ページ番号1009264 更新日 令和4年2月4日

(短報)タンザニアLNGプロジェクト交渉再開

レポート属性
レポートID 1009264
作成日 2022-02-04 00:00:00 +0900
更新日 2022-02-04 09:23:35 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG
著者 野口 洋佑
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 5
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 タンザニア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,タンザニア
2022/02/04 野口 洋佑
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概要

  • タンザニアLNGは3つの深海鉱区が抱えている推定埋蔵量35Tcfのガスを、南部Lindi港付近の年産1,000万トンの液化プラントで液化・輸出する計画のプロジェクトである。
  • 参加するIOC(Equinor、Shell他)はタンザニア政府との間で、上流、中流、ローカルコンテンツの財政、法律、規制の枠組みを主な協議内容とするHost Government Agreement(HGA)を締結することが最終投資決定の条件としている。交渉は2019年にMagufuli前大統領の指示のもと、PS契約の見直し作業に着手したことで中断されたが、2021年11月に交渉が再開していたことが明らかとなった。副大統領在任中から外国投資の受け入れに開放的で、TLNGプロジェクトの進展に肯定的なHassan大統領の就任が、交渉再開に作用したようだ。
  • タンザニア政府は今後6カ月以内のHGA締結を目指している。しかしHGAを締結するためには財務条件をよりIOCに有利にする必要になる。その点、Hassan大統領の政治的手腕と財務条件を含むIOCとの交渉の舵取りが重要な要素になるだろう。

(各社HP、Platts Oilgram News、International Oil Daily他)

 

1. タンザニアのガス開発の概要

(1) タンザニアLNGプロジェクト

(i) 概略

タンザニアLNG(TLNG)は、Equinorが操業するBlock 2(推定埋蔵量:約20Tcf)とShellが操業するBlock 1、4(推定埋蔵量:計約16Tcf)の、発見済みガス田が存在する3つの深海鉱区から生産される推定埋蔵量合計約35Tcfのガスを、南部Lindi港付近に建設予定の年産1,000万トンの液化プラントで液化し、主に国外に輸出する計画のプロジェクトである。プロジェクトの総事業費は300億ドルに達する可能性がある。IOCはこのプラントの最終投資決定(FID)は、国とIOCsの間で上流、中流、ローカルコンテンツの財政、法律、規制の枠組みを主な協議内容とするHost Government Agreement(HGA)を締結することが条件としている。

表 1:各鉱区の権益比率
鉱区 オペレーター パートナー
Block 1 Shell(60%) Medco(20%)、Pavilion(20%)
Block 2 Equinor(65%) ExxonMobil(35%)
Block 4 Shell(60%) Medco(20%)、Pavilion(20%)

(各種資料より筆者作成)

 

当該プロジェクトはタンザニアにとって極めて重要だ。まずTLNGプロジェクトにより、多くの雇用機会が創出されることが期待できる。また、生産された天然ガスの最大10%が国内供給義務DSO(Domestic Supply Obligation)により国内市場向けに供給される見通しである。これにより、タンザニアのガスによる発電量を2倍にし、さらなる産業発展に寄与することが期待される。また、生産された天然ガスの多くはタンザニア南部のLindi州の北部に建設予定である年間750万トンの処理能力を持つ陸上LNG施設に輸送され、欧州・南米加え、インド洋に面し、アジア市場にも輸出される可能性がある。同国石油上流規制庁(PURA)のCharles Sangweni長官代理も本プロジェクトの早期実現と国際市場への参入に期待している。

 

(ii) 経緯

2004年以降、Ophir Energi(現Medco Energi)とStatoil(現Equinor)が深海部の4鉱区(Block 1~4)を獲得した。2010年以降、BGがBlock 1、3、4にファームインして以降、Block 3以外では複数のガス田が主にStatoilおよびBG(2016年2月Shellにより買収)によって発見されている。

Statoilは2007年4月18日にタンザニア石油開発公社とBlock 2のPS契約を締結したことで、タンザニアに進出を果たした。その後、2014年にはStatoilとBGなど、Block 1とBlock 4の事業者が、同国での陸上LNG液化プラントに関する協力のためのHoA(Head of Agreement)を締結した。ただ、同年にBGはさらなる探鉱に値しないとし、Block 3からは撤退している。一方、Block 1とBlock 4では、広範な探鉱活動を行った結果、液化プラントをサポートするのに十分な深海ガスが発見された。その後、Block 1とBlock 4で計18本の井戸が掘削され、計約16Tcfの天然ガスが発見され、20億ドル以上の投資が行われた。

タンザニアの石油・ガス開発ではPS契約の枠組みが取り入れられているが、同国では2013年から既存のPS契約の枠組みや経済性につき、見直し作業に着手した。この影響を受けて、HGAの交渉は2016年からは中止と再開を繰り返していたが、2019年に一旦中断することとなった。その後、当該見直しの報告書が2020年4月にMajaliwa Kassim Majaliwa首相に渡され、その後、2020年9月にタンザニア石油開発公社(TPDC)もHGA交渉再開への準備ができていると発表した。

また、2020年10月下旬に、EquinorはBlock 2のライセンスを42カ月延長することにつきこれが認可されたと報告したが、2021年1月29日、EquinorはTLNGプロジェクトについて、プロジェクトの推定損益分岐価格がEquinorのポートフォリオ平均損益分岐価格である40ドル/bblを大幅に上回っていたため9億8,200億ドルの減損処理を行うと発表。これは、2021年2月10日に発表される2020年第4四半期決算において、E&P International部門に反映された。しかし、「TLNGの商業的、財政的、法的枠組みが実現可能となるよう、タンザニア政府との交渉を続けていく」と述べたことや、2021年初頭にはShellとEquinorがLindi港付近の液化プラント建設に関するMOUを取り交わし、現在のLNGの市場価格では43億ドルの収益を得ることができると発言するなど、TLNGプロジェクトについて前向きな姿勢を見せている。

2021年4月に、ShellとEquinorはタンザニア政府に対し、同国が計画しているLNG輸出施設に関する協議の締結に向けて直ちに行動を起こすよう促し、開発の期限は近づいていると警告していた。

 

2. HGA交渉の再開

以上の状況から一転して、2021年11月8日にMakambaエネルギー大臣は自身のTwitterでTLNGプロジェクトの交渉再開について公表した。同日の交渉にはShell、Equinor、ExxonMobil、シンガポールのPavilion Energy、インドネシアのMedco Energiの代表が全員出席し、政府は今後6カ月以内にHGAを締結することを目指すと報道されている。また、同ツイートの中でMakambaエネルギー大臣は「この2カ月間水面下で懸命に働いてきた」と述べており、交渉が少なくとも2か月は行われていることを示唆している。 実際、Makambaエネルギー大臣は2021年10月21日に、EquinorのPaul McCafferty上級副社長(探鉱・生産国際部)と会談を行っている。同会談にはPaul McCafferty上級副社長のほかにもタンザニア石油開発公社の高官も出席した。加えて、2021年10月25日にはPURAが、TLNGプロジェクトの主要パートナー(国営TPDCを含む)であるShellおよびEquinorのトップと会談し、政府とプロジェクトパートナーとの間のHGA交渉の再開に先立って、LNGプロジェクトを実施するための最善の方法につき議論を行ったと報道されている。

国営TPDCのFedister Agreyプロジェクトマネージャーは11月6日、「政府は交渉に必要なすべての準備を行っており、TLNGプロジェクトにおける国営TPDCの権益を確保するつもりだ」と述べた。Equinorは、「当該HGA交渉がもし成功すれば、2030年までにLNG生産を開始できると考えている。」と述べた。

以上のようにTLNGプロジェクトについて水面下で多くの動きがあり、交渉再開に漕ぎつけることができた。

 

3. タンザニアLNGプロジェクトの今後の展望

ボラティリティの高いガス市場に加え、2015年制定の石油法、2016年制定の財政法、Magfuli前大統領が唱えた2017年天然資源法によって導入された厳しい税および契約条件等によって経済性と将来見通しがさらに困難な状況が続いていた時期もあったため、今回HGA交渉再開に漕ぎつけることができたのは非常に大きな進展だといえる。

TLNGプロジェクトの交渉再開は2021年3月にSamia Suluhu Hassan大統領が就任したことに大きく影響を受けたと言える。Hassan大統領はMagfuli前大統領に比べ外国投資の受け入れについて開放的であり、2015年の副大統領在任中からTLNGプロジェクトへの関心を示し、当プロジェクトの進展には非常に肯定的であった。2021年4月にはShellとEquinorはHGA交渉の再開を要請、Hassan大統領も交渉を加速するよう同国エネルギー省とオペレーターを務めるIOCに対して指示した。加えて、EquinorとShellとの間で開発契約が成立しない場合には、新たな投資家を探すようエネルギー省に指示している。

Equinorは、契約条件の尊重(Contract Sanctity)と安定性が「LNG開発の成功に必要な要素」であると繰り返し述べている。このプラントの最終投資決定(FID)は、国とIOCの間でHGAが締結されることが条件となっているが、HGAの締結については「Hassan大統領の政治的手腕」と「国とIOC側の主に財務条件を巡る妥協」が進展を左右するだろう。Hassan大統領がLNG開発を加速させたいと考えていることは、同国の広範な探鉱・生産活動にとってポジティブな要素であり、本プロジェクトの進展を含め、炭化水素セクターが活性化される可能性が高い。

ただし、政府とIOCはHGAの条件が合意されたとしても、LNG販売に目星がついたわけではない。TLNGは2020年代の終わりまでLNG市場の見通しの不確実性が高い中、今後買い手と資金調達に苦戦する可能性もあることから、HGA協議を迅速に妥結させなければならないが、タンザニアに残る「資源ナショナリズム」により与党タンザニア革命党(CCM)内にも世間一般にも参入企業側にとって厳しい契約条件を求める声が上がっており、Hassan大統領は相反する意見のバランスを取りながら双方を納得させる決定を促す政治的手腕が必要となる。また、Hassan大統領は未だ自身の所属与党CCMから完全な支援を得られておらず、党内に内紛の種も抱えていることから、慎重に舵を取る必要があるだろう。2021年3月の政権発足以来、タンザニアのHassan大統領は、Magufuli前大統領派を人事改革等により、その影響力を抑制しており、これにより今後CCMの覇権を握れるかも同プロジェクトの進展を左右するだろう。

Equinorはすでにプロジェクトの減損をしてはいるものの、経済条件をできるだけ有利なものとするよう働きかけるであろうが、もしも経済性向上が見られない場合には、撤退する可能性を否定できない。加えて、Hassan大統領の発言によると、HGAの交渉が進展しない場合、政府はIOCとの間で鉱区放棄の合意に達し、他の参入企業を探す可能性がある。しかし、カタールの拡張や米国、ロシアなどのLNGプロジェクトが複数立ち上がり、国際的なエネルギートランジションの潮流の中で、まだFIDしていないプロジェクトを適正な価格で買ってくれる買い手や資金調達先を見つけることは容易ではない。また深海ガスの開発の能力を持つオペレーターも限定的になってくる。そうなると、同国のLNG開発は日の目を見なくなってしまう。交渉が進展しない場合、TLNGプロジェクトをFLNG化する解決案もあるが、国内の雇用などのメリットが少ないことでタンザニア政府が反対する可能性が高いことから実現は難しい見通しであり、HGAの締結が急務となる。以上の環境下でEquinorが今まで述べてきた財務条件や契約の尊厳(Contract Sanctity)についてタンザニア政府とIOCの双方が許容できるレベルの財務条件で合意することができるかどうかが、TLNGプロジェクト進展のカギを握るだろう。

 

以上

(この報告は2022年2月4日時点のものです)

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