ページ番号1009181 更新日 令和3年11月11日

中国、約3年の停滞を経て相次ぐ米LNGとの契約、調達の多様化や最適化を志向

レポート属性
レポートID 1009181
作成日 2021-11-11 00:00:00 +0900
更新日 2021-11-11 16:19:41 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 5
抽出データ
地域1 アジア
国1 中国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2021/11/11 竹原 美佳
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概要

  • 2021年9月から10月にかけて中国と米国のLNG売買契約が相次いでいる。現在執筆時点では2021年に中国3社が合計で最大年850万トンの長期・短期契約を結んだ。同国からのLNG輸入も急増しており2021年1-9月時点でLNG輸入の1割を超えた。
  • 米国のLNGは仕向け地制限を伴わない液化加工委託契約を締結することが可能で、多くの場合市況に合わせキャンセルができ、FOB引き渡しの場合は販売先の柔軟な変更も可能である。また契約の多くはヘンリーハブ価格に連動している。中国のLNG事業者は2018年前半まで調達の多様化や最適化を図る観点から米LNGをポートフォリオに組み込むことに前向きであったが米中貿易関係の悪化、また2018年8月に中国政府が米LNGに10%の追加関税を課税した後は新規のLNG契約交渉は停滞していた。水面下で交渉は続いていたようだが特に国有石油企業は中国政府の方針が定まるまで、米国からのLNGの新規契約を手控えていたようだ。
  • 今回の契約は2021年初頭から交渉が行われていた模様である。2020-21年冬季のエネルギー安定供給に対する意識の高まりやLNG市況の引き締まりを踏まえ、政府から企業にエネルギー調達指示が出されたことを主因に米LNGとの交渉が再開し、9月1日の大手国有SinopecとVenture Globalとの契約締結や9月28日の韓正副首相(エネルギー所管)を含む政府からのエネルギー確保要請を受けて、その他の契約締結も加速したものと思われる。
  • 現在の米中両国の関係は良好とは言えないが、LNGの取引についてはマーケティングを拡大したい米国が、市場拡大が見込まれる中国を制裁対象として排除することは考えにくい。また中国も天然ガス(LNG)を再生可能エネルギーと並ぶクリーンエネルギーとして長期的に利用拡大を図る意向であり、取引の柔軟性を高めたいと考えている。米国同様、中国が関係を悪化させている豪州からの石炭輸入は停止したが、長期売買契約に基づく豪州からのLNG輸入は継続しており、米国産LNGの輸入や新たな契約は今後継続、拡大していくものと思われる。

 

Sinopec、米Venture Global LNGと一連の短期・長期LNG売買契約を締結

9月1日、Sinopecは米Venture Globalと2件計400万トン/年の長期LNG売買契約(SPA)を締結した。中国企業1社による米国産LNGの契約量として最大のものである。一つは年280万トンで期間20年(FOB)、もう一つは年120万トンで期間20年(DPU: Delivered at Place Unloaded: 売主承諾による仕向け地フリー)でPlaquemines(プラクミン)LNGから供給される。Venture Global LNGは10月1日に米エネルギー省(DOE)に本契約を報告し、同月19日に同省ウェブサイトでその情報が公開された。

Venture Global社のPlaquemines LNG Phase 1の計画容量は1,000万トンでSinopec、ポーランドPGNiG、EDFの3社を合わせた契約量は850万トンに達しており、初期の建設活動が始まっている。Venture Global社が今後数ヶ月以内にFIDを達成すれば、早ければ2024年には供給が始まる。また契約の詳細は公表されていないが、ヘンリーハブ(HH)連動で固定の液化手数料は2ドル/MMBtu未満と見られている。Sinopecは過去にCheniereと交渉を行っており、2023年の納入に向けて2019年初めに締結間近だったが、米中貿易関係の悪化を受けて2019年に交渉は頓挫した。今回Venture Global社と契約に至ったのはVenture Global社が中国におけるLNGマーケティングに精通している元メジャーズの人材を活用し、液化手数料を含む魅力的な契約条件を提示したことにあると言われている。

この他SinopecはVenture Global社と2件の短期契約を結んでいる。一つは年80万トン(10カーゴ程度)で期間は1年(FOB)、供給開始時期は2022年5月である。もう一つは年100万トンで期間は3年(FOB)、供給開始時期は商業運転開始日または2023年3月のいずれか遅い方である。いずれもCalcasieu Pass LNGから供給される。これらの契約によりSinopecの同社とのLNG契約数量は最大計580万トンに達する(表1)。なお、11月初頭に複数の媒体でSinopecがVenture Global LNGと年350万トン/年のLNG売買契約を結んだと報じられたが、契約締結日を含め詳細は不明であり本稿では契約数量に含めない。

 

表 1:2021年に新たに契約された米国LNG売買契約(短期・長期)

表 1:2021年に新たに契約された米国LNG売買契約(短期・長期)

SIA Energy他に基づき作成

(この他11月初頭に複数の媒体でSinopecがVenture Globalと年350万トンのLNG売買契約を結んだと報じられたが
詳細が確認できず除外。またポートフォリオ契約におけるオフテークも本表には含まない。)

 

新奥(ENN)、CheniereとLNG長期売買契約(90万トン)を締結

10月11日、民間企業新奥(ENN)はCheniere Energy子会社のCheniere Marketingと長期LNG売買契約を締結した。Cheniereは2022年7月から13年間、ENNに年間約90万トンのLNGをFOBにより供給する。拡張計画中のCorpus Christi LNG Stage 3から供給される。価格はヘンリーハブ連動で固定の液化手数料が加算される。

ENNは2018年に米LNGの調達を検討したが米中貿易摩擦の影響で頓挫した。2018年11月に傘下のENN Ecological Holdingsを通じ東芝の100%連結子会社のToshiba America LNG Corporation(TAL)との間で、米国Freeport LNG(トレイン3)における年間220万トン×20年間の天然ガス委託加工契約(LTA)の譲渡について合意した。しかしENNの一部株主が事業リスクを懸念し、買収について反対した。さらに米中当局の認可取得も遅れ、2019年4月に東芝はENNとのLTA契約を解除した。同年6月東芝は米国Freeport LNG(トレイン3)の利用権を仏Totalに1,500万ドルで譲渡した。

Cheniere Energyは2018年2月にPetroChinaとCorpus Christi LNGの年120万トン、2018年から25年間(FOB)の長期売買契約を結んでおり、中国企業との契約は2件目である。

 

Sinochem、CheniereとLNG長期売買契約(90万トン)を締結

11月5日、SinochemはCheniere Energy子会社のCheniere Marketingと長期LNG売買契約を締結した。Cheniereは2022年7月から17.5年間、SinochemにLNGをFOB方式で供給する。当初は年間約90万トンで開始し最大で180万トンを輸入する。LNGは拡張計画中のCorpus Christi LNG Stage 3から供給される。価格はヘンリーハブ連動で固定の液化手数料が加算される。

Sinochemにとり初の長期LNG売買契約である。Sinochemは国有の石油化学企業であり、原油・石油製品のトレーディングに豊富な経験を有する。同社は計画中のものを含めLNG受入基地の保有や出資は行っていないが、SIA Energyによると子会社のSinochem Oilが昨年来LNG関連ビジネスに積極的に取り組んでいる。CNOOCの受入基地の第三者アクセスやPipeChinaが管理するLNG受入基地を活用しLNGを輸入し、自社製油所への供給や国内取引を行っていくと思われる。PipeChinaは2021年8月にLNG受入基地の中長期(5年~20年)の使用権について公募しており、Sinochemがこれに応募、落札する可能性もある。

 

約3年の停滞期間を経て中国の事業者は再び米国のLNGを選択、最適化を志向

中国が米国産LNGの輸入を開始したのは2016年9月だが、長期LNG売買契約(SPA)は2018年2月にPetroChinaがCheniere EnergyのCorpus Christi LNGと締結した年120万トン(期間25年)のみで、その他はShell、Total、BPとのポートフォリオ契約を通じた米国産LNGのオフテークである。

米国のLNGは仕向け地制限を伴わない液化加工委託契約を締結することが可能で、多くの場合市況に合わせキャンセルが可能で、FOBの場合販売先の柔軟な変更が可能である。また契約の多くはヘンリーハブ価格に連動している。中国のLNG事業者は2018年前半まで調達の多様化や最適化を図る観点から米LNGをポートフォリオに組み込むことに前向きであった。しかし米中貿易関係の悪化で2018年8月に中国政府が米LNGを第3次追加関税リストに加えた(LNGは10%の追加関税)。この後中国の業界アナリストや事業者は一斉に米国産のLNGは中国の天然ガス供給にとり必要不可欠なものではないと言い始め、新規の長期LNG売買契約交渉は中断した(水面下で交渉は行っていた模様)。国有石油企業は中国政府の方針が定まるまで、米国からのLNGの新規契約を手控えていたものと思われる。その結果、2019年の米国からのLNG輸入は前年の215万トンから26万トンに大きく減少した。SinopecもCheniereと2023年の納入に向けて2019年初めに締結間近だったが、2019年に交渉は頓挫している。

2020年1月の米中第1段階合意に伴い、同年5月以降中国政府が企業の申告に基づき米LNGへの追加関税を免除し2020年は輸入が伸びた。2020年の中国の米国からのLNG輸入量は321万トン(中国のLNG輸入の5%)に達した。2021年1-9月時点の米国からのLNG輸入量は649万トンで豪州、カタール、マレーシアに次ぐ4位のLNG輸入相手先となり、輸入に占めるシェアは10%を超えた(図1)。

 

図 1:中国の主要国別LNG輸入推移(2011年~2021年1-9月)
図 1:中国の主要国別LNG輸入推移(2011年~2021年1-9月)
SIA Energyに基づき作成

中国のLNG事業者は2021年初頭から米LNG事業者と交渉を行っていた模様である。そして2020-21年冬季のエネルギー安定供給に対する意識の高まりやLNG市況の引き締まりを踏まえ、政府から企業にエネルギー調達指示が出され米LNGとの交渉を再開し、9月1日の大手国有SinopecとVenture Globalとの契約締結や9月28日の韓正副首相(エネルギー所管)を含む政府からのエネルギー確保要請を受けてその他の契約締結が加速したものと思われる。

米中両国の関係は良好とは言えないが、LNGについてはマーケティングを拡大したい米国政府が、市場拡大が見込まれる中国を制裁対象として排除することは考えにくい。また中国も豪州からの石炭輸入は停止したが、長期売買契約に基づく豪州からのLNG輸入は継続しており、今般結ばれた米国産LNGの契約も履行されることが見込まれる。

 

参考:米中経済貿易協議第1段階合意を巡る状況

2020年1月15日に米中両国は経済貿易協議第1段階合意文書に調印した。中国は米国からのエネルギー産品の調達・輸入について2017年をベースに2020年に185億ドル、2021年に339億ドルに拡大することで合意した。同年2月6日に国務院(政府)関税税則委員会は米国から輸入する約750億ドル(約8兆2,500億円)分の製品の追加関税率について2月14日から引き下げると発表し、同措置に伴い原油とLPGへの追加関税は5%から2.5%に引き下げられた。またLNGの追加関税も企業の申請により5月以降免除された。2020年の米国からのエネルギー輸入額は原油62.7億ドル、LNG11.1億ドル、LPG17.4億ドルの計91.2億ドルでいずれも大幅に増加した。ただし、もともと輸入金額の目標が過大で、しかも油価が低迷したことも加わり米国と合意していた185億ドルの目標輸入額には達しなかった。

JETRO[1]によると2021年10月、米通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で講演を行った。中国との通商協議を新たに行う意向を示し、対中追加関税について適用除外手続きを再開すると発表した。中国との経済貿易第1段階合意(20年1月)の米エネルギー産品調達目標(21年185億ドル、22年339億ドル計524億ドルに拡大)の履行を中国に求めている。米国のピーターソン国際経済研究所の分析によると、協定で約束された購入品目全体について、中国の対米輸入額は2020年で999億ドル(目標1,731億ドル)、2021年で894億ドル(目標1,299億ドル)となっており、協定目標の達成率はそれぞれ58%と69%にとどまる(2021年8月時点)。


 

以上

(この報告は2021年11月11日時点のものです)

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