ページ番号1008859 更新日 令和2年10月14日
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概要
- 10月6日、英領北海での主要生産者であるプライベートエクイティ系Chrysaorと独立系Premier Oilの合併が発表。ロンドンに上場する最大の独立系石油・天然ガス生産企業が誕生した。
- 英領北海では、近年、プライベートエクイティ系企業が、メジャー企業等から資産を買収することで急速にその存在感を表してきた。Chrysaorは、ShellやConocoPhillipsの英領北海資産を買収して2019年に英領北海の主要生産者となっていたが今般の合併でさらにメジャーズを大きく上回る生産者となった。
- ChrysaorとPremier Oilの合併は、双方にとってプラスの取引となった。財務的に苦しむPremier Oilと、合併による税務的なメリットを狙ったChrysaorの思惑が一致した。
- 今回の取引は、企業の財務状況がトリガーとなった。同様の取引は一部の企業間で見られるだろうが、業界再編を引き起こすM&Aとなる可能性は低いだろう。
1. ChrysaorとPremier Oilの合併の概要
10月6日、英領北海での主要石油・天然ガス生産者であるプライベートエクイティ(PE)系Chrysaorと独立系Premier Oilの合併が発表[1]された。Premier Oilによると、同社は逆さ合併(reverse takeover)の形でChrysaorと合併するが、ロンドン証券取引所での上場は継続される。
[1] Premier Oilのプレスリリース:https://www.premier-oil.com/premieroil/media/press/proposed-merger-of-premier-and-chrysaor-holdings-limited-chrysaor-and-the-reorganisation-of-premiers-existing-finance-arrangements
この合併により、両社合わせて250,000boe/d以上の生産量を誇る、ロンドンで上場する企業で最大の独立系石油・天然ガス生産企業が誕生した。その英領北海における生産量は、欧州系メジャーTotal、BP、Shellを大きく上回るもので、投資家の注目を集めている。 なお、この取引の完了は、株主と債権者の承認を受けることを条件としている。

(各種資料よりJOGMEC作成)
2. 取引の背景
(1) プライベートエクイティ系Chrysaorの台頭
英領北海では近年、プライベートエクイティ系企業が、メジャー企業等から資産を買収する手法でその存在感を表してきた(図2)[2]。Chrysaorは、ShellやConocoPhillipsの英領北海資産を買収することで英領北海最大の生産者となった。
[2] 英国:英領北海におけるプライベートエクイティ系企業の台頭:
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1007679/1008585.html

(各種資料よりJOGMEC作成)
(2) 財務上のメリット
今回の取引の背景には、主に双方に財務上のメリットがあったことが挙げられる。Premier Oilは長い間、負債に苦しんおり、負債総額は27億ドルである。一方でChrysaorの財務状況は健全で、ホームページによると年間10億ドルのフリーキャッシュフローを生んでいる。非上場企業は配当を出した分については経費計上できず、配当金を出したとしても節税効果は期待できない。負債を抱えた企業の買収は、翌年に課税所得が生じた場合に課税所得を減額することができる(繰越欠損金)。

(各種資料よりJOGMEC作成)
他のメリットについて、Premier Oilは英国の他インドネシア・ベトナムで生産中(オペレーター)の案件があるため、英領北海における生産規模拡大によるシナジー効果に、Chrysaorの東南アジアへの進出といったメリットも期待される。しかしながら、これらのメリットはChrysaorにとって財務上のメリットを比較すると小さいため、主要な理由は財務的なものと言えるだろう。同様の取引は一部の企業間で見られるだろうが、業界再編を引き起こすM&Aとなる可能性は低いだろう。
以上
(この報告は2020年10月14日時点のものです)