崩してはいないと見られている。これに対して、TotalとExxonMobilがCenturion Plegado PerdidoのBlock 2から撤退したが、これは新型コロナウイルス感染拡大や油価下落による撤退ではなく、これまでの試掘結果を判断してのものである。Repsolによる探鉱の成果が出始めており、今後のRepsol、Shell、CNOOCの探鉱結果次第では、数年以内にメキシコ沖合大水深はブラジルやガイアナ沖と並んで大水深のホットスポットになる可能性があると見る向きもある。


(1) Repsol

Repsolは2020年5月4日、2018年1月に大水深を対象として実施されたラウンド2.4で落札したSalina Basin、Block 29(CNH-R02-L04-AP-CS-G10/2018)で掘削した試掘井、Polok-1号井とChinwol-1号井で高品質の原油を確認したと発表した。Polok-1号井は水深584メートルの海域で掘削(掘削長2,620メートル)、ネットペイ200メートル以上の油層を確認した。Chinwol-1号井は水深464メートルの海域で掘削(掘削長1,850メートル)、ネットペイ150メートルの油層を確認した。同鉱区の権益保有比率はオペレーターのRepsolが30%、PC Carigali (Petronas)が28.33%、Wintershall DEAが25%、PTTEPが16.67%となっている。

図2.ラウンド2.4鉱区図(Salina Basin)
図2.ラウンド2.4鉱区図(Salina Basin)
出所:https://rondasmexico.gob.mx/esp/rondas/ronda-2/cnh-r02-l042017/%C3%A1reas-contractuales/informaci%C3%B3n/

Repsolは、続いて、7,630万ドルを投じて6月30日より72日をかけて、同じくラウンド2.4で落札したCordilleras Basin、Block 10(CNH-R02-L04-AP-CM-G01/2018)でJuum-1号井の掘削を行う計画だ。

図3.ラウンド2.4鉱区図(Cordilleras Basin)
図3.ラウンド2.4鉱区図(Cordilleras Basin)
出所:https://rondasmexico.gob.mx/esp/rondas/ronda-2/cnh-r02-l042017/%C3%A1reas-contractuales/informaci%C3%B3n/

(2) Shell

Shellは、Peña Nieto前政権が行ったエネルギー改革以降、2017年6月のラウンド2.1(浅海)でTotalと組んでSalinas-SuresteのBlock 15、2018年3月のラウンド3.1(浅海)でPemexと組んでBlock 35を落札した。また、ラウンド2.4で対象鉱区19鉱区中13鉱区に応札し、このうち9鉱区(Tamaulipas州沖合Perdido褶曲帯の5鉱区、Tabasco州北部沖合SalinaBasinの4鉱区)を落札した。

2020年2月時点で、Shellはメキシコ沖大水深で2020年に4坑、2021年にも同程度の数の坑井を掘削する計画であることを明らかにしていた。これは、8~24億ドルを投じで、メキシコ沖で10~13坑を掘削するキャンペーンの一環とされていた。

Shellは2020年6月までに、TransoceanのドリルシップDeepwater Thalassaを用いて、9,300万ドル以上を投じSalina Basin、Block 20(CNH-R02-L04-AP-CS-G01/2018)でChibu-1号井を掘削、さらに、約9,100万ドルを投じてSalina Basin、Block 21(CNH-R02-L04-AP-CS-G02/2018)でMax-1号井を掘削、2020年に計画していた4坑中2坑の掘削を終了した。この探鉱井2坑の結果は明らかにされていない。

一方、4月には、国家炭化水素委員会(CNH)が、ShellのPerdido褶曲帯Block 3 (CNH-R02-L04-AP-PG03/2018)に関する申請を承認した。Shellの申請は、高コストで難易度の高い大水深での掘削キャンペーンのスピードアップを試みるもので、2019年6月~2020年1月の期間中に承認された計画の基本的な部分は変更しないものの、当初、2022年に掘削が計画されていた探鉱井を2020年に前倒しして掘削するという内容になっている。この前倒しが認められると2020年の探鉱支出は、1,260万ドル追加となる。また、掘削計画を前倒しすることでコストは1億6,500万ドル近く上昇する可能性があるという。

さらに、6月にCNHは、ShellのPerdido褶曲帯Block 6(CNH-R02-L04-AP-PG06/2018)での探鉱に関する計画の修正申請を承認した。Shellは、2021年に5,800万ドルを投じ探鉱井2坑を掘削することを含め、今後3年間で合計7,800万ドルを投じる計画であったが、最大で探鉱井4坑を掘削、3億1,100万ドル以上の投資を行うこととなった。10月までに探鉱井2坑を追加で掘削するか否かを決定、うち1坑の掘削は2020年第4四半期に掘削を開始される可能性がある。

図4.ラウンド2.4鉱区図(Perdido褶曲帯)
図4.ラウンド2.4鉱区図(Perdido褶曲帯)
出所:https://rondasmexico.gob.mx/esp/rondas/ronda-2/cnh-r02-l042017/%C3%A1reas-contractuales/informaci%C3%B3n/

(3) CNOOC

CNOOCは2016年12月に実施されたラウンド1.4で、Tamaulipas沖115キロメートル、Perdido褶曲帯、Block 4(CNH-R01-L04-A4.CPP/2016、面積1,876平方キロメートル)を獲得した。その後、CNHは 2020年6月、CNOOC がBlock 4の水深1,369メートルの海域で探鉱井Xakpún-1号井を掘削することを承認した。8月10日に掘削を開始し、11月5日に掘削が完了する予定で、CNOOCはAPI比重38~43度の軽質原油9億9,300万boeの発見を期待しているという。試掘井の掘削に関係する投資額は9,620万ドルとされている。

CNOOCのXie Weizhi CFOは、メキシコの深海の可能性について自信を示し、CNOOCは設備投資を11%削減したものの、同社のメキシコでの探鉱計画はその影響を受けないと語った。

図5.ラウンド1.4鉱区図 と Pemex ファームアウト入札鉱区図
図5.ラウンド1.4鉱区図 と Pemex ファームアウト入札鉱区図
各種資料を基に作成

(4) Murphy Oil

Murphy Oilは2020年の設備投資を当初予定の14.5億ドルから3月に9.5億ドルに、4月に7.5億ドルに削減した。さらに、カルガリーオフィスとアーカンソー州にある本社を閉鎖し、ヒューストンに全事業を移転させることとした。また、役員報酬を平均22%削減する等、原油価格下落による影響に対応している。

このような状況から、Murphy Oilは5月に、2020年に予定していたメキシコ沖大水深域での2坑の掘削を2021年に延期することとした。Murphy Oilはラウンド1.4でPC Carigali、Ophir、Sierra Oil & Gasとコンソーシアムを組みSalina del Istmo BasinのBlock 5(CNH-R01-L04-A5.CS/2016)を落札し、現在はオペレーターを務めている。2019年に掘削したCholula-1号井の成功を機に探鉱計画を修正、7,800万ドルの追加投資で2坑の探鉱井を掘削することとしていた。2020年3月には、Pacific Drillingと契約を締結、11月に2坑の掘削を開始し、2021年2月に完了する予定だった。Murphy Oil は、Cholula-2号井の掘削を2021年第1四半期に、Cholula-3号井の掘削を2021年第4四半期に延期したものの、さらに、Cholula-4号井を2022年第3四半期に掘削する計画で、現在のところ、メキシコにおける探鉱は継続する姿勢に変わりはないと見られている。なお、6月16日にはCNHがこの計画変更を承認した。


(5) Total/ExxonMobil

CNHによると、TotalとExxonMobilは2020年2月19日に、Perdido褶曲帯のBlock 2(CNH-R01-L04-A2.CPP/2016)から撤退、CNHに同鉱区を返還した。両社はラウンド1.4で同鉱区を落札した。そして、2019年末に同鉱区内でEtzil-1号井を掘削したが、商業生産可能な規模の油・ガスの確認ができず、採算が取れないと判断したという。両社は、2022年3月23日までに2坑の坑井を掘削することをコミットしていたものの、Etzil-1号井しか掘削していなかったため、契約の早期終了ペナルティとして、撤退通知後10日以内にメキシコ石油基金に2,100万ドル強を支払うこととなった。この撤退は油価下落局面前の判断であり、Etzil-1試掘井掘削の結果、鉱区全体の地質的ポテンシャルが低下したことにより、ペナルティを払ってでも早期撤退した可能性がある。


2. 油田の早期生産開始や生産増が進む浅海

Pemexが長期間にわたり手を付けられずにいたメキシコ湾浅海で、エネルギー改革以降に行われた入札でメキシコに参入した国際石油会社による探鉱・開発が進展している。しかも、その一部では、探鉱に成功して、原油の存在を確認している事業も存在している。これらの石油会社は、石油・ガス生産量の下落を懸念するメキシコ政府の要請を踏まえ、コロナウイルス感染拡大によるロックダウンや政府機関の閉鎖にもかかわらず、予定よりも早く生産を開始したり、生産量を増加させようとしたりしている。

(1) Hokchi Energy

Hokchi Energyは2020年5月24日に、2015年9月実施のラウンド1.2(浅海、生産)で獲得したTabasco州沖、Campeche湾のArea 2(CNH-R01-L02-A2/2015)で、予定よりも早くHokchi油田の生産を開始した。Hokchi EnergyはアルゼンチンのPan American Energy(1997年にBridasとAmoco(現在はBP)のジョイントベンチャーとして設立された。2010年以降はCNOOCがBridasの50%を保有している。また、2017年以降、BP、BridasはPan American Energyの50%ずつを保有している)の子会社である。Hokchi油田の水深は30メートル。生産量は3,500b/dで、ピーク時には3万b/dに達する計画となっている。Pan American EnergyがCNHに提示した計画によると、同社はHokchi油田から原油1億4,780万bbl、ガス45.4Bcfを生産する予定である。Pan American Energyは5月26日、当初はPemexのパイプラインインフラを使用すると発表した。しかし、計画によると、将来的には独自のインフラを建設することも検討しているという

なお、Hokchi Energyは6月にGroup Rとのリグ契約を早期に終了した。Hokchi Energyは、2020年1月下旬までにGroup RからジャッキアップリグCantrell IIIをリースし、4月から掘削を開始するとしていた。メキシコの上流事業が世界的な原油価格暴落と新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンの影響を受けたことを示す数少ない事例の一つと評されている。

図6.ラウンド1.2鉱区図
図6.ラウンド1.2鉱区図
出所:https://rondasmexico.gob.mx/eng/rounds/round-1/cnh-r01-l022015/

(2) Eni

Eniは、ラウンド1.2で落札したCampeche湾のArea 1(CNH-R01-L02-A1/2015)でMizton 油田の生産を、当初の計画より1年早く2019年7月に開始した。当初の生産量は石油4,300b/dだが、同鉱区内のAmoca油田と併せて2021年には90,000b/dまで引き上げる計画であり、さらに、周辺の他油田の開発も急いで進めるとしていた。

2020年3月には15,000b/dを生産中で、2021年上半期には100,000boe/dのプラトーに達する見通しだと発表した。また、探鉱キャンペーンも継続していくとしていた。

ところが、Eniは、同社の全体方針として、2050年までに温室効果ガス排出量を80%削減するために、原油・天然ガス生産量を2025年まで年率3.5%ずつ増産した後に、原油を中心に生産量を漸減させ、生産量に占める天然ガスの比率を2050年に85%とする計画が発表された。

このEniの方針転換により、メキシコでの探鉱・開発への影響も懸念されたが、6月にEniはArea 1で4坑目の坑井の掘削を準備中で、これにより生産量を20,000b/dに増加させる計画であることが報道された。これは、Pemexが優先的に開発を進める20油田の2020年第1四半期の生産量21,800boe/dとほぼ同じ水準である。

またEniは、Area 1での生産量を100,000b/d程度まで増加させるために、現在建設中で2021年に完成予定のFPSOを利用することも計画しているという。高い収益性を維持するためには、パイプラインをどの程度利用できるかがカギを握るとされているが、Eniは現在、Pemexのパイプラインを利用して生産を行っている。

なお、Eniは同鉱区の権益の35%を2018年にQatar Petroleumに売却した。

Eniはまた、2020年2月に沖合Sureste BasinのBlock 10(CNH-R02-L01-A10.CS/2017)の水深340メートルの海域でSaasken-1号井を掘削(掘削長3,830メートル)し、ネットペイ80メートルの油層を確認した。Eniにとっては同堆積盆地で6連続での油田発見となる。Eniは原始埋蔵量を2~3億bblと推定しており、10,000b/d以上を生産できると見ていると発表した。同鉱区の権益保有比率はオペレーターのEniが65%、Lukoil が20%、Capricorn(Cairn Energy)が15%となっている。

図7.ラウンド2.1鉱区図
図7.ラウンド2.1鉱区図
出所:https://rondasmexico.gob.mx/eng/rounds/round-2/cnh-r02-l012016/#

(3) Talos EnergyとPemexの間のユニタイゼーションを巡るせめぎあい

Talos Energy(米)のZama油田はPemexとのユニタイゼーション交渉が進まず、開発に進展が見られない。

Talos Energy/Premier Oil(英)/Sierra Oil and Gas(墨)からなるコンソーシアムは、2015年9月に実施されたラウンド1.1で、Sureste Basinの Area2とArea7を落札した。同コンソーシアムは2017年2月にCNHよりArea7でZama 1SON号井を掘削する許可を取得、同井を掘削、同年7月に、約80年間で初めてのPemex以外によるメキシコでの油田発見となるZama油田を発見した。

図8.ラウンド1.1鉱区図
図8.ラウンド1.1鉱区図
出所:https://rondasmexico.gob.mx/eng/contracts/cnh-r01-l01-a72015/

ところが、Zama油田は、隣接するPemexがラウンド0で取得したAE-0152-Uchukil鉱区にまで広がっていた。TalosはZama油田の埋蔵量の約40%がPemexの鉱区内にあると見ているが、Pemexは50対50でプロジェクトを分割すること、並びに、Pemex自らがオペレーターとなり、同油田の開発を主導することを求めている。Pemexは付近のNaquita、Chamak構造(いずれもPemex鉱区内)とともに一体的に開発することを希望し、2021年に生産を開始したいとした。

2018年9月にPemexとTalosは、Zama油田に関するプレ・ユニタイゼーション・アグリーメントを締結した。プレ・ユニタイゼーション・アグリーメントの契約期間は2年間で、この間PemexとTalosはZama油田に関する情報を共有するとともに、調整しながら探鉱、評価作業を行うこととなった。

同じく2018年9月にCNHは、2年間にわたり評価井2坑を掘削し、地震探鉱を実施、データを処理する等を内容とするTalosのZama油田の評価計画を承認した。このTalosの計画は予定通りに実施され、2019年1月には評価井Zama 2号井、6月には評価井Zama 3号井の掘削が終了、その他のスタディも終了した。Talosは2020 年中に最終投資決定を行い、2022年に生産を開始することを計画していると発表した。そして、2019年9月にはCNHから、Area 7の探鉱期間を2年間延長することについて承認を得た。

図9.Zama油田周辺鉱区図
図9.Zama油田周辺鉱区図
各種資料を基に作成

一方、Pemexは2019年2月にCNHより探鉱井Asab-1号井を掘削することについて承認を得、同年上半期までにAsab-1号井を掘削することとなっていたが、実現できていない。同年10月22日にCNHが2020年2月までにPemexは同井を掘削する計画であるとしたが、依然として掘削は行われていない。

Pemexの財務状況は非常に脆弱で、その結果、投資も、坑井の掘削も計画通りに実施できていない。また、技術的にもPemexがZama油田の開発を行えるのか疑わしいと見る向きもある。というのも、Zama油田は比較的浅い海域に位置するが、水深は168メートルあり、メキシコ沖合で開発される油田としては最深のものとなり、Pemexにはこの水深で開発を行う経験が不足していると指摘されている。このような状況のPemexがオペレーターとなった場合、Talosのように効率的に同油田を開発することはできないと見られている。

これに対して、Talosは、2012年設立、従業員数440名の独立系企業であるが、浅海、深海を問わず米国メキシコ湾及びメキシコ沖合で探鉱・開発を行ってきた経験を有している。2019年末の確認埋蔵量は1億8,100万boeで、うち79%が深海に賦存している。また、2017年2.9万boe/d、2018年4.6万boe/d、2019年5.2万boe/dと生産量を伸ばしてきている。

Talosは2019年12月に、外部コンサルタントNetherland, Sewell & Associates(NSAI)の評価に基づいたZama油田の埋蔵量に関する報告書をエネルギー省(Secretaría de Energía:SENER)に提出した。この報告書によると、Zama油田の埋蔵量(2P)は6.7億boeで、うち60%はArea 7、40%はAE-0152-Uchukil鉱区に賦存している。原油の性状はAPI比重28度とされている。TalosはZama油田に2基の固定式生産プラットフォームを設置(生産能力は合計で15万b/d)、2023年に生産を開始する計画であるとした。

Zama油田のユニタイゼーションは、メキシコでは初のユニタイゼーションとなるが、Pemexによる掘削が遅れ、ユニタイゼーションの協議にも進展が見られないために、同油田の開発が遅れる可能性が指摘されている。さらに、このまま両社の協議でどちらがオペレーターとなるか決着がつかない場合には、SENERがこれを決定することになるが、AMLO政権が、石油を効率的に開発し、生産量を増加させ、利益を上げるよりも、Pemexにメキシコの石油資源を管理させることに重点を置いており、エネルギー産業に対し再びコントロールを強化したいと考えているとの見方から、Pemexに有利な判断がなされるのではないかと見る向きもある。Area7のコンソーシアムのうちの1社は、契約期間は2021年9月までで、Pemexは我々を待たせて、最終的にプロジェクトから占め出すつもりなのではないか、事実上の接収となるのではないかと懸念しているという。さらに、Talosは、他の石油会社による掘削が増加しているが、Zama油田と同様のケースが発生する可能性があるのではないかと懸念を表明している。

Talos Energyは2020年のCAPEXを5.2~5.45億ドルとするとしていたが、2020年2月に、これを1.25億ドル以上削減することを検討していると発表した。早期に生産を開始できるプロジェクトや既存の近隣生産設備を利用し2020年または2021年初に生産開始を予定しているプロジェクトに集中して投資を行うという。Zama油田に関しては、ユニタイゼーションに関する協議をPemexと継続しており、交渉次第ではあるが、2020年中に開発を開始することを目指すとした。

そして、Talos Energyは2020年3月23日、2020年の投資額を1億7,000万ドル削減すると発表した。しかし、Zama油田に関しては当初の計画通りに進めるとした。CEOのTimothy Duncan氏は、「Talosは、現在の環境に柔軟に対応できると思う。 ボラティリティが増している中でもフリーキャッシュフローを生み出すために、即時かつ決定的な措置を講じた」と述べるとともに、Zama油田については、最終投資決定に向けて重点的に継続することにコミットすると語った。

なお、当初、Area 7の権益保有比率は、オペレーターTalos Energyが35%、Premier Oilが25%、Sierra Oil and Gasが40%となっていたが、2018年12月にDEA (現在のWintershall Dea(独))がSierra Oil and Gasを買収することとなり、2019年3月に取引が完了した。買収金額は公表されなかった。また、2019年8月にはPremier Oilが債務削減のため、同鉱区の権益25%を売却する方針を示した。しかし、ユニタイゼーションの協議が進展しないこともあって、売却も進んでいない。


3. 計画通りに探鉱、開発、生産を行えないPemex

2018年12月1日に就任したAndrés Manuel López Obrador(AMLO)大統領は、Peña Nieto前政権が推し進めてきたエネルギー改革を見直すこととした。エネルギー改革により実施された鉱区入札に基づき締結された契約は尊重されることとなったが、Pemexが権益100%を保有する鉱区へのファームイン入札を含めた全ての鉱区入札を中止した。そして、代わりに、Pemexを強化し、同社中心に探鉱・開発を進める方針を示した。

政府は2019年2月にPemexに対して総額1,070億ペソ(約60億ドル)の救済策をとる等、Pemexに対する税負担軽減、公的資金注入などを主軸とした支援策をとり、投資を促進、探鉱・開発を進めようとしている。しかし、Pemexは2019年末時点で1,052億ドルと石油会社として最大規模の負債を抱え、2019年も3,461億3,500万ペゾ(183億6,700万ドル)の損失を計上、2018年の損失、1,804億2,000万ペソを倍増させている。

また、AMLO大統領は、Pemexに20の油田(浅海16油田、陸上4油田)の開発を優先的に行わせ、2020年1~5月は171万b/dの石油生産量を2020年に200万b/dに引き上げるとした。さらに、AMLO大統領の任期である2024年末までに、石油生産量を270万b/dに引き上げる計画であるとした。しかし、Pemexが優先的に開発を行う20油田のうち、2019年末までに生産が開始された油田はわずか3油田のみ、生産中の油田を含め開発計画が承認された油田は17油田で、3油田については開発計画も提出されていない。Pemexは2019年に、事前に選択したサービス会社を対象にクローズドの入札を実施し、20油田で約100坑の掘削を行う企業を選定した。この計画に参加しているメキシコのサービス会社は、Pemexが設定した目標を達成するために必要とされる技術、経験、機材を保有していないものが多い。また、掘削契約を勝ち取った企業の多くが意図的に低い見積もりを出したり、Pemexの要件を満たすために必要な専門的な知識を持つ人材や機材を持っていないという。これら20油田の開発が進んでいない一因には、このようなサービス会社の状況があると考えられる。

Pemexは、優先的に開発を行う20油田のうち、悪天候やインフラ建設の遅れ、掘削時にトラブルが発生したことで生産開始が遅れていた9油田の生産を2020年2月末から3月にかけて開始する計画で、これらの油田の石油生産量は8万b/dと見込んでいるとしているとしていた。しかそ、3月のこれら20油田の生産量は予定されていた47,650b/dを下回り、32,350b/dとなった。

さらに、Pemexは2019年に354坑(試掘井62坑、開発井292坑)の坑井を掘削予定だったが、同年11月までに掘削できた坑井数は206坑(同20坑、186坑)にすぎず、11月までの達成率は58%(同32%、64%)となっている。

探鉱に関して、Pemexは、2019年7月にQuesqui油田、2020年2月にKuxum油田を発見、両油田の開発が順調に進めば、2020年末までに石油生産量が200万b/dに達する可能性があるとしているが、Pemexは最低探鉱義務をも遵守できていないとの批判を受けている。

AMLO大統領は2020年4月5日、新型コロナウイルスの感染拡大に関連して、Pemexに対して650億ペソ(26億ドル)の減税を行うとともに、ガソリン精製処理量を40万b/dにすると発表した。Pemexは2020年に利益の58%を納税する予定だったが、これにより54%を納税することになるという。しかし、AMLO大統領の発表したこの措置に対しては、この減税では原油安と原油需要の低下により生じたPemexの損失を抑えるには不十分であり、また、現在の製油所の状態ではガソリン精製処理量を40万b/dに引き上げることは不可能であるとの指摘がなされている。さらに、世界的にガソリン価格が低迷しているため、ガソリンの精製処理量を増やしてもPemexの損失を増やしてしまうだけであるとの見方がなされている。

Pemexは4月末に設備投資を145億ドルから125億ドルに約15%削減することとした。削減額20億ドルの89%が上流部門であるという。


4. Pemexとは対照的に成果を上げつつあるPemex以外の石油会社

Pemexの活動が伸び悩む中、メキシコの石油生産量は2020年に入り、1月172.4万b/d、2月172.9万b/d、3月174.7万b/d、4月172.7万b/dと170万b/dを上回り、過去40年間で最低の水準であった2019年の167.9万b/dから増加している。しかし、内訳を見てみると、このメキシコの生産増は外国石油会社などPemex以外の企業の生産増によるところが大きいことが分かる。例えば、2020年4月のメキシコの石油生産量のうち、Pemexは167.1万b/dを、Pemex以外の企業は55,663b/dを生産した。これに対し、2019年4月のメキシコの石油生産量167.1万b/dのうち、Pemexは163.8万b/d、Pemex以外の企業は32,656b/dを生産しており、この1年間のPemexの生産の伸びは2%であるのに対し、Pemex以外の企業のそれは70%となっている。

先に紹介した、外国石油会社の探鉱成功、そして開発作業の進展により、Pemex以外の企業による2020年の石油生産量は、50%程度増加するとの見通しがなされている。これは数量的には少ないが、入札による外国企業への鉱区付与に伴う探鉱結果を反映しているものであり、今後も拡大が期待される。

図10.メキシコの月別石油生産量
図10.メキシコの月別石油生産量
出所:https://produccion.hidrocarburos.gob.mx/

5. このほかに原油価格下落にもかかわらず探鉱・開発が進展している理由

メキシコで、他の国と比較し相対的に活発に探鉱・開発が進んでいる背景には、他にもいくつかの要因があると考えられる。

第一に、メキシコ政府が石油・ガス生産減退を食い止め、増加させることに躍起となっていることが挙げられる。多くの国でロックダウンが行われていた4月、メキシコは、エネルギー産業は同国にとって不可欠なものであるとして、探鉱・開発を継続した。その結果、先述した通り、2020年1~4月のメキシコの石油生産量は170万b/d台で安定している。OPECプラスの協調減産にも、AMLO大統領は、メキシコは割り当てられた10万b/dの供給削減を遵守していると説明、5月、6月の10万b/dの削減以外は行わないとしている。

第二に、AMLO政権下で、探鉱・開発部門のPemexへの集中が進んでいることが挙げられる。Pemex は2020年第1四半期に230億ドルの過去最高の損失を出し、過去15ヶ月間の損失は約410億ドルに達したが、PEMEXは他の石油会社のように油価下落に応じて大きな投資抑制を行っていない。4月末に、Pemexは設備投資を約15%削減すると発表したが、これは同じ中南米の国営石油会社が発表した設備投資の削減に比べれば、比較的小規模な削減となる。Petrobrasは4月に、2020年の設備投資を2019年の274.1億ドルから120億ドルに56%削減した。また、Ecopetrolは当初、2020年の設備投資を45~55億ドルとする計画だったが、3月にこれを33~43億ドルに削減、さらに、5月に25~30億ドルに削減すると発表した。メジャーも、2020年の設備投資額をExxonMobilが30%、Shellが20%、BPが25%、Chevronが20%、Totalが17%削減すると発表している。このように他の石油会社に比べPemexの設備投資の削減額は小さい。そして、Pemexは探鉱を控えているわけではなく、少ないながらも継続しており、その結果、油田が発見されれば、収益が上がるか否かにかかわらず生産に移行するという方針を変えていない。

第三に、CNHは3月中旬から新型コロナウイルス感染防止のため休暇に入り、約1ヶ月間閉鎖されていた。それ以降、CNHはリモート会議によるセッションを実施していたが、その数は多くないという。Pemexもそれ以外の石油会社も2月から3月初旬に提示した計画しかCNHに承認されておらず、CNHの作業が滞っているため、プロジェクトの遅延や計画変更を要求しても、承認されていない可能性がある。

最初の2点については、AMLO政権が今後どのような政策をとるかにかかっているが、3点目については、CNHが本格的に動き出せばすぐにも変化が起きる可能性がある。いずれにせよ、状況を注視していく必要があるだろう。


終わりに

6月中旬には、中小の石油会社が、Murphy Oilと同様、契約に基づく作業計画の延期または一時停止をCNHに申請したとの報道がなされた。作業計画の延期または一時停止をCNHに要請したのは、Pantera E & P(米、6油田)、Jaguar E & P(墨、5油田)、Renaissance Oil(加、3油田)、Carso Oil & Gas(墨、1油田)である。これらの石油会社によると、新型コロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウンにより、労働者の移動が妨げられ、また、操業に必要な物資が不足しているという。CNHは現在、これらの要請へ如何に対応するかについて協議を行っている。今後、同様の申請がさらに続く可能性は否めないが、原油価格が回復すれば、これらの企業も作業を再開すると期待される。

一方で、Pemex以外の石油会社の石油生産の伸びが見込まれている。ただし、その絶対量はまだまだ小さいものであり、AMLO政権が期待するような生産増を実現するためには、手厚い政府支援を受けてPemex自らが、増産に向けた効率的な努力を行うことが求められよう。

さらに、鉱区公開の再開も重要だと考えられる。これまで見てきたように、メキシコで探鉱・開発が進展している最大の理由として、Pemex以外の石油会社、特に外資による探鉱が成功し始めたことが挙げられるのではないだろうか。メキシコ政府が、Pemex以外の石油会社の探鉱・開発成果を認め、メキシコの石油生産増にはこれらの石油会社の活動が不可欠であり、今後もこれらの石油会社による生産増が期待できることを理解し、一旦停止した鉱区公開を再開することが望まれる。


以上

(この報告は2020年6月29日時点のものです)

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