ページ番号1009199 更新日 令和3年12月3日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が従来方針に基づき2022年1月についても前月比で日量40万バレル減産措置を縮小する旨決定、しかし状況次第でさらなる調整も(速報)

レポート属性
レポートID 1009199
作成日 2021-12-03 00:00:00 +0900
更新日 2021-12-03 10:59:22 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 12
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2021/12/03 野神 隆之
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概要

  1. 2021年12月2日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、8月以降毎月前月比で日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置につき、従来方針に基づき2022年1月も日量40万バレル規模を縮小して実施する旨決定した。
  2. ただ、今次閣僚級会合実施時点では、最近感染が確認された新型コロナウイルスのオミクロン株の世界石油需要への影響が把握しきれなかったこともあり、今後の事態の急激な変化に備え減産措置の再調整を迅速に実施できるようにすべく、当該会合は正式には終了していない格好となっている。
  3. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2022年1月4日に開催される予定である。
  4. 新型コロナウイルスワクチン接種普及拡大等に伴う個人の外出規制及び経済活動制限の緩和等による原油価格上昇に対し、米国バイデン政権が減産措置縮小(つまり増産)加速による原油価格高騰沈静化をOPECプラス産油国に働きかけたにもかかわらず11月4日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合では減産措置縮小加速が見送られたこと等により、11月9日には原油価格(WTI)が1バレル当たり84.15ドルと、10月26日の84.65ドル(約7年ぶりの高水準)以来の高水準の終値に到達する場面が見られた。
  5. 他方、OPECプラス産油国は、新型コロナウイルス感染の世界的流行第四波が到来する恐れがあること、及び2022年はそもそも世界石油需給バランスが供給過剰に振れる結果、世界石油需給緩和感が市場で強まるとともに原油価格が下落する恐れがあることを理由として、米国の増産要求を事実上拒否し続けた。
  6. そして、原油価格上昇に伴い11月には全米平均ガソリン小売価格が1ガロン当たり3.5ドル超の水準に到達、米国国民のバイデン政権に対する不満が増大しつつある旨示唆されたこともあり、11月23日には米国政府が5,000万バレルの戦略石油備蓄(SPR)の市場への供給を発表した。
  7. このような状況下で、2022年1月につき前月比で日量40万バレルの減産措置縮小実施を見送る決定を行った場合、原油価格高騰の沈静化に向けOPECプラス産油国に働きかけ続けてきた米国との関係が一層悪化する恐れがあったことにより、サウジアラビアをはじめとするOPECプラス産油国は2022年1月につき前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を決定することにより、石油需給緩和感を市場で醸成することを通じ原油価格の上昇抑制を図るとともに、米国へ配慮したものと考えられる。
  8. 今回の閣僚級会合での減産措置縮小継続決定により、石油需給緩和感が市場で発生したこともあり、当該会合開催当日の原油価格は一時前日終値比で1バレル当たり3.14ドル下落する場面が見られたものの、OPECプラス産油国が今次閣僚級会合を終了せず、石油市場の状況変化に応じ迅速に自らの原油生産量を調整する姿勢を示唆したことにより、原油価格は回復、12月2日の原油価格は前日末終値比で1バレル当たり0.93ドル上昇の同66.50ドルの終値となっている。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2021年12月2日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国はビデオ会議形式で閣僚級会合を開催、7月18日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合で決定した、8月以降毎月前月比で日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置(12月時点で日量376万バレル)に関し、従来方針に基づき2022年1月も日量40万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1及び参考1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (2) 但しOPECプラス産油国としては、今次会合に関する声明を12月2日に発表したものの、当該会合自体は終了したことになっておらず、新型コロナウイルス感染への対応については保留となっており、市場の状況を緊密に監視するとともに、必要であれば直ちに減産措置を調整する方針である旨合意した。

 (3) また、減産目標の完全遵守に固執すること、及びこれまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国が減産目標未達成部分につきこの先追加減産を実施することに固執することが、極めて重要である旨改めて示唆された。

 (4) さらに、これまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国は2022年6月末(従来は2021年12月末であった)までに追加減産を実施することにより減産目標の完全遵守を達成するとともに、追加減産計画を2021年12月17日までに提出するよう要請された。

 (5) なお、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は2022年1月4日に開催する旨決定した。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2021年11月4日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合では、7月18日に開催された当該閣僚級会合で決定した方針に則り、12月のOPECプラス産油国減産措置を前月比で日量40万バレル縮小する旨決定した。

 (2) この時のOPECプラス産油国閣僚級会合開催に際しては、新型コロナウイルスワクチン接種普及による世界経済や石油需要の回復、そして冬場の暖房シーズンに伴う暖房用燃料需要期突入で、価格が高騰する天然ガスからの燃料転換により石油需要が増加するとの観測が市場で発生したこと等により、上昇していた原油価格の沈静化を図るよう、米国バイデン政権からOPECプラス産油国に対し減産措置縮小(つまり増産)加速への働きかけが行われていた。

 (3) 例えば、米国バイデン政権幹部がOPECプラス産油国に対し原油価格上昇による懸念を伝えたと10月11日に報じられたことに加え、10月18日には、米国バイデン政権のサキ大統領報道官が、供給問題解決のため、OPEC産油国への働きかけを継続している旨明らかにした他、10月22日にも、OPEC産油国に対し価格水準に関しての懸念を幅広く伝えているところであり、これは継続して実施していく旨サキ報道官が改めて明らかにしている(10月26日の記者会見の際にもサキ報道官は同趣の発言をしている)。

 (4) また、10月21日夜(米国東部時間)には、米国のバイデン大統領が、同国ガソリン小売価格の高騰(全米平均ガソリン小売価格は2021年5月以降しばらくの間は概ね1ガロン当たり3.2ドル台で推移していたが、10月に入ってからは価格が上昇、11月1日には1ガロン当たり3.484ドルに到達していた)はOPEC及び他の産油国による供給制限によるものであると発言、10月31日にもバイデン大統領は、ロシア、サウジアラビア及び他の大産油国が増産しないという考え方は良くないと考える旨明らかにした他、11月2日にも、原油及び天然ガス価格の大幅上昇はOPEC産油国が原油生産拡大を拒否していることによるものであるとして、OPECプラス産油国の減産措置を巡る方針を批判した。

 (5) このような、米国バイデン政権によるOPECプラス産油国に対する減産措置縮小加速の働きかけにもかかわらず、11月4日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合では、従来方針通り前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を決定したことにより、石油需給引き締まり感を市場が意識したこともあり(2021年はOPECプラス産油国が8月以降毎月前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を実施しても、世界石油需要が供給を上回る状態であった、表2参照)、11月9日には原油価格(WTI)は1バレル当たり84.15ドルと、10月26日の同84.65ドル(2014年10月13日(この時は同85.74ドル)以来約7年ぶりの高水準)以来の高水準の終値に到達する場面が見られた(図1参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2021年)(12月2日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

図1 原油価格の推移(2021年)

 (6) 11月4日に米国バイデン政権は、世界経済回復を損なわないようにするための重大局面においてOPECプラス産油国は保有する能力を使用する意志がないように見受けられ、バイデン政権はエネルギー市場危機脱出のために様々な方策を利用することを検討するとして、OPECプラス産油国閣僚級会合の結果を事実上批判する旨伝えられた。

 (7) しかしながら、OPECプラス産油国は、従来方針通り毎月前月比で日量40万バレル減産措置を縮小する場合であっても、2022年は世界石油需給バランスが供給過剰に振れる(表3参照)結果、世界石油需給緩和感が市場で強まる(11月16日にOPECのバルキンド事務局長は、早ければ2021年12月にも世界石油需給バランスは供給過剰の状態となるとともに、その状態が2022年も継続するとの見解を明らかにしている)とともに、原油価格が下落する恐れがあることを理由として(また、OPECプラス産油国は従来から新型コロナウイルス感染の世界的流行第四波が到来する恐れがあることも懸念していた)、米国の増産要求を事実上拒否し続けた。

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(12月2日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

 (8) そして、原油価格の上昇に伴い、11月の全米平均ガソリン小売価格は1ガロン当たり3.5ドル超に到達(図2参照)したことに加え、11月10日に米国労働省から発表された10月の同国消費者物価指数(CPI)が前年同月比で6.2%の上昇と、9月の同5.4%の上昇から上昇率が拡大、1990年11月(この時は同6.3%の上昇)以来の大幅な上昇率となった他、市場の事前予想(同5.8%~5.9の上昇)を上回るなど同国の物価上昇問題が深刻化するとともに、米国国民のバイデン政権に対する不満が増大しつつあることが示唆された(11月14日にはバイデン大統領の支持率が1月20日の大統領就任以来最低の41%にまで落ち込んだ旨明らかになった)こともあり、11月23日には米国政府が5,000万バレルの戦略石油備蓄(SPR)を市場に供給する旨発表した他、日本、韓国、中国、インド、及び英国が備蓄石油を供給する方針である、ないしは供給することを検討している旨伝えられた。

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~21年)

 (9) 主要石油消費国の一部が備蓄している石油を市場に供給する方向であることに対し、従来から2022年は世界石油供給が過剰になる旨不安視していたOPECプラス産油国は、供給過剰幅がさらに拡大するとの認識を持つようになったと見られる。

(10) 例えば、2021年11月23~24日に開催されたOPEC経済委員会会合(ECB: Economic Commission Board)では、2022年1月から2月にかけ合計で6,600万バレルの(追加の)石油供給が市場に対してなされた(備蓄石油の市場への供給を想定しているものとされる)場合、供給が日量約110万バレル程度上振れすることにより、2022年1月は日量230万バレル、2月は同370万バレル、それぞれ世界石油需給バランスが供給過剰となるとの見込みが明らかにされた。

(11) さらに、人体の免疫機能を突破することにより、ワクチンの有効性を低減させるとともに、感染を拡大させる可能性のある新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)が南アフリカで確認された他、香港、ベルギー等でも外国からの渡航者が当該変異株に感染している旨明らかになった旨11月25~26日に報じられるなどしたことにより、新型コロナウイルスの新たな変異株による感染流行に伴い、世界各国及び地域で、渡航制限を含め個人の外出規制及び経済活動制限が再び強化されるとともに世界経済成長及び石油需要の伸びが鈍化する恐れがあることに対する懸念が市場で増大したことにより、11月26日の原油価格は11月24日終値比(11月25日は米国では感謝祭(サンクスギビング・デー)に伴う休日で終値は計上されなかった)で1バレル当たり10.24ドル下落(2020年4月20日(この時は前日終値比55.90ドルの下落)以来の大幅な下落)し、終値は68.15ドルと、9月9日(この日の終値は同68.14ドル)以来の低水準の終値に到達するなどした。

(12) このように、米国等が備蓄石油の市場への供給を実施する方向であるうえ、従来からOPECプラス産油国が抱いていた新型コロナウイルス感染第四波の到来に加え、オミクロン株の世界的流行に伴い、この先世界石油需給バランスが一層石油供給過剰に向かうことにより、原油相場に下方圧力が加わり続ける可能性が高まることを懸念したOPECプラス産油国は、市場での石油供給過剰感を払拭するとともに原油価格のさらなる下落の防止を図るべく、当初予定された前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を2022年1月については見送ることを検討し始めたと見られる。

(13) OPECプラス産油国による減産措置縮小見送りについては、サウジアラビアとロシアが検討している旨11月24日にウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。

(14) 一方、OPECプラス産油国は減産措置縮小の中断を検討していない旨11月24日にロイター通信が伝えるなど、この時点では情報は錯綜気味であったものの、少なくとも一部OPECプラス産油国間では減産措置縮小見送りが協議されていたことが示唆される。

(15) しかしながら、ここで2022年1月につき前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を見送る決定をした場合、OPECプラス産油国に対し原油価格高騰沈静化のための増産の働きかけをしてきた米国との関係が一層悪化する恐れがあったことにより、サウジアラビアをはじめとするOPECプラス産油国は、米国に配慮すべく、従来方針に則り2022年1月についても前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を決定する方向へと動いたものと考えられる。

(16) なお、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は新型コロナウイルスのオミクロン株については不安視していない旨11月29日に発言した他、ロシアのノバク副首相も当該変異株に直ちに対処しなければならないとは考えておらず、対処が必要ならば、改めてOPECプラス産油国間で検討することになる旨、11月29日に示唆していたが、オミクロン株を巡る情報を収集及び分析するために、当初11月29日及び11月30日に、それぞれ開催する予定であった、OPECプラス合同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)及び共同閣僚監視委員会(JMMC: Joint Ministerial Monitoring Committee)を、12月1日及び12月2日の、それぞれ開催へと延期した旨11月29日に明らかになった。

(17) しかしながら、12月2日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合時点では、なおオミクロン株の特性(感染力の強さ及び重症化のしやすさ、そしてワクチンの効きにくさ等)につき明らかになっていない部分が相当程度あった(11月28日には世界保健機関(WHO)がオミクロン株の深刻さを把握するには数日から数週間を要する旨声明で明らかにしていた)ことにより、この先判明する可能性のあるオミクロン株の特性次第では、世界各国及び地域が個人の外出規制及び経済活動制限を強化しなければならず、従って世界経済及び石油需要、そして石油市場への影響が免れない、といった展開となる可能性があることから、そのような事態に備えOPECプラス産油国として減産措置の再調整を迅速に実施できるようにすべく、今次閣僚級会合は正式には終了していない格好となっている。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 新型コロナウイルスのオミクロン株の感染拡大の兆候が見られる前の時点においても、OPECプラス産油国が毎月前月比で日量40万バレルの減産措置の縮小を2022年にかけ継続するようであれば、2022年初頭以降世界石油需給バランスは供給過剰に振れる可能性があるとの認識を石油市場関係者が持っていた状況下において、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合で従来方針通り2022年1月につき前月比で日量40万バレル減産措置を縮小する旨合意されたことを受け、石油需給緩和感が市場で広がった結果、原油価格は12月2日朝(米国東部時間)に一時1バレル当たり62.43ドルと前日終値比で3.14ドル下落する場面が見られた。

 (2) しかしながら、その後今次閣僚級会合は正式には終了したことにしない旨声明で明らかになったことにより、OPECプラス産油国が新型コロナウイルスのオミクロン株を含め流動的な世界石油市場に対し迅速に減産措置の再調整を行う意志を示唆したこともあり、原油価格は回復、この日の終値は1バレル当たり66.50ドルと前日終値比で同0.93ドルの上昇となった。

 (3) 今回のOPECプラス産油国閣僚級会合で前月比日量40万バレルの減産措置縮小を決定したことに対し、米国は歓迎する一方、SPRの市場への供給に関する方針を変更する予定はない旨同国バイデン政権のサキ大統領報道官が明らかにしたと12月2日に伝えられる。

 (4) 既に北半球では冬場の暖房シーズンに伴う暖房用燃料需要期に突入しているが、気温の低下(11月11日には米国海洋大気庁(NOAA)気象予報センターが、2021~22年の冬場は90%程度、2022年3~5月は50%程度の、それぞれ確率で、ラニーニャ現象が居座る可能性がある旨発表するなど、2020~21年に続き2021~22年も北半球では厳冬となる可能性が示唆される)に伴い空調のための電力供給向けに発電部門、もしくは暖房向けに民生部門において、天然ガス及び石炭需要が増加することに伴い、それら燃料価格(既に12月2日現在の北東アジア天然ガス先物価格は100万Btu当たり35.32ドル程度と同日の原油価格の3倍超の水準となっている)が上昇する結果、灯油、軽油、重油及び液化石油ガス(LPG)への燃料転換が発生するとの観測が市場で強まるとともに、この先当面原油価格が上昇する場面が見られる可能性がある。

 (5) もっとも、通常第一四半期後半及び第二四半期前半を中心とする時期は、特に製油所の段階においては、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期が峠を越え始めるとともに、春場の石油不需要期(暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期が終了する一方、夏場のドライブシーズンに伴う自動車用石油製品需要期到来にはまだ早い)が視野に入り始めることもあり、季節的に石油需給緩和感が市場で強まることにより、この面で原油相場に下方圧力が加わりやすい状況となる。

 (6) 他方、既に2021年10月半ば頃を底として、世界の1日当たり新型コロナウイルス感染者数は増加傾向に転じているうえ、南アフリカ他で人体の免疫機能を突破しワクチンの効力を低減させるとともに感染力が強い可能性があるとされるオミクロン株が確認されたことを含め、世界的に新型コロナウイルス感染が拡大する兆候が見られる中、世界経済と石油需要の回復が鈍化するとの観測が市場で増大しやすい状況となっているものと見られる。

 (7) このような中、米国バイオ医薬製造会社モデルナのバンセル最高経営責任者(CEO)は、既存の新型コロナウイルスワクチンはオミクロン株に対し相当程度効力が低下すると考えている旨発言したと11月30日に伝えられる一方、米国製薬大手ファイザーと新型コロナウイルスワクチンを共同開発したドイツバイオ医薬製造会社ビオンテックのサヒン最高経営責任者(CEO)は、オミクロン株についてもワクチンは重症化を予防する効果を発揮する可能性が高い旨示唆したと11月30日に報じられるものの、オミクロン株の人体の免疫機能の突破力、及び感染力の強さや重症化比率等については、実際のところ依然相当程度不透明な状況にある。

 (8) 他方、11月30日に開催された米国連邦議会上院銀行住宅都市委員会の公聴会において、同国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、米国物価上昇は一時的ではなく持続的なものになりつつあるとの認識を示唆するとともに、現在2022年6月に予定される米国国債等の資産購入終了を前倒しすることを、12月14~15日に開催する予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)において協議する意向である旨示唆した。

 (9) また、パウエルFRB議長は、12月1日に開催された米国連邦議会下院金融サービス委員会での公聴会においても、高水準の物価上昇が持続する可能性が明確に高まっている状況に対応すべく、金融当局の米国経済回復への対応策を修正する意向である旨明らかにしている。

(10) これまで米国金融当局による金融緩和政策の推進により、低コストで調達された資金が株式や原油を含む商品と言ったいわゆるリスク資産へと流入した結果、これら資産価格が押し上げられていた側面があるとされているものの、既に米国では11月半ば以降金融緩和縮小を実施するとともに、10月の同国CPI上昇加速を受け、米国金融当局が金融緩和縮小をより急ぐ他、2022年半ば頃には金利が引き上げられる可能性が高まるとの観測が市場で発生していることもあり、これまで流入していた低コスト資金がリスク資産から退出し始めるといった展開となることも否定しきれない。

(11) 以上のような要因を含め、この先春場にかけ、原油相場に下方圧力が加わり続けさせうるような要因が存在していることから、OPECプラス産油国はそのような原油価格の下落を未然に防ぐ、もしくは下落幅を最小限に食い止める(そうでないと、原油価格下落が加速する結果、OPECプラス産油国関係者の発言及び行動を以てしても、原油価格下落抑制が困難となる恐れがある)べく、先制的に石油需給引き締めに向けた方策もしくは方針を検討、表明、もしくは実施していくものと考えられる。

(12) この点においては、OPECプラス産油国は、まず、減産措置の再調整実施の意向を示唆する発言等の口先介入を行うことにより、原油価格下落を抑制しようと試みるものと見られる。

(13) そしてそれでも原油価格の下落が抑制されないようであれば、OPECプラス産油国間で実際に減産措置の再調整に関する議論を実施、そして状況によっては再調整した減産措置を実施に移す、といった展開となるものと見られることから、この面では多少時間を要する可能性はあるものの、OPECプラスが原油価格下落抑制に向け行動するとの市場の観測から、原油相場の下落は抑制されやすくなるものと考えられる。

(14) 他方、今後オミクロン株の石油需要への影響がそれほど深刻ではないことを示唆する情報が出てきた場合には、石油需要の回復と石油需給引き締まりに対する観測が市場で増大する結果、原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。

(15) そして原油価格が上昇を継続するようであれば、再び米国からサウジアラビアをはじめとするOPECプラス産油国に対する、原油価格沈静化のための減産措置縮小加速に対する働きかけが行われる結果、OPECプラス産油国の減産措置にそれが織り込まれる可能性もある。

(16) そして、今後の季節的な石油需給状況、オミクロン株を含む新型コロナウイルス感染状況、米国金融政策の動向、そしてそれら要因を反映した原油価格の変動状況等を考慮しつつ、2022年1月4日に開催される次回OPECプラス産油国閣僚級会合では2月以降の減産措置の取り扱いにつき検討が行われるものと考えられるが、それ以前に事態が急変する、もしくは急変する兆候が見られるようであれば、OPECプラス産油国は次回閣僚級会合開催を待たずして、減産措置縮小再調整等に向け行動することもありうる。

 

(参考1:2021年12月2日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

23rd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 36/2021
Vienna, Austria
02 Dec 2021

 

The 23rd OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting (ONOMM), was held via videoconference, on Thursday December 2, 2021. The Meeting remains in session.

The meeting reaffirmed the continued commitment of the Participating Countries in the Declaration of Cooperation (DoC) to ensure a stable and balanced oil market. In view of current oil market fundamentals, the Meeting resolved to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th ONOMM on April 12, 2020 and further endorsed in subsequent meetings including the 19th ONOMM on July 18, 2021.
  2. Reconfirm the production adjustment plan and the monthly production adjustment mechanism approved at the 19th ONOMM and the decision to adjust upward the monthly overall production by 0.4 mb/d for the month of January 2022, as per the attached schedule.
  3. Agree that the meeting shall remain in session pending further developments of the pandemic and continue to monitor the market closely and make immediate adjustments if required.
  4. Extend the compensation period until the end of June 2022 as requested by some underperforming countries and request that underperforming countries submit their plans by December 17, 2021. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th ONOMM.
  5. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism.
  6. Hold the 24th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on January 4, 2022.

 

以上

(この報告は2021年12月3日時点のものです)

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