ページ番号1009232 更新日 令和4年1月11日
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1. 政治・経済情勢
(1) 国内
金融
ロシア中央銀行が気候変動に対する取組方針を公表
- ロシア中央銀行は、11月3日、持続可能な開発のための主要戦略目標に関するロードマップを公表した。同ロードマップは、財務省と同銀行が現在策定中の「2030年までの金融市場の発展のための戦略案」および「2022年及び2023年、2024年の期間における金融市場の発展のためのガイドライン案」に基づいて規定されるもの。
- 同ロードマップでは、ロシア中央銀行による今後3年間の気候変動に対する取組方針が示されており、この中には、持続可能な開発に資する金融市場インフラの開発や資金提供手段の策定、公的企業に求められるESG分野でのコーポレートガバナンス慣行の導入促進が含まれる。
- また、同銀行は、気候リスクによる潜在的影響についてストレステストを継続的に実施することに加え、カーボンクレジットの発行・流通のためのロシアの金融市場インフラの活用可能性について評価を行う予定。
- ロシア中央銀行は、こうした個別の取組方針の公表により、金融市場での気候リスク管理における同銀行に対する国際的な評価の向上を目指す。
取組内容 | 実施期間 | |
持続可能な開発に資する金融市場の取引手段およびインフラの発展、投資家およびその他利害関係者、外部課題による要求に応じたESGビジネス変革を行う企業向けの条件・機会の創出 | ||
1. | 持続可能な開発プロジェクトの分類方法の策定への関与 | 2021~2022 |
2. | 持続可能な開発のためのファイナンスに関する既存手段の発展および新手法の導入 | 2021~2023 |
3. | 持続可能な開発の促進のため、コーポレートガバナンスおよび情報開示の状況を改善 | 2021~2024 |
新たなリスク形態に金融市場を適応させることを目的とした金融市場規制におけるESG要因の勘案 | ||
4. | ロシア最大の輸出産業および金融セクターに対し、過渡期の気候リスクによる潜在的影響についてストレステストを実施 | 常時 |
5. | 投資活動において気候リスクを考慮する必要性に関する金融仲介業者への推奨事項の策定など、金融機関によるESGリスク評価・会計に対する規制・監督分野での提案・イニシアティブ、手法の策定 | 2021~2024 |
6. | 気候リスクに対する保険の開発に向けて、自然災害の発生とインパクトに関するデータベースの開発を開始 | 2023 |
ロシア中央銀行業務における持続可能な開発原則の導入 | ||
7. | 国連SDGsに基づく持続可能な開発ポリシーの策定および環境・社会に応じたプログラムの実行 | 2021~2024 |
8. | 国家の炭素規制システムの枠組みの中で、カーボンクレジットの発行・流通における障壁の特定および撤廃 | 2021~2023 |
9. | カーボンクレジットの発行・流通のためロシアの金融市場インフラの活用可能性を評価 | 2021~2023 |
(2) 対外関係
1) 第26回気候変動枠組条約締結国会議(COP26)
ロシア政府代表団の参加およびプーチン大統領ビデオメッセージ
- ロシア政府代表団は、10月31日から11月13日にかけて英国・グラスゴーにおいて開催された第26回気候変動枠組条約締結国会議(COP26)に参加した。同代表団は、オヴェルチュク副首相が代表、エデルゲリエフ大統領特使(気候問題担当)が第1副代表として参加し、この他にコズロフ天然資源環境大臣やレシェトニコフ経済発展大臣、エネルギー省ソローキン副大臣に加え、ロスネフチ、ロスアトムやEn+グループなど企業団も出席した。
- プーチン大統領は、ロシアにおける新型コロナウイルスの感染拡大などを踏まえ、同会議の世界リーダーズサミットへの出席を見送った一方、森林と土地利用に関する会合においてビデオメッセージによる演説を行った。同メッセージの中で、森林およびその他自然生態系の保全が、地球温暖化問題の解決や温室効果ガスの排出削減のための国際的な取組の重要な要素の1つであると前置きした上で、2060年までのカーボンニュートラル達成目標を設定したロシアにとっても、森林は二酸化炭素吸収源としての大きなポテンシャルであることに言及した。特に全世界の森林の約20%がロシアに存在するため、森林の管理体制の改善や違法伐採や森林火災への対応、森林再生地域の増加等の積極的な対策を講じていくと強調した。また、森林と土地利用に関するグラスゴー首脳宣言への支持を表明した。
- オヴェルチュク副首相は、11月9日、ハイレベルセグメントにおいてロシアからの声明を発表した。同声明の中で、同副首相は、ロシアは砂漠化、土壌侵食、森林火災、洪水、永久凍土の融解などの地球温暖化の悪影響を受けており、同問題を深刻かつ責任をもって受け止めていること述べ、プーチン大統領が発表した2060年までのカーボンニュートラル達成目標に対し、温室効果ガスの排出抑制策と森林・ツンドラ、農地、沼地、海洋などの自然生態系による吸収能力の向上の双方を通じて取り組んでいくと述べた。また、「2050年までの温室効果ガス排出量の少ないロシアの社会・経済発展戦略」が承認されたことを紹介し、同戦略において、ネット温室効果ガス排出量の80%削減と森林やその他生態系の吸収能力の最大化が盛り込まれていると述べた。加えて、既にロシアのエネルギーミックスの86%が、太陽光、風力、原子力、水力、天然ガス由来であり、更にブルー・グリーン水素の導入により、低炭素排出国としてリードしていくと表明した。
- レシェトニコフ経済発展大臣は、11月24日、プーチン大統領と政府の間で行われた会議において、COP26の結果について、「外部から課される他国の概念や、厳しく、時に十分計算されていない決定から、ロシアの経済、輸出、投資、そして自身の立場を守ることができた」と総括した。同大臣によると、森林プロジェクトの実施期間が、15年間から最長45年間まで30年間延長されるなど、ロシアにとって有利な条件で合意に至った。

写真出典:https://plus-one.ru/ecology/2021/11/10/cop26-rossiya-obyavila-kak-pomozhet-miru-pereyti-k-zelenoy-ekonomike
COP26におけるオヴェルチュク副首相の主な会談内容
- オヴェルチュク副首相は、11月10日、EUティマーマンス上級副委員長(グリーンディール担当)との会談を行い、ロシア・EU間での国際的な気候変動問題の解決策、気候・エネルギー分野における協力関係の発展の見通しなどについて議論を行った。特に、サハリンにおける脱炭素実証プロジェクトや、カーボンクレジットに関する会計、流通、相互認証での協力可能性について意見交換を行い、国境を跨ぐ規制の問題について多国間で解決されるべきとの立場を示した。
- また、同日、同副首相はOPECバルキンド事務局長との会談を行い、エネルギートランジッションに関する幅広い問題について議論を行った。
- 加えて、同副首相は、11月12日、グテーレス国連事務総長との間で会談を行い、気候変動に関する幅広い議題について議論を行った。同会談において、同副首相は、気候変動問題と世界的なグリーントランジッションについて、実効的でバランスの取れたアプローチをとることの重要性と、消費者に過度の負担を強要すべきでないことを強調した。
2) ベラルーシ
両国間の連邦国家創設に関する条約に向けた2021年から2023年の作業の方向性が承認
- プーチン大統領は、11月4日、ベラルーシのルカシェンコ大統領との間で、連邦国家最高評議会会合をオンライン形式で開催し、「連邦国家創設に関する条約の規定の実現に向けた2021年から2023年の主な方向性」および28項目の連邦プログラムの書面合意による承認に至った。
- 合意文書のパッケージの中には、マクロ経済、産業、農業政策、全般的な市場競争規則、単一の運輸市場、商品のトレーサビリティとラベリングシステムの統合、動植物検疫管理が含まれる。また、統一の原油・天然ガス、電力市場の段階的形成が開始される。
- 上記に加え、両者は、軍事ドクトリンの更改や、連邦国家の移民政策コンセプトを承認したほか、2021年に両国共同で科学技術分野における連邦国家賞を授与することを決定した。
3) アジア・太平洋諸国
第28回APEC首脳会合の開催
- プーチン大統領は、11月13日、ニュージーランドのアーダーン首相が議長を務め、オンライン形式で開催された第28回APEC首脳会合に出席した。同会合では、「共に参加し、共に取り組み、共に成長する」というテーマの下、新型コロナウイルスからの回復とアジア太平洋地域の経済回復について議論がなされた。最後に「アオテアロア行動計画」が採択された。
- プーチン大統領は、世界経済は新型コロナウイルスによる危機から徐々に回復しており、最新の予測によると、世界のGDP成長率が5.9%に達し、APEC諸国の場合、これより高く平均6.4%の数値になると述べた。更にロシアは、既にパンデミック前の水準に戻っており、2021年のGDP成長率が4.7%に達する予測であると紹介した。また、ロシア製の新型コロナウイルスワクチンであるスプートニクVは、既に71か国で使用が承認され、40億人以上に供給されていると強調した。
- また、APECとその他の地域会合であるユーラシア経済連合、ASEAN、上海協力機構などが一致した議題の下で調整を強化することが、活動の効率性を高めると指摘した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/67098
4) モンゴル、中国
三者経済回廊プログラムの5年間の延長に合意
- ロシア政府代表団(経済発展省ディアノフ局長が代表)は、11月12日、モンゴルおよび中国の政府代表団(それぞれ、外務省ウルジサイハン局長、国会委員会張民副局長が代表)との間の作業部会をオンライン形式で開催し、モンゴル経由での中国向けの天然ガスパイプライン(シベリアの力2)の建設に関する問題や、3国間の鉄道の近代化、国境を跨ぐ「万里茶路(Great Tea Road)」の観光ルートに関するロードマップの作成について議論を行った。3者は、2016年6月に首脳間で採択された「三者経済回廊プログラム」について、5年間延長することに合意した。
- 同プログラムにおいては、運輸、電力、税関規制、産業、環境保護、科学技術、観光などの分野で32の共同プロジェクトの実施を行う。
- ディアノフ局長は、天然ガスパイプラインについて、モンゴルおよび中国の関連企業と協力して、ガスプロムの支援を行っていく予定あり、天然ガス供給条件について早期に合意したい考えを示した。
5) ウズベキスタン
第2回地域間協力フォーラムが開催され、27億ドルの貿易・経済協定に合意
- ロシアとウズベキスタンの間で、11月17日、第2回地域間協力フォーラムが開催され、新たな発展のポイントおよび相互協力の方向性について議論が行われた。冒頭、プーチン大統領とウズベキスタンのミルジョーエフ大統領がビデオメッセージを発信した。
- 同フォーラムへの参加地域の数は、ロシアから54地域(同国経済圏の60%以上)、ウズベキスタンから12地域(同国経済圏の87%)となり、前回よりも拡大した。
- レシェトニコフ経済発展大臣は、同フォーラムの中で、27億ドル相当の28件の貿易・経済協定が締結されたと述べ、37億ドル相当、100件以上のプロジェクトが議論されていると紹介した。また、二国間の貿易額が、過去9か月間で6.5%の成長を続けており、更にロシアからの輸出の75%以上が非資源・エネルギー分野だと強調した。
- 同大臣は、次のステップとして農産物の鉄道輸送「アグロエクスプレス」ロジスティクスを構築することや、金融セクターにおける協力について期待を示した。

写真出典:https://www.economy.gov.ru/material/news/maksim_reshetnikov_na_forume_regionov_rossii_i_uzbekistana_podpisany_torgovo_ekonomicheskie_soglasheniya_na_2_7_mlrd.html
ミルジョーエフ大統領との対面での会談で貿易・投資分野の問題等について議論
- プーチン大統領は、11月19日、モスクワのクレムリン宮殿で、ウズベキスタンのミルジョーエフ大統領と会談し、貿易・投資・人道分野を含む両国の戦略的パートナーシップ関係の更なる発展に関する問題や、アフガニスタン情勢を含む国際的・地域的な問題について議論を行った。また、両首脳は、国際情報セキュリティ分野の協力に関する共同声明を採択した。
- 同会談において、プーチン大統領は、ミルジョーエフ大統領の選挙での再選を祝福すると共に、ウズベキスタンの貿易高の18%をロシアが占めており、昨年は15%以上の増加であったと強調した。
- ミルジョーエフ大統領は、モスクワ訪問前に両国間の3つの大きなフォーラム(地域間協力・教育・メディア)が行われたと紹介し、この中で、合計140億ドル相当のプロジェクトが進行中と述べた。特に教育フォーラムにおいては、35以上の新規協定が調印されたと言及した。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/67142
2022年から2026年の包括的経済協力プログラムに署名
- レシェトニコフ経済発展大臣は、11月19日、ウズベキスタンのウムルザコフ副首相兼投資・対外貿易大臣との間で、2022年から2026年の包括的経済協力プログラムに署名した。同プログラムは、地域間協力フォーラムの枠内で行われる。
- 同プログラムには、電子商取引、経済のデジタル化、新エネルギーおよび節水技術、移民分野でのアプローチの改善が新たに含まれており、これにより、両国はパンデミック後の経済協力の発展を目指す。また、従来の貿易、産業協力、運輸、エネルギー、農業、通信、金融、科学技術・教育、医療、文化、観光、地域間協力なども引き続き対象となっている。

写真出典:https://www.economy.gov.ru/material/news/rossiya_i_uzbekistan_podpisali_kompleksnuyu_programmu_ekonomicheskogo_sotrudnichestva_na_2022_2026_gody.html
6) 中国
エネルギー協力に関する露中政府間委員会第18回会合開催
- ノヴァク副首相は、11月17日、中国の韓正国務院常務副総理との間で、エネルギー協力に関する政府間委員会第18回会合をオンライン形式で開催し、燃料・エネルギー分野の協力関係の発展に向けて議論を行った。なお2021年は、露中善隣友好協力条約の調印から20周年にあたる。
- 同会合において、ノヴァク副首相は、両国間の2020年の貿易高が1,040億ドルに達したと述べた上で、このうち3分の1以上を燃料・エネルギー分野が占めており、両国の間では、UdmurtneftやYamal LNG、Arcitc LNG 2などの大規模な共同プロジェクトが実施されていると強調した。また、2020年の中国向けの石炭供給量は、3,950万トンと前年比で20.6%増加したと述べ、新たな長期契約の締結やザバイカリエ石炭鉱床の共同開発等を通じて供給量を更に増加させる用意があると伝えた。
- また、露中国境送電網の安定性の維持や、再生可能エネルギー、水力発電、水素エネルギー分野での協力の継続、田湾原子力発電所の建設や徐大堡原子力発電所における高速中性子炉の実証など、原子力分野におけるロシア技術の活用についても議論を行った。

写真出典:http://government.ru/news/43829/
露中科学技術イノベーション協力年の閉会式を実施
- チェルニシェンコ副首相は、11月26日、コーディネーションセンターにおいて、中国の孫春蘭国務院副総理との間で、露中科学技術イノベーション協力年の閉会式を開催した。同協力年は、2019年6月、習近平国家主席のロシア訪問に合わせて、プーチン大統領と同国家主席の共同声明の中で決定されたもの。
- 同閉会式において、両国副首相の立会いの下、清華大学との間でのヘルスケア分野の標準化と技術移転のための露中合同センターの設立に関する協定、北京大学との間での学生交流協定、ロシア民族友好大学と吉林大学との間での協力協定が締結された。
第3回露中エネルギービジネスフォーラムが開催
- ロスネフチは、11月29日、同社とCNPCの共催により、第3回露中エネルギービジネスフォーラムを対面とオンラインのハイブリット形式で開催した。同フォーラムには、ベロウソフ第1副首相やノヴァク副首相、ボリソフ副首相、中国の韓正国務院副総理、張能源局局長、ロスネフチ・セーチン社長、CNPC戴会長らが出席した。
- プーチン大統領と習近平国家主席は、フォーラムへの挨拶状を送った。同文書の中で、プーチン大統領は、エネルギー効率の高い技術の開発と実行や、グリーンエネルギー開発をフォーラムの議題に含めることの重要性を指摘し、習近平国家主席は、エネルギー安定供給と気候変動問題に対する協働の必要性を提起した。
- ノヴァク副首相は、ロシアから中国向けの原油輸出量が過去10年間で6倍以上に増加し、パイプライン経由での天然ガス輸出量が2021年11月末までに13.4BCM以上になったと述べた。また、石炭の輸出量は、9月末までの4,200万トン以上と、前年比65%増であると強調した。
- 更に、同副首相は、露中企業間の共同プロジェクトとして、Udmurtneft案件(ロスネフチとSinopec)、Yamal LNG案件(NovatekとCNPC、シルクロード基金)、アムールガス化学コンプレクス案件(SIBURとSinopec)を取り上げ、将来的なロシア国内の水力発電所建設や、脱炭素水素エネルギー分野での共同事業の立ち上げに大きな関心を示した。
- 韓副総理は、同フォーラムを通じた新たなプロジェクトの立ち上げの意向を示し、特に2060年までのカーボンニュートラル達成目標を設定した両国の間で、再生可能エネルギー、水素エネルギー、スマートエネルギー分野での関係深化のための相互協力への期待を表明した。
- 同フォーラムにおいて、ロシア側が策定した「露中エネルギー協力に関する投資アトラス」が提示され、中国側も同様のアトラスの策定作業の加速を約束した。この他の成果として、露中企業間での20件の協定が署名された。

写真出典:http://government.ru/news/43942/
第8回露中政府間投資協力委員会が開催
- ベロウソフ第1副首相は、11月30日、中国の韓正国務院副総理との間で、第8回露中政府間投資協力委員会を開催し、投資分野における両国の協力関係の発展に対する現状と今後の展望について議論を行った。
- ベロウソフ副首相は、2021年9月末までに両国の貿易高は前年比32%増の989億ドルに達したと述べ、更なる貿易量と貿易範囲の拡大への自信を見せた。このために、天然ガスや石油化学、製薬、運輸、ハイテク分野など、有望な産業に対する投資プロジェクトへの支援の必要性を強調した。
- 同委員会において、両者は1,200億ドル以上の投資プロジェクトに関する新規リストに合意した。この中には、新型コロナウイルスワクチン生産プロジェクト5,000万ドル、ウスチ・ルガにおけるガス化学コンプレクス217億ドル、ナーベレジヌイェ・チェルヌイでのHaier製家電製品の生産1億9,800万ドルなどが含まれる。この他にもアムールガス化学コンプレクスや、ザバイカリスク穀物ターミナルなどが紹介された。
7) 日本
貿易経済に関する日露政府間委員会・貿易投資分科会第13回会合および地域間交流分科会第10回会合開催
- イリチョフ経済発展次官は、11月23日、鈴木浩外務審議官との間で、貿易経済に関する日露政府間委員会・貿易投資分科会第13回会合および地域間交流分科会第10回会合をオンライン形式で開催し、両国間の貿易の円滑化、創造経済およびデジタル化における協力、交通・都市環境の発展、農産物取引の拡大などの主要分野について議論を行った。
- また、ロシア側は、特に気候変動対策や持続可能な開発のためのプロジェクト実施における協力への意向を示し、温室効果ガス排出量の削減に向けた共同手法の開発について対話を行うことを日本側へ呼びかけた。
- また、2020年から2021年までの期間で開催している日露姉妹都市・地域交流年の開催期間を1年間延長し、2022年末までとすることで一致した。
8) UAE
ADIPEC2021において水素エネルギー分野に関する協定を締結
- イワノフ産業商務次官は、11月23日、UAEのアブダビで開催されたADIPEC2021の展示会において、同国アルオラム・エネルギー・インフラ副大臣に対し、産業商務省が作成した水素プロジェクトのアトラスを手交し、両国間での水素プロジェクトの立ち上げへの期待を表明した。
- また、両国間の貿易・経済、技術協力に関する政府間委員会の枠組みの中で、モスクワ物理技術研究所、ハリファ大学、MKC for Power Solutions L.L.C.の間で、水素製造・貯蔵、利用に関する技術の共同開発および水素・再生可能エネルギー源のみで運営する独自の共同研究所の建設に係る協力協定が締結された。

写真出典:https://minpromtorg.gov.ru/press-centre/news/#!rossiyskoemiratskoe_sotrudnichestvo_v_oblasti_vodorodnyh_proektov_vyhodit_na_novyy_uroven
2. 石油ガス産業情勢
(1) 原油・石油製品輸出税
- 2021年9月15日から2021年10月14日までのモニタリング期間におけるウラル原油の平均価格はUSD76.76727/バレルとなり、11月の原油輸出税はUSD9.8/バレルに引き上げられた。
- 11月の石油製品輸出税はUSD21.3/トン、ガソリンについてはUSD39.1/トンに設定された。

(2) 原油生産・輸出量
- 11月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,456万トン(約3億2,529万バレル、平均日量1,089万バレル)で、前年同月比8.8%増。
- 11月、原油輸出量は1,901万トン(約1億3,875万バレル、同448万バレル)で、前年同月比3.0%増。
(3) 天然ガス生産
- 11月、天然ガス生産量は661億立方メートル(約2.3TCF)で、前年同月比で4.6%増。
注1 原油生産量及び輸出量はエネルギー省の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。原油輸出量は、(4)原油輸出先に記載の連邦税関庁の公表データに基づく数値とは異なる。
注2 天然ガス生産量はエネルギー省の公表データ、天然ガス輸出量は連邦税関庁の公表データに基づき、今後更新される可能性あり。
(4) 原油輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 9月、主な原油輸出先は、欧州935万トン(約6,828万バレル、全輸出量に占める割合48.0%)、中国594万トン(約4,339万バレル、同割合30.5%)、韓国132万トン(約961万バレル、同割合6.8%)となった。
- 前年同月比で米国が45.6%増となり、トルコおよびインド向けの輸出が行われた一方、日本が48.2%減、ベラルーシが44.3%減となり、欧州、韓国、中国向け輸出も減少した。

(5) 天然ガス輸出先
注 連邦税関庁の公表データは、2か月前のデータが最新。
- 9月、主なLNG輸出先は、欧州146万トン(全輸出量に占める割合79.8%)、中国15万トン(同割合8.1%)であり、前年同月比でアジア向け輸出シェアが減少し、欧州向けシェアが拡大した。また、前年同月の輸出先であった日本および台湾向けの輸出は行われず、シンガポールおよびインド向けの輸出が行われた。

- 9月、北極海航路を経由した主なLNG輸出先は、欧州132万トン(全輸出量に占める割合78.3%)、アジア37万トン(同割合21.7%)で、前年同月と異なり、韓国、シンガポール、インド向けの輸出が行われたことにより、欧州向けシェアが減少した。

- 9月、主なパイプラインガス輸出先は、ドイツ4.9BCM(全輸出量に占める割合31.9%)、トルコ2.0BCM(同割合13.2%)、ベラルーシ1.4BCM(同割合9.2%)となった。
- 前年同期比でイタリアが49.5%減、フランスが29.0%減となった一方、ドイツが49.2%増、トルコが8.1%増となった。また、前年同月の輸出先であった中国向けの輸出は行われなかった。

(6) 減産合意
2021年12月の減産措置縮小について日量40万バレル規模の維持に合意
- OPECプラスは、11月4日、第22回閣僚会合をテレビ会議形式で開催した。7月18日に開催された第19回会合における合意に基づき、8月以降実施されている減産措置縮小(毎月日量40万バレル)について、12月の減産措置にも適用することを決定した。
- 同会合では、メキシコを含むOPECプラス産油国による9月の減産遵守率が115%であったことを確認した。会合に参加したノヴァク副首相は、2021年の原油需要は日量500~600万バレルに到達する見込みであり、これに合わせてロシアの原油生産量も増加させ、2021年末までに日量100万バレルの増産が達成されると述べた。
- OPECプラスは、次回の第23回閣僚会合を12月2日に開催する。
(7) 北極海航路
第6回国際北極圏フォーラム開催に向けた組織委員会の初会合が開催
- トルトネフ副首相兼極東・北極圏発展大臣は、11月12日、2022年4月11日~13日にサンクトペテルブルクで開催が予定される第6回国際北極圏フォーラム「北極圏-対話の領域」の開催準備のための組織委員会の初会合に参加し、開始方針について議論を行った。
- 同会合において、トルトネフ副首相は、ロシアが2021年5月~2023年5月までの期間、北極評議会の議長を務めることに触れ、議長国として、北極圏の持続可能な社会・経済的発展と、ロシアの地位向上を目指したい考えを伝えた。このため同フォーラムでは、北極圏の経済、生態系、人的資本開発、先住民・少数民族への支援など、10分野において100件以上のテーマを含め、世界50か国以上から2,500人の参加者を招待する見込みであると述べた。
(8) 脱炭素・環境対応
2050年までの温室効果ガス排出量が少ないロシアの社会経済発展戦略が公表
- ミシュスチン首相は、10月29日、ロシア連邦政府指令第3052-r号により、「2050年までの温室効果ガス排出量が少ないロシアの社会経済発展戦略」を承認した。同戦略は、2020年11月4日付の大統領令第666号「温室効果ガス排出量の削減について」に基づき作成されたもの。
- 同戦略は、「慣性シナリオ」と「目標(集中)シナリオ」の2つのシナリオの比較により構成され、後者の「目標(集中)シナリオ」を基本シナリオに設定している。「目標(集中)シナリオ」においては、温室効果ガス排出量を2050年までに2019年比で60%、1990年比で80%削減する想定であり、これにより、ロシアは温室効果ガス排出量を削減しつつ、国際的競争力と持続可能な経済成長を実現することが可能とされる。更に、同シナリオの実施により、プーチン大統領が10月に発表した、2060年までのカーボンニュートラルの達成が可能となる。なお、「慣性シナリオ」においては、カーボンニュートラル達成は不可能とされる。
- 「目標(集中)シナリオ」において前提となるマクロ経済情勢は、2030年から2050年までのエネルギー輸出の減少率を年率平均2.1%と、「慣性シナリオ」の年率平均2.8%に比較して緩やかに設定し、一方で非エネルギー輸出の増加率を年率平均4.4%に設定した。同期間における経済成長率は年間3%となり、世界平均を上回る水準を維持する。
- また、「目標(集中)シナリオ」の実施には、温室効果ガス排出量の削減のための投資に、2022年から2030年にGDPの約1%、2031年から2050年にGDPの1.5%から2%を充当する必要がある。低炭素・脱炭素技術の導入および複製、規模拡大、二次エネルギー資源の利用促進、税・関税および予算政策の変更、グリーンファイナンスの発展、森林およびその他の生態系の吸収能力の維持・向上のための措置、CCUS技術に対するサポートを行うことも盛り込まれた。
- 上記により、2050年の温室効果ガス排出量は、「慣性シナリオ」においては、2019年比で402百万トン増加する一方、「目標(集中)シナリオ」においては、289百万トン増加し、森林およびその他の生態系による同吸収量は、「慣性シナリオ」においては一定の一方で、「目標(集中)シナリオ」では、2019年比で665百万トンの増加が見込まれる。結果として、「目標(集中)シナリオ」における2050年時点の正味温室効果ガス排出量は630百万トンとなり、何も対策を講じない場合と比較して910百万トンの同排出量の削減となる。
- ミシュスチン首相は、より環境に優しい解決策を導入することに加え、森林およびその他の生態系による温室効果ガス吸収量を増加させることが必要であると述べた。また、レシェトニコフ経済発展大臣は、国際的な低炭素開発における技術的中立性の原則を国際的に認知させ、ロシアが低炭素とみなす原子力を有効活用することが重要だと強調した。
各指標 | 2019年(実績値) | 2030年(計画値) | 2050年(計画値) |
慣性シナリオ | |||
排出量 | 2,119 | 2,253 | 2,521 |
吸収量(森林) | -535 | -535 | -535 |
正味排出量 | 1,584 | 1,718 | 1,986 |
目標(集中)シナリオ | |||
排出量 | 2,119 | 2,212 | 1,830 |
吸収量(森林・その他生態系) | -535 | -539 | -1,200 |
正味排出量 | 1,584 | 1,673 | 630 |
(百万トン/CO2換算)
国家プロジェクト「エコロジー」の公共専門家会議メンバーが確定
- アブラムチェンコ副首相は、11月2日、国家プロジェクト「エコロジー」の公共専門家会議のメンバーを承認した。同会議の専門家は、同プロジェクトに対する専門的な知見提供および方法論的支援、同活動における調整を行う。同会議は、ロシア生態学会イスマイロフ会長など、環境分野の公的機関、業界団体、科学技術・研究センターの代表者18名により構成されている。
2050年のロシアの電源構成の56.5%が脱炭素電源になる可能性
- マクシモフエネルギー省電力産業開発局長は、11月10日、英国・グラスゴーにおいて開催された第26回気候変動枠組条約締結国会議(COP26)において、2050年のロシアの電源構成について、同省による現在の見通しを述べた。
- 同局長によれば、ロシアは、2050年時点のロシアの電源構成のうち、脱炭素電源が占める割合を、現在の40.8%から56.5%まで増加させる目標であると述べ、このうち、原子力発電が25%、水力発電が19%、再生可能エネルギーが12.5%となると紹介した。
- このため、再生可能エネルギー電力供給プログラムを通じて、電力卸売市場における再生可能エネルギー発電所の開発支援を進めていくと強調した。現在2024年までの同プログラムにより、既に5.4GWの支援案件が決定しており、続く2035年までの同プログラムにおいては、約8~9GWの追加支援が見込まれていると伝えた。この結果、2050年までにロシアの再生可能エネルギー発電所の発電容量は97.4GWに増加する。
- また、同局長は、再生可能エネルギーの拡大により、電力需給バランスの調整のための電力貯蔵システムが必要となるが、揚水発電所といった従来型の方法、或いはロシアの産業の発展に応じてより近代的な方法により解決を図ると付け加えた。
- 2050年時点の残りの電源構成については、クリーンガス火力発電が40%となり、石炭火力発電22.2GWを段階的に廃止することで、同割合を4.5%まで減少させると述べた。

出典:エネルギー省公表情報よりJOGMEC作成
ロシア初の温室効果ガス削減量の認定機関にロシア民族友好大学生態学研究所が選定
- ロシア連邦認定サービス(ロスアクレジターツィヤ:経済発展省所管)は、11月12日、温室効果ガスの検証および認定を行う機関に関する初の決定として、ロシア人民友好大学の生態学研究所を選定したと発表した。今後、同研究所は、温室効果ガスの排出量に関する報告に対する検証および認定を行う。
- 同大学ヤストレボフ学長によると、同大学は当初発表された27種類の経済活動の全分野において、温室効果ガスの検証および認定を行う能力が確認されたと強調した。認定対象には、養鶏場から発電部門、石油部門まで幅広く含まれている。
- 2020年11月4日付の大統領令第666号「温室効果ガス排出量の削減について」に基づき、今後企業により、気候プロジェクトが実行され、カーボンクレジットの流通市場が形成されることになる。ロスアクレジターツィヤのスクルィプニク代表は、こうした企業の取り組みが、政府が認定する温室効果ガスの検証および認定機関によって保証されることになり、更に、同認定システムにより、ロシア製製品の海外向け輸出に際して、国内の炭素報告書の信頼性の確保にもつながると強調した。
3. ロシア石油ガス会社の主な動き
(1) ガスプロム
RusGazDobycha社との間でヤマル半島タンベイ・ガス田の開発のためのJVを設立
- ガスプロムは、11月2日、100%子会社のガスプロムネドラ社を通じて、RusGazDobycha社との共同出資会社Gazprom dobycha Tambey社を設立し、登記を完了したと発表した。これに伴い、ヤマル半島のタンベイ・ガス田の鉱区ライセンスがガスプロムネドラ社から同JVに移譲される。
- 同JVは、ヤマル半島のタンベイ・ガス田を開発し、2026年からの天然ガス生産開始を目指す。同ガス田は、エタン含有量が多い特徴を持ち、ナディム‐プル‐タズ地域の天然ガス鉱床と共に、ウスチ・ルガにおけるガス処理コンプレクスの供給源となる予定。
水素エネルギー開発技術に関する政府との合意文書に基づくロードマップ案を提出
- ガスプロムは、11月23日、政府との間で10月に締結した「天然ガス由来の水素エネルギー開発および産業・運輸分野の脱炭素化」の高度技術の発展を目的とする合意文書に基づき、ロードマップ案を策定し、エネルギー省に提出したことを発表した。
- 同社は、天然ガス供給における二酸化炭素排出量の削減手段の1つとして、水素を同社の商品として扱う。今後、新たに設立した子会社であるGazprom Hydrogen社を通じて、水素エネルギーに関する実証プロジェクトに参画する予定。
(2) ロスネフチ
海外のサプライヤーおよびコントラクター向けの一連のVostok Oil案件ロードショーを完了
- ロスネフチは、11月9日、海外のサプライヤーおよびコントラクター向けに実施していた、Vostok Oil案件に関する一連のロードショーを完了したと発表した。同ロードショーは、欧州、アジア、中東の15か国のサプライヤーおよびコントラクターに対し、全16回開催され、合計360社・組織から760名以上が参加した。これらロードショーには、各国の大使館や業界団体の代表者も出席した。
Vostok Oil案件の原油輸送システムの建設が開始
- ロスネフチは、11月25日、Vostok Oil案件の原油輸送システムについて、包括的なエンジニアリング調査を完了し、原油パイプラインと関連施設の建設を開始したと発表した。
- 原油パイプラインは、ヴァンコール・クラスターおよびパイヤハ・クラスターからセーヴェル港の原油出荷基地に接続する全長約770キロメートルのパイプラインとなる見込み。またこの区間には、7つの原油ポンプ・ステーションを設置する。同パイプラインの区間およびルートなどは既に決定しており、今後、第1段階として、ヴァンコール油田における主な原油ポンプ・ステーションの修繕を行い、スズン鉱区からヴァンコール油田間の既存の約100キロメートルの原油パイプラインに沿って、新規に約75キロメートルの原油パイプライン逆流ルートおよび原油ポンプ・ステーションを建設し、年間1,800万トンの原油輸送を可能とする見込み。
複数の中国企業との間でVostok Oil案件における風力発電ポテンシャル調査に合意
- ロスネフチは、11月29日、第3回露中エネルギービジネスフォーラムにあわせて、Vostok Oil社を通じて、複数の中国企業との間でVostok Oil案件の風力発電ポテンシャル調査に関する協力協定を締結したと発表した。
- 同調査では、風力発電所の設計、建設、試運転に向けた準備作業を行い、対象とする発電容量は20~40MWを見込んでいる。同作業は、ワーキンググループにより行われる予定。
4. 新規LNG・P/L事業
(1) SKV天然ガスパイプライン拡張が年内に完了見込み
- ガスプロムは、11月11日、SKV(サハリン‐ハバロフスク‐ウラジオストク)天然ガスパイプラインの拡張に関する建設・敷設作業が、2021年末までに完了する見通しであると発表した。同パイプラインは、既に直線部分の全長390.8キロメートルのうち、376キロメートルが敷設・埋設されている。
(2) ロシア・モンゴル政府間委員会第23回会合でシベリアの力2について議論
- アブラムチェンコ副首相は、11月26日、モンゴル・アマルサイハン副首相との間で、同国ウランバートルにおいて、貿易経済および科学技術協力に関するロシア・モンゴル政府間委員会の第23回会合を開催し、運輸、エネルギー、産業、農業、人道分野における協力の拡大などについて議論を行った。
- アブラムチェンコ副首相は、同会合において、ロシアからモンゴル経由での中国向けの天然ガスパイプライン(シベリアの力2)の新設について、現在フィージビリティスタディを実施中であることに触れ、2021年末、早ければ12月初旬までに同スタディが完了する見込みであると述べた。
以上
(この報告は2022年1月10日時点のものです)
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