ページ番号1009061 更新日 令和3年6月14日

中国:国有石油企業と都市ガス会社によるメタンアライアンス

レポート属性
レポートID 1009061
作成日 2021-06-14 00:00:00 +0900
更新日 2021-06-14 13:21:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG企業
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 アジア
国1 中国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2021/06/14 竹原 美佳
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概要

  • 中国の国有石油・ガス開発企業や都市ガス会社など7社がメタン排出抑制アライアンス(China Oil and Gas Methane Alliance、以下中国メタンアライアンス)を結成した。
  • 中国メタンアライアンスは2025年までに天然ガス生産におけるメタン排出を0.25%以下に近付ける目標を設定している。
  • 中国メタンアライアンス設立の背景として、習近平国家主席が号令をかけている「2030年の排出ピークアウト、2060年のカーボンニュートラル」に向けた業界の前向きな姿勢のアピールと「欧州メタン戦略」による排出規制を意識した可能性がある。
  • IEA Methane tracker databaseに基づき計算すると中国のガス生産に伴うメタン排出は約0.6%と推定、また同データベースによると現在の価格ベースで8割(0.7MMt)が実質的なコスト負担を伴わずに回収可能である。
  • 今後も中国の石油・ガス業界の「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」に向けた取り組みを注視したい。

(出所:CNPC、IEA他)

 

1. 中国の国有石油・ガス開発企業と都市ガス会社によるメタン排出抑制アライアンス結成

2021年5月18日、中国の石油・ガス企業と都市ガス会社7社が2060年のカーボンニュートラル達成に向けて、メタン排出抑制に関するアライアンス(China Oil and Gas Methane Alliance、以下中国メタンアライアンス)を結成し、北京で設立式を行った。設立メンバーは国有石油企業3社(CNPC、SINOPEC、CNOOC)、国有パイプライングリッド会社PipeChina、地方政府系都市ガス会社の北京燃気(Beijing Gas)、民間五大都市ガスの一角を占める華潤燃気(CR Gas)、新奥能源(ENN)の7社である(表1)。初代理事長にはCNPCが就任した。設立式には国家発展改革委員会、生態環境部、国有資産監督管理委員会、国家能源局、清華大学などが参加した。

写真 中国メタンアライアンス設立式
写真:中国メタンアライアンス設立式

2021/5/19 新華網 中国油气企业甲烷控排联盟成立 搭建“产运销”一体甲烷管控平台

 

表 1:中国メタンアライアンス参加企業

表 1:中国メタンアライアンス参加企業
各種資料に基づき作成

1-1. 中国メタンアライアンスの目的と目標

CNPC他各種報道によると、この中国メタンアライアンスはメタン排出抑制に関する協力と技術的な知見を共有し、メタン排出量の測定、報告および検証(Measurement, Reporting and Verification; MRV)の構築を強化し、メタン排出量の測定システムの標準化や国際化を推進することを目的としている。そして石油・ガスの生産、貯蔵、輸送、販売において、メタンの漏洩検知・修理(Leak Detection And Repair; LDAR)などの排出抑制策を実施し、生産過程で排出するガスの回収と利用を進め、フレアを削減するための措置を講じる。この他、新エネルギーを積極的に開発し、石油・ガスの生産過程における化石燃料への依存度を低減するとしている。

中国メタンアライアンスは2025年までに天然ガス生産におけるメタン排出を0.25%以下に近付け、2035年には世界のトップレベルに到達することを目指す目標を設定している。さらに世界の気候変動に関するガバナンスにおいて中国の石油・ガス企業の影響力を高め、中国企業の責任を示すとしている。

 

1-2. 中国メタンアライアンス設立の背景

中国メタンアライアンス設立の背景として習近平国家主席が号令をかけている「2030年の排出ピークアウト、2060年のカーボンニュートラル」に向けた業界の前向きな姿勢のアピールと「欧州メタン戦略」による排出規制を意識した可能性があるのではないかと考えている。

(1)石油・化学業界の「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」宣言

中国では習近平国家主席が2020年9月22日の国連総会一般討論のビデオ演説で、「二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに減少に転じ、2060年までに炭素の排出と吸収を均衡させて実質ゼロとする“カーボンニュートラル”を実現するよう努力する」と表明した。この公約は中国で「30・60」(2030年の排出ピークアウト、2060年のカーボンニュートラル)あるいは「双碳(ダブルカーボン)」などと呼ばれる。

2021年3月の全人代では「第14次五か年計画(2021~25年)および2035年長期目標綱要」(2021~35年)が承認され、第14次五か年計画のエネルギー関連基本方針として排出原単位の削減(エネルギー効率の向上)や2030年の二酸化炭素排出ピークアウトに向けた行動計画を策定することが示された。現在地方政府や各業界で2030年の排出ピークアウトに向けた取り組みが検討されている。そして中国社会科学院や上海交通大学など政府系シンクタンクやアカデミーを中心に2060年のカーボンニュートラルに向けたロードマップについて検討が行われている。

石油・ガス業界については、中国メタンアライアンス組成に先駆けて、2021年1月15日に17の石油・ガス企業を中心とするエネルギー企業、石油化学企業、工業パークならびに中国石油・化学工業団体が「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」宣言を連名で発表した。

宣言では、中国の石油・石油化学産業は石油化学工業大国から強国に飛躍する。また、来る低炭素時代に向けて、石油化学産業はグリーンかつ低炭素な発展において産業界の先頭に立つこと。これを目的として、(1)クリーン・低炭素なエネルギーの推進、(2)エネルギー効率の向上、(3)石油化学製品のハイエンド化、(4)二酸化炭素の回収・貯留(CCS)、炭素吸収(カーボンシンク)プロジェクトの開発、(5)技術研究開発の強化、(6)グリーン・低炭素への投資の増加」の6項目の提唱、コミットメントが示された(表2)。

17の企業、工業パーク、業界団体のうち、石油・ガス会社は中国国有3社(CNPC、SINOPEC、CNOOC)に加え、天然ガスパイプライングリッド会社のPipeChina、陝西省政府がサポートする陝西延長石油、民間新興精製大手の恒力(Hengli)が参加した。石油化学企業ではSINOCHEMとChemChina、中国化学工程集団、上海華誼(Huayi)、万華化学(Wanhua)が参加した。なお、SINOCHEMとChemChinaは2021年3月31日に国有資産監督管理委員会が経営統合を発表し5月に統合が完了した。両社はいずれも国家経済と国民生活に係わる重要な国有企業である“中央企業”であったが、政府の中央企業再編の一環で統合に至った。石炭・電力では国家能源投資集団(CHN Energy)が参加した。国家能源投資集団も中央企業再編の一環で発電大手の国電集団と石炭大手の神華集団が2017年に合併した。工業パークは上海化学工業区、広東省恵州市の恵州大亜湾経済技術開発区、浙江省寧波市の寧波石化経済技術開発区、江蘇省南京市の南京江北新材料科技園、寧夏回族自治区の寧東能源化工基地が参加した。石油・化学業界団体は中国石油化学工業連合会(CPCIA)である(表3)。

 

表 2:「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」宣言における6項目のコミットメント

表 2:「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」宣言における6項目のコミットメント

北極星電力網2021/2/2《中国石油和化学工业碳达峰与碳中和宣言》(全文)に基づき作成

 

表 3:「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」宣言を出した企業、工業パーク、業界団体

表 3:「排出ピークアウトおよびカーボンニュートラル」宣言を出した企業、工業パーク、業界団体

北極星電力網2021/2/2《中国石油和化学工业碳达峰与碳中和宣言》(全文)に基づき作成

 

(2)「欧州メタン戦略」による排出規制の標準化を意識した可能性

この目標は2020年に欧州委員会(EC)が発表した“EU Strategy to reduce Methane Emissions”(以下、「欧州メタン戦略」)を意識したものと思われる。白川(2021)[1]によると、「欧州メタン戦略」は、欧州・国際面における、エネルギー、農業、廃棄物部門からのメタン排出削減に関する法的、非法的諸策を示している。2021年に法案が提出され、2025年に施行される予定である。欧州域内のMRVや LDARの改善義務化に加え、日本、中国、韓国に働きかけ、受入国連合を作ることや、EUに輸入される天然ガス・LNGについてターゲットを設定(石油・ガスメタンパートナーシップOil and Gas Methane Partnership; OGMPが設定した新たな測定基準であるOGMP2.0で2025年以降メタン排出0.2%を超える天然ガスの輸入を禁止することを含む)することが盛り込まれている。

中国は天然ガス消費の6割が国産ガスで4割を輸入に依存しており、欧州に天然ガスやLNGを輸出しているわけではない。中国が欧州メタン戦略を意識する理由は、アップルやフォルクスワーゲンなど欧米の一部企業を中心に取り組みが始まっているサプライチェーンにおける二酸化炭素排出削減を目指した動き(取引先の生産設備の稼働や素材の製造に対しても排出削減を求める)にあるのではないか。中国では天然ガス消費の4割が製造業を含む工業向けの燃料として使われている。中国は欧州メタン戦略による天然ガス・LNGのメタン排出基準がG7など主要国で標準化した場合、将来的に中国の天然ガスを燃料として製造された製品が受け入れられなくなるリスクがあると考えた。それがガス生産企業と都市ガス配給企業がアライアンスを組んだ理由の一つではないだろうか。


[1] 天然ガス・LNG最新動向 ―新たな脱炭素処方箋:欧州メタン戦略とカーボンニュートラルLNG、効能と副作用―

 

2. 中国のガス生産に伴うメタン排出量と削減可能量

IEA Methane tracker database[2]によると、2020年の世界の石油・ガス部門のメタン排出量は72MMt(CO2換算2.16Gt)であり、中国の2020年の石油・ガス部門のメタン排出量は世界の排出量の4.4%に相当する3.15MMt(CO2換算94.5MMt)と推計されている。このうち中国のガスに関するメタン排出量は排出量全体の64%(2MMt)で、陸上と海洋、非在来型を合わせたガス生産における漏洩・ベントが全体の29%(0.9MMt)を占める(図1)。

2020年の中国の天然ガス生産量192.5Bcm(140.5MMt)に基づき計算すると、中国のガス生産に伴うメタン排出は約0.6%と推定される。中国メタンアライアンスが設定した2025年までに天然ガス生産過程におけるメタン排出を0.25%以下に近付ける目標実現のためには5年でメタン排出を半減させなければならない。

IEA Methane tracker databaseは、中国の石油ガス部門のメタン排出の70%(2.2MMt)は技術的に回収可能であり、またメタン排出の54%(1.7MMt)は現在の価格ベースで正味費用なしで回収可能と推定している。このうちガス生産に伴うメタン排出はその8割(0.7MMt)について、回収したガスの収益が回収のための投資を上回るため、実質的なコスト負担を伴わずに回収可能と推定している。


図 1:中国の石油・ガスに関するメタン排出(2020年推計)
図 1:中国の石油・ガスに関するメタン排出(2020年推計)
IEA Methane tracker databaseに基づき作成
図 2:中国の天然ガス生産(上流)におけるメタンの排出削減可能量(推定)
図 2:中国の天然ガス生産(上流)におけるメタンの排出削減可能量(推定)
IEA Methane Tracker databaseに基づき作成

以上

(この報告は2021年6月11日時点のものです)

 

参考資料

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