ページ番号1009153 更新日 令和3年10月21日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
東方経済フォーラムの開催
- 9月2日から4日にかけて、ウラジオストクで東方経済フォーラム2021がオンラインと対面のハイブリッド方式で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止された2020年を除き、2015年から毎年開催されており、今回で6回目の開催となる。同フォーラムの事務局長を務めるコビャコフ大統領顧問の発言によると、今年の参加者は25ヶ国から4,000名以上であり、フォーラム会場での署名文書数は過去最大の380件となった。
- プーチン大統領は講演の中で、2015年からの過去6年間にわたる極東における海外直接投資の合計額が約2倍の800億ドルに達し、この結果、6万8000人の雇用が新規に生まれたことを強調した。また、北極海航路を経由する貨物拠点を形成するために、ウラジオストク-サンクトペテルブルク間の初の定期航路を開通させる可能性を検討することに言及。更に、気候変動の文脈においては、サハリン州における二酸化炭素排出量削減及び2025年までのカーボン・ニュートラル達成や、日本や中国との協力可能性を含む「グリーン」水素及びアンモニアの生産・輸送等について検討していくことを表明した。
- 同フォーラムには、カザフスタンのスクリャル副首相、インドのプリ石油・天然ガス兼住宅・都市大臣、ミャンマーのシェイン計画・財務・工業大臣などの各国の閣僚が対面で参加した。オンラインでは、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相、モンゴルのフレルスフ大統領、タイのプラユット首相など、各国の首脳が参加し、講演を行った。一般参加では、ロシアからの参加が中心であったが、加えて、韓国、日本、インド、中国、カザフスタンなどからの参加者があった。
- 東方経済フォーラムの期間、日露間で、様々なエネルギー関連の協力合意が行われた。梶山経済産業大臣とシュリギノフ・エネルギー大臣との間で、「持続可能なエネルギー協力に関する共同声明」へ署名。資源エネルギー庁とNovatekとの間で、水素・アンモニア・CCS・CCU/カーボンリサイクルに関する協力合意(MOC)に署名した。また、商船三井とロシア運輸省傘下の国営リース会社GTLKが、カムチャツカ及びムルマンスクにおける浮体式LNG貯蔵設備(FSU)案件に関し、基本合意書を締結した。また、国際協力銀行(JBIC)とNovatekが、ロシアにおける脱炭素化に向けたプロジェクトに係る協力推進を目的とした戦略的協力協定を締結。丸紅と商船三井は、極東・北極圏発展省、ロシア開発対外経済銀行(VEB.RF)、対外貿易銀行(VTB)、ESNグループとの間で、環境負荷の低いメタノールと低硫黄重油の2元燃料に対応可能なメタノール輸送船の建造・運航・活用の共同検討に関する覚書を締結した。
2022年~2024年の政府予算案を下院に提出
- ロシア政府は、9月30日、ミシュスチン首相が承認した2022年の政府予算案及び2023年、2024年の計画期間における政府予算案を下院に提出した。歳入は増加する計画となっており、2022年に25.02兆ルーブル、2023年に25.54兆ルーブル、2024年に25.83兆ルーブルとされている。歳出は、2022年に23.69兆ルーブル、2023年に25.24兆ルーブル、2024年に26.35兆ルーブルと計画されている。
- 国家プロジェクトには、2022年に2.74兆ルーブル、2023年に2.88兆ルーブル、2024年に2.98兆ルーブルが割り当てられている。
- 予算案は、経済発展省が9月21日の政府の会議で発表した社会経済発展の中期予測の基本シナリオに基づいて策定されている。これによると、ロシアの経済成長率は、2021年に4.2%、2022年~2024年の3年間で毎年3.0%と予測されており、2021年のGDPは113.3兆ルーブル、2023年には141.9兆ルーブル、2024年には115.5兆ルーブルとなるとされている。4月の基本シナリオ及び7月の中期予測と比較して改善した。レシェトニコフ経済発展大臣は、2020年9月に承認された同シナリオにおける予想よりも四半期分早い経済回復となり、既に製造業、農業、交通、建設、貨物輸送分野における生産量は、新型コロナウイルスのパンデミック前の水準を上回っていると強調し、上半期の経済回復には、国内消費と投資の増加に基づく内需の活性化が貢献したと述べた。また、経済成長率の予測には、OPECプラスの協調減産縮小による原油増産及びこれを踏まえた金融政策の引き締めによる制約の2点を主な要因に挙げた。
下院選挙の結果、与党「統一ロシア」が324議席を獲得
- ロシア中央選挙管理委員会は、9月24日、9月17日~19日に投票が行われた下院選挙の結果を公表した。プーチン大統領の支持基盤であり、与党第1党である「統一ロシア」の獲得議席数が注目されたが、結果として、前回2016年の選挙で獲得した343議席から19議席減らしたものの、憲法改正に必要となる3分の2を上回る324議席を確保した。
- 「統一ロシア」の他、「共産党」が57議席、「公正ロシア」が27議席、「自由民主党」が21議席、「新しい人々」が13議席、この他「市民プラットフォーム」、「祖国」、「成長党」が1議席ずつ獲得した。
金融
政策金利を6.75%に引き上げ
- ロシア中央銀行は、9月10日、政策金利をこれまでの6.50%から6.75%に引き上げる決定をしたと発表した。政策金利は7月にも5.50%から6.50%に引き上げられており、引き上げが加速している。
- 中央銀行の発表によると、ロシア経済は2021年第2四半期にパンデミック前の水準にまで回復した。一方で、生産能力の拡大よりも需要が早く成長し、インフレが進んでおり、インフレを目標値である4%に戻すことを目的として政策金利が引き上げられてきている。中央銀行は、状況が予測に沿って進展した場合には、政策金利をさらに引き上げることを検討するとしている。現在の予測によると、ロシアの2021年の年間インフレ率は第4四半期に減速し始めると予測されており、2022年には4.0~4.5%に低下し、その後4%付近に留まると予測されている。
(2) 対外関係
1) 日本
エネルギー省、経済産業省との持続可能なエネルギー協力に関する共同声明に署名
- シュリギノフ・エネルギー大臣と梶山経済産業大臣兼ロシア経済分野協力担当大臣は、9月2日、東方経済フォーラムに関連して開催されたTV会談において、持続可能なエネルギー協力に関する共同声明に署名した。また同会談では、炭化水素、省エネ・新エネ、原子力の既存の協力分野に加えて、2050年カーボンニュートラルに向けたゼロエミッション燃料として期待が高まっている水素、アンモニアやCCUS/カーボンリサイクルに関する協力を新たに進めていくことで合意した。
- シュリギノフ大臣は、日露のエネルギー関係の発展及びビジネスにおける相互協力、国際市場における両国間の調整において、日露エネルギー・イニシアティブ協議会(共同声明により、日露エネルギー・パートナーシップ協議会に改称)が重要な役割を担っていると強調した。また、日露の多面的な貿易・経済協力の文脈において、エネルギー分野での相互協力が重要な位置づけであることを付け加えた。
- 更に同大臣は、水素エネルギー分野での協力においては、効果的な情報交換を実施し、グローバルな技術開発を主導する方法を共同で追及するためにも、日露の国際的なエネルギー企業の同分野への関心を共同で促進することが重要であると述べた。
2) BRICS
プーチン大統領、インドが議長国を務めるBRICSの第13回会議にオンライン参加
- プーチン大統領は、9月9日、インドのモディ首相が議長を務め、オンライン形式で開催されたBRICSの第13回会議に出席した。会議にはブラジルのボルソナーロ大統領、インドのモディ首相、中国の習近平国家主席、南アフリカのラマポーザ大統領が出席した。
- 今年のテーマは「BRICS域内の持続性、団結、相互理解のための協力」とされ、新型コロナウイルスの感染拡大の中でのBRICS諸国間での従来分野の連携に加え、デジタル経済、アフガニスタン情勢を中心としたテロ対策、衛星コンステレーションなど新たな分野での協力拡大について議論が行われた。また、ワクチン接種センターの設立や、グリーン・クリーン技術イニシアティブの立ち上げについて合意に至った。これらの議論を踏まえ、首脳会議では「ニューデリー宣言」が採択された。
- プーチン大統領は、特に新型コロナウイルスの脅威及びこれによる世界経済の停滞や安全保障をめぐる世界情勢の不安定化に対し、BRICSが緊密に協力していく必要性を強調した。特に、アフガニスタン情勢においては、同地域の平和と安定の確立に向けてBRICSが連携することで、周辺国へのテロ行為や麻薬密売の流れを断ち切る必要があると述べた。また、米国のアフガニスタンからの撤退が今回の危機的状況を生み出したと言及し、他国民の歴史的・国家的な特徴を考慮せず、その国に住む人々の伝統を無視し、所謂、民主主義的な構造を構築したいという外部からの価値観を一方的に押し付けようとする無責任な試みの結果であると批判した。
- 2022年に予定されるBRICSの第14回首脳会議は、中国が議長国となる予定。
3) シリア
アサド大統領と対面での首脳会談で連邦国家の発展に関し議論
- プーチン大統領は、9月14日、モスクワ・クレムリン宮殿で、シリア・アラブ共和国のアサド大統領との会談を実施し、シリア情勢や国際テロ対策、新型コロナウイルス対策としてのロシア産ワクチンの供給、経済協力などについて議論を行なった。
4) ベラルーシ
ルカシェンコ大統領と対面での首脳会談で連邦国家の発展に関し議論
- プーチン大統領は、9月9日、モスクワ・クレムリン宮殿で、ベラルーシのルカシェンコ大統領との会談を実施し、二国間協力や連邦国家の発展プログラムの策定などについて議論を行なった。
- 両国は、経済分野における税制等の法規制を統一することで、経済活動における諸条件の標準化、共通の財政、エネルギー市場、運輸、産業を形成することを目的に、連邦国家の発展プログラムについて長年議論を行ってきた。同会談後の共同記者会見において、これら全28プログラムが合意に至ったことを発表した。また、2023年12月までに、両国間で統一された天然ガス市場の創設に関する合意文書及び石油・石油製品市場や電力市場の統一に関する合意文書に署名する可能性について言及した。
5) 上海協力機構
プーチン大統領、タジキスタン主催の上海協力機構の第21回首脳会議にオンライン参加
- プーチン大統領は、9月16日、17日、タジキスタン・ドゥシャンベにおいてオンライン形式で開催された上海協力機構の第21回会議に出席した。会議には加盟国とオブザーバー国の12か国の首脳が出席した。
- 会議では、アフガニスタン情勢を中心に、新型コロナウイルスの感染拡大に対する協力などが議論され、これまでオブザーバー国として出席していたイランの正式加盟が承認された。
- プーチン大統領は、アフガニスタン情勢の悪化に関連して生じるリスクを考慮に入れて、上海協力機構の加盟国の連携により、ユーラシア地域の安全と持続可能な社会的・経済的成長の確保、国際的な平和・安定の維持に貢献していくことを呼びかけた。また、新型コロナウイルスの感染拡大による、世界経済の停滞により、失業率と貧困率の悪化が引き起こされていると指摘し、これに対し、ロシアは、GDPの4.5%以上に相当する約3兆ルーブルの支援金を拠出していると強調した。
6) 国際連合
ノヴァク副首相が国連総会のエネルギーに関するハイレベル対話で講演
- ノヴァク副首相は、9月24日、米国・ニューヨークで開催された国連総会のエネルギーに関するハイレベル対話において講演した。
- 講演において、同副首相は、ハイレベル対話が、地球上の人々が、安価で信頼性の高い、現代的なエネルギー源に確実にアクセス可能となる国際的な取り組みを行うために重要な役割を果たしていると強調。また、2040年までに世界のエネルギー消費量が1.5倍に増加すると指摘し、ロシアが、全ての国の消費者に手ごろなエネルギー源を確実に提供することを優先事項として取り組んでいると述べた。このためにも、気候変動問題を理由にエネルギーのアクセスが制限されることや、気候変動問題がエネルギー市場の競争に利用されることはなされるべきでないと主張した。
- 加えて、ロシアは、政府の支援の下で、再生可能エネルギー(水力・再生可能エネルギー・原子力)の割合を増加させ、2035年までに低炭素電源の割合を最大90%、ゼロカーボン電源の割合を最大45%とする見込みであると述べた。また、既にロシアの総発電量の約87%がゼロカーボン或いは低炭素電源によるものであると付け加えた。更に、天然ガスは環境にやさしいエネルギーとして、世界の主要なエネルギーの1つであり続けるとの考えを表明し、従来のエネルギー資源と代替エネルギー資源のバランスを維持することこそが、将来の低炭素社会の実現に向けた唯一の道であると伝えた。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2021年7月15日から2021年8月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD70.68568/バレルとなり、9月の原油輸出税はUSD8.8/バレルに引き下げられた。
- 9月の石油製品輸出税はUSD19.3/トン、ガソリンについてはUSD35.5/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 9月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,386万トン(約3億2,018万バレル、平均日量1,072万バレル)で、前年同月比7.9%増。
- 9月、原油輸出量は1,861万トン(約1億3,585万バレル、同453万バレル)で、前年同月比4.1%増。
(3) 天然ガス生産
- 9月、天然ガス生産量は611億立方メートル(約2.2TCF)で、前年同月比で9.6%増。
注1 原油原油生産量及び輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。
注2 天然ガス生産量はエネルギー省の公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。
(4) 原油輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 7月、主な原油輸出先は、欧州897万トン(約6,548万バレル、全輸出量に占める割合48.4%)、中国599万トン(約4,373万バレル、同割合32.3%)、米国91万トン(約664万バレル、同割合4.9%)となった。
- 前年同月比でトルコが9.1%増、欧州が8.8%増、米国が約7倍増となった一方、中国が9.1%減となった他、日本、韓国、CIS諸国向けの輸出が減少した。
(5) 天然ガス輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 7月、主なLNG輸出先は、欧州162万トン(全輸出量に占める割合40.1%)、日本106万トン(同割合26.3%)、中国70万トン(同割合17.3%)、台湾33万トン(同割合8.2%)で、前年同月比で中国向けの輸出割合が大きく増加した。
- 7月、北極海航路を経由した主なLNG輸出先は、欧州162万トン(全輸出量に占める割合81.4%)、アジア37万トン(同割合18.6%)で、全量が欧州向けに輸出されていた前年同月と異なり、中国向けの輸出が行われた。
- 7月、主なパイプラインガス輸出先は、ドイツ3.5BCM(全輸出量に占める割合24.4%)、トルコ2.3BCM(同割合16.4%)、ベラルーシ1.3BCM(同割合9.1%)となった。
- 前年同期比でイタリアが41.4%減となった一方、ドイツが約1.4倍、トルコが約1.8倍に増加した。
(6) 減産合意
2021年10月の減産措置縮小について日量40万バレル規模の維持に合意
- OPECプラスは、9月1日、第20回閣僚会合をテレビ会議形式で開催した。7月18日に開催された第19回会合における合意に基づき、8月以降実施されている減産措置縮小(毎月日量40万バレル)について、10月の減産措置にも適用することを決定した。
- 同会合では、メキシコを含むOPECプラス産油国による7月の減産遵守率が、110%と高い水準であったことを確認した。
- 会合に参加したノヴァク副首相は、需要が日量2,000万バレルに落ち込んだ最も困難な時期であった2020年5月に、ロシアは生産を再開しており、10月までに日量130万バレルの減産となり、同時期の減産水準の65%まで回復することになると述べた。これにより、ロシアは、2022年5月までにパンデミック前の生産水準に達すると強調した。また、2021年の原油需要について、年間平均で日量約600万バレルの増加を見込んでおり、来年に想定されるパンデミック前の水準まで、残り日量約300~400万バレルと重要な回復傾向にあり、市場動向を毎月注視していきたいと述べた。
- OPECプラスは、次回の第21回閣僚会合を10月4日に開催する。
(7) 法令・税制
ミシュスチン首相がガス供給網への接続に関する新規則を承認
- ミシュスチン首相は、9月13日、ロシア連邦政府令第1547-1550号によりガス供給網への接続に関する新規則を承認した。
- 同規則は、ガス化政策は既存のガス供給インフラが存在する地域においてのみ可能であるとしたうえで、個人・一般家庭のニーズに対しガスを利用する申請者に適用される。
- ガス供給インフラへの接続時期は、各世帯からインフラ施設までの距離によって異なり、個別に決定される。また、接続に際しては、政府の電子サービスポータルを通じて、ガス化事業者に申請書を提出する必要がある。
- ミシュスチン首相は、ガス化に必要な政府決定は全て行われたが、プログラムの実施期間は短く設定されているにもかかわらず、多くの作業を要するため、可能な限り多くのリソースを動員し対応する必要があると述べた。また、ガス化政策により、数百万世帯の生活の質の向上に繋がると強調した。
- プーチン大統領は、ロシアの地方におけるガス化水準を2030年まで10%以上向上し、全世帯の82.9%がガス供給インフラへ接続可能とするためのロードマップを承認している。また、社会ガス化プログラムの一環で、300万世帯以上を無料でガス供給インフラに接続可能とすることが計画されている。
(8) 北極海航路
政府は、2022年の北極海航路の開発に追加で約40億ルーブルを充当する見込み
- 2022年の政府予算案及び2023年、2024年の計画期間における政府予算案において、2022年の北極海航路の開発予算について、追加的に40億7,380万ルーブルの増額を検討している。同予算は、主に、Arctic LNG-2プロジェクト向けに建設を予定しているUtrenny基地の建設に充当される見込み。同予算は、2024年には10億5,104万ルーブルまで減額される。
- 他方で、同予算案の2024年分として留保された161億4,000万ルーブルについても、政府の決定に基づいて、北極海航路の開発に充当されるとの説明がなされている。
(9) 脱炭素・環境対応
日本の経済産業省、ロシアの石油天然ガス会社3者との脱炭素分野での協力合意を締結
- 日本の経済産業省は、東方経済フォーラムにあわせて、9月2日、Novatekとの間で「水素・アンモニア・CCS・CCU/カーボンリサイクルに関する協力合意(MOC)」、9月7日、ガスプロムとの間で「水素・アンモニア・CCS・CCU/カーボンリサイクルに関する協力合意(MOC)」、9月16日、ロスネフチとの間で「カーボンマネジメントに関する協力合意(MOC)」を立て続けに締結した。
政府とガスプロム間で、「天然ガス由来の水素エネルギー開発及び産業・運輸分野の脱炭素化」の高度技術の発展を目的とする合意文書を締結
- ミシュスチン首相は、9月6日、ロシア連邦政府指令第2471-r号により、政府とガスプロム間での「天然ガス由来の水素エネルギー開発及び産業・運輸分野の脱炭素化」における高度技術の発展を目的とする合意文書を承認した。
- 同文書は、8月5日にロシア連邦政府令第2162-r号によりミシュスチン首相が承認した「水素エネルギー開発コンセプト」に基づくものであり、天然ガス由来の水素エネルギー開発及び産業・運輸分野の脱炭素化における高度技術の発展目標を設定するための「ロードマップ」の開発・実行、同ロードマップにおける2025年までの実行計画の責任者と期間を明記することについて規定されている。ロードマップの策定はガスプロムが行う。
- ノヴァク副首相が政府を代表し、ガスプロム・ミレル社長との間で同文書に署名する。
ミシュスチン首相、グローバルなエネルギー転換へのロシア経済の適応計画の準備を指示
- ミシュスチン首相は、9月20日、グローバルなエネルギー転換へのロシア経済の適応計画の準備を指示し、これに基づき政府内での検討が開始された。同首相の指示リストに基づき、政府は、同計画を12月15日までに内閣に提出する必要がある。
- 経済分野における低炭素化の発展に向けた準備作業のため、政府内に副首相により監督され、経済発展省、産業商務省、エネルギー省、天然資源省、教育・科学省、外務省により構成される専門の作業部会が設定される。
持続可能な開発分野におけるグリーンプロジェクトへのファイナンス基準が策定
- ミシュスチン首相は、9月21日、ロシア連邦政府令第1587号により持続可能な開発分野におけるグリーンプロジェクトの選定基準及び検証システムの要件を承認した。
- 同文書では、グリーン或いは持続可能な開発への適応(移行)プロジェクトとして、特別な債券・融資を通じたファイナンス面での優遇を受けることが可能となる具体的な基準が示されている。
- このうち、グリーンプロジェクトは、廃棄物処理、エネルギー、建設、産業、運輸、水道、農業、生物多様性、環境保全の分野が対象とされており、各分野について、定性的及び定量的な基準が設定されている。適応(移行)プロジェクトは、インフラ、エネルギー、産業、運輸、農業の5分野が対象とされており、天然ガス生産時のCO2排出制限、温室効果ガスの捕捉・貯蔵(CCS)技術の活用、レアアースの抽出におけるフッ化物技術の活用などの基準が設定されている。
ロシア卸電力市場取引システム管理所(ATC)が再エネ投資案件の公募結果を公表
- ロシア卸電力市場取引システム管理所(ATC)は、9月21日、2021年の再生可能エネルギー投資案件の公募結果を公表した。
- ロシア政府は、2024年までの再生可能エネルギー電力供給契約プログラムに基づき、ATCを通じて年1回、卸電力・容量市場における再生可能エネルギー支援案件の公募を実施している。また現在、エネルギー省は、同プログラムを2025年~2035年の期間における再生可能エネルギー投資案件の支援にまで拡張するため、部分的な法改正を段階的に実施している。これによりロシアは、2035年までに新たに6.7GW以上の再生可能エネルギー発電設備を導入する予定。
- ATCによる公募は、風力発電、太陽光発電、水力発電に関するもので、2013年から実施されている。今回は、2023年~2028年に開始が見込まれる案件に関する公募が実施された。
- この結果、風力発電については、全48案件中、フィンランドのFortum社とロシアのRusnano社のJVであるVetroParki FRV社が39件、ロシアのロスアトム社の子会社であるVetroOGK-2社が9件を落札した。今回落札された風力発電案件により想定される発電容量は1.85GWであり、平均発電コストは、2,792ルーブル/MWhとなり、2020年の落札結果と比較して57%価格が低下した。更に最低落札価格は、VetroParki FRV社がアストラハン州とヴォルゴグラード州に建設する風力発電所で、発電コストが1,717ルーブル/MWhとなり、前回より70%以上価格が低下している。同価格は、世界の風力発電コストの最安値帯に匹敵するもの。
- 太陽光発電については、全18案件中、UnigreenPower社が10件、NovayaEnergiya社とSolarRiteil社が各4件を落札した。今回落札した太陽光発電案件により想定される発電容量は774.84MWであり、平均発電コストは、5,644ルーブル/MWhとなった。
- 水力発電については、全3案件をルスギドロ社が落札した。今回落札された水力発電案件により想定される発電容量は96MWであり、小水力発電所として、カバルダ・バルカル共和国、チェチェン共和国、ダゲスタン共和国に建設される予定。
エネルギー省、ロシアのブルー水素の製造コストが1.5~2USD/キログラム(約15~20円/Nm3)と発表
- エネルギー省ソロキン次官は、9月24日、「ハンティ・マンシースク自治管区・ユグラにおける低炭素経済及び水素エネルギーの発展」のセッションにおいて、ロシアにおけるブルー水素の製造コストが1.5~2USD/キログラム(約15~20円/Nm3)であり、競争力のある価格で生産するポテンシャルがあると述べた。またグレー水素であれば、1USD/キログラム(約10円/Nm3)以下での製造が可能であると付け加えた。
- 同次官は、適切な技術開発と円滑な資金調達が可能となれば、水素産業は10~12年後には経済性が出てくると強調した。但し、製造コスト、水素輸送インフラの発展、需要の3つの解決すべき課題があると述べた。水素産業においても、再生可能エネルギー産業と同様に、不採算期間(水素の場合、約10~12年間)において、技術開発のための十分な資金調達が行われれば、その後、大規模生産に移行し、経済性のある成長産業になる可能性が高いと指摘した。
2030年までの環境開発及び気候変動分野に関するプログラムが策定
- 政府は、9月28日、2021年~2030年の環境開発と気候変動分野に関する科学技術プログラムを策定した。
- アブラムチェンコ副首相は、同プログラムの機能にとして、第一に、自然環境及び気候の状況をモニタリング・予測するための科学技術ソリューションを提供すること、第二に、人間の活動による自然環境及び気候への影響を低減するための対策の有効性を評価するシステムを形成すること、第三に、環境システムや人類、経済の気候変動への適応のためのソリューションを提供すること、の3点を紹介した。
- 科学技術プログラムは3年ごとに策定され、同プログラムの実施に対して、合計約340億ルーブルが充当されている。
エネルギー省、水素産業の発展には10~15年以内のロシア国内需要の創出が重要と指摘
- エネルギー省ソロキン次官は、9月28日、ユジノサハリンスクにおいて開催された「サハリン石油ガスフォーラム」において、水素産業の発展のためには、10~15年以内に、ロシア国内における予測可能かつ大規模な水素需要の創出が重要と指摘した。
- 加えて、同次官は、ロシアにおいては、CO2貯留に最適な天然ガス採掘後の貯留層が豊富にあり、また、天然ガスパイプライン網や、油ガス田でのCO2-EORの可能性など、欧州・アジアの国々と比較して、ブルー水素の製造及びCO2排出量の削減において大きな利点があると強調した。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) ロスネフチ
ノルウェー・Equinor社との間でカーボンマネジメント分野での協力に合意
- ロスネフチは、9月29日、ノルウェー・Equinor社との間で、カーボンマネジメント分野の協力協定を締結した。同協定は、両者間の長期的なパートナーシップに基づくものであり、これに基づき、カーボンマネジメント分野における高度な生産技術ソリューションを共同で開発・試行、実装することが期待される。
- 具体的には、両者は、主にメタンを中心とする温室効果ガス排出量の計測・削減のための技術・施設を備えた共同事業の可能性評価や、2030年までにガスフレアをゼロにする取り組みを行う予定。また、風力発電、CCSの活用、ブルー及びグリーン水素の開発など、代替エネルギー源の活用を含む新たなプロジェクトの実現可能性の検討や、共同で実施する新旧上流事業における低炭素基準の策定も行っていく予定。
ExxonMobil社との間でカーボンマネジメント分野での協力に合意
- ロスネフチは、9月29日、ExxonMobil社との間で、カーボンマネジメント分野の協力協定を締結した。同協定は、両者間の長期的な協力関係の延長上で締結されたものであり、温室効果ガス排出量削減のための低炭素技術ソリューションの実施における両者間の協力関係の発展を目的としており、CCS技術の活用及び水素・アンモニア等の新燃料の開発を含む新たな共同プロジェクトの実現可能性の検討を行っていく予定。
(2) ガスプロム
ウラジオストクにおけるヘリウムハブ(ヘリウムロジスティックセンター)の開所式が開催
- ガスプロムは、9月3日、東方経済フォーラムにあわせて、ウラジオストク近傍におけるヘリウムハブ(ヘリウムロジスティックセンター)を開所し、式典を開催した。式典にはプーチン大統領、ミレル社長がオンライン中継により参加した。同ハブの建設は、2019年6月に開始された。
- 同ハブは、6月9日に段階的な稼働が開始した同社のアムール・ガス精製プラント(アムールGPP)から約1,500キロの距離にあるウラジオストク近傍に位置しており、そこから液体ヘリウムが国際市場に出荷される。アムールGPPにおけるヘリウム生産量は、年間6,000万立方メートルであり、世界のヘリウム需要の3分の1に相当する。同ハブの開所により、アムールGPPにおけるヘリウム生産から需要家までのサプライチェーンが完成することになる。
- なおアムールGPPでは、ヘリウムの他、年間42BCMのガスを処理し、240万トンのエタン、150万トンのLPG、20万トンのペンタン-ヘキサン留分を生産し、主にはSiburのAmurガス化学コンプレックスに供給する計画となっている。
ロスアトムとの水素エネルギー分野での協力協定に署名
- ガスプロムは、9月3日、東方経済フォーラムにあわせて、ロスアトムとの間で水素エネルギー分野での協力協定に署名した。
- 同協定では、サハリン地域におけるメタンの水蒸気改質法による水素製造プラントの建設について、両者の相互協力の可能性が規定されている。同協定に基づき、ロスアトムは、需要家へ水素を供給するためのプラント及び輸送インフラの建設可能性を検討し、ガスプロムは同プラントへの天然ガス供給の可能性を検討する予定。
- また同協定に基づく具体的な協力のため、共同調整委員会が設置される。
ウスチ・ルガにおけるガス処理コンプレクスの一部であるLNGプラントのEPC契約が締結
- ガスプロムは、9月9日、サンクトペテルブルクにおいて、同社とRusGazDobycha社の合弁会社であるRusChemAlliance社を通じて、独Linde社、土Renaissance Heavy Industries社との間で、ウスチ・ルガにおけるガス処理コンプレクスの一部であるLNGプラントの建設に関するEPC契約を提供したと公表した。同契約の署名は、ミレル社長とLinde社のReitzle会長の立会いの下で行われた。
- EPC契約に基づき、Linde社とRenaissance Heavy Industries社は、年間1,300万トンのLNG生産能力を有する2系列の設計・建設・機材調達等を行う。LNGの製造には、ロシアにおいてガスプロムとLinde社が特許を取得した技術が用いられる予定。
(3) ガスプロムネフチ
ルクオイルとの間で、ヤマロ・ネネツ自治管区の石油・天然ガスクラスター開発の合弁会社設立に合意
- ガスプロムネフチ・デュコフ社長とルクオイル・アレクペロフ社長は、9月16日、ヤマロ・ネネツ自治管区ナディム・プルタズ地域において、大規模な石油・天然ガスクラスター開発のための合弁会社を設立する契約を締結した。
- 同合弁会社は、ガスプロムネフチの子会社であるMeretoyakhaneftegaz社に基づき、設立される。同事業の中心的な鉱区は、2021年6月に生産開始したTazovskoye油田であり、この他に、Severo-Samburgskoye油田及びMeretoyakhinskoye油田、2つのWestYubileinyライセンス鉱区の開発が含まれる。合計埋蔵量は、原油10億トン、天然ガス5,000億立方メートル。
4. 東シベリア・極東・サハリン
極東の科学・技術ポテンシャル支援・発展のための技術投資ファンド「Voskhod」が設立
- 極東・北極圏発展省は、9月3日、東方経済フォーラムにあわせて、トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表の立会いの下、Interros社との間で、極東の科学・技術ポテンシャルを支援・発展させるための技術投資ファンド「Voskhod」の設立に関する覚書を締結した。
- 同覚書では、グリーン技術、環境安全性モニタリング、再生可能エネルギー、デジタル技術、インダストリー4.0、バイオテクノロジー、医療、教育技術などの分野におけるハイテク事業が、ファンド投資の優先分野とされる。
5. 新規LNG・P/L事業
(1) ノヴァク副首相、ウクライナ経由での天然ガス輸送に関するドイツ政府全権代表と面談
- ノヴァク副首相は、9月8日、Walderseeウクライナ経由での天然ガス輸送に関するドイツ政府全権代表と面談において、ロシアとドイツ間の貿易及び経済協力の問題について議論を行った。
- 両者は、天然ガス分野での協力が不可欠なものであり、2023年にはロシアからドイツ向けの天然ガス供給開始50周年を祝福することを確認した。また、2024年以降のウクライナ経由での天然ガストランジットの利用可能性について議論を行い、今後も協議を継続することに合意した。
(2) Nord Stream 2天然ガスパイプラインが完工
- ガスプロム・ミレル社長は、9月10日、Nord Stream 2天然ガスパイプラインが完工したことを発表した。稼働開始に向けて、ドイツの規制当局による同パイプラインの認証手続きが行われる。認証手続きの後、関連文書は欧州委員会に提出される。
- ラブロフ外相は、ドイツの規制当局による認証手続きには、最大4か月要する可能性があると述べた。
(3) ロシアからハンガリー向けの15年間の天然ガス長期供給契約が締結
- ガスプロム・エクスポルトとハンガリーのMVM CEEnergy社は、9月27日、ブダペストにおいて、ハンガリー・シヤルト外務貿易大臣、ブルミストロヴァ・ガスプロム副社長兼ガスプロム・エクスポルト社長の立会いの下、ロシアからハンガリー向けの2つの天然ガス長期供給契約を締結した。既に両者は、8月、シヤルト大臣とガスプロム・ミレル社長の間の会議において、本件について合意に至っていた。
- 2つの契約による天然ガス供給量は、合計で年間4.5BCMであり、Turk Streamパイプラインとその延長パイプラインを通じてセルビア経由で年間3.5BCM、オーストリア経由で年間1BCMが、10月1日から15年間、ハンガリーに供給される。
(4) ロシアからモルドバ向けの天然ガス供給契約が1か月延長
- ガスプロムとモルドバガスは、9月30日、9月末に満了を迎えるロシアからモルドバ向けの天然ガス供給契約を10月1日から1か月延長することに合意し、文書に署名した。
- 既にモルドバのスピヌ・インフラ・地域開発大臣が本延長について公表していたが、今回、同発言通り契約に至った。モルドバガスは、天然ガス長期契約の契約価格等の条件については引き続き交渉が継続中と伝えた。
- モルドバは、ロシアとの間で2008年に締結した天然ガス長期供給契約と同じ価格等の条件で、契約更新することを望んでいる。
以上
(この報告は2021年10月20日時点のものです)
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