ページ番号1008876 更新日 令和2年11月9日

原油価格停滞下でも回復の兆しを見せるブラジルの探鉱・開発 欧州石油企業のエネルギートランジション投資でも注目集まる

レポート属性
レポートID 1008876
作成日 2020-11-09 00:00:00 +0900
更新日 2020-11-09 11:24:01 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 環境探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 19
抽出データ
地域1 中南米
国1 ブラジル
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ブラジル
2020/11/09 舩木 弥和子
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概要

  1. 2019年末から2020年初にかけて日量300万バレルを上回るようになったブラジルの石油生産量は、新型コロナウイルスの感染拡大により一部の油田が生産を停止し、2月以降は日量300万バレルを割り込んだ。Petrobrasも、3月下旬から4月にかけて日量10万~20万バレルの減産を表明したが、4月末にはこれを撤回した。6月から8月は一時的に生産を停止していた油田の生産再開やプレソルトの生産増加により、石油生産量は再び日量300万バレルを超える水準で推移している。
  2. 原油価格低迷や新型コロナウイルス感染拡大によるブラジルの探鉱・開発への影響は少ないとされているが、プロジェクトの遅延や鉱区からの石油会社の撤退が見受けられるようになってきている。
  3. ブラジルには、堅調なバイオエタノールセクターが存在し、また、風力発電や太陽光発電のコスト削減が進み、PetrobrasによるLNGやパイプラインなどの天然ガス中・下流セクターの独占状態が解消しつつあることから、欧州の石油会社のエネルギートランジションの投資対象となっている。
  4. ブラジルでは2020年12月に、成熟油田や過去の入札で落札されなかった鉱区、返還された鉱区を対象にopen acreage方式の入札が行われる。この入札はもともと中小規模企業向けの入札とされていたが、ExxonMobil、Shell、Total、Petrobrasをはじめとして63社が入札に参加する予定だ。石油会社各社の今後のブラジルでの探鉱・開発動向を知るためにも、結果に注目したい。

(出所:LatAmOil、Platts Oilgram News、International Oil Daily、BNamericas他)


1. ブラジルの石油生産状況

日量250万バレルから270万バレル程度で推移していたブラジルの石油生産量は、2019年後半から急激に増加し、2019年11月に日量309万バレルと初めて300万バレルを超えた。その後も、12月に310.7万バレル、2020年1月に316.8万バレルと増加を続けた。1月にはブラジルの石油・ガス生産量が初めて日量石油換算で400万バレルを上回り404.1万バレルとなった。

このような状況から、Bento Albuquerque鉱業エネルギー大臣は1月22日、ブラジルの石油生産が2020年には日量350万バレルに増えるとの見通しを示した。また、2019年は日量110万バレルだった石油輸出を2020年には140万バレル前後に増やしたいと語った。さらに、探鉱も活発化させる方針であることを明らかにした。そして、7月にサウジアラビアを訪問する際には、ブラジルのOPEC加盟について議論を始める方針だと語った。

ところが、2020年2月頃から新型コロナウイルス感染拡大により経済の減速や石油需要の減少に対する懸念が広まり、また、3月にはOPECプラス協調減産枠組み崩壊により供給過剰懸念が高まったことで、原油価格が下落し、その後現在まで、原油価格はバレルあたり40ドル前後で推移することとなった。

この新型コロナウイルス感染拡大および原油価格下落を受けて、ブラジルの石油生産量の約75%を生産する国営石油会社のPetrobrasは、3月26日に、3月末までに石油生産量を日量10万バレル削減すると発表した。Petrobrasは、まず、Ceará、Rio Grande do Norte、Sergipe-Alagoas各盆地浅海の高コストの油田の生産を停止することを明らかにした。これらの油田の生産量は合計で日量23,000バレルであり、その多くはすでに同社が進めている資産売却の対象とされている。Petrobrasは市場動向を注視しながら必要に応じて追加の生産調整を実施するとした。

この発表から1週間もたたない4月1日、Petrobrasは油価下落、供給過剰、新型コロナウイルス感染拡大に対応するため、同日より生産削減量を倍増させ日量20万バレルとすると発表した。同社は生産量削減の期間については検討中であるとした。

そして、4月中旬には、Petrobrasが、日量20万バレルの生産削減の一環として、Campos、Ceará、Potiguar、Sergipeなどの盆地の浅海に設置された62基のプラットフォームを休止させることを計画しているとの報道がなされた。また、ブラジル国家石油庁(Agência Nacional do Petróleo, Gás Natural e Biocombustíveis:ANP)が石油会社から29油田(生産量、日量6.5万バレル)の生産停止の要望を受け、これを評価していることも明らかになった。29油田のうち、16油田はPetrobrasがオペレーターを務めるSergipe、Alagoas、Rio de Janeiro、Rio Grande do Norte、Ceará州沖合の油田、12油田はRio Grande do Norte、Sergipe、Bahia州陸上の油田、1油田はブラジル企業Energizziがオペレーターを務める油田であるとされた。

一方で、ANPによると、新型コロナウイルス感染拡大により、2月以降、Camamu、Campos、Ceará、Espírito Santo、Potiguar、Recôncavo、Santos、Sergipe各盆地の38の生産設備(浅海21、陸上17)が影響を受け、うち36の設備で6月初旬になっても生産が停止したままの状態となった。

このような状況から、2月から4月のブラジルの石油生産量は日量300万バレルを割り、日量290万バレル台で推移した。ブラジルの石油開発プロジェクトは世界の他のプロジェクトに比べ競争力があるものの、ブラジル政府が原油価格下落下であっても投資家にとって魅力的な環境を提供し続けられなければ、石油会社はブラジルを離れていき、ブラジルが大産油国になるとの見通しに変化が生じる可能性があると見る向きも現れるようになった。

ところが、Petrobrasは4月28日、石油製品需要が予想を上回っていることから、生産削減を撤回すると発表した。Petrobrasは、4月初めに、同社の石油生産量は2月の日量213.9万バレルから4月は207万バレルに減少するとしていたが、4月は2月よりも生産量が増加し226万バレルになる見通しであることを明らかにした。実際のPetrobrasの石油生産量は4月には日量216.3万バレル、5月には204.1万バレルであったが、6月以降は増加に転じ、8月は230.4万バレルと2月の232万バレルに近い水準まで回復している。そして、ブラジルの石油生産量も5月の日量276.5万バレルを底に回復し、6月から8月は再び300万バレルを超える水準で推移している。

このように石油生産量が増加した背景には、Petrobrasが生産削減を行わないこととしたことに加え、プレソルトの生産量が増加し、一時的に生産を停止している油田や成熟油田の生産減少分を上回ったことがある。

図1.ブラジルの石油生産量推移
図1. ブラジルの石油生産量推移
(ANP websiteを基に作成)

ANPによると、10月初めの時点で33油田が一時的な生産停止を続けている。Sergipe盆地ではCaioba、Camorim、Guaricema、Aguilhada、Angelim、Aruari、Atalaia Sul、Beijo Grandeの8油田、Potiguar盆地ではIlha Pequena、Ubarana、Oeste de Ubarana、Agulha、Barrinha、Barrinha Leste、Barrinha Sudoeste、Poço Verde、Serra do Mel、Serra Vermelhaの10油田が3月26日以降生産を行っていない。また、Recôncavo盆地のLagoa do Paulo Sul、Juriti、Brejinho、Canabrava、Rio Sumaúba油田、Campos盆地のNamorado、Bagre、Garoupa、Cherne油田、Ceará盆地のAtum、Xaréu、Curimã、Espada油田、Santos盆地のMerluza、Lagosta油田も生産を停止している。Petrobrasは、このうち31油田のオペレーターであり、これらの油田の大部分は資産売却の対象とされている。Petrobras以外ではRecôncavo E&PがLagoa do Paulo Sul、Juriti油田のオペレーターを務めている。CNPE決議02/2016によると、ブラジルの油田は6ヶ月以上生産を停止することを認められていないが、法令10.289/2020により今回の新型コロナウイルスのパンデミックに影響を受けた生産停止はこの例外とされている。これらの油田の多くは浅海や陸上に位置しており、生産量も少ない。

一方、プレソルトの石油生産量は2018年12月に日量150万バレルに達した後、2019年後半に急増、2019年11月に初めて日量200万バレルを上回った。2020年2月から4月は日量200万バレル前後で推移し、5月は187.5万バレルまで落ち込んだが、6月には220万バレルを上回り、7月、8月は2ヶ月連続で過去最高を更新した。そして、7月には初めてブラジルの石油生産量に占めるプレソルトの石油生産の割合が70%を超えた。

これには、Petrobrasが2018年から2019年にかけて生産を開始した8基の浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備(Floating Production, Storage and Offloading system:FPSO)の多くや2020年6月26日に生産を開始したSantos盆地BM-S-11-A鉱区Iara(Atapu)油田のFPSO P-70がランプアップ中であることが影響している。FPSOのランプアップには、通常1年から18カ月を要し、その結果、現在まで生産増が続いている。

プレソルトの油田の中でも特に生産を伸ばしているのがSantos盆地のBúzios油田だ。Búzios油田は2010年に発見された当初はFrancoと名付けられていた。2013年12月にPetrobrasがANPに開発を申請し、2018年4月に生産を開始、現在はFPSO P-74、P-75、P-76、P-77を用いて生産中だ。2020年8月のBúzios油田の生産量は日量60.5万バレルとTupi油田の100.4万バレルには及ばないものの、生産開始後1年の2019年4月に日量16.6万バレル、2年の2020年4月に日量51.5万バレルと石油生産量を急増させ、ブラジル第2位の油田に成長した。また、2020年8月には、Búzios油田の7-BUZ-12-RJS井および7-BUZ-24D-RJS井の生産量がそれぞれ日量56,456バレル、51,313バレルと、1坑当たりの生産量がブラジル国内の坑井の中で上位1位と2位を占めた。1坑当たりの生産量が多いブラジルの生産井10坑のうち9坑がこの2坑を含めたBúzios油田の坑井により占められている。さらに、2020年9月には、同油田の7-BUZ-10-RJS井の生産量が石油換算で日量69,100バレルとなった。これは、同年8月のブラジルの油田と比べてみると第8位に相当し、世界全体で見ても沖合プロジェクトの1坑当たりの生産量として最高を記録したと報じられた。

また、新型コロナウイルスの感染拡大によりブラジル国内の石油需要が低迷した時期に石油輸出が増加したことも、ブラジルの石油生産井の多くが停止に至らず、逆に生産を伸ばすことになった理由の一つであるとされている。ANPによると、2020年1月から7月のブラジルの原油輸出量は前年同期比37%増の日量150万バレルとなった。これには、中国が国内の石油需要が低迷しているにもかかわらず、価格低下を利用し石油在庫を積み増すために、ブラジルからの原油輸入を増やしたことが影響している。7月末時点でブラジルの原油輸出量の約7割が中国向けであったという。国際海事機関(International Maritime Organization:IMO)が2020年1月よりバンカー重油の硫黄含有率に関する規制を3.5%から0.5%に引き下げたが、ブラジル産原油の硫黄含有率は0.5%以下が主であり、これもブラジルの原油輸出増加を後押しした。中南米のライバル国であるベネズエラやメキシコの生産量、輸出量が減少したことも、ブラジルの原油輸出増に味方した。ブラジルのLula原油はベネズエラのMerey原油やメキシコのMaya原油よりも軽質で硫黄分が少なく、これらの原油にとって代わっている。2020年1月から7月のブラジルの原油輸出額は前年同期の139億ドルから122億ドルに減少したが、輸出量は増加し、これがブラジルの石油生産増加の梃子になったと見られている。

図2. Santos、Campos盆地主要鉱区図
図2. Santos、Campos盆地主要鉱区図
(各種資料を基に作成)

2. 会社別の探鉱・開発などの状況

原油価格低迷や新型コロナウイルス感染拡大によるブラジルの探鉱・開発への影響は少ないと言われている。先述した通り、石油生産量は回復、増加基調にある。Baker Hughesによると、ブラジルの稼働リグ数は、2020年3月の17基から、7月に過去1年間で最低の8基まで減少したが、8月は前年同月を1基上回る10基、9月は前年同月と同数の9基となっている。また、ANPによると、2020年には生産井207坑(沖合72坑)が掘削される予定で、2019年に掘削された生産井204坑よりもわずかに増加する見通しだ。2021年には生産井284坑(沖合74坑)の掘削が計画されている。

ただし、ブラジル沖合についても、プロジェクトの遅延や鉱区からの企業の撤退が見受けられるようになってきている。原油価格の状況から、Petrobrasやメジャーを含め石油会社は当面の間、設備投資や新規プロジェクトへの投資を抑制することになると考えられる。プレソルトのBúzios油田など損益分岐点がバレル当たり40ドルあるいはそれ以下のプロジェクトは開発へ向けて進展が期待されるが、2020年および2021年に最終投資決定が予定されていたプロジェクトのいくつかが2020年代半ばまで、あるいは、原油価格が十分に上昇するまでは最終投資決定を行えなくなる可能性が出てくると見る向きも一部にはある。

以下に、Petrobrasや主要IOCの探鉱・開発などの状況を紹介する。


(1) Petrobras ―探鉱・開発を着実に推進―

Petrobrasは、2020年3月26日に、3月末までに石油生産量を日量10万バレル削減すると発表した際に、2020年の投資額を120億ドルから85億ドルに削減することを明らかにした。Petrobrasの2020年度の財務計画はバレル当たり40ドルの原油価格を前提としており、長期間、低油価に対応するための準備はできているとする一方で、近年の入札で取得したプレソルトの鉱区での探鉱やFPSOのつなぎ込み、生産・精製設備の建造を延期するとした。また、資機材供給企業やサービス会社と価格交渉を行っていることを明らかにした。さらに、株式の配当を延期することも発表された。Petrobrasは2020年に主要なFPSO30基以上の生産をそれぞれ15日から20日にわたり停止してメンテナンスを実施し、システムのチェックと効率向上を図る計画だったが、ソーシャルディスタンスを保つために人員を削減する必要があることから、この計画も削減されることとなった。Petrobrasは、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、最低限の従業員をFPSOに搭乗させ、FPSOでの勤務日数を21日に伸ばし、沖合設備で勤務する前は7日間の隔離を実施、感染の可能性のある従業員はすぐにFPSOから降ろしているという。

4月1日に生産削減量を倍増させ日量20万バレルとすると発表した際には、「石油業界にとって過去100年間で最悪の危機の中でPetrobrasの持続可能性を確保するため」の新たな措置として、精製処理量を削減するとともに、約21,000人の従業員の労働時間を1日8時間から6時間に短縮するとした。さらに、管理職の給与の10%から30%の支給を先延ばしするなどして人件費を約7億レアル(約1.2億ドル)抑えることとした。同社子会社で燃料輸送を担うTranspetroも2020年の事業費と投資を抑え、5億700万レアルのコスト削減を図ることとなった。

生産を停止した62基のプラットフォームについては、浅海の老朽油田に設置されているものがほとんどで、これらの油田の多くはPetrobrasの資産売却の対象とされていることに加え、作業員を他の作業に移すなどポートフォリオの調整を行っており、また、現在の原油価格では採算も合わないので、一部の生産は恒久的に失われる可能性が高いと見られている。

Petrobrasは、2020年第1四半期の生産量は石油換算で日量290万バレルとなり、4月も62基のプラットフォームの生産を停止したにもかかわらず280万バレルを生産したことを明らかにした。さらに、新型コロナウイルス対策の一環で、就業人員を従来の50%にまで減らしたが、それでも生産実績に大きな変化は生じなかったとした。4月28日に、Petrobrasが生産削減を撤回した背景には、このような状況もあったと考えられる。

そして、Petrobrasは5月15日に、2020年の石油および天然ガスの生産量を石油換算で日量270万バレルにするという目標を維持すると発表した。Petrobrasは2020年から2024年までの事業計画で、石油、天然ガス生産量を、2020年は日量270万バレル、2021年は290万バレル、2022年は310万バレル、2023年は330万バレル、2024年は350万バレルと年々引き上げていくことを目標としている。ブラジル経済は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け停滞しているが、Petrobrasはこの計画を変更することは今のところ考えていないとした。

Petrobrasは、6月に入ると、2020年に少なくとも20億ドルのコスト削減を目指し、資機材供給企業との再交渉を進めており、支払いの延期や契約満了間近の契約の終了について協議を行うだけでなく、一部の沖合支援船のリースを一時的に停止することまでもが検討されていることが明らかになった。また、Petrobrasは3月より管理部門の従業員21,000名の90%を在宅勤務としてきたが、今後は恒久的に管理部門の従業員の半数を在宅勤務とすることを決めた。さらに、事業のスリム化とコアビジネスへの再集中を目指し早期退職割増報奨金制度を導入したところ、Petrobras従業員の22%にあたる約1万人がこれを受け入れ、すでにPetrobrasを退職した者が2,000名で、残りは2021年までに退社することとなったという。

さらに、Petrobrasは9月14日に、新型コロナウイルス感染拡大の影響や原油価格の低迷から、探鉱・生産に関する設備投資を現在の2020年から2024年の事業計画の640億ドルから次の2021年から2025年の事業計画では400~500億ドルに引き下げると発表した。探鉱投資については、現在の事業計画で想定していた115億ドル(探鉱・生産部門の設備投資640億ドルの18%)から、次の事業計画では56 ~70億ドル(同400~500億ドルの14%)へと削減する計画だ。Petrobrasは現在、原油価格(ブレント)がバレル当たり35ドルでも利益を上げられるプロジェクトに注力しており、現在の事業計画では総投資額の59%とされているBúzios油田などプレソルトへの投資は、総投資額の約71%を占めることになる。

Petrobrasはこのように投資額やコストの削減を進めているが、その一方で、探鉱・開発は着実に進めている。特に、プレソルトに関しては、開発の決定やFPSOの投入計画が相次いで発表されている。

Petrobrasは7月にBúzios油田に3基のFPSOを投入する計画を発表した。Búzios油田では現在4基のFPSOが生産中で、2022年生産開始の予定で5基目のAlmirante Barrosoが建造中となっている。今回投入計画が発表された3基のFPSOのうち、FPSO Almirante Tamadaréは、EquinorがBacalhau油田に投入予定のFPSO(生産能力、日量22万バレル)を上回りブラジル最大のFPSOとなる予定だ。Petrobrasは今後10年の間に、FPSO12基によりBúzios油田の生産を行う体制を確立する計画で、生産量は少なくとも現在の3倍にあたる日量200万バレルまで増加すると見られている。

表1. Búzios油田に投入予定のFPSO

FPSO

石油生産能力

天然ガス生産能力

生産開始時期

Almirante Tamadaré

日量225,000バレル

日量12MMm3

2024年下半期

P-78

日量180,000バレル

日量7.2MMm3

2025年

P-79

日量180,000バレル

日量7.2MMm3

2025年

(各種資料を基に作成)    

 

8月には、Santos盆地プレソルトのLibra鉱区Meroプロジェクトフェーズ3(Mero 3)の開発が決定された。Mero 1(生産開始2021年)、Mero 2(同2023年)に続く開発で、2024年に生産開始が予定されている。MeroプロジェクトのFPSOの原油生産能力はいずれも日量18万バレルとなっている。Petrobrasは同じく8月に、マレーシアのMisc BerhadとMero 3に投入予定のFPSO Marechal Duque de Caxiasのチャーターに関する基本合意書を締結した。Mero 1のFPSO Guanabara、Mero 2のFPSO Sepetibaは、Sépia油田のFPSO Carioca(生産開始2021年)、Marlim 1油田のFPSO Anita Garibaldi(同2022年)、Marlim 2油田のFPSO Anna Nery(同2023年)とともに現在建造中である。

PetrobrasはSantos盆地Itapu油田のFPSOの入札手続きを進めていたが、Itapu油田ではFPSO P-71が使われることになり、入札は行われないこととなった。FPSO P-71は、当初Lula Fator de Recuperação(FR)油田で使われる予定で、Espírito Santo州のJurong Aracruz造船所(EJA)でトップサイドの統合作業を実施中である。Petrobrasの2020年から2024年の事業計画では、2024年となっていたItapu油田生産の開始は2021年に前倒しされる予定である。

Petrobrasはまた、FPSO Parque das Baleias(生産開始2023年)とFPSO Sergipe Águas Profundas(同2024年)についても検討中であるという。

PetrobrasはSantos盆地に、さらにFPSO13基を投入することを計画、7月に環境規制当局IBAMAにこの件に関する資料を提出した。Petrobrasが計画しているFPSO13基は、Mero Fator de Recuperação(石油生産能力日量5万バレル、生産開始2024年)、Atapu 2(同12万バレル、2026年)、Lula 1 Revitalization(同10.5万バレル、2026年)、Sépia 2(同14.5万バレル、2026年)、Búzios 9、10、11、12(同、各22.5万バレル、2025年から2027年)、Sururu(同4.5万バレル、2027年)、Uirapuru 1(同16万バレル、2027年)、Aram(同15万バレル、2028年)、Sagitário(同16万バレル、2028年)、Três Marias(同13.5万バレル、2028年)となっている。

このように多くのFPSOの投入が計画されているものの、Petrobrasは、新型コロナウイルス感染拡大の先行きが不確実なことから、Campos盆地Parque das Baleias鉱区の再生プロジェクトの生産開始を2023年から2024年に延期し、FPSO(石油生産能力、日量10万バレル)建造の入札をキャンセルすると10月16日に発表した。Petrobrasは、すでに多くのプロジェクトで新たに生産開始が予定されているので、原油価格が回復するまでいくつかのプロジェクトを先送りすることにしたのではないか、他のプロジェクトにも遅延が発生する可能性があるのではないかとの見方がなされている。また、新型コロナウイルス感染拡大が今後3年から5年以内に生産を始めるFPSOを建造中の中国の造船所に影響を及ぼしており、これらの造船所は次第に稼働を再開しているものの、一部のFPSOの生産開始が遅延する可能性を懸念する向きもある。このような状況から、Petrobras、ひいては、ブラジルの石油生産増が2020年初頭やそれ以前に予想されていたよりも減少するのではないかと懸念する向きもある。

プレソルトでの探鉱に関して、PetrobrasはCampos、Santos盆地で探鉱井の掘削を行っている。9月には、Campos盆地C-M-657鉱区の水深2,892メートルの海域で探鉱井1-BRSA-1376D-RJS号井を掘削、プレソルトで炭化水素の埋蔵を発見した。また、Santos盆地BM-S-24鉱区で掘削した3-BRSA-1246-RJS井(Apollonia)の掘削、ステムテストを完了、二酸化炭素の含有が多いものの、優れた生産の可能性が確認された。

一方、Petrobrasは坑井の掘削期間とコストの削減に取り組んでおり、ポストソルトの坑井の最適化を図り、掘削、仕上げ期間を短縮し、掘削コストを半減させることを目指すTrue One Trip Ultra Slender(TOTUS)を実施している。まず、これをEspírito Santo盆地Golfinho油田での掘削に適用し、7月初旬に掘削を終了した。掘削に要した日数は44日と、従来かかっていた掘削期間96日の半分以下となり、3,000万ドルのコスト削減につながったとしている。Petrobrasは2021年から2025年に成熟油田にTOTUSを使用することを計画しており、坑井1本あたり2,000万ドルから3,500万ドルのコスト削減を図れる可能性があると期待している。

また、新たな油田発見から生産開始までの期間を、現在の3,000日から今後10年間で1,000日程度に短縮することも計画している。

なお、Petrobrasは、3月末に削減するとしていたメンテナンスを2020年後半に大規模に実施することとした。


(2) Total ―相次ぐ鉱区撤退の一方で増産を計画―

Totalは40年以上前からブラジルに進出しており、ブラジル国内に約3,000人の従業員を擁して、探鉱・生産、ガス、再生可能エネルギー、石油化学、流通などの分野で事業を展開している。Totalは、Lapa油田(Totalの権益保有比率35%)、Iara(Sururu、Berbigão、Atapu)油田(同25%)、Mero(Libra)油田(同20%)などSantos盆地プレソルトの主要油田の権益を保有しており、2020年8月の同社のブラジルの石油生産量は日量35,799バレルとなっている。また、Campos盆地C-M-541鉱区などで探鉱も進めている。

Totalは2020年8月19日、ブラジル沖合120キロメートルのFoz do Amazonas盆地に位置する5つの探鉱鉱区(FZA-M-57、FZA-M-86、FZA-M-88、FZA-M-125、FZA-M-127)について、オペレーターとしての役割を辞することをパートナーに通知した。Totalは、この決定をANPに通知し、6ヶ月の期間を設けて新しいオペレーターを任命し、その間に操業活動を引き渡すことになった。

その後、9月24日にTotalは、これら5鉱区の権益をPetrobrasに譲渡することで合意したと発表した。これらの鉱区は、2013年の第11次ライセンスラウンドでTotal(40%)、Petrobras(30%)、BP(30%)のコンソーシアムが落札した鉱区で、BPが先買い権を行使しなければPetrobrasが権益を70%に増やすことになる。

Totalがこれらの鉱区のオペレーターを辞し、最終的に権益を譲渡することを決定するに至った理由は明らかにされていない。しかし、Totalはこれらの鉱区で7坑を掘削する計画だったが、この掘削に環境保護団体から強い反対があり、IBAMAがTotalの提出する掘削計画を繰り返し拒否し、Totalは掘削を延期せざるを得ない状態が続いていた。Totalは9月初めにも新しい掘削計画を提出していたという。Total以外にも、Foz do Amazonas盆地では、2鉱区で掘削を計画していたBHP Billitonが2018年にこれらの鉱区を放棄、BPのFZA-M-59鉱区での掘削が遅延している。

また、Foz do Amazonas盆地はアマゾン川と大西洋の合流点にあたるため、水の流れが複雑で、激しい潮流が生じているため、最先端の高価な掘削装置を必要とするとされており、この点もTotalがこれら5鉱区を手放すこととした一因になっているのではないかと見る向きもある。

これに先立って6月にも、TotalとEquinorが、Espírito Santo盆地のES-M-598、ES-M-671、ES-M-673、ES-M-743、ES-M-596鉱区の権益をPetrobrasに譲渡することが明らかにされている。これらの鉱区も、第11次ライセンスラウンドで落札された鉱区で、ポストソルトですでに油田が発見されており、Parque dos Deuses、Parque dos Doces、Parque dos Cachorrosプロジェクトとして開発が予定されている。Petrobrasは、これらの鉱区ではプレソルトでも油田が発見される可能性があるとしている。

相次ぐTotalのブラジル沖合鉱区からの撤退であるが、Totalはブラジルでの増産を計画している。

2020年3月初めに、Totalは2024年までは年に6億ドルから7億ドルをブラジルの探鉱・開発に投じ、同社のブラジルの石油生産量を日量15万バレルに引き上げる計画であると報じられた。Totalは、Mero、Iara、Lapa油田やC-M-541鉱区の権益を保有しており、現在の資産に満足しているが、より多くのブラジル資産を保有したいと考えているとした。

9月には、Totalが2025年までにブラジルで日量15万バレルを生産することを計画しているとの報道があった。また、Lapa油田の生産量を2025年までに日量15万バレルとする計画やC-M-541鉱区で少なくとも2坑の探鉱井を掘削予定であることが明らかにされており、Totalはブラジルでの探鉱・開発を継続していくものと考えられる。


(3) Shell ―Petrobrasに次ぐブラジル第2位の生産企業―

Shellは2015年にBGを買収したことでブラジルへの関与を強め、Santos盆地プレソルトの主要鉱区であるBM-S-11鉱区(Lula-Iracema油田)の権益の25%、BM-S-9鉱区(Sapinhoá油田)の権益30%を取得し、プレソルトでの探鉱・開発の足場を固めた。その後も、プレソルトの権益追加に積極的で、ブラジルでは石油生産増も探鉱も重視してきた。2020年6月26日に生産を開始したSantos盆地のIara(Atapu)油田や8月にフェーズ3の開発の最終投資決定を行った同じくSantos盆地Mero油田の権益を保有し、パートナーとして開発、生産に参加している。2020年8月のShellのブラジルでの生産量は日量377,303バレルで、Petrobrasに次ぐ同国第2位の生産企業となっている。

なお、Shellは2020年第3四半期に予定していたGato do Mato油田用のFPSOの入札を2021年第1四半期に延期することとした。入札の遅れにもかかわらず、Shellはブラジル他での知見、経験を活かし、Gato do Mato油田の開発期間の短縮を図るとしている。しかし、2023年とされていた生産開始は2024年以降にずれ込むと見られている。


(4) Equinor ―一部鉱区から撤退も投資計画を維持する姿勢―

Equinorは、ブラジル沖合では、Campos、Santos、Espírito Santo盆地などでバランスよく探鉱、生産を行っており、2020年8月の生産量は日量37,698バレルとなっている。

Equinorは、オペレーターを務めるSantos盆地BM-S-8鉱区に位置するBacalhau(旧Carcará)油田の開発を進めており、2020年2月には同油田用のFPSO(原油生産能力:日量22万バレル、ガス生産能力:日量530MMcf、水圧入能力:日量20万バレル、原油貯蔵能力:日量200万バレル)をMODECに発注した。このFPSOは、2023年から2024年にかけて原油およびガスの生産を開始する予定となっている。

Equinorは、4月には、Campos盆地BM-C-7鉱区とBM-C-47鉱区にまたがるPeregrino油田のプラットフォームCの建造が、新型コロナウイルス感染を防止のため予定よりも2か月遅れていることを明らかにした。Equinorは、Peregrino油田の延命を図るとともに、可採埋蔵量を2.73億バレル増加させるため、2019年より35億ドルを投じプラットフォームCの導入を図っている。既存のFPSOへのつなぎ込みも2ヶ月程度遅れる見通しであるという。なお、2020年4月初旬に海底ライザーの不具合でPeregrino油田の操業が中断され、同油田の生産量が大幅に減少している。同社によると、機材の修理や交換にはまだ数ヶ月かかるという。

また、先述した通り、6月には、Espírito Santo盆地ES-M-598、ES-M-671、ES-M-673、ES-M-743鉱区の権益をPetrobrasに譲渡することとした。

このようにプロジェクトの遅延や権益の譲渡はあるものの、Equinorは7月に、長期的な原油価格の下落が予想されるにもかかわらず、ブラジルへの150億ドルの投資計画を維持するとの意向を表明、新しい市場の現実に合わせて資産ポートフォリオを見直す一方で、ブラジルの主要プロジェクトであるBacalhau油田開発計画を継続するとした。

さらに、Equinorによると、PetrobrasとEquinorはC-M-709鉱区Yba、Dois Irmãos鉱区Vaz Lobo、ES-M-669鉱区Monaiで2021年から2022年にプレソルトの坑井3坑を掘削する計画である。C-M-709鉱区にはExxonMobil、Dois Irmãos鉱区にはBP、ES-M-669鉱区にはTotalも権益を保有している。


(5) ExxonMobil ―2017年以降再度積極参入、探鉱を推進―

ExxonMobilは1990年代末からブラジルに参入していたが、油田発見に恵まれず、その多くの鉱区から撤退してしまった。プレソルトに関しても、2008年から2010年にかけてSantos盆地のBM-S-22鉱区でAzulao、Guarani、Sabia-1の3坑を掘削したが、商業規模の石油を確認できずに、撤退した。そのため、権益を保有する鉱区数が少なかったが、2017年以降は積極的に入札に参加し、プレソルトやその周辺鉱区を多く取得した。現在、ExxonMobilはブラジルの28鉱区の権益を保有しており、その大部分が探鉱中である。

2020年4月時点でExxonMobilは、同年後半よりSeadrillのドリルシップWest Saturnをチャーターし、Campos盆地C-M-789鉱区でAmetrina井またはOpal井のいずれかを、Santos盆地Tita鉱区で1坑を掘削することとなっているが、市場の状況によっては坑井の数が少なくなる可能性があると見られていた。

7月になると、ExxonMobilは2021年1月から掘削キャンペーンを実施し、まず、Santos盆地Tita鉱区で1坑を掘削後、Campos盆地C-M-789鉱区でAmetrina井あるいはOpal井を掘削、さらにその後Sergipe Alagoas盆地深海で掘削を行う可能性があることが明らかになった。

さらに、9月には、2020年に設備投資を30%削減したが、ブラジルのプロジェクトは軌道に乗っていると、ExxonMobilのブラジル責任者が語った。そして、ExxonMobilは、今後1年半から2年以内に、同社がオペレーターのものと他社がオペレーターのものを併せて、ブラジルで5坑から7坑を掘削する計画であることを明らかにした。


(6) 中小規模のブラジル企業

原油価格の下落が始まって以降、2020年前半には中小規模のブラジル企業の設備投資削減が相次いで発表された。

ブラジルの石油会社で最も早く設備投資の削減を行ったのはPetroRioだ。PetroRioは2020年に9,000万ドルを投資する計画であったが、3月に、操業、メンテナンス費用1000万ドルを除き3月から12月に予定していた設備投資の全てを延期すると発表した。Campos盆地Polvo油田の第3フェーズは終了しているが、新たな生産井から生産される原油は粘性が高く、生産見通しに加えるか否かには評価が必要とされている。また、Polvo油田の新規坑井をTubarao Martelo油田のFPSO OSX-3にタイバックする計画に影響が生じる可能性が懸念された。さらに、7,000万ドルを投じて2020年下半期から実施予定のFrade油田での掘削キャンペーンにも影響が及ぶとみられた。PetroRioは、操業の質と効率を維持し、コスト削減に努めるとした。

Santos盆地Atlanta油田やCamamu盆地Manatiガス田などで生産を行うブラジル企業Enautaは、3月時点では、投資計画の見直しは行わないとしていた。しかし、Santos盆地浅海Atlanta油田のプラットフォームに関する入札を延期したことで、2020年の探鉱・生産部門への投資額を4,600万ドルから3,500万ドルに削減するとした。また、2020年初には、2021年の探鉱・生産部門への投資額を1億5,000万ドルとする計画だったが、これを7,500万ドルに削減することとした。Enautaは削減額を20%程度変動する可能性があるとしている。

しかし、2020年後半になると、Petrobrasが売却した陸上や浅海の資産を取得した企業が、取得した資産の増産を図っているという報道が増えるようになった。Karavan SPE Cricaréは8月末にPetrobrasよりEspírito Santo盆地陸上の27鉱区(2020年上半期の生産量は石油日量1,700バレル、天然ガス日量14,000立方メートル)の権益を1億5,500万ドルで取得、Imetame Energiaは2019年にPetrobrasより陸上Lagoa Parda、Lagoa Parda Norte、Lagoa Piabanha油田の権益を買収し、これらの鉱区の生産量を増やすとしている。他にも、Eagle Exploração、3R Petroleum、Central Resources do Brasilなどが、Petrobrasから買収した鉱区での生産増に努めている。

かつてPetrobrasが生産を行っていたが、現在は生産を停止、返還された鉱区が再度入札にかけられていたが、これを落札し、生産増を図ろうとする企業もある。ANPは8月末に、Espírito Santo、Recôncavo、Potiguar、Barreirinhas盆地陸上9鉱区での生産を再度、承認した。これらの鉱区には生産を停止した既発見油田があり、マージナル油田を対象とする第3次、第4次入札と第13次ライセンスラウンドでブラジルに拠点を置く企業に付与された。Oeste de Canoasは、石油・ガスの分野で様々な経験を積み、5.5メガワットのOeste de Canoasガス火力発電所を操業しており、Barreinhas盆地のSao Joaoガス田をそのフィードガスとして利用するとしている。Petromaisは2018年創立の企業であるが、Espírito Santo盆地Garca Branca油田の開発を進める計画だ。エンジニアリングサービス会社Ubuntuは、2017年に実施されたマージナル油田の第4次入札で2鉱区を獲得し、探鉱・開発事業に進出した。Guindaste(Cranes)Brasil(旧Munks & Roboques)は、Reconcavo、Sergipe-Alagoas盆地で探鉱・生産中である。EnergizziはReconcavo盆地Vale do Quirico鉱区を取得、オペレーターを務めている。Newo Oleo e Gasは2008年に産業機器メーカーとして設立された企業で、Recôncavo盆地の成熟Paramirim do Vencimento、Itaparica油田の開発をポートフォリオに加えた。Imetame Energiaは、Espírito Santo、Sao Francisco、Potiguar、Reconcavo盆地に資産を保有し、生産を行っているが、Potiguar盆地Irauna油田の開発を行うこととなった。

また、PetroRioは8月にCampos盆地のPolvo、Tubarão Martelo油田の追加開発に焦点をあて投資を再開することを明らかにした。PetroRioはPolvo油田の新規坑井をTubarao Martelo油田のFPSO OSX-3にタイバックする計画に4,000万ドルから4,500万ドルを投じる。このタイバックにより操業コストを2019年の2億ドルから8,000万ドルに引き下げることが可能となる。


3. ブラジルが欧州企業のエネルギートランジション投資のホットスポットに

過去15年間で主要な石油会社がブラジルの上流、特にプレソルトへの探鉱・開発に進出を果たしたが、その一方で、ブラジルは、脱炭素化を目標とする欧州の石油会社のエネルギートランジションの投資対象としても注目を集めている。

ブラジルは、1970年代のオイルショックを契機に、サトウキビを原料としたバイオエタノールの生産拡大や需要開拓に取り組んできた。風力発電については、風況が良好な北東部、南部陸上沿岸部を中心に導入が進み、2018年の設備容量は14,400メガワットとなっている。太陽光発電は、2016年までは設備容量の拡張が進んでいなかったが、2017年以降急成長を見せている。日射量も多く、コスト低減が進んでいる。LNG、パイプラインなど天然ガス中・下流セクターに関してはPetrobrasの独占状態が改められ、参入機会が増えている。

Total、Shell、BP、Equinorが、欧州以外で再生エネルギーへの投資を行っているのは、インドの太陽光発電、中国の電気自動車(EV)、そして、ブラジルのバイオ燃料や太陽光、風力発電などのセクターである。いずれの企業も、ブラジルの再生可能エネルギー事業への参入に熱心で、プレゼンスを高めているが、その戦略は様々である。

2017年にTotalが株式の23%を取得した独立系発電事業者Total Erenは、2017年初にBahia州Bom Jesus de Lapaに太陽光発電所BJL 11(設備容量25メガワット)、2018年1月にはBJL 4(同25メガワット)の建設を開始、それぞれ2018年5月、11月に稼働を開始した。2019年8月には、Dracena太陽光発電所(同90メガワット)の試運転が開始された。Total Erenは、2019年10月、11月にRio Grande do Norte 州でTerra Santa及びMaral風力発電プロジェクト (同92.3メガワット、67.5メガワット)の建設を開始した。これらの風力発電プロジェクトが完成すれば、Total Erenのブラジルの設備容量は合計で300メガワットとなる[1]。Totalは2018年後半にブラジルに280の給油所を有するZema Petroleoのネットワークを買収し、2025年までに給油所を1,000カ所に拡大する計画も立てている。


[1] https://www.total-eren.com/en/pays/brazil/

表2. 主な欧州石油会社のブラジルでの再生可能エネルギー事業への取り組み

メジャーの中で最も積極的なエネルギートランジション戦略を発表しているBPとShellは、ブラジルのバイオ燃料分野ですでに地位を確立しているが、ガスや電力事業にも参入している。

BPは2019年12月に、世界第2位のサトウキビ加工会社であるBungeとブラジルにバイオ燃料の合弁会社BP Bunge Bioenergiaを設立した。ブラジル国内の11か所で3,200万トンのサトウキビを粉砕可能で、2018年にはエタノール約22億リットル(日量3.8万バレル)を生産し、低炭素のバイオ発電により1,200ギガワット時の電力を供給した[2]。今後5年間で生産量を倍増させ、2030年までの5年間でこれをさらに倍増させる計画だ。BPはGas Natural Acu LNG発電所とLNG再ガス化ターミナルにも出資を行っている。

Shellは、Cosanと50%ずつを保有する合弁会社Raizenを通じて、2015年にSão Paulo州Costa Pintoにエタノールプラントを開設、バイオ燃料年間約20億リットル(日量3.4万バレル)を生産している[3]。Shellはまた、2018年からブラジルの太陽光発電市場について調査を行っており、2020年初めには、Minas Gerais州で太陽光発電プロジェクト3件を立ち上げるための認可を電力規制当局Aneelから受けた。Shellは、すでに主に米国と北海で洋上風力発電への投資を行っており、ブラジルの洋上風力発電市場への参入も検討している。

Equinorは、ブラジルで設備容量4ギガワットの洋上風力発電プロジェクトを開発するために、規制当局IBAMAと環境ライセンスに関する手続きを開始した。プロジェクトの詳細を決定するために該当地域を調査する許可をIBAMAより取得する計画だ。Equinorは、プロジェクトの規模と開発スケジュールの詳細を発表するには時期尚早としているが、地元の報道では、Rio de Janeiro州沖合20キロメートル、水深15~35メートルの海域に2ギガワットの発電設備2基の建設が計画されているという。それぞれ12メガワットの容量を持つ320基のタービンが必要となる。水深を考慮して、固定式タービンの使用が計画されている。Equinorは2018年からブラジルの洋上風力プロジェクトに関心を寄せており、PetrobrasとRio Grande do Norte州Potiguar盆地のUbarana洋上風力発電所を開発する契約に署名している。同プロジェクトは設備容量6メガワットから10メガワットで、2022年に始動する予定だが、進捗状況は報告されていない。Equinorが初めて太陽光発電プロジェクトを開発したのもブラジルで、2018年にZ2 Power、Pacto Energia、Kroma Energia、Scatec Solarと提携してCeará州のApodi太陽光発電所(発電容量162メガワット)を稼働した。

これらの企業は、ブラジルは低コストの沖合石油開発だけでなく、再生可能エネルギーや電力、LNG、バイオ燃料などにもビジネスチャンスが拡大している重要な国であるとみているようだ。しかし、ブラジルには官僚的な制度に起因する事業の遅延や汚職などの課題もあり、これらの事業に外資がより多く参入するには、課題解決に向けて政府が動くことが必要になろう。


[2] https://www.bp.com/en_us/united-states/home/news/press-releases/bp-announces-major-expansion-in-renewable-energy-with-bunge-in-brazil.html

[3] https://www.shell.com/energy-and-innovation/new-energies/biofuels.html#iframe=L3dlYmFwcHMvMjAxOV9CaW9mdWVsc19pbnRlcmFjdGl2ZV9tYXAv


終わりに

ブラジル政府は2020年に第17次ライセンスラウンド、第7次PS入札ラウンド、transfer-of-rightsエリアの第2次入札ラウンドを実施する予定だった。しかし、新型コロナウイルス感染拡大や市場の状況から、これらを延期することとした。そのため、2020年はopen acreage方式の入札のみが行われることとなった。open acreage方式の入札は、成熟油田や過去の入札で落札されなかった鉱区、返還された鉱区を対象に、企業の要請に基づいて入札を実施する制度だ。12月3日に実施される入札は、Camamu-Almada、Campos、Ceará、Espírito Santo、Jacuípe、Pelotas、Pernambuco-Paraíba、Potiguar、Santos、Sergipe-Alagoas盆地の708鉱区(探鉱)とEspírito Santo盆地Rio Ibiribas油田、Recôncavo盆地Miranga油田、Solimões盆地Juruá油田の3成熟油田を対象としている。ExxonMobil、Karoon、Murphy Oil、Petrobras、Premier Oil、Rosneft、Shell、Total、Wintershallなど63社が入札に参加するとして登録を済ませている。もともと中小規模企業向けの入札とされているopen acreage方式の入札であるが、前回の同方式での入札では、ExxonMobilも鉱区を落札している。入札の結果は、Petrobrasやメジャーをはじめとする石油会社の今後のブラジルでの探鉱・開発動向を占う指標の一つとなると考えられるので、注目していきたい。


以上

(この報告は2020年11月2日時点のものです)

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