ページ番号1009064 更新日 令和3年6月17日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
経済状況及び新型コロナウイルスの状況について
- プーチン大統領は、5月26日、政府と経済問題に関する会議を開催した。
- 会議の中で、プーチン大統領は、依然として不安定な要素がロシア経済と世界経済の両方で影響を及ぼしているとし、国内外のビジネス活動の動向を迅速に把握し、分析を行う必要があると強調した。また、ロシアでは、多くの経済指標はまだ以前の水準に達していないが、明示的な前向きの変化があると述べた。たとえば、失業率については、2020年8月の6.4%から、2021年4月に5.2%まで改善しており、引き続き取り組みを進めて2019年の4.7%の水準に到達することが必要だと述べ、これがまさに政府に出されている指示であると強調した。
- 新型コロナウイルス対策については、人々が交流し、公共の場所に行く夏休みシーズンが目前に迫り、集団免疫を形成する必要があるとの認識を示した。また予防接種は強制すべきではないが、人々はワクチン接種の必要性を自覚すべきで、そうでなければ、特に高齢者では、致命的な危険に直面する可能性があると述べた。これまでもプーチン大統領は、ワクチン接種は市民に強制しないとの方針を示してきたが、5月19日の報道によると、メドベージェフ前首相は、国家の利益のためや国民を保護するためにワクチン接種が義務化される可能性があるとの発言をしており、プーチン大統領が改めてこれを否定した形となる。
- また、プーチン大統領は、ロシアのワクチンは最も信頼性が高く、安全であり、専門家が健康を害したり深刻な合併症を引き起こしたりしないと確認していると強調し、ワクチン接種は経済社会情勢と直結しているが、これは重要ではなく、健康のために接種することが第一であると述べ、ワクチン接種を検討するように市民に訴えた。
- プーチン大統領は、5月10日、ロシアの新型コロナウイルスの感染の状況は安定していて、横ばいであるという専門家による評価を紹介し、検査とワクチン接種の両方の努力を継続する必要があるという見解を示していた。また、プーチン大統領が2度目のワクチン接種を終え、5月9日の抗体検査で抗体を確認したことも明かした。
- ロシアでは、新型コロナウイルスの感染者の増加の懸念により、本来は5月4日~5月7日は連休の合間で平日であったところ、5月1日から5月10日までを非労働日として人流を抑える大統領令を出したが、この措置による目立った効果は見られず、5月中のロシアの1日あたりの新規感染者数は、8,000~9,000人で推移している。
石油及びガス産業発展のためのジェネラルスキーム草案を承認
- ロシア政府は、5月13日、政府の会議で、2035年までの石油産業開発のためのジェネラルスキーム及び2035年までのガス産業開発のジェネラルスキームについて議論を行い、草案を承認したと発表した。両文書は、2020年6月に承認された2035年までのエネルギー戦略に定められた目標を達成するために、経済的に実行可能な産業開発の方向性について示している。
- ミシュスチン首相によると、石油産業開発のジェネラルスキームは、石油と随伴ガスの生産、石油製品の需要のシナリオを示し、石油精製とパイプライン輸送の開発方針を示している。また、革新的な開発と輸入代替、規制措置を含む国の政策の方向性を定めている。同首相によると、ロシアには解決すべき深刻な課題があるとして、国内の技術、設備、ソフトウェアのシェアを80%以上にすること、ロシアの製油所で高品質のガソリン、灯油、ディーゼル燃料の生産を、2030年までに少なくとも70%増加させることを目標として挙げた。また、従来のエネルギー市場で高い競争力を維持すること、新たな製品やサービスを創造することも必要だとしている。
- また、同首相は、ガス産業開発のジェネラルスキームは、包括的な計画を定めることで、全ての分野がうまく機能し、ガス産業の財務指標を成長させ、ガス産業によるロシアのGDPへの貢献を高めることができると説明した。
- 5月17日付けの報道によると、ジェネラルスキームは、需要予測ではなく、ロシアの潜在的な生産能力に基づいて、それぞれ3つのシナリオを作成している。
- 石油生産のシナリオでは、ロシアの石油生産は2035年までに年間4億1,400万~4億9,400万トンに減少すると予測されている。報道によると、2020年の石油生産量は4億7,640万トン(ガスコンデンセートを除く)だったとされている。また、2028年~2029年に石油生産量は年間5億400万~5億9,000万トンでピークに達した後、減少に転じると予測されている。需要についても今後10~15年でピークに達するとされているが、世界経済の脱炭素化が加速すれば、さらに早くピークに達する可能性があるとされている。
- ガス生産のシナリオでは、2035年までに838~1,048BCMまで増加する。また、ガス輸出については330~472BCMに増加し、このうちLNGによる輸出は88.2~156.5BCMとされている。報道によると、2020年のガス生産量は、692.9BCM、輸出は242.2BCM、うちLNG輸出は41.7BCMだったとされている。
- 2035年までのエネルギー戦略の2035年時点での目標値は、石油生産は4億9,000万~5億5,500万トンとされていたが、今回のジェネラルスキームでは「年間4億1,400万~4億9,400万トンに減少」と、さらに悲観的な数字が示されたことになる。ガス生産については、エネルギー戦略では859.7BCM~1,000.7BCMとの目標だったため、ほぼ同じ水準となっているが、LNG輸出については、108~189BCMとの目標よりも低い水準となっている。
(2) 対外関係
1) 米国・チェコ
米国及びチェコを「非友好国」に指定
- ロシア政府は、5月14日、ロシアに対して非友好的な行動をとっている国として、米国とチェコを指定したリストを発表した。このリストには各国の大使館等で雇用できるロシア人の人数が規定されており、米国は0人、チェコは19人とされた。
- プーチン大統領は、4月23日、外国の非友好的な行動に対する対抗措置をとるための大統領令に署名し、ロシアが非友好国と認定した国に対し、在ロシア大使館等での雇用契約の締結を制限し、職員の数が制限できるようにした。4月15日には米国が10人のロシア外交官を国外追放し、ロシアも同じ人数の米国外交官を追放することを発表するなど、相互に制裁措置がとられている。
- チェコにおいても、4月中旬にチェコ政府がロシアの工作員が弾薬庫の爆発に関与したとして、ロシアと互いに外交官を追放する事態となっている。
- 在ロシア米国大使館は、4月30日、ロシア政府が米国に対して上記大統領令による措置をとることを通知したとして、5月12日から領事サービスの提供を中止する予定としていたが、5月14日、ロシア政府が措置の適用を延期する通知をしたとして、領事サービスを7月16日まで継続すると発表した。また、新型コロナウイルスの影響による特別措置のため、ロシア政府は2021年6月15日まで、ビザの期限が切れている外国人の滞在を認めているが、米国大使館はビザの期限が切れている米国人は期限までにロシアを出国することを強く推奨し、ロシアに残留する場合は必要な手続きを取るように勧告している。
Nord Stream 2のオペレーター企業と社長を制裁から除外
- 米国内務省は、5月19日、欧州エネルギー安全保障法(PEESA)に基づく制裁について、Nord Stream 2パイプラインのオペレーターであるNord Stream 2 AG社及びMatthias Warnig社長に制裁を課さないことを発表した。
- 内務省は、PEESAの規定に基づき、議会に制裁対象候補となるNord Stream 2 AG社及びMatthias Warnig社長を含む4船舶、5社、及び1個人のリストを提出した。しかし、Nord Stream 2 AG社及びMatthias Warnig社長については、米国の国益に鑑み、制裁から除外することとした。一方、船舶については議会に提出されたリストの4隻に加え、ロシア国営のMarine Rescue Serviceが保有又は支配し、Nord Stream 2の建設に関与する9隻にも、追加で制裁を課すことを発表した。Nord Stream 2の建設以外の捜索、救助、環境等の活動については、Marine Rescue Serviceへの制裁を除外する方針も示している。
- 内務省はこの判断について、米国大統領が欧州の同盟国やパートナーとの関係を再構築するという公約と一致し、欧州のエネルギー安全保障に対する政権のコミットメントを示しているとしている。また、ウクライナ、NATOの東側諸国、EUのエネルギー安全保障を弱体化させるとして、Nord Stream 2プロジェクト自体には反対していくことを表明しており、同盟は強固であると強調している。
- これに続き、米国財務省は、5月21日、内務省の発表どおり、PEESAに基づく制裁を発表した。国務省の報告書に掲載されていた4社のうち1社は既に制裁対象となっているため、今回は新たに企業3社、船舶13隻が制裁の対象として追加された。
2) 中国
田湾原発、徐大堡原発の4基の建設を開始
- プーチン大統領は、5月19日、中国の習近平国家主席と、新たな原子力発電所の起工式にオンライン形式で参加した。起工したのは、田湾原子力発電所の7号基、8号基、徐大堡原子力発電所の3号基と4号基となる。
- ロシアと中国は、2018年6月に、原子力エネルギー分野における戦略的文書の署名を行っており、120万kWのロシア型加圧水型原子炉を用いて4基の原子力発電所を建設することが合意されていた。
- 田湾原子力発電所は、1992年のロシアと中国の政府間協定によりロシアが建設を開始し、100万kWの1号基及び2号基は2007年から商用運転が開始されており、3号基は2017年、4号基は2018年に運転を開始、5号機、6号基は建設中となっている。今回建設を開始した7号基、8号基については、2026年~2027年に運転を開始する予定とされている。
- 徐大堡原子力発電所の1号機、2号機は着工に至っておらず、今回建設を開始した3号基、4号基は2027年~2028年に運転を開始する予定となっている。
3) サウジアラビア
貿易・経済・科学・技術協力の政府間委員会を開催
- ロシアのNovak副首相及びサウジアラビアのAbdulazizエネルギー大臣は、5月25日、第7回貿易経済・科学・技術協力の政府間委員会をオンライン形式で開催した。両政府は、2024年までに両国間の貿易額を50億ドルに増やすことを目標にしている。
- Novak副首相は、サウジアラビアとの間で、経済協力を進めるためのロードマップに合意し、署名する予定であることを明かした。2020年12月にNovak副首相がサウジアラビアを訪問した際、2021年前半にロードマップに署名する予定とされていた。
- エネルギー分野について、Novak副首相は、我々が世界の石油市場の安定化に成功したことは、OPECプラス各国のメリットであると述べた。また、両国は従来型エネルギーと再生可能エネルギーの両方の開発に大きな可能性を秘めているとし、低炭素エネルギーへの移行の分野における国際政策形成への協調的なアプローチの発展、水素エネルギーの技術及び投資の分野における発展を支援すると述べた。特に、水素エネルギー分野については、作業部会を設置し、エネルギー貯蔵技術を開発する提案があると述べた。また、原子力発電についても、サウジアラビアはRosatomが大規模プロジェクトを実施する有力な国の候補の一つであるとし、水上陸上の小型原子力発電所に関連する協力の用意があるとしている。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2021年3月15日から2021年4月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD 61.89595/バレルとなり、5月の原油輸出税はUSD7.5/バレルに引き下げられた。
- 5月の石油製品輸出税はUSD16.4/トン、ガソリンについてはUSD30.1/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 5月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,421万トン(約3億2,273万バレル、平均日量1,045万バレル)で、前年同月比11.2%増。
- 5月、原油輸出量は1,958万トン(約1億4,294万バレル)で、前年同月比6%増。
(3) 天然ガス生産
- 5月、天然ガス生産量は627億立方メートル(約2.2TCF)で、前年同月比で19.6%増。
ロシア国内のガス化ロードマップを承認
- ロシア政府は、5月6日、2030年までにロシア国内で技術的に可能なガス化を完了するためのロードマップを承認したと発表した。これにより、2019年に70.1%だったロシア全体のガス化水準は、2030年に82.9%に達する。
- ロードマップには、消費者の時間とコストの削減、幹線インフラの拡張に有利な条件の作成、供給ガスの先進的な計測システムの導入などが含まれる。また、幹線パイプラインと居住地内のガスパイプライン等について、構成主体毎に単一のオペレーターが担当することを想定しており、各措置を同期して効率的に実施することができるとされている。
- Novak副首相は、このロードマップにより、大統領の指示に従って、2023年までにすでにガス化されている地域においては住居までガスを輸送することができるとし、これは市民ではなくオペレーターの費用で行われると強調した。プーチン大統領は、4月の年次教書演説の中で、ガス供給ネットワークがあるにも関わらず住居までガスがひかれていない場合に、市民から資金を集めることなくガス化を行うように政府に指示をしていた。
- また、Novak副首相は、テイクオア・ペイの長期契約でのガス供給を含む産業施設のガス化にも特別な注意が向けられるだろうと強調した。
- Gazpromによると、Gazpromは2020年にロシアの67地域と5年間のガスインフラ拡張計画に署名した。また、Gazpromが提供する資金は、2020年までの5年間の計画と比較すると、2.9倍にもなり、その3分の2以上が農村部のために利用されるとしている。これにより、2026年までにはロシアの35地域で、技術的に可能なガス化が完了するとされている。
(4) 法令・税制
北極海航路からのエネルギー輸送をロシア建造船のみに制限可能に
- プーチン大統領は、5月26日、商業海運法の改正法に署名した。これにより、2017年12月の法改正でロシア船籍のみに制限されているカボタージュに加え北極海航路上で積み込まれるロシアで採掘された石油、天然ガス(LNGを含む)、ガスコンデンセート、石炭の輸送等の活動はロシア建造船のみに制限できるようになる。対象となる船舶の活動は別途定められる。
- 改正法は、ロシアの造船所への発注機会を提供し、輸入代替を進め国内の造船業を発展させることを目的としている。ちなみに、ロシアの造船所の稼働率は40~50%と低迷、収益性の高い運営を実現できておらず、船主を支援するリース料金やリサイクルへの補助金などはあるが、造船業への直接的な支援はされていないとされる。
- ロシア製と認定するための基準は、5月20日、政令719号によって設定された。政令では、船舶の各種設備をロシア製とすることで点数が加算され、合計点数が基準以上であればロシア製と認定できるとされている。ただし、石油、石油製品、LNGのタンカーについては、2022年7月までは、経過措置として、この改正法の対象外とされており、ロシア産資源等の輸送に使用することは可能となっている。
- また、この改正法の発効前に建造された船舶または契約締結された船舶、ロシア国内で建造が不可能な船舶等は適用除外とされ、これもロシア産資源等の輸送に使用することが可能である。
石油産業の税制に関する作業部会を設置
- エネルギー省は、5月29日、石油産業の税制に関する作業部会を設置すると発表した。
- エネルギー省のSorokin次官は、「石油産業はロシア経済の主要な推進力であり続ける必要があり、政府は安定した油田の操業を維持するために、財政及び規制の両面で定期的に検討を続ける必要がある。そして、下院予算税金委員会に、必要な措置を迅速に実行するための作業部会を創設する。」と述べた。この作業部会は非常に短期間で業界の発展のための追加のイニシアティブを検討することを可能にする重要な決定であると強調した。
- Sorokin次官は、1月、新規に発見される埋蔵量の減少、埋蔵量の開発の困難性の増加などを背景に、現在のマクロ経済状況で採算性のある可採埋蔵量は36%のみと試算を示している。
- 財務省のSazanov次官は、5月29日、上記の動きに関連し、西シベリアには生産の効率の悪さに起因して、まだ利用されていない大きな資源の可能性があり、その可能性を実現するための選択肢を見つける必要があると述べ、下院、上院、石油企業と協力していく方針を示した。一方、現状では有利なエネルギー資源価格とルーブル為替レートの状況があるため、石油産業の税制をすぐに改正する必要はないとの認識を示した。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) Rosneft
Sever港の石油輸出ターミナル建設を開始
- Rosneftは、5月25日、Vostok Oilプロジェクトで使用されるクラスノヤルスク地方北部のSever港の石油輸出ターミナルを建設するプロジェクトを開始したと発表した。すでに建設のための資材等、約2万トンの貨物が砕氷船により現地に届けられた。
- Sever港の石油輸出ターミナルは、3月、第1段階の建設に関するエンジニアリング調査について、ロシア当局から承認を得ていた。
- 港湾建設の第1段階の終了後は、年間最大3,000万トン(約60万b/d)の石油を出荷することが可能となり、2030年までに第2段階及び第3段階の建設が実施された後、石油の出荷量は年間1億トン(約200万b/d)に増加する計画となっている。Rosneftは、このプロジェクトの実施により、2024年までに北極海航路の貨物輸送量を8,000万トンに増やすというプーチン大統領の指示が実施できるとしている。
- 5月14日付けの報道によると、Vostok OilプロジェクトについてRosneftのCasimiro副社長は、同社のカンファレンスコールにおいて、我々は多くのパートナーと交渉している、年末あるいはもっと早くに別のパートナーがVostok Oilプロジェクトに参加することを市場に知らせるだろうと語った。同プロジェクトでは、2020年末、Trafigura社が10%の権益を取得する契約を締結している。2021年4月末時点で、Vostok Oilプロジェクトには52のライセンスが含まれており、13の油ガス田が発見されているとされている。
(2) Gazprom
Ust Lugaガス処理コンプレックスの建設を開始
- Gazpromは、5月21日、レニングラード州のUst Lugaでエタン含有ガスのガス処理コンプレックスの建設を開始したと発表した。起工式にはNovak副首相、GazpromのMiller社長、レニングラード州のDrozdenko知事、VEB.RFのShuvalov社長などが参加した。
- 施設は2つの企業体が運営する。ガス処理及びガス液化施設は、Gazprom及びRusGazDobycha社の合弁会社RusKhimAlyans、ガス化学施設はRusGazDobycha社の子会社Baltic Chemical Complexが運営する。
- ガス処理コンプレックスには、ヤマロネネツ自治管区のNadym-Pur-Taz地域からガスが供給され、将来的にはヤマル半島のTambeyskoyeガス田からも供給される。エタン含有ガスの輸送には、専用のパイプラインが利用される。また、GazpromとRusGazDobycha社は、Tambeyskoyeガス田の共同開発のための基本合意にも署名したとされる。この合意には、同ガス田でのライセンスを持つ合弁会社Tambey Gazdobychaを50%ずつ保有することが規定されており、2026年の生産開始に向けてガス田の開発を進めていくとされている。
- Novak副首相は、起工式において、このガス処理コンプレックスにより、世界のLNG市場でのシェアを15~20%、石油ガス化学市場でのロシアのシェアを6~7%に増加させる機会を得ることができると述べている。
- Ust Lugaガス処理コンプレックスでは、世界最大級の規模となる年間45BCMのガスを処理し、年間1,300万トンのLNGを製造、処理後の残りのガス年間18BCMがGazpromのパイプライン網に送られる。また、エタン留分はガス化学施設に送られ、年間300万トン以上のポリエチレンを生産する予定となっている。
(3) Novatek
Mikhelson社長がプーチン大統領に業績・計画を報告
- Mikhelson社長は、5月17日、プーチン大統領と面談し、2020年の業績と、プロジェクトの計画について報告を行った。
- Yamal LNG については、Mikhelson社長は、2017年の生産開始から累計5,000万トンのLNGを生産し、世界のLNG生産の5%を占めていると報告し、プーチン大統領は、これは同社長の個人的な成果だと称賛した。また、Mikhelson社長は、昨年は北極海航路の航海を5月に開始し、今年の1月及び2月に最後の航海を行ったと報告し、Rosatomと2023年~2024年に通年航行を行う可能性を議論していると述べた。さらに、カムチャツカとムルマンスクの積替えターミナルについては、政府の計画によって全ての問題が解決されたとして、2022年後半と2023年前半にそれぞれ稼働を開始する予定だと報告した。
- 国内のガス供給について、同社長は、小規模LNGプラントをチェリャビンスク州のMagnitogorskで稼働開始したことを報告し、サンクトペテルブルクとチェリャビンスク州間の幹線道路沿いにLNG供給施設を建設していく方針を示した。また、ドイツとポーランドにも10のLNG供給施設があり、月間2,000トンの規模であると報告し、プーチン大統領はグリーンエネルギーの開発への素晴らしい貢献であると述べた。
- 建設中のArctic LNG 2プロジェクトについては、新型コロナウイルスの影響にも関わらず予定より遅れることはなかったと述べ、計画で第1~第3トレインをそれぞれ2023年、2024年、2026年に開始する予定のところ、第3トレインは2025年に稼働できる見込みだと、同社長は説明した。また、Yamal LNGの設備の国内製造率は約30%だったことに対し、Arctic LNG 2では50%以上に達し、その次のプロジェクトでは少なくとも70%が可能だと述べた。また、Mikhelson社長は、2024年~2030年にかけて、LNGの生産量が合計2,600万トンとなる4つの液化施設を建設する計画だとし、政府のLNG生産や北極海航路の輸送量の目標に貢献すると強調した。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Yamal LNG
第4トレインのフル稼働を開始
- 5月31日付けの報道によると、NovatekはYamal LNGの第4トレインがフル稼働に達した。Yamal LNGの第4トレインは90万トンの容量で、NovatekのLNG技術であるArctic Cascadeを利用した初めてのLNG生産プラントとなる。
- Yamal LNGでは、第3トレインまでスケジュール内で生産を開始してきたが、第4トレインは2019年第4四半期に立ち上がる予定だったものが、複数回にわたり延期が発表されていた。Mikhelson社長は、今年2月18日のNovatekのカンファレンスコールで、第4トレインの遅れの要因としてロシアの企業が特別に設計及び製造をしているため、標準機器よりも時間がかかったと発言している。
- Arctic Cascade技術はNovatekのObskiy LNGでも生産規模を引き上げて利用される予定になっていたが、Yamal LNGの遅れにより、Obskiy LNGでは異なる技術が使われ、プロジェクト内でアンモニア生産も行う可能性も報じられている。
以上
(この報告は2021年6月17日時点のものです)
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