ページ番号1009113 更新日 令和3年9月2日
原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が従来の方針通り2021年10月についても日量40万バレル減産措置を縮小することで合意(速報)
このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.
概要
- 2021年9月1日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、8月以降毎月日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置(9月時点で日量496万バレル)につき、従来の方針通り10月も日量40万バレル規模を縮小して実施する旨決定した。
- 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は10月4日に開催される予定である。
- 7月18日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合での減産措置縮小の決定以降、イラン核合意正常化に向けた協議を巡る米国とイランとの間での対立の高まりの兆候を含む中東情勢不安定化と当該地域からの石油供給への影響に対する市場の懸念の増大、及び米国株式相場の上昇等が、原油相場に上方圧力を加えた。
- 他方、新型コロナウイルス感染拡大や洪水の発生等もあり中国経済が減速するとともに同国の石油精製処理活動が抑制されていることを示唆する指標類が発表されたことに加え、世界の一部諸国及び地域での新型コロナウイルス感染拡大もあり国際エネルギー機関(IEA)が2021年後半の石油需要を下方修正したこと等が、原油相場に下方圧力を加えた。
- 上方圧力と下方圧力に挟まれる格好となった原油価格は、7月19日から8月31日にかけ概ね1バレル当たり62~74ドルを中心とする範囲で変動するとともに、この時期は明確かつ持続的な上昇及び下落を示すことはなく、概ね安定して推移したことから、OPECプラス産油国としては減産措置の縮小を再調整する動機は発生しにくかった。
- 加えて、足元の全米平均ガソリン小売価格は同国国民がバイデン政権に対し不満を増大させ始める1ガロン当たり3ドルを超過し続けていることにより、OPECプラス産油国がここで減産措置の縮小を減速させれば原油相場とともに全米ガソリン小売価格がさらに上昇することにより、米国バイデン政権の不満が高まると予想されたことから、OPECプラス産油国としては減産措置縮小の減速は事実上困難であった一方、米国の消費者物価上昇が頭打ちの兆候を見せ始めているうえ、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期も終了に接近しつつあったこともあり、このままであればガソリン小売価格高騰に伴う米国国民のバイデン政権への不満もこれ以上大幅に増大するわけではないと見られたこともあり、OPECプラス産油国としても減産幅の縮小を急いで加速する必要性に迫られることもなかった。
- このようなことから、OPECプラス産油国は10月についても既存の方針通り減産措置の縮小を実施することにしたものと考えられる。
- 原油市場では今回のOPECプラス産油国閣僚級会合で円滑に意思決定がなされたことにより、関係産油国間での結束が維持されていると市場関係者に受け取られたことが、原油相場に上方圧力を加えたこともあり、当該会合開催当日の原油価格は前日末終値比で1バレル当たり0.09ドル上昇し68.59ドルの終値となった。
(OPEC、IEA、EIA他)
1. 協議内容等
(1) 2021年9月1日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国はビデオ会議形式で閣僚級会合を開催、1時間未満の短時間で終了したが、当該会合では8月以降毎月日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置(9月時点で日量496万バレル)につき、10月についても日量40万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1及び参考1参照)。
(2) また、当該会合では、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合を10月4日に開催することで合意した。
(3) 新型コロナウイルス感染の世界的流行の(世界経済及び石油需要に対する)影響に幾分不透明感が漂うものの、石油需給は引き締まっており、経済回復が加速するとともにOECD諸国在庫が減少し続けることを会合で認識した。
(4) 当該会合では、メキシコを含むOPECプラス産油国による減産遵守率が2021年6月時点で110%(メキシコを除いた場合は109%)と良好であることを歓迎した。
(5) また、2020年5月1日のOPECプラス産油国減産措置実施以降平均で100%の減産目標遵守率を達成できていない減産措置参加産油国は2021年12月末までに減産目標遵守未達成部分を追加して減産する(当初期限は2021年9月30日であったが、一部減産目標遵守未達成OPECプラス産油国の要請により延長した)よう求められた。
(6) さらに、減産目標遵守達成期限の延長を有効活用しつつ、減産目標の完全達成に固執することが極めて重要である旨改めて言及された。
2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等
(1) 2021年6月1日に開催された前々回のOPECプラス閣僚級会合で8月以降の減産措置縮小に関する議論が見送られた後、新型コロナウイルスワクチン接種普及の進展により、欧米諸国等では新型コロナウイルス感染者数が減少することにより個人の外出規制及び経済活動制限の緩和が進められた(6月15日には米国のニューヨーク及びカリフォルニア両州が一部を除き経済活動制限を全面的に解除した)他、5月6日には1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が414,188人と過去最高水準に到達したインドでも7月17日時点では新規感染者数が41,157人と5月6日の10分の1未満の水準にまで減少するとともに、新型コロナウイルス感染拡大に伴い4月19日より都市封鎖措置を実施していた同国の首都ニューデリーを含むデリー首都圏等多くの州で6月14日に経済活動制限等が緩和されるなど、同国経済及び石油需要が持ち直す兆しがさらに明確になった。
(2) このような中で、5月29日には米国で夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入したこともあり、5月20日には1バレル当たり62.05ドルであった原油価格(WTI)は上昇傾向となり、7月13日には1バレル当たり75.25ドルと2018年10月3日(この時の原油価格の終値は同76.41ドル)以来の高水準に到達するとともに、同国のガソリン需給の引き締まり観測から全米ガソリン小売価格は5月10日以降米国国民の不満が高まり始める1ガロン当たり3ドルを超過し上昇し続けた(図1参照)ことにより、米国バイデン政権への支持率に影響が及ぶ恐れが増大しやすい状態となった。
(3) 原油及び米国ガソリン小売価格の上昇継続に対し、7月6日にはサキ米国大統領報道官が、バイデン政権は米国のガソリン小売価格に対するOPECプラス産油国間での減産措置を巡る協議の影響につき関心を持つとともに、手頃で信頼できるエネルギー供給を促進させるべく、原油価格上昇抑制に向けOPECプラス産油国に対し事実上の働きかけを行った旨示唆した。
(4) 米国の働きかけもあり、7月18日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合では、8月以降当該減産措置が消滅するまで毎月日量40万バレル減産措置を縮小する旨合意した(2021年12月に石油市場の状況及び減産措置参加国の減産目標遵守状況等をもとに減産方針につき再検討する予定とした)。
(5) また、当初2022年4月末に終了することとなっていた減産措置を2022年末まで延長することとした(石油市場の状況次第では2022年9月末に減産措置を終了させるべく努力するとした)。
(6) 7月18日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合における減産措置縮小の決定により、この先の世界石油需給の緩和感が市場で醸成されたこともあり、原油価格(WTI)は、会合開催直前の取引日である7月16日の1バレル当たり71.81ドルから会合開催直後の取引日である7月19日には同66.42ドルへと、同5.39ドル下落した(図2参照)。
(7) しかしながら、その後OPECプラス産油国による減産措置の縮小を以てしても、2021年後半においては世界石油需要が供給を上回る結果、石油需給は引き締まる方向に向かうとの認識が市場で強まったこともあり、7月22日の原油価格の終値は1バレル当たり71.97ドルと7月18日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合前の水準近辺へと回復した。
(8) そしてそれ以降、新型コロナウイルス感染拡大や洪水の発生等もあり中国経済が減速するとともに同国の石油精製処理活動が抑制されていることを示唆する指標類が発表されたことに加え、豪州や東南アジア等その他の諸国及び地域でも新型コロナウイルス感染拡大に伴い都市封鎖措置等を実施する動きが発生したこと、そしてそのような情勢を受け8月12日に国際エネルギー機関(IEA)が2021年後半の石油需要を下方修正したことが、原油相場に下方圧力を加えた。
(9) 他方、7月28~29日にイラン核合意正常化に向けた協議を巡り米国とイランとの間で対立が高まる兆候が見られたことによる、米国の対イラン制裁解除遅延の可能性、及び7月29日のオマーン沖合でのタンカー攻撃を含む、中東情勢の不安定化と当該地域からの石油供給への影響に対する市場の懸念の増大、米国株式相場の上昇、8月23日時点の中国の新型コロナウイルス感染者数が7月20日に同国南京空港で確認されて以降で初めてゼロとなるなどした旨同日報じられたこと、米国製薬大手ファイザー及びドイツバイオ医薬製造会社ビオンテックが開発した新型コロナウイルスワクチンに対し米国当局が正式に使用を承認したこと等が原油相場に上方圧力を加えた。
(10) 上方圧力と下方圧力に挟まれる格好となった原油価格は、7月19日から8月31日にかけ概ね1バレル当たり62~74ドルを中心とする範囲で変動するとともに、この時期明確かつ持続的な上昇及び下落を示すことなく、概ね安定的に推移したことにより、OPECプラス産油国としては、このような局面で減産措置の縮小を再調整する動機は発生しにくかった。
(11) また、足元の全米平均ガソリン小売価格は米国国民がバイデン政権に対し不満を持ち始める1ガロン当たり3ドルを超過し続けていたことにより、OPECプラス産油国がここで減産措置の縮小を減速させれば原油相場とともに全米平均ガソリン小売価格が上昇することにより、米国バイデン政権のOPECプラス産油国に対する不満が高まると予想されたことから、OPECプラス産油国としては減産措置縮小を減速させることは事実上困難であった。
(12) 他方、8月11日に米国バイデン政権のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、原油価格は2019年末よりも高水準であるとともに、ガソリン価格が世界の経済回復にとって有害になる危険性をはらんでいることから、7月18日のOPECプラス閣僚級会合で決定した8月からの毎月日量40万バレルの原油生産引き上げは不十分である旨の声明を発表した。
(13) しかしながら、サリバン大統領補佐官が声明を発表した日と同日に発表された、7月の米国消費者物価指数(CPI)の上昇率は、前年同月比で5.4%の上昇と6月のそれと同水準であったものの、前月比では0.5%の上昇と6月の同0.9%から伸びが鈍化しているように見受けられたことから、市場では、米国の消費者物価が頭打ちの兆候を見せ始めていると受け取られた。
(14) このようなこともあり、その後8月11日(サリバン大統領補佐官が声明を発表した日と同日)に実施されたホワイトハウスによる記者会見において、サキ大統領報道官は、米国バイデン政権のOPECプラス産油国への事実上の増産要請は必ずしも短期的に対応すべき旨を意味している訳ではなく、長期的な約束を意味している旨示唆した。
(15) 加えて、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了(9月4~6日の米国労働者の日(レイバー・デー)(9月6日)に伴う連休を以て終了)に接近しつつあったこともあり、このままであれば米国でのガソリン小売価格高騰を巡るバイデン政権への米国国民の不満がこれ以上大幅には増大しにくいと見られたこともあり、OPECプラス産油国としても、米国ガソリン小売価格を含めた物価上昇による同国国民のバイデン政権への不満の高まりを回避すべく、直ちに同政権に配慮すべく減産幅の縮小を加速する必要性に迫られることもなかった。
(16) このようなこともあり、OPECプラス産油国は、従来方針通り10月についても減産措置の縮小を推進することにしたものと考えられる。
(17) なお、8月下旬にはハリケーン「アイダ(Ida)」が米国メキシコ湾沖合を縦断したうえ、8月29日午前11時55分頃(現地時間)にはカテゴリー4の勢力(米国基準で上から2番目の勢力の強さ)でルイジアナ州ポート・フォーション(Port Fourchon)付近に上陸するとともに、8月31日昼(米国中部時間)現在米国メキシコ湾沖合油田での原油生産量171万バレル(当該地域の原油生産全体の93.7%)が停止したうえ、米国最大の大型タンカー受入港であるLOOP(Louisiana Offshore Oil Port)(原油受入能力日量140万バレル程度とされる)が8月28日朝(現地時間)以降操業を停止したままとなっている他、複数の米国メキシコ湾岸地域の港湾が操業を停止、さらに8月31日午前(同)現在ルイジアナ州の9ヶ所の製油所(原油精製能力合計日量230万バレルで同国原油精製能力(同1,813万バレル)の約13%)が停止したと伝えられる。
(18) しかしながら、ハリケーン「アイダ」の米国メキシコ湾沖合の原油生産、同国湾岸地域原油受入港湾及び製油所等の操業への影響については9月1日のOPECプラス産油国閣僚級会合開催時点では必ずしも明らかにはなっていなかったこともあり、当該会合では当該ハリケーンの米国石油産業及び石油需給への影響についての検討を見送るとともに、今後影響がより明確になってきた時点で、必要とされれば改めて減産措置の再調整を行うものと考えられる。
(19) また、8月31日に開催されたOPECプラス産油国共同技術委員会(JTC:Joint Technical Committee)において、OPECは2022年の世界石油需要の伸びをこれまでの前年比日量328万バレルから、同420万バレルへと上方修正することにより、2022年の世界石油需給バランスが日量250万バレル供給過剰となるとのこれまでの見通しを日量160万バレルの供給過剰へと引き下げたと伝えられた。
(20) これは、当初見込みよりも2022年の世界石油供給過剰が大きなものではないとの印象を市場に与えることにより、石油需給緩和感と原油価格先安感の市場での醸成をOPECプラス産油国が抑制しようと試みたことによるものと考えられるが、上方修正後のOPECの2022年世界石油需要増加見通しはIEA(前年比316万バレル増加)及び米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)(同362万バレル増加)に比べ増加幅が相当程度大きかったこともあり、OPECによる世界石油需要の上方修正に対する市場の反応は限られたものとなった。
(21) なお、今般のOPECプラス産油国閣僚級会合での減産措置縮小実施決定に対し、米国ホワイトハウスは、当該決定を歓迎するとともに、引き続きバイデン政権は原油価格決定における自由競争市場の重要性と経済回復を支持するためのさらなる行動につきOPECプラス産油国とともに関与し続ける旨明らかにしたと9月1日夕方(米国東部時間)に伝えられる。
3. 原油価格の動き等
(1) 原油市場では、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合で円滑に意思決定がなされたことにより、関係産油国間での結束が維持されていると市場関係者に受け取られたことが、原油相場に上方圧力を加える格好となった。
(2) また、9月1日にEIAから発表された同国石油統計(8月27日の週分)で原油在庫が前週比で717万バレルの減少と市場の事前予想(同310万バレル程度の減少)を上回って減少していた他、同国の石油製品出荷量が日量2,282万バレルと1990年後半以降の同国週間統計史上最高水準に到達している旨判明したことも、原油相場にとって支援材料となった。
(3) このようなことから、8月下旬に米国メキシコ湾岸地域に来襲したハリケーン「アイダ」通過後、当該ハリケーンの来襲に備えて生産を停止したメキシコ湾沖合油田の原油生産が比較的早期に回復する一方、メキシコ湾岸地域の製油所の稼働再開までには時間を要する結果、原油需給が緩和するとの観測が市場で発生した流れが9月1日の原油市場に引き継がれたことが、同日の原油相場に下方圧力を加えたものの、この日の原油価格の終値は1バレル当たり68.59ドルと前日末終値比で0.09ドル上昇している。
(4) 米国では、9月4~6日の労働者の日に伴う連休を以て夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期は終了、秋場の石油不需要期に突入することもあり、製油所はメンテナンス作業を実施する等を含め稼働を低下、原油精製処理量を減少させるとともに、原油購入を不活発にしてくることにより、季節的な石油需給の緩和感が市場で意識されるとともに原油相場に下方圧力が加わりやすくなるものと考えられる。
(5) また、米国でのドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了に向かうこともあり、全米平均ガソリン小売価格も8月16日には1ガロン当たり3.272ドルと2014年10月13日(この時は同3.292ドル)以来の高水準に到達したものの、8月23日には同3.243ドル、8月30日には同3.237ドルと、頭打ちの兆候が見られる他、夏場のドライブシーズン終了とともに秋場のガソリン不需要期に突入することもあり、この面では同国のガソリン小売価格に下方圧力が加わりやすくなることにより、米国国民のバイデン政権への不満が高まる可能性も低下するものと見られることから、米国からOPECプラス産油国に対し、減産措置の縮小加速といった原油供給の拡大を巡る事実上の圧力は相対的には加わりにくくなるものと考えられる。
(6) 他方、OPECプラス産油国が毎月日量40万バレルの減産措置の縮小を実施した場合、2021年末にかけ、OPECプラス産油国による毎月日量40万バレルの減産措置の縮小を考慮しても、世界石油需要が供給を上回る状態となり、この面では石油需給引き締まり感が市場で発生しやすい状態となっている(表2参照)。
(7) また、イランでは8月3日にそれまでの保守強硬派のロウハニ師から反米保守強硬派のライシ師へと大統領が移行したこともあり、6月20日以降イラン核合意正常化に向けたイランと西側諸国等との協議が事実上中断状態となっている中、イランは核合意を逸脱して核開発活動を活発化させる様相を呈している他、イランは米国に対し、イラン核合意から二度と離脱しないよう保証する他対イラン制裁を全面解除するよう要求する一方、米国はイランに対し弾道ミサイル開発及び中東周辺諸国への事実上の介入を停止するよう要求しているなど、両国による議論は容易に収束する方向に進む状況には見受けられない。
(8) 最終的には米国がイランに対し原油供給に関する制裁を解除すると見込んで、イランが原油生産及び輸出をさらに拡大する可能性も否定できない(米国の対イラン制裁にもかかわらずイランは今後も原油輸出を拡大する意向である旨9月1日にイランのオウジ(Owji)石油相は明らかにしている)ものの、これまでイラン核合意が正常化するとの見通しから、対イラン制裁解除前の段階においても、イラン産原油をそれなりに輸入していた諸国及び地域等に対し制裁の発動を見送ってきた米国が、足元イラン核合意正常化に向けた協議が短期的に決着するかどうか不透明な状況となったとして、今後対イラン制裁の運用を強化することによりイラン産原油輸入国等に対し当該輸入を削減するよう圧力を加えることを検討している旨7月23日に伝えられるなど、イラン核合意正常化に向けた展望が暗くなるとともに、米国が対イラン制裁運用強化とともにイランからの原油供給が縮小するといった展開もありうるなど、不透明感が漂う。
(9) 他方、今後、新型コロナウイルス感染抑制とともに、個人の外出規制及び経済活動制限が緩和されれば、経済及び石油需要が回復する、もしくは回復するとの期待が市場で広がることにより、石油需給引き締まり感が市場でさらに強まることを通じ、原油相場に上方圧力を加えるといった展開も想定される。
(10) ただ、新型コロナウイルス感染が世界各国・地域で再び拡大するとともに、個人の外出規制及び経済活動制限が強化されるようであれば、経済及び石油需要が下振れする、もしくは下振れするとの観測が市場で広がることを通じ、石油需給緩和感が市場で強まることにより、原油相場に下方圧力を加える可能性もある。
(11) このように、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が終了したことにより、原油価格(及び全米ガソリン小売価格)への上方圧力が加わりにくくなった(それとともに、米国バイデン政権によるOPECプラス産油国に対する働きかけも以前に比べ緩やかなものになると見られる)ことは、OPECプラス産油国にとって、減産措置(の縮小)を相対的に推進させやすくするものと見られるものの、依然としてこの先の世界石油市場を巡っては不透明要因が複数見られることから、OPECプラス産油国は毎月日量40万バレルの減産措置の縮小実施を基本としつつも、折々の世界石油需給状態及び原油価格の動向等を考慮しながら減産措置の縮小を再調整していくものと見られる。
(12) また、今後中東情勢不安定化等何らかの要因により原油価格が上昇し続けることにより、米国ガソリン及び暖房油小売価格が高騰しようとした場合、もしくは高騰する兆候が見られた場合には、物価上昇を懸念する米国バイデン政権が再びOPECプラス産油国に対し働きかけを行う結果、OPECプラス産油国が減産措置の縮小を加速するといった展開となることが否定されるわけではないものと考えられる。
(13) さらに、今後ハリケーン「アイダ」の米国メキシコ湾沖合の原油生産、同国湾岸地域原油受入港湾及び製油所等の操業、及びそれらの米国等の石油需給に影響が明確になってくるとともに、OPECプラス産油国の減産措置を再調整する必要に迫られれば、その時点で、OPECプラス産油国は減産措置の加減速につき再度検討する、といった展開も想定されうる。
(参考1:2021年9月1日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)
20th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting concludes
No 23/2021
Vienna, Austria
1 Sep 2021
The 20th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting (ONOMM), held via videoconference, concluded on Wednesday 1 September 2021.
The Meeting noted that, while the effects of the COVID-19 pandemic continue to cast some uncertainty, market fundamentals have strengthened and OECD stocks continue to fall as the recovery accelerates.
The Meeting welcomed the positive performance of Participating Countries in the Declaration of Cooperation (DoC). Overall conformity to the production adjustments was 110% in July including Mexico (109% without Mexico), reinforcing the trend of high conformity by Participating Countries.
In view of current oil market fundamentals and the consensus on its outlook, the Meeting resolved to:
- Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial meeting on 12 April 2020 and further endorsed in subsequent meetings, including the 19th ONOMM on 18 July 2021.
- Reconfirm the production adjustment plan and the monthly production adjustment mechanism approved at the 19th ONOMM and the decision to adjust upward the monthly overall production by 0.4 mb/d for the month of October 2021.
- Extend the compensation period until the end of December 2021 as requested by some underperforming countries and request that underperforming countries submit their compensation plans by 17 September 2021. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th ONOMM.
- Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism, taking advantage of the extension of the compensation period until the end of December 2021.
- Hold the 21st OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 4 October 2021.
以上
(この報告は2021年9月2日時点のものです)