ページ番号1009269 更新日 令和4年2月14日

原油市場他: ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりの、エネルギー供給への影響に対する懸念から上昇する原油価格

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レポートID 1009269
作成日 2022-02-14 00:00:00 +0900
更新日 2022-02-14 14:56:55 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 50
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
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地域5
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地域6
国6
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国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2022/02/14 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、製油所での留出油生産は活発化していたものの、北東部等で気温が低下したことにより旺盛になった留出油需要を賄いきれなかったことにより、当該製品在庫は減少傾向となり、平年並みの量となっている。また、製油所での原油精製処理活動が底堅かったこともあり原油在庫は減少したが、平年幅上限を超過する状態は継続している。他方、年末年始の個人の往来が沈静化したこと等もあり、ガソリン需要が製油所のガソリン生産に追い付かなかったと見られることにより、当該製品在庫は増加傾向となり、平年幅上限を超過し続けている。
  2. 2022年1月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国では減少となった他、日本でも冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期到来もあり製油所が精製活動を活発化させた結果原油在庫は減少した。他方、欧州では製油所の稼働が低下することと併せ原油調達が抑制されたと見られることもあり、原油在庫は微増となった。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している。石油製品については、欧州では、年末年始の休暇シーズンが終了したことにより個人の外出が沈静化したことに伴いガソリンや軽油の需要が落ち着いたと見られることもあり、石油製品在庫は増加した。しかしながら、米国では、冬場の気温低下もありプロパン及び暖房油の需要が増加するとともに当該製品在庫が減少したこと等により、同国の石油製品全体の在庫は減少した。また、日本でも、冬場の暖房向けの灯油需要が喚起されたこともあり、当該製品在庫が減少したことが影響し、石油製品全体の在庫は減少した。結果として、OECD諸国全体の石油製品在庫は減少となり、平年幅下限付近に位置する量となっている。
  3. 2022年1月中旬から2月中旬にかけての原油市場では、ロシアによるウクライナ侵攻実施と西側諸国等による対ロシア制裁発動、そして報復措置としてのロシアからの石油・天然ガス供給削減の可能性に対する不安感の増大、一部OPECプラス産油国が減産措置縮小方針により定められた事実上の増産枠を充足できないとの市場の観測の発生、米国南部への寒波の来襲と同地域の石油生産面での支障発生の可能性に対する懸念の増大、国際エネルギー機関(IEA)による世界石油需要の上方修正、及び米国大手金融機関による2022年等の原油価格見通しの引き上げ等が、原油相場に上方圧力を加えた結果、1月14日には1バレル当たり83.82ドルの終値であった原油価格(WTI)は上昇傾向となり、2月11日には同93.10ドルと、2014年9月29日以来の高水準に到達した。
  4. 今後は、春場の石油不需要期や米国金融当局等による金利引き上げ等の要因が原油相場の上昇を抑制する方向で作用しやすいものの、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立激化のエネルギー供給への影響への懸念、新型コロナウイルスオミクロン変異株感染の石油需要への影響が軽微であることによる当該需要回復期待、OPECプラス産油国の慎重な減産措置縮小推進と、一部OPECプラス産油国の増産のもたつき懸念等による、石油需給引き締まり観測等から、これらの面で原油相場が下支えされやすい状況になるものと考えられる。

(IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が従来の方針に基づき2022年2月についても前月比で日量40万バレル減産措置を縮小する旨決定

(1) 協議内容等

2022年2月2日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国はビデオ会議形式で閣僚級会合を開催し、2021年7月18日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合で決定した、同年8月以降毎月前月比で日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置(2月時点で日量296万バレル)に関し、従来方針に基づき2022年3月についても日量40万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

また、これまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国が2022年6月末までに減産目標未達成部分につき追加減産を実施(することにより減産目標を達成)することを含め、減産目標の完全遵守に固執することが極めて重要である旨再確認した。さらに、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合を3月2日に開催する旨当該会合で決定した。なお、今回の閣僚級会合は2月2日午後2時頃(オーストリア ウイーン時間)に開始され、16分間という短時間で終了したと同日サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が明らかにした他、閣僚級会合後の記者会見は開催されなかった。

ただ、別途ロシアのノバク副首相は、世界石油需要は回復しつつあるものの、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染拡大を含め、不透明感は残存する旨指摘している。また、OPECプラス産油国関係者は、原油価格の高騰は、消費国が脱炭素社会を目指すことに伴い、化石燃料投資を確保できていないことによるものである旨明らかにしたと、2月2日のOPECプラス産油国閣僚級会合開催前に伝えられる。

 

(2) 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

2022年1月4日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合では、2021年7月18日に開催された当該閣僚級会合で決定した方針に則り、2月のOPECプラス産油国減産措置の規模を前月比で日量40万バレル縮小する旨決定した。

この決定の背景としては、2022年の世界石油需給バランスは供給不足にはならないものの、当初見込みよりは相当程度供給過剰の幅が小さくなりそうだとの認識をOPECプラス産油国が持った一方、全米平均ガソリン小売価格が高水準を維持するとともに同国の消費者及び生産者物価の上昇が継続したこともあり、経済政策に苦慮する米国との関係にOPECプラス産油国が配慮したと見られることが挙げられる。

ただ、世界石油需給が供給過剰となることが予想される中前回のOPECプラス産油国閣僚級会合において前月比日量40万バレルの減産措置の縮小(つまり増産)を決定したにもかかわらず、同閣僚級会合開催直前の1月3日に1バレル当たり76.08ドルの終値であった原油価格(WTI)は今次閣僚級会合開催直前の2月1日には同88.20ドルの終値となるなど、上昇傾向となったうえ、2月1日の原油価格の終値は2014年10月7日(この時は同88.85ドル)以来の高水準に到達する状態であった(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

この期間の原油価格上昇要因としては、まず、新型コロナウイルスオミクロン変異株感染者の入院確率及び重症化確率が当初懸念されたほど深刻ではなかったことにより、石油需要への影響が軽微であり、従って、今後も概ね順調に世界石油需要が回復するとともに石油需給が引き締まる方向に向かうとの見方が市場で広がったことが挙げられる。また、世界石油在庫が減少傾向となっているとの観測が市場で広がったことでも、原油価格は上昇した(図2参照)。

図2 OECD諸国石油在庫(2016~22年)

加えて、ウクライナとロシア国境付近のロシア側でロシアが軍備を増強しつつあり、ロシアのウクライナへの侵攻(2014年以降、ウクライナ東部の親ロシア派勢力住民居住地域を巡り両国は対立関係にあった)とウクライナ政府を支援する西側諸国等による大規模対ロシア制裁の発動、そしてそれに対する報復措置としてのロシアから欧州方面への石油及び天然ガス等の供給削減による、世界石油需給引き締まり(ロシアによる天然ガス供給削減は、発電部門及び民生部門での発電用及び暖房用燃料の、天然ガスから石油への転換を促進することから、石油需要を押し上げる形で作用する)の可能性への懸念が市場で増大したことも、原油相場に上方圧力を加えた。

また、カザフスタンで行われていた、国内燃料価格高騰に対する抗議活動が1月5日に暴動に発展した影響で、同国の主力油田の一つであるテンギス油田(原油生産量日量70万バレル程度とされる)が減産した旨、そして、米国北部及びカナダに寒波が来襲し気温が大幅に低下したことにより、カナダ産原油を米国に輸送するキーストーン(Keystone)パイプライン(カナダ アルバータ州ハーディスティ(Hardisty)~米国オクラホマ州クッシング他、原油輸送能力日量60万バレル)が操業を停止した他、米国ノースダコタ州バッケン地域及びカナダ アルバータ州の原油生産関連施設の操業に影響が発生し始めた旨、それぞれ1月6日に報じられたことにより、それら地域からの石油供給減少に伴う石油需給引き締まりの可能性に対する不安感が市場で拡大したことでも、原油価格は上振れした。

さらに、1月17日に、アラブ首長国連邦(UAE)に対し無人攻撃機が発射され、アブダビ郊外ムサファ(Musaffah)にある石油関連施設でタンクローリー3台を攻撃したことに伴い、インド人2人及びパキスタン人1人の計3人が死亡した他、アブダビ国際空港でも火災が発生、同日イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)が犯行声明を発表した一方、サウジアラビアが主導する有志連合軍が、フーシ派武装勢力が支配するイエメンの首都サヌアを1月18日に空爆した結果20人が死亡したと同日伝えられたことにより、中東情勢不安定化と当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大したことも、原油相場を押し上げた。

また、OPECプラス産油国の一部に、OPECプラス産油国閣僚級会合で決定した原油生産目標に到達しない水準でしか原油生産を実施できない産油国が散見される(後述)ことも、今後のOPECプラス産油国の増産ペースに対し疑問視する見方を市場で増大させた結果、原油相場が浮揚する場面も見られた。

そして、以下のように、原油価格がこの先上昇する可能性があることを示唆する見解を複数の米国大手金融機関等が明らかにしたことも、原油相場にとって支援材料となった。

  1. 新型コロナウイルスオミクロン変異株の石油需要へ与える影響はデルタ変異株に比べると軽微であることから、世界石油需給は大幅に供給不足となっており、2022年第二四半期においても世界石油需給バランスは日量40万バレルの供給過剰にとどまること等から、2022年第三及び第四四半期のブレント原油価格予想をそれまでから1バレル当たり20ドル引き上げ同100ドルとする旨米国大手金融機関ゴールドマン・サックスが明らかにしたと1月17日に報じられる。
  2. 1月21日に米国大手金融機関バンク・オブ・アメリカが、余剰原油生産能力の減少、低水準の石油在庫、ウクライナを巡り発生している地政学的リスク要因等を理由として、2022年半ばまでにブレント原油価格は1バレル当たり120ドルに到達する可能性がある旨の予測を明らかにした。
  3. 1月21日に米国大手金融機関モルガン・スタンレーが、2021年を通じ減少した石油在庫は2022年末にかけさらに減少する一方、余剰原油生産能力が減少するとして、2022年7~9月までにはブレント原油価格が1バレル当たり100ドルに到達する旨の予測を発表した。

他方、1月3日時点では1ガロン当たり3.381ドルであった全米平均ガソリン小売価格は、原油価格が上昇したこともあり、1月31日時点では同3.464ドルとなるなど、米国の消費者の不満が高まり始める同3ドルを相当程度超過し続けるどころか、ガソリン需要期でないにもかかわらず上昇傾向となるなどした(図3参照)他、1月12日に米国労働省から発表された12月の同国消費者物価指数(CPI)が前年同月比で7.0%の上昇と1982年6月(この時は同7.1%の上昇)以来の高水準に到達した他、1月13日に同省から発表された12月の同国生産者物価指数(PPI)が前年同月比で9.7%の上昇と、2010年以降の同国月間生産者物価指数統計史上最高水準に到達した(図4参照)。

図3 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

図4 米国消費者物価指数(CPI)及び生産者物価指数(PPI)(2019~22年)

このようなことが一因となり、足元の米国バイデン大統領の支持率は2021年1月20日の就任時以来の最低水準に到達していることもあり、バイデン政権は原油価格等の監視を継続するとともに必要に応じてOPECプラス産油国と協議を継続する旨、バイデン政権の国家安全保障会議のホーン(Horne)報道官が発言したと1月18日に報じられるなどしており、米国バイデン政権からサウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国に対し原油価格抑制のための減産措置縮小加速に対する働きかけが強化されつつあることが示唆された。

しかしながら、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、2022年の世界石油需給バランスは供給過剰になると予想される中、現在の原油価格の上昇はそのような石油需給バランスを反映しているわけではなく、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの、もしくはイエメンとサウジアラビアやUAEとの、それぞれ対立の高まりによる、ロシアもしくは中東から石油供給途絶の可能性に対する懸念を織り込んだものであり、そのような懸念が後退すれば、石油需給緩和感が急速に市場で醸成されるとともに、原油価格に大きな下方圧力が加わる恐れがあると認識している旨示唆した。

2月1日にOPECプラス産油国が開催した合同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)では、2022年の世界石油需給バランス見通しを日量130万バレルの供給過剰と、従来の日量140万バレルの供給過剰から過剰幅が縮小する方向で修正したと同日伝えられる(OPECプラス産油国は2022年の世界石油需要が日量420万バレル増加すると見ているが、これは従来の見通しから変更されていないとされる)ものの、依然として2022年は供給過剰となると見られることには変わりはなかった。

このため、本来であれば、OPECプラス産油国としては、この先の市場での石油供給過剰感を抑制すべく、むしろ減産措置の縮小を停止することも視野に入りうる状況のところ、一方で、ガソリン小売価格を含む物価の上昇等により経済政策に苦慮する米国との関係維持に配慮する必要性も感じたことにより、従来方針通り前月比日量40万バレルの減産措置の縮小を決定したものと考えられる。

 

(3) OPECプラス産油国閣僚級会合開催当日の原油価格の動き等

今回の閣僚級会合の結果について、原油価格上昇抑制のための減産措置縮小加速に対しOPECプラス産油国が後ろ向きの姿勢を示したと市場関係者が受け取ったことにより、会合開催当日の原油相場には上方圧力が加わる格好となった。

また、1月28~31日にブレント原油価格が終値ベースで1バレル当たり90ドルを超過したこともあり、石油輸入国からの圧力に直面したOPECプラス産油国は3月につき前月比で日量40万バレルを超過する減産措置縮小を決定するかもしれない旨の見解を米国大手金融機関ゴールドマン・サックスが示したと2月1日に報じられたものの、実際にはOPECプラス産油国は3月の減産措置につき従来の方針に則り前月比で日量40万バレルの減産措置縮小を決定したことも、市場の事前予想ほどOPECプラス産油国は石油需給を緩和させる決定を行わなかったとして、かえって相対的な石油需給引き締まり感を市場に意識させる格好となった。

このようなこともあり、当該閣僚級会合開催当日の2月2日の原油価格は一時1バレル当たり89.72ドル(前日終値比1バレル当たり1.57ドル上昇)に到達する場面が見られた。

ただ、その後、これまでの原油価格上昇(原油価格は1月28日以降3営業日連続終値ベースで上昇しており、上昇幅は合計で1バレル当たり1.59ドルとなっていた)に対する利益確定の動きが発生したこともあり、原油価格は一時1バレル当たり86.55ドル(前日終値比1バレル当たり1.60ドル下落)にまで下落する場面も見られた。

それでも、2月2日に米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された米国石油統計(1月28日に週分)で、原油在庫が前週比で105万バレ、留出油在庫が同241万バレルの、それぞれ減少と、市場の事前予想(原油在庫同150万バレル程度の増加、留出油在庫同150万バレル程度の減少)に反し、もしくは事前予想を上回って減少している旨判明したことが、原油価格を押し上げる格好となった。

また、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりに備え、米国政府が3,000人程度の軍事関係者の東欧配備する旨決定したと2月2日に報じられたことも、欧州等へのエネルギー供給への影響に対する市場の懸念を増大させたことで、原油価格は上振れした。

さらに、2月1日夕方(米国東部時間)に発表された米国情報技術(IT)大手アルファベット(グーグル)の2021年10~12月業績が市場の事前予想を上回ったこともあり、米国株式相場が上昇したことも、原油価格を下支えした。

そして、2月2日に米国企業向け給与計算サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)から発表された2022年1月の同国民間雇用者数が前月比で30.1万人の減少と市場の事前予想(同18.0~20.7万人の増加)に反し減少している旨判明したこともあり、米ドルが下落したことも、原油価格にとって支援材料となった。

このようなことから、2月2日の原油価格の終値は1バレル当たり88.26ドルと、前日終値比1バレル当たり0.06ドルの上昇となった他、原油価格は1月28日から2月2日にかけ4営業日連続終値ベースで上昇、上昇幅は合計で1バレル当たり1.65ドルとなった。

 

2. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2021年11月の米国ガソリン需要(確定値)は日量899万バレル、前年同月比で12.4%程度の増加と2021年10月の同7.6%程度の増加から増加率が拡大した(図5参照)が、速報値(前年同月比で13.9%程度増加の日量912万バレル)からは下方修正された。11月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量79万バレル程度と推定されたところ、確定値では同93万バレルへと上方修正されたことにより、この分が同国ガソリン需要の速報値から確定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、当該需要の下方修正の一因となったものと見られる。同国の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者数が9月7日に301,138人で頭打ちとなった後、11月にかけ感染が沈静化していったことにより同国での個人の外出が促進されたことが、同月の同国ガソリン需要に影響したものと見られる。また、2020年11月は1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が増加しつつあった(2020年11月1日には77,175人であった同国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数は同年11月30日には167,658人へと増加した)ことが、同月の同国での個人の外出とともに自動車運転距離数及びガソリン需要を抑制した(同月の自動車運転距離数は前年同月比で10.7%の減少と、10月の同8.4%の減少から減少率が拡大した他、ガソリン需要も同13.1%の減少と10月の同10.7%の減少から減少率が上昇した)反動で、2021年11月の同国のガソリン需要の前年同月比での伸び率が拡大している側面もあるものと考えられる。なお、2021年11月のガソリン需要は2019年11月の水準(日量921万バレル(確定値))を2.4%程度下回っている。他方、2022年1月の同国のガソリン需要(速報値)は日量834万バレル、前年同月比で8.8%程度の増加となっており、2021年12月の当該需要(速報値)の前年同月比15.1%程度の増加から、増加率が縮小している他、量としても12月の日量904万バレルから減少している。年末年始の休暇シーズンが終了し個人の往来が沈静化したうえ、感染者の入院及び重症化確率が高くはないとはいえ感染力の強い新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染が拡大した(2022年1月10日には同国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数は1,178,403人の史上最高水準に到達した)ことに加え、1月の気温が平年及び前年同月の水準を割り込んで冷え込んだことにより、個人の外出が敬遠されたと見られることが、同月の同国推定自動車運転距離数(1月は1日当たり81億マイルと12月の同85億マイルから相当程度減少した)及びガソリン需要を抑制したものと考えられる。なお、2022年1月の同国ガソリン需要は2020年1月の同国ガソリン需要(日量872万バレル(確定値))を4.4%程度下回っている。一方、春場のメンテナンス作業実施や2月上旬の米国南部への寒波来襲に伴い同国メキシコ湾岸地域で発生した停電等により一部の製油所が稼働を停止した*ものの、米国で暖房用に利用される留出油(軽油及び暖房油)の在庫が11月以降過去5年幅の下限を下回っていることに伴い、当該製品の需給に引き締まり感が発生していることにより、製油所での留出油生産利幅が堅調であったこともあり、米国の製油所での稼働が下支えされたことから、米国の製油所の原油精製処理量は伸び悩みながらも比較的維持された(図6参照)。このため、米国では製油所でのガソリン生産が混合基材を中心として堅調に行われたと見られる(なお、ガソリン最終製品生産量は図7参照)一方、ガソリンの需要は抑制気味で推移したこともあり、1月上旬から2月上旬にかけ同国のガソリン在庫は増加傾向となった他、平年幅上限を上回る量となっている(図8参照)。

注:米国テキサス州のガルベストン・ベイ(Galveston Bay)製油所(操業者:マラソン・ペトロリアム(Marathon Petroleum)、原油精製処理能力日量59.3万バレル)及びテキサス・シティ(Texas City)製油所(同バレロ・エナジー(Valero Energy)、同22.5万バレル)の操業が2月4日遅く(現地時間)に停止したと見られる旨2月5日に報じられる他、2月7日には同州のヒューストン製油所(操業者:バレロ・エナジー、原油精製処理能力日量26.4万バレル)が操業を停止した(原因は不明とされる)うえ、同じく同州のパサデナ(Pasadena)製油所(操業者:シェブロン、同11.12万バレル)もボイラーの不具合により操業に支障が発生したことから操業を停止したと2月7日に伝えられる。

図5 米国ガソリン需要の伸び(2006~22年)

図6 米国の原油精製処理量(2009~22年)

図7 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~22年)

図8 米国ガソリン在庫推移(2003~22年)

2021年11月の同国留出油需要(確定値)は日量417万バレルと前年同月比で7.6%程度の増加となり、10月の日量389万バレル、同3.6%程度の減少から一転前年同月比で増加に転じたが、速報値である日量419万バレル(同8.0%程度の増加)からは下方修正された(図9参照)。11月の同国からの留出油輸出量が速報値段階では日量94万バレル程度と推定されたところ、確定値では同114万バレルへと上方修正されたことにより、この分が同国留出油需要の速報値から確定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、当該需要の下方修正の一因となったものと見られる。2021年11月の米国鉱工業生産が前年同月比で5.0%の増加と、10月の同4.8%の増加から伸びが加速した他、2021年11月の物流活動が前年同月比で2.9%の増加と10月の同2.0%の増加から伸びが拡大するなどしたことが、2021年11月の同国の軽油需要に寄与しているものと考えられる。また、2021年11月は前年同月に比べ米国北東部が冷え込んだことも、暖房用留出油需要を押し上げる形で作用したものと見られる。なお、2021年11月の米国留出油需要は2019年11月の当該需要(日量420万バレル(確定値))を0.6%程度下回っている。他方、2022年1月の留出油需要(速報値)は日量444万バレルと前年同月比で12.8%程度の増加となったうえ、2021年12月の当該需要(速報値)の前年同月比4.9%程度の増加から増加率が拡大している。半導体不足から自動車生産が抑制されたことが一因となり1月の同国鉱工業生産は前年同月比で推定3.6%の増加と12月の同3.7%の増加とほぼ同水準にとどまった(因みに11月は同5.0%の伸びであった)ことに加え、オミクロン変異株等による新型コロナウイルス感染者数拡大に伴う労働者の欠勤が物流部門に負の影響を与えたと思われることが、同国の軽油需要を抑制した側面があると見られるものの、2022年1月は米国北東部の気温が平年及び前年同月の水準をしばしば割り込むほどに冷え込んだことにより、当該地域における暖房油需要が喚起されたことが、留出油需要の伸びを拡大させる格好となったものと考えられる。なお、2022年1月の米国留出油需要は2020年同月の当該需要(日量402万バレル(確定値))を10.3%程度上回っている。そしてこのように留出油需要は堅調に推移した一方、春場のメンテナンス作業実施や米国南部での寒波来襲等に伴う操業上の支障等により、製油所の稼働がもたついた(それでも堅調な留出油需要により製油所での軽油生産のための利幅が確保されたこともあり製油所の操業は比較的底堅かった)ことが影響し、製油所等での留出油生産も伸び悩み気味となった(図10参照)こともあり、1月上旬から2月上旬にかけ留出油在庫水準は低下傾向となったが、同在庫は概ね平年並みの量となっている(図11参照)。

図9 米国留出油需要の伸び(2006~22年)

図10 米国の留出油生産量(2009~22年)

図11 米国留出油在庫推移(2003~22年)

2021年11月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で9.9%程度増加の日量2,060万バレルとなり、同年10月の同1,989万バレル(前年同月比6.9%程度の増加)から需要量が増加した他前年同月比での需要増加率も拡大した(図12参照)。個人の外出が促進されたうえ、鉱工業及び物流活動が活発化、また、気温が低下したことにより暖房用需要が刺激されたこともあり、ガソリン、ジェット燃料、軽油及び重油等幅広い石油製品で需要が堅調であったことが、同国石油需要の伸びに影響しているもの考えられる。ただ、ガソリン及び留出油等の需要が速報値から確定値に移行する段階で下方修正されたこともあり、米国石油需要は速報値(前年同月比で10.5%程度増加の日量2,072万バレル)から下方修正されている。そして、2021年11月の米国石油需要は、2019年11月の当該需要(日量2,074万バレル(確定値))を0.7%程度下回っている。他方、2022年1月の米国石油需要(速報値)は日量2,170万バレルと前年同月比で16.7%程度の増加となり、2021年12月の当該需要(速報値)である日量2,127万バレル(前年同月比13.1%程度の増加)から需要量及び前年同月比の増加率が拡大している。同月は米国北東部等の気温が大幅に低下したこともあり、暖房向けのプロパン/プロピレンの需要が前年同月比で32.2%程度の増加と旺盛であったことに加え、新型コロナウイルス感染が流行していた2021年1月(1月8日の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数は300,777人と当時としては史上最高水準に到達していた)は航空機利用旅客が落ち込んだことにより同国のジェット燃料需要が抑制された反動で2022年1月は米国ジェット燃料需要が相当程度(前年同月比で28.5%程度)増加したこと等が、2022年1月の米国石油需要を押し上げる格好となっている。ただ、同月のその他石油製品需要は日量508万バレルと2020年12月~2021年11月の当該需要(確定値)である同308~462万バレルと比較しても明らかに高水準であることから、今後速報値から確定値に移行する段階で当該需要が下方修正される結果、同国の石油需要(確定値)が調整されることもありうる。なお、2022年1月の米国石油需要は、2020年1月の当該需要(日量1,993万バレル(確定値))を8.9%程度上回っている。また、米国国内原油生産は概ね日量1,150~1,170万バレルの比較的限られた範囲内で変動した一方、米国のテキサス州やルイジアナ州では年末の石油在庫評価額に対し固定資産税等が課税されることから、課税額を低減させるため精製業者等は2021年末に向け必要以上の陸上原油在庫保有を敬遠するとされていた(特に原油価格が高水準の場合には課税対象額が増大しやすいこともあり、年末に向けた課税対策実施により原油在庫が減少しやくなるように見受けられる)が、年末を過ぎたことにより、年末の課税対策を実施する必要がなくなったこともあり、米国への原油輸入が増加傾向になるとともに、同国からの原油輸出も抑制気味に推移した。ただ、留出油需要が旺盛だったこともあり、春場のメンテナンス作業実施や寒波による装置の不具合発生にもかかわらず製油所での原油精製処理活動が概ね維持されたことにより、1月上旬から2月上旬にかけての米国原油在庫は減少傾向となったが、平年幅上限を上回る状態は続いている(図13参照)。そして、留出油在庫が平年並みの量となっているものの、原油在庫及びガソリン在庫が平年幅上限を超過する量となっていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図14及び15参照)。

図12 米国石油需要の伸び(2006~22年)

図13 米国原油在庫推移(2003~22年)

図14 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~22年)

図15 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~22年)

2022年1月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国では減少となった他、日本でも冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期到来もあり製油所が精製活動を活発化させた結果原油在庫は減少した。他方、欧州では燃料等に利用する天然ガスの価格が高騰したことに伴う石油製品製造の採算性悪化により製油所の稼働が低下することと併せ原油調達が抑制されたと見られることもあり、原油在庫は微増となった。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、平年幅上限を超過する状態は継続している(図16参照)。石油製品については、欧州では、製油所での石油製品生産活動は相対的に不活発となったものの、年末年始の休暇シーズンが終了したこともあり個人の外出が沈静化したことに伴いガソリンや軽油の需要が落ち着いたと見られることで相殺されて余りあったことから、石油製品在庫は増加した。しかしながら、米国では、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用燃料需要期に突入するとともに気温が平年を下回って低下する地域が散見されたこともあり、プロパン及び暖房油の需要が増加したことにより、これら製品在庫が減少したことに加え、冬用ガソリンに混入するブタンの需要が増加していると見られることによりブタンを含むその他の石油製品の在庫が減少したことから、同国の石油製品全体の在庫も減少した。また、日本では、一部地域で気温が平年を下回って冷え込んだことにより、暖房向けの灯油需要が喚起されたこともあり、当該製品在庫が減少したことが影響し、石油製品全体の在庫も減少した。結果として、OECD諸国全体の石油製品在庫は減少となり、平年幅下限付近に位置する量となっている(図17参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を上回る量である一方、石油製品在庫が平年幅下限付近に位置する量となったことから、原油と石油製品を合計した在庫は平年並みの量となっている(図18参照)。なお、2022年1月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は57.8日と2021年12月末の推定在庫日数(58.8日)から減少している。

図16 OECD諸国原油在庫推移(2005~22年)

図17 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~22年)

図18 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~22年)

1月12日に1,300万バレル台後半程度の水準であったシンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫は、1月19日には1,300万バレル台半ば程度の量へと若干減少した。しかしながら、1月26日には1,400万バレル台弱、2月2日には1,500万バレル台後半程度の量へと、それぞれ増加した。2月9日は1,400万バレル台前半程度の水準へと低下しているが、1月12日の量は上回っている。中国政府が、2022年第一回の石油製品輸出枠を中国企業に対し付与したと1月4日に伝えられたが、ガソリン等の石油製品輸出枠(低硫黄重要を除く)が前年第一回の輸出枠に比べ大幅に縮小している(内訳はガソリン、ジェット燃料及び軽油が合計で1,300万トン、低硫黄重油が650万トンとなっており、ガソリン、ジェット燃料及び軽油輸出枠は2021年第一回の石油製品輸出枠(2,950万トン)の44%程度にとどまった一方、低硫黄重油輸出枠は前年第一回の輸出枠(500万トン)の1.3倍となった)こともあり、中国からのシンガポール向けガソリン輸出が不安定であったことが影響し、シンガポールの中国を含めた国外全体からのガソリン輸入も概してもたつき気味となった。しかしながら、年末年始に活発化した往来が当該時期を過ぎるとともに沈静化した他、新型コロナウイルスオミクロン変異株の感染拡大に伴い東南アジア諸国や豪州での個人の往来が低迷したことがこれら諸国でのガソリン需要に影響したと見られることにより、シンガポールからこれら諸国へのガソリン輸出が伸び悩んだことで相殺されて余りあったことが、シンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫の増加に反映されているものと考えられる。それでも、世界的には新型コロナウイルスオミクロン変異株は、感染力は強いものの感染者の入院及び重症化確率は高くないと報告されていることもあり、ガソリンを含めた石油製品需要への影響が軽微にとどまるうえ、いずれ当該変異株感染が収束するとともに、世界的に個人の外出が活発化することに伴いガソリン需要が増加するとの期待が市場で強いこと、世界各国及び地域で春場のメンテナンス作業実施が視野に入るとともに製油所の稼働が低下、石油製品製造活動が不活発化する結果石油製品需給が相対的に引き締まるとの見方が発生していること、そしてベトナムのニソン(Nghi Son)製油所(原油精製処理能力日量20万バレル)が原油調達のための資金手当につき株主間で意見が一致しなかったことにより80%の減産となった旨1月25日に伝えられたことに伴い、同国の国外供給者からのガソリン調達活発化観測が強まったことが、アジア市場でのガソリン価格を押し上げる格好となった結果、1月中旬から2月中旬にかけてのガソリンとドバイ原油との価格差(この場合ガソリン価格がドバイ原油価格を上回っている)は概ね拡大傾向となった。

また、半導体不足が自動車を含む製品の製造に影響を及ぼしていることもあり、それら製品に使用されるプラスチック需要がもたつき気味となっていることに伴い、ナフサからプラスチック製品を製造する利幅が縮小している日本、韓国及び台湾等アジア地域の一部のナフサ分解装置の稼働が低下していることに加え、2022年1月末頃以降メンテナンス作業実施によりアジア地域における一部ナフサ分解装置が稼働を停止することから、原料となるナフサの需要が低下するとの観測が市場で発生したことがナフサ価格を抑制した。この結果、1月中旬から2月中旬にかけてのナフサとドバイ原油の価格差(従来ナフサ価格がドバイ原油価格を上回っていた)は、12月下旬から1月中旬にかけての当該価格差から縮小したうえ、ドバイ原油価格の上昇にナフサ価格の上昇が追い付かなかったことにより、ナフサ価格がドバイ原油価格を下回る場面も見られた。

1月12日には700万バレル台前半の水準であったシンガポールの中間留分在庫は、1月19日には800万バレル台半ば程度の量へと増加した。1月26日も800万バレル台半ば程度の量を維持したものの、2月2日には800万バレル台前半程度、2月9日は700万バレル台半ば程度の、それぞれ水準へと低下した。この結果、2月9日のシンガポールの中間留分在庫は1月12日の量を若干上回るにとどまる状態となっている。天然ガス価格が高水準で推移していることもあり、欧州で天然ガスを燃料等に利用している一部製油所が採算性の悪化を理由として稼働を引き下げている他、米国の暖房油(軽油)需要消費の中心地域である北東部等への寒波の来襲と気温の低下に伴い暖房油需要が増加した一方、1月25日に台湾プラスチック工業(台湾塑膠工業:Formosa Petrochemical)の麦寮(Mailiao)製油所(原油精製処理能力日量54万バレル)の重質油分解装置(処理能力日量3.6万バレル)で火災が発生したことに伴い、1月27日には同製油所の常圧蒸留装置1号機(原油精製処理量日量18万バレル)が操業を停止した他、韓国の現代オイルバンクの製油所でも不具合が発生したと1月27日に伝えられるなど、アジア地域では製油所の操業上の支障から中間留分の製造が影響を受けているものの、一連の中間留分需給引き締め要因により、かえって軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)が拡大したことから、アジア地域で操業している他の製油所での稼働が上昇、中間留分の製造が活発化したと見られることが、当該地域での中間留分供給増加に寄与した結果、シンガポールでの中間留分在庫は低水準ながらも比較的限られた範囲内で変動した。ただ、欧州での製油所の稼働低迷による石油製品製造不振と米国北東部等への寒波来襲による暖房油需要の盛り上がりに加え、ベトナムの製油所での石油製品製造減少の影響による国外からの軽油調達増加観測の発生、世界各国及び地域で春場のメンテナンス作業実施が視野に入るとともに製油所の稼働が低下、石油製品製造活動が不活発化するとの見方が発生した結果、軽油需給引き締まり感が市場で強まったことが、アジア市場の軽油価格に上方圧力を加えた結果、1月中旬から2月中旬にかけ、アジア市場での軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)は概ね拡大傾向を示した

1月12日に2,200万バレル台前半程度の量であったシンガポールの重油在庫は、1月19日には2,100万バレル台前半の量へと減少した。1月26日には2,300万バレル台後半の量へと増加したものの、2月2日には、2,300万バレル強程度、2月9日には2,200万バレル台前半程度の、それぞれ水準へと低下した。この結果、2月9日のシンガポールの重油在庫は1月12日の量を下回る状態となっている。製油所では相対的に製造に伴う利幅を確保しやすい軽油の生産に重点が置かれている反面、利幅確保の観点から製造が劣後しやすい重油の供給が抑制される中、冬場の気温の上昇及び低下に伴い、空調のための発電部門向け燃料需要を賄うべく、価格が高水準となっている天然ガスと比べ相対的に価格が割安な重油への代替需要が変動したことが、シンガポールでの重油在庫水準に影響しているものと考えられる。ただ、最終消費段階としての重油消費は気温の状況によっては今暫く活発化する場面が見られる可能性はあるものの、製油所等重油製造段階では、冬場の暖房シーズンは残り少なくなりつつあるとともに、重油需要が峠と超え始めつつあるとの認識が市場で広がりつつあることから、アジア市場の重油価格に下方圧力が加わったうえ、原油価格の上昇に重油価格のそれが追い付かなかったことから、1月中旬から2月中旬にかけての低硫黄重油とドバイ原油の価格差(この場合低硫黄重油価格がドバイ原油価格を上回っている)は12月下旬から1月中旬にかけての当該価格差に比べ縮小する傾向を示した他、同時期高硫黄重油とドバイ原油の価格差(この場合高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っている)は12月下旬から1月中旬にかけての当該価格差に比べ拡大する傾向を示した。

 

3. 2022年1月中旬から2月中旬にかけての原油市場等の状況

2022年1月中旬から2月中旬にかけての原油市場では、アラブ首長国連邦(UAE)に無人攻撃機が飛来し攻撃を行った他、原油をイラクからトルコに輸送するパイプラインで爆発が発生したこと等により、中東諸国等を巡る石油供給途絶懸念が市場で増大したことに加え、ロシアによるウクライナ侵攻実施と西側諸国等による対ロシア制裁発動、そして報復措置としてのロシアからの石油・天然ガス供給削減の可能性に対する不安感の増大、一部OPECプラス産油国が減産措置縮小方針により定められた事実上の増産枠を充足できないとの市場の観測の発生、米国南部への寒波の来襲と同地域の石油生産面での支障発生の可能性に対する懸念の増大、国際エネルギー機関(IEA)による世界石油需要の上方修正、米国大手金融機関による2022年等の原油価格見通しの引き上げ等が、原油相場に上方圧力を加えた結果、1月14日には1バレル当たり83.82ドルの終値であった原油価格(WTI)は上昇傾向となり、2月11日には同93.10ドルと、2014年9月29日以来の高水準に到達した(図19参照)。

図19 原油価格の推移(2003~22年)

1月17日は、米国キング牧師誕生記念日(Martin Luther King Day)による休日に伴い、終値は計上されなかったが、この日、アラブ首長国連邦(UAE)に対し無人攻撃機が発射され、アブダビ郊外ムサファ(Musaffah)にある油槽所でタンクローリー3台を攻撃、インド人2人及びパキスタン人1人の計3人が死亡した他、アブダビ国際空港でも火災が発生、同日イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)が犯行声明を発表した一方、1月18日にサウジアラビア及びUAE等による有志連合軍がイエメンの首都サヌア(フーシ派武装勢力が支配している)を空爆した結果20人が死亡したと同日伝えられることにより、中東情勢不安定化と当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大したことに加え、2月にロシアとベラルーシが合同で軍事演習を実施する旨1月17日にベラルーシのルカシェンコ大統領が発表したことに対し、ウクライナ攻撃を意識した行為であるとの懸念を発生させるものである旨米国国務省幹部が1月18日に発言したと報じられたことにより、ウクライナ情勢を巡る不透明感とエネルギー市場への影響に対する市場の不安感が増大したこと、米国大手金融機関ゴールドマン・サックスが、新型コロナウイルスオミクロン変異株の石油需要への影響はこれまでのところ限定的であるとして、2022年夏までにOECD諸国の原油在庫は2000年以来の低水準にまで減少する他、OPECプラス産油国の余剰生産能力が日量120万バレルの水準にまで低下することもあり、2022年第三及び第四四半期のブレント原油価格予想を1バレル当たり100ドル、2023年の同原油価格予想を同105ドルに、それぞれ引き上げる旨1月18日に伝えられたことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり1.61ドル上昇し、終値は85.43ドルとなった。1月19日には、イラク北部キルクークとトルコのジェイハンを結ぶパイプライン(2021年の原油輸送量は日量45万バレル超とされる)がトルコ南東部カフラマンマラシュ(Kahramanmaras)付近で爆発が発生した(原因は送電施設の倒壊によるものであり、破壊行為によるものではない旨1月19日伝えられる)結果、同パイプラインの原油輸送が停止した旨1月19日夜半過ぎ(現地時間)に報じられた(既に火災は鎮火し1月19日に操業を部分的に再開したとトルコ国営石油輸送会社ボタシュ(Botas)が発表した他、、1月20日には操業が全面再開したと伝えられる)ことにより、中東情勢不安定化によるイラク北部産原油を含めた石油供給途絶懸念が市場で増大したことに加え、1月20日にEIAから発表される予定である米国石油統計(1月14日の週分)で原油在庫が減少している旨判明するとの観測が市場で発生したこと、1月19日に国際エネルギー機関(IEA)から発表されたオイル・マーケット・レポートで、足元の新型コロナウイルス感染拡大の石油需要への影響は抑制的なものであると見受けられるとして、IEAが2022年の世界石油需要を日量17万バレル上方修正したうえ、OPECプラス産油国の減産措置縮小に従いOPECプラス産油国の余剰生産能力が大幅に低下する旨指摘したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり86.96ドルと前日終値比で1.53ドル上昇した。この結果原油価格は1月18~19日の2日間で1バレル当たり合計3.14ドルの上昇となった。1月20日には、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことに加え、米国ガソリン小売価格沈静化に向け、困難ではあるものの、利用可能な原油の供給を拡大させるべく努力し続ける旨1月19日夕方(米国東部時間)に米国のバイデン大統領が記者会見で明らかにしたこともあり、同国石油需給引き締まり感が市場で後退したこと、1月20日にEIAから発表された米国石油統計で、原油在庫が前週比52万バレル、ガソリン在庫同587万バレルの、それぞれ増加と市場の事前予想(原油在庫同96~175万バレル程度の減少、ガソリン在庫同260万バレル程度の増加)に反し、もしくは事前予想を上回って増加している旨判明したことが、原油相場に下方圧力を加えたものの、1月20日にEIAから発表された米国石油統計で同国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で131万バレル減少している旨判明したことが、原油相場に上方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり86.90ドルと前日終値比で0.06ドル下落にとどまった(なお、この日を以てNYMEXの2022年2月渡し原油先物契約は取引を終了したが、3月渡し原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり85.55ドル(前日終値比0.25ドルの下落)であった)。1月21日には、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生した流れを引き継いだことに加え、1月20日にEIAから発表された米国石油統計で、原油及びガソリン在庫が市場の事前予想に反し、もしくは事前予想を上回って増加している旨判明した流れを引き継いだこと、1月20日夕方(米国東部時間)に発表された米国動画配信サービス大手ネットフリックスの2021年10~12月の会員純増数が同社予想を下回ったこともあり、米国株式相場が下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.76ドル下落し、終値は85.14ドルとなった。

1月24日は、1月25~26日に開催される予定の米国連邦公開市場委員会(FOMC)で金利引き上げを含め金融緩和縮小加速が決定される可能性があるとの観測が市場で発生したこともあり、米国株式相場が一時下落したことに加え、ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国等による対ロシア制裁の発動に対する懸念が市場で増大したこともあり、安全通貨としての購入が進んだことにより米ドルが上昇したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり83.31ドルと前週末終値比で1.83ドル下落した。しかしながら、1月25日には、ウクライナを巡る緊張の高まりに備え、必要に応じてNATO軍を支援すべく米国が8,500人程度の軍事関係者を待機させる旨1月24日午後に同国国防省が発表したことにより、西側諸国等とロシアとの軍事衝突の発生がロシアからの石油及び天然ガス供給に与える影響に対する懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.29ドル上昇し、終値は85.60ドルとなった。また、ロシアがウクライナに対し軍事行動を実施した場合、ロシアのプーチン大統領個人に対し制裁を発動することを検討する旨1月25日午後(米国東部時間)に米国のバイデン大統領が明らかにしたこともあり、ウクライナ情勢を巡る西側諸国等とロシアとの対立の激化に伴う、ロシアからのエネルギー供給への影響に対する懸念が1月26日の市場で増大したことに加え、1月26日にEIAから発表された米国石油統計(1月21日の週分)で、米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で182万バレルの減少となっている旨判明したこともあり、米国原油先物契約受渡地点での石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり87.35ドルと前日終値比で1.75ドル上昇した。この結果原油価格は1月25~26日の2日間で1バレル当たり合計4.04ドルの上昇となった。ただ、1月25~26日に開催されたFOMC後の1月26日午後(米国東部時間)の記者会見において、3月に同国連邦準備制度理事会(FRB)による金融の量的緩和を終了するとともに政策金利の引き上げを開始、そしてその後FRBの保有する資産の縮小を実施する他、政策金利引き上げペースを加速する可能性も否定しない旨パウエルFRB議長が示唆したことにより、1月27日に米ドルが上昇したことから、この日(1月27日)の原油価格の終値は1バレル当たり86.61ドルと前日終値比で0.74ドル下落した。それでも、1月28日には、ロシアがウクライナ国境付近での軍備体制を増強しつつある他、当該国境に向け輸血用血液等の医療資機材を輸送しつつある旨1月28日に伝えられたこともあり、ロシアのウクライナに対する軍事攻撃が差し迫っているとの懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.21ドル上昇し、終値は86.82ドルとなった。

また、1月29~30日に米国北東部に寒波が来襲したことにより暖房用石油製品需要が増加したとの観測が1月31日に市場で増大したことに加え、イエメンのフーシ派武装勢力が弾道ミサイルをアラブ首長国連邦(UAE)に向け発射(全て迎撃)した旨1月31日にUAE国防省が発表したことで、中東情勢不安定化と当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で拡大したこと、1月31日にウクライナ問題を巡り国連安全保障理事会が公開会合を開催したものの、米国とロシアがお互いを非難した結果、事実上意見が一致することなく終了したことにより、当該問題を巡るロシアのウクライナ侵攻及び西側諸国等による対ロシア制裁の発動に伴う、原油を含むエネルギー市場への影響に対する懸念が市場で強まったことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり88.15ドルと前週末終値比で1.33ドル上昇した。2月1日は、2月2日に開催される予定であるOPECプラス産油国閣僚級会合を控え持ち高調整が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.05ドルの上昇にとどまり、終値は88.20ドルとなった。2月2日は、この日開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合において従来方針に基づき2022年3月につき日量40万バレル規模を縮小して減産措置を実施する旨決定されたことにつき、原油価格上昇抑制のための減産措置縮小加速に対しOPECプラス産油国が後ろ向きの姿勢を示したと市場関係者が受け取ったことに加え、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりに備え、既に欧州への派遣待機を指示済である約8,500人の米国軍事関係者に加え、3,000人程度の同国軍事関係者を東欧等に配備する旨2月1日にバイデン大統領が承認したことにより、当該問題のエネルギー供給への影響に対する市場の懸念が増大したこと、2月1日夕方(米国東部時間)に発表された米国情報技術(IT)大手アルファベット(グーグル)の2021年10~12月業績が市場の事前予想を上回ったこともあり2月2日の米国株式相場が上昇したこと、2月2日に米国企業向け給与計算サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)から発表された2022年1月の同国民間雇用者数が前月比で30.1万人減少と市場の事前予想(同18.0~20.7万人の増加)に反し減少している旨判明したこともあり米ドルが下落したこと、2月6日頃にかけ米国に寒波が来襲すると予想されることにより、暖房用石油需要が拡大するとともに、同国南部のシェールオイル生産関連施設の操業に支障が発生する可能性があるとの懸念が市場で増大したことが、原油相場に上方圧力を加えた反面、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日(2月2日)の原油価格の終値は1バレル当たり88.26ドルと前日終値比で0.06ドルの上昇にとどまった。ただ、2月3日には、悪天候及び出荷施設点検に伴う原油出荷低迷で原油貯蔵施設の能力が不足したことにより、1月のイラク原油生産量が日量416万バレルと同月の同国の原油生産目標である日量427万バレルを下回った旨2月3日に報じられたことにより、OPECプラス産油国の増産ペースに対し疑問視する向きが市場で増大したことに加え、米国南部に寒波が来襲した結果、テキサス州の原油生産施設の稼働及び原油輸送面等で支障が発生している(原油生産関連施設の機器類等で停電や凍結等の操業上の問題が発生した他、路面凍結のため中小油田で生産された原油のタンクローリーによる陸上輸送が鈍化したとされる)旨2月3日に伝えられたことで、同国の原油生産が減少するとの懸念が市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.01ドル上昇し、終値は90.27ドルとなった。また、2月4日も、米国に寒波が来襲した結果、テキサス州の原油生産施設稼働及び原油輸送面等で支障が発生している旨2月3日に伝えられたことで、同国の原油生産が減少するとの懸念が市場で発生した流れを引き継いだうえ、米国北東部を中心とした地域への寒波の来襲により当該地域での暖房油等の石油製品需要が増加するとの観測が市場で発生したことに加え、2月3日夕方(米国東部時間)に発表された米国通信販売大手アマゾン・ドット・コムの2021年10~12月期業績が市場の事前予想を上回ったこともあり一部米国株式相場が上昇したうえ、2月4日に米国労働省から発表された1月の同国非農業部門雇用者数が前月比で46.7万人の増加と市場の事前予想(同12.5~15.0万人の増加)を上回ったことにより、この先経済発展に伴い石油需要が増加するとの期待が市場で拡大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり92.31ドルと前日終値比で2.04ドル上昇した。この結果原油価格は2月3~4日の2日間で1バレル当たり合計4.05ドルの上昇となった。

ただ、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことに加え、イランの民生用原子力部門において核燃料の国外搬出等の事業へのイラン国外企業の関与を禁止する旨の米国による制裁(2020年5月27日に当該制裁を事実上発動する旨米国のポンペオ国務長官(当時)が発表した)を免除すると2月4日に米国国務省幹部が明らかにした他、2月8日にイラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議を再開する旨2月7日に欧州連合(EU)が発表したこともあり、イラン核合意正常化に向けた妥結が関係者間でなされるとともに、米国による対イラン制裁緩和により、イランからの原油供給がこの先増加するとの観測が市場で発生したことから、2月7日の原油価格の終値は1バレル当たり91.32ドルと前週末終値比で0.99ドル下落した。2月8日も、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生した流れを引き継いだことに加え、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議が2月8日に再開されるとともに、協議が極めて重大な局面にさしかかりつつある旨同日伝えられたことにより、関係者間で妥結が成立するとともに、米国の対イラン制裁が緩和することを通じイランからの原油供給がこの先増加するとの見方が市場で増大したこと、2月9日にEIAから発表される予定である米国石油統計(2月4日の週分)で、原油及びガソリン在庫が増加する旨判明するとの観測が市場で発生したこと、2月8日にEIAから発表された短期エネルギー見通し(STEO:Short-term Energy Outlook)で、EIAが2022年の米国原油生産量見通しを日量1,197万バレルと、1月11日に発表されたSTEOの見通しである同1,180万バレルから上方修正したことで、この先の石油需給の緩和感を市場が意識したこと、2月7日にフランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領との間で実施された首脳会談で、ウクライナを巡る緊張をこれ以上高めない旨ロシア側が保証したとマクロン大統領が2月8日に明らかにした(但しロシア側はマクロン氏の発言には必ずしも同調していない旨同日示唆される)ことにより、ロシアがウクライナに侵攻することにより、西側諸国等が対ロシア制裁を発動することに対し、報復措置としてロシアが国外への原油供給等を削減する可能があることへの懸念が市場で後退したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.96ドル下落し、終値は89.36ドルとなった。この結果原油価格は2月7~8日の2日間で1バレル当たり合計2.95ドル下落した。しかしながら、2月9日には、これまでの原油価格の下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、2月9日にEIAから発表された米国石油統計で原油在庫が前週比で476万バレル、ガソリン在庫が同164万バレルの、それぞれ減少と市場の事前予想(原油在庫同37万バレル程度、ガソリン在庫同160万バレル程度の、それぞれ増加)に反し減少している他、米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で280万バレル減少したうえ、2月4日までの4週間の米国石油需要が日量2,191万バレルと1990年12月以降の同国週間統計史上の最高水準に到達している旨判明したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.30ドル上昇し、終値は89.66ドルとなった。2月10日には、この日OPEC事務局から発表された月刊オイル・マーケット・レポートで、減産措置に参加するOPEC10産油国の2022年1月の原油生産量が前月比で日量13.9万バレルの増加と、2021年8月より実施している減産措置縮小におけるOPECプラス10産油国の事実上の増産分(日量25.4万バレル)を相当程度下回っている旨判明した一方、堅調な経済回復が見られること等により、世界石油需要が上振れする可能性があるとの見解をOPECが示したことにより、世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことに加え、2022年2月4日から8日にかけ米国オクラホマ州クッシング(米国原油先物契約受渡地点)の原油在庫が170万バレル程度減少した旨英国石油情報サービス会社ウッド・マッケンジーが明らかにしたと2月10日に報じられたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり89.88ドルと前日終値比で0.22ドル上昇した。2月11日も、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表されたオイル・マーケット・レポートで、過去に渡り中国の石油化学部門向け石油需要及びサウジアラビアの液化石油ガス(LPG)需要を再検討した結果、IEAが2022年の世界石油需要を日量87万バレル上方修正した旨明らかにしたうえ、一部OPECプラス産油国が増産に苦慮していることにより、今後供給の伸びが鈍化する可能性がある旨IEAが示唆したことにより、足元の世界石油需給の引き締まり感を市場が意識したことに加え、米国のバイデン大統領が、ウクライナに滞在する米国人に対し即時出国を勧告する旨2月10日夕方に明らかにしたうえ、来週にも空爆等によりロシアの事実上のウクライナ侵攻が開始される可能性があるとして、ウクライナに滞在する米国人に対し48時間以内に同国外に退避するよう勧告する旨2月11日に米国バイデン政権のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が発表したことにより、ウクライナ情勢緊迫化によるロシア等からのエネルギー供給に対する懸念が市場で強まったことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり3.22ドル上昇し、終値は93.10ドルと、2014年9月29日(この時は同94.57ドル)以来の高水準に到達した。また、この結果原油価格は2月9~11日の3日間で1バレル当たり合計3.74ドル上昇した。

 

4. 原油市場における主な注目点等

地政学的リスク要因等の面では、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議が進捗しつつあるように見受けられることが原油相場に下方圧力を加える場面が見られるものの、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの間での緊張の高まりが原油相場に上方圧力を加える結果、全体としては、原油価格を押し上げる格好となっている。

1月17日には、ベラルーシのルカシェンコ大統領が、2月に自国においてロシアと合同で軍事演習を実施する旨発表、同日ロシア軍がベラルーシに配備され始めた。これに対し、1月18日に米国国務省幹部は、当該軍隊派遣につきウクライナ侵攻準備を行う可能性があることを不安視する旨発言した。また1月19日には米国のブリンケン国務長官も、ロシアは予告後非常に短時間で侵攻を開始する可能性があるものと考えている旨明らかにした。他方、1月19日に、米国のバイデン大統領は、ロシアとの首脳会談の実施を含め外交努力を継続するとしたものの、ロシアはウクライナに対し軍事面を含め攻撃を行うと予想しているとの見解を示した他、そうなれば、米国はロシアに対し深刻な経済的打撃を与えるような制裁を発動する方針である旨示唆した。またその後同日サキ報道官は、ウクライナ国境からロシアが侵入するようであれば、ロシアがウクライナを侵攻したと見做し対処する旨明らかにした。1月23日には米国国務省が、ロシアとの国境近辺での緊張が高まっているとして、在ウクライナ米国大使館の一部職員の自主的な退避を許可した他、職員の家族は出国するように指示、また米国国民も同国からの速やかな退避を検討するよう要請する旨発表した。1月24日には北大西洋条約機構(NATO)が、ロシアがウクライナに対し軍事行動を実施した場合に向け、東欧に軍事関係者を配備するとともに、戦闘機等の軍事用資機材を増強する旨発表した。さらに、1月24日には、米国国防省が同国軍兵士8,500人程度を欧州に派遣できるよう待機させる旨明らかにした。また、1月25日に米国のバイデン大統領は、ロシアがウクライナに対し軍事攻撃を実施した場合には、米国はロシアのプーチン大統領に直接制裁を発動することを検討する意向である旨表明した。1月26日にはロシアの提案(1月10日にスイスのジュネーブにおいて実施された、米国国務省のシャーマン副長官とロシア外務省のリャプコフ次官による「戦略安定対話臨時会合(Extraordinary Session of Strategic Stability Dialogue)」においてなされたと見られる、NATOの東方不拡大の法的保証等の要求を内容とする提案のことを指していると考えられる)に対する回答を米国がロシアに送付した旨両国が明らかにした。これに関し、1月26日に米国のブリンケン国務長官は、ロシアによるNATOの東方拡大停止の法的保障要請を拒否した旨明らかにした(他方、現在失効状態となっている米国とロシアとの間での中距離核戦力廃棄条約の効力回復と核兵器能力の抑制、及び軍事演習実施の規模及び場所に関する制限の導入に関し、米国が提案を行ったとされる他、ロシアのラブロフ外相は、米国からの回答の中には、欧州における短中距離ミサイル関連施設の設置推進の停止や既に設置されている当該関連施設の撤去の検討等が含まれている旨1月28日に明らかにしている)。また、1月26日には米国国務省のプライス報道官が、ロシアがウクライナに対し軍事行動を実施すれば、ロシアからドイツへと天然ガスを輸送する予定(既に完成しているがドイツ等の操業開始承認待ちとなっている)ノルドストリーム2(天然ガス輸送能力日量53億立方フィート)の承認を事実上差し止める意向である旨示唆した。1月27日にロシアのラブロフ外相はロシアの提案に対する米国の回答は一部に交渉の余地はあるものの概して後ろ向きである旨発言したが、1月28日に同外相は交渉を継続する意志がある旨明らかにした。

また、1月27日にはウクライナ政府軍の発砲により、同国東部ルガンスク人民共和国治安部門関係者1人が死亡した旨同共和国軍部関係者が発表した。さらに、1月27日には米国のバイデン大統領が2月にロシアがウクライナに対し軍事行動を開始する可能性が相当程度ある旨明らかにしたが、1月28日には、ロシアのラブロフ外相は、ウクライナを巡りロシア側から戦争を開始するとはない旨表明した。ただ、1月28日には、ロシアがウクライナとの国境に向け輸血用血液等の医療資機材を配備しつつある旨伝えられ、ロシアによるウクライナに対する軍事攻撃が差し迫っていることが示唆された。

1月31日には、ウクライナ情勢を巡るロシアの提案に対する米国の回答に対しロシアから書面により回答があった旨米国国務省報道官が明らかにした(但し、米国からの回答に対するロシア側の回答は一部にとどまっており、全体的な回答は依然準備中である旨2月1日にロシア外務省幹部が明らかにしている)。また、2月2日に米国国防省は、ウクライナ情勢緊迫化に対応するため、近いうちに3,000人程度の同国軍事関係者をポーランド(1,700人)、ルーマニア(1,000人)及びドイツ(300人)に配備する旨発表した(2月1日にバイデン大統領が承認したとされる)。2月3日には、中国の王毅国務委員兼外相とロシアのラブロフ外相が北京で会談し、王毅氏はウクライナ情勢を巡るロシアの姿勢を中国は支持する旨表明した。他方、ロシアはウクライナへの軍事攻撃実施の大義となりうるような虚偽の情報を流布するための作業を検討していると2月3日に米国国務省のプライス報道官が明らかにした。同報道官は、西側諸国等の対ロシア制裁発動時に制裁への影響を緩和すべく中国がロシアを支援しようとするのであれば、米国は中国に対する対応策を実施する旨表明した。

また、ロシアはウクライナとの国境付近に10~13万人の軍事関係者を配備するなど、軍事攻撃実施体制構築を完成させつつあり、攻撃開始後2日以内にウクライナの首都であるキエフを陥落させることができるであろうと米国の関係当局が考えている旨2月5日に報じられた。他方、ウクライナ政府が同国において親ロシア派勢力が事実上支配する東部ドンバス地域に対し軍事攻撃を実施するようであれば、ロシアと協力して対応する旨2月6日にベラルーシのルカシェンコ大統領が明らかにした。また、ウクライナ東部の一部を事実上支配する親ロシア派勢力のドネツク人民共和国の指導者であるプシリン氏は、軍事衝突が直ちに開催されても不思議ではない状況であるとし、そうなれば、ドネツク人民共和国はロシアに応援を要請しなければならない旨2月7日に発言した。

2月7日にはフランスのマクロン大統領とロシアのプーチン大統領との間で首脳会談が行われたが、その際プーチン大統領がウクライナを巡る緊張をこれ以上高めないと保証する旨発言したと2月8日にマクロン大統領が明らかにした(但しロシア側はマクロン氏の発言には必ずしも同調していない旨同日表明した)。他方、ロシアは軍事演習参加のため2月8~9日に自国の軍艦6隻をウクライナ南部の黒海沖合に派遣する旨2月8日にロシア国防省が発表した。また、2月10日にはベラルーシでロシアと同国が合同の軍事演習を開始したが、ウクライナも2月10日に軍事演習を開始した。2月10日夕方(米国東部時間)に米国のバイデン大統領は、ウクライナを巡る情勢が急変する恐れがあるとして、ウクライナに滞在している米国国民に対し直ちに出国するよう勧告する旨発言した。米国以外にも英国を初めとする欧州諸国等がウクライナに滞在している自国民に対し即時国外退避を勧告した旨2月11日に伝えられる。また、2月11日には、米国バイデン政権のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が、ロシアはウクライナに対する事実上の軍事行動実施の準備を完了しており、いつ何時攻撃が開始されても不思議ではない状況である他、当該軍事行動が空爆やミサイル攻撃を伴って実施される可能性があるうえ、首都のキエフが攻撃対象となる恐れがあるため、改めてウクライナに滞在する米国国民に対し国外への退避を勧告した。また、米国国防省がポーランドに対し米国軍関係者3,000人程度を配備する意向である旨2月11日に伝えられた。なお、2月12日には米国国務省が在ウクライナ米国大使館職員の大部分に対し出国命令を発令する一方、同日米国のバイデン大統領とロシアのプーチン大統領による首脳会談(電話形式)が実施されたが、協議を継続することでは両者の意見は一致したものの、実質的な内容面では進展はなかったとされる。

このように、ウクライナでは、国境付近で軍備を増強しつつあるロシアに対し軍を撤退させるよう要求する欧米諸国等と、ウクライナのNATO加盟防止及びNATOの東方不拡大の法的保証を要求するロシアとの間での対立が高まりつつある。併せて、一部地域を親ロシア派勢力が事実上支配するウクライナ東部に対し虚偽の情報を発信することを通じ、ロシア等が対ウクライナ侵攻の機会を窺っている旨伝えられていることもあり、ロシアのウクライナへの軍事攻撃実施と米国を含む西側諸国等による対ロシア制裁の実施、そして報復措置としてのロシアから西側諸国等への石油及び天然ガス等のエネルギー供給の途絶に対する懸念が市場で増大しつつあることが、原油相場を下支えする格好となっている。特に欧州は、石油の31%程度、及び天然ガスの33%テ程度をロシアから輸入するなど、エネルギー供給面でのロシアへの依存度が大きい他、そもそもロシアは世界の石油供給全体の12%程度、及び天然ガス供給全体の17%程度を占めていることもあり、ロシアのエネルギー供給に影響するような要因は市場の不安感を煽りやすい状況となっている。今後も米国を含む西側諸国等とロシアとの間でウクライナ情勢等を巡り軍事衝突を回避すべく外交努力が進められていくことにより、実際に軍事衝突が発生する確率は必ずしも高くないとの市場関係者による見解も見られるが、万一軍事的な衝突等が発生した場合、ロシアからの石油及び天然ガス供給に対し多大な影響が生じる可能性があるところからすると、ウクライナ情勢等を巡る両者間の緊張が有意に後退するようでないと、この面で原油価格への下方圧力は加わりにくい他、ウクライナを巡る緊張が高まるようであれば、原油価格が押し上げられる可能性があるものと考えられる。

他方、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議に関し、米国とイランとの議論の争点が明確になるような進捗があったことにより、双方が政治的判断を迫られている旨1月31日に米国国務省幹部が明らかにした。他方、イランの最高指導者ハメネイ師は米国との直接協議を実施することを受け入れる意向を固めた旨2月3日に伝えられる。またイランの民生用原子力事業における制裁(核燃料の国外への搬出作業等へのイラン国外企業の関与を禁止するものであり、2020年5月27日に米国のポンペオ国務長官(当時)が事実上の発動を発表した)を再び免除する旨2月4日に米国国務省幹部が明らかにしたが、2月5日にイランのアブドラヒアン外相は、米国のこの決定を評価するもののなお不十分である旨明らかにした。2月8日には、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの協議が再開する(12月28日から実施されていたが1月28日に一旦中断していた)旨2月7日にEUが明らかにするとともに、協議は極めて重大な局面を迎えているものと見られる旨2月7日伝えられる。他方、2月9日にイランは、飛行距離1,450キロメートルでイスラエルにも到達が可能な新型ミサイルを公開した。

このように、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議は継続しており、当該交渉は最終段階にさしかかりつつあるものと伝えられる。今後米国及びイラン両国による政治判断を通じ協議が妥結に向かうようであれば、米国のイランに対する制裁が緩和されるとともに、イランから世界市場に向けた石油供給拡大に対する観測が増大することを通じ、石油需給緩和感が市場で醸成されることにより、原油相場に下方圧力が加わるものと考えられる。ただ、その過程では、ペルシャ湾内外においてタンカー等の船舶が攻撃されたり、イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)から、同勢力と対立し内戦状態となっているイエメンのハディ暫定大統領派勢力を支援するサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)に向けミサイルや無人攻撃機が発射されたりする(2月2日未明には、UAE領空域に無人機が侵入したことによりUAE軍が当該無人機を撃墜した旨同日UAE国防省が発表した)ことにより、核合意正常化に向けた交渉過程が複雑化する結果、そのような要素が原油相場に織り込まれる場面が見られることもありうる。また、ウクライナ情勢等を巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりに伴うロシアからのエネルギー供給への影響に対する懸念が市場で強まるようだと、イラン核合意正常化に向け協議が進むことにより醸成される石油需給緩和感が相殺されることになり、必ずしも原油相場が下落傾向に向かう展開とならないことも想定される。

リビアでは、1月24日に大統領選挙投票を実施する予定であったが、法整備遅延等により、同日に投票を実施できなかった(2022年6月にまで投票を延期する旨1月16日に国連リビア担当特別顧問のウイリアムズ氏が提案したものの、実際の投票実施までにはさらに時間を要すると見る向きもある)。他方、大統領選挙により大統領が選出されるまで機能する予定である暫定統一政府(2021年3月10日発足)のドベイバ(Dbeibah)首相が2月10日に銃撃されたが、ドベイバ氏は無事であった。また、12月24日を以て同国の暫定統一政府が有効期限を迎えた旨主張した同国東部トブルクを拠点とする国内勢力である代表議会(HoR)は、2月10日にバシャガ(Bashagha)元内務相を新首相に指名した(国連は依然としてドベイバ氏が同国の首相であるとの見解を明らかにした旨2月11日に伝えられる他、ドベイバ氏は大統領選挙が実施されるまで首相の職を続ける旨2月8日に明らかにしている)。

また、同国では、国家予算の配分が円滑に行われていないことが一因となり、石油生産及び出荷関連施設の保守作業が十分に実施できていない結果、石油出荷ターミナルの貯蔵タンクが使用不能となったり、原油を油田から石油出荷ターミナルへ輸送するパイプラインが破損し原油が流出したりするなどの障害が発生していることにより、それら施設の修理等のため原油生産を削減しなければならない事態に直面しているとされる。

このようにリビアでは、再び各政治勢力間での対立が強まるとともに国内情勢が不安定化する可能性が増大している他、国内の石油生産・出荷関連施設に対する不十分な保守状況によって、同国の原油供給に支障を来す場面が見られることが想定されるとともに、同国の原油生産の持続性を疑問視する向きが市場で継続することにより、原油相場が下支えされたり、上方圧力が加わったりするといった場面が見られることもありうる。

他方、新型コロナウイルスオミクロン変異株は、感染力は強いものの感染者の入院及び重症化の確率はそれほど高くない旨判明しつつあることにより、世界経済及び石油需要への影響は軽微であるとの楽観的な見方が市場で広がっていることが、原油相場に上方圧力を加える格好となっている。今後、新型コロナウイルスのさらなる変異株が出現すると言った展開も否定はできないものの、次に出現する変異株の感染力が相当程度強く、しかも感染者の入院及び重症化の各確率が高いようでなければ、新型コロナウイルス新規変異株の世界経済及び石油需要への影響はそれほど大きくならないと市場で認識される結果、原油相場への下方圧力は限定的なものとなる可能性がある。

1月25~26日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見では、同国連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和を3月で終了するとともに、政策金利の引き上げを開始、そしてその後FRBの保有する資産の縮小を実施する他、状況によっては政策金利引き上げペースを加速する可能性がある旨パウエルFRB議長が示唆した。これに対し、高水準の米国消費者物価が継続すれば、0.5%の金利引き上げを実施する可能性も否定できない旨1月28日にアトランタ連邦準備銀行のボスティック総裁が明らかにしたものの、その後1月31日にはボスティック総裁が0.5%の金利引き上げに対し消極的な姿勢を示した他、2月1日には同国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁及びフィラデルフィア連邦準備銀行のハーカー総裁も0.5%の金利引き上げに否定的な見解を示した。それでも、2月10日に米国労働省から発表された1月の米国消費者物価指数が前年同月比で7.5%と1982年2月(この時は同7.6%の上昇)以来の高水準となった他、市場の事前予想(同7.3%の上昇)を上回ったうえ、前月比でも0.6%の上昇と市場の事前予想(0.4~0.5%の上昇)を上回るなど、物価上昇ペースが加速しつつあることが示唆されたこともあり、ブラード総裁が2022年7月1日までに合計1.0%の政策金利引き上げ実施を支持する旨2月10日に報じられるなど、米国金融当局者間での金利引き上げペースを巡る議論は必ずしも安定しているとは言い切れない旨示唆される。このようなこともあり、3月15~16日に開催される予定である次回FOMCでは、0.25%の政策金利引き上げが決定する確率が51.8%と2月9日時点の76.0%から低下した反面、0.50%の政策金利引き上げが決定する確率が48.2%と2月9日の24%から上昇する一方で、0.25%及び0.50%の政策金利引き上げの各確率が拮抗する状況になっている。今後は2月15日に発表される予定である1月の米国生産者物価指数(PPI)、及び3月10日に発表される予定である2月のCPI、3月15日に発表される予定である2月のPPIの内容によって、次回FOMCでの政策金利引き上げ方策が変化する可能性がある他、政策金利引き上げを巡る観測が市場で変化する結果、米ドルや米国株式相場が変動するとともに原油相場にその影響が織り込まれることもありうる。そして、金利引き上げが加速するとの観測が市場で強まるようだと、金利引き上げによる経済成長の減速に加え、これまで低金利の環境下において低コストで調達され、原油を含む商品市場に流入していた資金が、調達コスト上昇により、商品市場への投資が敬遠されるようになるとともに、商品市場から資金が流出し始める結果、原油相場への上方圧力が加わりにくくなる可能性がある。

他方、2月3日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会後、従来金融引き締めに関しては消極的な姿勢を示していたラガルド総裁は、物価上昇に上振れのリスクが存在するとの認識を示し始めており、金融引き締めへと姿勢を転換しつつあることが示唆される(但し欧州は米国と異なり経済が過熱しているわけではないため、金融引き締め策は漸進的に実施することが望ましい旨ラガルド総裁が明らかにしたとも2月11日に伝えられる)。今後ECB関係者等による欧州での物価上昇に関する状況及び金融政策を巡る発言によっては、ECBの金融政策に対する観測を市場で発生させるとともに、ユーロ、米ドル、及び原油相場に影響を及ぼすことも想定される。

米国では、冬場の暖房シーズンに伴う暖房用石油製品需要期は最終消費段階ではなお暫く継続する(米国の暖房シーズンは概ね11月1日~翌年3月31日である)ものの、製油所の段階では暖房用石油製品の生産は峠と越え始めつつあることもあり、メンテナンス作業の実施等により製油所の稼働が低下するとともに原油精製処理量が減少することを通じ、製油所等の原油購入が不活発になることで、季節的な石油需給の緩和感が市場で醸成されることにより、この面では原油相場の上昇を抑制する形で作用するものと考えられる。ただ、前述の通り冬場の暖房用石油需要期は最終消費段階では当面続くことから、例えば米国の暖房用石油製品需要の中心地である同国北東部の気温が平年を割り込んで低下したり、低下するとの予報が発表されたりすれば、暖房用石油製品需要の増加観測が市場で発生する他、寒波が米国南部にまで及ぶようだと、テキサス州等での電力供給面での支障とともに資機材の凍結により原油生産が減少することにより、石油需給引き締まり感が市場で意識される結果、原油価格が上昇する場面が見られることもありうる。また、早ければ3月初頭以降、米国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期の到来と製油所の稼働の上昇及び原油購入の活発化が市場で意識されるとともに、ガソリン及び原油価格に上方圧力が加わるといった展開が見られる可能性もある。

他方、3月2日に開催される予定である閣僚級会合に向けたOPECプラス産油国や米国等の消費国政府関係者による動向、そして閣僚級会合での協議内容及び結果等が市場関係者の注目を集めるとともに、原油価格に影響を与えることになろう。また、最近では、ロシア、アンゴラ及びナイジェリア等の一部OPECプラス産油国が、足元で設定されている原油生産目標を充足できていない状況である旨指摘されつつあり、これが石油需給引き締まり観測を市場で醸成させる形で作用する結果、原油相場を下支えする格好となっている。

アンゴラは、2020年の新型コロナウイルス感染拡大以前から国内での石油探鉱・開発投資が促進されておらず、既存の沖合油田の老朽化が進んでおり、新規に生産を開始した油田の生産を以てしても減産に歯止めがかからない状況にある。根本的な問題は、同国石油産業を担当する省庁での手続きが官僚的で効率化されておらず、また同国国営石油会社ソナンゴル(Sonangol)による腐敗問題が存在した他、同国の石油開発に関する法制及び税制が外国石油会社にとって厳しかった(同国の生産物分与契約は地震探鉱データ取得と掘削に厳しい義務が課されていた他、生産物に占める政府取得分が85%前後と世界平均(60%)よりも大きく、特に中小油田開発については企業にとって条件が不利であったとされる)ことから、同国は2008年の日量183万バレルをピークとして原油生産量が減少傾向となっており、2022年1月の同国原油生産量は日量119万バレルと事実上の原油生産目標である同141万バレルを相当程度下回っている(図20参照)。

図20 アンゴラの原油生産目標と原油生産量(2020~22年)

ナイジェリアについても、新型コロナウイルス感染拡大前から、石油輸送インフラが脆弱であった他、長期に渡る投資不足に加え、2020年の新型コロナウイルス感染流行に伴うOPECプラス産油国減産措置実施に伴い操業を停止した油田での操業再開上の支障、及び石油生産関連施設等に対する破壊行為(パイプラインに穴を開けて原油を抜き取る行為)等の影響で生産が伸び悩み気味である。同国では、主力原油ターミナルの一つであるボニー(Bonny)輸出ターミナルに繋がるネンベ・クリーク幹線(Nembe Creek Trunk Line)パイプライン(原油輸送能力日量15万バレル)が2021年10~11月に操業を停止した(破壊行為が理由とされる)ことにより、操業者のシェルは10月25日から11月22日にかけボニー輸出ターミナルからの原油出荷に対し不可抗力条項の適用を宣言した。また、当該パイプラインの修理が完了しボニー原油出荷ターミナルの操業が再開された後、トランス・フォルカドス(Trans Forcados)パイプライン(原油輸送能力日量15万バレル)が事故で操業を停止したことにより、12月22日にShellがフォルカドス原油出荷ターミナルからの原油の出荷に対し不可抗力条項適用を宣言した(その後不可抗力条項の適用は解除された旨12月30日に報じられる)ことから、特に10~12月においては同国の原油生産がもたつき気味となり、2022年1月は多少回復したものの、同国の原油生産は日量138万バレルと依然同月の同国原油生産目標である同168万バレルを下回っている(図21参照)。

図21 ナイジェリアの原油生産目標と原油生産量(2020~22年)

また、ロシアでは、2021年12月24日に同国のノバク副首相が、2022年のロシアの原油及びコンデンセート生産量は(前年比で)5%増加し、5.4~5.5億トン程度(推定日量1,084~1,105万バレル)に到達する他、2022年5月には新型コロナウイルス感染拡大前の水準に回復する旨明らかにした。しかしながら、2021年12月の同国の原油生産量(OPECプラス産油国減産措置の基準に従いコンデンセートを除外)は日量998万バレルと同年11月の同996万バレルからほぼ横這い、2022年1月の同国の原油生産量は同1,004万バレルと12月比では増加したもの増加幅が日量7万バレルに止まっており、OPECプラス産油国減産措置縮小により付与された事実上の増産枠(毎月前月比で日量10.5万バレル)を満たせない状態となった(図22参照)。OPECプラス産油国減産措置縮小により順調に増産が継続すれば、ロシアの原油生産量は2022年10月には日量1,100万バレル(つまり減産措置の基準となる原油生産量)に到達するとされるが、実際には同月の当該原油生産量は同1,028万バレルにしか到達しないと見る向きもある。

図22 ロシアの原油生産目標と原油生産量(2020~22年)

ロシアでは、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界石油需要の減退と原油価格の大幅下落に伴う、2020年5月以降のOPECプラス産油国減産措置の実施に伴い生産を停止した同国の油田が、その後の減産措置の縮小により生産を再開したものの、既にロシア国内では生産が再開できる油田は粗方全て生産が再開されたとされており、これ以上原油生産を増加させるには、新規の坑井の掘削が必要であるとの声も同国石油産業関係者から聞かれることから、同国の既存の油田生産能力が減産措置実施中に低下した可能性があるものと考えられる(因みに減産措置を実施する直前の2020年4月の同国原油生産量は同1,053万バレルであった)。

他方、2022年1月のイラク原油生産量は、日量425万バレルと前月比で日量4万バレルの減少となっており、同国の事実上の増産枠(同4万バレル)を満たすことができなかった(図23参照)。例年イラクでは、この時期強風が吹くなどの荒天が訪れることにより波浪が発生し、原油タンカーが出荷基地に到着できない場面が見られるが、2022年も同様の荒天となった影響で原油生産を抑制せざるをえなかったことが増産枠未達成の背景にあるものとされるが、同国では油田での原油生産を拡大するために必要な、油田に圧入する水の圧入能力に問題を抱えていることから、今後この問題が顕在化し同国の原油生産に影響を与えることもありうると見る向きもある。

図23 イラクの原油生産目標と原油生産量(2020~22年)

従来、2022年の世界石油需給バランスを均衡させるには、同年4月以降2022年末に向け相当長期に渡り減産措置の縮小を完全に停止(つまり、この期間毎月前月比での原油生産措置縮小(つまり増産)規模はゼロ)しなければならない(表2参照)ことから、一部OPECプラス産油国が減産措置縮小方針通りに増産ができなかったからといっても直ちに世界石油需給が大幅に引き締まるわけではなく、一部OPECプラス産油国の緩慢な増産状況を考慮しても、2022年は世界石油需要が供給過剰に振れやすい旨示唆された(表3参照、このシナリオは2022年10月のロシアの原油生産量が日量1,028万バレルとなることを前提としている)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2月2日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点時点)

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2月2日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

しかしながら、2月11日にIEAは2007年以降のサウジアラビアのLPG需要、及び2018年以降の中国の石油化学部門向け石油需要を、それぞれ再検討した結果、2022年の世界石油需要を日量87万バレル上方修正した。この結果、各年の前年比での世界石油需要増加量にはそれほど影響はなかったものの、各年の世界石油需給バランスは相当程度変化した。例えば、2022年の世界石油需給バランスシナリオは2月11日以前は日量177万バレルの供給過剰と示唆されたところ、2月11日時点のIEAの見通し等に基づきシナリオを再構築した場合、供給過剰幅は同81万バレル程度へと縮小する(表4参照)。現時点では、2022年の世界石油需給バランスは依然として供給過剰となっているものの、一部OPECプラス産油国による減産措置の縮小が円滑に進まなかったり、世界石油需要がさらに上振れしたりするようであれば、供給過剰幅がさらに縮小することにより、石油供給引き締まり感が市場で強まる結果、原油相場が上振れする可能性もあるものと考えられる。

表4 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(2月11日時点)

他方、全米平均ガソリン小売価格が十分に下落していない他、米国CPI及びPPIの上昇率が高水準に到達しているため、このような原油及びガソリン小売価格を含めた物価上昇による米国経済への悪影響を懸念する同国バイデン政権からOPECプラス産油国への減産措置縮小加速に対する働きかけが強まるものと見られる(2月8日に米国バイデン政権のサキ報道官は、原油価格高騰への対処の一環として産油国との間で増産につき協議中である旨明らかにしている)一方、OPECプラス産油国がそのような米国の意向に沿って減産措置の縮小を加速する方向で再調整する結果、原油価格の上昇が抑制されるといった展開となることもありうる。

しかしながら、規模は縮小したものの、依然として2022年は世界石油需給バランスが供給過剰となると見られることもあり、現在はウクライナ情勢を巡るロシアからの石油供給途絶懸念等により上昇している原油価格が、そのような懸念が後退することに伴い急落することによる、自国向け原油収入減少の可能性を不安視するサウジアラビア等のOPECプラス産油国が、米国からの働きかけにもかかわらず、減産措置縮小加速に対して慎重な姿勢を保持することにより、石油需給引き締まり感が市場で強まる結果、原油相場に上方圧力を加える可能性もある。

そして、今後の季節的な石油需給状況、米国金融政策の動向、そしてそれら要因を反映した原油価格の変動具合等を考慮しつつ、3月2日に開催される予定の次回OPECプラス産油国閣僚級会合では4月以降の減産措置の取り扱いにつき検討が行われるものと考えられる。ただ、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの緊張がさらに高まることにより、石油供給途絶懸念が市場で増大することを通じ、原油相場に一層の上方圧力を加えるようであれば、米国のサウジアラビア等OPECプラス産油国に対する減産措置縮小加速への働きかけが一層強まるとともに、3月2日に予定されるOPECプラス産油国閣僚級会合開催を待たずして、会合を開催、減産措置縮小加速が決定されるといった展開となることも否定はできないものと思われる。

それでも、市場関係者間では、OPECプラス産油国が減産措置縮小を進めるにつれ、OPECプラス産油国の余剰原油生産能力(2022年1月時点で日量637万バレルとされるが、実際にはイラン等事実上余剰原油生産能力が利用できないOPECプラス産油国も存在することから、直ちに利用可能な余剰原油生産能力はこの水準を下回るものと考えられる)が減少する結果、世界石油供給への余裕が縮小することを懸念する向きもあり、従って、OPECプラス産油国が減産措置の縮小加速を見送れば、足元、もしくは短期的な石油需給引き締まり感を市場が意識する結果、原油価格が上振れする一方、仮にOPECプラス産油国が減産措置の縮小を加速したとしても、OPECプラス産油国の保有する余剰原油生産能力減少がより速やかに進むことにより、中長期的な石油需給引き締まり感が市場で強まる結果、やはり原油相場に上方圧力が加わる展開となりやすいものと考えられる。

全体としては、春場の石油不需要期や米国金融当局等による金利引き上げ等の要因が原油相場の上昇を抑制する方向で作用しやすいものの、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立激化のエネルギー供給への影響への懸念、新型コロナウイルスオミクロン変異株感染の石油需要への影響が軽微であることによる当該需要回復期待、OPECプラス産油国の慎重な減産措置縮小推進と、一部OPECプラス産油国の増産のもたつき懸念等による、石油需給引き締まり観測等から、これらの面で原油相場が下支えされやすい状況になるものと考えられる。

 

5. 世界天然ガス市場動向

米国の原油価格は2021年から2022年にかけ、そして天然ガス価格は2021年4月以降、価格が総じて上昇基調となったり、高止まり気味となったりしたこともあり、同国の石油及び天然ガス坑井掘削装置稼働数が増加傾向となるとともに、原油生産に随伴して生産される天然ガスを含め同国の天然ガス生産が上振れする傾向を示した(図24参照)。

図24 米国国内天然ガス生産量及び見通し(破線部分)(2009~23年)(EIA発表時期別)

他方、米国では2021年11月及び2022年1月に前年を下回って気温が低下する場面が見られた(図25参照)こともあり、暖房向けの民生部門及び空調向けの発電部門での天然ガス需要が前年同月比で増加した(図26参照)。反面、2021年12月については、気温が前年を多少なりとも上回ったこともあり、民生部門での天然ガス需要は前年同月比で減少した他、発電部門での天然ガス需要は前年同月比で増加はしたものの増加幅は限定的な規模にとどまった。また、2020年11月は米国で新型コロナウイルス感染が拡大したことが同国の経済活動を抑制したこともあり産業部門での天然ガス需要がその影響を受けた一方、2021年11月は同国での新型コロナウイルス感染が沈静化しつつあったことにより同月の米国での産業部門天然ガス需要は前年同月比で増加を示した。それ以降米国では新型コロナウイルスオミクロン変異株による感染が拡大したものの、入院及び重症化確率がそれほど高くなかったこともあり、2021年12月~2022年1月の鉱工業生産も2021年11月に比べれば前年同月比での伸びは鈍化したものの比較的底堅く推移したことにより、2021年12月の当該部門での天然ガス需要は前年同月比で微減となったものの2022年1月は増加に転じている。この結果、米国天然ガス需要全体としては特に気温の変動に伴う民生部門及び発電部門での変化の影響を大きく受ける格好となり、2021年11月及び2022年1月は前年同月比で増加、2021年12月は減少となった。

図25 米国(ニューヨーク)気温(2021~22年)

図26 米国天然ガス消費増加量(前年同月比)(2015~22年)

また、米国のメキシコ向け天然ガス輸出は前年同月とほぼ同水準を維持した(図27参照)うえ、米国外地域の天然ガス価格が軒並み高水準のままとなったことにより、米国内で天然ガスを販売するよりも液化して米国外に販売した方が利幅を確保できるようになったこともあり、米国からのLNG輸出は活発化したものの、同国のLNG輸出能力は日量110億立方フィート程度であったことから、同国からのLNG輸出は2021年12月に日量110億立方フィートに到達後頭打ちとなった(図28参照)。因みにこの時期欧州向けLNGの方がアジア向けLNGよりも高価格での販売が可能であったこと(後述)から、米国産LNGの相当部分が欧州に向かった一方、特に中国を中心としてアジア方面へのLNG輸出は低迷した。

図27 米国のメキシコへのパイプラインによる天然ガス輸出(2021~22年)

図28 米国からのLNG輸出量(2016~22年)

このように、米国での天然ガス供給はそれなりに堅調であったものの、メキシコへの天然ガス輸出が安定して推移した他LNG輸出が旺盛であったことにより相殺される格好となる中、主に米国内の気温の変動に伴う天然ガス需要の振幅が、同国の天然ガス貯蔵量(在庫)、つまり需給バランスを左右した。2021年11月19日時点では過去5年平均値(つまり平年値)を1.6%下回っていた同国天然ガス貯蔵量は、特に気温が低下することで民生部門及び発電部門での天然ガス需要が喚起された11月下旬から12月上旬にかけては過去5年平均値を下回る割合が拡大、12月3日時点では過去5年平均値を下回る割合は2.5%となった(図29参照)。また、気温が前年同期及び平年を軒並み上回った12月は民生部門及び発電部門での天然ガス需要が不振となった分だけ、同国の天然ガス貯蔵の減少ペースが鈍化した結果、12月31日時点の米国天然ガス貯蔵量は過去5年平均値を3.1%上回る状態となった。しかしながら、その後再び米国では気温がしばしば前年同期及び平年を下回って低下したことに伴い、民生部門及び発電部門での天然ガス需要が旺盛となったことにより、同国天然ガス貯蔵量が再び過去5年平均値を下回る状態に転じた他、下回る割合が拡大、2月4日時点では過去5年平均値を下回る割合は9.3%となっている。そしてこのような米国天然ガス需給バランスの変化に加え、米国での気温の状況が、同国での天然ガス価格に影響を与える格好となり、2021年11月19日には、100万Btu当たり5.065ドルの終値であった米国天然ガス先物価格は11月26日には同5.447ドルの終値へと上昇したものの、その後上下に変動しつつも概して下落傾向となり、12月30日の終値は同3.561ドルとなった(図30参照)。しかしながら、2022年1月に入り米国天然ガス先物価格は上昇基調に転じ、1月26日の終値は同4.277ドルとなった。また、1月27日の米国天然ガス先物価格の終値は同6.265ドルと前日終値比で同1.988ドル上昇、上昇率は46.5%と、1994年1月以降の当該先物契約取引史上最大の1日当たり上昇率を記録した(天然ガス価格の下落を見込んで当該契約の売却(空売り)を進めていた投資家が、2月渡し天然ガス先物契約取引終了日を迎えるに際し、当該契約の持ち高を解消すべく猛烈な勢いで買い戻しを行ったことが背景にあると見る向きもある)。1月28日には天然ガス先物契約の受渡月が3月に移行したこともあり、価格は大幅に下落したものの、1月29~30日の週末を中心とした期間に米国北東部を中心とした地域で気温が低下するとの予報が明らかになったことが、天然ガス価格の下落を抑制したことから、この日(1月28日)の同国天然ガス先物価格は100万Btu当たり4.639ドルで下げ止まった。2月上旬においては、米国にさらなる寒波が来襲することにより暖房向けの民生部門及び空調向けの発電部門において天然ガス需要が刺激されるとの観測が市場で発生した一方、寒波が米国南部にまで及ぶと予想されたことにより、テキサス州等の油・ガス田関連施設の凍結による不具合の発生、及び電力需要急増に伴う電力需給バランス上の支障に伴う停電の発生により、当該地域での天然ガス生産が減少する可能性があるとの懸念が市場で増大した(2021年2月15~16日頃に同国テキサス州等に来襲した寒波「ウリ(Uri)」による気温低下により同州等の天然ガス生産が相当程度影響を受けた記憶が市場関係者間で残存していたことが、気温低下による天然ガス需給引き締まり懸念を増幅させる格好となったものと見られる)ことが、同国天然ガス先物相場に上方圧力を加えたことから、2月2日の終値は100万Btu当たり5.501ドルに到達した。しかしながら、それ以降は気温が上昇するとの予報が発表されたことにより、暖房向けの民生部門及び空調向けの発電部門での需要が軟調になるとの見方が市場で広がったことが、米国天然ガス相場に下方圧力を加えた結果、2月11日の米国天然ガス先物価格は100万Btu当たり3.941ドルとなっている。

図29 米国天然ガス貯蔵量(2017~22年)

図30 天然ガス先物価格の推移(2018~22年)

他方、欧州では、天然ガス価格が高水準のままとなった(むしろ11月下旬から12月下旬初頭にかけては上昇傾向となった)こともあり、天然ガスを原料とする肥料製造業や天然ガスを燃料等に利用する石油精製業等での天然ガス消費が抑制されたものの、11月は後半を中心として気温が前年同期及び平年を下回る程低下する場面が見られた(図31参照)ことにより、空調向けの発電部門及び暖房向けの民生部門における天然ガス需要が喚起されたこともあり、11月の欧州天然ガス需要は前年同月比で増加、そして11月の堅調な天然ガス需要の影響を12月もある程度引き継いだ格好となり、同月も前年同月比でほぼ横這いとなった(図32参照)。ただ、12月から1月初旬にかけては欧州の気温も一時平年及び前年同期を上回る程度にまで上昇する場面が見られた(但し12月下旬に短期間ではあるが気温が前年同期及び平年を下回る場面が見られた)他、1月は気温がしばしば平年を下回ったものの、総じて前年同月ほどには低下しなかったことから、空調向けの発電部門でのエネルギー需要が抑制された一方、風力発電が比較的活発であったこともあり、発電部門及び暖房向けの民生部門を中心として天然ガス需要が前年同月比で減少したものと見られる。

図31 英国(ロンドン)気温の推移(2021~22年)

図32 欧州天然ガス需要増加量(前年同月比、2008~22年)

他方、ロシア国内天然ガス貯蔵量が目標に到達した2021年11月8日以降(実際には10月29日には目標貯蔵量に到達していた)、ロシア国営石油会社ガスプロムは欧州での天然ガス貯蔵量拡大に向け天然ガス供給を増加させる旨10月27日にロシアのプーチン大統領が明らかにしていたが、ガスプロムはベラルーシ及びポーランドを経由してドイツへと天然ガスを輸送するヤマル・ヨーロッパパイプライン及びウクライナを経由してスロバキアへ天然ガスを輸送するパイプラインのスポット天然ガス供給のためのパイプライン輸送能力の月次予約を行わず、ヤマル・ヨーロッパパイプラインの輸送能力の予約は都度日次ベースで行われた他、ウクライナ経由でのパイプラインについては、スポット天然ガス供給のためのパイプライン輸送能力の予約は日次ベースでも実施しなかった(但し、ロシアは別途2021~24年にウクライナを通過するパイプライン経由で日量38億立方フィートの天然ガスを欧州方面に輸送する契約をウクライナ側と締結している)。また、2021年12月から1月にかけロシア国内ではしばしば平年を大幅に下回る程に気温が低下した(図33参照)ことから、暖房向けの民生部門及び空調向けの発電部門での天然ガス需要が喚起される格好となったこともあり、ロシアが国内需要を満たすべく天然ガス供給を国内に振り向けた反面、12月18日にはヤマル・ヨーロッパパイプライン経由でロシアからドイツを通過し欧州方面に輸送されていた天然ガスの流量が有意に減少し始め、12月21日には流入が完全に停止するとともに、同日以降天然ガスはヤマル・ヨーロッパパイプラインを経由してドイツからポーランドへと逆流、この状態は2月11日に至るまで概ね継続した(図34参照)。また、ロシアからウクライナを経由してスロバキアに流入する天然ガスの流量も2022年1月に入り相当程度減少する場面が見られるなど、不安定であった(図35参照)。加えて、欧州に天然ガスを輸出しているノルウェーにおいてもトロル(Troll)ガス田を初めとするガス田や天然ガス処理施設等での操業上の不具合により天然ガス供給に支障が発生する場面がしばしば見られた。

図33 ロシア(モスクワ)気温(2021~22年)

図34 ヤマル―ヨーロッパパイプライン経由で流入するポーランドからドイツへの天然ガス(2021~22年)

図35 ウクライナから欧州への天然ガス流入(2020~22年)

ただ、このようなこと等もあり欧州の天然ガス価格がアジアの天然ガス価格を上回る状態となった(図36参照)ことにより、例えば米国産LNGの仕向地としてはアジアよりも欧州の方が利幅を確保できるようになったため、米国産LNG等が活発に欧州に向かうようになった結果、2022年1月の欧州のLNG輸入量は推定日量193億立方フィートと史上最高水準に到達(図37参照)、そのうちの半分近く(推定日量93億立方フィート)は米国からのものであった(しかしながら、受入施設を確保する前に多数のLNG船が欧州に向かったこともあり、欧州のLNG受入基地が混雑したうえ、一部のLNG船が滞船するなどの混乱が見られた旨1月11日に伝えられる)。

図36 米国メキシコ湾から欧州及び日本/韓国向けLNGネットバック価格(2021~22年)

図37 欧州LNG輸入(2006~22年)

このように、冬場に向け季節的な需要が堅調となる中、ロシア等からの天然ガス供給の低下を米国等からのLNG輸入の増加で一部相殺する格好となったものの、全体としては、欧州の天然ガス需給バランスは引き締まる方向に向かった結果、2021年11月12日には過去5年平均値を16.8%下回っていた欧州天然ガス貯蔵量は2022年2月11日には27.0%と下回る割合が拡大する方向に向かった(図38参照)。

図38 欧州天然ガス在庫(2018~22年)

そして、欧州での天然ガス需給引き締まり感が市場で増大したことに加え、国境のロシア側付近にロシア軍10万人程度が集結している旨ウクライナのゼレンスキー大統領が明らかにしたと11月13日に報じられて以降、ロシア軍の撤退を要求(自国内での行動であるとしてロシア側は拒否)する西側諸国等とウクライナのNATO加盟防止とNATOの東方拡大停止の法的保証を要求(NATO加盟及びNATOの方針はNATO加盟国等の意志に基づくとして西側諸国等は拒否)するロシア側との間で議論は概ね平行線と辿ったことにより、ロシアがウクライナに侵攻することにより、西側諸国等がロシアに対し厳格な制裁を発動、そしてそのような制裁への報復として(もしくは制裁発動の影響として)ロシアから欧州方面への天然ガス供給に支障が発生することへの懸念が市場で強まったことが、欧州天然ガス価格に上方圧力を加えた結果、11月12日には100万Btu当たり推定25.38ドルの終値であったオランダTTF天然ガス先物価格は12月21日(また、この日はロシアからヤマル・ヨーロッパパイプライン経由ドイツ向けの天然ガス流入が完全に停止した日でもある)には同59.62ドルの終値と史上最高水準に到達するなど上昇傾向となった(因みに英国NBP天然ガス先物価格は11月12日には100万Btu当たり26.03ドルの終値であったが、12月21日には同59.91ドルと同じく史上最高水準の終値へと上昇している)。また、フランスの原子力発電のメンテナンス作業実施等の理由により同国の原子力発電能力の30%程度が1月初旬に停止する方向となる(新型コロナウイルス感染拡大の影響で原子力発電施設のメンテナンス作業実施スケジュールに影響が生じていることが一因と指摘される)とともに、通常国外に電力を輸出していた同国が国外からの電力輸入を開始した旨12月21日に伝えられたことも、欧州での天然ガス価格上昇に寄与する形で作用した。

しかしながら、その後は欧州に向け米国等からLNGが流入する兆候が見られるようになったことにより、欧州での天然ガス需給緩和感を市場が意識し始めたことが、当該地域での天然ガス価格に下方圧力を加えた結果、オランダTTF天然ガス先物価格は2月11日には100万Btu当たり推定25.76ドル(英国NBP天然ガス先物価格は同25.21ドル)の終値へと下落している(それでも、英国等の風力発電量の低下及びノルウェーでのガス田の操業上の支障発生等もあり、欧州の天然ガス価格は乱高下気味であった)。

アジアでは、2021年11月下旬から2022年1月末にかけては、気温が平年を上回ったり、下回っても長続きしなかったりした(図39参照)ことにより、暖房向けの民生部門及び空調向けの発電部門での天然ガス需要は軟調気味であったものと見られる。他方、2021年夏場及び2021~22年の冬場の天然ガス需要期に天然ガス需給が逼迫しないよう、アジアの天然ガス需要家等が早期にまとまった量のLNG調達を行った(2020~21年の冬場にアジア市場の天然ガス需給が引き締まり、スポット天然ガスが高騰した時の経験に基づく行動であるとされる)ものの、実際には天然ガス需要がそれほど盛り上がらなかったこともあり天然ガス需給の緩和感が強まった(例えば日本のLNG在庫は2021年11月末から2022年1月中旬にかけ過去4年平均を相当程度上回る水準で推移した)こともあり、アジア市場のLNG輸入は中国を中心として不振気味であった(図40及び41参照)他、中国石油化工集団(シノペック:Sinopec)の子会社である中国国際石油化工連合(ユニペック:Unipec)がLNG船最大45隻分のLNGを2022年2~10月に販売する旨1月19日に報じられた他、中国海洋石油(CNOOC)も2022年5~11月に少なくとも1月当たりLNG船1隻分のLNGを販売する旨同日伝えられた。

図39 中国(北京)気温(2021~22年)

図40 日本及び韓国のLNG輸入増減量(前年同月比)(2008~22年)

図41 中国、台湾及びインドのLNG輸入増減量(前年同月比)(2016~22年)

ただ、アジアのLNG需要は必ずしも旺盛ではなかったものの、11月中旬から12月中旬にかけては欧州天然ガス需給の引き締まり感が強まった結果、例えば米国のLNG供給者にとってみれば、LNGを欧州に仕向けた方がアジアに仕向けるよりも、LNG販売に伴う利幅がより多く確保できるようになったことから、欧州により多くのLNGが向かった反面、アジア方面へのLNG供給が低迷する格好となり、これによりこの時期アジア市場ではLNG需給緩和感が抑制される格好となった。このようなこともあり、11月中旬から12月下旬にかけては、アジアのLNG先物価格は欧州の天然ガス価格に追随しつつ100万Btu当たり31~49ドルを中心とする範囲で変動したが、特に12月半ばから下旬にかけては一時欧州天然ガス価格に対し割安な価格となる(通常アジア市場のLNG価格は欧州市場の天然ガス価格に比べ割高である)場面が見られた。その後12月中旬から1月中旬にかけてはアジア諸国及び地域の気温が平年を下回る場面がしばしば見られるようになったこともあり、アジア市場でのLNG先物価格は100Btu当たり30~34ドルを中心として変動するとともに、欧州天然ガス価格を上回る水準となった。それでも、中国からの大量のスポットLNG販売の意向が明らかになった1月19日以降アジア市場でのLNG需給緩和感を市場が再び意識し始めたことが同時期同市場のLNG価格に下方圧力を加えた結果、LNG先物価格は概ね100万Btu当たり20~27ドル程度へと変動領域を切り下げた他、欧州の天然ガス価格を再び下回るようになっている。

しかしながら、少なくとも2021年8月中旬以降当該施設に天然ガスを供給するペガガ(Pgaga)ガス田で生産される天然ガスに水銀が混入している問題が発生したと報じられていたマレーシアLNG(操業者:ペトロナス、LNG生産能力年産2,920万トン)において、当初2022年3月に設置される予定であった水銀除去仮設備の設置が、より早期に完了する結果、最速で2月上旬には当該施設からのLNG出荷が回復する旨2022年1月7日に伝えられたものの、1月21日には当該装置の設置完了が遅延する旨伝えられた(2022年4月においてもLNG出荷上の影響が残る可能性もある旨2月8日に伝えられる)ことに加え、2021年12月2日には豪州のプレリュード(Prelude)LNG出荷施設(操業者:シェル、LNG生産能力年産360万トン)が電力供給問題で操業を停止したうえ、停止が3月まで継続する可能性がある旨シェルの最高経営責任者(CEO)であるファン・ブールデン(van Beurden)氏が2月4日に明らかにした他、同国のゴーゴン(Gorgon)プロジェクト第二液化施設(操業者:シェブロン、LNG生産能力年産520万トン)が電気系統の修理のため1月9日の週から1週間程度操業を停止すると1月12日に伝えられたものの、その後当該修理期間は延長される旨1月25日に報じられた上、2月1日には修理期間が2月7日にまで延長されたと伝えられた(但し同施設の作業は完了し操業を再開した旨2月8日に報じられる)。加えてインドネシアのボンタン(Bontang)LNG(操業者:プルタミナ他、LNG生産量年産1,150万トン)で、2021年10月下旬以降当該施設に供給される天然ガスを生産するガス田で天然ガスに大量の砂が混入している旨判明したことにより当該ガス田の生産が停止するとともに、LNGの生産が減少していると11月2日に伝えられたが、復旧作業は依然継続中であると1月19日に報じられた他、同国のタングー(Tangguh)LNG出荷施設第二液化施設(操業者:BP、同380万バレル)においても、当該施設に天然ガスを供給するガス田で生産される天然ガスから酸を除去する装置に不具合が発生したことに対し当該装置の修理を巡る作業が依然継続していると1月19日に伝えられる。さらにブルネイでも天然ガス液化施設に天然ガスを供給するガス田での天然ガス生産上の問題によりLNG出荷量が減少している旨2021年11月22日に伝えられる(長期にわたる生産によりガス田での天然ガス生産能力が減退していると見る向きもある)。このようにアジア地域で複数のLNG生産・出荷施設の操業能力が事実上低減した旨判明こともあり、減少したLNG供給を代替するためのLNGを調達する必要性がアジア地域の需要家間で高まった。加えて、2月に入り、アジア地域では気温が低下する場面が見られたことにより、暖房向けの民生部門及び空調向け発電部門での天然ガス需要が喚起された。このような要因がアジア市場でのLNG先物価格を下支えする格好となっている。

 

以上

(この報告は2022年2月14日時点のものです)

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