ページ番号1008823 更新日 令和2年8月17日

原油市場他: 上方圧力と下方圧力に挟まれる原油価格

レポート属性
レポートID 1008823
作成日 2020-08-17 00:00:00 +0900
更新日 2020-08-17 13:18:08 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 33
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2020/08/17 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和により、ガソリン及び留出油の需要は回復しつつある。他方、石油製品需要の回復期待から製油所の稼働上とともに石油製品生産活動が活発化した。そして、需要の増加が供給の増加によって相殺された結果、7月上旬から8月上旬にかけガソリン及び留出油在庫は比較的限られた範囲で増減した他、両製品とも平年幅上限を上回る状態は維持されている。また、OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国の減産措置に伴い原油輸入が減少したこともあり、米国の原油在庫は減少傾向となったが、平年幅を超過する状態は継続している。
  2. 2020年7月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、欧州では、経済の持ち直しに伴う石油需要の回復と製油所の稼働上昇を見込んで流入した原油の量が原油精製処理量を上回ったことにより、在庫は増加した。しかしながら、米国では減少となった他、日本でもOPECプラス産油国による減産措置の影響で原油輸入が減少したこともあり、在庫は減少した。このため、OECD諸国全体として原油在庫は減少したが、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、米国では暖房シーズンが終了したことによるプロパン需要の低下に伴い当該製品在庫が増加したこと等により石油製品全体の在庫は増加した。また、欧州では、製油所の稼働上昇で石油製品生産が活発化した一方経済活動のもたつきで石油需要が供給に追い付かなかったと見られることが一因となり石油製品在庫は増加した。日本においても、暖房シーズン終了により暖房用の灯油の在庫が積み上がったことや経済及び石油需要の回復が緩やかだったと見られること等により、石油製品の在庫水準は上昇した。このようなことから、OECD諸国全体としても石油製品在庫は増加したうえ、平年幅上限を超過する量となっている。
  3. 2020年7月中旬から8月中旬にかけての原油市場では、経済が改善していることを示唆する指標類、市場の事前予想を上回る米国原油在庫の減少等が、原油価格に上方圧力を加えた反面、米国と中国の対立先鋭化の懸念、トランプ政権と米国議会民主党との同国経済対策を巡る協議の膠着等が、原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格(WTI)は概ね1バレル当たり40~43ドルを中心とする範囲で上下に変動しつつ推移した。
  4. 当面はOPECプラス産油国の減産措置の影響で米国の原油在庫の減少傾向が継続しやすいと見られることや、米国金融当局による金融緩和政策により低コストの資金が原油を含むリスク資産に流入しやすいこと等を考慮すれば、原油価格はこの先暫くの間下落したとしても限定的な規模にとどまりやすいものと見られる一方、新型コロナウイルスワクチン及び治療薬開発状況、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和と経済及び石油需要の回復状況、経済回復のための米国金融当局によるさらなる金融緩和策や米国トランプ政権等による追加の景気刺激策を巡る動向、OPECプラス産油国の減産遵守状況、イラン及びリビアを含む諸国を巡る地政学的リスク要因等の展開次第では、原油価格に上昇傾向が創出される可能性があるものと考えられる。

(IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)


1. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2020年5月の米国ガソリン需要(確定値)は日量719万バレルと前年同月比で23.5%程度の減少となり(図1参照)、速報値(前年同月比で22.2%程度減少の日量731万バレル)から下方修正された。同月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量24 万バレル程度と推定されるところ、確定値では同31万バレルへと上方修正されたことで、この分が同国ガソリン需要の速報値から確定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、当該需要の下方修正の一因になっているものと見られる。また、4月16日に米国のトランプ大統領が自国民の外出規制緩和と経済活動再開への指針を発表したことで、同国では個人の外出規制と経済活動制限が緩和されつつある(5月20日のコネチカット州を以て米国の全50州で部分的であれ個人の外出規制及び経済活動制限が緩和された)ことにより個人の往来が相対的に活発化していることからガソリン需要が持ち直したものの、なお、個人の外出が必ずしも新型コロナウイルス感染拡大に伴う規制導入以前のように完全に自由に行われるようになったわけではなかったこともあり、5月の米国自動車運転距離数は前年同月比で25.5%の減少と、4月の同40.2%減少に比べれば減少幅は縮小しているものの、なお前年同月比で減少していることが、5月の同国ガソリン需要に影響しているものと考えられる。他方、2020年7月の同国ガソリン需要(速報値)は日量867万バレル、前年同月比で8.6%程度の減少となっており、6月の当該需要(速報値)(前年同月比で13.6%減少の日量826万バレル)からは減少幅が縮小していることが覗われるが、米国のテキサス州、フロリダ州及びカリフォルニア州等で7月の新規感染者数が6月のそれを上回るなど、感染が拡大する傾向が見られたこと等から、個人の外出が抑制された格好となった結果、当該需要が前年同月を下回ったものと考えられる。他方、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和に伴い、石油需要増加に対する期待から石油製品価格が持ち直すとともに製油所での精製利幅が改善したことにより、製油所での原油精製処理量が上向く(図2参照)とともにガソリンを含めた石油製品の生産活動が活発化した(ガソリン最終製品生産量は図3参照)ことから、個人の外出規制及び経済活動制限の緩和に伴いガソリン需要が増加傾向となったことにより7月上旬から8月上旬にかけての同国のガソリン在庫水準は比較的限られた範囲内で上下に変動しつつも若干ながら減少傾向を示したものの、平年幅上限を超過する状態は維持されている(図4参照)。

図1 米国ガソリン需要の伸び(2006~20年)

図2 米国の原油精製処理量(2009~20年)

図3 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~20年)

図4 米国ガソリン在庫推移(2003~20年)

2020年5月の同国留出油(軽油及び暖房油)需要(確定値)は日量353万バレルと前年同月比で12.6%程度の減少となったが、速報値である日量336万バレル(同16.8%程度の減少)からは上方修正された(図5参照)。同月の同国からの留出油輸出量が速報値段階では日量87 万バレル程度と推定されるところ、確定値では同73万バレルへと下方修正されたことで、この分が留出油需要の速報値から確定値への移行段階で輸出から国内需要に振り替えられたことが、当該需要の上方修正の一因になっているものと見られる。ただ、同月の当該需要は4月の水準(日量351万バレル)を若干上回る程度にとどまった他、前年同月比での減少率は4月の同11.9%から拡大する格好となっている。同時期新型コロナウイルス感染に伴う経済活動制限は緩和されつつあったものの、その緩和過程が漸進的なものであったこともあり、米国経済の回復は比較的緩やかであったものと見られ、5月の同国の鉱工業生産も前年同月比で15.8%の減少と4月の同16.3%の減少から限定的規模での回復にとどまった(因みに2019年5月の同国鉱工業生産は前年同月比で1.7%程度の増加であった)他、同月の同国の物流活動も前年同月比で8.8%の減少と4月の同9.9%の減少からの減少幅縮小は緩やかであった(因みに2019年5月の同国物流活動は前年同月比で2.2%の増加であった)ことが、留出油需要を前年同月比で相当程度減少させる一因となったものと見られる。他方、2020年7月の留出油需要(速報値)は日量354万バレルと前年同月比で9.5%程度の減少となっており、6月の当該需要(速報値)の同13.7%程度の減少からは減少幅が縮小する兆しが見られる。新型コロナウイルス感染に伴う米国での経済活動制限は4月後半以降緩和されつつあったことから、製造及び物流活動等の経済活動が持ち直してきている(7月の同国の鉱工業生産は前年同月比で8.2%の減少と5月のそれから減少幅が縮小している)ことが、当該需要を押し上げているものと見られるが、なお、新型コロナウイルス感染拡大による経済活動制限導入以前の状態には戻っていないことから、前年同月比では減少となったものと考えられる。他方、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和に伴い、石油製品需要増加に対する期待から石油製品価格が持ち直すとともに製油所での精製利幅が改善したことにより、製油所での稼働が上向くとともに留出油の生産活動も活発化した(図6参照)ことが、留出油需要の回復を相殺する格好となったことから、7月上旬から8月上旬にかけて同国の留出油在庫は比較的限られた範囲で推移していたものの、総じて高い水準を維持、7月24日には当該在庫は1.784億バレルと1982年12月31日(このときは1.813億バレル)以来の高水準に到達、そして7月31日には当該製品在庫量は1.800億バレルとさらに増加した他、平年幅の上限を超過する状態は続いている(図7参照)。

図5 米国留出油需要の伸び(2006~20年)

図6 米国の留出油生産量(2009~20年)

図7 米国留出油在庫推移(2003~20年)

2020年5月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で20.4%程度減少の日量1,610万バレルとなった(図8参照)。ガソリン、ジェット燃料及び留出油等幅広く石油製品の需要が前年同月の水準を下回ったことが同月の石油需要の前年同月比での減少に反映されている。また、ガソリン需要の確定値が速報値から下方修正された他、その他の石油製品も速報値(日量398万バレル)から確定値(同381万バレル)に移行する段階で下方修正されたことにより、米国石油需要(確定値)は速報値(日量1,625万バレル、前年同月比19.7%程度の減少)から下方修正されている。他方、2020年7月の米国石油需要(速報値)は、日量1,831万バレルと前年同月比で11.6%程度減少しており、米国での新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和に伴う各種石油製品需要の回復を反映し、6月の当該需要速報値(前年同月比14.0%程度減少の日量1,773万バレル)を上回ったものの、米国の一部地域における新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動等の制限の再強化等もあり経済活動が十分回復しなかったと見られることにより、ガソリン、ジェット燃料、軽油及びその他の石油製品の需要が前年同月を相当程度下回ったことから、7月の同国石油需要もそれなりに前年同月比で減少となったものと考えられる。他方、5月1日以降のOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国による日量970万バレル程度の減産措置実施の影響が米国にも及び始めたと見られることもあり、同国のサウジアラビアからの原油輸入が減少傾向を示した(7月3日の週には日量142万バレルであった米国のサウジアラビアからの原油輸入量は7月31日には同19万バレルへと急減している)ことや同国製油所での原油精製処理が進むようになったことが一因となり、7月上旬から8月上旬にかけ米国の原油在庫は減少傾向となったが、平年幅上限を上回る状態は続いている(図9参照)。そして、原油、ガソリン及び留出油在庫が平年幅上限を上回っていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図10及び11参照)。

図8 米国石油需要の伸び(2006~20年)

図9 米国原油在庫推移(2003~20年)

図10 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~20年)

図11 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~20年)

2020年7月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制や経済活動制限が緩和されつつあった欧州では、OPECプラス産油国による減産措置実施により中東やロシア方面から欧州への原油の流れに影響が発生した側面はあったものの、経済の持ち直しに伴う石油需要の回復と製油所の稼働上昇を見込んで米国を含む米州からの原油輸入が活発化した結果、精製処理された原油以上に原油が地域に流入したことにより、在庫は増加した。しかしながら、米国では減少となった他、日本では、製油所でのメンテナンス作業実施等により原油精製処理活動は必ずしも活発化していなかったものの、5月1日以降実施されているOPECプラス産油国による減産措置の影響でサウジアラビアを含む中東方面からの原油輸入が相当程度減少したこともあり、原油在庫は減少した。このため、欧州での原油在庫の増加が米国及び日本での減少で相殺されて余りあったこととなり、OECD諸国全体として原油在庫は減少したが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図12参照)。石油製品については、米国では、暖房シーズンが終了したことによるプロパン需要の低下に伴い当該製品在庫が増加したことや冬用ガソリンの利用時期終了に伴い当該製品に混入していたブタンの需要が減少したことによりブタンを含むその他の石油製品在庫が増加したことから石油製品全体の在庫も増加した。また、欧州においては、製油所の稼働上昇により石油製品生産活動が活発化した一方で、当該地域の経済活動や航空機での往来がもたついた側面があったこともあり、石油需要が供給に追い付かなかったと見られることから、中間留分を中心として石油製品在庫は増加した。さらに、日本においても、冬場の暖房シーズンではなかったことから、暖房向けの灯油在庫が積み上がりつつあったことに加え、5月25日に新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されたうえ6月19日には都道府県間での移動制限も撤廃されたものの、7月中は人口密集地での天候に恵まれなかったことが一因となって個人の外出が自粛されたと見られることや経済回復が緩やかだったと見られること等が石油需要に影響したこともあり、ガソリン及び軽油在庫等が増加したことにより石油製品全体の在庫水準も上昇した。このようなことから、OECD諸国全体としても石油製品在庫は増加したうえ、平年幅上限を超過する量となっている(図13参照)。そして、原油及び石油製品在庫が平年幅上限を上回っていることから、原油と石油製品を合計した在庫も平年幅上限を超過する状態となっている(図14参照)。なお、2020年7月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は72.5日と6月末の推定在庫日数(74.1日)から減少している。

図12 OPEC諸国原油在庫推移(2005~20年)

図13 OPEC諸国石油製品在庫推移(2005~20年)

図14 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~20年)

7月15日に1,600万バレル強の水準であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在庫は、7月22日には1,600万バレル台前半程度、7月29日には1,600万バレル台半ば程度の量へと増加した。その後、8月5日には1,400万バレル台半ば程度の水準へと低下したうえ、8月12日には1,500万バレル台後半程度の量へと回復した結果、7月15日の水準を若干ながら下回る状態となっている。インドやインドネシアといったアジア諸国の一部では新型コロナウイルス感染が依然拡大しつつあることにより、これら諸国での個人の外出抑制に伴いガソリン需要が伸び悩んでいるものと見られることもあり、シンガポールからのガソリン輸出が必ずしも旺盛ではなかったことに加え、5月1日のOPECプラス産油国減産措置実施以前の当該産油国からの供給増加と原油価格の低迷時に中国が積極的に購入した原油を精製処理したことで同国のガソリンの生産が堅調であった一方、中国国内での大雨に伴う各所での洪水の発生もありガソリン需要が低迷したことにより、同国でガソリン在庫が積み上がったことから、両国からシンガポール方面へのガソリン輸出が活発化したことが、シンガポールでの軽質留分在庫を増加させる方向で作用した。しかしながら、米国での個人の外出規制緩和の流れに伴うガソリン需要の持ち直しに伴い同国でのガソリン価格が上振れしたこともあり、西側諸国等からのシンガポールへのガソリン流入が鈍化したことが、シンガポールでの軽質留分在庫の増加を抑制する格好となったものと考えられる。結果として、シンガポールでの軽質留分在庫は比較的限られた範囲で変動したが、それでも当該在庫は前年同期を60%超上回っている(世界の多くの国でドライブシーズンが到来する夏場はシンガポールの軽質留分在庫は概ね低水準となるが、2020年は新型コロナウイルス感染の影響で当該在庫は5月以降下げ渋りの様相を呈している)ことが、アジア地域でのガソリン価格を抑制したことから、7月中旬から8月中旬初頭にかけガソリン価格はドバイ原油価格と概ね同水準で推移した(因みに、例年夏場は概ねガソリン価格がドバイ原油のそれを上回っている)。ただ、8月12日に発表されたEIA米国石油統計で同国のガソリン需要が8月7日までの4週間で日量872万バレルと3月20日までの4週間の同929万バレル以来の高水準に到達したこともあり、同国ガソリン需要回復に対する期待が市場で強まったことにより、米国のガソリン価格が押し上げられたことが、アジアでのガソリン相場に上方圧力を加えた結果、8月中旬初頭以降ガソリン価格はドバイ原油のそれを上回ったうえ、その程度を拡大する場面も見られている。

ナフサについては、暖房需要期ではなくなったことにより安価になった液化石油ガス(LPG)と石油化学部門向け原料の面で競合したことがナフサ価格を抑制する格好で作用したうえ、台湾プラスチック工業(台湾塑膠工業:Formosa Plastics)の台湾の麦寮(Mailiao)にあるナフサ分解装置三号機(エチレン生産能力年産120万トン)が8月半ばから45日間の予定でメンテナンス作業を実施する旨7月27日に伝えられたうえ、実際に8月11日に50日間の予定でメンテナンス作業を開始したことから、当該装置向けの原料となるナフサの需要が低下するとの観測が市場で発生したことに加え、8月1日以降のOPECプラス産油国による減産措置緩和に伴い中東産油国で生産された原油を精製処理することで製造されるナフサのアジア向け供給が増加するとの観測が市場で増大したことが、ナフサ価格に下方圧力を加えた結果、7月中旬から8月中旬にかけ、ナフサ価格は概ねドバイ原油価格を下回る状態で推移した他、その程度が拡大する場面も見られた。

7月15日には1,300万バレル台前半程度の量であったシンガポールの中間留分在庫は、7月22日には1,400万バレル強の水準へと増加したが、7月29日には1,300万バレル台後半程度の量へと減少した。それでも8月5日には1,500万バレル弱の水準へと回復、8月12日は減少したものの1,400万バレル台半ば程度の量となっており、7月15日の水準を上回っている。5月1日のOPECプラス産油国減産措置実施以前の当該産油国からの供給増加と原油価格の低迷時に中国が積極的に購入した原油が精製処理されたことにより同国の軽油の生産が堅調であった一方、中国国内各所での大雨に伴う洪水の発生もあり輸送部門向けの軽油需要が低迷したうえ、インドで雨季(モンスーン)に入りつつあったこともあり軽油需要が抑制された(灌漑用に稼働させるポンプ向けのエネルギー源が、モンスーン到来前の軽油から水力発電由来の電力へと切り替わることに加え、雨天に伴い道路や建設工事の進捗が鈍化することなどにより物流や製造業等での軽油の利用が鈍化することによる)ことにより、両国からシンガポールに向け軽油輸出が促進されたことに加え、4月下旬以降欧州で新型コロナウイルス感染に関する規制が順次緩和されつつあったことにより、当該地域での経済と石油需要の回復への期待が高まったことから、欧州で消費される主要な石油製品の一種である軽油の流入が活発化したものの、この結果かえって6月を中心として欧州では軽油在庫が相当程度積み上がったことにより需給緩和感が強まったことから、欧州に向かう代わりに中東方面からアジアに向け軽油が流入したことが、シンガポールでの中間留分在庫増加の背景にあると考えられる。また、このようにシンガポールで中間留分在庫が積み上がりつつあったことが、例えばアジア市場での軽油価格に下方圧力を加えたことから、7月中旬から8月中旬にかけ軽油とドバイ原油との価格差(この場合軽油価格がドバイ原油のそれを上回っている)は縮小傾向を示した。

7月15日に2,600万バレル強の水準であったシンガポールの重油在庫(高硫黄のものが中心と見られる)は、7月22日には2,300万バレル台半ばの量へと減少した。7月29日は2,400万バレル弱、8月5日には2,400万バレル台前半の量へと持ち直したものの、8月12日には再び2,300万バレル台後半程度の水準へと低下している。5月1日にOPECプラス産油国による減産措置が実施された一方で夏場の空調用の発電部門向け重油需要が増加したことにより中東産油国からの重油輸出が低迷した反面、サウジアラビアといった中東産油国へ重油が流入したことが、シンガポールでの重油在庫減少の背景にあるものと考えられる。そして、このようなシンガポールでの重油在庫の減少傾向がアジアでの重油価格に上方圧力を加えたものの、8月1日を以てOPECプラス産油国による減産措置が緩和される方向となったことにより中東産の重質高硫黄原油を精製処理して製造される重油の供給がこの先増加することでアジアの重油需給が緩和するとの観測が市場で発生したことが、重油価格の上昇を抑制した結果、例えば、シンガポールでの高硫黄重油とドバイ原油の価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油のそれを下回っている)は上下に変動しつつも概ね限られた範囲で推移した。


2. 2020年7月中旬から8月中旬にかけての原油市場等の状況

2020年7月中旬から8月中旬にかけての原油市場では、新型コロナウイルスワクチン開発に関する治験で前向きな結果が得られたとの情報、経済が改善していることを示唆する指標類、市場の事前予想を上回る米国原油在庫の減少等が、原油価格に上方圧力を加えた反面、2020~21年の世界石油需要見通しの下方修正や、経済が減速していることを示唆する指標類、中国IT企業との取引を禁じる旨の大統領令に米国のトランプ大統領が署名したこと等による米国と中国の対立の先鋭化の懸念、そしてトランプ政権と米国議会民主党との同国経済対策を巡る協議が合意に至らないことによる同国経済に対する悲観的な見方の発生等が、原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格(WTI)は概ね1バレル当たり40~43ドルを中心とする範囲で上下に変動しつつ推移した(図15参照)。

図15 原油価格の推移(2003~20年)

7月20日には、英国の製薬大手アストラゼネカと同国のオックスフォード大学、米国製薬大手ファイザーとドイツのバイオ医薬製造会社ビオンテック、及び中国カンシノ・バイオロジクス(康希諾生物)と同国人民解放軍軍事科学院が、それぞれ新型コロナウイルスワクチンの治験等で前向きな結果が示された旨この日伝えられたこともあり、新型コロナウイルス感染収束と経済成長及び石油需要の回復に対する期待が市場で増大したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.22ドル上昇し、終値は40.81ドルとなった。また、7月21日も、複数のグループで新型コロナウイルスワクチンの治験等で前向きな結果が得られた旨7月20日に報じられたことで、新型コロナウイルス感染収束に対する期待が市場で増大した流れを引き継いだうえ、新型コロナウイルス感染に伴う米国追加景気刺激策に関する協議の動きが米国議会で見られる旨7月20日夕方(米国東部時間)以降伝えられることで、同国経済回復に対する期待が市場で増大したこと、新型コロナウイルス感染により打撃を受けたEU経済再建のための7,500億ユーロ(約8,590億ドル)の復興基金設立につき、7月21日未明(現地時間)にEU首脳が合意したことにより、欧州経済回復に対する楽観的な見方が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.96ドルと前日終値比で1.15ドル上昇した(なお、この日を以てNYMEXの2020年8月渡し原油先物契約は取引を終了したが、2020年9月渡し原油先物価格のこの日の終値は1バレル当たり41.92ドル(前日終値比1.00ドルの上昇)であった)。この結果原油価格は7月20~21日の2日間で併せて1バレル当たり1.37ドルの上昇となった。7月22日は、この日米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(7月17日の週分)で原油在庫が前週比で489万バレルの増加と市場の事前予想(同190~220万バレル程度の減少)に反し増加していた他、留出油在庫が同107万バレルの増加と市場の事前予想(同62万バレル程度の減少~同50万バレル程度の増加)に反し、もしくは事前予想を上回って増加した結果、当該在庫が1.78億バレルと1982年12月31日(この時は1.81億バレル)以来の高水準に到達したことに加え、7月22日に米国国務省が米国の知的財産権及び米国民の個人情報を防御するために、駐ヒューストン中国総領事館の閉鎖を命令したことに対し、同日中国外務省が報復措置を講ずる方針である旨表明した他、中国政府が駐武漢米国総領事館の閉鎖命令を検討している旨同日報じられたことにより、両国の対立の先鋭化と両国等経済及び石油需要への影響に対する懸念が市場で増大したことが原油相場に下方圧力を加えたものの、米国トランプ政権と同国議会上院共和党が7月31日に終了する予定であった1週当たり600ドルの失業保険増額給付につき、短期間延長する方向で検討している旨7月22日に伝えられたことで、新型コロナウイルス感染拡大による米国経済への影響に対する市場の懸念が後退したことに加え、7月21日にEU首脳が復興基金創設で合意したことから、欧州地域での経済回復への期待が市場で増大した結果、ユーロが上昇する反面米ドルが下落したことが、原油相場に上方圧力を加えたことから、この日(7月22日)の原油価格の終値は1バレル当たり41.90ドルと前日終値比で0.06ドルの下落にとどまった。7月23日には、この日米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(7月18日の週分)が141.6万件と前週の130.7万件から増加するなど、2020年3月27日以来の増加を示した他、市場の事前予想(130万件)を上回ったことに加え、米国トランプ政権と同国議会上院共和党が失業保険増額給付を縮小する方向で検討している一方、そのような対策につき同国議会下院のペロシ議長(民主党)が反対する旨7月23日に報じられるなど、当該対策に対する不透明感が増大したこともあり、米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.83ドル下落し、終値は41.07ドルとなった。7月24日には、この日英国経済情報サービス会社IHSマークイットから発表された7月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)(50が好不況の分岐点)が54.8と6月の48.5(改定値)から上昇、2018年6月(この時は54.9)以来の高水準に到達した他、市場の事前予想(51.1)を上回った一方で、ユーロ圏総合PMIが良好な内容であったことによりユーロが上昇した他、7月24日午前(現地時間)に中国政府が駐成都米国総領事館の閉鎖を命令したことで米国と中国の対立の先鋭化に対する懸念が市場で増加したことにより、米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.29ドルと前日終値比で0.22ドル上昇した。

7月27日は、この週に発表される予定である米国情報技術(IT)関連企業等の2020年4~6月期等業績が良好であるとの観測に加え、7月27日午後遅く(米国東部時間)に米国議会共和党が1兆ドルの追加経済政策案を発表する予定であることに対する期待や7月28~29日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)に際しより長期的な金融緩和政策の実施が示唆されるのでないかとの予想が市場で増大したうえ、7月26日に米国バイオ医薬品企業モデルナが米国生物医学先端研究開発局から4.72億ドルの資金の追加拠出を受ける(既に同局から4.83億ドルを受領しており、それに追加されることになる)旨明らかにした他、7月27日には米国で3万人に渡る大規模治験を実施するなど、治験の最終段階に入った旨発表したことから、新型コロナウイルス感染収束と経済活動拡大に対する楽観的な見方が市場で拡大したこともあり、米国株式相場が上昇したことに加え、7月28~29日に開催される予定であるFOMC開催に際し長期的な金融緩和政策の実施が示唆されるのでないかとの予想が市場で増大したうえ、7月21日の米国政府による駐ヒューストン中国総領事館の閉鎖命令、及び7月24日の中国政府による駐成都米国大使館の閉鎖命令により、米国と中国との関係が悪化するとの懸念が市場で増大したこともあり、米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.31ドル上昇し、終値は41.60ドルとなった。ただ、7月28日には、7月29日にEIAから発表される予定である米国石油統計(7月24日の週分)で原油在庫が増加している旨判明するとの観測が市場で発生したことに加え、7月27日夜(米国東部時間)に米国議会上院共和党が発表した新型コロナウイルス肺炎を巡る追加経済対策案に対し、民主党のみならず共和党の一部議員からも反対の意向が示されたこともあり、7月31日の同国失業保険の追加給付期限を前にして、同国経済に対する懸念が市場で増大したこと、米国追加経済対策を巡る市場の不安感増大とともに、7月28日にスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)から発表された5月の米国主要20都市住宅価格指数が前年同月比で3.69%の上昇と4月の同3.91%上昇から上昇率が低下した他市場の事前予想(同4.0%上昇)を下回ったうえ、同日米国民間調査機関コンファレンス・ボードから発表された7月の同国消費者信頼感指数(1985年=100)が92.6と6月の98.3から低下した他市場の事前予想(94.5~95.0)を下回ったことや、7月28日に発表された米国複合企業3M及び同国外食大手マクドナルドの2020年4~6月期業績が市場の事前予想を下回ったこともあり、米国株式先物相場が下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.04ドルと前日終値比で0.56ドル下落した。しかしながら、7月29日には、この日EIAから発表された米国石油統計で原油在庫が前週比1,061万バレルの減少と市場の事前予想(同120万バレル程度の減少~同45万バレル程度の増加)に反し、もしくは事前予想を上回って減少している旨判明したことに加え、7月28~29日に開催されていたFOMCで経済回復のために必要と考えられる手段は何でも実施する他景気回復と物価安定まで政策金利をゼロ近辺で維持する方針である旨表明したこともあり、米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.23ドル上昇し、終値は41.27ドルとなった。7月30日には、この日ドイツ連邦統計庁から発表された2020年4~6月期の同国国内総生産(GDP)が前期比で10.1%の減少と1970年以降の同国四半期統計史上最大の減少率となった他、市場の事前予想(同9.0%の減少)を上回ったことに加え、7月30日に米国商務省から発表された2020年4~6月期の同国GDPが年率換算で前期比32.9%の減少と1947年以降の同国四半期統計史上最大の落ち込み率となった旨判明したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり39.92ドルと前日終値比で1.35ドル下落した。ただ、7月31日には、前日の価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、2020年5月の米国原油生産量(確定値)が日量1,000万バレルと4月(同1,199万バレル)から日量200万バレル程度減少している旨判明したこと、7月30日夕方(米国東部時間)に発表された米国通販大手アマゾン、同IT大手アップル及びフェイスブックの2020年4~6月期企業業績が市場の事前予想を上回った旨判明したこともあり、7月31日の米国株式相場が上昇したことから、この日(7月31日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.35ドル上昇し、終値は40.27ドルとなった。

また、8月3日には、この日中国独立系報道機関財新伝媒から発表された7月の同国製造業PMI(50が当該部門好不況の分岐点)が52.8と6月の51.2から上昇、2011年1月(この時は54.5)以来の高水準に到達したうえ、市場の事前予想(51.1~51.3)を上回ったこと、同じくこの日IHSマークイットから発表された7月のユーロ圏PMI(50が当該部門好不況の分岐点)(確定値)が51.8と7月24日から発表された速報値(51.1)から上方修正されたうえ、2019年11月(この時は51.8)以来の高水準に到達したこと、さらにこの日米国供給管理協会(ISM)から発表された7月の同国製造業景況感指数(50が当該部門好不況の分岐点)が54.2と6月の52.6から上昇、2019年1月(この時は55.5)以来の高水準に到達したうえ、市場の事前予想(53.6)を上回ったことに加え、米国失業保険追加給付期間延長を巡る米国議会与野党間での意見の対立に関連し、トランプ大統領の指示による失業保険追加給付期間延長の可能性につき同政権が検討している旨8月3日に報じられたこともあり、米国株式相場が上昇したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.01ドルと前週末終値比で0.74ドル上昇した。8月4日も、8月5日に発表される予定であるEIA米国石油統計(7月31日の週分)で、原油在庫が前週比で減少している旨判明するとの観測が市場で発生したことに加え、8月4日にレバノンの首都ベイルートの港湾地区で大規模な爆発が発生したことにより少なくとも50人が死亡した旨報じられたことで、中東情勢緊迫化に伴う当該地域からの石油供給途絶可能性を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.69ドル上昇し、終値は41.70ドルとなった。8月5日も、この日発表されたEIA米国石油統計で原油在庫が前週比で737万バレルの減少と市場の事前予想(同300~410万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したことに加え、新型コロナウイルス感染により打撃を受けた米国経済を救済するための方策につき米国トランプ政権と米国議会民主党との間で協議が進められていることにより、当該方策決定に対する楽観的な見方が市場で増大したうえ、新型コロナウイルスワクチンの治験結果が前向きであった旨8月4日午後遅くに米国バイオ医薬製造会社ノババックスが発表したこと等もあり、米国株式相場が上昇したことにより、投資家のリスク許容度が拡大したことで、米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり42.19ドルと前日終値比で0.49ドル上昇した。この結果原油価格は8月3~5日の3日間で併せて1バレル当たり1.92ドルの上昇となった。ただ、8月6日は、これまでの原油価格の上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.95ドルと前日終値比で0.24ドル下落した。また、8月6日夜(米国東部時間)に米国のトランプ大統領が、45日間の猶予を以て中国動画投稿アプリ「TikTok」とその運営会社である「バイトダンス(北京字節跳動科技)」及び同国対話アプリ「ウィーチャット(微信)」とその運営会社である「テンセント(騰訊控股)」との取引を禁止する旨の大統領令に署名した他、中国による香港の自治侵害を理由として香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官他計11人に対し、米国内資産凍結と米国人との取引禁止を内容とする制裁を発動する旨8月7日に米国財務省が発表したことで、米国と中国の対立のさらなる先鋭化と両国等の経済成長及び石油需要の伸びに対する懸念が8月7日の市場で増大したことに加え、7月31日に失効した米国失業保険追加給付等の経済対策を巡る米国トランプ政権と議会民主党幹部との協議が8月7日も不調に終わったことで、同国経済回復に対する悲観的な見方が市場で発生したこと、8月7日に米国労働省から発表された7月の同国非農業部門雇用者数が前月比で176万人の増加と市場の事前予想(同148~160万人程度の増加)を上回ったこともあり、米ドルが上昇したことから、この日(8月7日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.73ドル下落し、終値は41.22ドルとなった。この結果原油価格は8月6~7日の2日間で併せて1バレル当たり0.97ドル下落した。

しかしながら、8月8日に米国のトランプ大統領が、7月31日を以て失効した同国失業保険追加給付につき週400ドルの規模で継続する他、給与税の一部免除、家賃未払いによる住居立ち退き猶予措置の延長、及び学生向け融資返済免除措置を内容とする4件の大統領令に署名した(後述)うえ、ムニューシン財務長官と米国議会下院のペロシ議長が8月7日に決裂した新型コロナウイルス感染に関する追加経済対策を巡る協議を再開させることにつき前向きな姿勢を示した旨8月9日に伝えられることで、米国経済の先行きに対する楽観的な見方が8月10日の市場で増大したことに加え、アジアの石油需要は新型コロナウイルス感染拡大前の水準にまでほぼ回復した旨8月9日にサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコ最高経営責任者(CEO)のナセル(Nasser)氏が明らかにしたことで、石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、8月10日に中国国家統計局から発表された7月の同国生産者物価指数(PPI)が前年同月比で2.4%の下落と6月の同3.0%下落より下落率が鈍化したうえ、市場の事前予想(同2.5%の下落)を下回ったことで、同国経済を巡る悲観的な見方が市場で後退したことから、8月10日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.72ドル上昇し、終値は41.94ドルとなった。ただ、8月11日には、前日の原油価格の上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことに加え、8月11日時点でも米国議会上院共和党と民主党との間で失業保険追加給付を含む経済対策に関し議論が進展しなかったことにより、同国経済回復に対する懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり41.61ドルと前日終値比で0.33ドル下落した。それでも、8月11日にEIAから発表された「短期エネルギー展望(STEO:Short-term Energy Outlook)」で、EIAが2020年の米国原油生産見通しを日量1,126万バレルと7月7日に発表されたSTEOにおける見通しであった同1,163万バレルから同37万バレル下方修正したことで、米国石油需給引き締まり感を市場が意識した流れを8月12日の市場が引き継いだうえ、8月12日にEIAから発表された米国石油統計(8月7日の週分)で、原油在庫が前週比で451万バレルの減少と市場の事前予想(同220~470万バレル程度の減少)の一部を上回って減少していたうえ、留出油在庫が同232万バレルの減少と市場の事前予想(同10万バレル程度の減少~同100万バレルの増加)に反し、もしくは事前予想を上回って減少していた旨判明したこと、8月12日に米国労働省から発表された7月の同国消費者物価指数(CPI)が前月比で0.6%の上昇と市場の事前予想(同0.3%程度の上昇)を上回ったこともあり、米国株式相場が上昇したことから、8月12日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.06ドル上昇し、終値は42.67ドルとなった。ただ、8月13日には、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表された「オイル・マーケット・レポート」でIEAが世界石油需要見通しを2020年につき日量14万バレル、2021年につき同24万バレル、それぞれ下方修正した旨判明したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり42.24ドルとなった前日終値比で0.43ドル下落した。8月14日も、米国と中国との間での貿易紛争に関する第一段階の合意の進捗状況を点検するための協議(8月15日開催予定と8月14日に報じられていた)が無期限で延期された旨この日伝えらえたことにより、両国間での対立の先鋭化の可能性に対する懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.23ドル下落し、終値は42.01ドルとなった。この結果原油価格は8月13~14日の2日間で併せて1バレル当たり0.66ドル下落した。


3. 原油市場における主な注目点等

地政学的リスク要因面では、新型コロナウイルス感染拡大とともに個人の外出規制や経済活動制限が強化された一時期に比べ、相対的に動きが活発化しているように見受けられる。7月23日には、イランのテヘランからレバノンのベイルートに向けシリア上空を飛行していたイランのマハン航空機に戦闘機2機が100~200メートルの距離にまで異常接近したと報じられる(米軍戦闘機もしくはイスラエル軍戦闘機との指摘もあった)が、米国中央軍はF15戦闘機1機がシリアにある米軍基地の安全を確保する目的で同基地上空を飛行する航空機に接近したものの1,000メートルの距離を保っていた旨主張したと7月24日に報じられる。7月28日にはイラン革命防衛隊はペルシャ湾のホルムズ海峡付近で軍事演習を実施するととともに、7月31日には同国の最高指導者ハメネイ師がイランは核や弾道ミサイルの開発構想につき米国と協議する意向はない旨表明している。他方、2020年10月18日で失効する予定であるイランへの武器禁輸措置の無期限延長に関する米国の決議案(8月5日に米国のポンペオ国務長官が8月9日の週の採決実施を表明した一方8月11日にイランは武器禁輸措置の解除を要求する旨主張していた)に対し国連安全保障理事会は8月14日に採決を実施したが、ロシア及び中国といった常任理事国による拒否権の発動もあり否決された。これに対し米国のトランプ大統領は、核合意に定められている、国連による対イラン制裁全面復活のための手続きを8月17日以降実施する方針である旨8月15日に表明したが、8月16日にイランのザリフ外相は核合意から離脱した米国に核合意に定められている制裁復活の手続きを行う権利はない旨主張している(他の核合意当事者もイランの考え方と概ね同様であるとされる)。また、8月12日にイラン海軍がペルシャ湾のホルムズ海峡付近において石油タンカー(リベリア船籍)を一時(約5時間程度であったと米軍関係者が明らかにしている)拿捕した旨8月13日に伝えられる。さらに、8月14日には、イランからベネズエラに石油を輸送していたタンカー4隻を拿捕したうえ米国ヒューストンへと連行、111.6万バレル程度の石油を差し押さえた旨米国司法省が発表した(イランはそのような事象を否定した旨同日報じられる)。そして、8月13日には、米国のトランプ大統領の仲介によりイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が大使館の設置等を含め国交を正常化する(3週間以内に調印が行われる予定である旨トランプ大統領が明らかにしている)ことで合意した旨トランプ大統領が発表した。これはイランの近隣にイランと対立するイスラエルとの関係を改善した国家が誕生することを意味する(このようなことから、8月14日にイラン外務省は当該合意を非難する旨の声明を発表している)他、今後サウジアラビア等他のアラブ諸国との間でも同様の動きが発生する可能性もあり(8月13日にトランプ大統領はUAEの動きに追随する国が見られることを期待する旨表明している)、イラン(及びイランが支援するとされるイエメンのフーシ派武装勢力及びシリア)と中東湾岸産油国(及びその一部諸国との外交関係を改善しつつあるイスラエルとその友好国であり11月の大統領選挙を控え首長がイランに対しより強硬な姿勢で臨むことも想定される米国)との間での対立が先鋭化するとともに、それが当該地域諸国の政治、経済、外交及び軍事面に影響を及ぼす結果、中東湾岸地域の政情が不安定になるとともに当該地域からの石油供給が脅かされる恐れがあるとの懸念が市場で高まる結果、原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。

リビアでは、西部の首都トリポリを拠点とする国民合意政府(GNA: Government of National Accord)(国連及びトルコ等が支援)と、東部トブルクを拠点とする暫定議会を支援する、ハフタル将軍を指導者とするリビア国民軍(LNA: Libya National Army)(エジプトやUAE等が支援)との間で事実上の内戦状態が続いており、GNAはトルコの支援を受け、これまでLNAが支配していた同国西部の首都トリポリ近郊を奪還したうえ、同国中部の都市シルトに向け進軍しつつある。トルコのチャヴシュオール外相は停戦に合意する前にGNAがシルトとその南方にあるジュフラ(Jufra)空軍基地を掌握する必要がある(そうでなければGNAに恩恵がない)旨7月13日示唆している。他方、7月16日にハフタル将軍派勢力からリビア内戦への介入要請を受けたエジプトのシシ大統領はリビア内戦に介入する姿勢を明らかにしたが、7月17日にトルコのエルドアン大統領はエジプトのリビア内戦への介入を不法行為であるとして批判している。しかしながら、7月20日にエジプト国会で開催された非公開会合においてエジプト軍のリビアへの派遣が承認された。このように、リビアにおいては、国連及び米国が仲介する形で、内戦終結及び原油生産再開につき協議を実施しているものの、GNAとLNAとの間での対立は、自国内勢力のみならず外国勢力も巻き込んでおり状況が複雑化していることから、石油ターミナルやパイプライン関連施設の事実上の封鎖等により大部分の原油生産が停止している同国において原油生産が再開するまでにはなお時間を要する可能性がある他、石油ターミナル等関連施設の操業が開始されても短期間で当該施設が再度封鎖されることにより原油生産が停止してしまう例が過去にも頻発していたことから、今後同国での原油生産が再開したとしても当該生産量が十分に回復した(但し、NOCは油田関連施設等に必要な資金が十分に確保できないことを理由に2022年においても原油生産量は日量65万バレルと2019年第四四半期の同国原油生産量である日量120万バレル弱の約半分にとどまる旨7月7日に明らかにしている)うえで、それがある程度の期間持続することにより、最早同国からの原油生産停止リスクが相当程度低下したと市場が確信するまでは、この面では原油相場に下方圧力を加えるといった展開にはなりにくいものと考えられる他、特に今後新型コロナウイルス感染頭打ちとOPECプラス産油国の減産措置による石油需給引き締まり感が市場で醸成される過程においては、リビアからの原油供給低迷の長期化に対する懸念を市場で増大させる結果、原油相場に上方圧力を加える方向で作用する場面が見られることもありうる。

経済面での市場の注目点は、まず新型コロナウイルスを巡る状況であろう。最近では、米国の新型コロナウイル感染者数が頭打ちになりつつある傾向が見られるようになってきており、この面では、市場関係者間での今後の米国経済成長に対する期待の増大に伴う株式相場の上昇による石油需要の伸びの回復と石油需給引き締まり感の市場での拡大から、原油相場に上方圧力が加わりやすいものと考えられる。また、複数の製薬会社等での新型コロナウイルスワクチンの治験で前向きな結果が得られた旨報じられるなど、新型コロナウイルスワクチン開発進展の動きも見られるが、今後もワクチンや治療薬の開発過程で、治験結果が良好であれば早期の新型コロナウイルス感染収束と経済活動回復による石油需要増加期待が市場で増大する結果、原油相場に上方圧力が加わる反面、治験結果が後ろ向きであれば、新型コロナウイルス感染収束と経済活動の回復が遠のくとの観測が増大する結果、石油需要増加期待が市場で後退することにより原油相場を抑制する方向で作用するものと考えられる。

他方、米国のトランプ政権と同国議会上院共和党は、新型コロナウイルス感染に関連し、大人1人当たり1,200ドル、扶養する子供1人当たり500ドルを支給することや、7月31日に失効する予定であった失業保険の追加給付(従来1週当たり600ドル)につき規模を縮小して存続することを含む、1兆ドル程度の経済対策の素案を7月23日午後(米国東部時間)に発表したが、米国議会下院のペロシ議長(民主党)は1兆ドルの経済対策では規模が小さい(この時点で民主党側は3兆ドル規模の経済対策の実施を提案していた)と主張、これまでの規模の失業保険追加給付の延長を要求するなどしており、両者による当該経済対策に関する調整が失業保険追加給付期限の7月31日までに決着しなかった結果、当該追加給付措置は失効した。8月8日には米国のトランプ大統領が失効した同国失業保険追加給付につき週400ドルの規模で継続する他、給与税の一部免除、家賃未払いによる住居立ち退き猶予措置の延長及び学生向け融資返済免除措置を内容とする4件の大統領令に署名したが、米国連邦政府支出の権限は議会にあるため、当該大統領令は法的問題を内包している可能性があり、今後円滑にそれらが実施に移されるかどうか不透明であるうえ、8月12日現在においても、米国トランプ政権と民主党との間での意見の隔たりが解消されないこともあり、両者間での協議が実施されていない他協議再開の目途も立っていない状況にある。今後も、両者の協議が膠着したままとなり、失業保険追加給付等の経済対策実施が遅延していくようであれば、米国経済に悪影響を及ぼす可能性が増大する結果、一時的にせよ株式相場及び原油相場をもたつかせるといった展開となることも想定される。他方、新型コロナウイルス肺炎に伴う外出規制と経済活動制限の実施に伴う同国経済成長鈍化の可能性に対処するために、3月15日に米国連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をそれまでの1.00~1.25%から0.00~0.25%へと引き下げた。このような金融緩和策に伴う資金調達コストの低下により、株式や商品といったリスク資産市場に低コストで調達された資金が流入しやすい状況が生まれており、これが原油相場への上方圧力を増幅する方向で作用する可能性がある。この場合、経済が減速することを示唆する指標類が発表されることを含め原油価格を押し下げる方向で作用しやすい要因が見られても、それによって原油価格が下落した局面では原油を購入する良い機会であるとの判断から低コストで調達された資金が流入し原油の購入が促進される結果、原油価格がそれほど下落しない現象が見られやすくなる一方で、経済が加速することを示唆する指標類が発表されることを含め原油価格を押し上げる方向で作用しやすい要因が見られた場合資金流入が加速する結果原油相場の上昇幅が拡大するといった現象が見られやすくなるなど、原油価格の上下変動が非対象となる場面が見られることもありうるので注意が必要であろう。また、この先も米国金融当局によるさらなる金融緩和措置の検討及び実施や米国トランプ政権等による追加景気刺激策等検討の動き及び当該方策実施といった展開が見られるようであれば、米国経済回復への期待が市場で増大することに加え資金が石油市場に流入する結果、原油価格に上方圧力が加わる可能性もある。

他方、7月21日に米国は、同国の知的財産権及び個人保護のため、駐ヒューストン中国総領事館の72時間以内の閉鎖を命令した。これに中国政府が反発、7月24日には、駐成都米国総領事館閉鎖を命令した。8月6日夜(米国東部時間)には米国のトランプ大統領が45日間の猶予を以て中国動画投稿アプリ「ティックトック(TikTok)」とその運営会社である「バイトダンス(北京字節跳動科技)」及び中国対話アプリ「ウィーチャット(微信)」とその運営会社である「テンセント(騰訊控股)」との取引を禁止する旨の大統領令に署名した他、中国による香港の自治侵害を理由として香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官他計11人に対し米国内資産凍結と米国人との取引禁止を内容とする制裁を発動する旨8月7日に米国財務省が発表した。これに対し8月10日には米国による中国政府関係者等への制裁への報復として米国議会議員等計11人に対し制裁を発動する(但し具体的な制裁内容は現時点では明確にはなっていない)旨中国外務省が表明した。8月13日には中国政府が出資し中国語教育を推進するために米国で設置されている孔子学院につき外交関連機関として登録すること等により監視を強化する方針である旨米国国務省が表明(これに対し8月14日に中国外務省は反発)した他、8月14日には米国と中国との間の貿易紛争に関する第一段階の合意の進捗状況を点検するための両国間協議(具体的な日程は公式には発表されていないが、8月15日に開催される予定であったと8月14日に報じられていた)につき無期限延期とする旨明らかになった(米国の中国企業に対する政策が協議延期に影響を及ぼした旨同日中国外務省が示唆した)。さらに米国ロッキード・マーチンが製造したF16戦闘機66機を台湾が購入する旨の合意書に正式に調印した旨8月14日に米国国防省が発表したが、これも中国の反発を招く可能性がある旨指摘されている。このように、米国と中国の外交関係等は悪化する方向に向かいつつあることが示唆される。今後も両国等の対立がさらに先鋭化することになれば、貿易を含む両国等の関係が一層悪化することで、両国等の経済成長及び石油需要の伸びに対する懸念が市場で広がる結果、原油相場に下方圧力を加えるといった展開となることもありうる。

石油需給ファンダメンタルズ面では、前述の新型コロナウイルス感染による個人の外出規制と経済活動制限の緩和具合による石油需要の回復状況や回復に対する市場の期待状況に加え、OPECプラス産油国等による減産措置に対する実際の遵守状況等が挙げられる。8月12日に明らかになったOPEC事務局による7月の推定OPEC産油国原油生産量データではイラクの原油生産量(既存の減産目標に加え、7月に日量5.7万バレル、8~9月には各月同25.8万バレル追加減産する方針を明らかにしていた)は日量375万バレルと6月から日量4万バレル増加したうえ、同国の生産目標(推定日量359万バレル)を日量16万バレル上回るなど、7月時点でも減産目標は未達となっている。また、同月のナイジェリアの原油生産量(既存の減産目標に加え7~9月にそれぞれ日量4.5万バレルずつ追加減産すると伝えられていた)は日量149万バレルと6月から日量0.9万バレル減少しているものの、原油生産目標(推定日量141万バレル)を日量8万バレル上回るなど、7月時点でも減産目標は未達となっている。8月7日にイラク政府は8~9月に当初の減産目標日量85万バレルに日量40万バレル減産を追加し日量125万バレルの減産量とする旨発表したが、この先、タンカー追跡データや需要家側への供給通知の情報等によって、イラク等が実際に減産を厳密に遵守しているかどうか、といったことについて市場関係者が凡その認識を持つようになる可能性があることから、その認識が原油相場に反映される、といった場面が見られることもありうる。また、原油価格が1バレル当たり40ドル前後の水準に到達していることもあり、米国の石油坑井掘削装置稼働数の減少ペースが鈍化している(2020年4月には1週当たり60基程度減少する場面も見られたが7月24日には掘削装置稼働数が前週比で増加した他、8月14日の週も前週比で4基の減少にとどまっている)ものの、当該掘削装置稼働数が継続的に増加する状態には至っていない。他方、7月17日の週の同国の原油生産量は日量1,110万バレルと3月13日以来初めて前週比で増加した(熱帯性低気圧「クリストバル」接近による米国メキシコ湾沖合油田操業停止と再開に伴う原油生産の変動時を除く)ものの、8月7日の週には前週比で日量30万バレル程度と相当程度減少しており、米国の原油生産は不安定な状況であることが覗われる。米国石油坑井掘削装置稼働数や米国原油生産量については増加傾向が明確になるまでは、この面では市場においては石油需給緩和感を醸成しにくいものと見られ、従って、短期的には原油相場への下方圧力は加わりにくく、また、加わったとしても限定的な規模のものになりやすいものと思われる。他方、5月1日より実施されているOPECプラス産油国減産措置により、サウジアラビア等が実施した減産に伴う原油輸出削減の影響が米国のサウジアラビア等からの原油輸入の減少となって現れ始めており、今後当面それが米国原油在庫を押し下げる方向で作用し続けると見られることから、この面では原油相場に上方圧力を加えることも予想される。

大西洋圏ではハリケーン等の暴風雨シーズンに突入している(暴風雨シーズンは例年6月1日~11月30日である)が、特に8月後半以降10月前半迄は1年で最もハリケーン等が発生しやすい時期となる。ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の油田関連施設の操業に影響を与える結果、当該地域での原油生産が減少する(実際に被害が発生しなくても、暴風雨接近に伴い沖合油・ガス田は従業員を避難させなければならないことから油・ガス田での原油等の生産活動を停止させる必要があるが、特に2020年は新型コロナウイルス感染抑制のため従業員の避難及び復員に時間を要する結果油田等での生産活動停止が長期化する恐れもある)他、湾岸地域の石油受入及び積出港湾関連施設や製油所の活動に支障を発生させたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網が暴風で切断されることにより、製油所への電力供給が遮断されることを通じて操業が停止するといった事態が発生することが想定される)、メキシコの沖合油田や原油輸出港の操業を停止させること等により米国の原油輸入(2019年には米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量56万バレル程度の原油を輸入した)に影響を与えたりする。最近では米国の原油生産に占める陸上の割合が大きくなってきているものの、それでも同国メキシコ湾沖合ではそれなりの量原油が生産されている(2019年に当該地域では日量188万バレルの原油を生産しており、これは米国の原油生産量全体の約15%を占める)他、米国メキシコ湾岸は同国の精製活動中心地である(2019年の当該地域の原油精製処理能力は日量866万バレルと米国原油精製処理能力全体の約47%を占める)など、米国メキシコ湾沖合及びメキシコ湾岸地域は同国石油市場にとって依然重要な地位を占めている。加えて、8月5日時点のコロラド州立大学の予報や、8月6日時点の米国国立ハリケーンセンターの予報によると、2020年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは平年よりも活発な暴風雨の発生が予想されている他、前回予報(コロラド州立大学が7月7日、国立ハリケーンセンターが5月21日)時点の予報に比べ暴風雨発生予想が上方修正されている(表1参照)こともあり、この先の暴風雨シーズン中も活発にハリケーン等の暴風雨が発生し油田や製油所での操業等を脅かすのではないとの神経質な感情が市場で発生しやすく、そのような市場関係者の心理が原油相場に織り込まれるといったこともありうることから、今後のハリケーン等の実際の発生状況、進路及び勢力、そしてその予報等には注意する必要があろう。

表1 2020年の大西洋圏でのハリケーン等発生個数予想

総合すると、当面はOPECプラス産油国の減産措置の影響で米国の原油在庫の減少傾向が継続しやすいと見られることや、米国金融当局による金融緩和政策により低コストの資金が株式や原油を含む商品といったリスク資産に流入しやすいことを考慮すれば、原油価格はこの先暫くの間下落したとしても限定的な規模にとどまりやすいものと見られる一方、新型コロナウイルスワクチン及び治療薬開発状況、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和と経済及び石油需要の回復状況、経済回復のための米国金融当局によるさらなる金融緩和策や米国トランプ政権等による追加の景気刺激策を巡る動向、OPECプラス産油国の減産遵守状況、イラン及びリビアを含む諸国を巡る地政学的リスク要因等の展開次第では、原油価格に上昇傾向が創出される可能性があるものと考えられる。


4. 世界天然ガス市場動向

米国では、4月後半以降新型コロナウイルス感染に伴う経済活動制限は緩和され始めたものの、それでも一部地域では感染が再拡大したこともあり、産業活動の回復が紆余曲折を経たものになったと見られることから、産業部門向け天然ガス需要が前年同月比で大きく落ち込んだままとなった(図16参照)。他方、5月は新型コロナウイルス感染症に伴う個人の外出規制緩和が途上であったこともあり、自宅等での調理のための天然ガス消費が前年同月比で伸びたものの、6月以降は外出規制緩和がさらに進んだこともあり、当該需要は概ね前年並みとなった。また、5月後半以降米国では気温がしばしば平年を上回る場面が見られた(図17参照、特に6月後半以降は気温が平年を相当程度超過する頻度が高まった)ことで空調のための電力消費が刺激されたことにより、発電部門向け天然ガス需要は概ね堅調に推移した(また、発電部門においては競合する石炭に比べて天然ガスがコスト面で優位であったことが天然ガス消費を促進したと見る向きもあるが、石炭から天然ガスへの燃料転換が可能な部分は既に粗方転換してしまったことにより、この面では限界に到達しているとの指摘もある、図18参照)。このようなことから、産業向け需要は不振であったものの発電部門向け需要が伸びたことにより相殺されて余りあったことから、同国の天然ガス需要は5月から7月にかけ前年同月比で概ね増加して推移したものと考えられる。

図16 米国天然ガス消費増加量(前年同月比)(2015~20年)

図17 米国(ニューヨーク)気温(2020年)

図18 米国の発電量に占める石炭と天然ガスの占有率(2011~20年)

他方、メキシコでは、VAG(ビラ・デ・レイエス-アグアスカリエンテス-グアダラハラ(Villa de Reyes-Aguascalientes-Guadalajara)パイプライン(天然ガス輸送能力日量8.86億立方フィート)の建設が2020年3月31日に完了、同年6月中には操業を開始したと7月6日に伝えられることもあり、米国からのパイプライン経由のメキシコ向け天然ガス輸出量は、5月から7月にかけ増加傾向となり(図19参照)、7月には日量57億立方フィート程度に到達したと見られる(他方、相対的にメキシコでの受入価格が高水準である米国から同国向けのLNG輸出は5~7月は皆無であったものと推測される)。しかしながら、欧州やアジアで天然ガス在庫が高水準であったことから両地域でのスポットLNG価格が下落した結果、相対的に価格が高水準であった米国産LNGの競争力が低下したこともあり、同国産LNGの引き取り者による引き取りが相当量取り消された(引き取りを取り消されたLNGタンカー隻数は4月2隻、5月12隻に対し、6月が35隻、7月が50隻及び8月が45隻程度と推定されており、(特にサビン・パス(Sabine Pass)(操業者:シェニエール(Cheniere)、天然ガス液化能力年間2,250万トン)、コーパス・クリスティ(Corpus Christi)(操業者:同、液化能力同900万トン)及びフリーポート(Freeport)(操業者:フリーポートLNG、液化能力同1,500万トン)の各LNG出荷施設からのLNG出荷取消量が顕著であったと8月11日にEIAは伝えている)ことで、2020年1月には日量81億立方フィートに到達した米国からのLNG輸出は同年7月には推定同30億立方フィート程度と半分以下の水準となるなど大幅減少となった(図20参照)。

図19 米国のメキシコへのパイプラインによる天然ガス輸出(2012~20年)

図20 米国からのLNG輸出量(2016~20年)

他方、2020年1月21日以降終値ベースで100Btu当たり2ドルを概ね割り込んだ天然ガス価格を背景として、米国北東部アパラチア地域でのシェールガス等の天然ガス開発・生産活動が鈍化したことに加え、4月20日には原油価格が1バレル当たりマイナス37.63ドルに到達するなど低迷したことが同国南部パーミアン盆地でのシェールオイル等石油開発・生産活動に影響を与えたこともあり、随伴で生産される天然ガス生産水準が低下するなどした結果、米国の天然ガス生産は減少傾向を示した(図21参照)。

図21 米国国内天然ガス生産量及び見通し(破線部分)(2009~21年)(EIA発表時期別)

このように、米国内外の天然ガス需要は必ずしも旺盛とは言い切れなかったものの、同国の天然ガス供給が減少傾向となったこともあり、天然ガス需給は引き締まり始め、5月8日時点では過去5年平均水準を20.6%上回っていた米国天然ガス貯蔵量は、8月7日時点では同15.3%と過去5年平均水準を上回る程度を縮小しつつある(図22参照)。それでも、7月末迄は市場関係者による天然ガス需給緩和感を払拭することができず、例えば、6月25日には、この日EIAから発表された米国天然ガス貯蔵量が6月19日時点で前週比1,200億バレルの増加と6月としては2003年以来(同年6月20日の貯蔵量は前週比で1,270億バレル増加している)の大幅な伸びを示したこともあり、この日の米国天然ガス価格の終値は100万Btu当たり1.482ドルと1995年8月8日(この時は同1.471ドルの終値)以来の低水準に到達するなどした他、5月下旬から7月末にかけ米国天然ガス価格は100Btu当たり概ね1ドル台後半で推移した(図23参照)。しかしながら、9月の米国外向けLNG引き取り取消規模がLNGタンカー30隻分程度と8月以前に比べ縮小する方向性である旨7月21日に伝えられたうえ、7月下旬以降も米国は概ね平年を上回る高温が続いたことに加え、8月2日には米国のより広い範囲でこの先2週間程度は平年を上回る気温となる旨の予報が発表されたこともあり、同国での天然ガス需給のさらなる引き締まり観測が市場で発生したことから、8月3日の米国天然ガス価格の終値は100万Btu当たり2.101ドルと前週末終値比で16.8%の大幅上昇となった他、5月5日(この時は同2.134ドル)以来の高水準に到達、以降も価格は上昇傾向を示し、8月14日の終値は100万Btu当たり2.356ドルと、2019年12月5日(この時は同2.427ドル)以来の高水準となっている。

図22 米国天然ガス貯蔵量(2017~20年)

図23 天然ガス先物価格の推移(2007~20年)

欧州でも、2020年前半には広範な地域で新型コロナウイルス感染が広がったことに伴い経済活動を制限したことから、産業向け天然ガス需要が不振であったと言われる。しかしながら、アジアでも暖冬や新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限による需要低迷により日本や韓国等ではLNG在庫が高水準であったとされており、さらなるLNGの受入余力がそれほどなかったと見られる。このようなことから、米国やロシア等から出荷されたLNGの多くは相対的に受入余力が大きかったとされる欧州に向かった(図24参照)。このため、2019~20年の冬場が暖冬であったことにより、そもそも暖房のための民生向け天然ガス需要が盛り上がらなかったことに伴い、既に天然ガス在庫が例年に比べ相対的に高水準であった欧州において、さらにLNGが流入した一方、前述の通り新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限による産業向け天然ガス需要の低迷により天然ガスの消費が進まなかったことから、当該地域での天然ガス在庫はさらに増加、5月15日には67.6%の充填率であった欧州の天然ガス貯蔵量は、8月1日には85.9%へと上昇(図25参照)、そしてこのような天然ガス需給の緩和状態の拡大に加え、原油価格の低迷(欧州大陸でも天然ガス需給が価格に反映される売買契約に基づく天然ガス供給数量の割合が増加(2005年の15%が2019年には78%に)してきているもの、原油価格に連動して決定する天然ガス価格体系を有する売買契約も2019年現在22%(2005年時点では78%)を占めるなど、なお、それなりの割合残存している)の影響を天然ガス価格が受けた(英国は基本的に天然ガス需給により価格が決定されるが、欧州大陸の天然ガス市場とはインターコネクター・パイプライン(Interconnector Pipeline)等で接続されていることから、石油価格連動型天然ガス価格体系の残る欧州大陸での天然ガス価格の影響を間接的に受ける)こともあり、5月18日には100万Btu当たり推定1.40ドルであった英国天然ガス価格は5月27日には100万Btu当たり1.03ドルと約27%下落した他、1997年1月の同国天然ガス先物契約上場以来の最低水準に到達した。しかしながら、その後欧州での夏場の気温がしばしば平年を上回るほど上昇したこと(図26参照)に伴い空調のための発電需要が発生した他、高水準の天然ガス貯蔵量を背景として天然ガス需給緩和感が市場で増大したことを反映し欧州での天然ガス価格が低迷したこともあり発電所が相対的にコストの高い石炭よりも天然ガスの利用を優先した(図27参照)うえ、英国で風力発電量が減少したこと(夏場は季節的に風力発電量が低下する傾向がある)から発電部門向け天然ガス消費が進んだことに加え、欧州諸国で新型コロナウイルス感染に伴う経済活動制限が緩和されたことにより産業部門向け天然ガス需要が持ち直しつつあったと見られることから、当該地域での天然ガス需要が上振れし始めたものと見られる。他方、欧州での天然ガス貯蔵水準上昇等に伴う当該地域での天然ガス価格の低迷もあり、相対的に価格競争力の低い米国産LNGの引き取りが大幅に削減されたことに加え、ロシアから欧州へと天然ガスを輸送するパイプラインである、ヤマル-ヨーロッパパイプライン(Yamal-Europe Pipeline)(操業者:ガスプロム(Gazprom)、天然ガス輸送能力日量31.8億立方フィート)が7月6~10日に年次定期メンテナンス作業を実施した他、ノルド・ストリーム(Nord Stream)(操業者:ノルド・ストリームAGでその株式の51%はガスプロムが保有、天然ガス輸送能力日量26.6億立方フィート)も7月14~26日に年次定期メンテナンス作業を実施したこと(そしてその後もロシアからの欧州向け天然ガス供給は減少しているとの情報もあり、価格低下による採算性の悪化が同国からの天然ガス供給削減をもたらしていると見る向きもある)もあり、6~7月にかけ欧州天然ガス貯蔵施設への天然ガス貯蔵ペースが鈍化した(当該両月の貯蔵増加量は平年を下回っていた)ことから、欧州向け天然ガス需給の相対的な引き締まり感が市場で増大した。さらに、6月6日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合に際し、5~6月に実施した減産規模を7月以降も延長するとの観測が市場で増大した他、実際当該会合で7月に日量960万バレル程度の減産措置(因みに5~6月は同970万バレル程度の減産措置であった)を実施することで合意したこともあり、5月29日に1バレル当たり35.33ドルの終値であった欧州の指標原油であるブレント原油の価格は8月5日に同45.17ドルの終値と10ドル程度上昇したことで、原油価格連動型天然ガス価格の上昇観測が市場で発生した。そして、欧州の天然ガス供給の一部がウクライナの貯蔵施設に流入している(8月1日の欧州からウクライナへの天然ガス流入量は日量39億立方フィートと7月全体の同25億立方フィートから相当程度増加している旨8月3日に伝えられる)との情報により、欧州からの天然ガス流出に伴う当該地域でのさらなる天然ガス需給引き締まり感を市場が意識するようになった。以上のような要因等が天然ガス価格に上方圧力を加えた結果、英国の天然ガス価格は5月末以降8月中旬にかけ上昇傾向となり、8月中旬の英国天然ガス価格は100万Btu当たり推定2.88ドルに到達した(それでも、欧州での高水準の天然ガス貯蔵量が当該地域での天然ガス価格上昇を抑制した側面もあり、6月初頭から7月末にかけ英国天然ガス価格は100万Btu当たり推定1ドル台後半の領域でもたつき気味であった)。

図24 欧州のLNG輸入(2009~20年)

図25 欧州天然ガス在庫(2018~20年)

図26 英国(ロンドン)気温の推移(2020年)

図27 英国の発電量に占める各エネルギー源の占有率(2011~20年)

アジア諸国でも、2019~20年が暖冬であったことにより、暖房のための民生部門向けや空調用電力供給のための発電部門向け天然ガス需要が不振であったこともあり、そもそも当該地域での天然ガス在庫が高水準であったと言われているが、さらに2020年前半の新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限により産業部門での需要が低迷したことが、当該地域での天然ガス需給緩和感を市場で一層強めた他、原油価格連動型天然ガス価格体系の天然ガス売買契約が主流の当該地域において、一部電力会社が石炭の引き取りを削減した他、長期売買契約等に定められる下方数量弾力性(DQT: Downward Quantity Tolerance)の権利を行使し長期売買契約に基づくLNGの引き取りをできる限り削減する一方、割安なスポットLNGの調達に動いたものの、もともと存在していたスポットLNG供給に加え、DQTの権利行使に伴い引き取られなかった長期契約LNGがスポットLNGとして市場に追加供給されたこともあり、当該地域でのスポットLNG需給緩和感がさらに強まることとなった。それでも、中国と台湾ではスポットLNG価格の下落による値頃感が購入意欲を刺激した結果、6月前後には、両国のLNG輸入量が大きく伸びる場面が見られた(中国は割高なトルクメニスタン等からのパイプライン経由での天然ガス輸入(原油価格連動型天然ガス価格体系が主流であるとされる)(図28参照)を可能な限り削減する一方、割安なスポットLNG調達を活発化させたものと考えられる)が、それが一巡した7月にはそのような購入も沈静化した一方で、同月は日本、韓国及び中国等で降雨が長期化するとともに気温がなかなか上昇しなかったことや水力発電の稼働が概ね活発であったとされることから、空調等のための電力供給用発電部門向け天然ガス需要が不振であったこともあり、当該地域での天然ガス在庫を高水準に到達させたと見られるとともにLNG購入意欲が低下(図29参照)、天然ガス需給緩和感を市場で強める方向で作用したこともあり、5月中旬には100万Btu当たり2ドル台半ば近辺で推移していた当該地域のスポットLNG価格は7月上旬にかけ、100万Btu当たり2ドル~2ドル台前半の水準へと変動領域を切り下げた。

図28 中国、台湾及びインドのLNG輸入増減量(前年同月比)(2016~20年)

図29 日本及び韓国のLNG輸入増減量(前年同月比)(2008~20年)

もっとも、北東アジア諸国においても、中国を初めとして新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動制限の緩和が実施されつつあったこともあり、産業向け天然ガス需要が回復し始めたことが、天然ガス需給緩和感を抑制する格好となったことから、アジア地域でのスポットLNG価格の下落幅は比較的限られた規模のものとなった。また、経済活動制限を段階的に緩和する旨5月30日に発表したインドにおいて6月8日以降実際に経済活動制限緩和が進むとともに7月中旬には同国発電部門向け燃料として石油に比べ相対的に安価なスポットLNGの購入が活発化したことが当該価格に上方圧力を加え始めた他、豪州ゴーゴンLNG施設(天然ガス液化能力年間1,560万トン(第一~第三液化施設で各年間520万トンの液化能力)、操業者:シェブロン(Chevron))が5月23日~7月11日にかけ定期メンテナンス作業を実施した際に、第二液化施設のプロパン熱交換装置8~11基の溶接部分につき最大数千ヶ所に渡り長さ最大1メートル、深さ最大3センチメートルの亀裂が発見されたことにより、当該メンテナンス作業を9月早期まで延長する(当初9月3日までと見込まれていたが、その後9月12日までさらに延長された旨8月13日に伝えられる)旨7月28日にシェブロンが発表したことから、当該LNG施設からのLNG供給低下に対する懸念が市場で発生したこと、欧米諸国での天然ガス価格の上昇にアジアのスポットLNG相場が影響を受けたこと、8月に入り日本で気温が上昇した(図30参照)他、8月6日には、向う1ヶ月間日本の気温が平年を上回る可能性がある旨の予報が発表されたこと(また、概ね同時期に日本のみならず韓国や台湾についても向こう1ヶ月間平年を上回る気温になるとの予報が明らかになっている)、そして、豪州ゴーゴンLNG施設につき西豪州政府鉱山・産業規制安全部(Department of Mines, Industry Regulation and Safety)がシェブロンに対し8月21日までに第一液化装置及び第三液化装置のプロパン熱交換器を検査するよう8月7日に指示した旨明らかになったことにより当該施設からのLNG供給がさらに減少するのではないかとの観測が市場で発生したことに加え、冬場の暖房シーズンに向けた暖房用LNG需要の増加に伴うLNG需給の引き締まり感を市場が意識し始めたこと等が、アジアでのスポットLNG価格に上方圧力を加えた結果、8月中旬には当該価格は100万Btu当たり3ドル台後半の水準にまで上昇している。

図30 日本(東京)気温(2020年)


以上

(この報告は2020年8月17日時点のものです)

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