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PTTEPの上流戦略とPTTの地域LNG Hub化計画

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レポートID 1008889
作成日 2020-11-24 00:00:00 +0900
更新日 2020-11-24 11:44:13 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG企業
著者 庄子 達也
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 19
抽出データ
地域1 アジア
国1 タイ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
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地域6
国6
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国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,タイ
2020/11/24 庄子 達也
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概要

  • タイ王国(タイ)の2018年の一次エネルギー消費は石油換算136百万トン(日量276万バレル)、その内、石油が41%、ガスが27%、石炭が12%となっており化石燃料の割合は8割を占める。
  • タイの石油・ガス政策を含めた長期エネルギー政策としてタイ統合エネルギー計画(TIEB)が2015年から施行されている。TIEBは相互に関連する1つのマスタープラン(省エネルギー推進計画、代替エネルギー開発計画、電力開発計画、ガス計画、石油計画)で構成され、石油・ガス・輸送・電力・産業・一般消費の各分野での2036年時点の目標値を定めている。(電力開発計画、代替エネルギー開発計画とガス計画は、2037年時点の目標値に更新された。)
  • 石油・ガスセクターについては、石油計画で2036年の石油の一次エネルギー消費として年間49百万トン(日量100バレル)、ガス計画で2037年の天然ガスの一次エネルギー消費として日量53億48百万立方フィート(石油換算日量89万バレル)が設定されている。
  • タイ証券取引所に株式を上場する国有石油会社PTT Public Company Limited(PTT)とPTTの上流事業子会社で同じく株式を上場するPTT Exploration and Production Public Company Limited(PTTEP)は、当該分野の上記目標達成に向け五か年計画を毎年設定し事業活動を行っている。
  • 上流事業を担うPTTEPは2019年にPartex HoldingsのM&Aや、Murphy Oilがマレーシアで保有するすべての権益を買収するなど、確認埋蔵量・生産量の増強に積極的である。また、自国洋上鉱区での知見の活用と競争力のある石油資源を求めて、米州メキシコ湾の大水深での探鉱に参入している。
  • 中流事業を直接運営するPTTは、2020年10月に改訂されたガス計画2018に基づき、国内天然ガスインフラの拡充に注力し、『地域LNG Hub化計画』を推進中である。

(出所: タイ王国エネルギー省・PTT・PTTEPのHP、IEEJ、EI、Upstream他)


はじめに

1939年6月に国名を“The Kingdom of Siam(サイアム)”から“The Kingdom of Thailand”へ変更した“Thailand”の語源は同国語で“自由”を現す“Thai”に“領土”を現す“Land”を併せた『自由の領土の王国』である。“The Kingdom of Thailand”タイ王国(以下タイ)は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々のほぼ中央に位置し、南をマレーシア、東をラオスとカンボジア、西をミャンマー、北をラオスとミャンマーの国境を、インドネシアとベトナムとは排他的経済水域で接し、合わせてASEAN六か国と隣接している。

日本人にとって、タイはコロナウイルス感染拡大前には人気の旅行先の一つであり、仮にタイを目的地にしない方も南西アジアや中東への乗り継ぎで広大なスワンナプーム国際空港を使われた方も多いだろう。外務省のHPにもあるように我が国とタイは600年にわたる交流があり親近感のある国である。

本稿では、そのようなタイのエネルギー需給、エネルギー政策、タイ国営石油会社の石油・ガス上流戦略と地域LNG Hub化計画に焦点を当てて動向を報告する。


1 タイのエネルギー需給、政策、国営石油会社PTT

1.1 タイのエネルギー需要ミックス見通し

図1は日本エネルギー経済研究所(IEEJ) Energy Outlook 2021のタイのレファレンスシナリオにおける1次エネルギー消費の長期見通しである。タイの2018年の1次エネルギー消費の実績は石油換算136百万トン(≒石油換算日量276万バレル)である。

2018年のエネルギー需要ミックスは、石油55百万トン(≒日量111万バレル)(41%)、天然ガスが石油換算36百万トン(≒石油換算日量73万バレル)(27%)、バイオマス・廃棄物が石油換算26百万トン(≒石油換算日量53万バレル)(19%)、石炭が石油換算16百万トン(≒石油換算日量32万バレル)(12%)、水力・再エネが石油換算1.2百万トン(≒石油換算日糧2万バレル)(1%)となっている。

次に2030年、2040年、2050年の1次エネルギー消費見通しは、それぞれ石油換算172百万トン(≒石油換算日量349万バレル)、同193百万トン(≒石油換算日量391万バレル)、同209百万トン(≒石油換算日量423万バレル)とコンスタントに増加することが見込まれている。但し、その増加率は、1990年から2018年までの28年間で記録した年平均4.3%から、2018年から2030年までの12年間は年平均2.0%に、更に2030年から2050年までの20年間は年平均1.0%へと徐々に減少していく見込みだ。

図1:タイの1次エネルギー消費見通し
図1:タイの1次エネルギー消費見通し
(出所:IEEJ Energy Outlook 2021)

また、エネルギー需要ミックスに占める化石燃料の割合を見てみると、2018年は約8割であるが、2030年が約7割強、2040年が7割弱、2050年6割強へ徐々に減少する見通しである。逆に化石燃料の代わりに増加するのは後述するバイオエネルギーである。

石油需要見通しに焦点を当てると、2018年の石油55百万トン(≒日量111万バレル)から2050年の72百万トン(≒日量146万バレル)へ約18百万トン(≒日量36万バレル)(31%)と増加が見込まれているが、一次エネルギー消費全体が約54%も増加する見込みであるため、割合では41%から35%へシェアを減らす見込みだ。ちなみに、2020年上半期の石油の用途は、約78%が輸送用燃料、約22%が輸出用石油製品となっている。(出所:PTT投資家向け資料2020年10月付)

ガス需要の長期見通しについても、2018年の石油換算36百万トン(≒石油換算日量73万バレル)から2050年の石油換算47百万トン(≒石油換算日量95万トン)へ石油換算11百万トン(≒石油換算日量22万バレル)(31%)の増加が見込まれているが、石油と同じ理由で、一次エネルギー消費全体に占める割合は27%から22%へシェアを減らす見込みとなっている。ちなみに、2020年上半期のガスの用途は、約60%が発電用、約24%が産業及び家庭用、約12%が石油化学プラントの原料用・燃料用、約4%が天然ガス自動車による輸送用燃料となっている。(出所:PTT投資家向け資料2020年10月付)

石炭需要の長期見通しは、2018年と2050年の需要が石油換算16百万トン(=石油換算日量32万バレル)と同レベルであり、既に12%にまで下がっている一次エネルギー消費全体に占める割合は8%へとシェアを減らす。

一方、先に述べた通り、農業従事者が多く、農産物の生産量が豊富という農業大国としての特性を活かし、サトウキビやタピオカの原料となるキャッサバの絞りかすや、天然ゴムなどの廃材、コメのもみ殻等、生物由来のエタノールや、パーム油からバイオディーゼルの利用を倍増させる計画だ。


1.2 タイのエネルギー政策

タイでは、石油・ガスを含めた長期エネルギー計画として国家エネルギー政策評議会と内閣の双方が承認するタイ統合エネルギー計画(TIEB)を2015年から施行している。TIEBは、5つの目標(エネルギーの安定供給、価格競争力の維持・向上、環境保全、エネルギー産業の持続性支援、地域経済支援)を達成するために、相互に関連する5つのマスタープラン(省エネルギー推進計画(EEDP)、代替エネルギー開発計画(AEDP)、電力開発計画(PDP)、ガス計画、石油計画)で構成されている。

図2に示されるそれぞれのマスタープランの主な目標は以下の通りである。なお、図2は2015年時点のもので関連マスタープランが更新されるとそれぞれの目標値は更新される。

表1 各マスタープランの主要な目標
マスタープラン名 主な目標
省エネルギー推進計画(EEDP) 単位あたりの経済成長に必要なエネルギー使用量(Energy Intensity)の30%削減
電力開発計画(PDP) 電源構成の最適化(環境と経済性を両立させる電源の拡充)
代替エネルギー開発計画(AEDP) 最終エネルギー消費の30%を再生可能エネルギーで供給
ガス計画 ガス需要の増加とLNGインフラの構築
石油計画 輸送用燃料の節減(燃費向上)、バイオ由来の液体燃料の普及

出所:Overview of Thailand Integrated Energy Blueprint dated 10th-11th June 2015

 

図2:TIEB 2015-2036の目標と概要
図2:TIEB 2015-2036の目標と概要
出所:Overview of Thailand Integrated Energy Blueprint dated 10th-11th June 2015

2015年から採用されている現行の石油計画2015-2036は、2036年の石油需要をベースケースとして79百万トン(≒石油換算日量161万バレル)(内、輸送セクター65百万トン(≒日量133万バレル))に見込んでおり、主に輸送セクターのエネルギー効率を向上させて石油需要を49百万トン(≒日量100万バレル)(内、輸送セクター35百万トン(≒換算日量71万バレル))までを減らすことを目的に、以下5つの主要な政策が打ち出されている。

  1. 輸送部門の燃費の向上支援(具体策:ディーゼル価格の適正化や税制優遇、車両税の税体系を排気量ベースからCO2排出ベースへ変更等)
  2. 輸送燃料の油種削減(現在5種類ある油種をより環境負荷の少ない油種に統合)
  3. 燃料価格改革(具体策:油価安定のために設立された石油基金への課金率の見直し)
  4. エタノールとバイオディーゼルの活用の促進(具体策:各種税金の税制優遇)
  5. 燃料インフラ分野への投資促進(戦略備蓄の実施)

 

ガス計画2015の2036年時点のガス需要は日量43億44百万立方フィート(≒石油換算年間36百万トン≒日量72万バレル)と設定されており、2015年の需要実績の日量48億10百万立方フィート(≒石油換算年間40百万トン≒石油換算日量80万バレル)より低いものであった。その後、2015年12月に採択されたパリ協定等を考慮し、代替エネルギー開発計画及び電力開発計画がそれぞれ見直されたことを受け、エネルギー省は2019年に入りGas Planの見直し作業に入り2020年2月にガス計画2018を草案し、同年3月19日に国家エネルギー政策評議会の承認、同年10月20日に内閣の承認を経て改訂版が発表されている。

図3は、ガス計画2018に示される2018年から2037年までの天然ガスの需給見通しである。最終年の2037年の同国天然ガス需要を日量53億48百万立方フィート(≒石油換算年間44百万トン≒石油換算日量89万バレル)と設定している。2018年のガス需要を用途別に見ると57%が発電用、22%がガス分離プラント用、16%が産業用、5%が輸送部門用となっており、日本と同様に発電向けのガス利用の比率が高いことが分かる。これは、元来、タイが石油・ガス生産国であり、発電所も豊富な天然ガスを燃料として用いるインフラが整っているためであると考えられる。また、この需要傾向は2037年においても維持され、発電用需要の割合は2018年の57%から67%へ増加している。

これに対し、供給サイドは図4の通り、2018年実績と2037年見通しで調達先が大きく変化している。

2018年のガスの調達先は、国内の洋上ガス田が70%、ミャンマーからのP/L(パイプライン)ガスの輸入が16%、既存契約によるLNG調達12%であるのに対し、2037年では国内の洋上ガス田が28%へ大きく割合を減らし、ミャンマーからのP/Lガス輸入も4%へ減らしている。そして、残り68%を今後新たに契約するLNGによる調達と見込んでおり、新規契約によるLNG調達が同国のエネルギー政策において最重要な課題であることが分かる。

 

これらの需給見通しを達成するために、Gas Plan2018では以下4つの政策が打ち出されている。

  1. 大気汚染の問題を減らすために、さまざまな経済分野で天然ガスの使用を促進する。(具体策:天然ガス発電の割合の増大や天然ガス自動車の導入促進等)
  2. 国内及び近隣共同開発エリア(マレーシア、カンボジア等)からの油ガス田の探鉱と生産の加速
  3. 国内及び地域の需要を満たし、効率的に天然ガスを利用するための天然ガスインフラ(LNG受入基地と天然ガスパイプライン)の拡充
  4. 天然ガス産業における競争の促進
図3:天然ガスの需要見通し2018-2037
図3:天然ガスの需要見通し2018-2037
出所:Gas Plan 2018
表2 天然ガスの調達先の主な分類とその変化
調達先 2018年実績 2037見通し 増減
国内の洋上ガス田 70% 28%

-42%

ミャンマーからのP/Lガス 16% 4% -12%
既存契約によるLNG 12%

0

-12%

新規契約によるLNG 0 68% +68%
国内の陸上ガス田 2% 0 -2%

出所:Gas Plan 2018

 

図4:然ガスの供給見通し2018-2037
図4:天然ガスの供給見通し2018-2037
(出所:Gas Plan 2018にJOGMEC加筆)

1.3 タイの石油・天然ガス行政と国営石油会社PTT

タイの石油・天然ガス事業の準拠法は、1971年に制定されたPetroleum Act, B.E 2514(以下、石油法)で、その後1973年、1979年、1989年、1991年、2007年、2017年に合計6回の改訂が行われている。

また、前述のTIEBとそれを構成する5つのマスタープランは、エネルギー省が草案し、国家エネルギー政策評議会(NEPC)の同意を得て内閣が承認する政令の位置付けである。この石油法、TIEB及び関連法案に基づいてエネルギー省が石油・天然ガスを含むエネルギー全般の行政を所管することになっている。

エネルギー省の組織を簡略に紹介すると次官の下に4つの部局(エネルギー政策計画庁(EPPO)、代替エネルギー開発・効率化部、鉱物燃料部、エネルギー事業部)があり、EPPOがTIEBや各マスタープランの草案や承認された各計画の管理・監督を行っている。

石油・ガス上流事業に関係する国内の鉱区のコンセッションの入札や鉱区の管理・監督は、鉱物燃料部の担当である。

国有石油会社PTT Public Company Limited(以下PTT)の前身は1978年12月に設立されたPetroleum Authority of Thailand(タイ石油公社:PAT)である。2001年9月25日にエネルギー産業に市場競争を導入することを目的に同公社を株式会社化することが閣議決定され、2001年10月1日に株式会社化されPATからPTTへ改称された。2001年12月6日に政府(財務省)を大株主として同社をタイ証券取引所に上場し、一部株式を公開した。現在(2020年8月14日時点)、政府は直接・間接を含めPTT株を63.3%保有している。

PTTはエネルギー省の監督の下、国内外の石油・天然ガス・石炭の上流事業、中流事業及び下流事業を行っている。但し、以下図5で示す通り、中流事業以外の上流事業と下流事業は子会社を通じて運営している。中流事業とは、天然ガスパイプラインの運営、天然ガス分離プラントの運営、国内供給用の石油・天然ガスの調達(トレーディング含む)と販売、天然ガス自動車の開発・運用、プロジェクトマネジメントや技術センターの運営、子会社の管理等が主な実施業務である。

1985年6月にPTT(当時のPAT)の石油・ガス上流事業を行う子会社としてPTT Exploration and Production Public Company Limited(以下PTTEP)が設立された。1993年6月にPTTより一足早くタイ証券取引所へ上場し、一部株式を公開している。

2020年8月14日時点でPTTのPTTEPの株式保有率は63.8%となっており、政府はPTTEPの株式を間接的に40.39%保有していることになる(図6)。PTTEPは2020年10月時点で、世界15か国で40プロジェクトに参画している。

図5:PTTとPTTEPの役割分担
図5:PTTとPTTEPの役割分担
出所:PTT Investor update October 2020
 図6:PTT、 PTTEPの資本関係
図6:PTT、 PTTEPの資本関係
(出所:PTTEP Investors Presentation October 2020)

2 PTTEPの上流戦略

2.1 探鉱開発・生産

図7:PTTEPの確認埋蔵量(2019年末)
図7:PTTEPの確認埋蔵量(2019年末)
(出所:PTTEP Investors Presentation October 2020)

PTTEPの2019年末時点の石油・天然ガスの確認埋蔵量は石油換算11.4億バレルで、前年から石油換算4.63億バレル増加している。これは、2019年にマレーシアSK-410B鉱区での発見埋蔵量、Murphy Oilがマレーシア保有していた権益の取得(21億米ドル、資産規模:取得時点の生産量石油換算日量4.8万バレル)、Partex HoldingsのM&A(6.22億米ドル、資産規模:取得時点の生産量石油換算日量1.6万バレル)なども含まれている。(前頁図7参照)

図8に同社の過去5年間の年次報告書から確認埋蔵量の推移と、国内外・石油ガスの内訳をまとめた。これを見るとエネルギー省のGasPlan2018に従い、2019年は国内の探鉱・開発へ注力すると同時に、海外でのM&A及び探鉱により埋蔵量を増加させていることが分かる。

図8:PTTEPの確認埋蔵量過去5年間の推移と国内外・石油ガス内訳
図8:PTTEPの確認埋蔵量過去5年間の推移と国内外・石油ガス内訳
(出所:PTTEP年次報告書2016~2019)

図9は同社の権益のポートフォリオであるが、近隣のマレーシア・ミャンマー・東南アジアでガスの資源獲得に注力しつつも、同国の1次エネルギー消費の中で最大の割合を占める石油資源を求め、Partex Holdingsの買収等によりUEA・オマーン・アルジェリア・カザフスタン・ブラジルへの活動拠点を広げていることにも注力していることが分かる。また、将来的なLNGバリューチェーンに備え、マレーシアMLNG Train 9、Oman LNGやTotalがオペレーターを務めるMozambique Area1への出資も行っている。このように活動拠点を東南アジアから徐々に広げている要因の一つに、東南アジアでの資源開発の成熟(減退)がある。

図9:PTTEPの権益のポートフォリオ
図9:PTTEPの権益のポートフォリオ
(出所:PTTEP Investors Presentation October 2020)

PTTEPにとってホームグランドとも言える東南アジア全体での炭化水素ポテンシャルは低下していると言われている。次ページの図10は米国地質調査所(USGS)が2020年10月に10年ぶりに発表した東南アジアの未発見資源量評価の結果である。石油資源量(中間値)が105億バレル、ガス資源量が271.5tcfである。前回2010年の評価の石油216億バレル、ガス299tcfと比較して、石油は51%減、ガスは28%減となっている。近年メジャーズや大手独立系が資産の組み替えを行い東南アジアの鉱区を離れる傾向があると指摘される。これは探鉱・開発によって期待される油・ガス田規模や発見確率等も勘案し、より魅力的なエリア、特に米国シェールオイル・ガスや既発見油・ガス田の近傍での探鉱・開発のようによりショートサイクルでキャッシュを回収できるエリアに探鉱・開発をシフトする選択と推測されるのであるが、PTTEP自身も海外への進出を積極的に進めると考えられる。

図10:東南アジアにおける未発見資源量(USGSによる)
図10:東南アジアにおける未発見資源量(USGSによる)
出所:USGS Assessment of Undiscovered Conventional Oil and Gas Resources of Southeast Asia, 2020

次ページの図11はPTTEPの過去5年の生産量の推移及び国内外・石油・ガスの内訳である。同社の生産の特長は、国内外比率で国内約7割、海外約3割、石油・ガス比率では石油が約3割、ガスが約7割となっている。また、2020年10月に発表された同社の投資家向け資料によると陸・洋上比率は陸上が8%、洋上が92%となっており洋上の探鉱・開発・操業の技術の蓄積があると思われる。図9に示した同社の権益ポートフォリオにも示されているように、この技術的知見を活かし、米州のメキシコ湾の深海鉱区への探鉱段階からの参入戦略にも繋がっていると思慮する。

図11:PTTEP生産量推移及び国内外・石油ガス内訳
図11:PTTEP生産量推移及び国内外・石油ガス内訳
(出所:PTTEP年次報告書 2016~2019年)

また、石油生産は、国産が19%、海外が81%、ガス生産では、国産が68%、海外が32%となっているが、2022年にはこれまでChevronがオペレーターを務めてきたG1/61(Erawan)、G2/61(Bongkot)を引き継ぐ見通しである。両鉱区が中期的には確認埋蔵量・生産量という意味でも、大規模鉱区のオペレーター経験という意味でも重要な役割を果たすと考えられるが、同時に成熟した東南アジアの資源ポテンシャルを考慮し、長期的な視点から考えれば、東南アジア以外の地域での活動がより活発になることも予想される。


2.2 今後5年の投資計画

PTTEPはTIEBの達成に向け、5年間の中期投資計画を策定し、毎年見直し・更新を行っている。

2019年12月に発表された5か年投資計画では、2020-2024年の注力分野、販売量(=供給量)見通し、投資計画、そして2020年単年の掘削計画が紹介されている。

まず注力分野は、以下5分野となっている。

  1. 買収した権益の着実な継承
  2. 探鉱・評価の促進
  3. 既存権益の生産量の維持・最大化
  4. 注力分野でのM&A
  5. 新事業の追求

後述する投資・探鉱予算の配分を見ると3.既存権益の生産量の維持・最大化、1.買収権益の着実な操業、2.探鉱・評価井の促進の3分野を特に重視しているよう思われる。

図12:PTTEP投資戦略(2020-2024)
図12:PTTEP投資戦略(2020-2024)
出所:PTTEP Five-Year Investment Plan 16 December 2019

販売量(供給量)計画については、2019年から2024年にかけて年平均6%増の目標が設定されている。

図13:PTTEPの販売計画(2020-2024)
図13:PTTEPの販売計画(2020-2024)
出所:PTTEP Five-Year Investment Plan 16 December 2019

上記販売計画を達成するための具体的な予算として、今年の5か年投資計画では、2020-2024年の5年間で総額246.19億米ドルの投資が計画されている。Murphyが保有していたマレーシアの事業権益の買収(21億米ドル)やPartex HoldingsのM&A(6.22億米ドル)が実行された昨年を含む2019-2023年の5か年計画の投資総額が161.05億米ドルだったのに比べ、53%も増加している。また、昨年9坑だった探鉱・評価井について、今年は18坑の掘削が予定されており、その予算も昨年の2.35億米ドルから3.43億米ドルへ46%増額されている。

しかしながら、2020年に入ってからのCovid-19及びOPECプラスの増産等による油価下落に見舞われ、PTTEPは2020年4月30日の第1四半期決算発表時に、販売計画を当初予定の石油換算日量391千バレルから石油換算日量362千バレルへ7%減少させるのに合わせ、2020年の投資計画を46.13億米ドルから15%-20%減額(36.90億米ドル-39.21億米ドル)することを発表した。

また今年7月30日に発表した第2四半期の決算では、販売計画を更に追加で年初計画比2%下げ石油換算日量355千バレルとした。

更に、その後10月29日に発表した第3四半期では、今年の販売量を更に石油換算日量350千バレルへと前回の目標を僅かに下回る見通しを発表したものの、G1/61(Erawan)やG2/61(Bongkot)の前オペレーターChevronからの引継ぎや、昨年世界で7番目に大きな発見であったマレーシアSK-410Bの評価井の掘削は予定通り実施されていることが強調されている。

同社の資金調達は、自己資本に対する負債の比率である負債比率が2017年末、2018年末、そして2019年末でそれぞれ0.25、0.19、0.29と2割から3割の比率で推移している。資金調達の手法はプロジェクトの進捗状況に合わせて社債、劣後債、プロジェクトファイナンス、長短融資により調達している。同社が発行する米ドル建て長期無担保劣後債(償還期間40年)の信用会社の格付けは、ムーディーズがBaa1、FitchがBBB+となっており、中級程度の投資適格先と評価されている。

図14:PTTEP投資計画2020-2024
図14:PTTEP投資計画2020-2024
(出所:PTTEP Five-Year Investment Plan 16 December 2019)
図15:PTTEP 2020年掘削計画
図15:PTTEP 2020年掘削計画
(出所:PTTEP Five-Year Investment Plan 16 December 2019)

3 PTTの 地域LNG Hub化計画とその課題

前述したGas Plan 2015からGas Plan 2018への改定作業に並行して、大幅に増大するLNG需要、タイの地理的な利点、2011年5月末に東南アジアで初めてLNGの輸入を開始した実績や設備の有効活用などを考慮し、エネルギー省とPTTはRegional LNG Hub化計画をガス計画2018に盛り込んだ。

この計画は、現在のLNG受入基地(LNG受入容量年間1,150万トン)と、天然ガス輸送パイプライン4,255キロメートル、ガス分離プラント6基(処理能力日量28.6億scf)を拡充し、追加で3基のLNG受入基地(その内2基は現在建設中)と2つのルートの天然ガスパイプラインを延長し、LNG受入容量年間3,480万トン、天然ガスパイプラインの全長を4,795キロメートルへ拡充するものである。これら施設を有効活用し、燃焼時の環境負荷が相対的に低い天然ガスの利用を促進すると共に、地域のLNG Hubとしての機能を備えることにより、利用率を上げ、単位あたりの設備利用コストを低減し、国内で天然ガスの価格競争力を高めることが計画されている。Gas Plan2018では、LNG受入容量を最大で年間4,750万トンまで拡張が可能であるとしている。

図16:タイの天然ガス輸送パイプラインシステムとガス分離プラント
図16:タイの天然ガス輸送パイプラインシステムとガス分離プラント
出所:PTT Regional LNG Hub in Thailand September 2020

現在LNG Hub化計画の実施の責任を負うPTTが考えるLNG Hubの機能は、図17で示すように、1.LNG Hub利用者が、タイ国内に供給する、2.暫く保管後再出荷する、3.小型船やLNGタンカーやISOタンクに積み替える(ブレイクバルク)、4.LNG船に燃料として供給(LNGバンカリング)に使用するという主に4つである。どれもLNGトレーダーにとっては、便利な機能である。但し、これらの機能を有益にするにはいくつかの課題が考えられる。1つ目はタイ国内のLNG受容性(LNG Hubの利用者がタイ国内での販売を希望した場合に確実に吸収できるだけの需要があるか)、2つ目はマーケット、流動性の不確実性(現時点ではスポット市場での取引が増加傾向にあるが、今後も恒常的にスポット市場で一定量の取引が維持されるか)、3つ目は一定期間保管しハンドリングすることの時間的制約(LNGはマイナス162℃で維持されなければならないので、長期間の保管には適さない)、4つ目は、Hub機能を利用するためにタイランド湾の奥のバンコク湾に寄港する地理的・時間的制約があること、最後に5つ目として、昨今価格の変化や価格競争が激しいLNG市場で、同Hubの利用料が機能に見合った魅力ある価格水準を提供できるかである。地域ハブ化計画が成功するためにはこれらの課題を克服しなければならない。

図17:タイLNG Hubのサービス
図17:タイLNG Hubのサービス
出所:PTT Regional LNG Hub in Thailand September 2020
図18:天然ガス基地建設計画
図18:天然ガス基地建設計画
出所:Gas Plan 2018, Ministry of Energy, Kingdom of Thailand

おわりに

本稿では、IEEJのOutlook 2021の1次エネルギー消費の2050年までの長期見通し(レファレンスシナリオ)を確認した上で、タイのエネルギー政策、エネルギー省、PTT及びPTTEPの役割を整理しながら、PTTEPの石油・ガス上流戦略とPTTの地域LNG Hub化計画の内容を確認した。タイのTIEB、石油計画2015、ガス計画2018がどのように進捗するか、引き続き注視していきたい。

ASEANは1967年8月にタイの首都バンコク開催された第1回ASEAN会議で取り纏められた『バンコク宣言』より発足した。ASEANの重要国であるタイでは、本動向を寄稿する2020年11月現在、民主化を求める反政府デモが首都バンコクを中心に広がっている報道を目にする。『自由の領土の王国』が一日も早く『微笑みの国』の平常を取り戻してくれることを願っている。


以上

(この報告は2020年11月20日時点のものです)

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