ページ番号1008914 更新日 令和2年12月18日
Global Disclaimer(免責事項)
このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
プーチン大統領がパリ協定履行のための法令に署名
- プーチン大統領は、11月4日、ロシアがパリ協定を履行するため、温室効果ガス排出量を削減するための法令に署名をした。
- 法令では、(1)ロシアの持続可能でバランスの取れた社会経済発展を条件とし、森林やその他の生態系の最大限の吸収能力を考慮し、2030年までに温室効果ガスを1990年基準で70%まで削減すること、(2)経済セクターを考慮に入れて、温室効果ガスの低水準排出量での2050年までの社会経済発展のための戦略を策定し、承認すること、(3)温室効果ガスの排出を削減及び抑制し、温室効果ガスの吸収を増加させる措置を実施するための条件を作成することをロシア連邦政府に指示している。
- また、経済発展省は、11月10日に、炭素排出の情報収集に関する体系的な作業を構築し、温室効果ガスの排出量を予測するためのシステムを開発するための法案を作成した。法案は企業等からの温室効果ガスの排出量を登録させ、排出量削減を監視するための法的根拠を規定している。
- しかしロシアでは、1990年の水準と比較すると、経済の停滞等により温室効果ガスの排出量は減少しており、すでにパリ協定の目標を達成している。つまり、今回の法改正では、実質的には、現時点での温室効果ガス排出量を維持することが義務づけられている。また、森林の吸収等を考慮すると、さらに温室効果ガスの排出を増加できる目標設定となっている。
5名の大臣が交代し、Novakエネルギー大臣が副首相に就任
- ミシュスチン首相は、11月9日、副首相との会議の中で、5名の大臣の交代及びNovakエネルギー大臣の副首相への任命について、議会に提案を行ったと述べた。今年改正された憲法に基づく法律が11月6日に成立し、閣僚は議会に承認された後に、大統領に任命されることとなっている。また、プーチン大統領は同日、副首相を9名から10名に増やす法令に署名した。
- 議会では、11月10日に5名の新閣僚及びNovakエネルギー大臣の副首相の任命が承認され、同日、プーチン大統領により任命された。Novak副首相の誕生により、副首相は10名となり、Novak副首相はBorisov副首相が兼任していた燃料エネルギー産業分野を担当することになる。新しいエネルギー大臣にはRusHydroの社長を務めていたShulginovが任命された。報道によると、OPEC等の業務はNovak副首相が引き続き担当し、電力関係を中心にShulginov大臣が担当するとみられている。Novak副首相は、2012年からエネルギー大臣を務めてきたが、OPECとの協調減産で中心的な役割を果たしてきたことが、副首相への昇進に繋がったと見られている。
- この他、天然資源環境大臣にはAlexander Kozlov元極東北極圏発展大臣、極東・北極圏発展大臣にはAleksey Chekunkov元極東開発基金理事長、運輸大臣にVitaly Saveliev元Aeroflot社長、建設住宅・公共事業大臣にIrek Faizullin元建設住宅・公共事業省次官が就任した。
- また、11月11日のエネルギー省の発表によると、政府の決定によりCherezovエネルギー次官が解任された。今年9月には、エネルギー省の次官を8人から7人に減らすことが発表されていた。
(2) 対外関係
1) アゼルバイジャン・アルメニア
アゼルバイジャン、アルメニアの停戦に合意
- プーチン大統領は、11月10日、アゼルバイジャン、アルメニアの大統領とともに、ナゴルノ・カラバフ地区における紛争の停戦に合意し、3者による声明を発表した。アゼルバイジャンとアルメニアの間では、アゼルバイジャン西部に位置するナゴルノ・カラバフ地区をめぐり、7月から武力衝突が発生、9月末から対立が激化していた。両国の被害は明らかになっていないが、10月にはプーチン大統領は、死者数が5,000人近いと述べていた。
- 合意では、アルメニアが実効支配地域の一部をアゼルバイジャンに返還する内容となっており、アルメニアが譲歩した形で決着した。また、声明では、ロシアの平和維持部隊1,960名がナゴルノ・カラバフでの警備を行う、平和維持部隊の駐留期間は5年間とされており、いずれの当事者からも申請がなければ次の5年間は自動的に駐留が延長される。これにより、ロシアが影響力を失っていた地域で突然軍事的存在感を強化したことが指摘されている。
- また、ナヒチェヴァン自治共和国とアゼルバイジャンの西部地域を結ぶ新しい連絡路の建設についても合意されたことで、トルコからカスピ海までのインフラができるようになった。これにより、今回の紛争でアゼルバイジャンに軍事的支援を行ってきたトルコにとっても、中央アジアへの貿易ルートを得るというメリットを与えている。
- ナゴルノ・カラバフ地区は国際的にアゼルバイジャンの一部とされているが、同地区はアルメニアが1994年以来実効支配しており、今回の合意内容についてはアルメニア国内から強い反発が起きている。プーチン大統領はテレビで放送された声明の中で、合意に達したことがアルメニア人とアゼルバイジャン人の利益となり、ナゴルノ・カラバフ地区の危機を長期的かつ全面的に解決するために必要な条件を作り出すだろうと述べた。
(参考)3首脳による合意内容要旨
- ナゴルノ・カラバフ紛争に伴う全ての戦闘行為をモスクワ時間2020年11月10日午前零時(現地時間では1時)に停止する。アゼルバイジャン共和国とアルメニア共和国、以下「当事国」、は確保した領域に留まる。
- アグダム地域は2020年11月20日までにアゼルバイジャンに返還される。
- ナゴルノ・カラバフ境界線及びラチン回廊に沿って、小銃を備えた1,960人の軍人、90の装甲車、380台の特殊車両からなるロシア連邦の平和維持部隊が配備される。
- ロシア連邦の平和維持部隊は、アルメニア軍の撤退と並行して展開される。ロシア連邦の平和維持部隊の駐留期間は5年間であり、その満了6か月前にこの規定の適用を終了する意思表明が、いずれの当事国からもなされない場合、次の5年間は自動的に延長される。
- 当事国による当該合意の履行に対する統制の有効性向上ために、停戦を管理するための平和維持センターが設置される。
- アルメニア共和国は、2020年11月15日までにケルバジャール地域(図1の赤い斜線部1番)を、2020年12月1日までにラチン地域(図1の赤い斜線部3番)をアゼルバイジャン共和国に返還する。ナゴルノ・カラバフとアルメニア本土を繋ぐラチン回廊(幅5 キロメートル)はシュシャ市を介さず、ロシア連邦の平和維持部隊が管理する。
- 当事国の合意により、今後3年間で、ナゴルノ・カラバフとアルメニアの連絡を確保するラチン回廊に沿った新しい交通ルートの建設計画が定められ、その後このルートを保護するためにロシアの平和維持部隊が再配置される。
- アゼルバイジャン共和国は、市民、車両、貨物のラチン回廊に沿った両方向の交通の安全を保証する。
- 国内避難民と難民は、国連難民高等弁務官事務所の監督のもと、ナゴルノ・カラバフの領土とその隣接地域に帰還する。
- 捕虜、その他の拘留された人、及び死者の遺体の交換が実施される。
- この地域の全ての経済及び交通の封鎖は解除される。アルメニア共和国は、市民、車両、貨物の両方向への妨げのない移動を実現するために、アゼルバイジャン共和国の西部地域とナヒチェヴァン自治共和国の間の交通の安全を保証する。交通路はロシア連邦保安庁国境警備局によって管理される。
- 当事国の合意により、ナヒチェヴァン自治共和国とアゼルバイジャンの西部地域を結ぶ新しい連絡路の建設が保証される。
2) 欧米諸国
欧米に対する対抗制裁を2021年末まで延長
- プーチン大統領は、11月21日、ロシアに制裁を課した国々に対する特定の特別経済措置を2021年12月31日まで延長するための法令に署名した。法令に基づき、政府は必要に応じて対抗制裁の有効期間を変更する提案を行うように指示されている。
- 2014年3月、ウクライナ情勢を巡り、EUや米国等の国々がロシアに制裁を課し始め、現在もロシアの個人や法人が各制裁対象となるリストに含まれている。制裁には、入国の禁止、金融資産の凍結などが規定されている。また、特定の経済分野に対する制裁も課されており、融資に対する制限が課されている。
- こうした動きを受け、2014年8月、プーチン大統領はこれらの国からの食品の輸入を禁止する法令に署名した。これらの制裁は互いに期限を延長されてきており、ロシアは前回、2019年6月に制裁措置を2020年12月31日まで延長したが、今回はこれを再度1年間延長したものとなる。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2020年11月、原油輸出税はUSD5.8/バレルに引き下げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 11月の石油製品輸出税はUSD12.6/トン、ガソリンについてはUSD23.2/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 11月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,096万トン(約2億9,901万バレル、平均日量1,001万バレル)で、前年同月比11.2%減。
- 11月、原油輸出量は1,830万トン(約1億3,356万バレル)で、前年同月比12.2%減。
(3) 減産合意
10月は合意した減産量の101%を達成
- OPECプラスは、11月17日、サウジアラビアのAbdulazizエネルギー大臣とロシアのNovak副首相を共同議長とし、第24回合同閣僚監視委員会をテレビ会議形式で開催した。会議では、前回の10月19日の会議以降の石油市場の動向をレビューした。
- 委員会によると、2020年10月のOPECプラス諸国の全体的な減産合意の適合水準が101%であり、委員会はこの実績を歓迎した。また、これまで減産合意の水準以上に生産された量を補償するため、1日あたり76.8万バレルが削減され、これにより、5月以降の減産合意の適合水準は99.5%を達成した。
- 委員会は、OPECプラス諸国の自主的な調整を含め、2020年5月から10月の間に原油供給量を約16億バレル削減し、市場の再均衡の鍵になっていることを確認し、引き続き市場の再均衡を達成するために完全な減産合意の順守、過剰生産された量の補償が重要であると確認した。
- さらに、委員会はアジアでの需要の高まりや、新型コロナウイルスのワクチンの可能性について注目しつつ、主要経済国では新型コロナウイルスが再度広がってきていることにより不確実性が高いままであると評価している。
- Novak副首相は、会合において、我々の共同行動により最も重要な瞬間に市場を安定させることができたとして、OPECプラスの活動を評価した。また、ロシアはこの協力を特に重要視していると述べ、世界的な需要の継続的な不確実性の中で、将来にわたり合意を順守していくとしたが、不確実性を考慮に入れ、市場の均衡を確保するためにさらなる行動が必要となる可能性にも言及した。
- OPECプラスの減産合意は、2021年1月以降に減産量が1日あたり約200万バレル緩和される予定となっているが、世界の石油需要の回復が進んでいないため、減産量を緩和すれば原油価格の低下を招くことが懸念されている。報道によると、11月2日、ロシアの石油会社の経営幹部とNovakエネルギー大臣が減産措置を延長することや、減産を強化することを議論したとされる。11月17日のOPECプラスの閣僚会合においても、減産量の調整について議論されるとみられていたが、この点に関する情報はなく、ロシアは2020年第4四半期の需給状況の調査を継続し、12月1日に予定されているOPECプラスの閣僚会合でさらなる行動を検討することに合意したと述べるに留まった。

http://government.ru/news/40875/
(4) 天然ガス生産
- 11月、天然ガス生産量は627億立方メートル(約2.2CF)で、前年同月比で2.5%減。
(5) 税制・法制
Gazpromの子会社にLNG輸出権限を追加
- ロシア政府は、11月10日付けの政令によりGazpromの子会社のGazprom GazonefteproduktHoldingを、LNGを輸出できる組織のリストに追加したと発表した。同社はGazpromの100%子会社であり、バルト海地域のエネルギー開発のためにGaz-Oilとして1992年に設立され、2019年8月にGazprom LNG Asset、2020年4月にGazprom GazonefteproduktHoldingに改称されている。2019年にはGazprom mezhregiongazからGazpromグループ企業の石油、石油製品、ガスコンデンセート、ガス、石油製品の販売機能が移管され、20以上のGazprom子会社を管轄している。
- Gazpromは、11月25日、取締役会で世界のシェールガス及びLNG産業の発展の見通しについて議論したと発表している。この中で、2020年のエネルギー需要の減少と価格の下落はシェールガス業界に大きな影響を及ぼし、特に米国のシェールガス生産の成長率は大幅に低下する可能性が指摘されており、2030年まで、シェールガスが世界のガス市場とGazpromの活動に大きな影響を与えることはないと分析している。一方で、現在の経済状況がLNGの長期的な開発影響に悪影響を及ぼしていることも指摘されたが、米国のLNGが大規模なエネルギー消費国のエネルギー安全保障のベースとなることができないことから、2030年までLNG輸入が増加する中国を含むアジア太平洋地域の国では、ロシアのパイプラインガスの輸入に加え、LNGの購入も増加するとの見通しを示した。
- GazpromはすでにSakhalin-2プロジェクトでLNGを輸出しているが、レニングラードのPortovayaで年間150万トンのLNGプラントを建設している他、同じくレニングラードでUst-Lugaでガス化学複合施設でのLNGの生産を計画しており、ウラジオストクでも年間150万トンのLNGプラントの建設を検討している。
- 今回の追加により、現在、ロシアでLNGの輸出を許可されているのは、Gazprom、Gazprom Export、Gazprom GazonefteproduktHolding、Rosneft、Yamal LNG、Arcrtic LNG 1、Arcrtic LNG 2、Arcrtic LNG 3で、合計8社となった。
(6) 環境関連
エネルギー省次官、ロシアは2035年までに数千万トンの水素輸出の可能性
- エネルギー省が発行するエネルギー政策誌によると、エネルギー省のSorokin次官は、11月23日に開催されたロシアドイツ商工会議所の会議において、ロシアは2035年までに技術の進歩を条件として、欧州側アジア側の両方で、数千万トンの水素を輸出できる可能性があると言及した。2020年6月に承認されたロシア政府のエネルギー戦略では、2035年までに水素を200万トン輸出することが目標として示されている。
- 同次官は、非常に控えめな見積もりとして、水素市場は2035年までに1,300万トン~3,600万トン、2040年までに4,000万トン~1億7,000万トンに成長する可能性があると述べた。
- また、同次官は水素エネルギー開発の障害として3点を挙げた。1点目は高価であること。ロシアの気候では、水素1キログラムあたりの生産には、メタンの改質をする場合で2ドル(液化水素で輸送が可能な状態)、再生可能エネルギーから生産する場合で10~13ドルかかる可能性がある。しかし、これは10年間で半分になる可能性があり、再生可能エネルギーでは4~5ドルと、現実的な数字に近くなると述べた。2点目は、炭素回収技術がまだ大規模に適用されておらず、高価であること。3点目は、水素の輸送と貯蔵のインフラが欠如していること。同次官は、パイプラインの輸送について言及されることがあるが、これはまだ仮説であると指摘し、水素の主要な消費者はパイプラインのある場所にはいないと理解していると述べた。
- ロシアが水素市場の主要な役割を果たす可能性がある理由について、同次官は、ロシアにガス埋蔵量が多いこと、欧州とアジアの主要市場の間に位置すること、炭化水素の輸送インフラが開発されていることを挙げた。また、再生可能エネルギーからの水素生産についても、ロシアには平均風速が6~8メートル/秒の地域が非常に多くあるため非常に大きな風力発電の可能性があり、また、太陽光発電の可能性もあると述べ、これらは主要な需要地の近くに集中していると説明した。
- Novakエネルギー大臣は、11月1日、新聞のインタビューで、水素生産と炭素回収技術の世界的なリーダーとなるとしつつ、世界のガスの需要は成長し続け、ロシアのガスの生産がすぐにピークに達するとは思わないと述べ、急速なエネルギーの転換には否定的な立場を示している。ロシアの戦略では、ロシアはガスの増産を続け、2035年までに最大で生産量を1兆立方メートルまで増加させることとしている。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
Zvezda造船所近隣に冶金工場を建設
- Sechin社長は、11月25日、プーチン大統領と会談し、Rosneftの大規模プロジェクトの実施について議論した。
- Sechin社長はVostok Oilプロジェクトについて、投資のインセンティブを与える法律を採択したことに感謝の意を示した。Vostok Oilプロジェクトに必要とされるインフラの投資について、Vankorプロジェクトの鉱物抽出税から控除されることとなっているが、プーチン大統領は、10月15日、控除の条件となる原油価格を25ドル/バレルに引き下げる法律に署名している。Sechin社長は、これにより効率的な経済モデルを作成することが可能になったと説明した。
- プロジェクトの進捗については、現在、資源を開発するための調査が進行中であり、井戸の掘削位置の検討、石油の集積処理のサイトも準備されているとし、約700キロメートルのパイプラインと港の建設のための設計と調査作業を完了したと報告した。また、3,500キロメートルの電線と2.5GWの発電所建設の契約締結、砕氷船10隻の発注、最大100基のロシア製リグの長期契約締結が完了していることも報告した。
- また、Sechin社長は、Zvezda造船所の主要施設の一つであるドライドックが完成したことを報告した。造船所の建設と並行して、造船作業も行われており、現在、Zvezda造船所では砕氷船を中心とした53隻の船舶の建設を契約している。さらに、Sechin社長はZvezda造船所に鋼板を供給するため、造船所近くのSukhodol湾に150万トンの製品を製造できる製鉄所が建設されることになったと報告した。Zvezda造船所での需要は年間33万~35万トンとされており、製鉄所は他の企業にも製品を供給するとされている。Zvezdaへの鉄鋼製品の供給については、2019年4月に行われたプーチン大統領とSechin社長の会談で問題提起されており、造船に必要な24メートルの鉄板は鉄道輸送が不可能なため、造船所の付近で生産する選択肢が検討されていた。報道では、製鉄所の建設に22億ドルがかかり、Zvezda造船所以外の需要を見つけるのは難しいと指摘されている。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/64493
Vostok Oil社の10%をTrafiguraに売却することを取締役会で承認
- Rosneftは、11月17日、シンガポールに拠点を置く貿易会社であるTrafiguraに、Vostok Oil社の10%の株式を売却することを前日の取締役会で承認したと発表した。Rosneftは外国企業とVostok Oilプロジェクトの売却について議論されていると報じられているが、具体的な取引について明らかになったのは今回が初めてとなる。
- 報道によると、ロシアの外国投資委員会も11月17日に取引を事前承認したとされるが、Trafiguraはこの取引について、交渉の進んだ段階にいるが、最終的な条件については議論中であるとコメントしている。また、取引額についても明らかにされていない。TrafiguraはRosneftの原油の貿易において主要な取引パートナーの一つであり、2017年にインドの製油会社Nayara Energyの買収でも協力している。
- Vostok Oil社は、その名称からRosneftのVostok Oilプロジェクトの中心となると見られているが、現在はWest-Irkinsky鉱区しか保有しておらず、今後、他のRosneft子会社やNeftegazholding等が保有しているVankor、Payakha、Taymur等の資産を買収統合していくと考えられている。今回発表された取引に他の資産が含まれるかは明らかになっていない。同日の取締役会では、プロジェクトの資源基盤は原油・ガスコンデンセート合わせて60億トン、約440億バレルであると報告されている。

出典:https://www.rosneft.com/upload/site2/document_cons_report/Q32019_Results_ENG.pdf
https://www.rosneft.com/upload/site2/attach/0/10/05/presentation_22102020_en.pdf
(2) Gazprom
2021年の投資は約9千億ルーブルを計画
- Gazpromは、11月26日、経営委員会が2021年の投資プログラムと予算案を承認し、2021年の投資は9,024億1,300万ルーブルとされたことを発表した。投資プログラムと予算案は取締役会に提出され、承認される予定。投資額のうち、8,640億6,200万ルーブルが設備投資、207億6,400万ルーブルが新たな資産の取得、175億8,700万ルーブルが長期金融投資にあてられる。
10月28日の発表では、Gazpromの取締役会は2020年の投資総額は、2019年12月に承認されていた金額から1,822.35億ルーブル、約16.5%の削減となる9,224億8,900万ルーブルとすることとしている。これは2019年の水準よりも30%の削減となったが、2021年の投資総額案はこれよりも2.2%の減少となっている。2021年の投資額の減少の理由は示されていないが、2020年の投資プログラムの調整は、新型コロナウイルスの蔓延によって引き起こされたものを含む、外部市場の変化に関連したものとされていた。
Ust-Lugaのガス処理施設の稼働開始を延期
- 11月13日付けの報道によると、GazpromがUst-Lugaで計画しているエタン含有ガスの処理とLNG生産設備を含む複合施設の第一段階の試運転の開始が2024年、第二段階の開始は2025年に延期された。これまで、第一段階の試運転は2023年第4四半期、第二段階は2024年第4四半期に開始されると発表されていた。
- Gazpromはこの延期について、プロジェクトの開始時期は保守的な見積もりであるとして、実際には両方の段階の試運転は予定よりも早まる可能性もあるとコメントした。
- プロジェクトは6月にガス供給契約及びEPC契約を締結しており、設計段階にある。プロジェクトでは、年間45BCMのガスを処理し、1,300万トンのLNGと、最大380万トンのエタン、240万トンのLPG、20万トンのペンタン-ヘキサン留分を生産する。処理後に残った天然ガス約19BCMはGazpromのガス輸送システムに送られ、また、生産されたエタンからは、最大300万トンのポリエチレン製品を生産する。
(3) Gazprom Neft
ギダン半島のプロジェクト会社の50%をShellに売却
- Gazprom Neftは、11月17日、取締役会において、ギダン半島で活動しているGazpromneft-Aero Bryansk社の50%をShellに売却することを承認したと発表した。Gazprom NeftとShellとRepsolは、2019年6月に合弁会社を設立する合意に署名していたが、2020年5月にRepsolが計画から撤退し、7月に改めてGazprom NeftとShellが2社で合弁会社を設立する合意がされ、年末までに企業及び規制当局の承認を受けた後に取引を完了すると発表されていた。合弁会社はLeskinsky鉱区及びPukhutsyayakhsky鉱区を保有する。
- Leskinsky鉱区は2018年11月のオークションで、Gazprom Neftが約5億ルーブルで獲得し、面積は3,000平方キロメートル以上あり、資源は石油換算で1億トン以上と見積もられている。PukhutsyayakhskyはLeskinsky鉱区の隣にあり、Gazprom Neftが2,000万ルーブルで獲得し、面積は800平方キロメートルで、資源は石油換算で約3,500万トンとされている。これらの鉱区は既存のインフラから離れた場所に位置している。
(4) Novatek
ムルマンスクでロシア初のShip-to-ShipのLNG積替えを実施
- Novatekは、11月25日、Novatekの100%子会社のNOVATEK-Western Arcticが、ロシアで初めてとなるShip-to-ShipのLNG積替えをムルマンスク付近のバレンツ海Kildin海峡で実施したと発表した。今回は、Yamal LNGからArk7級LNG砕氷船「Nikolay Yevgenov」が輸送したLNGを欧州に輸送するため、ムルマンスクで従来型LNG船の「Yamal Spirit」に積替えを行った。Novatekは2019年6月から2020年3月まではムルマンスクでLNGの積替えを行っていたが、新型コロナウイルス対策のために積替え作業に必要な外国人の入国が制限されたため、ノルウェーでLNGの積替え作業を行っていた。
- Ship-to-Shipの積替えは、ムルマンスク港内の一時的なLNG沖合積替え複合施設で行われた。LNG積替え複合施設では、ロシアの北極圏で生産されたLNGを運ぶ砕氷船から、従来型LNG船への積替えを一年中実施することができる。
- 報道によると、ヤマルからの砕氷船での輸送が欧州からムルマンスクに変更されることで、砕氷船の平均輸送日数は28日から7日に短縮され、近年の安い従来型LNG船の料金を考慮すると、ムルマンスクの積替えを利用することで1トンあたり約10ドルの節約になると見積もられている。
(5) Lukoil
今後の巨大な石油化学工場の建設は断念
- LukoilのFedun副社長は、11月24日、新聞のインタビューで、市場の状況が変化し、プラスチックのリサイクル技術が開発されているため、巨大な石油化学工場の建設を断念しており、2035年までは成果が保証されているプロジェクトのみを実施する考えを示した。同副社長は、1日あたり300万~500万バレルの需要が市場から消えると予測している。
- 一方、15%の利回りのビジネスを5%の利回りのビジネスに変更する理由は見当たらないとして、大手石油会社が示している、事業における再生可能エネルギー源の割合を増やしていく方針には否定的な意見を述べた。今後は、炭素回収を利用した石油生産及び石油精製と、水素への移行が選択肢であるとしているが、欧州の石油需要は減少していくこととなり、ロシアの欧州への石油輸出の減少はやむを得ないものとして認めている。炭素回収については、現在、ロシアでは年間30万トン炭素回収プラントの建設には1億~1.5億ドルの費用がかかり、約400万トンの温室効果ガスを排出する大規模プラントの場合、この費用は何倍にもなると分析している。しかし、将来的にはLNGの場合と同様に、炭素回収のコストは急速に下落すると予測している。
- また、Fedun副社長は、ロシアが代替エネルギー技術の開発競争に参加することは費用がかかり、無意味なことであると主張している。ロシアは世界最大の森林を持つため、二酸化炭素を吸収する実際の能力を世界に証明するために評価を行い、これを利用したロシア独自の法律と排出量取引のシステムを作ることを提案している。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Arctic LNG 2
プロジェクトの進捗は29%、
- Novatekは、11月25日、Arctic LNG 2の参加企業代表による定期会議をオンラインで開催したと発表した。会議では、プロジェクトの進捗状況が確認され、参加企業は外部資金調達について議論し、近い将来に調達を確保するというコミットメントを確認した。現在、プロジェクトの参加企業は75億ドル以上の資金提供を行っている。
- プロジェクトは世界的な新型コロナウイルスの流行に関連する困難にもかかわらず進展を続けており、全体の進捗は29%と報告された。前回6月の会議時点での進捗は19%だった。最初のGBSプラットフォームの進捗は67%、モジュールを製造する工場は完全稼働しており、第一段階のモジュールの進捗は46%、Utrennyターミナルの進捗は69%で岸壁の堤防は2021年第1四半期に完成予定と報告されている。また、Utrennoye鉱区では17本の生産井が掘削され、3つの掘削リグが稼働しており、2020年末までにさらに2つの掘削リグが設置される予定となっている。

写真出典:https://www.novatek.ru/ru/business/arctic-lng/
(2) シベリアの力P/L
Kovyktinskoyeガス田からのパイプライン建設を開始
- Gazpromは、11月3日、企業広報紙の中で、シベリアの力パイプラインの建設の第2フェーズとなるKovyktinskoyeガス田からChayandinskoyeガス田までのパイプライン建設を開始したことを発表した。今年4月の段階では、第3四半期に建設を開始すると発表されていた。プロジェクトには2年を要し、2022年末に稼働を開始する予定となっている。
- 同パイプラインは全長803キロメートルで、圧力は9.8MPaとなる。パイプラインはKovyktinskoyeガス田からイルクーツクとサハ共和国を通り、Chayandinskoyeガス田ですでにガス輸送が行われているシベリアの力パイプラインに接続される。プロジェクトの費用は、2,800億ルーブルと見積もられている。
- GazpromのMiller社長は、11月20日、中国のCNPCのDai Houliang社長とテレビ会議を開催し、シベリアの力パイプラインを通じたガス供給等の協力について協議した。会議の中では、10月及び11月には中国の要望により契約量を上回る量のガスが供給されたことが確認された。また、両者は既存の契約供給量が横ばいになった後、供給を6BCM増加させることを検討している。さらに、両者はモンゴル経由となるシベリアの力2、西側ルート、極東からの3つのパイプラインプロジェクトについても議論した。
- シベリアの力は2019年12月から中国へのガス供給が開始され、2020年に4.6BCM、2021年に10BCM、2022年に15BCM、2023年に21BCM、2024年に25BCMと徐々に増加させていくことが計画されている。

出典:https://www.gazprom.com/projects/power-of-siberia/
(3) Nord Stream 2
Akademik Cherskiyによりパイプラインを敷設開始か
- 11月26日付けの報道によると、Gazpromが保有する船舶Akademik Cherskiyが、Nord Stream 2プロジェクトのパイプが保管されているドイツのMukran港を出発し、カリニングラードに向かった。同船はNord Steam 2の建設作業を行うと見られている。同船はNovakエネルギー大臣がNord Stream 2の建設を完了させることができる船舶として言及し、今年2月に極東から移動を開始した。
- 10月には、Akademik Cherskiyと、パイプ建設を補助する船舶Umka、Finvalがカリニングラードでパイプ敷設のためのテストを行っていたと見られており、この3隻は10月末にカリニングラードからMukran港に向かい、Mukran港で約1ヶ月停泊していた。Umka及びFinvalはMukran港の外に停泊している。
- Nord Stream 2の建設は約93%が完了しているが、パイプライン敷設を請け負っていたスイス企業のAllseas社が米国からの制裁を理由に撤退したため、2019年末から作業は中断されたままとなっている。また、ノルウェーのDNV GL社も、今年11月26日、10月に米国が新たな制裁のガイドラインを発表したことにより、プロジェクトの作業を停止したと発表した。同社はデンマークが発行したパイプラインの建設許可に従って、パイプラインの設置作業の安全性と品質について船舶の認証を行うことになっていた。なお、同社はパイプ自体の認証も請け負っているが、制裁の対象とはならないこの認証の作業については拒否していないとされている。
(4) Turkstream
セルビアのパイプライン完成は2021年5月まで延期か
- 11月24日付けの報道によると、トルコからブルガリア、セルビア、ハンガリーに延長される予定となっているTurkstreamについて、セルビアのコンプレッサー基地が2021年5月に完成する予定となっており、2020年末までの予定となっていたセルビアのプロジェクトの完成が延期される見込みとなっている。セルビアのパイプラインは約400キロメートルあり、容量は13.9BCMとなる予定。
- Turkstreamは、2020年1月8日に開始され、ロシアからトルコまで黒海を横断してガスを輸送し、トルコからギリシャ、ブルガリア、北マケドニアに輸出されることになっている。ブルガリアでは2020年初めにTurkstreamからのガスの輸入を開始した。報道によると、セルビアがガスを受け取れるようになれば、ブルガリアは既存のパイプラインを利用してセルビアにガスを輸送することができる状態となっている。
- セルビアのブチッチ大統領は、11月28日、パイプライン建設の進捗について、我々はGazpromとの契約があり、必要とされる全てを行う、非常に厳しいスケジュールで全てが順調であると述べ、集中的に作業が行われており、数日間で作業を終えることができると加えた。
- セルビアからハンガリーのプロジェクトは6BCMの容量となる予定で、2021年10月に完成する予定となっている。
以上
(この報告は2020年12月15日時点のものです)
アンケートの送信
送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。