ページ番号1008895 更新日 令和2年11月27日
メキシコ:Sempra Energy、Energía Costa Azul Liquefactionプロジェクトの最終投資決定を行う(短報)
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概要
Sempra Energyは2020年11月、メキシコBaja California州のEnergía Costa Azul Liquefactionプロジェクト(液化能力年間325万トン、生産開始2024年後半を予定)の最終投資決定を行った。2020年に最終投資決定を行った最初の液化プロジェクトであり、アジア市場までの輸送距離、時間が短く、既存の設備を転用できるブラウンフィールドプロジェクトであるなど、メリットはあるものの、メキシコ政府が、前政権下でTake-or-Pay契約を締結した米国産ガスを液化することを条件に輸出を許可しており、今後の状況が注目される。
(World Gas Intelligence、Gas Matters Today、BNamericas、LatAmOil他)
Sempra Energyは2020年11月17日、メキシコBaja California州のEnergía Costa Azul Liquefactionプロジェクトの最終投資決定を行ったと発表した。
Energía Costa Azul Liquefactionプロジェクトは、Costa Azul LNG受入基地(LNG受入能力760万トン、貯蔵容量32万キロリットル、受入開始年2008年)に液化設備を建設する計画だ。Texas、Wyoming、Utah、New Mexicoを含む米国西部を天然ガス供給源とし、液化能力は年間325万トン、プロジェクトの費用は推定20億ドル、生産開始は2024年後半が予定されている。2019年3月にはメキシコへの天然ガス輸出及び自由貿易協定(FTA)締結国、非締結国へのLNG再輸出許可を米国エネルギー省より取得した。そして、2020年2月にはTechnipFMCと同プロジェクトフェーズ1の設計・調達・建設契約を締結、さらに、4月に三井物産、TotalとLNG年間250万トン、契約期間20年の売買契約を締結した。米州太平洋岸では、稼働中のPeru LNG、カナダBritish Columbia州のKitimatに建設中のLNG Canada、同じくBritish Columbia州Squamishに建設中のWoodfibre LNGに次ぐ4番目の液化プロジェクトとなる。
当初、Sempra Energyは2019年第4四半期にメキシコ政府より輸出許可を取得できると見ていた。しかし、かなわず、次に、2020年第1四半期に輸出許可を取得し、最終投資決定を行うことを計画した。ところが、新型コロナウイルスの感染が拡大したことから、最終投資決定を2020年第2四半期に延期することとし、さらにその後もメキシコ政府から輸出許可が下りない状態が続いていた。8月には、メキシコ政府が同プロジェクトの輸出許可を与える見返りに、Sinaloa州Topolobampo港にも液化設備を建設することを求めていると報道された。

各種資料を基に作成
その後、11月13日、メキシコのAndrés Manuel López Obrador(AMLO)大統領は20年間の輸出許可をCosta Azulプロジェクトに与える意向である旨発表した。ただ、それには条件が付されていた。メキシコ国営電力公社CFEが米国からTake-or-Pay契約に基づいて購入する予定だったガスを、Sempra Energyのメキシコ子会社IEnovaが購入し、同プロジェクトで液化することであった。
元々、Enrique Peña Nieto前政権は、発電用に豊富な米国産ガスを利用することを計画し、パイプラインを敷設、ガスを購入することで契約を締結していた。しかし、これらの発電所では国営石油会社Pemexが精製した硫黄分の多い燃料油(硫黄分が高くて他では販売不能)を使わざるを得ず、米国からガスを輸入できないのに、支払い(Take-or-PayのPay)だけはせざるを得ない状況だったのである。
11月16日には、メキシコ政府が同様の条件でSempra Energyに輸出許可を与え、翌17日にはSempra Energyから最終投資決定の発表があった。
2019年には、米国のCalcasieu Pass LNG(液化能力年間1,000万トン)、Golden Pass LNG(同1,560万トン)、Sabine Pass LNG Train 6(同450万トン)、モザンビークのMozambique LNG(同1,290万トン)、ロシアのArctic LNG 2(同1,980万トン)、ナイジェリアのNLNG Train 7(同760万トン)と、過去最高の6プロジェクト、液化能力合計年間7,100万トンの液化プロジェクトの最終投資決定が行われた。しかし、2020年は、新型コロナウイルスの蔓延やそれに伴う需要減退、供給過剰、価格の低迷により、液化プロジェクトの最終投資決定の遅延が相次いており、本プロジェクトが2020年に最終投資決定を行った最初の液化プロジェクトとなった。このような状況から、同プロジェクトは最終投資決定を保留にしているライバルプロジェクトに先手を打てた可能性があるとの見方がある。また、今後も長期的に需要が期待されるアジア市場まで、距離が近く、最近、特に通航待ちの滞船時間が増加していると指摘されるパナマ運河を経由せずに到達することができることはメリットと考えられる。TotalのPatrick Pouyanne CEOは、アジア市場までの輸送時間が短いので、米国湾岸の液化プロジェクトと比較して100万Btuあたり1ドルのコスト優位性があると語っていた。加えて、既存のLNG受入基地の設備を転用するブラウンフィールドプロジェクトであることも、コスト的に有利と見られている。
しかし、Sempra Energyは、上記の理由により、Henry Hubガス価格にリンクしたCFEのガスを購入することになった。同社は、図2に示す通り、Henry Hubガス価格よりも安値で推移するWahaハブでガスを調達する計画だったことから、価格優位性に影響が生じる可能性があり、今後の状況が注目される。

出所:EIA
以上
(この報告は2020年11月25日時点のものです)