ページ番号1008860 更新日 令和2年10月15日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
2021年~2023年の政府予算案を下院に提出
- ロシア政府は、9月30日、2021年~2023日の政府予算案を下院に提出した。歳入は増加する計画となっており、2021年に18.77兆ルーブル、2022年に20.64兆ルーブル、2023年に22.26兆ルーブルとされている。歳出は、2021年に21.52兆ルーブル、2022年に21.88兆ルーブル、2023年に23.67兆ルーブルと計画されている。予算不足は主に国債によって調達される。
- 国家プロジェクトには、2021年に2.25兆ルーブル、2022年に2.62兆ルーブル、2023年に2.79兆ルーブルが割り当てられている。
- 予算案は、経済発展省が9月16日の政府の会議で発表した社会経済発展の中期予測の基本シナリオに基づいて策定されている。これによると、ロシアの経済成長率は、2021年のロシア経済は3.3%、2022年に3.4%、2023年には3.0%と予測されており、2021年のGDPは115.533兆ルーブル、2022年には124.223兆ルーブル、2023年には132.822兆ルーブルとなるとされている。6月時点の中期予測と比較すると、原油価格の見通しが上方修正されているが、レシェトニコフ経済発展大臣は、多くの国の疫学的状況は依然として厳しく、保守的に評価していると述べている。また、ルーブルの為替レートは金融緩和等を考慮して下方修正され、同大臣はロシア経済の競争力を維持し、非一次輸出の成長のための条件を作り出すのに役立つと評価している。
2019年実績 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
---|---|---|---|---|---|
GDP(前年比、%) | 1.3 | -3.9 | 3.3 | 3.4 | 3.0 |
GDP(10億ルーブル) | 110,046 | 106,974 | 115,533 | 124,223 | 132,822 |
鉱工業生産(前年比、%) | 2.3 | -4.1 | 2.6 | 3.6 | 2.3 |
鉱業(前年比、%) | 2.5 | -7.8 | 1.7 | 5.2 | 1.1 |
製造業(前年比、%) | 2.6 | -1.5 | 3.1 | 3.1 | 3.3 |
投資(前年比、%) | 1.7 | -6.6 | 3.9 | 5.3 | 5.1 |
小売売上高(前年比、%) | 1.9 | -4.2 | 5.1 | 2.9 | 2.8 |
実質賃金(前年比、%) | 4.8 | 1.5 | 2.2 | 2.2 | 2.5 |
失業率(前年比、%) | 4.6 | 5.7 | 5.2 | 4.7 | 4.6 |
輸出(10億US$) | 419.9 | 321.3 | 354.6 | 381.7 | 403.1 |
輸入(10億US$) | 254.6 | 235.2 | 249.9 | 267.3 | 284.7 |
ルーブル/ドルレート | 64.7 | 71.2 | 72.4 | 73.1 | 73.8 |
ウラル原油価格(US$) | 63.8 | 41.8 | 45.3 | 46.6 | 47.5 |
出典:ロシア政府資料からJOGMEC作成(https://www.economy.gov.ru/material/news/maksim_reshetnikov_predstavil_v_pravitelstve_rf_srednesrochnyy_prognoz_socialno_ekonomicheskogo_razvitiya_strany.html)
金融
ロシア中央銀行は政策金利の維持を決定
- ロシア中央銀行は、9月18日、現在4.25%とされている政策金利を維持することを決定した。中央銀行は、4月に政策金利を0.5ポイント引き下げて5.5%とし、6月に4.5%、7月に4.25%と段階的に引き下げてきた。中央銀行は、今後も政策金利の引き下げの必要性を検討していくこととしている。
- 政策金利を維持すると判断した理由として、最近数ヶ月、価格上昇率が中央銀行の予測よりもわずかに高かったことを挙げた。これは、新型コロナウイルスに関連する規制解除後の需要の積極的な回復と、世界市場のボラティリティの上昇と地政学的リスクの高まりを背景としたルーブルの弱体化という2つの要因があるとされている。一方、短期的なインフレ促進要因の影響が高まっているものの、中期的にはデフレのリスクが優勢であるとし、規制解除と支援による経済回復の段階が完了すると、世界経済とロシア経済の復興のペースは鈍化し、物価上昇率に制約的な影響を及ぼすと分析している。中央銀行の予測によると、インフレ率は2020年に3.7~3.2%、2021年に3.5~4.0%となり、その後は4.0%で安定する。
(2) 対外関係
1) 日本
菅首相との電話会談を実施
- プーチン大統領は、9月29日、菅首相との初めての電話会談を実施した。
- プーチン大統領は、菅首相の就任のお祝いを述べ、双方は、政治、貿易、経済、文化、人道分野での日露対話および協力の発展における近年の進展に言及した。また、新型コロナウイルスのワクチン開発を含む、医療分野での相互協力の展望を議論した。さらに、両国国民およびアジア太平洋地域全体の利益のため、日露関係全般を進展させるための努力を継続する相互の意思が確認された。両首脳は、新型コロナウイルス蔓延の正常化に合わせて、様々なレベルでの連絡を継続することを合意した。
- プーチン大統領は、菅首相が就任した9月16日にも就任を祝う電報を送っており、二国間及び国際的な問題に関する建設的な相互作用の準備ができていると伝えていた。
2) 米国
Prigozhin氏の活動の関与等で追加制裁
- 米国は、9月23日、既に制裁対象となっているロシアのPrigozhin氏の活動に関与しているとして8人の個人と7つの法人を対象に新たに制裁を課すと発表した。また、制裁の対象者は、中央アフリカ共和国でロシアの影響力を高めるための活動や、ロシアの連邦保安局の支援、制裁指定者が米国の制裁を逃れる手助けをしたとされている。
- Prigozhin氏は2018年に制裁の対象となったロシアのInternet Research Agency社(IRA)の代表で、IRAは米国を含む海外の政治的緊張と分断を悪化させるための活動を行ったとされている。
- 今回の制裁により、制裁対象者が米国に所有している資産が凍結され、米国人との取引も禁止される。
3) EU
Navalny氏毒殺未遂事件で国際的な調査と制裁を要請
- EU議会は、9月17日のプレスリリースで、8月20日に起きたロシアの野党指導者であるNavalny氏の毒殺未遂事件について、国際的な調査と加害者に対する制裁を要請すると発表した。
- EU議会は、事件に使用されたとする毒物「ノビチョク」はロシア国営の軍事研究所のみで開発でき、個人では入手できないとし、ロシア当局が事件に関与していたことを指摘している。また、この事件は9月11日~13日にロシアで行われた地方選挙において、反体制派を抑制するための体系的な取り組みの一部であったと強調している。
- 同日に採択されたEU決議は、Navalny氏の事件と、化学兵器分野の国際的公約違反に対する国際調査をただちに開始することを求め、ロシア当局にそのような調査に全面的に協力し、責任を負わせるよう要請している。また、EU加盟国に対し、ロシアに対する制限的措置を迅速に実施し、また、既存の措置を強化するなど、積極的な姿勢をとるよう求めている。
4) サウジアラビア
- プーチン大統領は、9月7日、サルマン国王と電話会談を行った。会談の中で、双方は、世界のエネルギー市場全般の状況を安定させることができたOPECプラス形式での協力の進展に満足していることを表明し、この分野での更なる緊密な調整を行うことに合意した。
- また、サウジアラビアが議長国となっているG20に関連して、2020年11月に開催される首脳会議の問題が検討された。双方は、2020年3月に開催されたG20の臨時首脳会議でプーチン大統領が提唱した、医薬品、食品、設備、技術の相互供給のための「緑の回廊」を創設するイニシアチブを含む、世界経済と金融に対する新型コロナウイルスの流行の悪影響を克服するための共同の取り組みについて議論した。
- さらに、 2019年10月にプーチン大統領がサウジアラビアのリヤドを公式訪問した成果について、様々な二国間協力について議論され、貿易、経済、投資の分野での関係を拡大することが確認された。
5) ベラルーシ
ルカシェンコ大統領との会談を実施
- プーチン大統領は、9月14日、ソチでルカシェンコ大統領と会談を実施した。プーチン大統領は会談の中で、ルカシェンコ大統領と経済や防衛の分野や新型コロナウイルス対策で引き続き協力をしていくことを表明し、ベラルーシに15億ドルの融資を行うことも明らかにした。
- プーチン大統領は会談の中で、ベラルーシの大統領選挙を巡る問題について、両首脳の立場は、ベラルーシ人自身が外部からの圧力を受けずに、互いに対話して状況を理解し、作業を進めるために共通の決定をしていくことだと述べた。
- これに対し、ルカシェンコ大統領はロシアとの緊密な関係を主張し、ベラルーシの困難な時期にロシアの提供する支援に感謝の意を示した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/64031
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2020年9月、原油輸出税はUSD6.5/バレルに引き上げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 9月の石油製品輸出税はUSD14.2/トン、ガソリンについてはUSD26.1/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 9月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,065万トン(約2億9,675万バレル、平均日量989万バレル)で、前年同月比11.8%減。
- 9月、原油輸出量は1,783万トン(約1億3,018万バレル)で、前年同月比20.6%減。
(3) 減産合意
減産合意の不足分の補償期間を12月末まで延長
- OPECプラスは、9月17日、サウジアラビアのAbdulazizエネルギー大臣とロシアのNovakエネルギー大臣を共同議長とし、第22回合同閣僚監視委員会をテレビ会議形式で開催した。会議では、前回の8月19日の会議以降の石油市場の動向をレビューし、今後の市場の見通しを検討した。
- また、委員会は8月の減産量について、全体で目標の102%に達したことを歓迎した。一方、委員会は加盟国がそれぞれ完全な減産目標を遵守し、またこれまでに過剰に生産された数量をできるだけ早く今後の生産量から削減することの重要性を繰り返した。一方、9月を期限としていた過剰生産分の減産期間を12月末まで延長することを決定した。委員会はこの取り組みが、長期的な石油市場の安定を実現するために不可欠であるとしている。
- Novakエネルギー大臣は会議のあとのインタビューで、まだ世界の消費は危機前の水準には達していないが、2021年には市場が均衡し、世界の在庫量は過去5年間の平均に戻ると予想しており、2ヶ月続けて在庫が減少している現在の傾向を非常に良好であると評価した。

写真出典:https://minenergo.gov.ru/node/18860
(4) 天然ガス生産
- 9月、天然ガス生産量は556億立方メートル(約2.0CF)で、前年同月比で1.4%減。
(5) 税制・法制
鉱業企業からの先住民族への損失補償の手続きを規定
- ロシア政府は、9月18日、鉱業企業に対して先住民族に与えた損失を特別協定に基づいて補償することを定めた。これまでは先住民族への損失補償は個別の交渉によって行われ、規則化されていなかったが、今後は、鉱業企業と先住民族代表者の地域協議会との間で協定を締結し、双方の合意に基づき、市民の財産が被った損害、実損、逸失利益の補償に関する条項を協定に盛り込むことができるようになった。
- 協定案はパブリックコメントにかけられ、その意見や提案をとりまとめたものが当事者双方の検討に付される。協定締結後5日以内に地域協議会は地方政府にこれを通知し、地方政府はウェブサイトに当該協定を掲載する。
- 2010年のロシアの国勢調査によると、登録されている先住民族は31万6,000人で、その80%以上が北極、極東、シベリア、すなわち天然資源の開発が活発な地域に居住している。
政府がPriobskoye及びVankor油田の税控除法案を提出
- ロシア政府は、9月19日、Priobskoye及びVankor油田に対して税控除を行うための法案を下院に提出した。
- 法案では、ハンティマンシ自治管区で、2018年1月1日以前にライセンスが発行され、可採埋蔵量が10億トン以上の鉱区での石油生産を対象に、鉱物抽出税の税控除を行うとされており、RosneftのPriobskoye油田が該当する。課税期間中のウラル原油の平均価格がロシア政府の定める基準価格(2020年の場合は42.25ドル/バレル)を超える場合にのみ適用され、税控除額は38.3億ルーブルで、年間で最大459.6億ルーブルとなる。控除額の上限は4,596億ルーブルとなっており、10年間の税控除期間が想定されている。
- Vankor油田についても、現在の法律では基準価格(2020年の場合は42.25ドル/バレル)を超える場合にのみ、インフラ施設への投資額について、鉱物抽出税から控除できることになっているが、今回の法案では、税控除の対象となる金額を基準価格から25ドル/バレルに引き下げることされている。
- 下院では、9月30日までに第3読会を終え、法案を採択した。法案が成立した場合、2021年1月1日に法律が発効するとされている。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
Verkhnechonskoeの回収困難な埋蔵量の開発に着手
- Rosneftは、9月30日、イルクーツク州のVerkhnechonskoe油コンデンセート田で、回収困難な埋蔵量を開発するパイロット作業を開始したと発表した。生産可能性を評価するための貯留層の流体力学・地球物理学的研究が2023年まで続けられる。対象となるのはPreobrazhensky層で、深度1,600メートルで、イルクーツク州の複数の鉱区に広がっており、可採埋蔵量は2,800万トンで、貯留層の透過性が非常に低いことが特徴とされている。
- Rosneftは、2020年8月に掘削された最初の2つの水平坑井の流量は、1つ目は1日あたり113トンで、2つ目の坑井は1日あたり51トンだったとされ、技術の有効性を確認したとしている。
極東石油化学会社の課税条件を見直し
- 9月8日付の報道によると、Rosneftがナホトカに建設を計画している極東石油化学会社(FEPCO)を実現するための課税条件について政府が検討をしている。プロジェクトには、年間1,200万トンの石油と340万トンの石油化学原料の処理能力を持つプラントと、製品の輸送のための港、鉄道支線と発電所も含まれる。
- RoneftはFEPCOを10年前から計画してきたが、2019年、採算がとれないとして投資プログラムから削除した。以前の見積もりによるとプロジェクトの投資額は1.5兆ルーブルとなる。しかし、今年8月にSechin社長がプーチン大統領と会談した際、収益性を確保するために30年間の安定した税制が提供されればプロジェクトを再開できると述べた。
- Rosneftは、課税補助金の条件を変更する提案をしており、この提案によると、原油価格が60ドル/バレルの場合、FEPCOが得られる補助金の引き上げ分は年間約640億ルーブルと見積もられている。
- Borisov副首相は、9月24日、チュメニ石油ガスフォーラムにおいて、このプロジェクトの特典供与に関する最終的な決定はされていないと語った。また、特典供与には税法の改正が必要になるため、経済指標を分析する必要があり、Rosneftに対して経済効率の高さを証明する資料を提出するように要請したとされている。
(2) Gazprom
Miller社長とプーチン大統領が面談
- Miller社長は、9月16日、プーチン大統領と面談し、ガス供給システムの冬季に向けた準備、2020年のガスインフラ拡張の取り組みと今後5年間の計画、シベリアの力2の状況について報告した。
- ガス供給システムの冬季に向けた準備については、ロシアの地下ガス貯蔵施設には暖房需要期までに72.3BCMが貯蔵できるとされ、さらにGazpromは欧州の地下ガス貯蔵施設の使用権を持っており、そこにも約9BCMのガスを注入し、これらの十分な在庫により冬季の消費者の需要を十分に満たすことができるとしている。
- ガスインフラ拡張プログラムについては、投資額を2019年より220億ルーブル増やし、560億ルーブルを割り当てている。これにより、2,350キロメートルのパイプラインを建設し、319の地域にガスを輸送できるようにし、年末までにガスの普及率は71.4%となる見込み。今後5年間のプログラムについては各地方政府との合意がほぼ完了しており、投資額は5,261億ルーブルで、5年間でパイプラインを24,400キロメートル建設し、3,632の地域にガスを輸送できるようにし、ガス普及率は74.7%となる予定。
- シベリアの力2パイプラインについては、2021年第1四半期にも実現可能性調査の結果を議論することができると報告した。また、プーチン大統領が指示してきたように、東西のガス輸送能力を接続することは間違いないと述べ、このプロジェクトにより、東シベリアとトランスバイカル地域のガスインフラを拡張し、最大50BCMの容量の輸出ルートを作り、ヤマルから欧州だけでなくアジア市場にもガス供給できるようになると伝えた。
投資プロジェクトの実施状況を報告
- Gazpromは、9月11日、プレスリリースで主な投資プロジェクトの進捗状況を明かした。
- サハ共和国のChayandinskoyeガス田の生産能力の拡大が続いている。Chayandinskoyeでは、2020年に103基のガス井、ガス前処理設備、ヘリウム濃縮物抽出用膜設備を稼働させる予定。
- イルクーツク州のKoviktinskoyeガス田の事前開発も進行中で、最初の総合ガス処理ユニットの建設のために生産井掘削や整地が行われている。
- シベリアの力パイプラインでは、Ivan Moskvitinコンプレッサー基地の建設設置工事が間もなく完了し、KoviktinskoyeからChayandinskoyeへのパイプラインも準備が進んでいる。
- Komsomolsk-on-Amurとハバロフスクの間で、サハリンハバロフスク・ウラジオストク(SKV)パイプラインの拡張も続いており、これまでに直線部分の半分以上の206キロメートルの溶接がされている。
- アムールガス処理プラントでは、最初の2つの生産トレインで試運転を継続している。第5第6トレインでは、基礎の流し込みが完了し、パイプラックの組み立てが開始されている。全体のプロジェクトの進捗は66%とされている。
- ヤマルでは、集中的なガス田開発が進んでいる。たとえば、今年はBovanenkovskoyeガス田で52のガス井が接続され、Kharasaveyskoyeガス田では生産井が掘削されてBovanenkovskoyeガス田へのパイプラインが溶接敷設されている。
(3) Gazprom Neft
Novoportskoye油田の残余埋蔵量の開発を開始
- Gazpromneft-Yamalは、9月8日、Novoportskoye油田の残余埋蔵量の開発を開始したと発表した。この埋蔵量は4,000万トンと推定されており、このプロジェクトの実施によりヤマル半島で最大の油田で高水準の生産を維持できるとしている。
- Novoportskoye油田を開発しているGazpromneft-Yamalは資産の残余埋蔵量を開発するために、2022年~2023年に2つの新しい生産パッドを建設することを計画している。残余埋蔵量は既存の技術を使用して収益性の高い生産をすることができず、新たな技術を導入する必要がある。
- Novoportskoye油田はヤマル半島で最大の生産中の石油ガスコンデンセート油田の一つで、カテゴリB1+B2の可採埋蔵量は2億5,000万トンの石油とコンデンセート、及び320BCM以上のガスとされている。Gazprom Neftは2016年にこのライセンスを2150年まで延長し、同社の資産ポートフォリオの中で最長となっている。

出典:https://www.gazprom-neft.com/company/major-projects/new-port/
4. 東シベリア・サハリン・極東
(1) サハリン
南キリンスキー鉱床は2023年に生産開始予定
- GazpromのMenshikov部長は、9月30日、Sakhalin Oil and Gas Forumで、2023年としている南キリンスキー鉱床の試運転の期限をまだ変更しておらず、2023年末までに開始予定であると語った。
- また、エネルギー省のGradkov石油ガス生産輸送局長は、南キリンスキー鉱床のガス生産量は2023年に開始され、最初は0.8BCMを生産する計画であり、2030年までには生産量を15.4BCMとし、また、2035年までに19.2BCMになると伝えた。
- エネルギー省の予測によると、2035年までにサハリンハバロフスク・ウラジオストク(SKV)パイプラインの3つの地域での天然ガスの需要は約40BCMとなる。うち、23.4BCMはサハリンで使用され、残りは本土の需要となる。

出典:https://www.gazprom.com/projects/sakhalin3/にJOGMEC加筆
(2) 極東
カムチャツカのLNG積替えターミナル建設は国民福祉基金から拠出
- 政府は、9月23日、カムチャツカで計画されているLNGの沖合積替え複合施設の建設について、国民福祉基金から資金を提供するプロジェクトのリストに加えることを決定した。このリストのプロジェクトの実施は国の特別な管理下に置かれ、国民福祉基金の支出における汚職を防ぐため、監督を強化する必要があるとされている。
- 政府は、ミシュスチン首相が8月に極東に出張した結果を受け、エネルギー省等関係省庁、カムチャツカ州政府、Novatek、Gazpromに対し、地域のガス供給を確保するための計画を10月5日までに提出するように指示している。この報告には、特にLNGの沖合積替え複合施設の建設を考慮に入れたガス輸送インフラの建設を含む必要があるとされている。
5. 新規LNG・P/L事業
(1) Arctic LNG 2
14隻のArc7級砕氷船傭船契約を締結
- Novatekは、9月7日、Arctic LNG 2が、SMART LNG(NovatekとSovcomflotの合弁会社)と14隻のArc7級砕氷船LNGタンカーの長期傭船契約を締結したと発表した。Arctic LNG 2のLNGタンカーは2019年に最初のタンカーの傭船契約を締結しており、これにより15隻のLNGタンカーが調達されることになる。この傭船契約により、SMART LNGはロシア開発対外経済銀行(VEB)及びZvezda造船所と砕氷船の建設及びファイナンスリース契約を締結できるようになるとされている。
- また、Rosneftは9月25日、Zvezda造船所が、Arctic LNG 2プロジェクトに向けたArc7級砕氷船を10隻建造する契約を締結したと発表した。建造のための資金はロシア開発対外経済銀行(VEB)から調達される。最初のLNGタンカーの建造は2020年末に開始される予定となっている。Zvezda造船所はVEBと、北極海航路のガス輸送を目的とした5隻のLNG船の建造契約を締結しており、Arctic LNG 2プロジェクトのLNGタンカーは15隻全てをロシア船籍として建造することになる。Yamal LNGの15隻のLNGタンカーは韓国で建造されていた。
- 砕氷船は45MWの動力を備え、2メートル超の厚さの氷の中を進むことができる。容量は17.26万立方メートルで、主な燃料としてLNGを利用する。
(2) Nord Stream 2
船主保険会社組合が補償を提供しないことを表明
- 船主保険会社組合(国際P&Iグループ)は、米国の制裁措置によりNord Stream 2及びTurkStreamに関連する活動の保険に対し、補償を提供しないことを表明した。日本船主責任相互保険組合は、9月18日付で会員向けの情報を掲載し、国際P&Iグループのすべての組合が同様の対応をしていると説明している。
- 米国国務省は、2020年7月、「制裁による米国敵性対抗法」(CAATSA)232条の新たなガイダンスを発表し、対象としてNord Stream 2及びTurk Streamが含まれることを示した。また、米国議会には、欧州エネルギー安全保障法(PEESA)の適用範囲を拡大し、両パイプラインプロジェクトの保険または再保険を適用する者にも制裁を科す法案が提出されている。
- 掲載された情報では、組合は会員に対し、違法な活動に関与している船舶や組合が制裁違反に問われるリスクがある船舶には、保険カバーが適用されないと述べ、CAATSAやPEESAによる保険者へ制裁が科されるおそれに鑑み、Nord Stream 2やTurk Streamの建設プロジェクトに従事する、あるいはこれに関係するあらゆる活動に対し、組合の保険カバーは適用されないと説明している。また、すべての会員はNord Stream 2またはTurkStream建設プロジェクトに関する契約を締結するリスクを評価軽減し、制裁措置等を回避するために最大限のデューデリジェンスを実行することを強く推奨するとしている。
以上
(この報告は2020年10月15日時点のものです)
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