ページ番号1009183 更新日 令和3年11月19日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
Russian Energy Week 2021の開催
- 10月13日から15日にかけて、Russian Energy Week 2021がモスクワにおいて、オンラインと対面のハイブリッド方式で開催された。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止された2020年を除き、2017年から毎年開催されており、今回で4回目の開催となる。今回は、80か国以上から2,500人が参加し、合計で32のビジネスセッションに204人の講演者が登壇した。同フォーラムは、石油・天然ガス、石炭、石油化学、電力、原子力、水力、再生可能エネルギー等のあらゆる資源エネルギー分野に関する議論を行うことを目的としているが、今回は、「グローバルエネルギー:発展のためのトランスフォーメーション」をテーマとして、脱炭素化に関する議題が多く取り上げられた。
- 初日の全体会合には、プーチン大統領、アンゴラ・ロウレンソ大統領、BPルーニーCEO、TotalEnergiesプヤンニCEO、ExxonMobilウッズCEO、Daimlerケレニウス会長が出席し、プーチン大統領とロウレンソ大統領がスピーチを行った。プーチン大統領は、自身のスピーチにおいて、ロシアの年間平均気温が、世界の気温上昇の2.5倍以上速いペースで上昇しており、過去10年間で0.5度上昇したと指摘し、ロシアが、遅くとも、2060年までにカーボンニュートラルを達成する目標を宣言。また、2035年までにロシアの年間LNG生産量を1億4,000万トンに増加させることや、世界におけるロシアの石油化学製品の供給シェアを現在の1%から7%に増加させることを強調した。
- スピーチ後のディスカッションにおいて、欧州の天然ガス不足を巡る状況について、ロシアは政治利用することなく、2021年9月までの欧州向けの天然ガス供給のうち、ガスプロムによる供給量が10%、LNGによる供給量が約13~14%増加し、全体で15%増加していると主張した。また問題は、ロシアではなく欧州自身にあるとし、夏季の風力発電量が低迷したこと、天然ガス地下貯蔵量が75%と低水準であったこと、米国等の他地域からの天然ガス供給が価格の高いアジアに流れたこと、更に、ロシアからウクライナを除く欧州向けの天然ガスのうち、約18BCMがウクライナの地下貯蔵施設に吸収されたことを指摘した。この他、中国へのパイプライン供給のモンゴルを経由する第2ルートについて合意に達したこと、今後、現在のエネルギーミックスにおいて86%を占める低炭素エネルギーである天然ガス、原子力、水力を中心に、水素エネルギー等も考慮しながら、カーボンニュートラルを目指していく方針を伝えた。
- 2日目の「従来型エネルギーの将来」に関するセッションには、ノヴァク副首相、マズルイUAEエネルギー・インフラ大臣、アブドルアジーズ・サウジアラビア・エネルギー大臣、シャフバゾフ・アゼルバイジャン・エネルギー大臣、OPECバルキンド事務局長他が参加。従来型と脱炭素の間のバランスを維持しながらエネルギー転換を進めることの重要性が再確認された他、中東諸国におけるブルー・グリーン水素の取り組みが紹介された。
第8回ロシア連邦下院の初会合が開催
- 第8回ロシア連邦下院は、10月12日、選挙後初の会合を開催し、これにあわせてプーチン大統領と下院議員の間の会談が行われた。プーチン大統領は、下院議員の構成が大幅に更新され、450議席中ほぼ半数の218議席が新参議員になったと歓迎し、ロシアの政治システムが市民や社会変化への要求に対応している証拠であると強調した。
- また、同議会が最初に取り組む法案は次期連邦予算関連法案であり、同予算の3つの優先事項は、社会政策、経済発展、医療であると述べた。特に最大の予算項目である社会政策に対しては、子育て世帯及び高齢者への支援を柱に、今後3年間で、41.5兆ルーブルを充当し、残る地域の経済発展支援に15.1兆ルーブル、医療に10.9兆ルーブルを割り当てる予定であると紹介した。また、パンデミック後のインフレ予測に対し、貧困層への対応が重要であると指摘し、政府への注意喚起を行った。
金融
政策金利を7.50%に引き上げ
- ロシア中央銀行は、10月22日、政策金利をこれまでの6.75%から7.50%に引き上げる決定をしたと発表した。政策金利は9月にも6.50%から6.75%に引き上げられており、今回で6会合連続の利上げとなった。更に、今回は一気に0.75ポイントの引き上げとなり異例の措置となった。
- 中央銀行の発表によると、引き上げの背景には、中央銀行の従来予測よりも高いインフレ水準があり、2021年の年間インフレ率は7.4~7.9%の範囲になると予想を見直している。年間インフレ率の上昇加速の要因の一つには、青果物価格の高騰が挙げられる。生産能力の拡大よりも需要が早く成長し、インフレが進んでおり、インフレを目標値である4%に戻すことを目的として政策金利が引き上げられてきている。中央銀行は、状況が予測に沿って進展した場合には、政策金利をさらに引き上げることを検討するとしている。なお現在の予測によると、ロシアの2022年の年間インフレ率は4.0~4.5%に低下し、その後4%付近に留まると予測されている。
(2) 対外関係
1) アルメニア
パシニャン首相との対面での会談でナゴルノ・カラバフ紛争等の問題について議論
- プーチン大統領は、10月12日、モスクワ・クレムリン宮殿で、アルメニア共和国のパシニャン首相と会談し、ナゴルノ・カラバフ紛争を中心とした安全保障問題について議論を行った。パシニャン首相は、同紛争の解決に向けてロシアが重要な役割を果たしていると述べた。
2) イスラエル
ベネット首相との対面での会談でシリア情勢や経済協力について議論
- プーチン大統領は、10月22日、ソチで、イスラエルのベネット首相と会談し、両国の歴史的な協力関係やシリア情勢、イランの核開発問題、経済協力について議論を行った。
- プーチン大統領は、ロシアがソビエト連邦の後継者としてイスラエル建国の立役者であることやイスラエルが海外で最大のロシア語圏コミュニティであることを伝え、両国の独特な歴史的繋がりを強調した。また、シリア情勢やテロとの戦いにおいて協力していく意向を伝えた。ベネット首相は、第二次世界大戦におけるソビエト連邦(ロシア人)の貢献に感謝を表し、未来の世代に伝えていくことや、同国にはロシア語話者が100万人いることを伝えた。
- この他両者はハイテク分野での協力や科学・文化協力の発展について議論を行った。
3) アジア諸国、米国
第16回東アジアサミットの開催
- プーチン大統領は、10月27日、ブルネイ・ダルサラームのボルキア国王が議長を務め、オンライン形式で開催された第16回東アジアサミットに出席した。会議では、新型コロナウイルスの感染拡大とアジア太平洋地域の経済回復について議論がなされた。
- プーチン大統領は、同サミットがアジア太平洋地域の状況について対話し、最も差し迫った問題を解決する方法を検討し、平和と安定を維持する措置を講じ、相互に有益かつ多面的な協力を強化する良い機会であると述べた。また、ロシア製の新型コロナウイルスワクチンであるスプートニクVは、既に70か国で使用が承認され、50か国以上に供給されていると強調し、同ワクチンを承認したアジア太平洋諸国への供給と、無料での検査システムの提供を継続すると伝えた。
- 経済面については、2021年8月末時点の東アジアサミット参加国との貿易額は、2020年比34%以上増加の1,620億米ドルとなり、同参加国からロシアへの累積投資額は、過去5年間で2倍以上の185億米ドルに達したと紹介した。また、世界の「スマートシティ」の第7位に位置するモスクワが、ASEANにおけるスマートシティプロジェクトに積極的に参加していくことに言及した。
4) ASEAN
第4回ロシア-ASEAN首脳会議の開催
- プーチン大統領は、10月28日、ブルネイ・ダルサラームのボルキア国王が議長を務め、オンライン形式で開催された第4回ロシア-ASEAN首脳会議に出席した。前回の同会議は、2018年、シンガポールにおいて開催され、「戦略的パートナーシップ共同宣言」が採択され、ロシアとASEANが政治、経済、社会、人道支援分野での協力を行っていくことが明記された。
- プーチン大統領は、今回、ロシア-ASEANの外交関係樹立30周年を祝福するとともに、上記2018年の共同宣言に基づき、引き続き、ロシアが同地域に戦略的に関与していくことの重要性を強調した。
- 同会議では、共同宣言及び「2021年から2025年までの包括的戦略的パートナーシップ計画」、「違法薬物取引との闘いに関する声明」が新たに採択された。
5) フィンランド
ニーニスト大統領と対面での首脳会談で新型コロナウイルスや気候変動問題に関し議論
- プーチン大統領は、10月29日、モスクワ・クレムリン宮殿で、フィンランドのニーニスト大統領との会談を実施し、二国間協力、新型コロナウイルスや気候変動問題などについて議論を行なった。両者の対面での会談は2年ぶりに実施された。
- プーチン大統領は、来年が両国の関係樹立30周年であると言及しつつ、昨年比で貿易額が21%増加したことを紹介した。また、両国の政府間委員会による作業が再開されたことにも期待を示した。他方で、観光業が新型コロナウイルスの影響を大きく受けていることを指摘し、年末までの国境往来の再開を要望した。
- ニーニスト大統領は、気候変動問題について、大国であるロシアとの協議の重要性を強調し、共通の関心分野である森林資源の観点からの対策について話し合いを持ち掛けた。また、2023年までロシアが議長を務める北極評議会等を通じた協力を継続する意思を伝えた。
G20
第16回G20首脳会議の開催
- プーチン大統領は、10月30日、31日、イタリアのドラギ首相が議長を務め、ローマにおいて開催された第16回G20首脳会議に参加した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、サウジアラビアが議長を務めた前回2020年の会議がオンライン開催であったため、対面での開催は、2019年の大阪開催以来2年ぶりとなったが、プーチン大統領は国内の新型コロナウイルス感染拡大の状況に鑑み、オンライン形式での参加となった。ロシアから対面では、ラブロフ外務大臣、シルアノフ財務大臣他が参加した。
- 会議では、一日目に「世界経済とヘルスケア」、二日目に「気候変動と環境」、「持続可能な開発」を議題として議論が行われた。
- プーチン大統領は、新型コロナウイルスの感染拡大の状況下におけるG20諸国の財政政策について、時限的な措置とすべきだと強調。ロシアは経済対策により、2020年にGDPの4%まで財政赤字が拡大したが、2021年には金融引き締め政策等により、既に正常化している一方、G20諸国全体では、財政赤字が平均してGDPの8.7%であり、依然として正常時よりも高い水準に留まっており、特に米国が同赤字幅の40%を占めていると言及した。過度の財政出動が、エネルギー等特定市場の商品価格高騰や中長期的なインフレリスクを増大させ、結果的に世界の不平等を拡大させると指摘した。
- また、気候変動問題については、ロシアのエネルギーミックスに占める脱炭素エネルギー(原子力、水力、風力、太陽光)のシェアが、既に40%を超えており、低炭素エネルギーである天然ガスを含めると86%に上ることを改めて紹介した。また、太陽光エネルギーのカーボンフットプリントが原子力の4倍であることや、ロシアや中南米の森林保護対策が、再生可能エネルギー投資よりも効果的であることに言及し、最も優先すべき環境プロジェクトへの支援を集中することや、温室効果ガスの排出量削減だけではなく森林や海洋、農地等による同吸収量の増加への対策を行うことの重要性を指摘した。
サウジアラビア
ノヴァク副首相がサウジアラビアを訪問し、「中東グリーンイニシアティブ」で講演
- ノヴァク副首相は、10月25日、サウジアラビアを訪問し、同国ムハンマド皇太子兼副首相兼国防大臣と会談し、「中東グリーンイニシアティブ」で講演を行った。また、この他にも両国間のビジネス協力拡大に関する複数の会議を開催した。
- アブドルアジーズ・エネルギー大臣が同副首相と共に共同議長を務める貿易経済・科学技術協力に関する委員会において、同副首相は、両国の2020年の貿易額は、2019年比で0.7%増加し、17億米ドルに達し、更に2021年1月~9月において20%増加したと紹介した。また、原子力発電や化学プラント開発、農産物の供給におけるロシアの協力可能性に言及した他、化石燃料の生産・輸送時の炭素排出量削減や、再生可能エネルギーの積極的な利用、水素エネルギー開発など脱炭素分野の取り組みについて議論した。具体的には再生可能エネルギー由来の水素利用について、両国の共同事業立ち上げへの期待を表明した。
- また、ムハンマド皇太子との会談において、同副首相は、サウジアラビアとロシアの協力により、直近数年間の原油市場の需給バランスの安定化が実現したと強調し、サウジアラビアと中東のグリーンイニシアティブもまた、国際的な取り組みの重要な要素であり、一例となると言及した。
- 「中東グリーンイニシアティブ」での講演では、ロシアは、原子力発電所のシェアを増やしつつ、新分野を開発することで、2060年までのカーボンニュートラル達成を目指すことを紹介。2022年10月24日~27日にサンクトペテルブルクで開催予定の第25回World Energy Congressに向けた関係者間の議論を呼びかけた。
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2021年8月15日から2021年9月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD69.03619/バレルとなり、10月の原油輸出税はUSD8.6/バレルに引き下げられた。
- 10月の石油製品輸出税はUSD18.8/トン、ガソリンについてはUSD34.5/トンに設定された。
(2) 原油生産・輸出量
- 10月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,586万トン(約3億3,478万バレル、平均日量1,084万バレル)で、前年同月比8.7%増。
- 10月、原油輸出量は2,003万トン(約1億4,623万バレル、同472万バレル)で、前年同月比3.0%増
(3) 天然ガス生産
- 10月、天然ガス生産量は658億立方メートル(約2.3TCF)で、前年同月比で4.6%増。
注1 原油生産量及び輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。
注2 天然ガス生産量はエネルギー省の公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。
(4) 原油輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 8月、主な原油輸出先は、欧州1,041万トン(約7,597万バレル、全輸出量に占める割合53.1%)、中国590万トン(約4,304万バレル、同割合30.1%)、米国114万トン(約832万バレル、同割合5.8%)となった。
- 前年同月比で欧州が30.4%増、中国が16.2%増、米国が約10倍増、トルコが約1.7倍増となった一方、日本が65.8%減、ベラルーシが18.1%減となった。
(5) 天然ガス輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 8月、主なLNG輸出先は、欧州174万トン(全輸出量に占める割合85.9%)、中国14万トン(同割合6.8%)であり、前年同月比でアジア向け輸出シェアが減少し、欧州向けシェアが拡大した。また、前年同月の輸出先であった日本及び台湾向けの輸出は行われず、バングラデシュ向けの輸出が行われた。
- 8月、北極海航路を経由した主なLNG輸出先は、欧州170万トン(全輸出量に占める割合85.6%)、アジア29万トン(同割合14.4%)で、全量が欧州向けに輸出されていた前年同月と異なり、中国、韓国、バングラデシュ向けの輸出が行われた。
- 8月、主なパイプラインガス輸出先は、ドイツ4.3BCM(全輸出量に占める割合25.4%)、イタリア2.6BCM(同割合15.5%)、トルコ2.1BCM(同割合12.6%)となった。
- 前年同期比でフランスが46.0%減となった一方、ドイツが32.9%増、トルコが52.8%増、イタリアが19.3%増となった。また、前年同月の輸出先であった中国向けの輸出は行われなかった。
(6) 減産合意
2021年11月の減産措置縮小について日量40万バレル規模の維持に合意
- OPECプラスは、10月4日、第21回閣僚会合をテレビ会議形式で開催した。7月18日に開催された第19回会合における合意に基づき、8月以降実施されている減産措置縮小(毎月日量40万バレル)について、11月の減産措置にも適用することを決定した。
- 同会合では、メキシコを含むOPECプラス産油国による8月の減産遵守率が、119%と記録的な高水準であったことを確認した。8月には、生産が需要をわずかに上回り、過去5年間の平均生産量を1億3,000万バレル下回る水準まで回復した。
- 会合に参加したノヴァク副首相は、ロシアは、2022年5月までにパンデミック前の生産水準に達すると強調した。
- OPECプラスは、次回の第22回閣僚会合を11月4日に開催する。
(7) 法令・税制
ミシュスチン首相が「2030年までの社会経済発展イニシアティブリスト」を承認
- ミシュスチン首相は、10月7日、ロシア連邦政府令第2816-r号により2030年までの社会経済発展イニシアティブリストを承認した。
- 同リストは、ロシア国民の生活の質を改善し、ロシア経済をより近代的かつ柔軟なものとすることを目的としており、準備に際しては、企業や専門家、科学技術機関、政府・地方当局の代表者による5つのワーキンググループが設置され、検討が行われた。この結果、社会、建設、生態環境(エコロジー)、デジタルトランスフォーメーション、技術革新、国民のための政府の6分野の中に、合計42のイニシアティブが採択された。
- ミシュスチン首相は、イニシアティブごとに、2024年までと2030年までの2つの計画期間が設定され、作業の有効性を評価する予定と述べた。また、2024年までのイニシアティブ実施には、合計4.6兆ルーブルが必要となると言及し、ロシア連邦予算と国民福祉基金を資金源としつつ、民間投資の誘致も計画していると伝えた。
- エネルギー関係では、生態環境分野に「低炭素発展政策(経済発展省)」と「地質:伝説の復活(天然資源環境省)」、技術革新分野に「クリーンエネルギー(水素・再エネ)(エネルギー省)」と「LNG市場のブレイクスルー(産業商務省)」などが登録された。
イニシアティブ名 | イニシアティブ実施担当機関(組織) |
I. 社会分野 | |
1. 国の衛生保護‐安全衛生(EWARS) | 連邦消費者権利及び福祉監督庁 |
2. 全国民のプライマリ・ケア | 保健省 |
3. 健康回復に最適な医学的リハビリテーション | 保健省 |
4. 人間のための医学 | 保健省 |
5. 社会基金 | 労働社会保障省 |
6. プロフェッショナリズム | 教育省 |
7. ロシアにおける発明 | 文化省 |
8. プーシュキンマップ | 文化省 |
9. 「ビジネススプリント」(私達はスポーツを選ぶ) | スポーツ省 |
10. ロシア-学問・労働に魅力的な国 | 経済発展省 |
II. 建設 | |
11. 工業建築基準の再設計 | 経済発展省 |
12. 大きな可能性を秘めた都市及び小規模集落の再生 | 経済発展省 |
13. 国土空間データシステム | 連邦地籍・地図庁 |
14. 私の持ち家 | 建設・住宅公営事業省 |
15. モバイルシティ(注) | 運輸省 |
16. 建設における新たなリズム | 建設・住宅公営事業省 |
17. インフラのメニュー | 建設・住宅公営事業省 |
III. 生態環境 | |
18. 撤去・廃棄全般 | 天然資源環境省 |
19. サーキュラー・エコノミー | 天然資源環境省 |
20. 低炭素発展政策 | 経済発展省 |
21. 地質:伝説の復活 | 天然資源環境省 |
IV. デジタルトランスフォーメーション | |
22. インターネットへのアクセス(注) | デジタル発展・通信・マスコミ省 |
23. 国民のデジタルプロファイル | デジタル発展・通信・マスコミ省 |
24. オンライン公共サービス(Gosuslugi) | デジタル発展・通信・マスコミ省 |
25. 電子文書管理 | デジタル発展・通信・マスコミ省 |
26. IT人材の育成 | デジタル発展・通信・マスコミ省 |
V. 技術革新 | |
27. クリーンエネルギー(水素・再生可能エネルギー) | エネルギー省 |
28. 遠隔地向けの小型原子炉を含む新たな原子力エネルギー(注) | 国営原子力企業ロスアトム |
29. 新素材の生産開発(注) | 産業商務省 |
30. LNG市場のブレイクスルー | 産業商務省 |
31. 農学-農産業団地の将来的な発展へのステップ | 農業省 |
32. 北極海航路の通年利用(注) | 国営原子力企業ロスアトム |
33. 無人ロジスティクス回廊(注) | 運輸省 |
34. 自律航法 | 運輸省 |
35. 無人空中配送(注) | 運輸省 |
36. パーソナル医療助手 | 保健省 |
37. 電気自動車及び水素燃料自動車(注) | 経済発展省 |
38. 離陸-スタートアップからIPOまで | 経済発展省 |
39. 輸出業者のデジタルエコシステム「ODNO OKNO」 | ロシア輸出センター社 |
40. 大学発テクノロジー起業家プラットフォーム | 科学・高等教育省 |
41. 先端技術学校 | 科学・高等教育省 |
VI. 国民のための政府 | |
42. 顧客中心主義 | 経済発展省 |
(注) プロジェクトの実施が想定されており、国民福祉基金からの資金調達が可能な案件。
出典:ロシア連邦政府令第2816-r号よりJOGMEC作成
(参考)主なエネルギー関連のイニシアティブの概要
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2024年までの成果 | 2030年までの成果 |
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2024年までの成果 | 2030年までの成果 |
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2024年までの成果 | 2030年までの成果 |
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出典:政府プレゼン資料(http://government.ru/news/43480/)よりJOGMEC作成
(8) 北極海航路
ヤマル半島の資源ポテンシャルの開発に関する会議の開催
- プーチン大統領は、10月27日、ヤマル半島の資源ポテンシャルの開発に関する政府関係者とのオンライン会議を開催した。冒頭、プーチン大統領は、現在世界のエネルギー市場は非常に不安定な状態であり、特に天然ガス市場は、スポット価格が1,000ドル超/千m3と高水準が続いていると指摘した。また、米国から欧州市場へのLNG供給量減少が価格高騰の主な要因であると改めて強調し、ガスプロムがその不足分を補完したと説明した。
- 上記天然ガス供給不足を巡る問題について、ガスプロム・ミレル社長は、11月1日までにロシアの地下貯蔵施設へ726億m3の天然ガス圧入目標を達成し、同8日に圧入を完了すると述べた一方、オーストリアやドイツ等の欧州内の天然ガス地下貯蔵施設へのガス圧入量が19万m3弱に留まっていると指摘し、冬季の需要増に備えて、更に圧入を継続することを提案した。これを受けて、プーチン大統領は、ミレル社長に対し、11月8日までに、欧州の地下貯蔵量を増やすための計画策定を行うことを指示した。
- ヤマル半島の資源ポテンシャルについて、プーチン大統領は、ガスプロム保有鉱区の埋蔵量のみで20兆m3以上であり、ヤマロ・ネネツ自治管区全体では、50兆m3以上であると紹介した。具体的プロジェクトとして、ガスプロムのボヴァネンコヴァ・ガス田の開発及び同ガスを輸送するボヴァネンコヴォ~ウフタ・2パイプラインの試運転、NovatekのヤマルLNGプロジェクト及びArctic LNG-2プロジェクトを例に挙げ、同地域の開発の重要性を強調した。
(9) 脱炭素・環境対応
9月に政府が承認した「天然ガス由来の水素エネルギー開発及び産業・運輸分野の脱炭素化」の高度技術の発展を目的とする合意文書に政府とガスプロムが署名
- ノヴァク副首相とガスプロム・アクシューチン副社長は、10月13日、Russian Energy Week 2021において、ロシア連邦政府指令第2471-r号により、9月にミシュスチン首相が承認した「天然ガス由来の水素エネルギー開発及び産業・運輸分野の脱炭素化」における高度技術の発展を目的とする合意文書に署名した。
- 同文書に基づき、今後ガスプロムは、技術開発の目標指標と同目標達成のための行動計画を盛り込んだロードマップを策定の上、政府に提出する。
政府によるロシアにおける水素エネルギー開発に関する戦略的セッションの開催
- 政府は、10月15日、政府庁舎において、ロシアにおける水素エネルギー開発に関する戦略的セッションを開催した。
- 同セッションにおいて、ミシュスチン首相は、欧州のエネルギー市場の現状を教訓にして、エネルギーセキュリティと環境対策のバランスを取ることの重要性を強調した。約60か国以上がカーボンニュートラルへの移行を宣言しており、今後エネルギーミックスの変化が大きな課題となると指摘する一方、同変化がロシアにとってのチャンスでもあると述べた。
- 同首相は、特に水素エネルギーについて、ロシアは炭化水素資源の埋蔵量の大きさに加え、原子力や再生可能エネルギーポテンシャルも高く、これら利点の活用が可能と伝えた。このため、10月7日に政府が承認した「2030年までの社会経済発展イニシアティブリスト」の中の42のイニシアティブのうち、90億ルーブル以上を水素エネルギーに割り当て、2024年までに、水素の製造、輸送、貯蔵に関する競争力のある国内技術の開発や、北極圏を含む水素エネルギー技術の実証サイトの設置に充当すると強調した。
- ノヴァク副首相は、水素の生産量は、化学産業や肥料産業向けに、年間約3~4%の割合で増加しており、アンモニアを含めると、世界で1億1,600万トンが生産・消費されているが、エネルギー利用はなく、将来的な市場規模の見解が分かれると指摘。ロシアにおいては、ガスプロム、ロスアトム、Novatek、ロスナノを中心に、20件以上の水素技術プロジェクトの検討が進められていると紹介した。
産業商務省が「低炭素・脱炭素水素・アンモニア生産プロジェクトマップ」を公表
- 産業商務省は、10月15日、ロシアにおける低炭素・脱炭素水素・アンモニア生産プロジェクトマップを公表した。同マップでは、ロシアの18地域における33件のプロジェクトが紹介されている。マントゥロフ大臣は、同マップは、国内の関連する製造業者や、海外の投資家の参考として作成されたと伝えた。
- 同省は、水素は、現在の化学工業や石油精製向けだけではなく、将来的には、汎用性の高いエネルギーキャリアとして、「水素経済」を形成する可能性があるとし、ロシアの水素プロジェクトがエネルギー、産業、経済全体の脱炭素化に貢献すると強調した。
産業商務省プレゼン資料については次のURLを参照されたい。https://minpromtorg.gov.ru/docs/#!atlas_rossiyskih_proektov_po_proizvodstvu_nizkouglerodnogo_i_bezuglerodnogo_vodoroda_i_ammiaka(外部リンク)
会計報告において温室効果ガス排出の対象となるリストが承認
- ミシュスチン首相は、10月22日、ロシア連邦政府令第2979-r号により会計報告において温室効果ガス排出の対象となるリストを承認した。
- ロシアにおいては、2021年7月に成立した「温室効果ガス排出の制限に関する連邦法」に基づき、2021年から温室効果ガス排出を会計報告において取り扱う制度が運用開始予定。同リストは、これに先立ち、会計報告において温室効果ガス排出の対象となるリストを定義するもの。
- 同リストでは、京都議定書に基づき、二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、六フッ化硫黄、ハイドロフルオロカーボン類、パーフルオロカーボン類、三フッ化窒素が温室効果ガス排出の対象とされている。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) ガスプロム
イルクーツク石油との間でコヴィクタ・ガス田でのリチウム生産プロジェクトに関する覚書に署名
- ガスプロムは、10月7日、サンクトペテルブルク国際ガスフォーラム2021において、イルクーツク石油(INK)との間で、コヴィクタ・ガス田でのリチウム生産プロジェクトの実施に関する覚書に署名した。INKドンスコイ取締役とガスプロム・マルケロフ副社長の間での署名式が行われた。
- コヴィクタ・ガス田の地下水には、天然リチウム化合物が大量に含まれている。今後リチウムは電子機器や電気自動車向けのバッテリー製造など様々な用途での活用が見込まれ、ガスプロムは、リチウム含有水処理に関する独自技術を有するINKとの間で協力を行っていく予定。
ウスチ・ルガにおけるガス処理コンプレクスの建設に関する複数の合意文書が締結
- ガスプロムは、10月7日、サンクトペテルブルク国際ガスフォーラム2021において、ウスチ・ルガにおけるガス処理コンプレクスの建設に関する複数の合意文書が締結されたと発表した。
- 同社とRusGazDobycha社の合弁会社であるRusChemAlliance社、独Linde社の間で、天然ガス液化技術の利用権の付与に関する契約が締結された。同技術については、ガスプロムとLinde社が特許を保有しており、今回RusChemAlliance社へ付与される。また、同3者は、LNGプラントの第3系列の建設可能性の評価に関する覚書を締結した。
- また、RusChemAlliance社とVelesstroy社は、ウスチ・ルガ地域での5,000人の雇用者向けの臨時キャンプ建設に関する合意文書を締結した。
(2) ロスネフチ
Vostok Oilの株式の5%のVitol社とMercantile & Maritime Energy社への売却取引が成立
- ロスネフチは、10月14日、エネルギー貿易等を行う企業であるVitol社とMercantile & Maritime Energy社によるコンソーシアムにVostok Oil社の株式の5%を売却する取引が成立したと発表した。同取引はロスネフチの取締役会で承認された。
- ロスネフチによると、Vostok Oilプロジェクトは、世界の主要な新規石油プロジェクトより1バレル当たりの生産コストが低く、二酸化炭素排出量が75%少ない。また、硫黄含有量は0.01〜0.04%と非常に低く、その資源量は60億トンを超える。また、同プロジェクトの電源には、風力発電を利用する予定。
- 2020年末、RosneftはVostok Oil社の株式の10%を貿易会社のTrafiguraに売却しており、同プロジェクトの売却は2回目、合わせて15%となる。
Trafiguraとの原油サプライチェーン全体のCO2排出量削減に関する協力協定に署名
- ロスネフチは、10月28日、イタリア・ヴェローナで開催された第14回ユーラシア経済フォーラムにあわせて、Trafiguraとの間で原油サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の削減に関する協力協定に署名した。
- 同協定に基づき、両者は、ロスネフチの生産拠点からロシアの3つの輸出港であるノヴォロシースク、プリモルスク、ウスチ・ルガまでの炭素排出量の計算を行う。なお、ロスネフチの原油輸出量の約20%がこれら3港から出荷されている。
- 同社の事前調査によれば、欧州市場向けのロスネフチの原油供給におけるCarbon Intensity(CO2排出原単位)は、1バレル当たり約20kgである。
DeGolyer & MacNaughtonとのCO2地下貯留層評価に関する協定に署名
- ロスネフチは、10月28日、イタリア・ヴェローナで開催された第14回ユーラシア経済フォーラムにあわせて、DeGolyer & MacNaughtonとの間で同社のライセンス鉱区におけるCO2地下貯留層の評価に関する協定に署名した。
- ロスネフチによれば、同社はCCS分野でのプロジェクト実施可能性について、既に複数の独自調査を実施しており、事前調査では、同社による現時点での二酸化炭素貯蔵量は2,400億~1兆トンであり、平均して5,000億トンと推定される。同貯蔵量は、ロシアが過去100年以上にわたって排出したCO2排出量に相当する。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) Turk Streamパイプライン経由でのハンガリー、クロアチア向け天然ガス供給が開始
- ガスプロムは、10月1日、Turk Streamパイプライン経由でのハンガリーとクロアチア向けの天然ガス供給を開始したと発表した。
- ガスプロムの天然ガスは、Turk Streamパイプラインと接続する、ハンガリーFGSZ Ltd.による同国内の新規幹線パイプラインの新設、ブルガリアBulgartransgazによる同国内の幹線パイプラインの拡張、セルビアGASTRANSによる同国内の幹線パイプラインの拡張により実現した。
(2) Soyuz Vostokパイプライン(シベリアの力2のモンゴル通過部分)に関する合同作業部会の開催
- ガスプロムは、10月22日、モンゴル政府との間で、同国ウランバートルにおいて、シベリアの力2パイプラインのモンゴル通過部分であるSoyuz Vostokパイプラインに関する合同作業部会を開催したと発表した。同部会の議長は、ガスプロム・マルケロフ副社長とモンゴルのアマルサイハン副首相が務めた。
- 両者は、同パイプラインプロジェクトのフィージビリティスタディの進捗状況について、同パイプライン事業会社への外国人労働者の割り当てや、設計・建設におけるロシアやガスプロムの規制枠組みの流用可能性等について協議した。また、モンゴル政府が、ガスパイプライン設備を設置する土地区画の確保に関する基本的な決定がなされたことを明かした。
(3) シベリアの力、コヴィクタ・ガス田までの第二ライン(延長部)の54%が建設完了
- ガスプロムは、10月28日、シベリアの力のチャヤンダ・ガス田からコヴィクタ・ガス田までの第二ライン(延長部)(総延長803.4km)のうち、約54%に相当する432kmの建設が完了したと発表した。同社によれば、作業はスケジュールに沿って進められている。
(4) ロシアからモルドバ向けの天然ガス供給契約が5年間延長
- ガスプロム・ミレル社長は、10月29日、モルドバ共和国スピヌ副首相兼インフラ・地域発展大臣、モルドバガス・チェバン会長との間で会議を行い、天然ガス分野での現在の問題解決に向けた合意書に署名した。また、ガスプロムとモルドバガスとの間で、ロシアからのモルドバ向けの天然ガス供給契約を11月1日から5年間延長することに合意した。
- モルドバは当初、ロシアとの間で2008年に締結した天然ガス長期供給契約と同じ価格等の条件で、契約更新することを望んでいた。スピヌ副首相によれば、今回の合意に基づく11月の供給価格は10月の750ドル/千m3より安い450ドル/千m3で、現在の市場価格の半額であり、12月には市場価格連動により、さらに安い400ドル/千m3になる可能性がある。同副首相は、本件の交渉において政治的な要因はなかったと強調した。
以上
(この報告は2021年11月16日時点のものです)