ページ番号1009052 更新日 令和3年6月2日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2021年7月の減産措置を当初予定通り実施する旨決定するも、8月以降の減産措置の方針については協議を見送り(速報)

レポート属性
レポートID 1009052
作成日 2021-06-02 00:00:00 +0900
更新日 2021-06-02 09:39:46 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 14
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2021/06/02 野神 隆之
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概要

  1. 2021年6月1日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、7月につき当初予定通り日量576万バレル規模の減産を実施することを決定した。
  2. また、当該会合においては、2021年8月以降の減産措置に関する協議は見送られた旨6月1日に伝えられる。
  3. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合及びOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC)は双方とも7月1日に開催される予定である他、減産措置の終了まで毎月会合を開催することとなった。
  4. 早期に石油需要が回復基調にあった中国に加え、新型コロナウイルスワクチン接種普及が進展しつつあることにより欧米諸国等では個人の外出規制及び経済活動制限が緩和されつつあることから、これら地域での石油需要が回復し始める一方、これまで新型コロナウイルス感染が拡大していたインドでも感染者数及び死者数が峠を越えつつあることにより同国でも経済とともに石油需要が底打ちする兆しが見え始めており、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識するとともに、原油相場に上方圧力が加わる格好となっていた。
  5. また、5月29日以降米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入することにより、季節的な石油需給引き締まり感が市場で強まったことも、原油価格にとって支援材料となっていた。
  6. 他方、足元で進行中のイラン核合意正常化に向けたイランと西側諸国等の協議が合意に至ることに際し、米国の対イラン制裁が解除される等することによりイランからの原油供給が増加するとともに、世界石油需給が緩和するとの観測が市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加える場面が見られた。
  7. そして、今後新型コロナウイルス感染が石油需要に与える影響につき予測が困難な側面があることに加え、イラン核合意正常化に伴いイランから原油供給が増加することにより、世界石油需給バランスがどのように展開するかについても不透明感が強い状況にあった。
  8. このため、OPECプラス産油国はイランの原油供給が回復してもその規模が限定的なものであると見られる7月のOPECプラス産油国減産措置は既定の方針通りとする一方で、より世界石油需給に不透明感が強くなる8月以降は減産措置を巡る方針決定を見送ったものと考えられる。
  9. そして、新型コロナウイルス感染状況やイランの原油供給回復具合がより明確になる可能性のある7月1日に次回会合を開催し、改めて世界石油需給バランスを検討したうえで8月以降のOPECプラス産油国減産措置を調整することにしたものと見られる。
  10. 今回のOPECプラス産油国閣僚級会合の決定により、OPECプラス産油国が減産措置のさらなる緩和に対し慎重な姿勢を示しているとの印象を市場に与えるとともに、今後世界石油需要の回復に対し減産措置の緩和が後手に回る可能性がある結果、石油需給が引き締まる方向に向かいやすいとの観測が市場で増大したこともあり、6月1日の原油価格(WTI)は前週末終値比で1バレル当たり1.40ドル上昇し同67.72ドルの終値と、2018年10月22日以来の高水準に到達した。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2021年6月1日OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は電話会議形式で閣僚級会合を開催した(当該会合開催は同日午後3時過ぎから午後4時前にかけて(ウイーン時間)の30分以内の短時間なものであった)。

 (2) 今次会合では、観察される市場ファンダメンタルズに基づき、4月1日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において決定された、7月の日量576万バレルの減産措置(減産の基準となる原油生産量はサウジアラビアとロシアについては日量1,100万バレル、その他の産油国は2018年10月の原油生産量)を当初予定通り実施することで合意した(表1及び参考1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (3) 2021年7月に実施する予定である減産措置の緩和規模はOPECプラス産油国による日量44.1万バレルの減産相当分に加え、サウジアラビアが自主的に実施していた減産相当分日量40万バレルの合計日量84.1万バレルとなる。

 (4) ただ、当該会合においては、2021年8月以降の減産措置に関する協議は見送られた旨6月1日に伝えられる(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は実際に減産措置緩和が必要だと判明した場合に減産措置を緩和する旨示唆しており、当該減産措置の緩和に慎重であることが覗われる)。

 (5) 当該会合では、メキシコを含む減産措置に参加するOPECプラス産油国の2021年4月の減産遵守率が114%と良好なものであることを歓迎した。

 (6) また、会合では、新型コロナウイルスワクチン接種プログラム進展により、米国及び中国を初めとする世界の多くの国及び地域で経済が改善しつづけることにより、石油需要が改善する明確な兆候が見られる(OPECプラス産油国閣僚級会合時に行われた演説で、バルキンドOPEC事務局長は、2021年第四四半期には世界石油需要は日量9,900万バレル超と新型コロナウイルス感染拡大前の水準に戻ると予想している旨明らかにした)とともにOECD諸国の石油在庫が減少しつつあることが認識された(4月末時点のOECD諸国石油在庫は前月末比で690万バレル減少し、当該在庫日数は66日と前年同月を12.3日下回るものの、2015~19年平均を依然3.9日上回る旨バルキンド事務局長により報告された)。

 (7) 石油市場の現状と今後の展望に関する見解を考慮しつつ、会合では、2021年4月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合で決定した、同年7月にかけての合計日量214万バレルの減産措置緩和策を当初予定通り実施していくことを再確認した。

 (8) また、減産措置の完全遵守が極めて重要であることを再度喚起し、2020年5月1日のOPECプラス産油国減産措置実施以降平均で100%の減産遵守率を達成できていないOPECプラス減産措置参加産油国は9月30日までに減産目標未達成部分を追加して減産すべく、追加減産計画を提出するよう求められた。

 (9) 会合では石油需給ファンダメンタルズにつき緊密に監視し協議し続けるとともに、2020年4月12日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合で決定された減産措置の終了時まで、毎月OPECプラス産油国閣僚級会合を実施することの必要性が強調された。

(10) なお、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は7月1日に開催される予定である。

(11) また、次回OPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministers Monitoring Committee、委員はサウジアラビア、クウェート、UAE、イラク、アルジェリア、ナイジェリア、ベネズエラ、ロシア、及びカザフスタンとされる)についても7月1日(次回OPECプラス産油国閣僚級会合開催日と同日)に開催する旨6月1日に伝えられる。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2021年4月27日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合(同日のJMMC開催後、事実上規模を縮小して変則的に開催)では、4月1日に開催されたその前の会合で決定した減産措置(2021年4月に実施している日量690万バレルの減産措置を、5月は日量35万バレル縮小し同655万バレル、6月にさらに同35万バレル縮小し同620万バレル、7月にさらに同44万バレル縮小し同576万バレル)につき、当初予定通り実施することを確認した。

 (2) また、4月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合開催の際にサウジアラビアが明らかにした、同国が単独で実施している、日量100万バレル(4月時点)の自主的な追加減産措置の段階的縮小(5月は同25万バレル縮小し同75万バレルに、6月に同35万バレル縮小し同40万バレルにする他、7月は同40万バレル縮小し当該追加減産を終了)についても、当初予定通り実施することを確認した。

 (3) 4月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後、米国等では新型コロナウイルスワクチン接種普及が進みつつある他、経済が改善しつつあることを示す指標類が発表されるなどしたこともあり、4月6日に国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通し(WEO: World Economic Outlook)では、IMFは2021年の世界経済成長見通しを6.0%と2021年1月20日発表時の5.5%から上方修正した。

 (4) また、IMFが2021年の世界経済成長見通しを上方修正したこともあり、4月13日に発表されたOPEC「月刊オイル・マーケット・レポート」において、OPECが2021年の世界石油需要を日量19万バレル上方修正したことに加え、4月14日に発表された国際エネルギー機関(IEA)の「オイル・マーケット・レポート」においても、IEAが同年の世界石油需要を日量21万バレル上方修正したことが、原油相場に上方圧力を加えた。

 (5) このようなことを含む原油価格上昇要因が、4月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合で決定された減産措置の縮小に伴う市場での石油需給緩和感の醸成、インド等での新型コロナウイルス感染者数増加(しばしば過去最高記録を更新していた)による同国等の経済成長減速及び石油需要の伸びの鈍化に対する市場での懸念の増大、そしてイラン核合意正常化に向けたイランと西側諸国等との協議進展に伴う米国の対イラン制裁解除とイランからの原油供給拡大に対する観測等による、原油相場への下方圧力を相殺する格好となったこともあり、4月1日以降原油価格は4月27日開催のOPECプラス産油国閣僚級会合直前まで概ね58~63ドルを中心とする範囲で比較的安定して推移した(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2020~21年)

 (6) また、このように原油価格が比較的限られた幅で変動していたこともあり、4月の全米平均ガソリン小売価格は1ガロン当たり2.9ドル台と、米国国民が政権に対し不満を増大させやすくなる1ガロン当たり3ドルを割り込んだ状態で推移した。

 (7) 従って、サウジアラビアを含むOPECプラス産油国としては、原油価格は上昇傾向には至っていないものの、かといってOPECプラス産油国による制御が困難となるような下落の継続も発生していないことにより、原油価格がさらに一層上昇していた場合に比べれば原油収入は低水準となる可能性が高いことにより、完全に満足できる状況というわけではなかったと見られるものの、原油価格下落が継続することに伴い原油収入が大幅に減少しているわけでもなかったことにより、現状は受入可能な状態であると見られた。

 (8) 一方、米国側としても足元のガソリン小売価格が1ガロン当たり3ドル寸前ではあるもののその水準を割り込み続けていることもあり、米国国民による不満が発生する可能性はそれほど高くないという意味で、現状の原油価格水準は受入可能な状況であると見られるなど、OPECプラス産油国及び米国双方の利害が概ね一致している状態であったこともあり、4月27日開催のOPECプラス産油国閣僚級会合においては、既に決定した減産措置の縮小方針に関しては、さらなる調整を加えることなく、当初予定通り実施することとしたものと考えられる。

 (9) そして、4月27日のOPECプラス産油国閣僚級会合後も、インドでは新型コロナウイルス新規感染者数がしばしば過去最高記録を更新するほどに増加したものの、5月6日に同国の1日新型コロナウイルス新規感染者数が414,188人に到達した後は、新規感染者数は減少傾向に転じ、5月31日時点では127,510人と半減以下の水準にまで低下するとともに、4月20日より都市封鎖措置を実施しているインドのニューデリーにつき感染者数の減少傾向がこの先も継続するようであれば5月31日以降封鎖措置の緩和手続きを実施する旨ニューデリー首都圏政府のケジリワル首相が5月23日に明らかにするなど、同国の新型コロナウイルス感染に伴う経済成長の減速と石油需要の伸びの鈍化に関しては遠くない時期に底打ちする兆候が見られるようになった。

(10) 他方、新型コロナウイルスワクチン接種普及が進展したこともあり、5月9日にはスペインで警戒事態宣言(2020年10月25日に発令)を解除、同国内の各州間での移動が可能となった他、5月15日にはオランダとポルトガルで渡航制限が緩和されたうえ、英国でも5月17日を以て個人の外出規制及び経済活動制限が緩和、5月19日にはフランスでも飲食店等の影響が再開、米国でも1日当たりの同国空港安全検査通過者が5月16日時点で185万人と2020年3月8日(この時は同191万人)以来の高水準に到達するなど、新型コロナウイルス感染が峠を越えつつあることに伴い個人の外出や経済活動等が活発化することにより石油需要の回復期待が市場で増大するとともに石油需給引き締まり感を市場が意識したことが、4月28日以降原油価格を下支えする格好となった。

(11) また、米国では、新型コロナウイルスワクチン接種が進捗(5月28日午前の時点で米国在住者の50.1%に当たる1.66億人超が少なくとも1回の新型コロナウイルスワクチンを接種)していることもあり、5月31日時点の米国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数は5,602人と2020年3月19日(この時は4,043人)以来の最低水準に到達したことも、原油相場を支持した。

(12) そして、5月29日以降米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入することによる、同国での季節的な石油需給引き締まり感が市場で強まったことも、原油価格にとって支援材料となった。

(13) しかしながら、6月1日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合においては、新型コロナウイルス感染が継続する可能性があるなど今後の展開が不透明である他、新型コロナウイルス変異株が人類の健康及び経済回復双方にとって脅威となり続けることを警戒すべきである旨OPECのバルキンド事務局長が説明した。

(14) 同時に、バルキンド事務局長は、イラン核合意正常化に伴うイランの原油生産及び輸出回復は秩序立った透明性のある方法で行われるものと予想している旨の見解を示した。

(15) イランは、2021年4月時点で日量235万バレルの原油を生産していたが、同国のザンギャネ石油相は米国が対イラン制裁を解除すれば、イランは日量650万バレルの原油を生産することを最優先事項にする旨5月31日に発言した。

(16) 近年の同国原油生産量の最高水準が2017年9月に到達した日量386バレルであったことを考慮すれば、イランの原油生産を日量650万バレルに到達させるには新規油田等を開発する必要があると見られるところからすると、数ヶ月間でこの水準に到達するとは考えにくい。

(17) それでも、同国の原油生産の過去の実績を見ると2016年4月は前月比で日量29万バレル増加するなどしており、それは同国の原油生産増加幅がそれなりに大きなものとなる可能性があることを示唆している。

(18) 従って、イラン核合意正常化に伴いイランの原油生産が回復し始めたとしても、7月においてはその規模が比較的限られたものに止まるとともに世界石油需給及び原油価格への影響も限定的なものになると見られる(実際今次閣僚級会合開催に際しサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相も同様な見解を披露していた)ことから、今回の閣僚級会合においては、7月の減産措置については既定の方針通りとする一方、8月以降はイランからの原油生産増加がより大規模になるとともに世界石油需給及び原油価格により大きな影響を与える可能性があることや新型コロナウイルス感染が再拡大する結果一部諸国の経済成長及び石油需要が下振れする恐れがあることを含め、石油市場に関しより強い不透明感が存在することもあり、8月以降の減産措置を巡る方針決定を見送ったものと考えられる。

(19) そして、今回の閣僚級会合からそれほど期間を要しない7月1日に次回会合を開催し、現在より明確になっている可能性のあるイランの原油供給増加具合や新型コロナウイルス感染状況の経済成長及び石油需要への影響を考慮しつつ、改めて世界石油需給状況及び展望につき検討したうえで、8月以降のOPECプラス産油国減産措置につき調整することにしたものと見られる。

(20) また、今後も石油市場の状況に迅速に対応できるよう、2020年5月1日以降実施しているOPECプラス産油国減産措置終了時まで毎月OPECプラス産油国閣僚級会合を開催することとしたものと思われる。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 今回のOPECプラス産油国閣僚級会合の決定はOPECプラス産油国が世界石油需給バランスに対し慎重な姿勢を示唆しているとの印象を市場に与える格好となっており、この結果世界石油需要の回復に対し減産措置の緩和が後手に回るとともに石油需給が引き締まる方向に向かいやすいとの観測が市場で増大した(イランの原油生産量が現状のままの場合、OPECプラス産油国が8月以降減産措置をさらに緩和しなければ、世界石油需給は8月~12月にかけ日量190~260万バレルの供給不足となると見られる旨のシナリオが5月31日に開催されたOPECプラス産油国共同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)に提出されていた)こともあり、6月1日の原油価格(WTI)は前週末終値比で1バレル当たり1.40ドル上昇し同67.72ドルの終値と、2018年10月22日(この時は同69.17ドル)以来の高水準に到達した。

 (2) また、5月31日(この日は米国では戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)の休日に伴い米国原油先物価格の終値は計上されなかった)に、イラン外務省のアラグチ次官が、イラン核合意正常化を巡るイランと西側諸国等との協議は恐らく完了までになお時間を要する旨示唆したこともあり、当該核合意正常化に伴う米国の対イラン制裁解除によるイランからの原油供給拡大の時期が遅延するとの懸念が市場で発生したことも、5月31日から6月1日にかけての原油相場に上方圧力を加えた。

 (3) さらに、5月10日以降全米ガソリン小売価格が米国国民の不満が高まり始める1ガロン当たり3ドルを超過し続けたものの、米国バイデン政権からサウジアラビアをはじめとするOPECプラス産油国に対し減産措置のさらなる縮小に関する働きかけがなされたようには見受けられなかったことも、原油相場に上方圧力を加えたものと考えられる。

 (4) 今後も、世界各国及び地域で新型コロナウイルスワクチン接種普及が進展するとともに、個人の外出規制及び経済活動制限が緩和することにより、経済成長が加速するとともに石油需要が増加するとの期待が市場で広がることに加え、北半球での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン等自動車用石油製品需要期突入による季節的な石油需給引き締まり観測が市場で強まることを通じ、当面原油相場には上方圧力が加わりやすいものと見られる。

 (5) 他方、イラン核合意の正常化に向けたイランと西側諸国等との協議が合意に到達することに際し、米国の対イラン制裁が解除されるとともにイランから原油供給が拡大することが、原油相場の上昇を抑制する可能性がある。

 (6) もっとも、2021年末に向け新型コロナウイルスワクチン接種普及がさらに進展することにより、世界各国及び地域において個人の外出規制及び経済活動制限が緩和されるとともに、世界経済と石油需要が一層の回復に向かうことに加え、OPECプラス産油国の減産措置の縮小が慎重に進められるということであれば、イランの原油供給が余程急速かつ大幅に拡大しない限り、石油需要の増加がOPECプラス減産措置参加産油国やイランからの原油供給の拡大を相殺して余りある結果、依然として石油需給は引き締まる方向に向かうとの観測は市場で根強く残ることにより、この面では原油価格が多少なりとも上振れするリスクが存在するといえよう。

 (7) それでも、2020年11月3日に実施された米国大統領選挙投票によりバイデン大統領の当選が確実になって以降、イランは原油生産を増加しつつある(2020年10月の原油生産量日量196万バレルが2021年4月には同235万バレルへと増加している)こともあり、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合後イランの原油生産がどのような幅、そしてどのようなペースで以て増加していくかと言ったことは、世界石油需給に関する市場関係者の心理、及び原油相場に影響する可能性があるので、注目していく必要があるものと考えられる。

 (8) さらに、全米平均ガソリン小売価格が1ガロン当たり3ドルを超過したままとなる中で、米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入するとともに、新型コロナウイルスワクチン接種普及進展に伴う世界各国及び地域における経済成長加速と石油需要の回復により、この先の石油需給引き締まり感が市場で意識される中、原油価格の上昇とともに米国のガソリン小売価格が一層上昇することにより、支持率への影響を懸念する米国バイデン政権関係者がサウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国に対し減産措置縮小に関する事実上の働きかけを行うような動きを見せるようであれば、OPECプラス産油国のより迅速な減産措置縮小の展望が市場関係者間で開けるとともに、原油相場の上昇が抑制される場面が見られるといった展開もありうる。

 (9) 他方、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の実施による同国経済成長鈍化の可能性に対処するために、2020年3月15日に米国連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をそれまでの1.00~1.25%から0.00~0.25%へと引き下げるとともに、緩和的な金融政策を推進してきた他、8月27日に開催された米国カンザスシティ連邦準備銀行主催年次シンポジウムでは、FRBのパウエル議長が、雇用を確保するために今後長期間平均で2%の物価上昇率を目標とすべく金融政策を実施する旨明らかにし、一時的に物価上昇率が2%を超過することも容認する姿勢を示唆した他、2021年2月24日にもパウエル議長はインフレ目標に到達するまでには3年を超過する期間を要する可能性がある旨の見解を披露した。

(10) しかしながら、5月12日に米国労働省から発表された4月の同国消費者物価指数(CPI)が前年同月比で4.2%の上昇と3月の同2.6%、2月の同1.7%の、それぞれ上昇から上昇率が加速している旨判明したことに加え、例えば、4月27~28日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、金融当局者数人が、米国経済が目標に向け急速に回復し続けるのであれば、いずれかの時点で金融の量的緩和の縮小を検討する用意があると示唆していた旨、5月19日に公表されたFOMC議事録で判明した他、5月20日にはダラス連邦準備銀行のカプラン総裁、5月21日にはフィラデルフィア連邦準備銀行のハーカー総裁、5月25日にはFRBのクラリダ副議長、5月26日にはFRBのクオールズ副議長が、金融緩和の縮小につき、それぞれ言及し始めている。

(11) 現時点では物価上昇率の拡大は一時的なものであるとの見解を披露する米国地域連邦準備銀行幹部も存在するものの、今後も同国で高率の物価上昇が継続するようだと、米国金融当局幹部等による金融緩和政策縮小の議論が活発化するととともに、この先の金融緩和縮小展望が市場関係者の中で拡大することにより、それまで低コストで調達されていた投資資金の調達コストが上昇するとの観測の下、原油を含む商品等のリスク資産市場から投資資金が流出するとともに、原油等の価格に下方圧力が加わり始めるといった展開となることもありうる。

(12) そしてそのような中、イエメンのフーシ派武装勢力からサウジアラビア等に向けたミサイル等の発射を含む中東情勢、米国石油坑井掘削装置稼働数を含む米国シェールオイル等の開発・生産状況、米国メキシコ湾地域でのハリケーン等の暴風雨発生と当該地域での石油産業に対する影響に関する状況(因みに5月20日に米国海洋大気庁(NOAA)が発表した2021年夏場のハリケーン等暴風雨発生予報では平年よりも活発な暴風雨発生予想が明らかになっている)等が、原油相場に影響する可能性があるものと思われる。

(13) このような要因によりこの先も原油価格が変動していくことになろうが、原油価格が継続的に下落する兆候が見られるような場合には、OPECプラス産油国は減産措置縮小を一旦踏み止まるか、もしくは一時的にせよ減産措置を拡大する等の方策を実施することにより、市場での世界石油需給緩和感の拡大による原油価格の継続的な下落を抑制しようと試みるものと考えられる。

(14) 反面、新型コロナウイルスワクチン接種普及進展に伴う世界各国及び地域における個人の外出及び経済活動の活発化と石油需要の回復、さらには、イランの緩やかな原油生産回復ペース等の要因による、世界石油需給の引き締まり感の市場での強まりに伴い、原油価格が継続的に上昇する兆候が見られる場合には、米国でのガソリン小売価格が1ガロン当たり3ドルを超過して上昇する確率が高まることもあり、OPECプラス産油国はそのような状況を考慮しつつ、減産措置の縮小を加速させる等の方策を実施する可能性もある。

(15) ただ、OPECプラス産油国は不用意に減産措置縮小を加速させることにより原油価格の急落が止まらなくなるような事態は回避したいと考えていると見られることから、原油価格が上昇基調になっても、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合時の決定のように、減産措置縮小方策の検討及び実施が後手に回る結果、原油価格の上振れが少なくともある程度の期間継続するといった展開となることは否定できない。

 

(参考1:2021年6月1日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

 

17th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting concludes

 

No 12/2021
Vienna, Austria
1 Jun 2021

The 17th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting (ONOMM), held via videoconference, concluded on Tuesday, 1 June 2021.

The Meeting noted the ongoing strengthening of market fundamentals, with oil demand showing clear signs of improvement and OECD stocks falling as the economic recovery continued in most parts of the world as vaccination programmes accelerated.

The Meeting welcomed the positive performance of Participating Countries in the Declaration of Cooperation (DoC). Overall conformity to the production adjustments was 114% in April (including Mexico), reinforcing the trend of high conformity by Participating Countries.

In view of current oil market fundamentals and the consensus on its outlook, the Meeting:

Reaffirmed the existing commitment of the participating countries in the DoC to a stable market in the mutual interest of producing nations; the efficient, economic and secure supply to consumers; and a fair return on invested capital.

Reconfirmed the existing commitment of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting in April 2020, amended in June, September, and December 2020, as well as in January and April 2021 to gradually return 2 million barrels a day (mb/d) of the adjustments to the market, with the pace being determined according to market conditions.

Reiterated the critical importance of adhering to full conformity, and taking advantage of the extension of the compensation period until the end of September 2021, as requested by some underperforming countries. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.

Reconfirmed the decision made at the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting with regards to production adjustments for the month of July 2021, given the observed market fundamentals.

Emphasized the need to continue to consult and closely monitor market fundamentals and maintain the monthly OPEC and non-OPEC Ministerial Meetings until the end of the decision made at the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12 April 2020.

The 18th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting is scheduled for 1 July 2021.

 

以上

(この報告は2021年6月2日時点のものです)

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