ページ番号1009053 更新日 令和3年10月12日
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概要
- 2021年4月26日、独立系企業Lundin Energyは、イタリア石油精製企業Sarasに世界初の認証済みのカーボンニュートラルオイルを販売したと発表した。
- カーボンニュートラルLNGは、取引実績がすでに世界でいくつか見られるが、カーボンニュートラルオイルは例が少なく、2021年1月に、米国・Occidentalがカーボンニュートラルオイルを世界で初めて販売したと発表し話題になった。なお、カーボンニュートラルオイルは、第三者によるカーボンオフセット認証を得ていないものも含まれている。
- カーボンニュートラルオイル・LNGは、新しい商品であるため市場での決まったルールはなく、当事者間の契約に基づいて取引がなされている状況である。よって、カーボンニュートラルの明確な定義はなく、また第三者による認証の義務もない。今後、カーボンニュートラルオイル・LNGの需要が増えるのか、どのような規制・商慣習ができていくのか注視される。
1. 取引の概要
2021年4月26日、スウェーデンに上場する独立系企業Lundin Energyは、イタリア企業Sarasに世界初の認証済みのカーボンニュートラルオイルを販売したと発表した[1]。販売されたカーボンニュートラルオイルは、イタリア・サルデーニャのSarrochにあるSarasの製油所に運ばれた。
Lundin Energyは、同社がオペレーターを務めるノルウェー領北海のEdvard Grieg油田から生産した、60万バレルの原油を販売したとしている。この原油の販売にあたり、Lundin Energyは2,302トンのCO2を自然ベースの方法(森林吸収など)でオフセットし、認証企業Intertek[2]によるカーボンオフセット認証を得た。
カーボンニュートラルオイルについては、2021年1月、米国の独立系企業Occidentalは、インド企業Reliance Industries[3]に世界初のカーボンニュートラルオイルを販売したと発表した[4]。米国・パーミアン盆地で生産された200万バレルの原油のライフサイクル全体で生じる温室効果ガス(GHG)について、国連の国際民間航空機関の国際民間航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム(CORSIA)の適格基準を満たすVerra Verified Carbon Standardに基づいて検証されたさまざまなプロジェクトから調達されたと発表はしているが、第三者によるカーボンオフセット認証は得ていなかった。
(参考)Lundin Energyの取り組み
Lundin Energyは、2021年1月、2025年にオペレーションにおける排出量を実質ゼロ(ネットゼロ)にする目標を掲げている。同社はプラットフォームの電化とプラットフォームでの再生可能エネルギー電力の使用を進めることにより、プロジェクトでの排出量削減に取り組んでいる。具体的な取り組みについては、石油・天然ガス資源情報[5]を参考にされたい。
[1] Lundin Energyプレスリリース、2021年4月26日:
https://www.lundin-energy.com/worlds-first-certified-carbon-neutrally-produced-oil-sold/(外部リンク)
[2] Intertekとは、英国に本社を置く認証企業である。1885年に船の貨物の審査・認証を行って以来、ISOからカーボンオフセットまで幅広い認証業務をグローバルに展開している。
[3] Reliance Industriesとは、インド・ムンバイに本社を置く上場企業で、石油化学を中心に幅広いエネルギー事業を手掛けるコングロマリットである。「2035年までにネットゼロ」の目標を掲げている。
[4] Oxy Low Carbon Venturesプレスリリース、2021年1月28日:
https://www.oxylowcarbon.com/news/worlds-first-shipment-of-carbon-neutral-oil(外部リンク)
[5] 欧州の独立系およびPE系E&P企業におけるエネルギートランジション関連事例、2021年3月17日、
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008924/1008983.html
2. カーボンニュートラルLNG・オイルについて
脱炭素化の動きを受けて、2019年に初めてカーボンニュートラルLNGが取引された。カーボンニュートラルLNGとは、LNGからの炭素排出量を同量のカーボンクレジットで相殺することで、排出量を実質ゼロにしたものである。LNGの取引量全体と比較すると量は少ないものの、年々取引量が増えてきている[6]。そして今年、原油市場においてカーボンニュートラルオイルが登場した。
カーボンニュートラルLNG・オイルは、オフセットのために追加の費用や投資を伴うが、これまでの事業活動を継続することが可能であるため、GHG削減に取り組む国・企業の注目を集めている。しかしながら、取引が始まったばかりであり、取引事例によって詳細は異なっている。
<現段階で明確になっていない点>
- カーボンニュートラルの定義(対象となる排出量の範囲)は決まっていない。バリューチェーン全体(Scope 1~3)の排出量をオフセットしている事例もあれば、バリューチェーンの一部のみオフセットした場合でもカーボンニュートラルを称している事例もある。
- 削減対象がCO2のみのものとGHG(メタンも含む)を指すものと両方の事例がある。
- オフセットの基準や計算方法は複数あり、統一した基準はない。
- 市場の取引における規則はない。
- 第3者による認証の義務はない。
今後、カーボンニュートラルの石油・天然ガスの需要が増えるのか、それに向けてどのように規制や認証制度が国際的に整備されていくのかが注視される。
[6] 天然ガス・LNG最新動向 ―新たな脱炭素処方箋:欧州メタン戦略とカーボンニュートラルLNG、効能と副作用―、2021年4月13日:
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008924/1009009.html
おわりに
カーボンニュートラルLNG・オイルは、カーボンオフセットのための追加費用・投資を要するが、将来、炭素税、国境炭素調整、排出権取引などの影響でカーボンニュートラルLNG・オイルの需要が拡大する可能性がある。カーボンニュートラルオイル・LNGの需要が拡大した場合、生産現場での温暖化ガス排出削減への取り組みの強化など、様々な影響が探鉱・開発に及ぼされるであろうが、基本的にはオフセットのための追加コストが少なくて済む、排出量の低い油ガス田の競争力が高まるだろう。
以上
(この報告は2021年6月3日時点のものです)