ページ番号1009120 更新日 令和3年9月13日

TotalEnergiesとイラク政府が、エネルギー関連の大規模取引に調印

レポート属性
レポートID 1009120
作成日 2021-09-13 00:00:00 +0900
更新日 2021-09-13 11:16:16 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業環境
著者 芦原 雪絵
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 4
抽出データ
地域1 中東
国1 イラク
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中東,イラク
2021/09/13 芦原 雪絵
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概要

  • 2021年9月5日、TotalEnergiesはイラクのカディミ首相の立会いのもとで、イラク石油省、電力省、国家投資委員会と石油・ガス・太陽光発電に関する計4本の大規模統合エネルギー取引に調印した。プロジェクトの初期設備投資額は100億~110億ドルで今後25年間の操業費用と設備投資を含めた総額は270億ドルと見積もられており、低迷するイラクの石油部門とTotalEnergies自身のエネルギートランジション戦略の双方にとって極めて重要なプロジェクトとなる可能性も秘めている。
  • 今回の契約には、(1)ラタウィ油田の開発・生産能力の引き上げ、(2)南部油田から随伴ガス回収・処理を行うラタウィガスプロジェクト、(3)アラビア湾の海水を処理して南部油田群に圧入水を供給する共通海水供給プロジェクト、(4)バスラ地域の電力網へ電力供給するための太陽光発電所の建設・運用が含まれる。
  • 今回の契約では石油開発に関する事業が比較的少なく、油田操業のソーラー電源化を実現し、イラクの他のプロジェクトにおけるフレア削減をも計画していることなどから、イラクのGHG排出量を大幅に削減できると期待される。また2030年までにスコープ1および2の排出量を2015年比で40%削減するというTotalEnergiesの企業目標の達成にも大きく貢献することになる。
  • もしこのマルチプロジェクトが成功すれば、TotalEnergiesがイラクの生産量拡大・多様化計画のカギを握る主要プレイヤーへと変貌する可能性があり、さらには最近撤退の方針を示している、他のメジャー企業の動きにも変化が訪れる可能性があると考えられる。

(TotalEnergiesプレスリリース、International Oil Daily、Platts Oil Gram News 他)

 

1. はじめに

2021年9月5日、TotalEnergiesはイラクのカディミ首相の立会いのもとで、イラク石油省、電力省、国家投資委員会と石油・ガス・太陽光発電に関する計4本の大規模統合エネルギー取引に調印した。TotalEnergiesのプレスリリースでは、この契約の目的を「イラクの天然資源開発を強化し、同国の電力供給を改善すること」と謳っており、低迷するイラクの石油部門とTotalEnergies自身のエネルギートランジション戦略の双方にとって極めて重要なプロジェクトとなる可能性も秘めている。

報道によると、プロジェクトの初期設備投資額は100億~110億ドルで今後25年間の操業費用と設備投資を含めた総額は270億ドルと見積もられている。また、イラク石油省によると、1バレル50ドルの原油価格の場合、プロジェクト期間中の総利益は960億ドルになると予測されている。イラクのアブドルジャッバール石油大臣は、「これは、外資企業によるイラクへの史上最大の投資である」とコメントした。

 

2. 契約の概要

今回の契約には以下が含まれる。

 

(1) ラタウィ油田の開発

TotalEnergiesはラタウィ油田の権益とオペレーターシップを引き継ぎ、石油・ガス生産最適化に向けて専門知識を活用して、生産能力拡大を図る。現在、同油田はイラク国営Basra Oil Companyが操業を行っているが、生産能力を現在の日量8万5,000バレルから日量21万バレルまで引き上げる方針である。プラトー達成時期については言及されていない。

 

(2) 南部油田から随伴ガス回収・処理を行うラタウィガスプロジェクト

TotalEnergiesは、ガス収集ネットワークを構築、ガス回収・処理施設(処理能力600MMcfd)を建設し、バスラ周辺の油田から随伴ガスの回収を行う(TotalEnergisはプレスリリースでは明らかにしていないが、報道によればラタウィ、ルワイス、ツーバ、マジュヌーン、西クルナ2の5油田の随伴ガスを回収するとされている)。これにより、まず第1フェーズで発電容量1.5GW分のガス供給を行い、さらに第2フェーズでは3GWまで拡大するとしている。また、コンデンセート日量1万2,000バレルおよびLPG日量3,000トンもイラク国内市場向けに供給する。

そもそも、イラクではガス田開発はあまり進んでいない。また、随伴ガスの回収・処理が一部で行われてはいるものの、随伴ガスの約50%を未だにフレアしているとされている。一方でイラクでは発電用ガスが不足していることから、隣国イランからの天然ガス輸入に大きく依存せざるを得ない状況にある。本プロジェクトが成功すれば、将来的にはイランからのガス輸入依存度の引き下げも可能になると考えられる。

 

(3) 共通海水供給プロジェクト(Common Seawater Supply Project(CSSP))

アラビア湾の海水を処理して南部油田群に圧入水を供給する共通海水供給プロジェクト(CSSP)で、アブドルジャッバール石油大臣によれば、TotalEnergiesはまず日量500万バレルの水供給に取り組み、その後日量750万バレルまで増強する予定である。このプロジェクトは元来2010年代初頭よりExxonMobilとイラク政府の間で実施に向けて交渉が行われていたもので、途中で規模が変わったりしながら530億ドル規模の大規模インフラプロジェクト(Southern Iraq Integrated Project(SIIP))としてExxonMobilとCNPCによる実施が有力視されたこともあった。しかし結局契約には至らず、取引は頓挫したとみられる。ちなみに現在ExxonMobilは、西クルナ1油田オペレーター権益の売却、撤退に向けてイラク政府と対立しており、国際商工会議所に仲裁を申し立てている最中である。

イラクの現在の石油生産能力は日量約500万バレルで、2027年までに石油生産量を日量800万バレルに引き上げる構えだ。しかし生産量の維持・拡大を図るには、各油田の貯留層内圧力を維持するために大量の水を注入する必要がある。今後数年間で大規模な水供給が確立されなければ中長期的な石油生産が危ぶまれる可能性も否めず、CSSPはイラクの石油開発にとって非常に重要なプロジェクトのひとつである。

 

(4) 太陽光発電所の建設・運用

残る1つは、バスラ地域の電力網へ供給するための1GWの発電容量を持つ太陽光発電所の建設・運用である。上述の石油・ガスプロジェクトへの電力供給も行う。イラク政府は、既存の発電コストの45%以下で発電が可能になると期待している。プロジェクトの詳細は明らかにされていないが、2021年3月に交わされた初期合意によれば、このうち500MWが2022年末までに導入され、2023年までに1GWの全容量が利用可能になる見込みである。

イラクでは電力供給不足が恒常化しており、長時間にわたる停電が頻発し、住民の抗議行動も度々巻き起こっている。今年6月には電力大臣が辞任に追いやられた。こうした状況はイラクの発電・送電インフラが需要の増加に対応できていないことが主因で生じており、天然ガス火力発電事業と共に太陽光発電事業の重要性がさらに高まっている。

 

3. イラクの投資環境と今後の可能性

近年、イラクに進出する既存投資家は、契約条件の悪さやインフラの不整備、さらには理想的とはいえない安全保障環境や政府の意思決定の遅さなどを理由に、同国の劣悪な投資環境に苛立ちを募らせている。ExxonMobilは仲裁手続きを開始し、BPやLukoil、Petronasも過去に権益売却の可能性を示唆した。TotalEnergiesも「1バレルあたりのマージンが非常に低い」として、イラクにおける探鉱・開発のサービス契約を長年批判し、権益拡大の意向も示しておらず、CNPCがオペレーターを務めるハルファヤ油田でマイノリティプレイヤーとして参加しているのみであった。[1]TotalEnergiesは今回の契約の詳細を明らかにしていないが、今回の契約に基づく一連の事業は、イラクの通常の上流契約よりも大幅に収益性の高いものであると言われている。

今回の契約では石油開発に関する部分が比較的少なく、油田操業のソーラー化を実現し、イラクの他のプロジェクトにおけるフレア削減をも計画していることなどから、イラクのGHG排出量を大幅に削減できると期待される。また2030年までにスコープ1および2の排出量を2015年比で40%削減するというTotalEnergiesの企業目標の達成にも大きく貢献することになる。このマルチプロジェクトが成功すれば、同社がイラクの生産量拡大・多様化計画のカギを握る主要プレイヤーへと変貌する可能性があり、さらには他メジャー企業の撤退の動きにも変化が訪れる可能性が十分にあると考えられる。

 

パトリック・プヤンヌCEOは今回のプレスリリースで次のように述べている。「これらの契約は、当社がイラクに正面玄関から戻ってきたことを意味する。我々の目標は、ガスフレアの削減、水資源の管理、太陽エネルギーの開発など、イラクの天然資源をより持続的に利用することで、国民の電力アクセスを向上させ、イラクがより持続可能な未来を築くことを支援することである。このプロジェクトは、天然ガスと太陽光エネルギーを組み合わせて生産国のエネルギー転換を支援し、増大する電力需要に対応するという、当社のマルチエネルギー企業としての新しい持続可能な開発モデルを見事に示している。」

新たな開発モデルを開拓できるのか、TotalEnergiesの次の一手に引き続き注目が集まる。


[1] TotalEnergiesは2017年のMaersk買収によりクルディスタン地域に1鉱区(Sarsang)を保有していたが、2021年7月にShaMaran Petroleumへ売却した。

 

以上

(この報告は2021年9月13日時点のものです)

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