ページ番号1009050 更新日 令和3年6月2日
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概要
- 中国の天然ガス需要は安定的に伸び、国内生産、輸入ともに増加する見通しであり、パイプライン、LNG輸入インフラの整備が進んでいる。LNG受入基地は新・増設により受入能力が2021年に100MMt、2025年には150MMtを超える見通しである。
- 中国のLNGサプライチェーンは国有3社による生産(輸入)~卸売のワンストップ型から地方政府系・民間事業者の参入が進み、調達・販売手法も多角化した。
- 地方政府系・民間事業者による自社受入基地の保有あるいはLNG受入基地の出資者としてのLNGの直接輸入が増加している。現状自社基地やLNG契約量は限定的だが、地方政府系・民間事業者はLNG受入基地の新増設を進めている。スポット比率が高く、価格に敏感な地方・民間事業者はアジアのLNG市場のかく乱要因となる一方で、LNGサプライヤーにとり新たな買主として浮上した。
- PipeChinaのLNG受入基地開放が始まり、BP、Shellなどが申請したが、契約には至らなかった。
- Shellなどメジャーズを中心とする外国企業は、地方政府・民間事業者(LNG受入基地を操業・計画中あるいは地域ガスグリッドをおさえる)と提携し、中国のガス小売市場への参加や事業機会を追求している。
- また、取引所を利用した天然ガス・LNGの調達やトラック・コンテナLNGの流通拡大により、LNG受入基地の保有や出資を行っていないLNGトレーダーが台頭し、中国の導管未整備地域の市場開拓やサプライチェーンの変化に一役買っている。西部ガスやPetronasはこれらのLNGトレーダーと提携し、成長著しい中国の小規模LNG市場に進出した。
- 中国のガスサプライチェーンはこれからも変化し、様々な事業機会が生まれることが見込まれ、今後も目が離せない。
SIA Energy、CNPC-ETRI他各種資料
1. 中国の天然ガス需給、輸入インフラの状況
(1) 天然ガス需給、分野別消費
2020年の天然ガス消費は前年比7%増の328Bcm(240MMt)である(生産と輸入の合計から香港・マカオ向けの5Bcmを除き、在庫を加味しない)。国内生産は前年比9%増の193Bcm、輸入は同5%増の140Bcm(102MMt)、輸入比率は42%であった。2020年の天然ガス輸入量は前年比5%増の102MMt(140Bcm)。LNGの輸入量は前年比11%増(9Bcm≒6.5MMt増)の67MMt(93Bcm)、パイプラインガスの輸入量は前年比4%減(2Bcm≒1.6MMt減)の48Bcm(35MMt)である(図1)。
2020年初は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う産業活動の低迷で需要が落ち込み、2月にはCNOOCなど国有石油企業がLNGの輸入についてフォースマジュールを宣言した。一部カーゴの遅滞やダイバートが生じたが、感染収束後は景気刺激策もあり需要が伸長し、需要は通年では増加に転じた。
供給の6割を占める国内生産は大気汚染への対応のため石炭から天然ガスへの転換政策が継続していることや、政府が地政学リスクの上昇や米国他との関係悪化を受けて国有石油企業に国内生産強化を働きかけていることで増加が続いている。今後国内生産のけん引役となることが期待されるシェールガスの生産は前年比30%増の20Bcmに増加し初めて国内生産の10%を超えた(国内消費の6%)。しかし政府の設定した目標(2020年30Bcm)は達成できなかった。
CNPC経済技術研究院(以下、CNPC-ETRI)によると、2020年分野別の消費は工業用が40%、都市ガスが31%、発電が17%、化学・肥料が12%である(図2)。
工業は前年比9.3%増の129Bcmであった。地方のインフラ整備でガラスや鋼材需要が増加した。都市ガスは前年比5.1%増の100Bcmであった。2020年は大気汚染対策である「青空防衛戦3年行動計画」の最終年にあたり、北京・天津などの華北や揚子江デルタの重点都市で石炭から天然ガスへの転換が進み、都市ガス利用者は3.9億人から4.1億人に増加した。発電は前年比7.7%増の57Bcmであった。ガス火力発電量は7.5%増(総発電量の伸び3.5%増を上回る伸び)、ガス火力設備容量は800万kW増加し9,800万kW(発電設備容量全体の4.5%)に増加した。化学、肥料は前年比4.5%増の40Bcmだが前年に比べ伸びが鈍化した。政府の食糧供給強化政策に伴い肥料向け需要は増加したが、化学向けはメタノールの需要軟化と価格低下で伸び悩んだ。
今後5年の中国の天然ガス需要について年6%程度の安定的な伸びが続き、国内生産・輸入ともに増加するという見方が多い。
CNPC-ETRIは2021年の天然ガス供給見通しについて国内生産が前年比6%増の204Bcm、輸入ガスは同13%増の177Bcm、第14次五か年計画(2021~2025年)期間中の天然ガス消費は年平均5.7%増加し420~440Bcmに達すると見ている。コンサルタントのSIA Energyは2025年天然ガス生産を245Bcm≒179MMt、輸入ガスを202Bcm≒147MMt(このうちLNGは126Bcm≒92MMt、パイプラインガスは77Bcm≒56Bcm)と見ている(図3)。
(2) 輸入インフラの状況
2020年時点で輸入LNGは天然ガス供給の27%を、パイプラインガス輸入は同14%を占めている。石炭から天然ガスへの転換政策による需要の増加をLNGの輸入で対応したことで2017年にLNGの輸入がパイプラインの輸入を上回った(図4)。
GIIGNLによると2020年に中国は世界のLNG輸入の19%を占める世界2位の輸入国となり、日本(74MMt)との差は5.5MMtに縮まった。2021年には中国のLNG輸入量は75MMtに増加し、日本を上回り世界1位の輸入国になるのはもはや時間の問題である。
中国は天然ガスの季節間需要差が拡大していることが課題で冬季の天然ガス不足発生に備え、天然ガス貯蔵設備の増強(地下貯蔵・タンク)、LNG長期契約における調整(冬季の輸入量を厚くする)、ガス不足発生時の需給調整(「緊急時供給保障計画」を策定し、家庭用のガス供給を確保した上で、学校、病院、老人福祉施設、集中暖房(熱・ガス供給)、公共バス・タクシー向けに優先的に供給を行い、工業向けをリストに基づき停止)を行うなどダメージを最小限に抑える努力をしている。しかしそれでも急激な寒波でガスが不足した場合、国産ガス・輸入パイプラインガスよりも機動的な調達が可能なスポットLNGを輸入することになり、北東アジアLNG市場に価格の上昇などの影響が生じる。中国の1次エネルギーに占める天然ガスの比率は約8%、LNGのみでは3%程度であり石炭・石油へのスイッチも可能である。LNGへの依存が高い日本により大きな影響が生じる可能性がある。
(2)-1. 輸入パイプラインガス
2020年のパイプラインガス輸入は前年比4%減(2Bcm≒1.6MMt減)の48Bcm(35MMt)で供給の14%であった。中国のパイプラインガス輸入はCNPC(PetroChina)がほぼ独占的に契約しており、中央アジアのトルクメニスタンからの輸入が供給の20%、カザフスタンが5%、ミャンマーとウズベキスタンが各3%、ロシアはパイプラインガスのみでは3%(LNGを合わせると供給の8%)を占める。パイプラインガスはロシアからの輸入は増加したが、PetroChinaがトルクメニスタンの自社上流権益分の輸入を抑制したことや供給障害により前年比で減少した。
輸入パイプラインガスはロシアの“Power of Siberia”(“シベリアの力”)パイプライン(図5)からの増量で2025年には現在の48Bcm(35MMt)から80Bcm(58MMt)に増加する見通しである。同パイプラインは2019年12月に稼働した。ロシア区間は2,864キロメートル(チャヤンダ-ブラゴヴェシチェンスク2,160キロメートル稼働中、コヴィクターチャヤンダ704キロメートル)で中国区間は北部と中部と南部の3区間に分かれており合計5,111キロメートル(3区間計3,371キロメートル新設および既存ライン1,740キロメートルの活用)である。北部は黒竜江・黒河から吉林・長嶺間752キロメートルで2019年12月に稼働した。中部は吉林・長嶺から河北・永清間1,110キロメートルで、2019年7月着工、2020年12月に稼働した。南部の河北・永清から上海・白鶴嶺間1,509キロメートルについて2020年7月に着工し、2025年6月稼働予定である。設計輸送能力は年38Bcmで供給源は東シベリアのチャヤンダ、コヴィクタガス田である。2014年5月に売買契約を締結、年38Bcmで、供給開始から30年間である。供給は逓増させる契約となっており、2021年は10Bcm、2025年に38Bcmとなる(図6)。
また2021年4月に露Gazpromはモンゴル経由中国向けガスパイプライン“Soyuz Vostok”(設計輸送能力年50Bcm)の事業化調査(FS)について承認した。Gazpromは西シベリアのガスを中国西部新疆向けのパイプライン(西ルート)からモンゴル経由でダイレクトに消費地華北に向かうルートに切り替えた模様である。中国は元々モンゴルルートについて反対していたようだが、本件について旗幟を鮮明にしていない。経由国が増えることはリスクだが消費地北京(環渤海地域)に近いというメリットがあり、以前ほど抵抗は少ないのではないか。とはいえFSの結果が出ていない現時点では足元を見られないようにしているとも考えられる。モンゴル経由ルート実現の場合、輸送能力は将来140Bcm(102MMt)に達する可能性がある。
(2)-2 輸入LNG
2020年のLNG輸入量は前年比11%増(9Bcm≒6.5MMt増)の67MMt(93Bcm)であった。LNG輸入は前年比COVID-19による需要減で一時LNGカーゴの滞船やダイバートが生じたが、経済回復や安価なスポットLNG調達増加で前年並みの増加となった。
中国のLNG受入能力は既存基地の増強により2020年に11MMt増設し受入能力は87MMtとなった。2020年に国有石油会社からパイプライングリッド会社国家石油天然ガス管網集団公司(PipeChina)が買収した広西・北海(Beihai)受入基地は3MMt増強し、受入能力は6MMtとなった。CNOOCや浙江能源(Zhejiang Energy)の浙江・寧波基地は3MMt増強し、受入能力は6MMtとなった。民間事業者の広匯(Guanghui)の江蘇・啓東(Qidong)受入基地は1.85MMt増強し、受入能力は3.4MMtとなった。申能(Shenergy)やCNOOCの上海・洋山(Yangshan)受入基地は貯蔵タンクを40万立方メートル増設した。Sinopecの天津・南港(Tianjin)受入基地は3MMt増強し、受入能力は6MMtとなった(表1)。
LNGの輸入インフラの整備はPetroChinaを含む国有石油企業3社に加え、地方政府系・民間事業者が行っており、彼らも含めたLNG受入基地の新・増設により受入能力は2021年に100MMt、2025年には150MMtを超える見通しである(図7)。
表 1:LNG受入基地増設(2020年)
2. 中国のLNGサプライチェーンに生じた変化
天然ガスの国内生産は主に国有石油会社3社(PetroChina、Sinopec、CNOOC)が、パイプラインガスの輸入(中央アジア、ロシア、ミャンマー)はCNPC(PetroChina)がほぼ独占的に行っている。
中国のLNGサプライチェーンは国有石油会社が外資サプライヤーとLNG売買契約を締結し、LNG受入基地の操業を主体的に行い、都市ガス会社にガスを卸販売することが一般的であったが、地方政府系・民間の都市ガス事業者ならびに地域グリッド(ガス・電力)事業者(図8)による受入基地の建設あるいは出資者としての基地利用によるLNGの直接輸入が増加した。さらに上海石油天然気交易中心(SHPGX)などの取引所を通じた調達あるいはLNG受入基地を一時的あるいは一定期間利用するによる調達も行われるようになった。これによりLNG受入基地の保有や出資を行っていない事業者によるトラック・コンテナLNGによるエンドユーザーへの直接販売が増加した。2020年にはPipeChinaが国有石油企業3社からLNG受入基地7基地の買収、操業権を獲得するとともに、そのうち6基地について2021年の余剰能力を開放し、2021年2月に32社と契約した。このように中国のLNGサプライチェーンは国有3社による生産(輸入)~卸売のワンストップ型から地方政府系・民間事業者の参入が進み、調達・販売手法が多角化した(図9)。
(1) LNG輸入事業者の多角化(地方政府系・民間事業者の輸入増加)
地方政府系・民間事業者による自社受入基地あるいはLNG受入基地の出資者としてのLNGの直接輸入が近年増加している。2020年に地方政府系・民間事業者の天然ガス供給に占めるシェアが初めて10%を超えた(図10)。これら地方政府系・民間事業者のLNG輸入上位事業者のうちトップ3は上海市のグリッド(ガス・電力)事業者の申能(Shenergy)、中国の200都市以上に都市ガスを供給する民間事業者新奥(ENN)、民間LNG供給事業者広匯(Guanghui)である。これらの事業者はいずれも自社LNG受入基地を操業中である(図11)。
この他のLNG輸入上位企業は広東省広州市の都市ガス事業者広州燃気(Guangzhou Gas)、民間のLNG供給事業者九豊集団(JOVO)、広東省グリッド事業者の広東能源集団(Guangdong Energy Group; GEG)、広東省を含む複数都市に都市ガスを供給する深圳燃気(Shenzhen Gas)、佛燃能源(Foran Energy)、グリッド(発電)事業者の深圳能源(Shenzhen Energy)である。
民間のJOVOは広東省東莞(Dongguan)でLNG受入基地(1MMt)を操業中である。JOVOは2020年11 月 にPipeChina の海南・洋浦 (Yangpu)LNG受入基地を利用し、輸入した LNG の積み出しを行った。JOVOの東莞基地は9万立方メートル以下の中小型LNG船しか接岸できず、Petronasなどとの中小型LNG輸送船ベースの売買契約を有していたが、PipeChinaの基地を利用し、中小型船に積み替えることでLNGの輸入や自社基地への供給拡大を実現した。
JOVO以外はいずれも広東省を拠点とする地方政府系の都市ガスまたはグリッド事業者だ。彼らは広東省大鵬(Dapeng)受入基地(6.8MMt)や珠海(Zhuhai)受入基地(3.5MMt)に出資しており、出資者として受入基地を利用しLNGの直接輸入を行った。
(2) 地方政府系・民間事業者のLNG輸入
(2)-1. 地方政府系・民間事業者におけるスポット比率の高さ
SIA Energyによると中国の2020年のLNG輸入(67MMt)におけるスポット調達比率は28%(19MMt)である。国有3社のうち、受入基地・貯蔵設備の新増設が進むSinopecのスポットLNGの比率が40%を超えるが、長期契約を抱えるCNOOC、PetroChinaのスポットLNGの比率は5%程度である。
一方、2020年のLNG輸入に占める地方政府系・民間事業者の比率は19%(12.8MMt)だが、彼らのスポットLNG調達比率は40%と高く、中国のスポットLNG調達の3割弱を占める存在である。地方政府系・民間事業者は自前のLNG受入基地やLNG売買契約が限られる中、LNG受入基地の出資者としての利用(TUA)によりスポットLNGを積極的に輸入している。
(2)-2. メジャーズのマーケティング
スポット比率が高く、価格に敏感な地方政府系・民間事業者はアジアのLNG市場のかく乱要因となる一方、LNGサプライヤーの新たな買主として浮上した。BPなどのメジャーズを含む外国企業による地方政府系・民間事業者へのLNGマーケティングが積極的に行われている(表2)。
表 2:外国企業による地方政府系・民間事業者へのLNGマーケティング事例
2020年4月、BPは新奥集団(ENN)ならびに、佛燃能源(Foran Energy)とLNG売買契約を締結した。期間は2021~2022年の2年間で、契約量はそれぞれ年30万トン(BPポートフォリオ、DES)である。
BPは2021年1月25日に自社が輸入したLNGについて中国顧客に直接供給を開始したと発表した。同社は2006年に稼働した中国初のLNG受入基地である広東・大鵬(Dapeng)受入基地(6.8MMt、2006年稼働)に30%出資しており、同基地利用契約(TUA)年60万トンを締結しており、1月24日に最初のカーゴが大鵬基地に到着した。同基地で受け入れたLNGをENNとForan Energyに供給した。BPはプレスリリースにおいて「中国で完全に統合されたガスバリューチェーンを実現した」と述べている。
2020年7月、広東省グリッド事業者の広東能源集団(GEG)と三菱商事子会社 Diamond Gas International(DGI)は期間4年(2020年から23年の4年間で16カーゴ)のLNG売買契約を締結した。GEGにとり外国企業との初のLNGの期間契約であり、DGIにとり初の中国向けLNG期間契約であった。広東能源は6%出資する広東大鵬(Dapeng)受入基地のTUAによりLNGを輸入する。
上海市のグリッド(ガス・電力)事業者の申能(Shenergy)は2020年9月から2021年4月にかけてCentrica(2024年から2029年、年50万t)、Novatek(15年間で300万トン)、Total(年140万トン)と立て続けにLNG売買契約を結んでいる。
(3) PipeChina、LNG受入基地の2021年の余剰能力を開放
PipeChinaは2020年に国有石油企業3社からLNG受入基地7基地(受入能力計27.6MMt)を取得した。2020年12月、PipeChinaは取得が12月にずれ込んだ大連受入基地を除く6基地(受入能力計21.6MMt)について2021年(2021年2月~2022年2月)の余剰能力を開放した。6受入基地のバース余剰能力は平均54万トン/月(最低は12月の27万トン、最高は3月の68万トン)である。PipeChinaはバース余剰能力の他にタンク余剰能力と輸送余剰能力を公開しており、タンク余剰能力は平均132万トン/月、最低は6月の107万トン、最高は11月の148万トン、輸送余剰能力は平均98万トン/月、最低は12月の69万トン、最高は4月の125万トンである。
PipeChinaの余剰能力を開放に対し82事業者から使用権について申請があった。PipeChinaは82社のうち54社をショートリスト、外資ではBP、Shell、韓国SK E&S子会社Prism Zhoushan、シンガポールRoyal Golden Eagleがショートリストされていた。
2021年2月、PipeChinaは最終的に32社と契約したが外国企業は中国政府と密接なシンガポールRoyal Golden Eagle子会社のRudong Jintai Natural Gas Tradingが唯一契約し、BP・Shell・SKのいずれも契約に至らなかった(表3)。契約企業の中にはLNG受入基地操業、建設中、計画中の事業者が複数含まれる。LNG受入基地(操業・出資)事業者は新奥(ENN)、九豊(JOVO)、広東能源集団(GEG)、深圳能源(Shenzhen Energy)、建設中事業者は北京市燃気集団(Beijing Gas)、華横(Huaheng)、計画中事業者は協鑫(GCL)、華電(Huadian)である。
この他LNG受入基地や都市ガスグリッドの保有(出資)がない国内のLNG供給事業者・トレーダーが多数選定されたが、PipeChinaは最終的な選定理由や基準のいずれも公表していないが、国内事業者を優先したことは明らかである。
2021年4月、PipeChinaはLNG受入基地余剰能力使用者に対し(PipeChinaへの売却前にLNG受入基地の最大出資者であった)国有石油企業3社が過去に契約した長期契約のLNGを一定量引き取らせることを検討していると報じられた(義務引き取り量の規模など詳細は不明)。この他選定された国内事業者の中にはPipeChinaの対応方針(LNG配送時期の調整に応じない可能性や使用権をキャンセルした場合、翌年申請しても選定されなくなる可能性)に不安を感じている事業者もいる模様である。
表 3:PipeChinaのLNG受入基地2021年余剰能力使用権を得た事業者
(4) 地方政府系・民間事業者のLNG受入基地シェア拡大と外資との提携
(4)-1. 地方政府系・民間事業者のLNG受入基地シェア拡大
中国のLNG受入能力は2025年までに現在から倍増の150MMtに増加し、2040年には250MMtを超える可能性がある。SIA Energyによると、2025年までに地方政府系および民間事業者のLNG受入基地の受入能力が全体の3割に増加、2040年には5割に増加する見通しである(図13)。地方政府系・民間事業者のシェア拡大でガスサプライチェーンのさらなる変化が見込まれる。中国におけるLNG輸入事業者の多角化はLNG市場のボラティリティを高める一方で外資の事業機会拡大につながる。
(4)-2. 外国企業と地方政府系・民間事業者とのガス・LNG関連提携事例
メジャーズを中心に外国企業は地方政府系・民間事業へのマーケティングのみならず提携を通じ、中国のガス市場への参加、事業機会を追求している(表4)。
表 4:外国企業と地方政府系・民間事業者とのガス・LNG関連提携事例
【民間LNG事業者GCLとShellの提携】
2020年4月、Shell Chinaと民間のLNG事業者協鑫(GCL)と協定を締結し、江蘇省でLNGトレーディング会社を設立した。ShellはGCLのLNG受入基地(計画中)へのLNG販売やGCLとの江蘇におけるLNG JVを拠点とした揚子江デルタ地域他へのLNGのトレーディングを通じ中国都市ガス小売事業への進出を果たすことになる。
協鑫集団(Golden Concord Holdings Limited;GCL)は1990年設立の民間企業(本社:香港)で半導体やクリーンエネルギー事業を展開している。2020年の中国500社中213位(民間500社中56位)である。またGCL創設者の朱共山会長は“中国の新エネルギー王”と呼ばれ、2019年のフォーブス中国400の205位に位置する富豪である。
GCLは国有軍需系コングロマリット保利集団(Poly Group)と提携し、2012年に保利協鑫天然気集団(Poly-GCL Petroleum Group)を設立した。同社は2013年にエチオピアの天然ガス探鉱開発事業に参入し、Calub、Dohar、Hilalaガス田の開発を行っている。FLNG(1期液化能力年3MMt、増強計画あり)による中国向けのLNG輸出やジブチ向けに749キロメートル、設計輸送能力16.5Bcmのガスパイプラインを建設する計画を進めている。エチオピアとジブチは2015年2月に同ガス事業の枠組み合意文書に署名、保利協鑫は2017年11月にジブチとLNG事業に関する覚書に調印し、2019年2月に両国がパイプライン建設契約に調印している。
GCLは中国で現在LNG受入基地の保有、出資は行っていないが、山東・煙台(Yantai)、江蘇・如東(Rudong)、広東・茂名(Maoming)でLNG受入基地建設を計画している。このうち煙台受入基地については保利協鑫天然気集団(Poly-GCL Petroleum Group)が山東環亜国際能源集散中心有限公司および煙台港集団有限公司と共同で山東保利協鑫国際能源有限公司を設立し、2020年3月に国家発展改革委員会の承認を得た。1期受入能力は3MMtで2026年稼働を目指している。
この他GCLはコンテナLNGによるトレーディングやCNG充填ステーション事業を展開している。
2021年2月、協鑫天然気貿易(広東)はPipeChinaの2021年余剰能力使用権を獲得した。
【中国五大ガス事業者ENNと韓国SKの提携】
2020年8月、韓国3位のコングロマリットSK Group傘下のエネルギー企業SK E&Sは新奥集団(ENN)の舟山LNG受入基地の権益10%を取得した。またSK E&Sは同年7月に北京市の都市ガス事業者北京燃気(Beijing Gas)から浙江省のLNG・ガス販売子会社3社(Ningbo Beilun Bochen Energy Trading、Huzhou Bochen Natural Gas、Zhejiang Boxin Energy)の権益各30%を取得している。SK ENNのLNG受入基地(浙江・舟山)へのLNGマーケティング、浙江省へのガス・LNG販売により中国都市ガス小売事業への進出を目指すことになる。
新奥集団(ENN)は1989年設立の民間企業で本社は北京から車で1時間程度の河北省廊坊市にある。中国27省・自治区・直轄市の200都市以上で都市ガス事業を展開する中国五大ガス会社である。2020年の都市ガス販売量は30Bcm、LNG調達量は2.5MMtである。この他ENNはLNGサテライトステーションの操業やトラックLNGによる販売を展開している。
ENNの浙江省舟山のLNG受入基地(3MMt)は2018年に稼働し、現在増強中(2MMt、2021年完成)である。ENNはChevron、Total、豪OriginとLNG売買契約(計1.4MMt)を締結している。
【上海市地域グリッド事業者ShenergyとTotalの提携】
2021年3月、Totalは上海市地域グリッド事業者ShenergyとLNG売買契約、事業提携(LNG供給・マーケティング)で合意した。TotalはShenergyのLNG受入基地へのLNGマーケティング、上海市他へのLNG販売を通じ中国都市ガス小売事業への進出を目指すことになる。
申能(Shenergy)は1987年に設立、上海市国有資産監督管理委員会が出資、発電、都市ガス事業等を展開する上海市の総合エネルギー企業グループである。東シナ海平湖油ガス田ならびに上海市グリッド(ガス・電力)を操業している。2020年の都市ガス販売量は9Bcm、LNG調達量は4.5MMt、発電設備容量は1,205万kW、電力販売量は394億kWhである。Petronas、Centrica、Novatek、TotalとLNG売買契約(計約3.6MMt)を締結している。傘下の上海燃気(Shanghai Gas)は上海五号溝(Wuhaogou)LNGピーク調整ステーション(1.5MMt)を操業する他、洋山(Yangshan)LNG受入基地(3MMt)に55%出資している。洋山受入基地は2020年にタンク40万立方メートルを増設した。Shenergyは上海市で新たな受入基地(3MMt)の建設を計画している。
【浙江省地域グリッド浙江能源概況とEniの事業機会】
2021年4月、Eniと浙江省地域グリッド浙江能源(Zhejiang Energy)はガス・LNG事業(LNG売買契約を含む)を推進する覚書を締結した。Eniは浙江省へのLNGマーケティングならびに中国のガス・LNG事業への進出を目指すことになる。
浙江能源集団は2001年に設立した。発電、石油天然ガスの開発・貿易等を展開する浙江省の総合エネルギー企業グループで傘下に浙電、浙江石油を保有している。石油・ガス関連事業では石油・ガスグリッド、LNG、都市ガス、石油製品貯蔵・中継を行っている。浙江省内のガスグリッド1,800キロメートルを操業し、省レベル天然ガスステーション72、都市ガス会社27社を傘下にもつ。2020年の都市ガス供給(託送を含む)は11Bcm(省内供給の8割)、電力販売量は1,368億kWhである。ExxonMobilとLNG売買契約(1MMt)を締結している。またSinopecと共同で浙江・温州LNG受入基地(3MMt)の建設を計画している。
(5) 天然ガス取引所を通じた天然ガス・LNGの調達
(5)-1. 2020年の天然ガス取引量
中国において天然ガス・LNGの取引所を通じた調達は主に上海と重慶で行われている。2020年の取引量は61Bcmで中国の天然ガス消費(328Bcm)の18%(取引の95%はパイプライン)である(図18)。
このうち上海石油天然気交易中心(SHPGX)の2020年の天然ガス取引量は40Bcmで内訳はパイプライン37Bcm(約284ドル/千cm≒7.6ドル/MMBtu)、LNGが239万トン(約488ドル/t≒9.4ドル/MMBtu)である。この他 “LNG容量取引”が21.55万トンある。LNG容量取引は2020年10月に開始した売り手が買い手までLNGを輸送するサービスである。SHPGXがプラットフォームを提供し、CNOOC傘下企業が実施している。200キロメートル圏内の輸送が多い模様である。例えば2020年12月にCNOOC Gas &Power傘下の江蘇販売が南京捷奥物流にトラックで1,000トンのLNGを配送した(約10セント/t/km)。
重慶石油天然気交易中心の天然ガス取引量はパイプライン21Bcmである。
天然ガス取引所は上海、重慶の他深圳で取引所が浙江にも取引プラットフォームが設立された。海南の現物取引所でも天然ガスの取り扱いを検討している。
(5)-2. 天然ガス取引所を介したLNG受入基地の利用(LNGウィンドウ取引)
中国政府は、天然ガスパイプラインやLNG受入基地など天然ガスインフラのオープンアクセス(市場化)を進めており、CNOOC Gas & PowerとSHPGXは2018年からLNG“ウィンドウ取引”を実施している。LNG“ウィンドウ取引”は第三者がLNG受入基地を一定期間利用し、LNGの輸入が可能となるサービスでSHPGXへの申請、基地操業者(CNOOC)との契約が必要である。SHPGXは2019年以降契約期間が5年間の“ウィンドウ取引”を提供している。勝通能源(Senton Energy)や中琨匯鵬(Zhongkun)など民間のLNG供給事業者がこれを利用し、トラックLNGなどで各地に供給している。
表 5:LNGウィンドウ取引
勝通能源(Senton Energy)は2012年設立(本社:山東省竜口市)の民間LNG事業者で2020年末現在300台のLNGローリーを保有し、自社LNG充填ステーション経営に加え中国各地にLNGを配送している(図19)。2020年にはSHPGXでCNOOCが購入したShellのカーボンニュートラルLNGを落札した。2020年12月にはJUSDAを介し西部ガスからコンテナLNG40個を購入し、山東・竜口港で荷揚げした。
2020年11月、CNOOCと勝通能源はウィンドウ取引を契約し、2021年3月にCNOOCに委託したサハリンLNGのスポットカーゴ(6.5万トン)が天津LNG受入基地に到着した。勝通能源傘下の勝通物流がトラックLNGによりLNGを配送した。
(6) ガスサプライチェーンの多角化
(6)-1. トラックLNGの流通拡大
中国では都市ガス導管未接続エリアやCNG車向けの供給手段としてトラック(ローリー)LNGの供給が伸長している。トラックLNGの供給はLNG受入基地からの出荷または国内随伴ガスを液化した国産LNGがある。2020年のトラックLNGの流通量は37MMtで、天然ガス供給の2割に達している(図20)。2020年はLNG受入基地から安価なスポットLNGを利用した出荷が増加した。トラックLNGはLNGサテライトステーションやCNG充填ステーションを通じた販売に加え、敷地内に気化設備が設置されているエンドユーザーへの販売も行われている。トラックLNGの他、都市ガス導管未接続エリアやCNG車向けの供給手段としてISOコンテナによるLNGの配送も伸長した。事業者多角化で競合は激化しているが、トラックLNGやコンテナLNGのニーズは当面高いと思われる。
(6)-2. 日本とマレーシアから中国向けのコンテナLNG輸出
トラック・コンテナLNGの流通拡大により、LNG受入基地の保有や出資を行っていないLNGトレーダーが台頭し、中国の導管未整備地域の市場開拓、サプライチェーンの変化に一役買っている。西部ガスやPetronasはこれらのLNGトレーダーと提携することにより、成長著しい中国の小規模LNG市場に進出した(図21)。
【西部ガス、JUSDA向けにコンテナLNG通年出荷】
2021年4月、西部ガスは、中国の準時達能源科技(上海)有限公司(JUSDA Energy Technology <Shanghai>) 向けに、18トン積のISOタンクコンテナを利用したLNG の通年出荷を開始した。期間は2021年4月から2022年3月までの1年間で、数量は合計約5.9万トン、コンテナ約3,280個の出荷を予定している。
2021年4月12日に初回分が北九州港ひびきコンテナターミナルから中国山東省へ専用コンテナ船で出荷され、出航から3日後の4月15日に55コンテナ(約900トン)が山東省竜口港へ到着した。
JUSDA Energyは、Foxconnの名称で知られる世界最大の電子機器受託生産(EMS) 企業の台湾富士康科技集団(鴻海科技集団)が、香港のIDG能源投資集団(IDG Energy Investment) と共同で2018年11月に設立し、LNG流通サービス事業へ参入した。エンドユーザーの済南能源集団(Jinan Energy)は2018年からコンテナLNGの輸入を開始した。2019年にコンテナ243個を輸入しており、2020年にJUSDA Energyとの提携で日本-龍口路線を開拓した。
【PetronasとTiger Gas(TCEL)、マレーシアBintuluからコンテナLNG出荷】
2021年4月、マレーシアのサラワク州Bintulu港から出荷された20トン積みのLNGコンテナ205個が山東省竜口港に到着した。同コンテナは老虎燃気(Tiger Gas)傘下のTiger Clean Energy Ltd(TCEL)がマレーシア国営Petronasから購入し、中国各地に販売する。
TCELはBintulu港の運営会社Bintulu Port Holdings Bhd(BPHB)およびPetronasとの合意に基づき自ら同港にISOコンテナ充塡施設を設置し、コンテナLNG輸送に意欲的に取り組んでいる。Bintulu港では6時間以内に200個のISOコンテナの積み卸しが可能である。TCELはコンテナ船「泛洲6号(全長169メートル)」をコンテナLNG輸送向けに改造した。
Tiger Gasは独立系コンテナ船主会社Seaspanの共同創業者、ゲリー・ワン氏(2017年に同社をリタイア)が立ち上げた新興企業である。2020年6月、ワン氏がシースパン時代に関係が深かった民間造船最大手揚子江船業に 10隻(2隻+オプション8隻)のLNGタンクコンテナ輸送船を発注した。2隻は2022年竣工予定(Bintuluからの輸送向け)である。LNGコンテナは中国国際海運集装箱集団(CIMC)傘下の南通中集能源装備製造有限公司が製造、20トンのLNGを充填でき、陸上輸送の大容量化に対応している。
【PetronasとTiger Gas、マレーシアJohorからコンテナLNG出荷】
2021年4月、マレーシア南部ジョホール州ペンゲランからLNGコンテナが中国に初めて輸出された。マレーシア国営PetronasとTiger Clean Energy(TCEL)とのスポット契約によるものだがコンテナ数は不明である。Petronasがジョホール州ペンゲランの充填施設でLNGをコンテナに充填後、パシールグダン港を3月23日に出港し、4月23日に上海に到着した。TCELが中国各地に販売する。
【珠海金石のコンテナLNGによるモンゴルへの輸出】
2019年8月、広東省珠海市の民間企業である珠海金石石油化工有限公司はコンテナLNGをモンゴル・ウランバートルに輸出した。同社は2017年12月から2年間、トラックLNGによるモンゴルへのLNG輸出を行っていたが、今般初めてコンテナLNGの輸出を行った。LNGは、陝西省地方政府系石油・天然ガス企業延長石油(本社、陝西省延安市)の国産LNG液化プラント(志丹液廠)からの供給である。
コンテナLNGはモンゴルにおける貯蔵設備の不足、長時間輸送に伴うLNGローリーの温度上昇の課題解消につながるとして歓迎されたと報じられている(トラックLNGによる輸送は1週間程度が温度・圧力上昇の限界だが、ISOコンテナは数か月貯蔵が可能である)。
参考:中国のコンテナLNG輸送の特徴と中国の潜在的な市場、制約
中国でLNG受入基地からのトラックLNGの出荷量が多いCNOOC傘下企業のCNOOC能源発展株式有限公司採油服務分公司周玉良氏が中国のコンテナLNG輸送について分析している。中国におけるガスサプライチェーンの発展を理解する一助となると思うので同氏論文からコンテナLNGの特徴や潜在的な市場、制約について紹介する。
【LNGコンテナの特徴】
- LNGコンテナの製造技術は成熟しており、国産タンクのBOR(boil off rate、貯蔵タンク内の BOG の発生率、LNG船は0.15%程度)は0.05%と低く、100~180日の保冷貯蔵が可能。
- ドアツードアで輸送ができ、供給可能地域が広い。
- コンテナ船を利用することで、荷役港に特別なLNG受入基地を建設する必要がなく、輸送の機動性が高い。
- パイプラインの敷設が困難な島嶼部、山間部、遠隔地への供給が可能。
- 初期投資が少なく、参入障壁が低いことで、より多くの企業がLNG産業に参入可能。
【潜在市場】
- 冬季の北部:冬場の集中暖房需要期にガスが不足する北部への供給で季節性の需給不均衡を調整
- 揚子江デルタの内陸部:湖南、湖北、江西、安徽省は冬季のピーク需要が高く、パイプラインガスのカバー範囲が限定的で、LNG受入基地の建設も計画段階のものが多い。揚子江沿いにLNGコンテナヤードを物流センターとして建設し、トラックによる道路輸送でサポートすることで、地域・季節的な不均衡を解決することが可能。
- 住民向け緊急時ピーク調整機能:コンテナ1本で住民3~4万人の1日分の需要が賄える。都市ガスグリッドのある町への設置あるいは導管未整備地域にLNGコンテナを再ガス設備と併せ、サテライトステーションとして設置。
【制約】
- 経済性:スケールメリットを図ることが難しく、輸送コストが高い。
- 荷役ターミナル・コンテナヤードの資格:中国では危険化学品作業の資格を有するターミナルや危険物集積資格を有するコンテナヤードが限定的。
- 標準化:国内と海外のLNGコンテナの基準や性能指標が異なり、複合輸送の規模や統合開発要件が制限。
- 複合輸送の連携:水路、高速道路、鉄道などの連携、輸送規格の不備・不均一性も深刻な制約。
「LNGコンテナ輸送経済性分析」CNOOC能源発展株式有限公司採油服務分公司周玉良氏(信徳海事網2021年1月4日)より抜粋 https://www.xindemarinenews.com/m/view.php?aid=26241)
3. さいごに
中国の天然ガス・LNG事情についてその消費・輸入増加のスピードに関心が集まるなか、本稿では中国におけるガスサプライチェーンの変化、LNGの輸入の増加を後押しする地方政府系、民間企業に着目した。
これまで中国のLNGサプライチェーンは国有石油会社が外資サプライヤーとLNG売買契約を締結し、LNG受入基地の操業を主体的に行い、都市ガス会社にガスを卸販売することが一般的であったが、地方政府系・民間の都市ガス事業者ならびに地域グリッド(ガス・電力)事業者による受入基地の建設あるいは出資者としての基地利用によるLNGの直接輸入が増加した。地方政府系・民間事業者は、中国の天然ガス供給の1割を占める存在に過ぎないが、LNG輸入では2割、さらにスポットLNG調達では3割弱を占める存在に成長した。
スポット比率が高く、価格に敏感な地方・民間事業者はアジアのLNG市場のかく乱要因となる一方で、LNGサプライヤーにとり新たな買主として浮上した。PipeChinaによるLNG受入基地開放への参入はハードルが高かったようだが、メジャーズを中心とした外国企業はLNG受入基地を操業・計画中または地域ガスグリッド会社との提携でLNGのマーケティングのみならずガス小売り事業への参入を図ろうとしている。
また取引所を利用した天然ガス・LNGの調達やトラック・コンテナLNGの流通拡大により、LNG受入基地の保有や出資を行っていないLNGトレーダーが台頭し、中国の導管未整備地域の市場開拓やサプライチェーンの変化に一役買っている。西部ガスやマレーシア国営Petronasはこれらの事業者と組み、成長著しい中国の小規模LNG市場に参入した。
中国のガスサプライチェーンはこれからも変化し、様々な事業機会が生まれることが見込まれ、今後も注目したい。
以上
(この報告は2021年5月26日時点のものです)