ページ番号1008801 更新日 令和2年7月10日

PETRONAS社長兼CEO交代とサラワク州との係争の和解について

レポート属性
レポートID 1008801
作成日 2020-07-09 00:00:00 +0900
更新日 2020-07-10 08:48:21 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業基礎情報
著者 庄子 達也
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 8
抽出データ
地域1 アジア
国1 マレーシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,マレーシア
2020/07/09 庄子 達也
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概要

  • マレーシアの国営石油会社PETRONASの新社長兼最高執行役員(CEO)として、YM Tengku Muhanmmad Taufik Tengku Aziz氏が2020年7月1日に就任した。
  • 同氏はマレーシア及び英国の公認会計士の資格を有し、2000年から2012年まで間にPETRONASに在籍、内部監査や戦略企画部長などの様々な経歴持ち、2012年末からは当時合併直後のマレーシアの民間上場石油サービス会社Sapura Energy BerhadでCFOを務めた。その後、PwC Malaysiaでパートナーを経験した後、2018年10月にPETRONAS上級副社長兼最高財務執行役員(CFO)を経て現職に就任した。上記のように、石油・ガス業界で幅広い実務経験を有しており、同氏の経営手腕に大きな期待が寄せられている。
  • 同氏は新社長兼CEO就任早々、世界大のコロナ禍、需給バランス不均衡に起因する油価下落等への対応などと同時に、2020年5月8日に合意に至った同国石油開発法1974に関するサラワク州との和解内容に沿った最終的な詰めにも取り組まなければならず、PETRONASの動向に引き続き注視が必要。

(出所:ペトロナス HP、同社年次報告書、マレーシア政府HP、Energy Intelligence、Fortune他)


1. PETRONASの新社長就任について

1974年8月17日にマレーシア首相府の敷地内に15人のスタッフとたった2台の電話でスタートしたマレーシアの国営石油会社(NOC) Petroliam Nasional Berhad(以下、PETRONAS)は、昨年(2019年)設立45周年を迎えた。石油・ガス専門情報誌Energy Intelligenceが2019年11月に発表したEnergy Intelligence Top 100では並みいるNOC、スーパーメジャーや独立系石油企業の中で、PETRONASは23位にランクした。また、米ビジネス誌Fortuneが2019年7月に発表したGlobal500で、同社は158位にランクされている。Global500で158位がどれ程の規模か知るためにPETRONASの前後の順位の企業を見てみると157位が日本の三井物産、159位が同じく日本のセブン&Iホールディングスとなっており、日本の有力企業と同様にPETRONASが高く評価されていることが分かる。

2020年6月30日、PETRONASの社長兼最高執行役(CEO)Tan Sri Wan Zulkiflee Wan Ariffin氏(業界ではWan Zulの愛称で呼ばれる)が勇退し、翌日7月1日、同社の前副社長兼CFOのYM Tengku Muhanmmad TaufikTengku Azizに交代した。

PETRONASの年次報告書2019によれば、新社長兼CEOのYM Tengku Muhanmmad Taufik氏は46歳で、同社の歴代8名の最高執行者の中で3番目の若さでの就任になる。同氏は2018年10月15日に同社副社長兼CFOに就任する以前は、公認会計事務所PricewaterhouseCoopers(PwC)Malaysiaのパートナーも務めていたことがあり、マレーシアと英国の公認会計士の資格を有する財務・投融資の専門家である。歴代社長兼CEOの中で在任期間が最長の15年を務めたTan Sri Mohd Hassan Marican氏も公認会計事務所のパートナー出身であり、同氏の社長兼CEO就任時の年齢は43歳であった点でも、似通った経歴を持っており、今後の活躍にも期待が膨らむところだ。

また、37歳でPETRONASの初代Chairmanに就任し、その後財務大臣、貿易産業大臣に就任し、世界開発銀行、アジア開発銀行やイスラム開発銀行で総裁・議長を務めたTengku Razaleigh Hamzah 氏と同じ"Tengku "の称号を持つが、これはマレー系の王族の継承称号で、英語では"Prince/ss "に相当する由緒正しい家系であることも伺える。

同氏の経歴を調べると、英国で財務会計を学んだ後、2000年-2012年の12年間PETRONASに在籍し内部監査や戦略企画部長ほか様々な経歴持ち、2012年-2015年には合併直後のマレーシアの民間上場石油サービス会社Sapura Energy BhdでCFOを務めるなど、石油・ガス業界で幅広く豊富な実務経験を有している。

同氏が職歴の大半でPETRONASに従事しているという意味で、6代目のTan Sri Dato’ Seri Shamsul Azhar Abbas氏と7代目のTan Sri Wan Zulkiflee bin Wan Ariffin氏と2代続くプロパー社員出身の社長兼CEO就任という流れにも合致し、グループ従業員総数47,669人(2019年年次報告書ベース)のトップとして従業員の士気向上にも貢献しているかもしれない。

PETRONASの歴代最高経営責任者を図1にまとめたので参考にして頂きたい。

図1:PETRONAS歴代CEO
図1:PETRONAS歴代CEO
出所:PETRONAS 年次報告書他に基づきJOGMEC作成

2. サラワク州とPETRONAS間の係争の和解について

YM Tengku Muhammad Taufik新社長兼CEOとして、最初に取り組むべき課題は国内の生産量維持である。これに直結する事象として、PETRONASの設立の準拠法でもある同国石油開発法1974に関するサラワク州とPETRONAS間の係争の和解とこれを受けた今後の対応が挙げられよう。

本件の背景をご紹介すると共に、文末に2020年5月8日の同社プレスリリース及び2020年5月22日に公表されたPETRONASの2020年第一四半期決算書に掲載されたる本件に関する公式見解を紹介する。


(1) サラワク州とPETRONASの係争の背景

マレーシアのPSC上、石油とガスの生産に伴うRoyaltyは石油・ガス生産量の10%と定められており、そのうち5%を連邦政府が、残る5%を油・ガス田が存在する各州政府が取得することになっている。これに対し、2017年以降サラワク州は、石油とガスの生産に伴う現行Royaltyの州政府取り分を5%から20%に引き上げるよう主張していた。

これに対し、2018年5月の総選挙で勝利したマハティール率いるPakatan Harapan(希望連盟)は、選挙運動中の公約としてサラワク州の取り分を「20%」へ変更するとしていた。希望連盟は「利益の20%」を意図していたとされるが、サラワク州は従来のRoyaltyと同様、「生産量の20%」と理解し、マハティール氏が首相として政権を担うと、サラワク州は「Royaltyを生産量の20%にしないのは公約に違反する」と主張したのである。

2018年6月PETRONASは、サラワク州の主張は石油開発法1974に違反するとして連邦裁判所に提訴したものの、連邦裁判所は、本件はまずサラワク州の地方裁判所で審議すべきとの管轄違いを理由に、控訴を差し戻した。(2018年6月22日付け連邦裁判所)

PETRONASは、元々本件は連邦政府(即ち政治)の問題であるとして距離を置いていたが、2019年以降の鉱区入札の対象からサラワク沖の鉱区は除外する等の措置をとっている。

2019年サラワク州政府は、同州売上税条例に基づき、PETRONASが2019年のサラワク州における石油・ガス製品販売に関する売上税13.45億マレーシアリンギットとそれに伴う支払遅延金利及び罰金の支払いを求めてサラワク州にある高等裁判所に提訴した。これに対し、PETRONASはサラワク州での石油製品販売に対する課税権の法的妥当性についての司法審査の訴えと民事控訴をサラワク州にある連邦高等裁判所に起こし、泥仕合の様相を呈していた。


(2) 今回の和解の内容

サラワク州とPETRONASは、相互利益の実現とサラワク州の安定的な投資環境維持を目的として、双方の法的訴訟を取り下げ、総合的な商業的解決(和解)を行うこととした。

具体的な内容は以下の通りである。

  1. PETRONASがサラワク州に対し2019年分の(同州内の石油・ガス製品の販売に対し)売上税20億マレーシアリンギットを支払う。2020年以降の売上税率については継続協議とする。
  2. さらにサラワク州は、石油開発法1974に基づき、PETRONAがマレーシア国内の石油ガス開発について全ての管理・監督権を保有していることを認める。
  3. PETRONASは、サラワク州内の鉱区・権益をサラワク州と協力して、探鉱・開発・生産を継続する。また、PETRONASはサラワク州内の鉱区・権益について、一定の経済条件に基づきサラワク州の関与の機会が増やせるように協議する。

(3) 本和解の影響

2020年5月8日付のPETRONAS社PR及びマレーシア政府PR に基づいて今後の影響を考察したい。PETRONASは2019年以降の鉱区公開入札に際して、サラワク州内の陸上・沖合鉱区をその対象から外していたが、今回の係争の和解に伴って、次回の入札にはサラワク州内の陸上・沖合鉱区が含まれる可能性が高くなるため、これら鉱区の公開・探鉱・開発が再開されることが期待される。

ただし、PETRONASにとっては、サラワク州での石油販売に売上税がサラワク州から課されることとなり、それだけPETRONASの収益は減少することになる。さらには、サラワク州での石油販売への売上税が認められたことが、他州に波及することを懸念する向きもある。

さらにPETRONASがサラワク州内で石油・ガス開発を行う際のサラワク州の関与の機会を増やすとしているが、具体的な内容は先送りしていることもあり、完全な解決までにはまだ紆余曲折の可能性がある。引き続き注意して見て参りたい。


(ご参考)

2020年5月8日に発表された関連文書は以下の通り。

但し、マレーシア語のみのPRのため、参考までに英訳版を添付する。

(1) Petronas社PR 5/8付け:

https://www.petronas.com/media/press-release/persetujuan-rundingan-di-antara-kerajaan-negeri-sarawak-dan-petronas(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

(訳:PT JAC Consulting Indonesia)

8 · May · 2020

Negotiations Agreement between the State Government of Sarawak and PETRONAS

The State Government of Sarawak (State Government of Sarawak) and Petroliam Nasional Berhad (PETRONAS) have reached an agreement in negotiations on oil and gas as well as sales tax on petroleum products in Sarawak. Both sides have agreed that the best approach in reaching a solution together is through commercial solutions to actualize a business and investment environment that is more stable. This represents a sustainable approach to enhance the viability of the country’s oil and gas industry, particularly in the current volatile oil and gas markets.

In this regard, PETRONAS agreed to withdraw an appeal over the decision of the Mahkamah Tinggi Sarawak (Sarawak High Court) regarding a Review application on 13 March 2020 and the State Government of Sarawak will also dismiss all claims in the civil case against PETRONAS for settlement of sales tax on petroleum products.

In addition to withdrawing all legal proceedings, PETRONAS, through its related subsidiaries, will make full payment of the sales tax imposed by the State Government of Sarawak on petroleum products of 2019 amounting to RM 2 billion at 5% of the sales value of such products. The State Government of Sarawak and PETRONAS further agreed that sales tax on petroleum products provided under State Sales Tax (Taxable Goods and Rate of Tax) (Amendment) (No. 2) Order, 2018 ("Order 2018") is applied on lower values periodically based on future negotiations. The State Government of Sarawak also agreed that sales tax will be limited only toward petroleum products provided by the Order 2018.

However, all the instruments and agreements that have been agreed between the State Government of Sarawak and PETRONAS under the UU Pengembangan Minyak Bumi 1974 (Petroleum Development Act 1974) [Act no. 144] is still valid and in effect. On the other hand, PETRONAS is still recognized as the national oil company with full authority in carrying out development of the oil and gas industry of the country, in accordance with the Federal Constitution.

PETRONAS in cooperation with the State Government of Sarawak will continue to develop the oil and gas industry of the state. Meanwhile, PETRONAS will continue negotiations with the State Government of Sarawak in enabling an increased active involvement of the State Government of Sarawak in the state’s oil and gas industry investment opportunities based on commercial terms. These include similar business opportunities at the enterprise level operating in Sarawak.

To ensure the implementation of these commercial solutions, YB (Honorable) Minister of Works and YB Minister of Finance have been assigned to lead a joint committee for this purpose.

Datuk (federal title with certain honor) Hajah Sharifah Hasidah Sayeed Aman Ghazali

Junior Minister in the Chief Minister's Department (Law, State Government Relations - Federation and Project Monitoring)

Datuk Ahmad Nizam Salleh

Head of PETRONAS

 

(2) Malaysia政府PR5/8付け:

https://www.pmo.gov.my/ms/2020/05/pendekatan-penyelesaian-isu-produk-petroleum-di-antara-sarawak-dan-petronas-2/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます

(訳:PT JAC Consulting Indonesia)

MEDIA PRESS RELEASE

THE PRIME MINISTER'S OFFICE

Since the effort to review the implementation of the Perjanjian Malaysia 1963 (Malaysia Agreement 1963), which officially commenced in December 2018, the Kerajaan Negeri Sarawak (State Government of Sarawak) and Petroliam Nasional Berhad (PETRONAS) have successfully reached a consensus to opt for settlement through negotiations regarding the matters of oil and gas as well as sales tax on petroleum products in Sarawak.

This is a sustainable approach as viewed from the long-term economic, financial and social aspects of the country. It is also in line with government policy, namely Visi Kemakmuran Bersama (Vision of Common Prosperity), which aims for the common prosperity of the country throughout all income groups, ethnic groups and territories in this country. In addition, the solution will provide a leeway to the State Government of Sarawak for joint involvement in the development of the oil and gas industry together with PETRONAS in this state, without changing the role of PETRONAS as the national oil company with full power in regulating all aspects of the oil and gas industry development of the country, in accordance with the Federal Constitution. The committee to be chaired jointly by YB (Honorable) Minister of Works and YB Minister of Finance will ensure negotiations continue into the direction of income to be received by all parties.

YAB (The Most Honorable) Tan Sri (second most senior federal title or civilian honor and a honorific reference) Muhyiddin Hj Mohd Yassin

Prime Minister of Malaysia

8 May 2020


以上

(この報告は2020年7月7日時点のものです)

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