ページ番号1009076 更新日 令和3年7月6日

原油市場他:7月5日に開催される予定であったOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が中止、7月に実施中の減産措置が8月以降も同規模で実施される可能性(速報)

レポート属性
レポートID 1009076
作成日 2021-07-06 00:00:00 +0900
更新日 2021-07-06 10:41:11 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 13
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2021/07/06 野神 隆之
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概要

  1. 2021年7月2日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、現在実施している減産措置(7月時点で日量576万バレル)の8月以降の取り扱いにつき協議を行った。
  2. 当該会合では、減産措置を2021年8月から12月にかけ毎月最大で日量40万バレル縮小する他、2022年4月末に終了する予定である減産措置を2022年末まで延長する方向で協議が行われ、大半の減産措置参加国が同意したとされる。
  3. しかしながら、UAEは、8月から12月にかけての減産措置の段階的な縮小実施については賛成したものの、自国の原油生産能力は2018年10月時点の日量316.8万バレルから現在同384万バレルへと増加していることから、これに応じて減産措置の基準となる原油生産量の引き上げが認められなければ、2022年末までの減産措置の延長には反対であると主張した。
  4. この結果、7月2日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合では合意に到達することができず、当該会合は7月5日に継続して開催されることとなった。
  5. その後、UAE側は、現在の減産措置の期限である2022年4月末までにはなお時間があることから、2022年末迄の減産措置の延長の是非については、今回の閣僚級会合ではなく、今後開催される予定である閣僚級会合で議論されるべきである旨主張した。
  6. しかしながら、サウジアラビアは、8月から12月にかけての減産措置の縮小と2022年末までの減産措置の延長は同等に重要なものであり、UAEの主張は受け入れられないとの姿勢を固持した。
  7. そして、7月5日に継続して開催が予定された当該閣僚級会合に向けた調整においても、サウジアラビアとUAEとの意見の相違は解消されなかったことにより、7月5日に開催される予定であった同閣僚級会合は中止となり、次回の閣僚級会合の開催日も未定となった。
  8. OPECプラス産油国減産措置は当面7月に実施中のものが8月以降も同規模のまま実施される方向となるものと伝えられる。
  9. 石油市場では、今回の閣僚級会合で8月につき日量50万バレル程度の減産措置の縮小が決定されると予想されていたところ、同月は日量40万バレル減産措置を縮小する方向で検討されている旨7月1日に伝えられたことから、世界石油需給の引き締まり感を市場が意識した結果、同日の原油価格(WTI)は前日終値比で1バレル当たり1.76ドル上昇の同75.23ドルの終値と、2018年10月3日以来の高水準に到達したが、今回の閣僚級会合の中止により、8月以降の減産措置の縮小が見送られる可能性が高まったとの見方とともに、世界石油需給の一層の引き締まり観測が市場で増大したことにより、7月5日には原油相場にさらに上方圧力が加わる結果となり、この日(7月4日の米国独立記念日に伴う休日の振替で終値は計上されず)は前週末終値比で1バレル当たり1.20ドル上昇の同76.36ドルで取引を中断している。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2021年7月2日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は電話会議形式で閣僚級会合を開催し(当初開催予定の7月1日から1日遅延した、後述)、現在実施している減産措置(7月時点で日量576万バレル)の8月以降の取り扱いにつき協議を行った。

 (2) 当該会合では、減産措置を2021年8月から12月にかけ毎月最大で日量40万バレル縮小する他、2022年4月末で終了する予定である減産措置を2022年末まで延長する方向で協議が行われ、大半の減産措置参加国が同意したとされる。

 (3) しかしながら、UAEは、8月から12月にかけての減産措置の段階的な縮小実施については賛成したものの、自国の原油生産能力は2018年10月時点の日量316.8万バレルから現在同384万バレルへと増加していることから、これに応じて減産措置の基準となる原油生産量の引き上げが認められなければ、2022年末までの減産措置の延長には反対であると主張した。

 (4) この結果、7月2日の開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合では全ての減産措置参加産油国が同意する決定に到達することができず、当該会合は7月5日に継続されることとなった。

 (5) しかしながら、7月5日に継続して開催が予定されたOPECプラス産油国閣僚級会合に向けた調整においても、サウジアラビアとUAEとの意見の相違は解消されなかったことにより、7月5日に開催される予定であった同閣僚級会合は中止となった(参考1参照)。

 (6) 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催の日程は明示されておらず、「しかるべき時に開催を決定し、それに従って発表する」旨OPEC事務局は7月5日に明らかにしている。

 (7) このため、OPECプラス産油国減産措置は当面7月に実施中のものが8月以降も同規模のまま実施される方向になるものと伝えられる(表1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅


2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2021年6月1日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合では、2021年8月以降の減産措置に関する協議は見送られた。

 (2) 6月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合開催の際には、欧米諸国等では新型コロナウイルスワクチン接種普及が進展しつつあることにより新型コロナウイルス感染者数が減少するとともに個人の外出規制及び経済活動制限が緩和されつつあったことから、これら地域の石油需要が回復しつつあったことに加え、5月初頭にかけ新型コロナウイルス感染が拡大していたインドでも感染者数が減少し始めたことにより同国でも経済とともに石油需要が底打ちする兆しが見え始めており、この先世界石油需給が引き締まる方向に向かうとの観測が市場で増大するとともに原油相場に上方圧力が加わる格好となっていた。

 (3) また、5月29日以降米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入することにより、季節的な石油需給引き締まり感が市場で強まったことも、原油価格にとって支援材料となっていた。

 (4) 一方で、イラン核合意正常化に向けたイランと西側諸国等の協議が進行中であり、核合意正常化で合意に至ることに伴い、米国の対イラン制裁が解除される等することによりイランからの原油供給が増加するとともに、世界石油需給が緩和するとの観測が市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加える場面が見られた。

 (5) 加えて、今後新型コロナウイルス感染が再拡大した場合の石油需要に与える影響につき予測が困難な側面があることにより、世界石油需給バランスがこの先どのように展開するかについて不透明感が強い状況にあった。

 (6) そのような不透明感により、OPECプラス産油国は6月1日開催の閣僚級会合では、8月以降の減産措置を巡る方針決定を見送ることとした(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は実際に減産措置縮小が必要だと判明した場合に減産措置を縮小する旨6月1日に示唆しており、当該減産措置の縮小に慎重であることが覗われた)。

 (7) 6月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合での決定は、世界石油需給バランス上この先予想される展開を巡る、OPECプラス産油国の慎重な姿勢を示唆しているとの印象を市場に与える格好となっており、この結果世界石油需要の回復に対し減産措置の縮小が後手に回るとともに石油需給が引き締まる方向に向かいやすいとの観測が市場で増大したこともあり、6月1日の原油価格(WTI)は前週末終値比で1バレル当たり1.40ドル上昇し終値は同67.72ドルと、2018年10月22日(この時は同69.17ドル)以来の高水準に到達した。

 (8) そしてその後も、新型コロナウイルスワクチン接種普及の進展により、欧米諸国等では新型コロナウイルス感染者数が減少することにより個人の外出規制及び経済活動制限の緩和が進められた(6月15日には米国のニューヨーク及びカリフォルニア両州が一部を除き経済活動制限を全面的に解除した)他、5月6日には1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が414,188人と過去最高水準に到達したインドでも7月4日時点では新規感染者数が39,796人と5月6日の10分の1以下の水準にまで減少するとともに、新型コロナウイルス感染拡大に伴い4月19日より都市封鎖措置を実施していたインドの首都ニューデリーを含むデリー首都圏等多くの州では6月14日に経済活動制限等が緩和されるなど、同国の経済及び石油需要が持ち直す兆しがさらに明確になった。

 (9) このような中で、5月29日には米国で夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入したこともあり、原油価格(WTI)は6月10日以降継続的に終値ベースで1バレル当たり70ドルを超過するようになるなど上昇傾向となり(図1参照)、同国のガソリン需給の引き締まり観測から全米ガソリン小売価格は5月10日以降米国国民の不満が高まり始める1ガロン当たり3ドルを超過し続けたことにより、バイデン政権への支持率に影響が及ぶ恐れが増大しやすい状態となった(図2参照)。

図1 原油価格の推移(2020~21年)

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~21年)

(10) ただ、OPECプラス産油国閣僚級会合が開催された7月2日の時点においても、依然としてイランと西側諸国等との協議は継続中であり、この面では、今後も、イラン核合意正常化に向けたイランと西側諸国等の協議が合意に至ることに際し、米国の対イラン制裁が解除される等することによりイランからの原油生産が増加するとともに、世界石油需給の緩和感が市場で強まる結果、原油相場に下方圧力が加わりやすくなるといった展開も否定できなかった。

(11) また、例えば、6月10日には、米国財務省がイラン国営石油会社NIOC元幹部を含むイラン政府関係者3人及びイラン企業2社に対して科していた制裁を解除する旨報じられたことにより、当該報道直後の同日昼頃(米国東部時間)には、それまで1バレル当たり70ドルを超過する水準で推移していた原油価格(WTI)が5分足らずの間に68.68ドルまで下落する場面が見られた(その後当該制裁解除は定常的なものでありイラン核合意正常化を巡る米国とイランとの協議とは関係ない旨米国政府関係者が同日明らかにしたと報じられたことにより、原油価格は回復に向かった、図3参照)など、原油価格の動きには依然として不安定な部分が垣間見られた。

図3 米国のイラン政府関係者制裁解除に伴う原油価格(WTI)急落(赤丸部分)(2021年6月10日)

(12) そして、緩和的な金融政策の下、低コストで調達されたものを含め投資資金が活発に原油市場へ流入していることが原油相場を下支えしている側面があると見られることもあり、今後も、例えばOPECプラス産油国減産措置のさらなる緩和とイラン核合意正常化に向けた合意到達による米国の対イラン制裁解除に伴うイランからの原油供給拡大観測が重なることや、新型コロナウイルス変異株の感染拡大で経済及び石油需要の回復が影響を受けることにより、この先の石油需給引き締まりと原油価格の上昇期待を巡る石油市場関係者の心理が変化するようであれば、これまで流入していた投資資金が一転退出し始めることにより原油価格が急落するといった展開となることも否定できなかった。

(13) このようなことから、OPECプラス産油国は8月以降につき減産措置の縮小を決定し、世界石油需給の引き締まり感を抑制しようとする一方で、減産措置の縮小幅を毎月日量40万バレルと比較的小刻みにすることで世界石油需給の緩和感の醸成と原油価格急落を防止しようとしたものと考えられる。

(14) 2021年8月から12月にかけ日量40万バレルの減産措置の縮小を実施した場合、現時点での見通しでは2021年第三及び第四四半期は世界石油需要が供給を超過することになるものの、季節的に石油需給が緩和する2022年第一四半期は世界石油供給が需要を超過することになる(なお、2022年第一半期においては、さらなる減産措置の縮小は想定していない)ため、2021年後半の石油需要超過を2022年第一四半期の石油供給超過で概ね相殺する格好となり、この時期全体としては世界石油需給は概ね均衡することになる(表2及び3参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2021年)

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)

(15) また、現時点では、OPECプラス産油国による減産措置は2022年4月30日で終了することとなるが、もしその通りにした場合、2022年5月から12月にかけては、それまでOPECプラス産油国が減産していた原油が再び石油市場に流入することに伴い供給過剰となることにより、世界石油市場において余剰在庫が積み上がるとともに、石油需給緩和感で原油相場に下方圧力を加える可能性があることから、2022年末までの減産措置を継続を決定することにより、サウジアラビアをはじめとするOPECプラス産油国は将来の石油需給緩和感の醸成を抑制しようとしたものと見られる。

(16) しかしながら、7月1日のOPECプラス産油国共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee)開催の際、UAEから、2018年10月時点での自国の原油生産能力日量316.8万バレルが現時点では同384万バレルへと増強されていることにより、減産措置の基準となる原油生産量を引き上げることを要求し、それが受け入れなければ、減産措置の縮小案及び2022年末までの減産措置の延長を承認しない旨主張したことにより、議論が紛糾した結果、JMMCを7月2日にも実施することとなった。

(17) UAEは、これまで自国の基準原油生産量が低いにもかかわらずOPECプラス産油国の減産措置に合意してきたのは、善意の姿勢を示すとともに2022年4月末に減産措置が終了するとされていたためである旨同国が明らかにしたと7月2日に伝えられる。

(18) また、UAEはOPEC加盟が同国の長期的利害(将来の世界石油需要見通しに関する不透明感が強まる中、早期に原油を生産し収入を確保しておく必要性があるかもしれないと同国が認識していることが背景にあると見る向きもある)に合致しているかどうか検討していた(その際OPEC脱退といった選択肢も含まれていたとされる)とも2020年11月17日に伝えられていた。

(19) そして、7月2日に開催されたOPECプラス閣僚級会合においても、UAEは減産措置の段階的縮小には賛成するものの、2022年4月末に終了する予定である減産措置の2022年末までの延長の決定については、自国の基準原油生産量の引き上げが認められなければ反対する旨主張した。

(20) 月3日には、UAEのマズルーイ エネルギー相は、石油市場がそれを必要としていることから、2021年8月以降の減産措置の段階的縮小には無条件で賛成するものの、2022年4月末に終了する予定である減産措置の2022年末までの延長の決定については、実際に延長を決定しなければならない時期までにはなお8~9ヶ月程度の時間的余裕があるため、この先開催される予定である閣僚級会合まで決定を先送りすべきである旨改めて主張した。

(21) しかしながら、2021年2~6月に最大日量100万バレルの自主的な減産を実施したサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は、減産措置の延長は決定すべき最重要課題の一つであると認識する他、OPECプラス産油国の一部の産油国につき単一の月を減産措置の基準原油生産量として採用するのは困難であり、また、採用すべきではない旨7月4日に反論した。

(22) UAEの減産措置基準原油生産量の引き上げを認めれば、他の減産措置参加産油国も原油生産目標を引き上げるべく基準原油生産量の改訂を要望する可能性があり、結果として新たな原油生産目標設定を巡る議論が複雑化することにより、市場がOPECプラス産油国の結束を疑問視するようになるとともに、原油価格に負の影響が及ぶ恐れもあったため、原油価格の安定を重視するサウジアラビアとしてはそのような事態は回避したいと考えていたものと見られる。

(23) このようなことから、7月2日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合では合意に到達することができず、7月5日に改めて当該会合を開催し協議を継続することにしたが、7月5日の会合に向けた関係産油国間での調整過程においても、サウジアラビアとUAEとの意見の相違は解消されなかったため、7月5日に開催される予定であった会合は中止となり、次回の閣僚級会合の開催日も未定となった。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 石油市場では、今回の閣僚級会合で8月につき日量50万バレル程度の減産措置の縮小が決定されると予想されていた(市場関係者間では8月につき日量55万バレル程度の減産措置の縮小が決定されると予想されている旨6月24日に伝えられていた)ところ、同月は日量40万バレル減産措置を縮小する方向で検討されている旨7月1日に伝えられたことから、世界石油需給の引き締まり感を市場が意識した結果、同日の原油価格(WTI)は前日終値比で1バレル当たり1.76ドル上昇の同75.23ドルの終値と、2018年10月3日(この時は同76.41ドル)以来の高水準に到達した。

 (2) そして、7月5日に開催が予定された閣僚級会合の中止により、8月以降の減産措置の縮小が見送られる可能性が高まったとの見方とともに、世界石油需給の一層の引き締まり観測が市場で増大したことにより、7月5日の原油市場では原油相場にさらに上方圧力が加わる結果となり、この日(7月4日の米国独立記念日(インディペンデンス・デー)に伴う休日の振替で終値は計上されず)は午後1時(米国東部時間)に、前週末終値比で1バレル当たり1.20ドル上昇の同76.36ドルで取引を中断している。

 (3) 今後も、世界各国及び地域で新型コロナウイルスワクチン接種普及が進展するとともに、個人の外出規制及び経済活動制限が緩和することにより、経済成長が加速するとともに石油需要が増加するとの期待が市場で広がりやすい中で、現時点では、次回OPECプラス産油国閣僚級会合開催日程の目処が立っておらず、現状では7月のOPECプラス産油国減産措置が8月以降も継続する方向性となる可能性があることから、今後の世界石油需給引き締まり感が市場で意識され続けることにより、当面原油相場には上方圧力が加わりうるものと見られる。

 (4) そして、今後OPECプラス産油国閣僚級会合が改めて開催され、今後の減産措置に関する方針につきOPECプラス産油国間で合意できるかどうかが、石油市場関係者の注目するところとなるであろう。

 (5) OPECプラス産油国閣僚級会合が開催される兆候が見られなければ、その分だけ、2021年7月の規模の減産措置が継続する可能性が高まることから、特に2022年4月末迄は世界石油需給が引き締まりやすく、従って原油相場に上方圧力を加えるといった展開も想定される。

 (6) しかしながら、このままOPECプラス産油国閣僚級会合が開催されず、従って減産措置の延長が決定されないようであれが、2022年5月1日以降は既存の減産措置が失効するため、この時点で減産相当分の原油供給が市場になされるようになるとともに、世界石油需給が相当程度緩和、原油相場に下方圧を加える(もしくはそのような観測の下、減産措置の失効前に原油相場に下方圧力が加わり始めることもありうる)といったように、原油価格が乱高下することも否定できない。

 (7) 他方、イラン核合意の正常化に向けたイランと西側諸国等との協議が合意に到達することに際し、米国の対イラン制裁が解除されるとともにイランから原油供給が拡大するとの観測が市場で根強く残っているものの、2021年末に向け新型コロナウイルスワクチン接種普及がさらに進展することにより、世界各国及び地域において個人の外出規制及び経済活動制限が緩和されるとともに、世界経済と石油需要が一層回復に向かう結果、イランの原油供給が余程急速かつ大幅に拡大する様でなければ、石油需要の増加がイランからの原油供給の拡大を相殺して余りある結果、依然として石油需給は引き締まる方向に向かうとの観測が市場で持続することにより、この面では原油相場には多少なりとも上振れするリスクが存在しているといえよう。

 (8) それでも、2020年11月3日に実施された米国大統領選挙投票によりバイデン大統領の当選が確実になって以降、イランは原油生産を増加させつつある(2020年10月の原油生産量日量196万バレルが2021年6月には推定で同248万バレルへと増加している)こともあり、今後イランの原油生産がどのような幅、そしてどのようなペースで以て増加していくかと言ったことは、世界石油需給に関する市場関係者の心理、及び原油相場に影響する可能性があるので、注目していく必要があるものと考えられる。

 (9) 他方、新型コロナウイルス感染に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の実施による同国経済成長鈍化の可能性に対処するために、2020年3月15日に米国連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をそれまでの1.00~1.25%から0.00~0.25%へと引き下げるとともに、緩和的な金融政策を推進してきた他、2020年8月27日に開催された米国カンザスシティ連邦準備銀行主催年次シンポジウムでは、FRBのパウエル議長が、雇用を確保するために今後長期間平均で2%の物価上昇率を目標とすべく金融政策を実施する旨明らかにし、一時的に物価上昇率が2%を超過することも容認する姿勢を示唆した他、2021年2月24日にもパウエル議長はインフレ目標に到達するまでには3年を超過する期間を要する可能性がある旨の見解を披露した。

(10) しかしながら、6月10日に米国労働省から発表された5月の同国消費者物価指数(CPI)は前年同月で5.0%の上昇と、4月の同4.2%、3月の同2.6%、2月の同1.7%の、それぞれ上昇から上昇率が加速している旨判明したことに加え、例えば6月15~16日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)に際し行われた、会合参加者18人による金融政策見通しにおいては、2023年に金利引き上げが実施されると予想する参加者が13人と前回予想時(3月16~17日のFOMC開催時)の7人から増加し過半数となったうえ、同じく過半数の11人は2023年に少なくとも0.25%の金利引き上げを2回実施すると見込んでいる旨6月16日午後(米国東部時間)に判明した他、5月20日にはダラス連邦準備銀行のカプラン総裁、5月21日にはフィラデルフィア連邦準備銀行のハーカー総裁、6月18日にはセントルイス連邦準備銀行のブラード総裁、6月23日にはアトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁及びダラス連邦準備銀行のカプラン総裁、6月26日にはボストン連邦準備銀行のローゼングレン総裁、7月2日にはサンフランシスコ連邦準備銀行のデーリー総裁等複数の米国金融当局幹部が金融緩和の縮小につき、それぞれ言及し始めている。

(11) 他方、6月22日にFRBのパウエル議長、及び6月24日にニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁が、現時点では物価上昇率の拡大は一時的なものである等金融緩和縮小には時期尚早であることを示唆する見解を披露するなど、米国金融当局関係者による同国金融緩和措置縮小に対する方針においては必ずしも大きな流れが形成されつつあるようには見受けられない。

(12) このため、市場関係者間では当面金利引き上げを含む金融緩和措置の縮小は実施されないか、実施されたとしても、長期間を要するとともに比較的緩やかなものとなるとの認識が強いと見られることから、この面では少なくとも短期的には、緩和的な金融環境の下、低コストで調達された資金が原油市場に流入し続けることにより、原油相場が下支えされるといった展開が見られやすいものと考えられる。

(13) また、新型コロナウイルスワクチン接種普及拡大に伴い感染が沈静化するとともに、世界各国及び地域の経済成長及び石油需要が回復に向かう一方、収益の改善を優先することにより米国のシェールオイルの生産増加が緩やかに進むことに加え、地球環境問題に対応するために石油会社が石油探鉱・開発投資に消極的になることにより、石油供給の伸びが抑制されることから、将来的には石油需要の伸びに石油供給が追い付かなくなる結果、石油需給が引き締まるとともに原油価格が上昇するとの観測が市場で広がる等により、この面で原油相場に上方圧力が加わりやすくなるといった展開も想定される。

(14) そしてそのような中、イエメンのフーシ派武装勢力からサウジアラビアに向けたミサイル等の発射を含む中東情勢(また、イラクにある米国個人及び施設を無人攻撃機で攻撃したとして、イランが支援する民兵組織の武器庫を含む拠点(シリア2ヶ所、イラク1ヶ所)を6月27日に米軍が空爆した旨同日米国国防省が発表している)、イラン核合意正常化を巡るイランと西側諸国等との協議状況、米国石油坑井掘削装置稼働数を含む米国シェールオイル等の開発・生産状況、米国メキシコ湾地域でのハリケーン等の暴風雨発生と当該地域での石油産業(原油生産及び製油所での原油精製処理に関する活動等)に対する影響に関する状況(因みに5月20日に米国海洋大気庁(NOAA)が発表した2021年夏場のハリケーン等暴風雨発生予報では平年よりも活発な暴風雨発生予想が明らかになっている)、新型コロナウイルス感染状況等が、原油相場に影響する可能性があるものと思われる。

 

(参考1:OPECプラス産油国閣僚級会合中止に関する2021年7月5日OPEC事務局発表)

 

18th OPEC, non-OPEC Ministerial Meeting called off

No 18/2021
Vienna, Austria
05 Jul 2021

“The 18th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting has been called off,” OPEC Secretary General, HE Mohammad Sanusi Barkindo, said in a letter to Heads of Delegation of OPEC Member Countries and non-OPEC oil producing countries participating in the Declaration of Cooperation (DoC).

“Upon consultations with HRH Prince Abdul Aziz Bin Salman, Minister of Energy of the Kingdom of Saudi Arabia, and HE Alexander Valentinovich Novak, Deputy Prime Minister of the Russian Federation, Chairman and Co-chairman of the OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting (ONOMM), the reconvened 18th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting has been called off,” the Secretary General stated.

The Secretary General noted: “The date of the next meeting will be decided in due course and we will inform you accordingly.”

 

以上

(この報告は2021年7月6日時点のものです)

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