ページ番号1008959 更新日 令和3年3月4日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
ロシアで新型コロナウイルスのワクチン接種を拡大
- Golikova副首相は、1月18日、プーチン大統領との会議の中で、1月18日から新型コロナウイルスに対する集団予防接種が開始されたと報告した。同ワクチンは、2020年12月から優先順位グループへの接種が開始されていた。また、ロシアの2番目のワクチンとして登録されているEpiVacCoronaワクチンについては、2月から大規模生産を開始し、3番目のワクチンとなるKovivacワクチンについても2月に登録、3月には流通すると報告された。
- 1月28日のGolikova副首相からプーチン大統領への報告では、Sputnik Vワクチンはロシア国内で820万回分が生産され、約270万回分が医療機関に送られた。また、2021年第1四半期には、1,700万回分のワクチンが医療機関に送られる計画となっている。消費者庁のPopova長官によると、感染症を制御するには、人口の60%が免疫を得る必要があり、ロシアの約6,800万人への予防接種が必要だとされている。
- ロシアの新型コロナウイルスの新規感染者は12月後半に1日あたり約3万人まで増加したが、それ以降は減少傾向にあり、1月後半には1日あたりの新規感染者は2万人を下回り、減少を続けている。モスクワ市についても同様に減少傾向で、1月末には1日あたり2,000人前後で推移している。モスクワ市では、1月27日、市長令による各企業の従業員の30%を在宅勤務とする義務を解除し、在宅勤務は推奨事項と位置づけた。また、23時以降のレストラン等の営業についても制限を解除した。65歳以上の人、慢性疾患を持つ人の外出については引き続き不要不急の外出をしないこととされている。
2020年連邦予算は4.1兆ルーブルの赤字
- 財務省は、1月21日、2020年の連邦予算の暫定結果を発表し、4.1兆ルーブルの赤字であったと明かした。
- 歳入は約18兆7,226億ルーブルで、予算計画と比較して、90.9%となった。このうち、非石油ガス収入は12兆4,873億ルーブルで予算計画を3.2%上回り、逆に石油ガス収入は5兆2,352億ルーブルで予算計画よりも30.4%下回った。非石油ガス収入には、中央銀行が2020年4月にSberBankの普通株式を財務省に売却した金額から連邦政府に戻された約1.1兆ルーブルが含まれ、この収入がなければ非石油ガス収入も予算計画を下回ることになる。
- また、歳出は22兆8,244億ルーブルで、予算計画と比較して116.1%だった。赤字の大部分は借入金から補填され、借入金は計画の2.6倍の約4.6兆ルーブルとなった。財政赤字となるのは2017年以来だが、2020年の赤字は2009年の約2.3兆ルーブル、2016年の約3.0兆ルーブルよりも大きかった。一方、報道によると、それぞれの年のGDPに対する赤字金額は、2009年は6.0%、2016年は3.4%だったが、2020年は3.8%となる見込み。
(2) 対外関係
1) 米国
バイデン大統領と初めての電話会談を実施
- プーチン大統領は、1月26日、米国のバイデン大統領が就任してから初めての電話会談を行った。ロシア大統領府の発表によると、プーチン大統領は、バイデン大統領が米国大統領として仕事を開始したことを祝福し、米露の関係の正常化は両国の利益だけではなく、世界の安全と安定を維持するという両国の特別な責任を考慮すると、世界全体の利益となると述べた。
- また、プーチン大統領は、戦略兵器削減条約(START)の延長に関する合意について、満足をしていることを表明した。2国間及び国際的な議題については、新型コロナウイルスのパンデミックとの闘いや、貿易経済などの他の分野での協力の可能性について議論された他、米国のオープンスカイ条約の撤退、イラン核開発計画に関する包括的共同行動の問題、ウクライナ問題、国連安全保障理事会常任理事国会合の開催についても議論が行われた。会談はビジネスライクで率直に行われ、連絡を継続することが合意されたとされている。
- STARTについては、2月5日に延長期限が迫っていたが、期限の間際で、5年間の延長の方針が合意された。ロシアは会談が行われた1月26日にSTART延長のための法案を下院に提出し、1月27日には下院上院で承認、1月29日にプーチン大統領が署名した。また、米国が2020年11月に撤退を表明したオープンスカイ条約については、1月15日にロシア外務省がロシアも同条約からの撤退手続きを開始することを表明した。外務省によると、同条約を維持するために米国側に新たな条件を提示したが、米国からの支持が得られなかったことに遺憾の意も示している。
Nord Stream 2建設に関与する企業・船舶に制裁
- 米国国務省は、1月19日、Nord Stream 2の建設に関与しているとして、ロシアのKVT-RUS社及び同社が保有するパイプライン敷設船FortunaをSDNリスト(List of Specially Designated Nationals and Blocked Persons)に追加にすると発表した。制裁は、米国敵性対抗法(CAATSA)の232条に基づき、ロシアのエネルギー輸出パイプライン建設のためにロシアに対して支援を提供したことにより課される。また、米国はCAATSA及び欧州エネルギー安全保障法(PEESA)に基づいて、近い将来に更なる行動を検討する予定だとしている。今回の制裁は、Nord Stream 2に関連する初めての制裁となる。
- 米国国務省は、制裁の理由として、Nord Stream 2が完成すれば、ロシアから欧州へのガス輸送においてウクライナを迂回する手段を提供し、ウクライナから重要な収入を奪い、ロシアの更なる攻撃的行動の道を開くとともに、天然資源が政治的圧力と西欧州に対する悪影響を与える道具として利用されることになると説明している。また、米国は今回の制裁により、米国がロシアの威圧を支援し続ける人々に責任を負わせることを恐れていないことを示しているとしている。
- Fortunaは、2019年12月にNord Stream 2パイプライン敷設を請け負っていたスイス企業のAllseas社が米国制裁の懸念から事業から撤退したことを受け、ロシアが代替のパイプライン敷設船として準備し、2020年12月にドイツの排他的経済水域内でのパイプライン敷設作業を行った。KVT-RUS社は2020年12月にFortunaの所有権を取得したと報じられているが、詳しい企業の実態は明らかになっておらず、パイプライン敷設に対する米国の制裁が課されてもプロジェクトが継続できるように準備を行ってきたものと見られている。
- 米国ホワイトハウスのPsaki報道官は、1月26日、1月20日に就任したバイデン新大統領もNord Stream 2は欧州にとって悪い取引だと信じていると語り、トランプ政権で成立された法案に含まれるプロジェクトの制限を再検討すると述べた。
ベネズエラとの貿易に関連した6隻のタンカー等に制裁
- 米国国務省及び財務省は、1月19日、ベネズエラの石油セクターに対する制裁を回避しようとしたとして、3人の個人、14の団体、6隻のタンカーをSDNリスト(List of Specially Designated Nationals and Blocked Persons)に追加した。
- タンカーには、ロシア船籍のMaksim Gorky、Sierraの2隻が含まれる。発表によると、Maksim Gorkyはベネズエラに所在するInstituto Nacional de los Espacios Acuaticos e Insularesが保有し、Sierraはクラスノダール地方に所在するRustanker社が保有しており、これらのタンカーを保有する団体も制裁対象に含まれている。報道によれば、Maksim Gorkyは2020年12月29日にインドネシアへ、Sierraは12月22日に中国へ、それぞれベネズエラの原油を輸送したことが船舶追跡システムで確認されている。
- 米国財務省のMnuchin長官は、プレスリリースの中で、米国の制裁を回避しようとするマドゥロ政権の不法な試みを助長することは、ベネズエラを食い物にしている汚職の原因となっていると述べ、米国はマドゥロ政権によるベネズエラの天然資源の乱用を助けている人々を標的にすることに引き続き取り組むとしている。
2) G7・EU
Navalny氏の逮捕・拘束を非難する声明を発出
- G7及びEU上級代表は、1月26日、ロシア政府が政治的動機に基づいて、野党指導者であるNavalny氏を逮捕及び拘束しているとして、非難する声明を発出した。
- 声明では、2017年に「恣意的かつ明らかに不合理なもの」と欧州人権裁判所が認定した判決との関係で同氏が拘束されていることに遺憾の意を示し、ロシア当局に対し、Navalny氏の即時かつ無条件の釈放を求めている。
- ロシア外務省は、1月27日、この声明に対して、「国際的な法的義務にロシアが違反していると根拠なく述べており、ロシアの内政への重大な介入及び非友好的な活動とみなす」と、声明で述べた。また、声明では、G7各国とEUが、国際法の原則と規範を厳格に遵守し、事実を歪曲することをやめ、情報戦技術の使用を控え、自国の問題へより多くの注意を向けるように要請した。また、ロシアとの二国間関係の将来のために、反ロシアの戦略に関与した場合に起こり得る結果を注意深く分析することを推奨すると述べた。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2020年11月15日から12月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD47.0469 /バレルとなり、2021年1月の原油輸出税はUSD5.3/バレルとなった。また、財務省は、ゼロ課税とされてきた東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に関する税率を公開しなくなった。
- 1月の石油製品輸出税はUSD11.6/トン、ガソリンについてはUSD21.2/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 1月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,296万トン(約3億1,361万バレル、平均日量1,016万バレル)で、前年同月比10.3%減。
- 1月、原油輸出量は1,870万トン(約1億3,653万バレル)で、前年同月比13.8%減。
ロシアの回収可能な埋蔵量で採算性があるものは36%のみ
- エネルギー省のSolokin次官は、1月27日、エネルギー省が発行するエネルギー政策誌に寄稿し、ロシアの回収可能な石油埋蔵量300億トンのうち、現在のマクロ経済状況で利益を上げるのはわずか36%だと語った。
- これは、ウォーターカット、複雑な設計の高価な井戸の建設の必要性、貯留層の低浸透性とコンパートメント化、マージナル油田や薄い層などの増加による開発機会の悪化によるものとされている。これらの要因は生産コストを増加させるだけではなく、モデリングプロセスの複雑さや水平掘削中の失敗のために計画された開発指標を達成できないリスクを高め、その結果、実際の採算性が計画と大きく異なり、埋蔵量も確認できない、ということもあると指摘されている。
- さらに、同次官は資源基盤の回復の低下も指摘している。ロシアの2015年~2019年の新規に発見された埋蔵量の平均規模は900万~1,400万トン(大陸棚の大規模なものと、Payakhskoye油田を除く)であり、近年の埋蔵量の増加は、主に操業地域の追加探鉱及び埋蔵量の再評価によるものだとしている。
- このため、同次官は今後のロシア探査とモデリングには、震探データの知的情報処理及び解釈等の新しい技術を適用する必要があると主張している。これにより、不採算事業費用の削減と既存資産の石油回収率増加が可能となり、2025年から2040年の業界への総効果は2兆9,500億ルーブルに達する可能性があると見積もっている。また、このための政府の優先課題として、業界内でデータを蓄積するために、地質データを共有するためのルール作りが必要だとしている。
- 報道によると、エネルギー省が埋蔵量の採算性を確認しているのは、2019年7月に石油産業の支援策を検討するためにプーチン大統領が埋蔵量の棚卸しを指示したもので、まだ全ての埋蔵量の評価は終わっておらず、今回の採算性の計算は2020年の原油価格の下落を反映したものだとされている。
石油化学産業の発展のための行動計画の更新等を指示
- プーチン大統領は、1月16日、2025年までの石油化学産業の発展のための行動計画(ロードマップ)を更新することを指示した。この指示は、2020年12月1日に開催された石油化学産業の戦略的発展に関する会議後の指示のリストに含まれている。同行動計画は2019年2月28日に承認されたもの。
- 大統領の指示では、北極圏に位置するものを含む有望な石油化学クラスターに石油ガス・ガスコンデンセート田からの資源を供給すること、ヤマロ・ネネツ自治管区のサベッタにおける有望な北極圏ガス化学クラスターの開発を支援することを新たな行動計画に取り入れることとされており、この作業の責任者をミシュスチン首相として、期限は6月30日までとされている。
- また、大統領の指示では、RosneftとGazpromとともに、極東石油化学コンプレックスの建設プロジェクトの支援措置を検討することも含まれている。検討事項には、RosneftのEastern Petrochemical Company(VNKhK)を支援するための税制上の優遇措置、外部インフラ建設のための行動計画、ガスプロムの資源基盤から天然ガスを供給することが含まれ、期限は5月31日までとされている。
- VNKhKについては、2019年5月にRosneftが経済性を理由にプロジェクトの中止を発表していたが、Sechin社長は、2020年8月にプーチン大統領に収益性を確保する税制を条件としてプロジェクトの再開する準備ができていると述べ、12月の会議ではエタンとLPGの生産を拡大するための更なる支援が必要だと大統領に提案していた。
- さらに、大統領の指示のリストには、原油、ガソリン、プロピレンを石油化学製品の原料として使用する場合に、投資協定の参加を条件として、事業の税控除を増加させる検討をすることも含まれている。
(3) 減産合意
ロシアは2021年2月、3月にそれぞれ65,000バレル/日を増産
- OPECプラスは、1月4日及び5日に、オンライン形式で第13回閣僚会議を開催した。当初は1月4日のみの予定だったが、結論が出なかったため5日に議論が持ち越された。会議では、2月及び3月の減産量について議論され、ロシア及びカザフスタン以外のOPECプラス参加国は1月の生産量を維持することで合意した。ただし、ロシアについては、2月と3月にそれぞれ現在の基準よりも6.5万バレル/日を増産し、カザフスタンも2月と3月にそれぞれ1万バレル/日を増産することが認められた。4月以降の生産量は、今後の会議で決定される。
- 今回の閣僚会議では、新型コロナウイルスの感染の増加、より厳格な封鎖措置の再開、不確実性の高まりにより、予想よりも脆弱な景気回復が2021年も続く可能性を指摘し、低い石油需要、過大な在庫、その他の不確実性に注意が必要だと強調された。
- これに対し、Novak副首相は政府のウェブサイトで、各国は封鎖を弱めており、多くの国は積極的にワクチンを使用している、したがって、人口移動の回復を含め、状況は改善すると考えている、石油需要の伸びについて楽観的な見通しが示されていると述べた。また、OPECプラスの減産合意について、Novak副首相は、ロシアは責任のある態度を示し、条件のほぼ100%を履行し、需要な漸進的な増加を考慮に入れて合意に定められている内容を完全に順守しているとも述べた。
- OPECプラスは2020年12月の閣僚会議で、2021年1月以降、参加国が減産量を当時の770万バレル/日から50万バレル/日縮小し、720万バレル/日にすることを決定した。また、OPECプラスは2021年1月以降に毎月閣僚会議を開催し、市場の状況に応じて翌月以降の生産調整を決定すると合意していた。
- また、OPECプラスでロシアとカザフスタンが増産を認められたものの、サウジアラビアはOPECプラスの合意とは別に、さらに100万バレル/日の生産を削減することを約束した。
(4) 天然ガス生産
- 1月、天然ガス生産量は681億立方メートル(約2.4TCF)で、前年同月比で3.8%増。
長期LNG生産発展計画を議論
- 1月29日付けの政府の発表によると、Novak副首相はロシアにおけるLNG生産発展のための長期プログラムのための会議を開催した。会議では、天然ガスは将来のカーボンニュートラル経済への移行のために最も有望な燃料であると指摘され、天然ガスは、ロシア国内の電力や自動車燃料のガス化、及び国内及び輸出市場へのLNG生産のために増加していくことが見込まれているとしている。このため、Novak副首相は、ロシアのLNG生産は1億4,000万トンに達する可能性があるとして、国の輸出収入に大きく貢献すると述べた。
- Novak副首相は、会議の中で、潜在的なLNGプロジェクトの実施により、ロシアは2035年までにLNG生産を約3倍に増加させることができる、これは2030年までにロシア経済に1,500億ルーブルの追加投資をもたらす、潜在的なLNG開発の実現ができれば、ロシアのGDP成長率を1.5%引き上げることになると強調した。
- 計画のドラフトには潜在的な大規模LNGプロジェクトとして10以上のプラントが含まれるが、新たなLNGプロジェクトの開始は税制を含む業界への支援が必要になるとされている。また、国内市場にとっては、小規模LNGが重要な役割を果たし、現在、65のプロジェクトがある。これらは、遠隔地のガス化に貢献するだけではなく、天然ガス燃料車のエネルギー源としても利用できる。2035年までの天然ガス燃料車のLNGの需要は550万トンと推定されている。ガス化のためのLNG需要は、2024年までに2.3~4.2BCM(約170~310万トン)、2035年までに7.4~9.8BCM(約550~730万トン)とされている。
- 2020年6月に承認されたロシアの2035年までのエネルギー戦略によると、ロシアのLNG生産は2024年に4,600万~6,500万トン、2035年に8,000万~1億4,000万トンとすることが目標とされている。
- 報道では、北極圏に鉱区を保有する企業に対してLNGを輸出する権利を付与することや、LNG輸出業者に対する要件を新たに確立してLNG輸出を自由化することなどが政府内で議論されていると報じられている。
(5) 北極海航路
2020年の北極海航路の貨物輸送量は3,297万トン
- Rosatomは、1月11日、2020年の北極海航路による貨物輸送量は約3,297万トンだったと発表した。2019年は3,150万トンで、1年間で約150万トン増加した。北極海航路による貨物輸送は2024年に8,000万トンとすることが政府の目標とされており、2020年の目標量は2,900万トンとされていた。同社の12月の発表によると、増加の主な要因は、Yamal LNGプロジェクトの実施と、Arctic LNG 2プロジェクトの建設によるものだとされている。Yamal LNGでは、2019年には1,840万トンのLNGを出荷しており、北極海航路輸送量の大部分を占める。
- また、Novatekは、北極海航路の利用期間を拡大させている。同社は2020年5月18日に、2020年最初の北極海航路東回りでのLNGタンカーを出航させたと報じられており、2018年、2019年よりも東回りの北極海航路の利用を1ヶ月以上早めている。また、1月18日の同社の発表によると、Arc7級LNGタンカー「Christophe de Margerie」が、砕氷船の支援なしで東回りの北極海航路の単独航行を行い、1月16日にベーリング海峡に到達したと発表した。また、「Christophe de Margerie」に続いて、同様のArc7級LNGタンカー「Nikolay Yevgenov」も北極海航路の単独航行を行なっている。両タンカーはYamal LNGで生産された約14万トンのLNGを積載し、アジア太平洋地域に配送している。また、Arc7級LNGタンカー「Nikolay Zubov」は、LNGの輸送を終えた後、1月6日に北極海航路に入り、1月17日にサベッタ港に戻った。
- 東回りの北極海航路については、2019年は10月18日、2018年は10月2日に最後のタンカーがYamalを出航しており、通常は11月末までしか利用できないが、今回はその2ヶ月後に航行を実現した。Novatekは北極海航路の航海期間を拡大することを目指している。同社によると、東回りの北極海航路を利用することにより、スエズ運河を通過する従来の航路よりも輸送時間を4割削減し、二酸化炭素の排出量も削減することができるとされている。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
Varyeganneftegazの資産をNNK Holdingに譲渡
- 1月15日付けの報道によると、Rosneftは93.9%を保有していた子会社のVaryeganneftegaz社と、その関連会社であるハンティマンシ自治管区のSevero-Varyoganskoye社、Nizhnevartovsk Oil and Gas Production Enterprise(NOP)社、コミ共和国のUsinsk-Snabservice社、サハリン州のSakhalin-Sklad社を、Rosneftの前社長であるKhudainatov氏のNNK-Holding社に譲渡した。取引は2020年12月29日付で行われた。
- Rosneftは12月28日、Vostok Oil社を含む複数の子会社を通じてKhudainatov氏が保有していたPayakhaクラスターを保有するTaimyrneftegaz社を100%買収したと発表しており、この資産の譲渡については、この取引の対価の一部だと見られている。同様の取引として、Rosneftは12月に、RN-Severnaya Neft社、RN-Sakhalinmorneftegas社のそれぞれ9%をNNK Holding社に譲渡している。
- これらの取引により、NNK Holding社の年間生産量はこれまでの6倍の1,200万トンにもなるとされており、ロシアで有力な民間石油生産企業の一つとなる。
(2) Gazprom
プーチン大統領にガス供給とインフラ整備等について報告
- GazpromのMiller社長は、1月19日、プーチン大統領とオンラインでの会談を行い、ロシア国内のガス供給、インフラ整備、同社の業績等について報告を行なった。
- 同社長の説明によると、ロシア国内のガス供給について、各地域と67の計画に署名を行い、2025年までの5年間の目標が定められた。5年間のGazpromの投資額は5,261億ルーブルとなり、期間内に24,400㎞のガスパイプラインを建設し、2025年末までに35地域で技術的に可能なガス供給網の拡張が完了し、ロシア全体の90.1%を完成させる計画となっている。また、2030年までの目標では、技術的に可能なガス供給網の100%を完成させる予定。
- 2020年の同社の業績については、同社長は、2020年上半期に海外市場でのガス需要とガス価格が減少したが、下半期には市場は安定し、現在の取引量は順調、価格が回復し始めていると説明した。また、2020年10月には、欧州に17.4BCMのガスを供給し、過去最高を記録したとしている。
- また、シベリアの力パイプラインについて、2019年12月からの運用開始から1年が経過し、中国へのガス供給量は、年間契約量を越えて供給されており、中国市場が発展していると説明した。また、シベリアの力2パイプラインについては、モンゴルを経由するルートの実現可能性調査が準備されており、モンゴルを横断するガスパイプラインを建設するための特別目的会社の設立準備をしていると明かした。同社長によると、2021年第1四半期の早い段階で実現可能性調査の準備が整う予定となっている。
(3) Novatek
- Novatekは、1月12日、NLMKグループと温室効果ガス排出量削減の分野で覚書に署名したと発表した。覚書により、二酸化炭素の回収、利用、貯蔵、水素製造技術の開発、水素燃料の利用、低炭素技術で使われる新製品の開発について両社は協力していく。NovatekのMikehlson社長は、プレスリリースの中で、二酸化炭素の削減において顧客やサプライヤーと共同活動を拡大することは戦略的に重要であるとし、ロシアで低炭素技術を開発するための更なる活動に取り組んでいくと述べた。
- また、Novatekは、1月29日、Uniper社と水素の生産と供給に関する覚書に署名したと発表した。両社は、ロシア及び西欧州のUniper社の発電所への水素の供給を含む水素の生産、輸送、サプライチェーンの開発を行う。特に、CCSを備えた天然ガスからのブルー水素、再生可能エネルギーからのグリーン水素の生産を検討する。NovatekのMikehlson社長は、プレスリリースの中で、水素はクリーンな燃焼エネルギー源として気候変動を緩和するための幅広い用途があり、Novatekの長期戦略の一部として開発する有望な分野であると述べている。また、Uniper社との協力に関して、未成熟な段階であるものの、同社との協力により商業規模の低炭素水素の生産を行うことは、低炭素エネルギー分野の強固な基礎を築くことを可能にするとしている。
- Novatekは12月にもSiemens Energy社と脱炭素化の協力協定に署名しており、脱炭素化の協力を拡大している。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Nord Stream 2
デンマーク海域でのパイプライン敷設作業を再開
- 1月24日付の報道によると、パイプライン敷設船のFortunaがデンマーク海域でNord Stream 2パイプラインの敷設作業を開始したとNord Stream 2 AGが明かした。作業は1月15日に開始されるとデンマークのエネルギー庁に届けられていたが、作業は直前に延期されていた。
- Nord Stream 2を巡っては、1月1日に米国の国防授権法が成立し、Nord Stream 2プロジェクトに関する保険及び認証サービスの提供や、パイプの溶接、コーティング、設置作業等に関わる企業に対して制裁が課されることになった。これを受け、ノルウェーの認証企業DNV-GLは、1月4日、制裁措置が実施されている間、同プロジェクトのパイプラインシステムの認証サービスの提供を停止すると発表した。デンマークからの許認可にはDNV-GLが認証を行うことが規定されており、認証機関の変更には、プロジェクトの完了の遅れが伴う可能性が指摘されている。
- 一方、Nord Stream AGは、1月22日、すでに稼働しているNord Streamは、2020年に55BCMの容量を越えて、59.2BCMのガスを出荷し、稼働開始以来最高水準となったと発表した。
(2) シベリアの力P/L 2
実現可能性調査を実施するための会社をモンゴルで設立
- Gazpromは、1月22日、シベリアの力パイプライン2のための特別目的会社Soyuz Vostokをモンゴルに設立したと発表した。同社は設計と調査作業を行い、モンゴルを横断して中国にロシアのガスを供給するパイプラインを建設するための実施可能性調査を実施する。
- GazpromのMiller社長はプレスリリースの中で、Soyuz Vostokガスパイプラインにより、モンゴルを通過するシベリアの力2パイプラインの輸出容量は、シベリアの力パイプラインの1.3倍以上になる、これにより大量の西シベリアのガスは西側だけではなく東側にも輸出することができるようになると述べている。
- Gazpromとモンゴル政府は、2019年12月、中国にガスを供給するパイプライン建設の実現可能性調査を実施するための覚書に署名している。また、2020年8月には、モンゴルに特別目的会社を設立する覚書にも署名した。
- シベリアの力パイプラインの容量は38BCMとされているのに対し、シベリアの力2パイプラインの容量は50BCMとすることが検討されている。
(3) TurkStream
セルビアへのガス供給を開始
- Gazpromは、1月1日、TurkStreamを通じてトルコ、ブルガリアを横断する新たなルートを経由してセルビア、ボスニアヘルツェゴビナへのガス供給を開始したと発表した。これにより、TurkStreamを通じてロシアのガスを受け取る欧州の国は、ブルガリア、ギリシャ、北マケドニア、ルーマニア、セルビア、ボスニアヘルツェゴビナの6ヶ国となった。
- セルビアには、これまでウクライナとハンガリーを経由してロシアのガスが輸送されていた。報道によると、セルビアは2019年に21億3,500万立方メートル、2020年は10月までに9億6,000万立方メートルのガスを輸入している。
- TurkStreamは2020年1月1日にトルコへのガス輸送が開始され、31.5BCMの容量があり、黒海を横断して930㎞の距離を輸送している。この内、半分の15.75BCMはトルコ国内、もう半分の15.75BCMはトルコを経由して欧州まで輸出される計画となっていた。
- 一方、12月22日付けの報道によると、Gazprom ExportのBurmistrova社長は、トルコとTurkStreamによって輸送されるガスをどれだけ欧州市場に共有するかを議論していると明かした。トルコへのガス需要は2017年にピークを迎えており、これまでもトルコの国内ガス需要が減少した場合にトルコへの輸送割り当ての一部を欧州に振り向ける可能性について言及されていた。
以上
(この報告は2021年2月16日時点のものです)
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