ページ番号1008969 更新日 令和3年2月26日

カザフスタンの最近の石油・天然ガス関連動向

レポート属性
レポートID 1008969
作成日 2021-02-26 00:00:00 +0900
更新日 2021-02-26 09:12:04 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 四津 啓
著者直接入力
年度 2020
Vol
No
ページ数 9
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 カザフスタン
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,カザフスタン
2021/02/26 四津 啓
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概要

  • カザフスタンの2020年の石油生産量はエネルギー省の発表によると8570万トンで、2019年から約5%減少した。年間生産量の減少は2016年以来4年ぶりで、減少幅は1991年の独立以降で最大となった。
  • カザフスタン3大プロジェクトの内、テンギスとカシャガンは同国のOPECプラス協調減産の牽引役となり、2020年第2四半期以降の生産量は第1四半期以前と比較して顕著に低下。カラチャガナクで生産される液分は減産対象外のガスコンデンセートであるため、生産量に影響は見られない。また、新型コロナウイルス流行の影響も一部で見られたが、各プロジェクトは操業を継続し、拡大計画も進行中である。
  • 石油・天然ガス業界には厳しい状況が続く中、2020年にはカザフスタン初のオンライン鉱区入札が実施された他、海外大手企業の新案件開拓の動きも見られる。

(出所 業界報道記事、各社プレスリリース)


1. OPECプラス減産

2020年4月のOPECプラス(OPEC及び一部の非OPEC産油国)による協調減産合意に基づき、カザフスタンは2020年5月から減産を実施。エネルギー省の発表によれば5月は割当減産量に未達だったが、その後はおおむね合意を順守している[1](図1参照)。2021年1月4日及び5日のOPECプラス会合の結果、2月及び3月は他国が減産水準を維持する中、カザフスタンはロシアと共に減産を緩和することが決定している。但し1月の生産量は12月よりも減少した。


[1] トンからバレルへの換算について、エネルギー省の発表値は約7.3バレル/トンが使用されているが、カザフスタン産の石油は主に軽質油であることから、7.6バレル/トン前後で換算するのが妥当との指摘もある。仮に7.6バレル/トンで計算すると、割当減産量の順守率は6月以降も9割程度で、減産未達となる。

表1 2021年1月から3月のOPECプラス減産割当(単位は日量千バレル)

図1:2020年5月以降のカザフスタン原油生産量推移


2. 3大プロジェクトの概況

カザフスタンの石油生産の約6割は同国の3大プロジェクト(テンギス、カシャガン、カラチャガナク)からの生産による。この内、カラチャガナクは天然ガスプロジェクトであり、生産される液分はコンデンセートであるため、原油を対象とする協調減産の影響をほとんど受けていない。よってカザフスタンの減産は主としてテンギスとカシャガンが主導する構図となっている。(両油田以外の国内油田の生産も減産しているが、テンギスとカシャガンの減産割合がより大きい。)

3大プロジェクトの昨年の概況を以下に記す。


テンギスプロジェクト

  • 開発対象:Tengiz、Korolyov(陸上油田)
  • オペレーター:Tengizchevroil (TCO;Chevron 50%、Exxon Mobil 25%、KazMunayGas 20%、Lukoil 5%)

テンギスプロジェクトはカザフスタン西部陸上(カスピ海北東岸)に位置するTengiz油田とKorolev油田からなる同国最大の石油プロジェクト。

  • 生産量推移:

2019年の年間平均生産量は日量約64万バレルで、2020年第1四半期(協調減産前)には一時日量67万バレルに達したが、2020年の平均生産量は日量57万バレル程度となった。

450億ドル規模の拡張計画(Future Growth Project and Wellhead Pressure Management Project; FGP-WPMP)を実施中で、エネルギー省による発表では、進捗は順調。既に進捗率は80%に達しており、2022年後半から2023年初頭にかけて新施設の稼働が始まる予定。これにより生産量が最大日量26万バレル程度引き上げられる予定。

  • 新型コロナウイルス関連:

<作業員に新型コロナウイルス流行、サイト封鎖>2020年3月まではフィールドで感染は確認されていなかったが、4月8日以降にクラスターが発生し、合計1000人以上が感染。サイトには作業員が3万人ほどいたとされるが、5月末にはその大半の2万5000人以上が感染拡大防止のため退避した。その後サイトは封鎖され、生産作業等操業に不可欠な作業と拡張計画の最低限の作業を除く作業は基本的に停止となった。11月には過半の作業員が現場に復帰している。

図2 カザフスタンの3大プロジェクト位置
図2 カザフスタンの3大プロジェクト位置
(JOGMEC作成)

北カスピ海プロジェクト(カシャガン)

  • 開発対象:Kashagan、Kairan、Aktoty(海上油田)
  • オペレーター:North Caspian Operating Company (NCOC;KMG Kashagan 16.877%、Shell Kazakhstan Development 16.807%、Total EP Kazakhstan 16.807%、Agip Caspian Sea 16.807%、ExxonMobil Kazakhstan 16.807%、CNPC Kazakhstan 8.333%、Inpex North Caspian Sea 7.563%)

北カスピ海(カシャガン)プロジェクトはカスピ海沖のカザフスタン最大の海上油田プロジェクト。

  • 生産量推移:

2013年に一度生産開始するも、パイプライン不具合のため停止し、2016年に生産再開。徐々に生産量を伸ばし、2019年は平均30万バレル程度、2020年第1四半期には一時日量約40万バレルに達したが、その後は減産実施により日量30万バレル前後で推移した。2020年の年間生産量合計は前年比で約7%増加している。

2020年11月には、2016年の生産再開以降の累計石油生産量が5000万トンを突破したと発表している。

ノガエフ・エネルギー相は12月にカシャガンプロジェクトについて、フェーズ2開発に関する協議がNCOC内で実施中であり、年間処理能力1BCMのガス精製プラントが新設され、原油生産能力は2022年(1年前倒し)までに日量59万バレルに拡張される計画であると述べている。

  • 新型コロナウイルス関連:

新型コロナウイルスによる操業への影響は報道されていない。NCOCのプレスリリースによれば、感染拡大への対策実施により作業に一定の制限があるが、生産作業は問題なく実施されている。

 

カラチャガナクプロジェクト

  • 開発対象:Karachaganak(陸上ガス田)
  • オペレーター:Karachaganak Petroleum Operating(KPO;Shell 29.25%、Eni 29.25%、Chevron 18%、Lukoil 13.5%、KazMunayGas 10%)

カラチャガナクプロジェクトは、カザフスタン北西部のロシア国境付近に位置するKarachaganak鉱区における石油・ガスプロジェクト。年間ガス生産量はカザフスタン最大。

  • 生産量推移:

液分はコンデンセートであるため協調減産の影響を受けず、2020年の生産量はほぼ横ばい(日量25万バレル前後)。ガス生産量は、9月はメンテナンス実施のため生産量が一時減少したが、2020年の生産量は前年比で8%以上増加となった。

  • 新型コロナウイルス関連:

5月22日に最初の感染者が確認され、6月初旬にかけてサイト封鎖が実施された。その後大きな影響は報道されていない。

  • PSA問題決着:

12月にカザフスタン政府とKPOの長年にわたる利益配分論争が決着。この論争は、1997年に締結された生産分与契約(PSA)の利益配分に関して、カザフスタン政府とKPOの間で解釈に食い違いがあり、2015年にカザフスタン政府がジュネーヴの国際仲裁裁判所に訴訟を起こしていたもの。カザフスタンエネルギー相の発表によると、政府とKPOは当該論争について、KPOが13億500万ドルを政府に支払うことで和解した。また、2037年まで6億ドル(油価が40-50ドル/bblの場合)を政府に追加で支払うことを規定するよう利益分与フォーミュラが変更されたとされる。結果的には政府側の主張が通る形での解決となり、20年前の契約の解釈と利益分与規定の変更が行われたことは、カザフスタンに対する投資家のイメージを損ねることになりかねないが、その一方で、PSA問題解決を受けて、12月14日にはカラチャガナクの拡張計画フェーズ1(KEP1A)の最終投資決定がKPO及びカザフスタン政府に承認され、プロジェクトはさらなる進展に前進することができた。

図3 カザフスタンの石油・ガス生産量推移(2020年)
図3 カザフスタンの石油・ガス生産量推移(2020年)
(出典:エネルギー省統計、各社発表情報から作成)

3. 政府・業界の見通し

国営石油ガス会社KazMunayGas(KMG)は新型コロナウイルス流行による需要減と油価下落の影響を受け、2020年上半期の決算発表によると、売上は前年比34%減、純利益は前年比97%減となった。

KMGの株式はカザフスタン国営ファンド(Samruk Kazyna)が90%、中央銀行が10%を保有しており、新株公開(IPO)を2020年中に実施することを計画していたが、市況の悪化を受けて時期は未定となっている。

表2:KMGの2020年第3四半期までの売上及び当期純利益
注:1000テンゲ=約2.4ドル
(出典:KMG発表資料から作成)

1月12日にエネルギー省はカザフスタンの石油生産量について、2020年は8570万トンであり、2021年は微増の8600万トンを見込むと発表したが、その後2月16日に予想を下方修正し、2021年の生産量は8340万トンと、2020年から減少が見込まれている。TCOとNCOCの生産量は減少予想(テンギスは2020年実績2640万トンに対し2021年予想2530万トン、カシャガンは2020年実績1510万トンに対し2021年予想1450万トン)である。

2019年と比較すると、2020年の石油生産量は500万トン余り減少し、減少幅は1991年の独立以降で最大となった。

図4 カザフスタンの石油生産量推移(1992年以降。2021年はエネルギー省の試算(目標)値)
図4 カザフスタンの石油生産量推移(1992年以降。2021年はエネルギー省の試算(目標)値)
(出典:BP統計及びエネルギー省統計から作成)

カザフスタンの石油ガス業界団体KazenergyのAkchulakov会長は、「価格低迷とパンデミックによる世界的な混乱により、業界各社は新しい探鉱活動ではなく既存ビジネスの維持に投資を行っている。今のような状況が2、3年続けば、カザフスタンは石油生産不足に陥る可能性がある。カザフスタンの現在の年間石油生産量9000万トンの内の4000万トン(およそ83万BD)を占めるTengizとKashaganでは今後も生産量増加が見込まれるが、残りの5000万トン分も維持するためには、5から10億トン(37-74億バレル)程度の埋蔵量の油田を早急に発見する必要がある。」と指摘し、カザフスタンにおける低調な探鉱活動に起因する将来の石油生産の減少に警鐘を鳴らしている。


4. その他のトピック

初めてのオンライン鉱区入札を実施

2020年9月1日から、石油及び天然ガスの陸上鉱区探鉱ライセンスの初めてのオンライン入札に関する情報が公開された。入札対象の探鉱エリアは82件で、国営の情報会計センターInformation and Accounting Center(IAC)が運営するウェブサイト上の取引システムに掲載された。

入札条件には、鉱区利用にあたり落札者が地元当局と契約交渉を行うこと、地元住民へのヒアリングに参加すること、外国企業はカザフスタン法人を有する必要があり、厳しいローカルコンテンツ要件を満たす必要があることが含まれた。入札に参加したのはほとんどがカザフスタン国内企業で、主たる国際石油会社の参加はなかった。

12月23日に7つの油ガス田鉱区が落札され、落札額は合計610億テンゲ(約1.5億ドル)に達し、開始金額2.63億テンゲから230倍となった。落札された鉱区はいずれも西部のアティラウ地方に位置している。最も有望と見られるZaburunye鉱区とSaraishyk鉱区をめぐっては競争の結果、前者は163億テンゲ(約0.4億ドル)、後者は430億テンゲ(約1億ドル)で落札された。ところが、両鉱区とも「Petro Kazaq」というカザフスタン法人を通して入札に参加した無名のオランダ企業「Winsple Netherlands」が落札したが、報道によると、その後この会社はエネルギー省に対し落札額を支払えないことを申し出、エネルギー省は対応を検討中とされる。


KazTransGasとGazpromがカザフスタン東部へのガスパイプライン建設を検討

ノガエフ・エネルギー相の11月24日の政府内会議における発言によると、KazTransGasとGazpromが共同ワーキンググループを設置して、ロシアからカザフスタン東部へのガスパイプラインの建設を検討している。具体的には、ロシア・バルナウールからルプツォフスクを通り、カザフスタン・セメイを経由して最終的にオスケメン(ウスチ・カメノゴルスク;東カザフスタン地方の行政中心都市)に至る計画で、セメイからパヴロダールへの分岐線も検討されているという(図5のイメージ図を参照)。東部地域はカザフスタンの国内ガス供給が欠如しているため、ロシアからの供給が最良の選択肢と見られ、人口210万人、年間2.3BCMの需要が試算されている。

カザフスタン東部へのロシアからのパイプラインをめぐっては、2020年2月にノガエフ大臣がノヴァク・ロシアエネルギー相(当時)に対し、シベリアの力2をカザフスタン経由とすることを提案し、ロシアとカザフスタンによる共同検討会が組織されたが、その後ロシアはシベリアの力2をモンゴル経由とすることでモンゴルと覚書を締結している。

図5 カザフスタンの既存ガスパイプライン(茶色線)と検討中の東部パイプライン(赤線)
図5 カザフスタンの既存ガスパイプライン(茶色線)と検討中の東部パイプライン(赤線)
(JOGMEC作成)

Lukoilがカザフスタンで海上プロジェクトに参画 KMGとJV設立

2020年10月、KMGは、Lukoilによるカスピ海のAl-Farabi鉱区(IR2)開発への参加でLukoilと合意し、JV設立を決定。Lukoilは権益49.99%を取得。

Al-Farabi鉱区は陸から100から130キロメートル沖合に位置し、水深は150から500メートル、面積6000平方キロメートル、結氷はしない。2社は2019年5月に同鉱区の探鉱活動のための仮協定を結んでいた。KMGによると、探鉱井1本と震探による探鉱活動は最長9年の予定で、費用は少なくとも7000万ドル。

LukoilはカザフスタンでKarachaganak、Tengiz、Kumkolの開発、CPCパイプラインに参加している他、海上鉱区Zhenisでも探鉱を行っている。Al-FarabiはLukoilがKMG、Gazpromと共に開発中のロシア領Tsentralnaya構造に近い。


BPとKMGの共同開発の可能性

7月の報道[2]によると、BPはKMGと共同で、カザフスタン内のいくつかのプロジェクトで探鉱を行うことに興味を示している。両社は2021年前半に、カザフスタン政府に対し、石油・ガスの探鉱・開発の承認申請を共同で行い、許可を得た場合、探鉱・開発にかかる費用は全てBPが負担し、商業生産が開始されれば、費用はKMGが負担するという。BPはテンギスとCaspian Pipeline Consortium(CPC)に参加していたが、どちらも2009年に売却し、それ以降カザフスタンのプロジェクトには参加していない。2019年5月にBPはKMGと共同で国内の有望なエリアの資源量調査を実施することについて覚書(MOU)を締結している。


[2]2020年7月14日 Caspian News “BP Set to Return to Kazakhstan After 11 Years”


以上

(この報告は2021年2月26日時点のものです)

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