ページ番号1009018 更新日 令和3年4月23日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
ワクチン生産とワクチン接種に関する会議を開催
- プーチン大統領は、3月22日、新型コロナウイルスに対するワクチン生産とワクチン接種に関する会議を開催した。
- 会議の中で、プーチン大統領は、ロシア国内で630万人が少なくとも1回目のワクチンを接種しており、このうち430万人が2回目のワクチンを接種していると報告し、その結果がロシアのワクチンが信頼でき、安全であるということを裏付けており、これほどの高度な保護を提供する外国製ワクチンはないと強調した。また、外国でのSputnik Vの使用許可の取得が広がっており、これは既に55ヶ国、総人口として14億人となり、この規模は近く25億人に到達する予定であるとの見通しを示した。
- また、ロシア市民へのワクチンの提供は、これまでと同様に無条件の優先事項であるべきだと強調し、ロシアが集団免疫を獲得するには、ワクチン接種に関する問題をどれだけ効果的に解決するかにかかっていると述べ、どんな犠牲を払ってもこの目標を達成する必要があると伝えた。ロシアでは、状況を安定させるために、国の成人人口の少なくとも60%が予防接種を受けることが必要だと推定されており、約7,000万セットのワクチンが必要になるとされている。さらに、ワクチン接種は個人の自由意志に基づく決定だと強調しつつ、翌日に大統領自身もワクチンを接種することも表明した。
- 会議の中でManturov産業商務大臣は、ワクチンの生産計画について報告し、Sputnik Vは6月までに8,000万回を超える投与量を製造する予定だと説明した。また、EpivacCoronaワクチンはこれまでに36.5万セットが生産され、7月までに550万セットが生産されると述べた。KoviVACワクチンは、3月末までに市場に出回り、6月末までに77.5万回分、4月に工場を拡張することで年末までに少なくとも1,000万回分を生産することができると報告した。
- プーチン大統領は翌日にワクチンを接種した模様だが、3種類のロシア製ワクチンのうち、どれを使用したかは発表されなかった。
- ロシアの新型コロナウイルスの1日当たりの新規感染者数は2020年12月以降、継続的な減少傾向となり、3月末には9,000人前後となっている。また、4月1日からはドイツを含む5ヶ国との国際線の再開が決定された他、6月にサンクトペテルブルク国際経済フォーラムが対面形式を含む形で開催されることが検討されており、制限の解除、経済の再開に向けた動きが活発になっている。
国民福祉基金の投資先検討を指示
- プーチン大統領は、3月11日、政府と経済界の代表者との会議を開催し、ロシア国内への投資を促進するための政策を議論した。
- プーチン大統領は、会議の中で、新型コロナウイルスの蔓延による世界経済の否定的な傾向にもかかわらず、ロシアは国内経済の低迷を克服し、産業や企業を支援するための適時適切な措置のおかげで経済が回復し始めたと説明した。同大統領によると、2020年第4四半期には、ロシアの固定資産の投資は前年比で1.2%となった。また、ロシアでは2030年までに2020年と比較して実質ベースで投資額を70%増加させるという目標があり、このために国内の投資事業を体系的に支援する必要があると強調した。
- 同大統領は、この目標のための主要なタスクの一つがインフラの開発であると述べ、企業が事業実施におけるコストを削減し、財源へアクセスできるように支援するよう政府に求めた。この一つとして、プーチン大統領は国民福祉基金の投資に関する具体的提案を1ヶ月以内に提示するように政府に指示した。同大統領は、現在の経済環境が継続するならば、国民福祉基金は毎月1,800億~2,000億ルーブル増加して行くとの予想を示した。現在、基金の流動資産がGDPの7%を超えており、7%を超える資金は大規模な投資プロジェクトの実施に利用することができる。
- 財務省によると、国民福祉基金は2021年3月1日時点で13.552兆ルーブル、流動性部分は8.8兆ルーブルでGDPの7.5%とされている。一方、2021年~2023年の連邦予算では、流動性部分はそれぞれ2021年に7.1%、2022年に6.8%、2023年に7.0%と予測されており、これまで国民福祉基金による投資については積極的に議論が行われてきていない。
- この他、会議の中でプーチン大統領は政府に対し、企業から提案された投資を刺激するための税法の改正検討、連邦税務局が企業の利益と投資を監視することを指示した。
金融
政策金利を4.50%に引き上げ
- ロシア中央銀行は、3月19日、政策金利を0.25ポイント引き上げ、年率4.50%とすることを決定した。また、中央銀行は、4月にもさらに政策金利を引き上げる可能性にも言及している。政策金利は、新型コロナウイルスの影響等により段階的に引き下げられており、1年9か月ぶりに引き上げに転じた。
- 中央銀行は、第1四半期の消費者物価の伸び率は予測よりも高くなっており、内需の回復は予想よりも早く進み、多くの分野で生産量の成長のペースを上回っており、外国での追加予算支援措置と新型コロナウイルスの予防接種率の増加を背景に外需の期待も改善し、インフレ期待が高い水準にあると説明した。
- また、現在のインフレは中央銀行の予想を上回っており、2月の消費者物価の年間インフレ率は1月の5.2%から5.7%に上昇し、3月15日時点では5.8%だったと報告した。また、インフレ率は3月にピークに達し、その後低下し続けると予想し、現在の金融政策を考慮すると、2022年上半期に中央銀行の目標である約4%に戻り、この水準を維持すると予測した。
(2) 対外関係
1) 米国
Nord Stream 2に関与する企業に制裁の警告
- 米国国務省は、3月18日、プレスリリースでBlinken国務長官の声明を発表し、Nord Stream 2パイプラインの完成に関与する企業に向けて、制裁の警告を発した。
- 同長官は、バイデン大統領がNord Stream 2がドイツやウクライナ、中央東欧州の同盟国にとって悪い取引であると述べたことを想起し、米国国務省がNord Stream 2パイプラインを完成させるための取り組みを追跡しており、関与する企業の情報を評価していると述べた。
- 同長官は、プレスリリースの中で、Nord Stream 2が欧州を分割し、エネルギー安全保障を弱めることを目的としたロシアの地政学的プロジェクトであると評価し、2019年に可決され、2020年に拡大された米国の制裁法は議会の過半数で大きな支持を得ているとしている。また、バイデン政権は法を遵守すると述べ、Nord Stream 2に関与する企業に対し、米国の制裁措置のリスクがあり、パイプラインの作業を直ちに放棄するように繰り返し警告していると述べた。
2) 米国・EU
ロシアの人権侵害に対して制裁を発動
- EUは、3月2日、ロシアが野党指導者のNavalny氏に関連し、逮捕抑留、平和的集会・結社の自由の制限、意見及び表現の自由への抑圧を含む、ロシアでの深刻な人権侵害に対し、制裁を課すことを発表した。EUは2020年12月に世界的な人権侵害に対する制裁体制を採用しており、今回はこれを適用した初の事例となる。
- 制裁が課されたのは、ロシアの連邦捜査委員会委員長を含む政府高官4名。制裁には、旅行禁止と資産凍結が含まれ、EU内の個人及び団体は、直接的間接的に制裁対象となる人々へ資金提供することを禁じられる。EUは2020年12月にもNavalny氏の毒殺未遂事件に関与したとして、ロシアの6人の個人と1つの団体に制裁を課している。
- また、米国国務省もEUのこの決定を歓迎するとして、3月2日、2020年8月にNavalny氏の暗殺未遂にロシアの化学兵器が利用されたこと、同氏が2021年1月に収監されたことを非難し、それに対応するEUと協調すると発表した。同時に米国は、2018年に英国でSkripal氏に化学兵器が使われた際にロシアに課した制裁を拡大し、国防省次官を含む政府高官7名と、14団体に対して制裁を課した。
- ロシア外務省は、3月2日、米国の制裁に関してZakharova報道官のコメントを発表した。報道官はコメントの中で、米国が内部の問題を背景に外部の敵のイメージを作ろうとしているとして、米国がロシアの内政干渉を継続するための口実に過ぎないと評価し、ロシアはこれに我慢をするつもりはない、相互主義の原則に基づいて反応すると述べ、制裁に対して報復する姿勢を示した。
3) トルコ
Akkuyu原子力発電所3号機の起工式を開催
- プーチン大統領は、3月10日、トルコのエルドアン大統領とともに、トルコのAkkuyu原子力発電所3号機の起工式にオンラインで参加した。Akkuyu発電所は、2010年に署名された政府間協定に基づいて、Rosatomによって建設されている。同日、発電所の基礎にコンクリートが注入され、3号機の建設が開始された。
- 発電所は、全部で4基の建設が計画されており、合計4,800MWの発電容量となる予定。1号機は2018年4月に起工式が行われ、トルコの建国100周年となる2023年に稼働開始を予定しており、4号機は来年に建設が開始される予定とされている。
- エルドアン大統領は、式典の中で、トルコの経済が成長するにつれて、信頼性が高く、途切れることのない手頃な価格のエネルギーに対するニーズが高まると述べ、エネルギーへの投資は将来への投資を意味することだと説明した。また、トルコはエネルギープロジェクトの多様化に取り組んできており、エネルギー効率と再生可能エネルギーを非常に重要視し、ゼロエミッションで環境に害を及ぼさない原子力はトルコのエネルギー政策において特別な位置を占めていることを指摘した。さらに、将来的にトルコが原子力国になり、原子力がエネルギーの10%を賄うことになると説明した。また、このプロジェクトはロシアとトルコの協力の象徴の1つであり、今後も共に新たなプロジェクトを展開して行く、プーチン大統領もこの協力に強い意欲を示していると述べた。
4) インド
ロシアとインドがガスに関するタスクフォース設置に合意
- ロシアエネルギー省は、3月2日、ロシアとインドの間でガスに関するタスクフォースを設置することで合意した。このタスクフォースは、2国間の貿易経済・科学・技術・文化協力の政府間委員会のエネルギー・省エネ分野協力作業部会の枠組みの中で活動する。この合意は、モスクワでのIndian Energy Officeの開設式典に際し、エネルギー省のSorokin次官が発表した。
- Sorokin次官は、Indian Energy Officeはインドの主要エネルギー企業とロシアのビジネスの対話の確立に貢献するだろうと説明した。また、これらのインドの主要企業は、LNG、エンジニアリング、生産、精製などのエネルギー分野の代表的な存在であり、Indian Energy Officeは、ロシアとインドの協力を強化する新たな画期的なツールとなると期待していると述べた。さらに、新たな地域での石油生産の共同プロジェクトなど、新たな分野を開発する共同プロジェクトへの投資を増加させる非常に大きなポテンシャルを有しているとし、式典でもロシアとインドの間での有望な協力分野についての議論が行われた。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2021年1月15日から2021年2月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD56.99595/バレルとなり、3月の原油輸出税はUSD6.8/バレルに引き上げられた。
- 3月の石油製品輸出税はUSD14.8/トン、ガソリンについてはUSD27.2/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 3月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,334万トン(約3億1,638万バレル、平均日量1,025万バレル)で、前年同月比9.3%減。
- 3月、原油輸出量は1,770万トン(約1億2,920万バレル)で、前年同月比18%減。
(3) 減産合意
4月にロシアはさらに日量13万バレルを増産
- OPECプラスは、3月4日、サウジアラビアのAbdulazizエネルギー大臣とロシアのNovak副首相を共同議長とし、第14回閣僚会合をテレビ会議形式で開催した。
- 会議では、ロシアとカザフスタンを除いて、4月も3月と同じ生産量を維持することが合意された。ロシアとカザフスタンについては、季節的な消費傾向を理由に、ロシアは日量13万バレル、カザフスタンは日量2万バレルの増産が認められた。
- また、OPECプラスは、サウジアラビアが2月から2ヶ月間実施するとした日量100万バレルの自主的な生産削減が、石油市場の安定を支えたことに感謝の意を示し、また、4月もこの削減を延長したことを称賛した。
- 減産合意の全体的な順守率は103%であり、参加国はこの結果を歓迎した。また、これまで合意を満たせていない国の減産量については、2021年7月末まで補償期間を延長することで合意された。
- Novak副首相は、3月5日に発表されたプレスリリースの中で、我々は積極的に予防接種を行なっており、多くの厳しい禁止措置が解除されて人口の流れが増えており、燃料の需要は昨年の春よりも高くなっているとして、需要の季節性から生産量の増加が非常に重要で、ロシアでの石油製品の安定した需要を満たすために、石油精製量を増やす必要があると説明した。
- また、Novak副首相は、3月10日、プーチン大統領にOPECプラス閣僚会合の結果と市場の状況について報告した。同副首相は、OPECプラスでの合意は、大統領の支援と、常に注意を払っているおかげであると述べ、今回の合意により、ロシアの石油生産は2020年5月6月に実施されていた最大減産量の45%にあたる日量89万バレルを回復すると説明した。また、2月以降にロシアに認められた追加の生産量により、ロシアの業界の追加収入は約1,250億ルーブルとなり、連邦予算の収入、国内市場向けの石油製品供給につながると述べた。
- 石油の市況については、Novak副首相は、2020年に世界需要が日量2,000万~2,200万バレル減少していたが、現在は減少量は約550万バレルまで回復し、最終的な回復は2022年になるとの見通しを示した。原油価格も2021年年初からの平均価格が約60ドル/バレルとなり、この水準では今年の国民福祉基金への追加収入は約2.5兆ルーブルとなる見込みを示した。市況の見通しでは、予防接種の開始が前向きな要因である一方、欧州では予防接種の開始にもかかわらず、制限措置が実施され、人口の流れが少なく、商業輸送の回復は以前のレベルの60%に留まると指摘した。また、原油価格の上昇により、OPECプラスの非加盟国も生産を増加させるリスクがあることも指摘した。Novak副首相は、引き続き市場の状況を監視し、需要の拡大に伴い、生産量を増加させ、将来的に投資を増加させるために、パートナー国との協力を継続して行くと説明した。
(4) 天然ガス生産
- 3月、天然ガス生産量は667億立方メートル(約2.4TCF)で、前年同月比で12.1%増。
2035年までの長期LNG生産開発計画を承認
- ミシュスチン首相は、3月22日、2035年までの長期LNG生産開発計画を承認したと発表した。これにより、ロシアのLNG生産量は2035年までに約3倍となる1億4,000万トンに達する可能性があるとされている。この数値は、2020年6月に承認された2035年までのエネルギー戦略の目標値と一致する。
- 計画では、既存プロジェクト、推定プロジェクト、可能性のあるプロジェクト、潜在的なプロジェクトの分類で21のLNG輸出プロジェクトが記載されている。このうち、可能性のあるプロジェクトまでが実現されれば、LNGの生産量は約1億4,000万トンに達する。
- ミシュスチン首相は3月22日の政府の会議の中で、この計画は、ガス供給源の多様化を目的としており、特に北極圏の大陸棚と極東の資源を積極的に利用することを目的としていると述べ、この目的のために、LNG分野や関連業界でプロジェクトを実施する投資家にとって魅力的な条件が創出されると説明した。ただし、計画の最も重要な前提条件はロシアの技術の使用の拡大であり、ガスの精製液化、特殊なコンプレッサー、極低温用機器、独立型LNGエネルギーコンプレックス、統合制御システム等のLNG生産に必要な機器を製造できるロシア企業には政府の支援策が提供されるとしている。
- また、輸出用LNGだけではなく、小規模なLNG生産も計画に含まれており、ロシア国内の主要なパイプラインから遠く離れた地域のガス化を促進するためのインフラ開発、ガスエンジン燃料のより積極的な使用のための国家支援措置を拡大し、生産量の増加と同時に国内消費量を増やすための基盤を構築することが計画されている。
- 計画によると、計画に記載されたプロジェクトにLNGの輸出権を与えるための法案が2021年5月までに検討されることになっている。
(5) 北極海航路
スエズ運河よりも北極海航路の輸送料を下げる政策が必要
- Trutnev副首相兼極東連邦管区大統領全権代表は、3月31日、北極海航路のインフラ開発に関する会議を開催した。
- 会議の冒頭で、Trutnev副首相は、過去数年で数々の大統領令や政策を発表し、政府がロシアの北極圏開発に大きな注意を払っていることに触れ、ロシアの北極圏が世界最大の経済特区となっており、過去5年間で北極海航路の交通量は5.5倍に増加し、2020年に3,300万トンに達していると述べた。また、政府が支援している理由を覚えている必要があると述べ、政府の最優先事項は、北極圏に快適な生活と労働条件を作り出すことであると強調し、北極圏は厳しい気候条件のために、鉄道、舗装道路、海と川の輸送などの輸送インフラが未発達で、北極圏地域への輸送や北極圏で採掘された資源の輸出を制限していると説明した。
- Trutnev副首相は、現在、北極海航路がスエズ運河に比べて貨物輸送の経済的効率が劣っていることを念頭に、北極海航路はスエズ運河よりも短く、その輸送料がより高価であってはならず、もしも別の政府支援が必要ならば、それを実施しなくてはならないと述べた。報道によると、Trutnev副首相は北極海航路がスエズ運河に比べて30%高いと報告している。
- 3月29日付けの報道によると、スエズ運河で3月23日に起きた座礁事故を受け、エネルギー省は北極海航路によりアジアと欧州間の輸送期間を大幅に削減することができ、貨物輸送量を拡大する大きなポテンシャルを有していると述べ、ロシアの特殊な地理的条件のおかげで、主要なエネルギー消費者に近く、供給の速度に利点があると強調した。さらに、3月31日付けの報道によると、Chekunkov極東北極圏発展大臣も海上輸送に関するイベントの中で、スエズ運河での事故を受け、北極海航路開発の緊急性が高まっていることを示したと述べ、2024年までに輸送量を8,000万トンに増加させるという大統領の支持に従わなくてはならないと付け加えた。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
Vostok Oilプロジェクトの石油輸出ターミナル計画を承認
- 政府の評価審査機関であるGlavgosekspertizaは、3月22日、Vostok Oilプロジェクトの石油輸出ターミナルとなるエニセイ湾のSever港の第1段階の建設に関するエンジニアリング調査について、肯定的な結論を出したと発表した。プロジェクトは3段階で計画がされている。
- 石油輸出ターミナルは、Taimyr半島のDikson港を拡張して建設される。ターミナルは、タンカーへのPayakhaクラスターからの原油をタンカーに積み替え、北極海航路により欧州とアジア大洋州の国々に輸送するために設計されている。
- Sever港は全長1,275.9メートルのバースを持ち、第1段階のインフラでは、原油輸出量は年間3,000万トンとなる見込み。また、第1段階の準備と並行し、Vostok Oilは取扱量を2030年までに年間1億トンに拡大するための第2段階、第3段階の設計を2021年3月に開始している。
- RosneftはVostok Oilプロジェクトを通じて、2024年までに3,000万トンの原油を北極海航路で出荷することを目標としている。
(2) Gazprom
Shellとの5年間の戦略的協力協定に署名
- Gazpromは、3月16日、GazpromのMiller社長と、ShellのBen van Beurden社長が、テレビ会議形式で署名式を行ない、Shellとの5年間の戦略的協力協定に署名したと発表した。2社の戦略的協力協定は2015年にも署名されている。
- 署名された文書では、特にエネルギー市場の研究、バリューチェーン全体でのプロジェクトの実施、デジタル化技術の協力、温室効果ガスの削減などに注目されている。
- 両社長は、GazpromとShellの最近の協力の成果を確認した。特にSakhalin 2では、2020年に過去最高となる1,160万トン以上のLNGを生産出荷した。
- 会議の中では、欧州のエネルギー部門の脱炭素化についても議論され、環境に優しい天然ガスは欧州の気候変動対策目標を達成する上で重要な役割を果たすことができると指摘された。
- Miller社長は、GazpromとShellが協力の発展に新たな一歩を踏み出したとし、協定の署名が我々の共同作業が良い結果をもたらしていること、また、短期的長期的に野心的な目標を設定したことを証明していると述べた。また、我々が蓄積した経験は新しい将来の成果を保証するとして、2社の協力の重要性を強調した。
Ust-Lugaガス処理施設の請負業者をLindeに変更する方針
- Gazpromは、3月15日、RusGazDobycha社とUst-Lugaで計画しているガス処理施設でのNIPIGAZ社(Siburグループ)とのEPC契約を終了することを発表した。Gazpromによると、この決定はプロジェクトのコストを最適化するために行われたとされている。
- EPC契約は、ガス処理施設とオフサイト施設の建設、作業文書の作成、機器と材料の供給、建設、設置、試運転作業、各施設の統合作業が含まれていた。この作業を実施する請負業者は近い将来決定され、請け負う業者の交代はプロジェクトのスケジュールに影響を与えないとしている。
- また、続く3月26日、GazpromのMiller社長は、Linde社のWolfgang Reitzle会長とサンクトペテルブルクで会談を行った。この中で、Miller社長とReitzle会長の立ち合いのもと、Ust-Lugaガス処理施設のオペレーターであるRusKhimAlyansとLinde EngineeringがEPSS契約の基本条件の概要を示した文書に署名した。文書にはエンジニアリング、機器の供給、ガス処理施設とオフサイト施設の保守を提供するための条件が示されている。Lindeは、建設中のアムールガス処理施設でもガス処理の機器を提供している。
- また、政府の評価審査機関であるGlavgosekspertizaは、3月19日、Ust-Lugaガス処理施設のガス処理プラントとLNGプラントの建設に関する設計文書とエンジニアリング調査の結果をレビューし、肯定的な結論を出したと発表している。
- Ust-Lugaガス処理施設では年間45BCMのガスを処理し、年間1,300万トンのLNGと、エタン、LPG、ペンタン-ヘキサン留分を生産する。また、生産されたエタンから、最大300万トンのポリエチレン製品を生産する。Gazpromは長期契約により、20年以上、このガス処理施設に天然ガスを提供することになっている。
(3) Novatek
Yamal LNGで、2022年にCCSプロジェクトの最終投資決定予定
- 報道によると、NovatekのGyetvay副会長は、3月3日、Yamal LNGプロジェクトの中で、2022年初頭にCCSプロジェクトの最終投資決定を目指していると、エネルギー関連イベントの中で発表した。
- 同副会長は、LNGの消費者が、温室効果ガスの排出量の少ない天然ガスを求めているため、Novatekが二酸化炭素の処分と、事業での排出量の削減の選択肢を評価していると述べた。また、Yamal LNGについては、LNG 1トンあたりのCO2排出量は0.26トンで、業界の平均は約0.4トンであると伝えた。
- さらに同副会長は、NovatekはこれまでにYamal LNGにガスを供給しているSouth Tambey鉱区で地質調査を行ない、どの貯留層が炭素貯留に利用でき、どこに注入井を掘るべきか分かっていると述べ、Novatekの全てのポートフォリオでも同様に炭素注入がどこで可能か、調査を行っていると伝えた。
- また、ロシアには炭素注入のための法律がないため、これから規制プロセス構築に取り組むとしており、これを念頭に、Yamal LNGプロジェクトの株主は2022年所長までにCCSプロジェクトの最終投資決定ができるだろうとの見通しを示した。
- Novatekは2月にもBaker Hughes社と、天然ガスとLNG生産から炭素排出量を削減することを目的とした協力協定に署名しており、気候変動対策の取り組みを加速させている。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Arctic LNG 1
North-Gydanskiy鉱区を7億7,539万ルーブルで取得
- Novatekは、3月24日、Arctic LNG 1が、ヤマロネネツ自治管区のギダン半島に位置するNorth-Gydanskiy鉱区の地質調査探査・生産のためのライセンスを、オークションを通じて取得したと発表した。鉱区の面積は6,550平方キロメートルで、一部にカラ海のギダン湾の浅海が含まれる。新たな鉱区は、既存のNovatekの資産と隣接しており、LNGプロジェクトを実施するための資源基盤を拡大できるとしている。
- 同鉱区の炭化水素の資源量は、ロシア基準で石油換算98億バレルと見積もられ、ライセンス期間は30年、オークションでは7億7,539万ルーブルで落札された。
- 2月3日付けの報道によると、オークションの参加には生産されたガスがヤマル半島またはギダン半島でLNG生産を行なうライセンスを既に保有していることが条件とされており、この条件の対象となるのはNovatekのみだったとされる。実際に、今回のオークションに参加したのはNovatekの子会社のArctic LNG 1とObskiy LNGの2社だった。
- また、Novatekは2016年にLNGクラスターを形成するための鉱区を確保するように天然資源省に要請し、2019年以降、Novatekの依頼によってこれらの鉱区のオークションが順次開催されており、今回のオークションもこの一つとされている。
(2) Nord Stream 2
デンマーク海域での作業は2021年第3四半期までに完了予定
- 3月31日付けの報道によると、Nord stream 2のパイプライン敷設作業を行なうとされている船舶AkademikCherskiyがデンマークのBornholm島の南にある作業水域に到着した。Akademik Cherskiyはメンテナンスのためにバルト海のカリーニングラードに停泊していたが、3月30日の午後、作業水域に向けて出発した。
- デンマークの海域では、Fortunaが2月6日から作業を開始しているが、アンカーを利用しているため、作業が遅いとされている。ダイナミックポジショニングシステムを備えたAkademik Cherskiyはより早くパイプラインの敷設作業を行なうことが期待されている。
- 2019年12月に米国制裁によりスイスのAllseas社がNord Stream 2のパイプ敷設作業から撤退した後、Gazpromが保有するAkademikCherskiyは2020年2月に極東のナホトカ港から欧州に向けて移動を開始した。Novakエネルギー大臣(当時)は、AkademikCherskiyがNord Stream 2の建設に着手するためには同船舶を改造する必要があるとも述べており、これまでに同船舶の改造が行われたものと見られている。
- 3月17日付けの報道では、Denmarkの排他的経済水域でのNord stream 2パイプイラン敷設作業は、2021年第3四半期まで継続されると報じられている。
以上
(この報告は2021年4月22日時点のものです)
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