ページ番号1008965 更新日 令和3年2月19日

(短報)停滞するタンザニアのLNG開発

レポート属性
レポートID 1008965
作成日 2021-02-19 00:00:00 +0900
更新日 2021-02-19 13:52:00 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG
著者 橋本 知世
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 5
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 タンザニア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,タンザニア
2021/02/19 橋本 知世
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概要

  • 2010年以降タンザニア南部沖合ではBG(現:Shell)やStatoil(現:Equinor)によって探鉱が行われ、複数のガス田が発見された。
  • 当初、南部沖合ガス田から産出されるガスを各社共同で液化する計画が立ち上がったが、ShellとEquinorの方向性の違いから合意には至らず、共同の液化基地建設の可能性は残しつつもそれぞれ独自にタンザニア政府とHGA交渉を進めることとなった。
  • しかし、タンザニア政府は現行のPS契約を見直すこととし、IOCと政府のHGA交渉は2019年に中断された。
  • 2021年1月、EquinorはタンザニアLNGプロジェクトについて経済性の改善が見込めず、バランスシート上の価値の正当性が維持できないことから、9億8,200万ドルの減損処理を行う旨発表した。同社はタンザニア政府との協議は継続するものの、LNG輸出国になるというタンザニアの夢はまた一歩遠のいた。

(各社HP、Platts Oilgram News、International Oil Daily、Upstream他)


1. タンザニアでのガス発見

2010年以降、タンザニア南部沖合における探鉱により、深海部の4鉱区(Block 1~4)にて、複数のガス田が主にStatoil(現:Equinor)及びBG(現:Shell)によって発見された。

Equinorは2007年にタンザニア石油開発公社(Tanzania Petroleum Development Corporation : TPDC)と2つのPS契約を締結してタンザニアに進出を果たした。Block 2でのパートナーはExxonMobilで、権益保有割合はEquinor 65%、ExxonMobil 35%となっている。なお、TPDCは10%の権益で参画する権利を有している[1]。2011年にBlock 2の探鉱を開始し、これまで合計15の探鉱井を掘削し、原始埋蔵量ベースで20Tcf以上のガスを発見した。

また、BG(現:Shell)はOphir Energy(現:Medco Energi[2])及びPavilion Energyをパートナーとして深海鉱区Block 1およびBlock 4に権益を保有しており、これまでの探鉱で16Tcfの回収可能なガスを発見した[3]。両鉱区での権益保有割合は、いずれもShell 60%、Medco Energi 20%、Pavilion Energy 20%となっている。

なお、BGはBlock 1及び4と同様に2010年にBlock 3にも参入したが、2014年に、さらなる探鉱に値しないとして、Block 3から撤退した。この時、パートナーのOphir EnergyがBGの権益を引き継ぎ80%の権益とオペレーション権を獲得、残り20%はPavilion Energyが保有する構図となった。なお、Ophir EnergyはBGの権益を引き継いだという位置づけになっており、BGへの支払いは発生していないと報じられた。しかし、翌2015年にはOphir Energy、Pavilion EnergyともにBlock 3から撤退したと報じられ、現在ではオープンエリアとなっている。Block 3では2012年に探鉱井が掘削され、BGによるタンザニア南部沖合探鉱での6回目の掘削であり、6回連続のガス発見でもあった。0.5~2Tcfの埋蔵量が推定されたが、Block 3では2012年以降ガス発見はない。


[2] インドネシア企業。2019年5月22日にOphir Energyを買収。

図1:タンザニア沖合鉱区図
図1:タンザニア沖合鉱区図
出所:各種資料よりJOGMEC作成

2. タンザニアLNGプロジェクト

Shellによれば、南部沖合鉱区で将来、産出されるガスの量は、Equinor率いるBlock 3の事業と共同で陸上にLNG液化プラントを建設するのに十分な量であり、当初は共同の液化プラント建設が計画されていた。EquinorはBlock 2からのLNG生産量は年間750万トンが見込まれると発表していた。

表:液化プラント(計画段階)
プラント名 名称未定
液化能力 1,000万トン/年

参加企業
(保有割合)

Equinor(32.5%)、Shell(30%)、ExxonMobil(17.5%)、Medco Energi(10%)、Pavilion Energy(10%)

出所:天然ガス・LNGデータハブ2021他よりJOGMEC作成    

 

タンザニア政府は液化プラントのために、すでに同国南部の海岸沿いの街Lindiを割り当てている。

 

図2:LNG開発のフロー
図2:LNG開発のフロー
出所:Equinorホームページ

EquinorとShellは互いに共同でLNGプラントを建設する可能性を排除していなかったが、大規模なLNGプロジェクトを運営したいと考えていたEquinorに対し、ShellはEquinorの経験不足を理由に同社が共同プラントを運営するのを拒否したとも一部で報じられていた。2019年5月にEquinorは単独でタンザニア政府とHGA(Host Government Agreement)[4]協議に乗り出すことを決定し、これがShellにさらに不満を抱かせたとも言われている。以降、共同プラントの可能性は残しつつもEquinorとShellはそれぞれ独自に政府と協議を進めていく方針のようである。

2019年にはマグフリ大統領[5]の指示のもと、タンザニア政府が現行のPS契約の契約条件について見直しに着手し、IOCとタンザニア政府間のHGA交渉が中断した。同年11月、現地メディアは「PS契約には石油法(2015年制定)と矛盾したり重複したりする条件がある可能性があり、議会はHGA交渉を進める前に、それを見直す特別チームを結成することになった」と報じ、2013年モデルのPS契約の条件を見直す予定とされているが、PS契約のどの条件が問題なのかはまだ明確にはされていない。

また、2019年10月、タンザニア政府はLNG基地建設によって住環境等に影響を受ける人々に補償金を支払うことを発表した。それから約1年後の2020年9月には、政府は土地所有者に合計233万ドルの補償金を支払い、LNG基地建設のための土地の取得を完了した。これによって、タンザニア政府はプロジェクト前進に向けて着実に進んでいると述べ、HGA交渉を再開する準備ができているとした。

しかし、Equinorは「タンザニアで進行中のPS契約の見直しを待っており、HGA交渉は保留中」と強調している。Shellは「HGA交渉を進めたい。いつ、どのようにプロセスを再開するのかについてタンザニア政府の手引きと明確化を期待している」とコメントしており、歩調はそろっていない。

現在、タンザニアのLNG開発プロジェクトはまだ初期の段階にあり、プロジェクトの構造・参加・商業契約などの主要な項目がまだ定まっていない。なお、LNG液化施設建設に向けたPreFEEDはHGAの締結を待って行われる予定になっている。


[4] Host Government Agreement (HGA)とは、IOC等の外国投資家と当該産油・産ガス国との間で、LNGやパイプラインなどを建設する際に互いの権利と義務を規定する合意のこと。

[5] 2020年10月、タンザニア大統領選挙が行われ、マグフリ大統領は得票率84.4%で再選を果たし2期目に入った。


3. Equinorが減損処理

プロジェクトがなかなか進まない中、2021年1月29日、EquinorはタンザニアLNGプロジェクトについて9億8,200億ドルの減損処理を行うと発表した。同プロジェクトの経済性を確保するために必要なガス価が高く、同社保有のポートフォリオにあっては他事業よりも経済性が劣っていることがその理由である。Equinorはより高いリターンが得られるプロジェクトに資本を投じる方針であり、プレスリリースで、2026年までに操業開始予定の石油・天然ガス探鉱開発プロジェクトのブレイクイーブンを35ドル/bbl、今後10年以内に操業開始予定の未FIDの探鉱・開発プロジェクトのブレイクイーブンを40ドル/bblに置いている。一方で、Rystad Energyによると、タンザニアLNGのブレイクイーブンは48ドル/bbl(8ドル/tcf)と見られている。

ただし、EquinorはタンザニアLNGがビジネスとして成立できるような商業的、財政的、法的枠組みを見出すため、タンザニア政府との協議を継続すると述べ、完全にドアを閉めたわけではない。契約条件が緩やかなものになれば、経済性は向上してブレイクイーブンも下がる。

もう一方のIOCであるShellも投資プロジェクトの選定には厳格なアプローチをとっているため、開発が進むかは不確実である。タンザニア政府は同国がいつかLNG輸出国になることを夢見ているが、業界筋の見方は厳しく、その可能性は今のところ低いと言われている。


4. 今後の展望

2020年にFIDした液化プロジェクトはメキシコにおけるSempra EnergyのCosta Azul輸出プロジェクト1件のみであり、今回のタンザニアLNGの評価減は新たな液化プロジェクトを市場に投じることの難しさを改めて浮き彫りにしたものであろう。COVID-19のパンデミックと長期的なガス需要に対する不確実性によって、2020年には資本集約的な液化プロジェクトへの投資意欲が減退し、FID不足となった世界的な傾向の中、アフリカも例外ではない。アフリカでは、タンザニアLNGが評価減したほか、モザンビークではRovuma LNGのFIDが遅延しており、モーリタニア・セネガルでもTortue LNGの拡張計画がスケールダウンされる計画である。アフリカの石油・天然ガス開発計画の進展について、世界のトレンドとともに引き続き注視される。


以上

(この報告は2021年2月19日時点のものです)

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