ページ番号1009123 更新日 令和3年9月16日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
戦略的開発・国家プロジェクト評議会に基づく大統領の指示リストが承認
- プーチン大統領は、7月19日に開催された戦略的開発・国家プロジェクト評議会に基づく指示リストを8月5日に承認した。
- 同指示リストにより、ロシア連邦政府は、2018年5月7日及び2020年7月21日の大統領令に基づく「ロシア連邦発展のための国家目標と戦略的課題」の実行のため徹底した措置を講じる必要がある。
- 具体的には、2024年までの期間及び2030年までの計画期間におけるロシアの国家発展目標の達成のため、社会経済の開発分野における戦略的イニシアティブを確実に含める形で統合計画を承認すること、低所得層の所得について定期的なモニタリングを行い、必要に応じて、同グループの実質所得の低下防止と向上を目的とした追加的な社会的支援措置を確実に行うこと、「デジタル成熟」を達成することを目的に、経済、社会分野、行政におけるデジタルトランスフォーメーション戦略を承認すること、医療保健、教育、公共政策を含む、経済・社会主要分野の「デジタル成熟」の度合いを計測する手法を導入すること、などが挙げられている。
- この他、一般教育の校舎の大規模改修、小規模な住宅街や高速道路沿線のLTE標準通信インフラの整備、地方における公共交通機関の向上に関する包括的なプログラムの実施などが盛り込まれた。
2021年第2四半期のGDPは前年比10.3%増
- ロシア連邦統計局は、8月13日、2021年第2四半期のロシアのGDPは、新型コロナウイルスの影響が大きかった前年同期との比で10.3%の増加となったと予備的な見積もりを発表した。
- 特に増加幅が大きかった分野は、旅客輸送分野で前年同期比250%の増加、次いで水・廃棄物インフラ分野30.2%、小売分野23.5%、卸売19.8%、製造業11.4%となり、新型コロナウイルスの規制緩和による個人消費の回復基調が貢献した。鉱業分野は7.8%の増加に留まった。
- なお、7月24日に発表されたロシア中央銀行の基本予測シナリオでは、GDP成長率は、2021年は3.5%~4.5%、2022年は2.5%~3.5%と予測されている。
(2) 対外関係
1) ドイツ
メルケル首相の首相として最後のロシア公式訪問
- プーチン大統領は、8月20日、モスクワ・クレムリン宮殿で、ドイツのメルケル首相との会談を実施し、メルケル首相の退任に際して在任16年間の独露関係発展への大きな貢献に言及するとともに、二国間関係やアフガニスタンにおけるタリバンの権力掌握、ウクライナ情勢、Nord Stream 2パイプラインなどについて議論を行なった。会談は予定より1時間延長され、3時間行われた。
- 会談後の共同記者会見において、プーチン大統領は、Nord Stream 2パイプラインに関して、15kmの海底部の建設作業を残して間もなく完工が見込まれるとし、メルケル首相が提起し続けてきたウクライナ経由のガス輸送について、メルケル首相の退任後も契約に基づく義務を完全に果たすことを約束した。
- また、プーチン大統領は、アフガニスタンにおけるタリバンの権力掌握に関して、外から価値観を押し付ける無責任な政策や、他者の型にはめて他国の民主主義を構築することは停止すべきだと主張した一方、メルケル首相は、タリバンの権力掌握の事実への失望を示した。
- メルケル首相は、ロシアの反体制派指導者で収監中のアレクセイ・ナヴァルヌィ氏に関して再度釈放を求めたが、プーチン大統領は反論したとされている。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/66414
2) トルコ、インド、中国
周辺国首脳との電話会談でアフガニスタン情勢における連携を確認
- プーチン大統領は、8月21日、トルコのエルドアン大統領、8月24日、インドのモディ首相、8月25日、中国の習近平国家主席との電話会談を実施し、アフガニスタンにおけるタリバンの権力掌握について議論を行い、本件への取り組みにおける連携を確認した。
- 上記の会談において、プーチン大統領は、トルコのエルドアン大統領とともに、8月14日に発生したロシア国防省の航空機Be-200Chsの墜落に関し哀悼の意を表明した。また、インドのモディ首相は、プーチン大統領に対して、ロシアのワクチン供給への感謝の意を表明した。更にプーチン大統領は、中国の習近平国家主席とともに、中露善隣友好協力条約の20周年を迎えた2021年において、中露の戦略的パートナーシップが発展していることを確認した。
3) カザフスタン
トカエフ大統領と対面での首脳会談でアフガニスタン情勢に関し議論
- プーチン大統領は、8月21日、モスクワ・クレムリン宮殿で、カザフスタンのトカエフ大統領との会談を実施し、二国間協力やアフガニスタンにおけるタリバンの権力掌握、集団安全保障条約機構による集団安全保障会議の内容などについて議論を行なった。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/66419
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2021年6月15日から2021年7月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD73.62864/バレルとなり、8月の原油輸出税はUSD9.3/バレルに引き上げられた。
- 8月の石油製品輸出税はUSD20.3/トン、ガソリンについてはUSD37.2/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 8月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,409万トン(約3億2,188万バレル、平均日量1,043万バレル)で、前年同月比5.7%増。
- 8月、原油輸出量は1, 847万トン(約1億3,482万バレル)で、前年同月比2.9%増。
(3) 天然ガス生産
- 8月、天然ガス生産量は577億立方メートル(約2.0TCF)で、前年同月比で7.6%増。
注1 原油生産量及び輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。
注2 天然ガス生産量はエネルギー省の公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。
(4) 原油輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 6月、主な原油輸出先は、欧州1,058万トン(約7,725万バレル、全輸出量に占める割合46.7%)、中国547万トン(約3,995万バレル、同割合24.2%)、韓国237万トン(約1,732万バレル、同割合10.5%)となった。
- 前年同月比で中国が26.7%減となった一方、欧州が8.5%増、韓国が60.2%増、日本が29.9%増となった他、米国、インド、トルコ向けの輸出が増加した。
(5) 天然ガス輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 6月、主なLNG輸出先は、欧州210万トン(全輸出量に占める割合39.2%)、日本186万トン(同割合34.6%)、韓国59万トン(同割合11.0%)、中国55万トン(同割合10.3%)で、前年同月比で日本を中心にアジア向けの輸出割合が大きく増加した。
- 6月、北極海航路を経由した主なLNG輸出先は、欧州191万トン(全輸出量に占める割合79.0%)、アジア51万トン(同割合21.0%)で、全量が欧州向けに輸出されていた前年同月と異なり、中国、韓国向けの輸出が行われた。
- 6月、主なパイプラインガス輸出先は、ドイツ4.2BCM(全輸出量に占める割合26.9%)、トルコ2.4BCM(同割合15.4%)、フランス1.2BCM(同割合7.5%)となった。
- 前年同期比でイタリアが54.6%減となった一方、ドイツが63.9%増、トルコが約12倍に増加した。
(6) 法令・税制
ミシュスチン首相が「ロシア連邦における水素エネルギー開発コンセプト」を承認
- ミシュスチン首相は、8月5日、ロシア連邦政府令第2162-r号により「ロシア連邦における水素エネルギー開発コンセプト」を承認した。
- 同コンセプトは、2020年6月のロシア連邦政府令第1523-rで承認された「2035年までのロシアのエネルギー戦略」のうち、水素エネルギーの開発に関して補足、明記するため、2020年10月のロシア連邦政府令第2634-r号で承認された行動計画「2024年までのロシアにおける水素エネルギー開発」に基づき策定された。これにより、2024年までの中期、2035年までの長期におけるロシア連邦の水素エネルギー開発の目標、タスク、戦略的イニシアティブ、主要な施策、2050年までの主要な目標が定義される。
- 同コンセプトにおいて、ロシア連邦は、水素の主要な供給者及び消費者になる可能性があるとし、水素エネルギーキャリアの国際市場と、国内技術や工業製品に基づく国内市場の双方を形成することに関心があるとしている。更に、低炭素水素を、化石燃料からの二酸化炭素回収技術や炭化水素原料の熱分解、原子力発電所の熱エネルギーを利用した天然ガスの水蒸気改質と二酸化炭素回収、原子力・水力・再生可能エネルギーの系統電力を利用した水の電気分解、排出量の削減を伴うプロジェクト等によりカーボンフットプリントが相殺されている水素と位置付けている。
- また、水素エネルギー開発のシステム上の制約として、低炭素水素のコストの高さ、二酸化炭素の回収・貯留・輸送・利用技術を含む低炭素水素の製造技術が十分に確立していないこと、貯蔵・輸送インフラとその技術レベルの不足、国内市場の需要が未成熟であること、水素技術への政府支援・研究開発投資が不十分であること、水素エネルギーの国家標準化及び認証システムの不足、世界の水素市場の不確実性など、多くの制約を提示した。
- このため、同戦略的目標の達成に向けて、水素エネルギーインフラ構築(水素の輸出・輸送・既存インフラ利用、二酸化炭素の回収・貯蔵・輸送・利用等)に対する国家支援策の開発と実施、水素エネルギーや二酸化炭素に関する法的規制上の枠組みの改善、低炭素水素及びエネルギー混合物の生産規模の拡大、低炭素水素技術の開発、同分野での国際協力の強化などのタスクを達成することを明記した。このうち、優先的に開発すべき技術として、化石燃料及び原子力発電所をベースとした水素及びエネルギー混合物の製造、水の電気分解による水素製造、水素及びエネルギー混合物の貯蔵・輸送、水素エネルギーキャリアの応用を定義した。
- 水素製造については、少なくとも、欧州諸国向けの水素輸出とカーボンフットプリント削減対策に特化した北西部クラスター、アジア諸国向けの水素輸出と輸送・発電分野における水素インフラ開発を行う東部クラスター、ロシア北極圏地域に低炭素電力を供給する北極クラスターの3地域における生産クラスターを想定している。
- 上記について、ミシュスチン首相は、8月9日、副首相との会議において、同コンセプトは、水素クラスターの設立とパイロットプロジェクトの実施により最大20万トンの水素輸出を達成し水素エネルギーキャリアの国内市場への適用を目指す第1段階(2021年~2024年)、商用水素製造プロジェクトの開始により200万トンの水素輸出を達成する第2段階(2025年~2035年)、国際水素エネルギー市場の大規模な発展を想定し、年間1,500万トンの水素輸出を達成する第3段階(2036年~2050年)を想定し、これによりロシアの経済成長を支えることになると強調した。
ミシュスチン首相が「ロシア連邦における電気自動車の生産開発コンセプト」を承認
- ミシュスチン首相は、8月23日、ロシア連邦政府令第2290-p号により「ロシア連邦における電気自動車の生産開発コンセプト」を承認した。
- 同コンセプトにおいて、ロシア連邦は2024年までに、少なくとも25,000台の電気自動車を生産し、9,000箇所以上の充電ステーションを開設する見込みを立てた。これにより、電気自動車の生産拠点の開発や技術の確立、新製品の市場投入、最新のエンジニアリング及び輸送インフラの構築などが優先事項として定義された。
- また、電気自動車の駐車場の設計手順の開発や標準化により多くの技術的な規制を見直すなど、関連規制の整備の必要性も強調されている。例えば、電気自動車を優先貸付・リースの対象とし、2022年から試験的に有料道路において電気自動車の無料通行を認める計画などを盛り込んだ。
- ロシア政府は、電気自動車の利用をより活発化するために、2021年秋に、上記のインフラ整備を開始する地域のリストを公表する。同コンセプトは、電気自動車の大量生産の基盤を整える第1段階(2021年~2024年)、電気自動車の生産量が国内の自動車の総生産量の10%までに到達する第2段階(2025年~2030年)の2段階を想定している。
3. 東シベリア・極東・サハリン
「住民と新規案件のための極東のクリーンエネルギー」をテーマにした円卓会議が開催
- 極東・北極圏発展省は、8月23日、グセイノフ第1副大臣が議長を務める「住民と新規案件のための極東のクリーンエネルギー」をテーマにしたラウンドテーブルを開催した。同イベントには、ロシア連邦や地方当局の代表者や金融機関、ルスギドロ、ロスアトム、Novatek、Hevel Group、ザルベジュネフチ、H2 Clean Energyなどエネルギー企業が出席した。
- 同イベントにおいて、グセイノフ第1副大臣は、極東における再生可能エネルギー分野の優先事項として、小売電力及び容量市場におけるプロジェクトの実施や遠隔過疎地域の集落における非効率なディーゼル発電の最適化を指摘した。また、極東と北極圏は、風量、日射量、水資源、地熱資源など、ほぼ全ての再生可能資源について、大きなポテンシャルを有していること、原子力エネルギーの開発の重要性が強調され、参加者からは、このために電力業界における税制上の優遇措置やグリーン融資の提供など、追加の支援策の必要性が表明された。
- また、水素エネルギーについて、極東地域は、燃料としての水素利用の検討が最も活発に行われているアジア太平洋地域に近接していることから、輸出用の水素生産ハブとなる可能性に期待が示されたが、同時に、同産業の発展のための政府支援の必要性が喚起された。
4. 新規LNG・P/L事業
ハンガリー政府がガスプロムとの新たな天然ガス長期供給契約に合意
- ハンガリー・シヤルト外務貿易大臣は、8月30日、ガスプロムのミレル社長との会談後の記者会見において、ガスプロムとの間で、10月1日から15年間の新たな天然ガス長期供給契約を締結することに合意したと発表した。
- 契約に基づき、ロシアからハンガリーに対し、Turk Streamパイプラインとその延長パイプラインを通じてセルビア経由で年間3.5BCM、オーストリア経由で年間1BCM、合計で年間4.5BCMの天然ガスが供給される予定となる。シヤルト大臣は、新しい契約の天然ガス価格について、既存契約の条件よりもはるかに有利な条件だと述べた。
1996年、ガスプロムとPanrusgaz(ガスプロムとハンガリー・MVMの合弁会社)の間で2015年までの天然ガス長期供給契約が締結され、その後2021年9月末まで延長され、現在、ロシアからハンガリーに対する天然ガス供給の大部分は、Panrusgazによってウクライナ経由、オーストリア経由の2ルートから行われている。また、2018年10月以降、ガスプロムは孫会社のWIEE Hungary Kftを通じて、ハンガリー向けに短期契約に基づく天然ガス供給も行っている。

写真出典:https://www.gazprom.ru/press/news/2021/august/article536416/
以上
(この報告は2021年9月16日時点のものです)
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