ページ番号1009003 更新日 令和3年4月2日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2021年4月に実施している減産措置を5月から7月にかけ縮小へ(速報)

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レポートID 1009003
作成日 2021-04-02 00:00:00 +0900
更新日 2021-04-02 10:45:03 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 16
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
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地域5
国5
地域6
国6
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地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2021/04/02 野神 隆之
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概要

  1. 2021年4月1日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国はテレビ会議形式で閣僚級会合を開催し、OPECプラス産油国が2021年4月に実施している日量690万バレルの減産措置につき、5月は日量35万バレル縮小し同655万バレル、6月にさらに同35万バレル縮小し同620万バレル、7月にさらに同44万バレル縮小し同576万バレルとすることで合意した。
  2. また、別途サウジアラビアが4月に単独で実施している日量100万バレルの自主的な追加減産についても、5月は同25万バレル縮小し同75万バレル、6月に同35万バレル縮小し同40万バレル、7月に同40万バレル縮小し当該追加減産を終了とする旨同国が明らかにした。
  3. 次回のOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC)及びOPECプラス産油国閣僚級会合は4月28日に開催される予定である。
  4. 欧州での新型コロナウイルス感染再拡大により一部諸国で個人の外出規制及び経済活動制限が強化されたこと等もあり、3月は原油価格が下落傾向となるなど、世界石油需給引き締まりによる原油価格上昇傾向継続を市場参加者が確信するには、市場環境は必ずしも盤石ではなく、依然として市場心理の変化によって原油価格が下落するリスクが存在することが示唆された。
  5. このようなことに加え、石油市場は季節的に需給緩和感が醸成されやすい第二四半期に突入しつつあった。
  6. このため、原油価格下落の抑制を目指し石油需給引き締まりを図るため先制的に行動すべく、OPECプラス産油国は、サウジアラビアの自主的な追加減産を含め5~6月の減産措置を4月と同規模にする方針を固め始めた。
  7. しかしながら、米国エネルギー省のグランホルム長官とサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が4月1日に電話会談を実施し、消費者にとって手頃で信頼できるエネルギー価格の重要性を両者が再確認した前後から、方針が急転回、減産措置の緩和が議論されるようになり、実際OPECプラス産油国閣僚級会合では減産措置の縮小が決定された。
  8. サウジアラビアは今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での決定に際し米国等消費国の影響はない旨明らかにしているが、原油価格のさらなる上昇は既に高水準となりつつある国内でのガソリン小売価格の上昇と政権支持率の低下を招く恐れがある旨危惧する米国の状況を、サウジアラビアが考慮した可能性も否定できない。
  9. 5~6月の減産措置の継続を予想していた市場にとって、減産措置の縮小は世界石油需給を緩和させる方向で作用することから、原油相場には下方圧力が加えそうなところ、この日は米国で経済が堅調に回復しつつあることを示唆する内容の景況感指数が発表されたこともあり、この先の石油需要の増加に対する期待が市場で強まった結果、当該会合開催日である4月1日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.29ドル上昇し、61.45ドルの終値となっている。

(OPEC、IEA、EIA他)


1. 協議内容等

 (1) 2021年4月1日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国はテレビ会議形式で閣僚級会合を開催し、OPECプラス産油国が2021年4月に実施している日量690万バレルの減産措置(減産の基準となる原油生産量はサウジアラビアとロシアについては日量1,100万バレル、その他の産油国は2018年10月の原油生産量)につき、5月は日量35万バレル縮小し同655万バレル、6月もさらに同35万バレル縮小し同620万バレル、7月はさらに同44万バレル縮小し同576万バレルとすることで合意した(表1及び参考1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (2) また、別途4月にサウジアラビアが単独で実施している日量100万バレルの自主的な追加減産につき、5月は同25万バレル縮小し同75万バレル、6月はさらに同35万バレル縮小し同40万バレル、7月はさらに同40万バレル縮小し、自主的な追加減産を終了とする旨同国が明らかにした。

 (3) 世界的な新型コロナウイルスワクチン接種と主要国における刺激策で石油市場が下支えされていることをOPECプラス産油国は会合で認識した。

 (4) しかしながら、最近数週間の価格変動(原油価格が下落傾向となっていることを指していると見られる)により、石油市場の展開を慎重に監視する必要がある旨会合では留意した。

 (5) また、2月のOECD諸国石油在庫は7ヶ月連続で減少となったが、依然として過去5年(2015~19年)平均を超過していることもOPECプラス産油国は確認した。

 (6) 他方、2020年5月1日のOPECプラス産油国減産措置実施以降平均で100%の減産遵守率を達成できていないOPECプラス減産参加産油国は9月30日までに減産目標未達成部分を追加して減産するよう求められた。

 (7) 特に、減産目標を顕著に超過している産油国は4月15日までに減産目標未達部分に対する追加減産計画をOPEC事務局に提出することでOPECプラス産油国は合意した。

 (8) 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は4月28日に開催される予定である。

 (9) また、次回のOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee、委員はサウジアラビア、クウェート、UAE、イラク、アルジェリア、ナイジェリア、ベネズエラ、ロシア、及びカザフスタンとされる)についても4月28日(次回OPECプラス産油国閣僚級会合開催日と同日)に開催することとした。


2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2021年3月4日に開催されたOPECプラス閣僚級会合では、3月に実施している減産規模の減産措置を、ロシア及びカザフスタンを除き、4月についても実施することが決定されたうえ、サウジアラビアが単独で実施していた日量100万バレルの自主的な追加減産を4月も継続する旨、当該閣僚会合開催の際に同国が表明した。

 (2) このような決定等により、当初OPECプラス産油国全体で日量50万バレルの減産措置の縮小及びサウジアラビアの自主的な追加減産措置の終了という市場の事前予想よりも石油需給を引き締める方向で石油市場に作用するとの認識が市場で広がったこともあり、会合開催後の原油価格は上昇、3月5日にはWTIで1バレル当たり66.09ドルの終値と2019年4月23日(この時は同66.30ドル)以来の高水準に到達した(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2020~21年)

 (3) ただ、このような原油価格上昇は、足元の実際の石油需給引き締まりという盤石な市場環境に伴うものというよりは、新型コロナウイルスワクチン接種普及による世界経済成長の加速と石油需要の回復、及びOPECプラス産油国による減産措置の維持に伴う、将来の石油需給引き締まり期待を市場が先取りすることに伴い、世界的な金融緩和の動きの中、低コストで調達された資金が原油市場に流入したことによるという、いわば強気な市場心理及び金融要因が一因であると見受けられる部分もあった。

 (4) また、OECD諸国石油在庫も減少傾向を示しているとはいえ、OPECプラス産油国の認識通り依然として過去5年平均を超過する状態にあった(図2参照)。

図2 OECD諸国石油在庫(2016~21年)

 (5) このようなことから、新型コロナウイルス感染拡大による個人の外出規制もしくは経済活動制限の強化、及び新型コロナウイルスワクチンの接種普及減速等により、市場での石油需給引き締まり期待が後退することに伴い、足元の必ずしも引き締まっていない石油需給状態を市場が再認識する結果、原油価格が急落するリスクを抱えたままとなっており、そのようなリスクが顕在化した場合、これまで金融要因等で原油市場に活発に流入していた投資資金が、逆に急速に流出することにより、原油価格が急落する恐れがあった。

 (6) 実際、英国製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンに血栓症の副作用発生の可能性が生じたことにより、3月15日にはフランス、ドイツ、イタリア及びスペイン政府が、当該ワクチンの接種を見合わせる旨発表した(また、4ヶ国以外の諸国でも同社製ワクチン接種を見合わせる動きが発生した)ことで、当該地域経済成長の加速及び石油需要の回復に対する市場の期待が後退したことが、原油相場に下方圧力を加える場面が見られた。

 (7) また、新型コロナウイルス感染再拡大(第三波)により、フランスのパリ及びその近郊等16県で、3月20日午前0時より都市封鎖措置を実施する旨、3月18日に同国のカステックス首相が発表したうえ、3月31日には同国のマクロン大統領が4月3日以降最低1ヶ月間都市封鎖措置を同国全土に拡大する旨発表した他、3月23日には、ドイツのメルケル首相が新型コロナウイルス感染抑制のため、復活祭に伴う休暇期間である4月1~5日において都市封鎖措置を強化する(しかしながら、ドイツ国内からの批判が増大したことにより当該方策は撤回する旨3月24日にメルケル首相が明らかにしている)他これまで3月28日を期限としてきた都市封鎖措置の期限を4月18日まで延長する旨3月23日未明(現地時間)に発表した。

 (8) さらに、インドで生産されているアストラゼネカ製の新型コロナウイルスワクチンの英国向け供給が遅延していることにより、英国での新型コロナウイルスワクチン接種普及が減速する可能性がある旨3月18日に報じられるなど、当該ワクチンの供給に混乱が生じていることが示唆されている。

 (9) 加えて、石油市場ではスーパーサイクル(原油価格が1バレル当たり100ドル以上にまで高騰すること)を予想する向きが増大しつつあるが、石油在庫が歴史的に見て依然高水準にあること、及びOPECプラス産油国が減産を実施していることにより余剰生産能力が2月時点で日量930万バレルに到達していること、等により、スーパーサイクルは(現時点では)発生しないと予想する旨3月17日にIEAが「オイル・マーケット・レポート」で示唆した他、2023年まで世界石油需要は2019年の水準には戻らないであろう旨同日IEAが「オイル2021(中期石油市場見通し)」で明らかにした。

(10) また、3月16~17日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)の際に明らかになったFOMC出席者による経済予測で、2021年の米国物価上昇率が2.4%と、米国連邦準備制度理事会(FRB)が目標としている2.0%を超過するとの見通しが明らかになったこともあり、米国での物価上昇観測が市場で拡大したことに伴い同国債券利回り及び米ドルが上昇した。

(11) 以上のような要因により、原油価格は下落傾向となり、例えば3月18日には原油価格が前日終値比で1バレル当たり4.60ドルの下落と2020年4月20日(この時は同55.90ドルの下落)以来の大幅下落となった他、3月23日の終値は同57.76ドルと2月5日(この時は同56.85ドル)以来の低水準に到達するなど、市場参加者が世界石油需給引き締まりに伴う原油価格上昇見通しを確信するには、市場環境は必ずしも盤石ではなく、依然として市場心理は変化しやすく、従ってそのような市場心理の変化により、原油価格が急落し続けるリスクが存在することが示唆された。

(12) このようなことに加え、例年第二四半期は北半球での暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期は終了した後となる一方で、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期にはまだ早いことから、季節的に石油需給緩和感が市場で醸成される結果原油相場に下方圧力が加わりやすいと市場では認識されていた。

(13) 他方、2020年11月3日に実施された米国大統領選挙でバイデン氏が当選した後、バイデン氏の米国大統領就任による、米国の対イラン制裁措置の緩和(もしくは、少なくとも制裁をこれ以上強化しないこと)を見込んで、イランのロウハニ大統領は同国石油省に対し3ヶ月以内に原油生産能力一杯にまで原油生産を回復させるよう指示した(トランプ前大統領によるイラン核合意離脱と対イラン制裁実施表明時の2018年5月の日量385万バレル以来イランの原油生産量は減少し、大統領選挙直前の2020年10月には同196万バレルとなっていた)旨示唆したと12月6日に伝えられた。

(14) 2021年3月のイランの原油生産量は日量235万バレル程度と推定され同年10月の同196万バレルから増加しつつあるとともに、今後もイランで油田操業再開作業が実施されることを通じ同国の原油生産が増加していくことにより、結果としてOPECプラス産油国全体の原油供給が拡大するといったことも、石油需給の緩和感を市場で醸成させるとともに、原油相場に下方圧力を加える要因となりうることも考えられた。

(15) 石油需給が必ずしも引き締まっていないと見られる石油市場において、OPECプラス産油国が不用意に減産措置を緩和すれば、OPECプラス産油国は必ずしも原油価格上昇に熱心なわけではないという姿勢を市場参加者に対し発信することになり、OPECプラス産油国の断固たる減産措置の実施による石油需給引き締まりに伴う原油価格先高感が市場で消滅するとともに、これまでそのような期待で投資資金を原油市場に流入させてきた投資家は利益を確定されるべく資金を退出させることが予想された。

(16) そして、これまでの原油価格上昇の背景に金融要因があると見られるところからすると、原油価格の下落局面が開始されたと市場で受け取られた場合、投資資金の退出に伴い原油価格下落が加速することにより、その時点になってOPECプラス産油国が減産措置を強化しても、原油価格の制御が困難になるといった展開となることも想定された。

(17) 他方、減産措置の維持等により、世界石油需給を必要以上に引き締めすぎる結果、原油価格がさらに上昇するというリスクも、OPECプラス産油国は抱えていた。

(18) しかしながら、OPECプラス産油国の大半にとってみれば、石油需給引き締まり感が市場で強まる結果、原油相場が上昇し続けることにより、消費国から不満が発生するといった問題が発生するものの、それに対しては、原油供給を増加させる意図がある旨表明するといったいわゆる口先介入、そしてそれでも原油価格の上昇が継続する場合には実際に原油供給を増加させることにより、原油価格上昇の沈静化を図ると言った選択を行う余地が残される一方、原油価格の上昇が継続している間は、OPECプラス産油国の原油収入は概ね増加するものと見られることから、不用意に減産措置を緩和することにより原油価格が制御不可能な格好で下落し続ける結果原油収入が打撃を受ける可能性よりも、慎重に減産措置を運用する結果原油価格が上振れする可能性の方が、彼らにとっては得策といった側面があったことにより、原油価格の上振れリスクはOPECプラス産油国の大半にとって受入可能であった。

(19) 実際、3月3日にはインドのプラダン(Pradhan)石油相は主要OPECプラス産油国に対し石油市場を安定させるとの約束を守るために増産すべきであると要請したが、3月4日にサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相はそのようなインドからの増産要求に対し2020年の原油価格低迷時期に購入した原油を利用すべきである旨発言しており、主要消費国による要求を事実上無視する格好となっている(これを受け、インド政府は国営石油精製会社に対し原油供給源をロシアやガイアナ等へと多様化させるとともに中東依存度を低減させるよう要請した旨3月9日に伝えられた他、3月26日にもプラダン石油相はアブドルアジズ エネルギー相の発言を非外交的であるとして批判している)。

(20) また、投資家や資金供給者による圧力もあり、石油会社の収益重視による慎重な事業への投資姿勢に伴い、米国でのシェールオイルの活発な開発・生産活動は永久に過ぎ去った旨、3月4日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合後にアブドルアジズ エネルギー相は発言をしており(但し、市場ではこのような認識を疑問視する向きもある)、従って、OPECプラス産油国が減産措置を維持等することで原油価格が上昇しても、容易には米国のシェールオイルの開発・生産は促進されず、従って原油価格が急落する恐れは高くないとサウジアラビア等が認識していることが示唆された。

(21) このように、OPECプラス産油国の大半、特にその盟主であるサウジアラビアは、原油価格の上振れリスクと下振れリスクのどちらをより受入可能かというと、上振れリスクである一方、下振れリスクは回避するべきであると認識していたと見られることにより、原油価格下落抑制に向け先制的に行動すべく、サウジアラビアの自主的な追加減産を含めOPECプラス産油国は減産措置緩和につき慎重な姿勢を示していた。

(22) そして、ロシアもOPECプラス産油国による減産措置の規模を5月も据え置くことを支持(但し、ロシア自身は季節的な需要の増加に対応するために小規模の増産を模索)する旨関係筋が明らかにしたと3月29日に報じられた。

(23) また、世界石油需要は十分堅調ではないうえ、イランの原油生産増加が見込まれることにより、原油価格下落を抑止すべく、サウジアラビアは5月のみならず6月においても自国の自主的な追加減産を含めOPECプラス産油国の減産措置を維持することを望んでいる旨関係筋が明らかにしたと3月29日夕方(米国東部時間)に報じられた。

(24) さらに、3月30日のOPECプラス産油国共同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)開催の際にOPECのバルキンド事務局長はOPECプラス産油国に対し石油市場の状況につき大いに警戒し続けるよう発言した。

(25) そしてJTCでは、世界中での新型コロナウイルスワクチン普及加速にもかかわらず、新型コロナウイルス感染は世界中で拡大、封鎖措置と旅行制限が多くの地域で再導入されていることを認識しつつ、サウジアラビアの提案により2021年の世界石油需要見通しを前年比590万バレルの増加から同560万バレルへと下方修正したうえ、特に4~6月の世界石油需要を以前の見込みよりも日量100万バレル下方修正した。

(26) これは、4月に実施中のOPECプラス産油国による減産措置に加えサウジアラビアによる自主的な追加減産措置を継続しなければ、2021年第二四半期中は、供給が需要を上回る結果、石油市場参加者の心理が変化することにより原油価格が急落するリスクにOPECプラス産油国が晒されることを意味していた(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2021年)(2021年3月時点)

(27) また、JTCでは、OECD諸国の石油在庫が減少する傾向が見られるものの、依然として過去5年平均を上回っており、(最近の)原油価格の変動は市場の状況が脆弱であることを示している旨認識された。

(28) このような市場環境に対する認識に基づけば、原油価格の下落を抑制するためには、OPECプラス産油国は4月に実施している減産措置につき、少なくとも5~6月においても延長して実施するか、もしくはサウジアラビア等一部OPECプラス産油国による自主的な追加減産を含め減産措置を強化さえする必要があったものと考えられる。

(29) 実際OPECプラス産油国閣僚級会合開催の際し大半のOPECプラス産油国は減産措置の延長を支持している旨4月1日に伝えられた。

(30) しかしながら、3月31日に米国エネルギー省のグランホルム(Granholm)長官がサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相と間で電話会談を実施、その際グランホルム氏は、消費者にとって手頃な価格で信頼できるエネルギー源を確保するための国際的な協力の重要性につき再確認した旨同日夜(米国東部時間)に明らかにした(図3参照)。

図3 米国エネルギー省グランホルム長官のツイッター

(31) 3月29日時点の米国平均ガソリン小売価格は1ガロン当たり2.941ドルに到達しており(図4参照)、さらなるガソリン小売価格の上昇(そしてこの先米国は夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期(2021年は5月29日~9月6日)に突入することからガソリン小売価格がさらに上昇する可能性がそれなりにある)は米国国民の不満を増大させる(米国平均ガソリン小売価格が1ガロン当たり3ドルを超過するようだと同国国民の不満が増大しやすいとされる)ととともに政権の支持率に影響する恐れがあったことから、これ以上の原油価格の上昇をグランホルム氏が牽制した可能性が示唆される。

図4 米国ガソリン平均小売価格(2019~21年)

(32) 4月1日に実施した米国とサウジアラビアとの電話会談は、エネルギー分野での協力の強化につき両国が緊密に作業していく旨の内容であった旨同日国営サウジ通信が伝えている他、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は今回のOPECプラス産油国の減産措置方針決定の際には米国を含む消費国からの影響は受けていない旨明らかにしているが、それまでサウジアラビアの自主的な追加減産を含めOPECプラス産油国として減産措置を維持する旨協議していた、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国が今回の閣僚級会合直前(24時間前とされるが、それは両国の電話会談の実施時前後となるものと考えられる)に減産措置緩和へと議論を転換したとされており、原油価格のさらなる上昇が既に高水準となりつつある国内でのガソリン小売価格の上昇と政権支持率の低下を招く恐れがある旨危惧する米国の状況を、サウジアラビアが考慮した可能性も否定できない。

(33) なお、過去においては、2020年3月6日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合でOPEC産油国とロシアとの間での減産措置に関する協議が決裂、事実上自由な原油生産が可能となった結果、その後原油価格が下落傾向となったが、米国のトランプ大統領(当時)は4月2日にサウジアラビアのムハンマド皇太子と電話会談を実施し、その際にトランプ氏がムハンマド氏に対しOPEC産油国が減産を実施しなければ、トランプ氏としてはサウジアラビアから米軍を撤退させるための米国連邦議会議員による法案の可決を防止できないであろう旨示唆した後、OPECプラス産油国は減産措置実施へと調整を進めた(4月12日には日量970万バレルの減産措置を5月1日~6月30日に実施することでOPECプラス産油国は合意した)といった事例も存在する。

(34) なお、依然として世界石油需給に関しては新型コロナウイルス感染や新型コロナウイルスワクチン接種普及を巡る状況に不透明感が強いこともあり、原油価格下落に対し迅速に対応できるようにするため、次回OPECプラス産油国閣僚級会合を1ヶ月未満後の4月28日に開催することにしたものと見られる。


3. 原油価格の動き等

 (1) 今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催に際しては、サウジアラビアが自国の自主的な追加減産を含めOPECプラス産油国の減産措置を5~6月も維持することを望んでいる旨関係筋が明らかにしたと3月29日夕方(米国東部時間)に報じられていたこともあり、石油市場では、少なくとも5~6月においては4月に実施されている減産措置を延長するものと予想していた。

 (2) しかしながら、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での決定はそのような市場の事前予想に比べ世界石油需給を相対的に緩和させる方向で作用する旨示めされていることから、石油市場関係者が失望するとともに原油相場に対し下方圧力が加わることが、いわば合理的な展開であると考えられる。

 (3) それでも、3月31日夕方(米国東部時間)に米国のバイデン大統領が8年間に渡る2.25兆ドル規模のインフラ整備計画を発表したことに加え、4月1日に米国供給管理協会(ISM)により発表された3月の同国製造業景況感指数(50が当該部門景況感改善と悪化の分岐点)が64.7と1983年12月(この時は69.9)以来約37年ぶりの高水準に到達するなど、景況感が相当程度改善した旨示したことにより、米国株式相場が上昇するとともに投資家のリスク許容度が拡大することにより米ドルが下落したこともあり、米国を初めとする世界経済成長の加速に対する楽観的な見方が市場で増大するとともに、石油需要が増加するとの期待が市場で拡大したことにより、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での減産措置の縮小の決定も、今後の石油需要の増加に沿ったものであると市場で受け取られたことから、原油相場に上方圧力が加わった結果、当該会合開催日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.29ドル上昇し、同日の終値は61.45ドルとなった。

 (4) ただ、原油市場では、1月20日の米国のバイデン大統領就任から100日以内の新型コロナウイルスワクチン接種目標をそれまでの1億回から2億回へと引き上げる旨3月25日にバイデン大統領が表明するとともに、3月31日にはバイデン大統領が同国でのインフラ整備を含む2.25億ドル規模の長期経済対策に関する提案を行ったことに加え、5月29日以降の同国の夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期を控え春場のメンテナンス作業実施の完了後稼働を上昇させる製油所の原油購入活発化が予想される一方で、欧州一部諸国等において1日当たり新型コロナウイルス感染者数が増加したことにより都市封鎖措置等を実施することを通じ個人の外出規制や経済活動制限が強化された他、インドやブラジルでも感染者数が増加、米国でも感染者数増加の兆候が見られるなど、石油需要を上振れさせうる材料と下振れさせうる材料が混在しており、この面では原油価格への圧力の方向性が定まりにくい状態にある。

 (5) そして、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での減産措置縮小の決定により、当初見込みよりも第二四半期の世界石油需給は緩和するとの観測が市場で拡大することに加え、今後新型コロナウイルスワクチン接種普及が進捗する前に、より多くの国もしくは地域で新型コロナウイルス感染がさらに拡大するとともに個人の外出規制及び経済活動制限が強化されることにより経済成長の減速及び石油需要の伸びの鈍化に対する市場の懸念が増大する他、米国の経済対策実施に向けた手続きが進められること等により将来の同国経済回復に対する期待が市場で増大するものの一方で経済対策実施のため米国国債の発行が拡大するとの観測が市場で増大すること等により同国国債利回りが上昇すること等を通じ米ドルが上振れするようであれば、原油相場に下方圧力が加わるとともに原油価格の下落を制御しきれなくなるリスクをOPECプラス産油国は抱え込むこととなる他、OPECプラス産油国は原油価格下落による原油販売収入の減少と米国等の消費国による原油価格上昇牽制の動きとの間に挟まれる格好となり、原油生産方針につき難しい舵取りを迫られることになろう。

 (6) また、イラン等が量的及び時間的にどの程度のペースで原油生産を増加させるかといったことも、原油相場に影響を与えるとともに、場合によってはOPECプラス産油国による減産措置の再調整が必要となるといった事態も想定されうる。

 (7) 他方、2020年3月15日に米国連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利をそれまでの1.00~1.25%から0.00~0.25%へと引き下げたうえ、2021年2月24日にパウエルFRB議長は平均年率2%のインフレ目標に到達するまでには3年を超過する期間を要する可能性がある旨の見解を示したこともあり、大幅に低下したコストで調達された資金が商品等のリスク資産市場に流入しやすい状況が継続することにより、新型コロナウイルスワクチン接種普及拡大及び経済対策の実施により世界経済成長が加速するとともに石油需要の伸びが拡大するとの期待が市場で増大することを通じ、たとえ足元での石油需給が必ずしも引き締まっている旨示されていなくても、原油相場に上方圧力を加えるといった展開となることはありうる。

 (8) そして、低コストで調達された資金が市場に流入しやすい状態のもとでは、原油相場に下方圧力を加える要因により原油価格が下落しようとしても、むしろそのような局面では原油を購入する良い機会であると市場関係者から見做されて資金が流入する結果、原油価格が十分に下落しない反面、原油相場に上方圧力を加える要因に対しては原油購入のために大量の資金が流入する結果、原油価格の上昇が増幅するといった状態が生じやすいことに注意する必要がある。

 (9) また、例えば、イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)が、対立するサウジアラビア等に向けミサイル弾や無人攻撃機を発射するようであれば(今回のOPECプラス閣僚級会合前にもフーシ派武装勢力が発射した無人攻撃機がサウジアラビアの石油関連施設等に飛来し攻撃した場面が複数回見られた)、中東情勢の不安定化に伴う当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大する結果、原油相場の上昇が加速するといった展開も想定される。

(10) 他方、原油価格の上昇につれ、米国での石油坑井掘削装置稼働数が増加する結果、同国のシェールオイルを含む原油生産が持ち直すといった展開も想定されるが、最近米国石油会社においては株主や資金供給者が原油生産に伴う収益性を重視する動きが見られると指摘される他、原油価格の上昇が原油生産の増加となって現れるには6ヶ月程度を要すると言われているところからすると、短期的にはこの面では原油相場への影響は概ね限定的なものとなると見られる。


(参考1:2021年4月1日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

 

15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting concludes

No 10/2021
Vienna, Austria
01 Apr 2021

 

The 15th Meeting of OPEC and non-OPEC Ministers took place via videoconference on Thursday, 1 April 2021, under the Chairmanship of HRH Prince Abdul Aziz bin Salman, Saudi Arabia’s Minister of Energy, and Co-Chair HE Alexander Novak, Deputy Prime Minister of the Russian Federation.

The Meeting emphasized the ongoing positive contributions of the Declaration of Cooperation (DoC) in supporting a rebalancing of the global oil market. These outcomes are in line with the historic decisions taken at the 10th (Extraordinary) OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12 April 2020 to adjust downwards overall crude oil production, and subsequent decisions.

The Ministers noted, with gratitude, the value of the prudent policy approach by Saudi Arabia of maintaining its additional voluntary adjustments of 1 mb/d in April 2021 for third month in a row.

The Meeting approved the adjustment of the production levels for May, June and July 2021, while continuing to adhere to the mechanism agreed upon in the 12th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting (December 2020) to hold monthly OPEC and non-OPEC Ministerial Meetings to assess market conditions and decide on production level adjustments for the following month, with every adjustment being no more than 0.5 mb/d.

The Ministers reviewed the monthly report prepared by the Joint Technical Committee (JTC), including the crude oil production data for February.

They recognized the improvements in the market supported by global vaccination programmes and stimulus packages in key economies but noted that the volatility observed in recent weeks warrants a continued cautious and vigilant approach in monitoring market developments.

The Meeting observed that in February, oil stocks in OECD countries fell for the seventh consecutive month, but still remained above the 2015-2019 average.

The Meeting welcomed the positive performance of participating countries. Overall conformity reached 115 per cent in February 2021, reinforcing the trend of aggregate high conformity by participating countries.

The Ministers noted that since the April 2020 meeting, OPEC and non-OPEC Participating Countries in the DoC had contributed to adjusting downward global oil supply by 2.6 billion barrels of oil by the end of February 2021, which has accelerated the rebalancing of the oil market.

The Ministers expressed their thanks to those countries that have submitted plans for previous compensation shortfalls and continue to work towards compensating for overproduced volumes. They urged all participants to achieve full conformity to reach the objective of market rebalancing and avoid undue delay in the process.

In this regard, the Ministers agreed to the request by several countries that have not yet completed their compensation for an extension of the compensation period until the end of September 2021.

The Ministers agreed to that participating countries with outstanding overproduced volumes will submit their plans for implementation of any required compensation for overproduced volumes to the OPEC Secretariat by 15 April 2021.

The Meeting commended Saudi Arabia for its recently announced “Saudi Green Initiative” and “Middle East Green Initiative” as important contributions to global efforts to combat climate change, and welcomed Saudi Arabia’s commitment to transfer knowledge and share experiences as art of these initiatives.

The oil and gas industry can be part of the solution to climate change. OPEC possesses critical resources and expertise that can help meet the challenge of reducing global greenhouse gas emissions.

The group will explore ways to enhance collaboration in this important area. G20 Leaders have already endorsed the strategy advanced by Saudi Arabia to deal with climate change – the Circular Carbon Economy and its 4Rs – reduce, reuse, recycle, and remove – as an inclusive and balanced solution for dealing with greenhouse gas emissions.

The Ministers thanked the JTC and the OPEC Secretariat for their contributions to the meeting. The next meetings of the Joint Ministerial Monitoring Committee (JMMC) and OPEC and non-OPEC Ministers are scheduled for 28 April 2021.


以上

(この報告は2021年4月2日時点のものです)

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