ページ番号1009085 更新日 令和3年7月16日

米国:連邦管轄内における石油天然ガス・リースの停止

レポート属性
レポートID 1009085
作成日 2021-07-16 00:00:00 +0900
更新日 2021-07-16 11:47:38 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者
著者直接入力 石田 滋陽
年度 2021
Vol
No
ページ数 15
抽出データ
地域1 北米
国1 米国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国
2021/07/16 石田 滋陽
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概要

  • バイデン政権は、発足直後に、連邦リース地における掘削許認可の60日間停止及び連邦リース見直しのためのリース停止という2つの措置を取った。前者は停止期間を満了しており掘削許認可が発行されるようになったが、後者は依然として停止中である。
  • 連邦リース停止の間に内務省が連邦リースの見直しを進めているが、裁判において当該停止の仮差止処分命令が出た。
  • ダラス連邦準備銀行は、連邦所有地における規制が厳しくなると、ニューメキシコ州の歳入及び経済への悪影響、ガスフレアの増加並びに原油輸入の増加が生じる可能性があるとの見込みを発表している。
  • 米国のガソリン価格が上昇する中で、連邦リース停止を含むバイデン政権の政策に対して批判が高まっている。

(出所 連邦議会HP、各連邦議員HP、連邦政府HP、関係業界HP、ダラス連銀講演資料 他)

 

1. はじめに

バイデン政権は、発足直後に、連邦リース地における掘削許認可の60日間停止及び連邦リースそのものの停止という2つの措置を取った。前者は停止期間を満了しており掘削許認可が発行されるようになったが、後者は依然として停止中である。

そのような中で、ダラス連邦準備銀行(以下「ダラス連銀」という。)が、石油天然ガス・リースの停止が及ぼす影響についての分析を発表した。本稿では、バイデン政権による上記2つの措置及びそれに対する反応を概括した後に、ダラス連銀の分析を報告する。

なお、ダラス連銀によれば、2020年の連邦管轄内での石油生産量は、米国全体での生産量の約4分の1を占めていた。内訳は下記のとおりであり、中心となるのはメキシコ湾である。

  •   連邦所有地     :    80万b/d
  •   連邦水域        :  170万b/d(主にメキシコ湾)
  •   先住民保留区  :    30万b/d

 

2. 連邦リース地における掘削許認可の60日間停止

(1) バイデン政権の措置

ヴェガ内務長官代行(当時)は、バイデン大統領が就任した2021年1月20日に、連邦リース地における掘削許認可の60日間停止を定める内務長官代行令第3395号を発出した。

 

(参考)内務長官代行令第3395号[1]の要旨

第3条 次に掲げる行為を行う内務省の権限群は、暫定的に停止するが、第4条に掲げる指導層(筆者注:次官以上の職にある者)によって承認することができる。

a 国家環境政策法に従った行政行為等の官報掲載等。

b 連邦土地政策管理法第202条の下での資源管理計画の発行、更新又は変更。

d 1872年一般鉱業法の下での操業計画の承認又は既存の操業計画の変更。

g リース、リース変更、リース若しくは契約の延長又は掘削の許可等の、陸上又は海洋の化石燃料権限の発行。ただし、有効なリースの下での既存の操業は制限しない。また、健康、福祉若しくは安全に脅威を引き起こし得る状態又は公有地若しくは鉱物資源への悪影響を回避するために必要な権限にも、適用しない。 第5条 この指令は、即時に発効し、60日間又は変更、停止若しくは取消があるまで有効である。

第5条 この指令は、即時に発効し、60日間又は変更、停止若しくは取消があるまで有効である。

 

ただし、報道によれば、内務省は、先住民族からの抗議を受けて、1月25日、先住民居留区等における活動には内務長官代行令第3395号を適用しない旨を定めたとのことである。


 

(2) 連邦議員の反応

内務長官代行令第3395号に対しては、以下のように、共和党連邦議員はもとより、産油ガス州選出の民主党連邦議員からも、反対の声が上がった。

  • バラッソ上院議員(共和党、ワイオミング州選出)の声明[2]
    • ワイオミング州や西部諸州では、石油天然ガス・リースの予定がある。かかるリースセールの中には、今後60日以内に行われるものもある。かかる事業を遅延させると、雇用が失われ、ワイオミング州等における重要な収入を減らすこととなる。内務省は、掘削申請を受けたから10日後に行動をする法的義務がある。政府関係者のメモが法律を超越することはできない。
  • マッカーシー下院議員(下院少数党院内総務、カリフォルニア州選出)をはじめとする共和党下院議員20名がバイデン大統領に宛てた書簡[3]
    • バイデン大統領は、ニューメキシコ州やペンシルベニア州において、市民に対し、エネルギー開発に関連する経済機会を制限することはないと約束した。残念ながら、バイデン大統領の行動は、発言とは全く一致していない。
    • 内務長官代行令第3395号は、連邦所有地及び水域における採掘及び石油天然ガス開発を禁止する政策に向けた第一歩のように映る。かかる政策については、短期的に約100万人の雇用喪失、国内総生産の7000億ドル減少、連邦や州にとって重要な収入源の喪失、200万b/dの原油純輸入並びに重要なエネルギー供給の減少につながるとの研究がある。
    • バイデン大統領に対し、内務長官代行令第3395号の即時取消、並びに、連邦所有地における鉱物のリース及び許認可を禁止する計画の断念を要請する。
  • コンザレス下院議員(テキサス州選出)をはじめとする民主党下院議員4名がバイデン大統領に宛てた書簡[4]
    • 4報道に基づくと、内務長官代行令第3395号は連邦所有地及び水域での責任ある石油天然ガス開発を恒久的に禁止する問題ある行為の先駆けであり、反対を表明する。内務長官代行令第3395号は、担当部局の専門家から伝統的な意思決定権限を奪うものである。
    • 4(マッカーシー下院議員らによる上記書簡の第2段落と同内容)
    • 4ニューメキシコ州は、内務長官代行令第3395号を破壊的なものと考えるだろう。内務長官代行令第3395号は、供給を細らせ、光熱水費を引き上げ、パンデミック下での燃料価格を引き上げる。さらに、小規模独立事業者ではなく石油大手に利益をもたらすものである。国家の発展に役立つインフラストラクチャーに投資し雇用を創出すべきである。

 

(3) 産業界の反応

産業界からも、内務長官代行令第3395号への反対が表明された。

  • 内務長官代行令第3395号に反対する声明(全米商工会議所)[5]
    • 国内エネルギー生産を妨げるのに適した時期ではない。国家が経済回復を必要とするときにこのようなことを行うのは、反生産的であり、近視眼的である。生産停止により、我々のエネルギー需要や製品需要がなくなるわけではない。米国の石油天然ガス産業は、生産及び環境保護における世界のリーダーである。今は、外国資源への依存度を高める時でも、米国の労働者及び消費者を害する時でもない。
  • 内務長官代行令第3395号に反対する声明(米国石油協会(以下「API」という。))[6]
    •   連邦所有地及び水域における開発の制限は、石油輸入増加政策以外の何物でもない。エネルギー需要は、特に経済が回復する中で、増加し続ける。バイデン政権は、環境基準が低い外国エネルギーへの依存、並びに、数十万人の雇用及び数十億ドルの政府収入に対するリスクへの道へ向かおうとしている。我々は米国のエネルギー課題に対処するにあたってバイデン政権と協働する用意があるが、米国のエネルギーを困難に陥らせることは、地域共同体を害し、米国の経済回復を妨げるだけである。

 

(4) 停止期間の満了

内務長官代行令第3395号が定める停止期間は、3月21日に満了した。ダラス連銀によれば、その後、内務省は連邦リース地における掘削許認可を発行しているとのことであり、表1のとおり内務省の統計からもその旨が読み取れる。

表 1:内務省土地管理局による連邦所有地及び先住民居留区での掘削許認可(出所:内務省土地管理局)[7]

2020年 2021年
10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月
2018件 508件 671件 616件

 

[7] 同局が発表する2020年10月以降の合計件数と毎月の件数とを組み合わせて算出しているが、同局によれば両者は整合しない場合があるとのことである。https://www.blm.gov/programs/energy-and-minerals/oil-and-gas/operations-and-production/permitting/applicatio ns-permits-drill

 

3. 連邦リース停止

(1) バイデン政権の措置

バイデン大統領は、2021年1月27日に、国内外の気候危機に対処する大統領令第14008号を発出。その中で、連邦リースの見直しを行うためのリース停止を定めた。

 

(参考)大統領令第14008号[8]の要旨(連邦リース停止以外の石油天然ガスに関連する条項も含む)

第102条h項 国務長官、財務長官及びエネルギー長官は、国家安全保障担当大統領補佐官と協議のうえで、米国輸出入銀行、国際開発金融公社総裁及び関連の諸機関の長と協働し、炭素強度の高い化石燃料に基づくエネルギーへの国際金融の終了並びに持続可能な開発及びグリーン回復の推進を米国が促進できる措置を特定しなければならない。

第208条 内務長官は、公有地及び海洋水域に関する監督責任に照らして連邦の石油天然ガスの許認可及びリースの慣行の包括的な見直し及び再検討(公有地又は海洋水域における石油天然ガス活動に伴う気候等への潜在的な影響を含む。)を完了するまで、法律に従った範囲において、公有地又は海洋水域における新たな石油天然ガス・リースを停止しなければならない。内務長官は、農務長官、国家海洋大気庁を通して商務長官及びエネルギー長官と協議のうえで、見直しを完了させなければならない。内務長官は、この分析を実施するにあたり、法律に従った範囲において、公有地及び海洋水域から採取される石炭、石油及びガスに関するロイヤルティを気候コスト見合いで調整するか否か、又は、他の適切な手段を取るか否かを、検討しなければならない。

第209条 諸機関の長は、予算管理局長及び国家気候補佐官に向けて、所管の化石燃料補助金を特定しなければならない。また、法律に従った範囲において、連邦資金拠出が化石燃料を直接には補助しないことを確保するための措置を取らなければならない。予算管理局長は、諸機関の庁及び国家気候補佐官と調整のうえで、2022年度以降の予算要求から化石燃料補助金を廃止することを追求しなければならない。

 

これを受けて、連邦水域の石油天然ガス・リースを管轄する内務省海洋エネルギー管理局は、2月12日、トランプ政権時代に公告していたメキシコ湾の石油天然ガス・リースセール257を中止した[9]。また、準備を進めていたアラスカ州クック湾の石油天然ガス・リースセール258についても、環境影響評価の草案に係る意見募集を2月4日に停止した[10]

連邦所有地の石油天然ガス・リースを管轄する内務省土地管理局も、トランプ政権時代に公告していた複数の石油天然ガス・リースセールを延期した。また、4月21日には、2021年第2四半期にはリースセールを行わないと発表した[11]


 

(2) 連邦議員の反応

大統領令第14008号に対しても共和党連邦議員から反対が出ており、ルミス上院議員(ワイオミング州選出)をはじめとする共和党上院議員28名及びヘレル下院議員(ニューメキシコ州選出)をはじめとする共和党下院議員51名が対抗する法案を提出・支持。ただし、この法案の審議は未だ行われていない。

 

(参考)エネルギー資源の富を保護する法案[12]の要旨

第2条b項 大統領及び関係長官は、法律で認められている場合を除いて、連邦所有地における次に掲げる発行を禁止し又は遅延させる行為をしてはならない。

(A) 新たな石油天然ガスのリース又は許認可

(B) 新たな石炭のリース又は許認可

(C) 新たな金属採掘(hard rock)のリース又は許認可

(D) 新たな重要鉱物のリース又は許認可


 

(3) 産業界の反応

産業界からも、大統領令第14008号への反対が表明された。

  • 国内エネルギー生産の制限を警告する声明(API)[13]
    • 連邦所有地及び水域で生産される国内エネルギーを制限することは、環境発展を蝕み、雇用にコストを与え、教育及び保護の資金を危険に晒し、外国エネルギーへの依存をもたらすことであると、警告する。
    • 我々はバイデン大統領の気候変動対策目標を共有しており、それは、米国の技術革新によって示され、米国エネルギー及び技能労働者によって力づけられるものである。リースを停止するとの大統領令は、経済回復及び環境発展の両方にとって後退であり、数千の雇用及び州にとっての脅威となり、よりクリーンな燃料への移行を遅らせることで排出を増加させるものである。
    • 今回の決定は、連邦所有地及び水域における天然ガス石油の開発を禁止する政策に向けた第一歩のように映る。APIの分析によれば、連邦所有地及び水域における開発がない場合、石炭利用が15%増加して電力部門における二酸化炭素排出が2030年までに5.5%増加する。オバマ政権時の内務省土地管理局の報告書では、新たな海洋リースがない場合、米国の温室効果ガス排出はほとんど影響がなく、僅かに増加する可能性さえあるとされている。この報告書では、外国の石油が米国海洋供給の減少を補完することとなり、外国の石油の生産及び輸送が温室効果ガス排出を増加させるとされている。
    • APIの分析によれば、連邦のリース及び開発の禁止は、2022年までに米国100万人近くの雇用にコストをもたらし、政府収入90億ドルをリスクに晒す。ニューメキシコ州等では、6.2万人の雇用が喪失しかねない。

 

(4) 内務省の意見募集

内務省は、3月25日、大統領令第14008号が定めた包括的見直し及び再検討の一環として、連邦石油天然ガス・プログラムに係る公開会議を開催[14]。先住民、産業界、環境団体、労働組合、平等団体及び学会から専門家が出席し、発表を行った。

ハーランド内務長官は、冒頭挨拶で、化石燃料が今後も長きに亘って(for years)米国で重要な役割を果たすと認めつつ、トランプ政権下では化石燃料開発が最優先とされて人々、水系、野生生物及び気候への潜在的な影響が無視されていたと批判。そして、気候危機に対処し経済を強化するためには土地、水系及び資源を管理しなければならないと述べ、石油天然ガスの新規リースの停止により連邦化石燃料プログラムを検討する時間が与えられたと言及。そのうえで、リース停止が既存リースにおける許認可や開発には影響を与えないことも強調。そして、公有地及び水域、石油天然ガス並びに鉱物をどのように管理するかについて共通目的をもたらすべく関係者と協働する方針を、示した。

APIのマッキアローラ上級副会長(政策、経済及び規制担当)は、連邦リース及びエネルギー開発へのアクセス確保が家計のエネルギー支出減少、温室効果ガス排出削減及び外国エネルギーへの依存低減のために必要であると、言及。そして、連邦所有地及び水域における石油天然ガス生産が手頃で信頼できるエネルギーを供給するものであり、リースから得られる収入が教育、インフラストラクチャー及び自然保護といった重要事項を支えているとして、内務省に対し連邦リースを完全に再開するよう要求した。


 

(5) 連邦リース停止に対する仮差止命令

ルイジアナ州を筆頭とする13州[15]は、3月24日、大統領令第14008号第208条が各種法律に違反しているとの訴えを提起した。それに対して、ルイジアナ西部連邦地方裁判所は、6月15日、連邦リース停止に対する仮差止を命令した。併せて、リースセール257及び258の停止についても撤回を命令した。この仮差止命令は、内務省が環境問題を理由に個別のリースを停止することができると認めつつ、今回の停止ではそのような理由もなく大統領令第14008号に基づくだけであるため、政府のリース実施を規定している鉱物リース法や外縁大陸棚法を無視している点で問題があると指摘している。この仮差止命令は、本訴の確定判決が出るまで又は裁判所から別な命令が出るまで、有効とされている[16]

これを受けて、マッカーシー下院議員をはじめとする共和党下院議員38名は、ハーランド内務長官に書簡を発出し、連邦リースの再開を求めるとともに、内務省による連邦リース見直しの過程が不透明であるとして文書の提出を求めた[17]。APIも声明を発表し、仮差止命令を歓迎してバイデン政権に対して連邦リースの再開を要請した[18]

内務省の広報官は仮差止命令を遵守する旨を発言しているが、連邦リースを再開するのか否かはいまだ不明である。この仮差止命令は大統領令第14008号に基づく連邦リースの停止を問題視しているのであり、環境問題を理由とした個別のリース停止を認めていることから、内務省が個別のリースについて環境問題を指摘して事実上の停止継続とする可能性を指摘する有識者もいる。

また、本訴は、判決が出ておらず、継続中である。


[15] 他は、アラバマ、アラスカ、アーカンソー、ジョージア、ミシシッピ、ミズーリ、モンタナ、ネブラスカ、オクラホマ、テキサス、ユタ及びウェストバージニアの各州。

 

(6) 連邦リース停止に対する他の裁判

大統領令第14008号が発出された1月27日、米国西部の石油天然ガス生産者約200社が加盟する西部エネルギー連盟は、バイデン大統領、ヴェガ内務長官代行及び内務省土地管理局に対して、訴えを提起した[19]。連邦石油天然ガス・リースの延期は内務長官の法的義務に沿うものではなく支持を得ない不必要な行為であるとして、当該延期が無効であると確認するよう裁判所に求めたものである。その後、ワイオミング州石油協会が原告に加わり、生物多様性センターやシエラ・クラブをはじめとする環境保護団体及びアスペン・スキー社をはじめとする企業が被告側で訴訟参加した。

また、ワイオミング州も、3月24日、ハーランド内務長官に対して訴えを提起した[20]

これら2つの訴訟は5月24日に併合され、継続中である。


 

(7) 今後

ダラス連銀や有識者によれば、連邦リース見直しに関する報告草案が今夏に完成する見込みである。

 

4. ダラス連銀の分析

ダラス連銀が、2021年5月、米国エネルギー経済学会の主催によるオンライン講演会で、石油天然ガス・リースの停止が及ぼす影響についての分析を発表した[21]。また、それを6月に更新したものが、ニューメキシコ州議会のウェブサイトに掲載された。これらの内容を総合すると、以下のとおり[22]

なお、上述のオンライン講演会において、ダラス連銀担当者は、連邦リースの規制が社会や環境にどのような影響を及ぼすのかという今回の報告内容を連邦政府に共有しているのかとの質問に対して、ダラス連銀は提言活動を行っているわけではなく報告を連邦政府には共有してはいないと回答している。


 

(1) 前提

パーミアン地域において、ニューメキシコ州とテキサス州に跨るデラウェア堆積盆の方が、テキサス州のミッドランド堆積盆よりも、生産性が高く、また、ガス含有量が多い。

ロイヤルティ率は、下記のとおり。

  • 連邦所有地:12.5%(ロイヤルティ歳入は連邦と州とで半々)
  • 私有地:概ね18~20%
  • テキサス大学所有地:25%

 

(2) 生産量見通し

3つのケースを策定。ニューメキシコ州では産油地に占める連邦所有地の割合が高いことから、連邦所有地における規制が厳しくなるほど同州の生産活動が低くなって生産活動がテキサス州に移ることとなる。

  • レファレンス・ケース(青色):坑井の掘削及び仕上げが2021年3月のペースを維持
  • ハイブリッド・ケース(緑色):連邦の新規リースは終了するが既存リースにおける掘削許認可は継続
  • 厳格ケース(赤色)               :連邦の新規リースが終了し既存リースにおける掘削許認可も停止

パーミアン地域全体における石油生産見通し

ニューメキシコ州における石油生産見通し

テキサス州における石油生産見通し
図 1:上から順に、パーミアン地域全体、そのうちニューメキシコ州、そのうちテキサス州における石油生産見通し(出所:ダラス連銀講演資料)

(3) 想定される影響

ニューメキシコ州において、リグ及び水圧破砕に携わる労働者が、ハイブリッド・ケースでは4780人、厳格ケースでは6800人、それぞれ減少する。他方で、テキサス州では、かかる労働者が追加で必要となる。

ニューメキシコ州においては、2019年の州政府の歳入の約3分の1が、石油天然ガスに関する税、ロイヤルティ及び手数料によるものであった。生産活動がテキサスに移っていくと、ニューメキシコ州では、石油天然ガス開発が低迷して州政府の歳入が減少するだけでなく、飲食業や小売業などの周辺産業も低迷すると見込まれる。

ガスフレアの規制は、ニューメキシコ州では厳しく、テキサス州では緩やかである。そのため、ニューメキシコ州からテキサス州に生産活動が移っていくと、テキサス州でのガスフレアによる汚染が増加すると見込まれる。

また、米国の製油所は、パーミアン地域で生産される軽質油やNGLを受け入れるべく、それらの処理能力を拡大させてきた。連邦所有地における規制が厳しくなってパーミアン地域での生産量が伸び悩んだ場合、米国では海外からの輸入が増えることになり、パーミアン原油を輸入している海外の石油下流事業者も代替供給源を確保する必要が生じる。

 

(4) 今後の注目点

今後の注目点として、以下が挙げられる。

  • 連邦の規則改正が、いつ、どのような内容で行われるのか。
  • 連邦所有地におけるロイヤルティ率を引き上げるとなった場合には、石油天然ガス開発に係る投資にどのような影響が出るのか。また、生産量は減少することになると見込まれるが、その分をロイヤルティ率の上昇によってカバーして政府の歳入を維持することができるのか。
  • WTIが70ドルとなった場合には、石油天然ガス生産者の予算はどのようになるのか。

 

5. 考察

バイデン政権の成立後、化石燃料が米国社会で注目を浴びることが2回あった。

1回目は、東海岸への石油製品供給を担うコロニアル・パイプラインが2021年5月にサイバー攻撃に遭い、運営会社は脅威の拡散を防止するために一部のシステムを遮断し、それによってコロニアル・パイプライン全区間が停止となった時である。同パイプラインは4日後に稼働を再開したが、東海岸の一部地域では給油待ちの車両が並び、一時的にガソリン在庫がなくなった給油所もあったほか、全米平均レギュラーガソリン価格も1ガロンにつき2014年以来の3ドル超えとなった。この間、バイデン政権は、石油製品の輸送等に係る規制を一時的に緩和するなどの対策を取った。さらに、電気自動車の普及を推進しているブティジャッジ運輸長官は、パイプラインは重要であるのかと問われた際に、「パイプラインは石油製品を効率的に輸送する手段。米国には多層的なエネルギー・システムがあり、エネルギー転換が始まっているが、パイプラインは国内に200万マイル敷設されており非常に重要である。多くの人々は、まだ電気自動車を持っていない。それゆえ、石油製品を給油所へ安全かつ効率的に輸送しなければならない。」と言及した。

そして2回目は、本稿を執筆している7月上旬時点で目下生じていることであるが、米国経済が直面するここ数年で最も急速な物価上昇であり、とりわけガソリン価格の大幅な上昇は全米の注目を浴びている。全米平均レギュラーガソリン価格は、上述のコロニアル・パイプラインの稼働再開後も下落することがなく、全米自動車協会によれば、1月1日では2.25ドルだったが7月6日には3.13ドルとなり、8月末にかけて更に0.10~0.20ドルの上昇になるものと予測されている[23]。共和党は、これを契機に、バイデン大統領及び民主党のエネルギー政策及び気候政策への批判を強めている。「バイデン大統領は米国の石油天然ガス生産を終わらせようとする一方でOPECに増産を求めている」と、皮肉を述べる報道も見受けられる。米国石油協会の個人コラム執筆者も、バイデン政権が、新たな石油天然ガスの連邦リースの停止やキーストーンXLパイプラインの許認可撤回など、原油コストに下方圧力をかけ消費者に利益をもたらした北米生産に影響を与えかねない政策を採ってきたと、批判している[24]。報道によれば、ある世論調査の回答者のうち、83%がインフレーションへの懸念を示し、68%がガソリン価格上昇に難儀しているとのことである。

物価上昇、とりわけガソリン価格の上昇は、政府に対する国民の不満を高める要因となる。有識者によれば、コロニアル・パイプラインに対するサイバー攻撃以降、バイデン政権はガソリン価格について神経質になったとのことである。実際に、7月のOPEC会合で今後の減産措置が決定に至らない中で、サキ大統領府報道官は、OPEC加盟国間での対話のアップデートを聴取するためにOPEC関係者と直接に接触している旨や、ガソリン価格を廉価に抑えるためにできることを全て行う旨に、言及している[25]

ただし、バイデン大統領の「連邦リース停止・見直し」の政策については、原油価格、そしてガソリン価格への実質的な影響を及ぼしてはいないという指摘もある。つまり、今すぐに連邦リースが行われたとしても、入札公告から入札、落札者とのリース契約締結、落札者による事業開始、そして生産に至るまでには時間を要するものであり、現在のガソリン価格上昇を抑制する直接的な効果はないと言われている。しかし、ガソリン価格上昇に対する国民の不満が高まれば、批判の象徴として連邦リース停止が大きな政治的意味を持つ可能性もある。この停止をいつまで続けるのか、また、連邦リースの見直し内容をどのようなものとするのかについては、エネルギー安全保障や環境対策、地元経済対策の観点のみならず、米国全土の世論も踏まえた判断となる可能性が出てきている。


 

以上

(この報告は2021年7月13日時点のものです)

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