ページ番号1009227 更新日 令和4年1月7日

ブラジル:探鉱・開発促進を目指し鉱区入札方式変更へ ―プレソルト生産中鉱区を対象とした入札は予想を上回る好結果―

レポート属性
レポートID 1009227
作成日 2022-01-07 00:00:00 +0900
更新日 2022-01-07 09:39:44 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 中南米
国1 ブラジル
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ブラジル
2022/01/07 舩木 弥和子
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概要

  • 政府は、これまでプレソルトエリア以外の成熟油田や過去の入札で落札されなかった鉱区、返還された鉱区を対象に実施されていたOpen Acreage方式の入札の対象鉱区にプレソルトエリアを含めることを決定した。また、現在、複数の種類がある鉱区入札制度をOpen Acreage方式に一本化する計画であることを明らかにした。その結果、2022年4月13日に入札が実施される予定の第3回目のOpen Acreage方式の入札の対象鉱区には、2018年と2019年に実施された第4次、第6次PS入札ラウンドで落札されなかったプレソルトエリアの鉱区や、2022年以降に実施予定とされていた第7次、第8次PS入札ラウンド、第18次ライセンスラウンドの対象鉱区も含まれることになった。
  • 2021年12月17日に第2回目のTransfer of Rights(TOR)払い下げPS入札ラウンドが実施され、Atapu鉱区をPetrobras、Shell、TotalEnergiesのコンソーシアムが、Sépia鉱区をPetrobras、TotalEnergies、Petronas、QatarEnergyのコンソーシアムが取得することになった。原油価格の上昇、入札条件の改善、生産中の鉱区であること、プレソルトでの探鉱不調、プレソルトの油田は温室効果ガスの排出量が少ないこと等が、入札結果が良好であった要因と考えられる。
  • プレソルトの油田は低コスト、低炭素であることから、生産中鉱区やその周辺鉱区を中心に、引き続き活発な開発が続き、ブラジルの石油生産量は増加を続けるとの見方がなされている。石油会社の関心を惹こうと入札制度の変更を図っている政府の努力が功を奏し、さらなる生産増につながるのか今後の状況を注視したい。

(出所:Petrobras website、ANP website、Platts Oilgram News、BNamericas他)

 

1. 2022年以降の鉱区入札をOpen Acreage方式に一本化する計画

政府は2021年12月9日、Open Acreage方式の入札の対象鉱区にプレソルトエリアを含めることを決定した。

もともとOpen Acreage方式の入札は、これまでプレソルトエリア以外の成熟油田や過去の入札で落札されなかった鉱区、石油会社から返還された鉱区を対象に実施されてきた。ここでは、石油会社が対象鉱区のうちいずれかの鉱区に関心を持っていることをANPに表明、入札の実施を要請することで当該鉱区が入札に付される。入札が実施されるまでの間に他の石油会社も関心のある鉱区を追加することができる。政府は、今回の入札の実施が決定された時点で対象鉱区数が、陸上522鉱区、沖合546鉱区の計1,068鉱区で、さらに陸上78鉱区、沖合272鉱区を対象鉱区とするか否か評価中であるとしていた。

この決定を受けて政府は、2018年6月と2019年11月に実施された第4次、第6次PS入札ラウンドで落札されなかったプレソルトエリア内の鉱区、Bumerangue、Cruzeiro do Sul、Itaimbezinho、Norte de Brava、Sudoeste de Sagitario鉱区をOpen Acreage方式の入札対象とした。ただし、プレソルトエリア内の鉱区については、この入札の対象とはなったものの、コンセッション契約は適用されず、契約形態もこれまで通りPS契約とする。また、これまでと同様、政府引取利益原油の比率如何で落札者を決定するとのことである。また、Petrobrasが権益の最低30%を保有し、オペレーターとなる優先権を保有することについても、これまでのプレソルトエリアの扱いと同じである。

政府は、さらに、現在、複数の種類がある鉱区入札制度をOpen Acreage方式に一本化する計画であることを明らかにした。つまり、2022年と2023年に実施予定とされていた第7次、第8次PS入札ラウンドで公開予定のAgata、Agua Marinha、Esmeralda、Jade、Turmalina、Tupinamba鉱区や、2022年に実施予定とされていた第18次ライセンスラウンドの対象鉱区(Ceara、Espirito Santo、Pelotas basinの鉱区)もOpen Acreage方式の入札の対象となった。今回の措置により、ブラジルでの鉱区入札手続きは一部統合され、わかりやすくなったと評価されよう。

表1. ブラジルの鉱区入札方式
入札 概要
ライセンスラウンド 1997年に導入、1999年以降実施。当初は、陸上、沖合のすべての鉱区を対象としていた。サインボーナスと最低作業コミットメントで落札者を決定(以前はローカルコンテンツも落札者決定の基準とされていた)。落札企業はコンセッション契約を締結。
PS入札ラウンド 2013年導入。プレソルトエリア内、または、政府が戦略的と判断した地域の鉱区を対象とする。サインボーナスは入札前に政府が決定。政府引取利益原油の比率で落札者を決定する。落札企業はPS契約を締結。
TOR払い下げPS入札ラウンド 政府は2010年に、Transfer of Rights(TOR)エリア(6油田)のプレソルトから50億バレル相当の原油・天然ガスを生産する権利をPetrobrasに付与した。その後の探鉱で同エリアのプレソルトの確認埋蔵量が石油換算50億バレルを上回ることが明らかになったことから、政府は50億バレルを上回る量を生産する権利を入札(TOR払い下げPS入札ラウンド)で付与している。2010年にPetrobrasが締結した契約はコンセッション契約。入札で鉱区を取得した企業はPS契約を締結。
Open Acreage方式 過去の入札で落札されなかった鉱区や返還された鉱区を対象とした入札。対象とされる鉱区に石油会社が関心を示すことで入札手続きを開始。2019年より実施。

各種資料を基に作成

 

図1.PS入札ラウンド対象鉱区
図1. PS入札ラウンド対象鉱区
各種資料を基に作成

ブラジルで2019年11月に実施された最初のTOR払い下げPS入札ラウンドと第6次PS入札ラウンドは、PetrobrasとCNODC、CNOOCが応札しただけで、メジャーズ等の国際石油会社が参加せず、精彩を欠く結果に終わった。これは、サインボーナスが高額であったことや政府取分の利益原油の比率が高かったこと、そして、TOR払い下げPS入札ラウンドに関してはすでに開発を行っているPetrobrasと共同参加契約を締結する等、通常よりも手続きが煩雑になることやPetrobrasがこれまで各鉱区の探鉱・開発に費やしてきた投資を権益保有比率に応じて負担、同社に支払わなくてはならないこと等から、多くの石油会社が入札しなかったと見られている。そこで、政府は石油会社の権益取得を簡素化し、ブラジルをより魅力的な投資先にすることを目指して、入札制度や契約形態の見直しについて検討を重ねていた。そして、プレソルトエリアやPS契約を変更、廃止する法案が議会に提案されたが、COVID-19感染拡大もあり、審議に進展は見られなかった。さらに、2021年10月に4堆積盆地の92鉱区を対象に実施された第17次ライセンスラウンドも、Santos盆地南部の5鉱区しか落札されないという低調な結果に終わった。そのような中で、法律を変更せずに、契約形態については従来のままとし、Open Acreage方式の入札の対象鉱区を拡大することが注目されるようになり、今回の決定に至ったという。

Open Acreage方式の入札は、これまでの入札とは異なり、あらかじめ入札にかけられる鉱区や入札時期が定められておらず、石油会社も自ら時間をかけて評価を行って、自社にとって望ましいタイミングで入札対象鉱区に含めるよう政府に申し入れることができる点で、柔軟性が高いと業界から評価されている。さらに、入札の手続きも合理化されており、1度手続きすれば、それ以降の登録は不要となるため、コストと事務作業を削減することができると企業に好評である。

Open Acreage方式の入札は2019年9月より実施され、これまでに2回行われている。当初は、陸上鉱区を中心に中小規模の企業向けの入札とされていたが、ExxonMobilやShell等も入札に参加し、成功裏に終了している。

表2. Open Acreage方式の入札の結果

表2.Open Acreage方式の入札の結果
                      各種資料を基に作成

入札方式の変更を発表した1週間後の2021年12月16日、対象鉱区の少なくとも1つにある企業から関心が寄せられたため、ANPは第3回目のOpen Acreage方式の入札手続きを開始した。未登録の石油会社は12月27日までに登録を行い、2022年2月3日までに特定の鉱区に対する関心を表明、2月16日に入札にかけられる鉱区が明らかにされ、4月13日に入札が実施される予定だ。

 

2. Transfer of Rights払い下げPS入札ラウンドは予想を上回る良好な結果

ブラジル国家石油庁(ANP)は、2021年12月17日に2回目のTransfer of Rights(TOR)払い下げPS入札ラウンドを実施した。

連邦政府は2010年に6鉱区から成るTORエリアのプレソルトから50億バレル相当の原油・天然ガスを生産する権利をPetrobrasに付与した。その後の探鉱で同エリアのプレソルトの確認埋蔵量が石油換算で50億バレルを上回ることが明らかになったことから、石油換算で50億バレルを上回る量を生産する権利を入札にかけたのがTOR払い下げPS入札ラウンドだ。TOR払い下げPS入札ラウンドでは、最も高い政府引取利益原油の比率を提示した企業、コンソーシアムが各鉱区を落札することとなっている。契約方式はPS契約であり、サインボーナスは政府が入札前に定める。

2019年11月に開催された最初のTOR払い下げPS入札ラウンドでは、対象鉱区4鉱区中、2鉱区に1件ずつしか札が入らなかった。落札企業も、Búzios鉱区がPetrobrasとCNOOC、CNODCのコンソーシアム、Itapu鉱区がPetrobras単独となり、メジャーを始めとする国際石油企業やPetrobrasと中国系以外の国営石油会社は札を入れなかった。提示された政府引取利益原油の比率も、政府が定めた最低比率と同じであった。

今回の入札は、最初のTOR払い下げPS入札ラウンドで札が入らなかったAtapuとSépiaの2鉱区を対象とし、石油会社の参入を容易にするべくサインボーナスや政府引取利益原油の最低比率を前回より引き下げて実施された。

その結果、Atapu鉱区には、Petrobras(権益保有比率52.5%、オペレーター)、Shell(同25%)、TotalEnergies(22.5%)からなるコンソーシアムのみが札を入れ、政府引取利益原油の比率31.68%で落札した。Petrobrasは2010年にAtapu鉱区で石油換算5.5億バレルを生産する権利を与えられており、2014年12月に開発を開始、2020年6月にFPSO P-70を用いて生産を開始、2021年7月にはFPSO P-70の生産能力、日量15万バレルまで生産量を増加させている。ANPは同鉱区ではさらに石油換算25億~40億バレルを生産可能と見ている。

Sépia鉱区については、TotalEnergies、Petronas、QatarEnergyからなるコンソーシアムとPetrobrasがそれぞれ札を入れ、前者の政府引取利益原油が37.43%、後者のそれが30.3%であったことから、前者が落札することとなった。これに対し、Petrobrasは「落札したコンソーシアムから権益の30%を取得し、コンソーシアムに参加する優先権」を与えられており、これを行使することとした。その結果、Petrobrasが権益の30%を保有しオペレーターとなり、その他の企業の権益保有比率はTotalEnergiesが28%、Petronasが21%、QatarEnergyが21%となった。Petrobrasは2010年にSépia鉱区で石油換算5億バレルを生産する権利を与えられており、2014年9月より同鉱区の開発を行い、2021年8月よりFPSO Carioca(生産能力は石油が日量18万バレル、ガスが日量600万立方メートル)で生産を開始している。ANPは同鉱区ではさらに石油換算で5億~7億バレルを追加生産可能としている。

表3.Transfer of Rights払い下げPS入札ラウンド結果

メジャーやPetrobras以外の国営石油会社も札を入れ、政府引取利益原油の比率は、今回、政府が定めた最低比率はもちろん、前回の入札の最低比率をも上回った今回の入札について、ANPのRodolfo Saboia事務局長は、「予想を上回る素晴らしい結果であった」と評価している。また、Albuquerque鉱山エネルギー大臣は、「今後5~6年で2鉱区併せて国内生産量を12%増加させることが可能である」と語った。

良好な入札結果を得られた要因として、原油価格の上昇が挙げられる。TotalEnergiesのCEO、Patrick Pouyanne氏は、取得した鉱区の生産コストは原油換算1バレルあたり20ドル以下であると語っており、現在の油価で推移すれば、利益を十分に上げられると見たと考えられる。

また、両鉱区ではすでに生産が行われている。いずれの油田でも1坑当たりの生産量が日量50,000バレルを超える坑井が生産中で、極めて優れた生産性を示している。ShellのSaturno鉱区やAlto de Cabo Frio Oeste鉱区、PetrobrasのPeroba鉱区等、2017年以降の入札で落札されたプレソルトの鉱区で掘削された探鉱井の結果が芳しくなかったことから、探鉱リスクがないTOR払い下げエリアで、すぐに大規模な生産にアクセスできる点は、大きなメリットであったと考えられる。さらに、両油田は、2022年からガスの輸送を開始する予定のRota3ガスパイプラインの近くに位置しており、ガスの再圧入を減らし、国内市場へガスを供給することも可能になる。

そして、先述した通り、サインボーナスや政府引取利益原油の最低比率が最初のTOR払い下げPS入札ラウンドよりも大幅に引き下げられたことから、入札に参加することを決定した企業もあると思われる。

加えて、両鉱区ではすでにPetrobrasが開発、生産を行っていることから、落札企業・コンソーシアムは、Petrobrasがこれまで行ってきた投資について自らの権益分を同社に支払うことになるが、最初のTOR払い下げPS入札ラウンドではこの金額が明らかにされていなかった。今回の入札では、Atapu鉱区が32.53億ドル、Sépia鉱区が32億ドルと金額が明らかにされ、不確定要素が取り除かれており、石油会社は札を入れやすかったのではないだろうか。

世界的に脱炭素化への取り組みを求める声が高まる中、プレソルトの油田は温室効果ガスの排出量が少ない。この点も石油会社の興味を惹いたと考えられる。Pouyanne氏は、取得した鉱区の温室効果ガス排出量は原油換算1バレルあたり20キログラムをはるかに下回るとしている。

 

終わりに

ブラジルの鉱山・エネルギー省は2021年末に、同国の石油生産量は2019年の日量279万バレルから2031年には517万バレルに年率5.3%の割合で増加するとの見通しを発表した。そして、2031年にはブラジルは生産された石油の2/3程度を輸出し、世界の五大石油輸出国に仲間入りするとしている。

一方、S&P Global Platts Analyticsは、ブラジルの原油生産量は2021年の日量290万バレルから2022年には320万バレルとなり、2030年には400万バレルに上昇するとしている。

両者の生産見通しにはかなり開きがあるが、低コスト、低炭素のプレソルトでは、生産中鉱区やその周辺鉱区を中心に、引き続き活発な開発が続き、ブラジルの石油生産量は増加を続けるとの見方は共通している。石油会社の関心を惹こうと入札制度の変更を図っている政府の努力が功を奏し、さらなる生産増につながるのか今後の状況を注視したい。

 

以上

(この報告は2022年1月4日時点のものです)

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