ページ番号1008802 更新日 令和2年7月14日

中国:石油・天然ガス貯蔵・輸送インフラの整備を進める政府と企業の“適応”

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レポートID 1008802
作成日 2020-07-14 00:00:00 +0900
更新日 2020-07-14 15:14:25 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場天然ガス・LNG
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 24
抽出データ
地域1 アジア
国1 中国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2020/07/14 竹原 美佳
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概要

  • 2020年5月22日からの中国全人代の政府活動報告においてエネルギー安全保障が重要課題の一つとなり、エネルギーの貯蔵能力を向上させる方針が示された。これを受けて6月に国家発展改革委員会が「2020年のエネルギー安全保障に関する指導意見」を発表、輸送・貯蔵インフラ整備やピーク調整能力の向上などが示された。
  • 天然ガスの輸送・貯蔵インフラは政府主導で集約化の動きが進む。政府は国有石油会社寡占の輸送・貯蔵を分離し、新たに設立した国家石油天然気管網公司(PipeChina)に輸送・貯蔵を一元管理させ、第三者による投資、利用の促進を図ろうとしている。9月末までに国有石油企業からPipeChinaへのLNG受入基地や天然ガス地下貯蔵設備の一部について操業者移転を先行的に進める模様。
  • 一方、国有石油企業やその他事業者によるLNG受入基地の拡張・新設が進んでおり、受入能力は2025年までに倍増し1億5,000万トンに達する勢いである。国有石油企業はPipeChinaとの交渉で有利なポジションを得ること、その他事業者は独自基地、LNGの自己調達で利益を上げることが目的の模様。
  • 2025年には民間および地方政府系ガス事業者のLNG受入基地の受入能力が中国の受入能力全体の3割に増加、今後余剰能力の拡大が見込まれる。一方、新増設は必然的に新たなLNG売買契約を一定量伴うため、中長期的に輸入LNGの増加が見込まれる。
  • 天然ガス輸入・輸送を主に担ってきた国有石油企業各社は“PipeChina時代”に適応するため、天然ガスの調達やガス小売事業の強化・販売体制の見直し等に着手。また地方政府、企業と協力しLNGバンカリングなどPipeChinaの業務に含まれない新規ビジネスにも着目している。
  • CNOOCは国内初のカーボンニュートラルLNG取引により、輸入事業者としての存在感や他社との差別化をアピール。
  • PetroChinaはPipeChinaへのパイプライン資産、ガス輸送ビジネス移譲に伴う輸送収入減少を見越して収益構造、ガス調達の見直しを図る。スポットを含むLNGの輸入を増やし、ロシアからの輸入ガスに比べ輸送距離が長く、割高な中央アジアからのパイプラインガス輸入を抑制するのではないか。PetroChinaの天然ガス調達戦略の変化は中国全体の天然ガス調達の情勢に大きな影響を与えることになるだろう。
  • 原油貯蔵インフラについては、新型コロナ後の経済対策(固定資産投資)、OPEC協調減産ならびに米国の制裁による調達の変化などへの適応という観点から、企業が柔軟かつ経済的な調達を目指し商用貯蔵設備の増強を進めている模様だ。
  • 中国は10億バレルを超える原油貯蔵能力を持つと見られるが、商業貯蔵設備の増強が進む。国有石油企業のみならず恒力石化(Hengli)などの地方製油所が原油商業貯蔵設備の拡張・新設を進めており、2020年中に原油貯蔵容量が1億バレル程度増加の見込み。特に地方製油所が集結し大型タンカーが接岸可能な主要石油港を擁する山東省における貯蔵設備の増強が進む見通し。
  • 貯蔵インフラが整備されることで中国の事業者はより柔軟かつ経済的な調達が可能となり、買い手としてのポジションがさらに強まるのではないか。

(北京事務所、SIA、ICIS、Platts、EIG他)


はじめに. エネルギー安全保障と貯蔵能力向上を図る政府

2020年5月22日に開幕した第13期全国人民代表大会(全人代)の政府活動報告において、食糧・エネルギーの安全保障を含む「6つの安定」(残りは雇用、民生、市場主体、産業サプライチェーン、末端の行政運営の保障)が重要課題として示された。エネルギー安全保障についてはクリーンで効率的な石炭利用の促進と、再生可能エネルギーの発展、石油・天然ガスならびに電力の生産・供給・販売体系の整備とエネルギー貯蔵能力を向上が指摘されている。昨年に続き石炭利用のクリーン化を第一にあげているが、今年は石炭の利用の「効率化」に言及している。また、エネルギー貯蔵能力の向上について、新たに触れている。

6月12日には国家発展改革委員会(NDRC)と国家能源(エネルギー)局が「2020年のエネルギー安全保障に関する指導意見」を発表した(表1)。同指導意見における石油・天然ガス関連部分では、まずエネルギー生産・供給能力の向上として石油・天然ガスの生産安定を図ることが示された。次に、エネルギー輸送インフラ建設の推進として、石油・天然ガスパイプラインの建設および整備が示された。全国のパイプライン網の一元化により石油・天然ガス輸送能力と供給保障レベルを向上させるとともに天然ガスパイプライン網の相互接続を進め、地域・企業・ガス源の相互補完による供給・輸送効率向上を図るとされている。また製油所への原油供給と消費地における石油製品のニーズに合致する石油製品パイプラインの建設を進め、石油製品のアンバランスと輸送のボトルネックの解消を図るとある。さらに石油・天然ガスの安定的な輸入を図ることや石油・ガス開発企業と輸送企業の連携強化が奨励されている。

また、貯蔵能力の増強について、石油については具体的な言及は無く、天然ガス貯蔵設備の建設加速が示された。ガス地下貯蔵設備とLNG貯蔵タンクの総合的な計画・配置を行い、ガス貯蔵施設の集中的・大規模な建設を推進する。また各省・直轄市政府がガス貯蔵設備の建設計画を整備し、地方政府(市区町村レベル)や企業に対して共同出資等を通じ、ガス貯蔵設備の投資費用やメリットを分担・享受できるような形で建設への自主的な協力を促すとある。またエネルギー需給管理として天然ガスのピーク調整能力の向上が示された。ピーク時(需給調整)ユーザーリストならびに緊急時供給保障計画を作成し、ピーク時の供給を状況に応じ実施する。家庭用における石炭からガスへの燃料転換向けのガスを確保した上で、学校、病院、老人福祉施設、集中暖房(熱・ガス供給)、公共バス・タクシーのガス需要に優先的に供給を行うとされている。

表 1:「2020年のエネルギー安全保障に関する指導意見」のポイント(石油・天然ガス部分抜粋)
表 1:「2020年のエネルギー安全保障に関する指導意見」のポイント(石油・天然ガス部分抜粋)
「2020年のエネルギー安全保障に関する指導意見」(2020年6月、国家発展改革委員会・国家能源局)に基づき作成

1. 政府主導で輸送・貯蔵インフラの集約化が進む天然ガス

1.1 国家石油天然気管網公司(PipeChina)始動

天然ガスの輸送・貯蔵インフラについて政府主導で集約化の動きが進んでいる。政府は国有石油会社が独占している生産と輸送・貯蔵を分離し、新たに設立した国家石油天然ガス管網集団公司(略称国家管網公司、以下PipeChina)に輸送・貯蔵を一元管理させ、第三者を含む投資、利用の促進を図ろうとしている。

2019年12月に誕生したPipeChinaは国有石油企業の管理・監督を行う国有資産監督管理委員会(以下、国資委)が40%、国有石油企業3社が60%(CNPC30%、SINOPEC20%、CNOOC10%)出資している(図1)。PipeChinaは司局級の中央企業だ。中央企業とは国家経済と国民生活に係わる重要な国有企業約100社で国有資産監督管理委員会(以下、国資委)が管理、監督する。国有3社は副部長級の中央企業でトップを中国共産党組織部が任命するが、司局級の中央企業のトップは国資委の担当部局が任命する。PipeChinaの所在地は国有石油企業3社と同じ北京市朝陽区である。

図 1:PipeChinaの出資構成
図 1:PipeChinaの出資構成
JOGMEC作成
表 2:PipeChinaの概要
表 2:PipeChinaの概要
JOGMEC作成

PipeChinaの初代董事長(会長)に就任した張偉(Zhang Wei)氏(51歳)は国有3社と同じ中央企業であり、石油の貯蔵、トレーディング、精製石化事業を行う中化集団(SINOCHEM)の出身で、同社で20年以上の経験を積んでいる。中央企業トップとしては最も若手のようだ。張氏は2018年12月にCNPC総経理に就任したが、PipeChina就任に伴いCNPC総経理職を退任した。総経理(社長)は元PetroChina総経理の候啓軍(Hou Qijun)氏である。弁公室(総務)、人力資源部(人事)、党宣伝部、戦略発展部、財務資産部、法律合規部(法務)、品質安全環境保護部、巡視審計部(審査)、規律検査部、生産経営本部、工程建設本部(エンジニアリング)、資産整合性本部、科学技術情報部が設けられている。従業員は500名で国有石油企業3社からPipeChinaに転籍となるようだ。2020年6月の時点で350名が着任しているという。

PipeChinaには、国有石油企業3社が全てまたは一部を出資する天然ガス幹線パイプライン(4MPa以上)および各省(地方政府)が管理するパイプライン、LNG受入基地、天然ガス貯蔵設備に関する資産、人員、業務が配置される。

中国の天然ガス供給構造を表3に示した。天然ガスパイプラインは2019年末現在約80,000キロメートルある。このうち53,000キロメートルはPetroChinaが占め、CNOOCとSinopecが操業するパイプラインを合わせ3社合計でパイプラインネットワークの8割を占める。LNG受入基地は2019年末現在22基地(受入能力計7,500万トン)が稼働中である。国有石油会社3社が受け入れ能力の9割を占めるが、新奥(ENN)、申能(Shenergy)、九豊(Jovo)、広匯能源(Guanghui)、深圳燃気(Shenzhen Gas)などの民間・地方政府系企業が独自に基地を建設している。

ガス地下貯蔵設備は2019年末現在24か所が稼働中で、取り出し可能量(ワーキングガス)は215億立方メートルである。地下貯蔵設備は主にPetroChinaとSinopecが枯渇油ガス田を利用し建設、操業している。ちなみに天然ガス13次五か年計画(2017年1月公表)において地下貯蔵のワーキングガスを2015年の55億立方メートルから2020年までに148億立方メートルに増強することが拘束力のある目標として設定されていたが、その目標はすでに達成している。なお、2018年4月に国家発展改革委員会が公表した「天然ガス貯蔵設備建設の加速ならびにピーク需要向けガス貯蔵システム構築に関する意見」において、2030年までの目標としてのワーキングガス目標350億立方メートル、ピーク需要向けガス貯蔵目標として卸売事業者が供給の10%(約36日)、都市ガス配給事業者が需要の5%(約18日)、各地方政府が消費の3日分の在庫を持つという新たな目標が設定されている。

一方、天然ガス13次五か年計画では天然ガス幹線パイプライン総延長について拘束力のある目標ではないが、2020年に10万キロメートルと設定されているが、目標達成は困難と思われる。

国有石油企業3社からPipeChinaに移譲する資産は400億から700億ドルに相当し、3社は対価に相当するPipeChinaの株式を取得し、不足分は政府が補填する方針である。しかし上場企業の保有資産の評価、移譲プロセスには時間を要するため、2020年9月末までにLNG受入基地や天然ガス地下貯蔵設備など一部資産の操業権の移譲を先行的に進めるようだ。

表 3:中国の天然ガス供給構造
表 3:中国の天然ガス供給構造
各種資料に基づき作成

1.2 PipeChinaに操業権が移譲予定のLNG受入基地と天然ガス地下貯蔵設備

LNG受入基地は建設・計画中を含む10基地(受入能力計3,360万トン)が移譲される見込みである(図2、表4)。このうち稼働中基地の受入能力は2,260万トンで中国の現在の受入能力の3割に相当する。中国最大のLNG輸入事業者で稼働中基地の受入能力の5割を占めるCNOOCから7基地(受入能力計2,160万トン)が移譲される。このうち稼働中の基地は2019年に完成した受入能力60万トンの小規模基地である広西壮族自治区・防城港(Fangchenggang)の他、天津市天津FSRU、広東省掲陽(Jieyang)、広東省深圳市迭福(Tiefu)、海南省洋浦(Yangpu)の5基地(受入能力計1,360万トン)である。建設中の基地は山東省龍口(Longkou)と福建省漳州(Zhangzhou)の2基地(受入能力計800万トン)である。稼働中基地の受入能力の4分の1を占めるCNPCからは稼働中の遼寧・大連(Dalian)基地(受入能力600万トン)と計画中の広東省・迭福北(Diefubei)基地(受入能力300万トン)の2基地が移譲される。稼働中基地の受入能力の2割弱占めるSinopecからは稼働中の広西・北海(Beihai)1基地(受入能力300万トン)が移譲される。

2020年4月にPipeChinaはCNOOCと油ガスインフラの事業管理権移譲協定を締結した。5月16日にPipeChinaはCNOOCから譲渡された山東・龍口(Longkou)LNG受入基地の起工式を行った。龍口基地は当初CNOOC傘下のCNOOC Gas & Power(60%)と南山集団(40%)が計画、2017年9月に国家発展改革委員会(NDRC)から建設の承認を受けている。1期は受入能力年500万トンで、22万立方メートルのLNG貯蔵タンク6基と8万から26万立方メートルのLNG船が入港可能な桟橋(1万から18万立方メートルの再出荷が可能)ならびに気化器等を備える。2023年に完成予定である。

天然ガス地下貯蔵設備は12か所(ワーキングガス77億立方メートル)が移譲される見込みである(図3、表5)。いずれも稼働中で地下貯蔵設備全体の4割に相当する。CNPCからは天津市・板橋(Banqiao)、京(Jing)58、江蘇省・劉荘(Liuzhuang)の10か所(ワーキングガス41億立方メートル)が移譲される。Sinopecからは河南省中原・文(Zhongyuan・Wen)96および文23(2019年に完成)の2か所(ワーキングガス3.6Bcm)が移譲される。

図 2:PipeChinaに移譲予定のLNG受入基地
図 2:PipeChinaに移譲予定のLNG受入基地
天然ガスリファレンスブック2019を加工
表 4:PipeChinaに移譲予定のLNG受入基地
表 4:PipeChinaに移譲予定のLNG受入基地
各種資料に基づき作成
表 5:PipeChinaに移譲予定のガス地下貯蔵設備
表 5:PipeChinaに移譲予定のガス地下貯蔵設備
各種資料に基づき作成
図 3:PipeChinaに移譲予定のガス地下貯蔵設備
図 3:PipeChinaに移譲予定のガス地下貯蔵設備
卓創(SCI)、CNPC、燃気網、ICIS等に基づき作成

2. 企業の“PipeChina時代”への適応

2.1 LNG受入基地の拡張・新設加速 -2025年に受入能力1億5,000万トンへ-

天然ガス13次五か年計画の目標を下回ることが確実な天然ガスパイプラインの建設ペースとは対照的にLNG受入基地の拡張・新設が進んでいる。国有石油企業およびその他のLNG輸入事業者のいずれも熱心に取り組んでおり、受入能力は2025年までに倍増し1億5,000万トンに達する勢いである。

2019年のLNG輸入は前年比13%増(700万トン増)の6,070万トンでGIIGNLによると世界のLNG輸入の17%は中国が占める。IEAは2020年6月に発表した“Gas 2020”において、中国はインドその他アジア新興国とともにLNG輸入増加をけん引し、2023年に世界最大のLNG輸入国となる。さらに2025年には中国が世界のLNG貿易量の22%(9,400万トン)を占めると見ている。

業界紙のICISは2025年までに20基地以上の新設・増強により受入能力が少なくとも8,000万トン増加すると見ている。北京ベースのコンサルタントSIA EnergyはLNG受入基地の新設・拡張により2025年には受入能力が1億3,000万トンを超えると見る。また民間・地方政府系ガス事業者のLNG受入基地の受入能力が現在の1割から3割に増加すると見ている。製油所と同様ここでも国有石油企業と民間・地方政府系ガス事業者との競合が激しくなり、余剰能力が拡大すると思われる。一方、新増設は必然的に新たなLNG売買契約を一定量伴うため、中長期的に輸入LNGの増加が見込まれる。

図 4:中国のLNG輸入量と受入能力(2025年は見通し)
図 4:中国のLNG輸入量と受入能力(2025年は見通し)
SIA、ICIS、IEAに基づき作成

国有石油企業は基地建設とLNGサプライヤーとの売買契約を先に進め、PipeChinaとの交渉で有利な立場に立ちたいと考えているようだ。民間・地方政府系ガス事業者は自社の末端消費者に十分な供給が行える独自の基地を持つことで裁量の余地が増え、利益を上げることができると考えているようだ。そのために、彼らはLNGを国有石油会社から購入するのではなく、サプライヤーとの直接契約により調達したいと考えている。中にはLNG取引の実績があると銀行からの信用状が低コストで入手できるのでそれを利用して金融分野に進出したいと考えている事業者もいるようだ。


2.2 国有石油企業によるガス小売り事業の強化、新規ビジネス着目の動き

天然ガス輸入・輸送を主に担ってきた国有石油企業各社は“PipeChina時代”に適応するため、天然ガスの調達やガス小売事業の強化・販売体制の見直し等に着手している。また地方政府、企業と協力しLNGバンカリングなどPipeChinaの業務に含まれない新たなビジネスにも着目している。CNOOCはカーボンニュートラルLNGの取引を国内で初めて実施、国内最大のLNG輸入事業者としての存在感をアピールしている。

【PetroChina】

PetroChinaは傘下の崑崙能源(Kunlun)を通じ都市ガス会社への資本参加、M&Aなどによりガス小売りビジネスの強化を図ろうとしている。またPetroChinaは地方政府と共同でLNGバンカリング事業を行う。2020年6月3日にPetroChina傘下の中国石油天然気販売広東分公司は広東省深圳市塩田区政府、塩田港集団、深圳燃気(Shenzhen Gas)、と広東・香港・澳門大湾区(通称「大湾区」)初となるLNGバンカリングセンターを建設することで合意した。8,000~10,000立方メートルの船舶にLNGを供給する。まず年23万トンを供給する能力を持ち、将来的に年200万トンに拡張する計画である。

【Sinopec】

Sinopecはガス販売会社を再編する。地域毎の販売会社を細分化し華南(広東)、川気東送(湖北)、華北区(京津)、山東、河南、河北、浙江、云貴、広西、安徽、山西、湖南、江蘇ならびに江西省天然気銷售公司の14の省・地域販売会社に再編することで地域に密着した販売、市場の開拓を目指している。

表 6:国有石油企業各社のガス小売り事業強化、新規ビジネス着目の動き
表 6:国有石油企業各社のガス小売り事業強化、新規ビジネス着目の動き
各種情報に基づきJOGMEC作成

【CNOOC】

PetroChinaだけではなく、CNOOCも地方政府と共同でLNGバンカリング事業を行うことで合意した。CNOOCは5月29日に広東省政府と造船大手中国船舶集団(CSSC)と広東省内陸部河川におけるLNGバンカリングを推進することで枠組み合意した。2025年までに内陸河川向けLNG燃料船1,500隻(改造船)、LNG充填ステーション19か所を建造する。全面完成後LNGの船舶向け需要は年40万トンとなる。初歩的な試算によると船舶由来の窒素酸化物(NOx)12.6%、粒子状物質(PM)19.5%の削減につながるという。PetroChinaとCNOOCが相次いでLNGバンカリング事業に乗り出した背景に、中国政府が内陸河川におけるクリーンエネルギー利用の強化を図っていることがある。2020年5月29日に交通運輸部が「河川海運整備要綱」を発表している。同要綱ではクリーンエネルギーの普及・活用の拡大、LNGの省エネ・環境対応型船舶の推進、内陸水路の水質改善、内陸水路の整備の推進などが示された。

またCNOOCは中国初となるカーボンニュートラルLNGの取引を行った。2020年6月にShellから2カーゴ購入した。CNOOC Gas & Power会長の武文莱氏は「中国最大のLNG輸入事業者として消費者に安全かつ信頼できるグリーン・低炭素なエネルギーを提供(発電後、約30万世帯の1年分のクリーン電力需要に相当)。また温室効果ガスの吸収、生態系保護、当該地域の収入・雇用拡大、貧困からの脱却にもつながる」と述べている。

今回のカーボンニュートラルLNGは2020年5月にShell Energyが青海省林業・草原局から同省東部河湟地区における造林事業の炭素クレジットの認証(認証された排出削減量は25.46万トン)など中国“nature-based”プロジェクトとのカーボンオフセットによる取引である。業界紙によると最近のカーボンニュートラルLNGの取引には百万Btuあたり60セント程度のプレミアムが付加される模様だが、今回のプレミアムについては不明である。CNOOCはLNGを上海石油天然ガス交易センター(SHPGX)で入札にかける。SHPGXは政府主導で設立された天然ガス・LNG現物取引所である。CNOOCはSHPGXに10%出資しており、またLNG受入基地の能力を一定期間、一定量第三者に開放する“ウィンドウ取引”を実施するなど同取引所と密接に連携している。

SHPGXのLNGの現物取引は1件あたりの取引量は1,000トン未満が多く、最大10万トン程度である。LNG船(カーゴ単位)よりもトラック(ローリー)による引き渡しが多い。今回のLNGは、5,000トンから1万トンに細分化され、落札者にパイプラインまたはトラックで引き渡される予定だ。第1船は10月1日から12月31日、第2船は21年1月1日から3月31日に到着する。入札者の条件に炭素排出は含まれず、中国にオフィスまたは支社があれば外国企業も参加可能(取引は人民元建て)である。需要期である秋冬の引き渡しのため価格は現在のレベルより高くなるが、LNGはパイプラインガスより割安のため関心は高くなるという。CNOOCの懐は痛まない形だ。むしろ、同社のLNG輸入事業者としての存在感やSHPGXとの連携(他社との差別化)のアピールにつながっているのではないか。

新華社によると北京におけるCO2排出権取引は全国7カ所のモデル都市のひとつとして、2013年11月に始まっている。北京市排出許容量(BEA)、中国認定排出削減量(CCER)などの取引が行われている。6月時点で、BEAの累計取引量は3,647万トン、成約額は14億9,100万元(224億円)、CCERの累計取引量は2,495万トン、成約額は1億6,700万元(25億円)に達しているという。生態環境部が2019年6月に「大規模な活動におけるカーボンニュートラル実施要領(試行)」を出し、各地で炭素クレジットの付与が始まっている模様である。


2.3 PipeChinaとLNG受入基地増強により天然ガス調達に変化が生じる? ―輸入LNGに中長期的な優位性―

中国は2006年にLNGの輸入を開始し、2010年にパイプラインの輸入を開始した。元々中国は陸路による輸入がエネルギー安全保障上有効としてロシアからの天然ガス輸入交渉を1990年代から行っていた。中央アジアからのパイプラインガス輸入開始後2012年にはパイプラインガスの輸入比率が52%とLNGを上回った。しかし2015年をピークにパイプラインガスの輸入比率は低下し2019年には37%に落ち込んだ(図5)。2016年から2018年にかけては石炭から天然ガスへの転換政策による急激な需要の増加をLNGの輸入で対応した形になっている。

図 5:パイプラインガス・LNG輸入の推移
図 5:パイプラインガス・LNG輸入の推移
新華社、SIA等に基づき作成

2019年に入ると石炭から天然ガスへの転換政策の緩和とともに需要の伸びが鈍化した。国産ガス供給政策の下で輸入ガスが抑制されたが、輸入LNGの伸びの鈍化よりもパイプラインガスの輸入の落ち込みが激しかった。その理由の一つは2018年以降民間・地方政府系企業の出資者としての受入基地利用(TUA)や独自のLNG受入基地建設・輸入が進んだことが影響していると思われる。今後LNG受入基地の余剰能力が増大することが見込まれるが、新増設は新たなLNG売買契約を一定量伴うため、中長期的に輸入LNGの優位性が維持されると思われる。

PipeChinaへの資産移譲で最も影響を受ける企業はPetroChinaである。PetroChinaは天然ガスパイプラインの7割を操業しており、またパイプラインによる中央アジア、ミャンマー、ロシアからの輸入は同社が一手に担っている。天然ガスパイプラインの輸送価格はパイプライン会社毎に政府が統制しているが、8%のマージンが保証されており、輸送部門では安定した収入を得ることができる。しかしPetroChinaは天然ガス輸入で毎年損失を出しており政府の補てんはない。陸上の在来型ガスと輸入パイプラインガス(2019年12月に輸入を開始したロシアを除く)の各省・地域への卸価格(シティゲート価格)は中央政府が上海の代替燃料(重油・LPG)の輸入価格(重油60%、LPG40%の加重平均)に基づき基準価格を定めている(表7)。基準価格から上下20%の変動が認められてはいるが、PetroChinaは2019年に天然ガスパイプライン事業の営業利益38億ドルを出したが、ガス輸入に伴う純損が45億ドルである(図6)。

表 7:中国の天然ガス価格統制
表 7:中国の天然ガス価格統制
各種資料に基づき作成
図 6:PetroChinaの天然ガス部門営業利益とガス輸入に伴う損失
図 6:PetroChinaの天然ガス部門営業利益とガス輸入に伴う損失
PetroChina 年報に基づき作成

業界紙ICISによると中央アジアパイプラインガスの長期契約は1年前の油価と連動している。LNGのスポット価格は安値で推移しているのはもちろんだが、長期契約(油価連動)のLNGも3か月前の価格に連動しており、輸入パイプラインガスの独歩高となっている。現在PetroChinaは中央アジアからのパイプラインガスに輸送コストを加味すると輸入LNGよりも百万Btuあたり5ドル程度余分に支払うことになるため輸入を抑制している(中央アジアからの2020年1月から5月の輸入は前年同期比13%減)。今後PetroChinaはPipeChinaにパイプライン資産ならびにガス輸送ビジネスを移譲しなければならず、輸送部門の収入が減少し、天然ガス輸入の赤字が膨らむことになるため収益構造、ガス調達の見直しを図ろうとするだろう。その場合まずスポットを含むLNGの輸入を増やし、ロシアからの輸入ガスに比べ輸送距離が長く、割高な中央アジアからの輸入を抑制するのではないか。PetroChinaの天然ガス調達戦略の変化は中国全体の天然ガス調達の情勢に大きな影響を与えることになるだろう。

図 7:割高な中央アジアからのパイプラインガス輸入を抑制するPetroChina
図 7:割高な中央アジアからのパイプラインガス輸入を抑制するPetroChina
出所:ICIS(June 25, 2020)

3. 企業主導で商業貯蔵設備の増強が進む原油

3.1 中国の原油貯蔵容量と備蓄量

IEAによると、世界の原油貯蔵能力は国家備蓄(SPR)と商業在庫を合わせ67億バレルあり、2020年5月末時点で原油51億バレルが貯蔵されており、スペアキャパシティは2億5500万バレルである。米エネルギー情報局EIAによると米国の2020年7月3日時点の原油在庫はSPRが6億5,602万バレル、原油商業在庫は5億3918万バレル、計11億9,520億バレルである。2019年の精製処理能力(日量1,897万バレル)をベースに計算すると63日分となる。日本の石油備蓄は国家備蓄と民間備蓄(原油と石油製品)、産油国共同備蓄(原油)により構成されている。2020年4月末現在の原油備蓄量は4億200万バレルで2019年の精製処理能力(日量334万バレル)をベースに計算すると120日分となる。

中国は米国に比肩する10億バレル以上の貯蔵能力、在庫(備蓄)を持つと見られるが、体系的な貯蔵能力や在庫量の公表情報は無く、分類が不明瞭で正確に把握することは難しいとされる。

中国の石油備蓄は国家備蓄(SPR)と企業備蓄、製油所在庫により構成されている。SPRを所管するのは国家発展・改革委員会傘下の国家糧食・物資備蓄局で備蓄実施主体は中国国家石油備蓄センター(NORC)である。2010年までに1期4基地(貯蔵容量1億332万バレル)が完成し、2期8基地(増強を含む、貯蔵容量1億3,482万バレル)が2020年中に完成予定である(図8)。SPRについて2017年12月に国家統計局が一部民間タンクの借り上げを含む備蓄量を2億7,500万バレルと公表したが、その後更新されていない。国家能源局が2016年5月に民間備蓄の制度等を盛り込んだ「国家石油備蓄管理条例」のパブリックコメントを募集したが、まだ正式な法令は公表されていない。IEAによると精製企業に15日分の備蓄義務が課されているという。

IEAによると中国は2019年時点でSPRと企業を合わせ7億8,800万バレルの原油備蓄量を保有していた(図9)。2019年の精製処理能力(日量1,620万バレル)をベースに計算すると49日分となる。SPR2億7,500万バレルは精製処理能力の17日分、石油消費(日量1,406万バレル)の20日分に相当する。精製処理能力の15日分の企業の備蓄義務量は2億4,300万バレルとなる。残りの製油所在庫(原油商業在庫)は2億7,000万バレルとなる(原油商業在庫が少ないように見えるが、IEAの示した“原油備蓄量”に製油所運転在庫が全て含まれているかは不明)。ちなみに国有石油会社3社が精製処理能力全体の6割を占める。SinopecとPetroChinaの2019年の製油所稼働率は84%だが、地方製油所の稼働率は60~70%程度である。

図 8:中国の国家備蓄基地
図 8:中国の国家備蓄基地
JOGMEC作成
図 9:中国の原油貯蔵量、貯蔵能力推計
図 9:中国の原油貯蔵量、貯蔵能力推計
国家統計局、IEA、各社年報等に基づき作成

3.2 国有石油企業、地方製油所大手が原油商業貯蔵設備の拡張・新設を加速

2020年は新型コロナウイルス感染拡大を受けて1月24日に全土で旧正月の大型休暇に入ると同時に都市封鎖(ロックダウン)を実施した。2月下旬に規制が緩和(地域をリスクレベル別に管理)され、企業活動が徐々に再開した。しかし2月と3月の石油需要は大きく落ち込んだ。IEAによると、2020年第1四半期の石油需要は前年同期比10%減(日量130万バレル減)の日量1,185万バレルである。石油需要急減に対し精製事業者は製油所の稼働率を落とした(IEAによると2020年第1四半期の精製処理量は前年同期比5.6%減の1,190万バレル)。またスポットを中心に原油輸入を削減あるいは再販することで対応した。しかし2月と3月には原油と石油製品の在庫が積みあがった。4月以降需要が回復し、精製処理量は3月の日量1,170万バレルから4月には同1,300万バレル、5月には同1,360万バレルに上昇し在庫は解消に向かったと報じられていた。しかし3月下旬の原油価格下落を受けて企業が安価な原油に飛びつき、在庫が再び増加に転じた格好だ。タンカー追跡データ会社Kplerによると、中国の原油在庫は6月29日の週に推計8億5,500万バレルに達した模様である(図10)。その上山東省などの港湾が混雑し、荷卸しまでに2週間以上待機するタンカーが列をなし4,300万バレルの原油が浮かんでいたという。5月に中国の原油輸入は日量1,134万バレルと記録を更新、輸入増加が7月まで続くが8、9月渡しの購入はさすがに縮小している。7月初旬には中国の経済指標好転が原油価格を上向かせる一方で、原油貯蔵余力と購買意欲低下に対する懸念が下押し圧力になることもあった。

図 10:原油価格と中国の在庫増減推移
図 10:原油価格と中国の在庫増減推移
各種情報に基づき作成

このような状況の中、国有石油企業のSinopecやPetroChinaのみならず地方製油所が原油商業貯蔵設備の拡張・新設を進めており2020年中に山東省を中心に原油貯蔵容量が1億バレル増加する見込みである(表8)。山東省は中国の精製処理能力の4分の1(日量420万バレル、このうち日量260万バレルが地方製油所)が集結する。また青島、日照など大型タンカーが接岸可能な石油港を複数擁する。ちなみに山東省政府は地方製油所の統廃合を進め、2025年までに世界有数の精製ハブとなることを目指している。山東省政府は2022年までに日量6万バレル以下の製油所を、2025年までに日量10万バレル以下の小規模製油所を閉鎖し、2025年までに精製処理能力を30%削減する目標を設定しており、2019年末に10地方製油所(処理能力日量56万バレル、原油輸入枠日量33万バレル)が2022年までの操業終了で地元当局と協定を結んでいる。5月下旬には日照市の金石瀝青(Kinshi Bitumen)の日量6万バレルのプラントが閉鎖され、6月には煙台で日量40万バレルの山東玉龍石化コンプレックスの建設が承認された。閉鎖されるプラントは新設されるプラントの株式を保有することができる。今後山東省では同様の統廃合が進むと見られる。

表 8:2020年に新増設予定の主な原油表 8:2020年に新増設予定の主な原油貯蔵設備(2020年5月時点)貯蔵設備(2020年5月時点)
表 8:2020年に新増設予定の主な原油貯蔵設備(2020年5月時点)
経済観察網、Platts等に基づき作成

山東省以外でもSinopecやPetroChinaならびに地方製油所大手の恒力石化(Hengli)などの地方製油所が原油商業貯蔵設備の拡張・新設を進める。

Sinopecは2020年中に山東省青島・董家口(Dongjiakou)の他河南省洛陽(Luoyang)石化の増強などを進める。洛陽石化は2021年までに精製処理能力を現在の日量16万バレルから20万バレルに増強する。これに伴い貯蔵設備を80万立方メートル(504万バレル)増強する。また地方製油所大手の恒力石化(Hengli)は遼寧省で処理能力日量40万バレルの精製・石化プラントを操業中だが、年内に貯蔵容量を倍増させる計画である。同社は遼寧省大連長興島(Changxing island)に貯蔵容量10万立方メートルの原油貯蔵タンク32基計320万立方メートル(2,016万バレル)の貯蔵設備を保有しているが、2020年に15万立方メートルの原油貯蔵タンク24基計360万立方メートル(2,268万バレル)の増設を行う。完成後の貯蔵容量は680万立方メートル(4,284万バレル)となる。

このように原油貯蔵インフラについては、新型コロナ後の経済対策(固定資産投資)ならびにOPEC協調減産、米国の制裁による調達の変化への適応という観点から企業が柔軟かつ経済的な調達を目指し商用貯蔵設備の増強を進めている模様である。


3.3 石油貯蔵インフラ整備により中国の買い手ポジションがさらに強化?

中国は世界最大の原油輸入国である。2019年の原油輸入は日量1,019万バレル(9万バレルを輸出しており純輸入量は1,010万バレル)で、世界の原油輸入の2割を中国が占める。

2019年はサウジアラビアからの輸入が最も多く、前年比47%増の日量167万バレルであった(図11)。米国の対イラン制裁の影響でイランからの輸入を減らしたことがサウジアラビアからの輸入拡大につながった。イラク、UAEからの輸入も増えており、中東地域からの輸入は前年比11%増の日量449万バレルで輸入比率は44%である。

ロシアからの輸入は前年比9%増の日量155万バレルであった。国有企業だけではなく地方製油所がロシア原油を油種や調達の柔軟性の観点から好んでいることに加え、ベネズエラにおける政治・経済的混乱ならびに米国からの制裁でベネズエラから中国向けの原油出荷が減少したことがロシアからの輸入増加につながった一因と考えられる。ベネズエラ原油の一部がロシアのトレーディング企業を介して中国に供給されたとも報じられている。またマレーシアからの輸入が前年比36%増の日量24万バレルと大きく伸びたが、この一部はイランやベネズエラ原油がマレーシア沖合で積み替えられたものと報じられている。米国の制裁等に起因する調達の不安定性も中国のエネルギーセキュリティ意識を高めていると思われる。

図 11:中国の主な原油輸入相手国(2019年)
図 11:中国の主な原油輸入相手国(2019年)
新華社に基づき作成

近年中国の原油調達は米国のイランやベネズエラに対する制裁、新型コロナウイルス、OPECプラス協調減産による変動にさらされている。しかし中国はバーゲニングパワーを遺憾なく発揮しているようだ。中国の5月のサウジアラビアからの原油輸入量は過去最高の日量216万バレルを記録した。サウジアラビアをはじめとする中東諸国からの原油は中国に到着するまでに約20日かかるため、5月に到着する原油のほとんどは4月に積み込まれる。3月6日のOPECプラス閣僚会合で協調減産の枠組みが崩壊し、一時産油国の増産・価格競争の様相を呈していた。Aramcoは4月積み輸出分の公式販売価格(OSP)を大幅に引き下げた。Energy Intelligenceによるとアジアの精製業者が原油の追加購入を求めたが、要求を拒否あるいは契約量を削減されたものすらいた。しかし中国は迅速に動きAramcoは重要な顧客である中国に驚異的な量を割り当てたという。Aramcoは国有石油会社(Unipec、China Oil、CNOOC、Sinochem)だけでなく、振華石油(Zhenhua)、浙江石化(ZPC)、恒力(Hengli)など大手地方製油所ともターム契約を締結している。4月に沖縄石油基地(日本が貸与)からVLCC3カーゴを浙江省舟山(Zhoushan)に向けたがこれはZPC向けだったようだ。

4月12日にOPECプラスは協調減産合意に至り、Aramcoは7月渡しのOSPを大幅に値上げした。アジア向け引き上げ幅はバレル当たり5.60から7.30ドルと最大であった。今回の値上げにより、サウジアラビアは価格戦争に伴う値下げ分がほぼ帳消しになったが、アジアはそれに貢献したことになる。このような状況の中、Aramcoから6月積みの中国向け供給量は契約量の40%減、7月積みは30%削減されたという。しかし中国は5月から6月にかけて在庫が積み上がり、港湾の混雑も起きており、西アフリカや南米など遠距離から調達したカーゴをキャンセルする動きもあったようでダメージは大きくないと思われる。貯蔵インフラが整備されることで中国の事業者はより柔軟かつ経済的な調達が可能となり、買い手としてのポジションがさらに強まるのではないかと思われる。


さいごに

2020年5月の全人代でエネルギーの安全保障が重要課題となり、貯蔵能力を向上させる方針が示された。政府は国家石油天然気管網公司(PipeChina)を設立し、石油・天然ガスの輸送・貯蔵を一元管理させ、第三者を含む投資、利用の促進を図ろうとしている。PipeChinaは2020年9月末までに国有石油企業が主に操業するLNG受入基地や天然ガス地下貯蔵設備の一部について“操業権”の移譲を先行的に進める。天然ガスの輸送・貯蔵インフラは政府主導で集約化の動きが進む。

一方、国有石油企業およびその他のLNG輸入事業者がLNG受入基地の拡張・新設を加速。受入能力は2025年までに倍増し1億5,000万トンに達する勢いである。国有石油企業はPipeChinaとの交渉で有利な立場に立つこと、民間・地方政府系ガス事業者は独自の基地により裁量が増え、利益を上げることが狙いと見られる。2025年には民間および地方政府系ガス事業者のLNG受入基地の受入能力が全体の3割に増加、余剰能力拡大の可能性がある。一方、新増設は新たなLNG売買契約を一定量伴うため、中長期的に輸入LNGの増加が見込まれる。

国有石油企業各社は“PipeChina時代”に適応するため、ガス小売事業の強化・販売体制の見直し等に着手している。またLNGバンカリングなど新規ビジネスにも着目。CNOOCは国内初のカーボンニュートラルLNG取引により、輸入事業者としての存在感をアピールしている。

PetroChinaはPipeChinaへの輸送事業移譲に伴う収入減少を見越し、ガス調達の見直しを図る。割高な中央アジアからのパイプラインガス輸入を抑制するのではないか。PetroChinaの天然ガス調達戦略の変化は中国全体の天然ガス調達の情勢に大きな影響を与えることになるだろう。

原油貯蔵インフラは、新型コロナ後の経済対策ならびにOPEC協調減産、米制裁等による調達の変化への適応という観点から国有石油企業のみならず地方製油所が柔軟かつ経済的な調達を目指し原油商業貯蔵設備の増強を進めている模様。2020年中に原油貯蔵容量が1億バレル程度増加する見込みである。貯蔵インフラが整備されることで中国の事業者はより柔軟かつ経済的な調達が可能となり、買い手としてのポジションがさらに強まるのではないかと思われる。

世界の石油と天然ガスの需要をけん引する中国における貯蔵・輸送インフラの整備とそれに伴う調達戦略の変化は世界の石油・天然ガス需給にも影響を与える動きとして注目している。


参考資料

 

以上

(この報告は2020年7月13日時点のものです)

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