ページ番号1008877 更新日 令和6年10月21日
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概要
- 2020年4月にTotalはLake AlbertプロジェクトにおけるTullow Oilの保有権益の全てを5億7,500万ドルで買収することで両社は合意した。
- 10月21日、Tullow Oilの発表によると、ウガンダ政府及び財務当局(the Ugandan Revenue Authority )もTullow OilによるTotalへのウガンダ資産売却を承認した。Tullow Oil及びTotalの取引に関し、政府から課された条件がこれですべて満たされたため、Tullow Oilは近日中に取引が完了すると見込んでいる。
- 東アフリカ原油パイプライン(EACOP; East Africa Crude Oil Pipeline)も進展を見せている。9月にはTotalとウガンダ政府の間でHGAが締結された。さらに、ウガンダとタンザニアの間では、パイプライン建設への両国のコミットメントを強化することで合意している。
(各社HP他)
1. これまでの経緯
ウガンダでは2004年から始まった探鉱の結果、2008年にはすでに開発対象となる石油資源の存在はLake Albert東岸で確認されていたが、Tullow Oilの権益売却に係るキャピタルゲインに対する課税の是非の問題[1]等で長く停滞してきた。2017年のTullow Oilの資産の一部売却取引はウガンダ政府の承認を得ることができず、結局、2019年8月にこの権益売却は一旦、不成立に終わった。
その後、2020年4月にTotalは改めてLake AlbertプロジェクトにおけるTullow Oilの保有権益の全てを5億7,500万ドルで買収することで両社は改めて合意し、これをウガンダ政府が承認するかが注目されていた。ウガンダ政府が拘束力のある租税協定(Tax Agreement)を結んだことで、Tullow OilのTotalへの資産売却取引が間近に迫り、実際の開発工事の開始に向け期待が高まった。
[1] 2017年1月、Tullowが保有する3鉱区の権益33.33%のうち、21.57%を9億ドルでTotal、CNOOCに等分して売却することで合意した。この時、ウガンダ政府はTullowが得る収入に対しキャピタルゲイン税として3億ドルを課税した。しかし、Tullowは当該ファームアウトによる収入は課税の対象ではないとして、支払要求に応じなかった。これを不服とするウガンダ政府は当該ファームアウトを承認せず、これがプロジェクトの遅延の主な要因となった。結局、当該ファームアウトに係るウガンダ政府との税制措置の観点で合意に至らず、2019年8月には当該ファームアウト契約の有効期限が切れ、取引は成立しなかった。
2. ウガンダ政府がTullow OilのTotalへのウガンダ資産売却取引を承認
そして、2020年10月21日には、ウガンダ政府及び財務当局(the Ugandan Revenue Authority)がTullow OilのTotalへのウガンダ資産売却を承認したと発表[2]された。
Tullow Oilは、この拘束力のある合意により、未解決の税金問題がすべて解決され、近日中にTotalとの取引を完了させることができると期待している。
内容 | |
取引権益 |
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取引金額 |
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(Totalホームページ[3]からJOGMEC作成)
[2] Tullow Oilプレスリリース
https://www.tullowoil.com/media/press-releases/government-approvals-received-575-million-sale-uganda-assets-total/
[3] Totalプレスリリース
https://www.total.com/media/news/actualites/total-acquires-tullow-entire-interests-uganda-lake-albert-project
3. 東アフリカ原油パイプライン(EACOP)
ウガンダのLake Albertプロジェクトで生産された原油はウガンダのHoimaからタンザニアを通りインド洋に面したTanga港へとパイプライン[4]を通って輸送される計画である。この全長1,443メートルのパイプラインを東アフリカ原油パイプライン(EACOP)と呼ぶ(図1)。

(出典:EACOPホームページ)
EACOPの敷設については、2017年5月にウガンダ・タンザニア間で政府間協力が締結されていたが、上流での活動が停滞していたため、EACOPの開発も同様に停滞してきた。しかし、TotalのTullow Oil権益買収の話が立ち上がってからは、パイプライン敷設についても進展を見せている。
例えば、2020年9月には、Totalとウガンダ政府との間で、EACOPに関するHGA(Host Government Agreement)が締結された。この契約によって商業的な枠組みが確立され、ウガンダ政府関係者によると、「年内のFIDに近づいた」という。10月下旬には、ウガンダと同様にTotalとタンザニア政府の間でHGAが締結された。また、ウガンダのムセベニ大統領とタンザニアのマグフリ大統領は、石油パイプライン建設に関する協定に署名し、パイプライン建設への両国のコミットメントを強化することで合意した。
[4] ウガンダで生産される原油は粘性がありワックス状であるためパイプライン全区間を通して加熱される必要がある。EACOPは世界最長の電気加熱パイプラインになる見込み。
4. 今後の展望
Totalが今年4月にTullow Oilのウガンダ資産買収へ動きだしてから、Lake Albertプロジェクトは進展している。今後、Lake Albertプロジェクトが年内にFIDされるのか注目される。
<主な参考資料>
- 「ウガンダにおける油田開発と原油輸出パイプライン及び製油所建設計画―東アフリカ最大の未開発石油資源保有国のゆくえ―」(古川ゆかり、石油・天然ガス資源情報 2019年2月15日付)
- 「ウガンダ、ケニアにおける油田開発の現況と課題」(古川ゆかり、石油・天然ガス資源情報 2019年4月25日付)
- 「ウガンダ、ケニアにおける油田開発状況及び各社の動向」(橋本知世、石油・天然ガス資源情報 2020年6月19日付)
以上
(この報告は2020年11月10日時点のものです)