ページ番号1009271 更新日 令和4年2月18日

中国、原油輸入・製品輸出の前年割れはピークアウトの序章か

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レポートID 1009271
作成日 2022-02-16 00:00:00 +0900
更新日 2022-02-18 11:24:07 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場探鉱開発
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2021
Vol
No
ページ数 23
抽出データ
地域1 アジア
国1 中国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2022/02/16 竹原 美佳
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概要

  • 2021年に中国政府は石油市場に積極的に介入した。政府は国内生産強化に加え、地方製油所の操業等に関する調査、地方製油所への原油輸入割り当ての削減、国有石油企業等への石油製品輸出割り当ての削減、ガソリンや軽油にブレンドする芳香族炭化水素混合物(Mixed Aroma ; MA)、ライトサイクルオイル(Light Cycle Oil ; LCO)等の輸入への消費税賦課、国家備蓄原油や石油製品の放出を実施した。これにより原油輸入と石油製品輸出が減少に転じ、石油需給調整につながった。2022年も原油輸入や製品輸出割り当ての削減を継続しており、政府が石油需給・産業構造の調整ならびに排出抑制に本気で取り組んでいることが窺える。
  • 中国のガソリンや軽油輸出減少によりアジア地域は一時的な需給の引き締まりの影響が生じるが、穴埋めは可能との見方があり韓国はビジネスチャンスととらえる。
  • 中国は国内生産供給強化のみならず安価に調達したイラン原油の国家備蓄への活用やロシアとの長期供給契約延長の原油を北西部の備蓄に活用するなど安定調達にも余念がない。
  • 国有石油企業大手Sinopecは政府の“2030年の排出ピークアウト、2060年カーボンニュートラル”目標の実現と石油需給・産業構造調整に本腰を入れる姿勢から、石油需要ピークが2025年に到来すると見ている。PetroChinaは輸送燃料需要が2020年代半ばにピークを迎えるが、石化需要がけん引し、石油需要ピークは2030年頃と指摘しピークの時期に若干差異がある。いずれにせよ、今後需要の大きな伸びは期待できない。
  • 中国政府は石油産業への規制を強め、産業構造の調整、輸送燃料の代替加速を図ろうとしている。大手は再生可能エネルギーへの投資などにより一部相殺が可能だが、中小の地方製油所は追加の炭素コストにより操業が影響を受ける可能性。複数の政策措置により石油消費のピークが早まる可能性がある。

(各種情報)

 

1. 石油需給・産業構造の調整、環境・排出抑制への対応

2021年に中国の石油市場では政府の介入が目立った。中国政府は国内生産の強化に加え、地方製油所の操業等に関する調査、地方製油所への原油輸入割り当て抑制、国有石油企業等への石油製品輸出割り当て抑制、ガソリンや軽油にブレンドする芳香族炭化水素混合物(Mixed Aroma ; MA)、ライトサイクルオイル(Light Cycle Oil ; LCO)、希釈ビチューメン等の輸入への消費税賦課、国家備蓄原油・石油製品の放出を実施した(図1)。これにより原油輸入と石油製品輸出が減少に転じ、石油需給調整につながった。2022年もこれらの規制は継続・強化されており、政府が石油需給・産業構造の調整ならびに排出抑制に本気で取り組んでいることが窺える

図 1:中国の石油市場における主な動き
図 1:中国の石油市場における主な動き
各種情報に基づき作成

1-1. 原油生産は国内供給強化策で増加

2021年の国内原油生産量は前年比2%増(日量9万バレル増)の日量398万バレルである(国家統計局)。原油生産量は、2015年から2018年にかけて低油価に伴い国有石油企業が投資を縮小し、高コストの成熟油田の生産を抑制したことで減少していた。しかし2019年以降生産は毎年日量5~9万バレルの増加に転じている(図2)。政府がエネルギー安全保障の観点から国有企業に国内供給強化を働きかけたことや油価上昇に伴い企業が投資を増加させたことがその理由だ。国有石油企業3社の2021年の業績は出揃っていないが、PetroChinaの2021年の原油・天然ガス生産量は石油換算日量426万バレルで過去最高を更新し、業績は過去7年来最高と報じられている。Sinopecは2021年の業績予告(1月27日公表)において業績は過去10年来最高であり、国内原油生産は3,515万トン(日量70万バレル)で安定的に推移しており、天然ガス生産は前年比12%増の339億立方メートルとしている。CNOOCは2021年1-9月の業績報告において国内原油・天然ガス生産量は前年同期比12%増の石油換算107万バレルで、このうち国内原油生産量は同11%増(日量9万バレル増)の日量86万バレルとしている。CNOOCによる海洋油田の開発が好調だ。海洋油田の生産は日量数千バレルと規模は大きくないが、2021年には渤海Bozhong19-4をはじめ複数の油田が生産を開始した(図3)。CNOOCは「2022年戦略」において2022年も渤海Kenli6-1油田やBozhong29-6油田など複数の油田で生産開始を予定している。

図 2:中国の原油生産推移(2017~2021年)
図 2:中国の原油生産推移(2017~2021年)
国家統計局に基づき作成
図 3:CNOOCが2021年1-9月に生産を開始したプロジェクト
図 3:CNOOCが2021年1-9月に生産を開始したプロジェクト
“CNOOC 2021 Third quarter review”(CNOOC 2021年10月)

このように足元では増産が続く中国だが中長期的な生産の維持、増産には困難が伴うと思われる。中国CNPCが2021年12月26日に発表した「世界と中国のエネルギー展望」報告書2021版(以下「CNPCエネルギー展望」)によると2035年頃までシェールオイルなど非在来型や新規開発を含め年2億トン(日量400万バレル)の原油生産量維持を見込んでいる(図4)。しかし油田の自然減退が進み、シェールオイルや新規の開発は地質難易度やコストが高く、生産レベルの維持は容易ではないと思われる。

図 4:中国の中長期的な原油生産
図 4:中国の中長期的な原油生産
「世界と中国のエネルギー展望」報告書2021版(CNPC2021年12月)

中国ではPetroChinaとSinopecがシェールオイルの探鉱開発を進めており、第14次5カ年計画(2021~25年)最終年の2025年に2社合計で日量10万バレル程度の生産を目指している(表1)。

PetroChinaは大港油田、長慶油田、大慶油田でシェールオイルの開発を進めている。天津市浜海新区に位置する大港油田では2013年からシェールオイルの探鉱開発を始めたが技術的な問題で開発が遅れ、2019に安定的な生産が始まり2021年にシェールオイル日量2,000バレルを生産した。甘粛省慶陽市に位置する長慶油田の慶城(Qingcheng)油田では国土資源部に申請、認定されたシェールオイル原始埋蔵量(in-place)が2019年の26億バレルから2021年5月には77億バレルに増加した。地表を厚い黄土層で覆われた地溝帯で地震探鉱、掘削、フラクチャリングは困難とされるがPetroChinaは同油田で2025年に日量6万バレルの生産を目指している。大慶油田では2021年8月に古竜(Gulong)陸相シェールオイル国家モデル区を発足させた。生産能力日量6万バレルを構築し、2025年には日量2万バレルの生産を目指している。

Sinopecは勝利油田済陽(Jiyang)でシェールオイルの開発を行っている。2021年10月末までに試掘井4坑を掘削した。Sinopecは2025年に日量2万バレルの生産能力を構築するとしている。

またSinopecは2016年に新疆タリム盆地で発見した順北(Shunbei)油ガス田について2022年1月に資源量が7.3億バレル規模(コンデンセート6.4億バレル、天然ガス2,900億立方メートル)で14次五か年計画期の埋蔵量・生産量の増加に寄与すると発表したが、一方で油ガスの貯留層深度は平均7,300メートルで、超深部、超高圧、超高温の特徴を備え開発難易度が高いとしている。

表 1:最近のシェールオイル開発事例
表 1:最近のシェールオイル開発事例
各種報道に基づき作成
表 2:最近の新規発見事例
表 2:最近の新規発見事例
各種報道に基づき作成

1-2. 原油輸入20年来の前年割れ、精製処理量は記録更新

2021年の原油輸入量は前年比5%減(日量56万バレル減)の日量1,026万バレルであった(図5)。近年国内製油所の新増設や地方の独立系製油所の原油輸入割り当て量増加、国有石油企業と民間企業を含む貯蔵設備の増強に伴い原油輸入は10%前後の伸びを続けていたが、2021年は政府が地方製油所の原油輸入枠を抑制したことなどにより2001年以来20年ぶりに前年を割り込んだ。精製処理量は同4%増の日量1,407万バレル、石油見かけ消費(製油所処理量+石油製品純輸出入量)は同4%増(日量59万バレル増)の日量1,504万バレルでいずれも記録を更新した(図6)。原油輸入比率は72%である。

図 5:中国の原油輸入
図 5:中国の原油輸入
中国海関に基づき作成
図 6:石油見かけ消費(製油所処理量+石油製品純輸出入量、在庫は加味せず)
図 6:石油見かけ消費(製油所処理量+石油製品純輸出入量、在庫は加味せず)
国家統計局、中国海関に基づき作成

1-3. 原油輸入相手国により明暗が分かれる

原油輸入が増加し、首位を維持したサウジアラビアと地方製油所の原油輸入割り当て削減で輸入が減少したロシアなど輸入相手国により明暗が分かれた(図7)。またマレーシアやオマーンなど輸入が大幅に増加したがその理由はイラン原油の産地偽装であると言われている。

ここ数年サウジアラビアとロシアが首位を争う構図が続いているが、2021年のサウジアラビアからの原油輸入量は前年比3%増(日量6万バレル増)の日量175万バレルで前年と同様首位を維持し、輸入量全体の17%を占め最大の輸入相手先となった。ロシアからの輸入は同4%減(日量7万バレル減)の日量159万バレルで輸入量全体の16%を占めた。地方製油所への原油輸入割り当て削減が響いた。

3位のイラクは同10%減(日量12万バレル減)の日量108万バレルと大幅な減少となったが前年の大幅増(16%増)の反動という側面があると思われる。

ブラジルからの輸入は同24%減(日量24万バレル減)、米国が同42%減(日量16万バレル減)と大幅に減少した。地方製油所の原油輸入割り当て削減に加え、2021年と異なり価格裁定が働かず輸送費を含め割高であったことが原因と思われる。また米国の減少は経済合理性に加え米中関係の悪化も影響している。米国とは中国は2020年1月に経済貿易協議第1段階合意文書に調印、米国からのエネルギー産品の調達・輸入について2017年をベースに2020年に185億ドル、2021年に339億ドル拡大することで合意したが、2020年は中国政府が国有石油企業に輸入拡大を働きかけ、低油価も輸入拡大を後押ししたが、2021年は伸びなかった。目標未達に対し米国側からは新たな関税賦課を含む強硬論が浮上している。

図 7:中国の主な原油輸入相手国(2021年)
図 7:中国の主な原油輸入相手国(2021年)
赤は輸入が増加または横ばい、青は輸入が減少した国
百川、East &West Report、EIG等各種資料に基づき作成

1-4. 地方製油所への原油輸入割り当て

山東省他に位置する地方製油所は2015年まで輸入原油使用権を取得できず輸入原油の使用は限定的であった。製油所稼働率は3割程度にとどまり硫黄分の高い重油を加工し、国家の基準に合致しない環境負荷の高い軽油を生産、販売していた。また地方製油所の小規模・老朽化設備による非効率で環境負荷の高い操業が問題となっていた。政府は国有石油企業の独占打破と環境負荷軽減の観点から、老朽化設備の淘汰など条件を満たした地方製油所に対し2016年以降輸入原油使用権を発給した。原油輸入割り当ては毎年発給され、繰越すことはできない。地方製油所への輸入原油割り当て量は2016年の20社計日量150万バレルから2020年44社計日量364万バレルに拡大を続け、2020年に地方製油所は中国の原油輸入の34%を占める存在となった。地方製油所の稼働率は7割前後に上昇し、2021年3月には定期修繕前とはいえ8割を超える高水準となった。

一方で地方製油所はガソリンや軽油にブレンドする芳香族炭化水素混合物(Mixed Aroma ; MA)や、ライトサイクルオイル(Light Cycle Oil ; LCO)を輸入し、国有石油企業よりもガソリンや軽油を安く販売していた。LCOは硫黄や残留炭素を多く含み、標準的な軽油と比較して消費に伴うCO2排出量が多いものの、最終製品の燃料ではなく、石油化学製品のための原料油と見なされているため燃料税の課税対象外であった。

地方製油所の台頭により、原油輸入が増加する一方で国有石油企業による余剰のガソリンや軽油に余剰が生じ。2016年以降余剰のガソリン、軽油の輸出が増加した。政府は需給調整のため国有石油企業に輸出割り当てを発給した。地方製油所は他にも違法な操業やイランから不正に原油輸入を行っていると見られる。

2021年4月以降国家発展改革委員会は地方製油所の輸入や操業に関する調査を実施した。さらに同年6月には環境負荷軽減の観点からLCO、MA、希釈ビチューメンなどの輸入について1リットルあたり1.2~1.52元(20~26円)の消費税を賦課した。

さらに政府は2021年の地方製油所への原油輸入割り当てを抑制した。2021年は4回に分けて合計日量354万バレルが割り当てられたが、年間割り当て上限の日量486万バレルを大幅に下回った。2022年の原油輸入割り当て上限も前年と変わらず日量486万バレルに据え置かれた。

 

1-5. 中国のイラン原油輸入1年ぶりの計上と水面下の輸入継続

2021年12月、中国海関(税関)は制裁対象のイラン原油についてVLCCタンカー1隻分に相当する191万バレルの輸入したことを明らかにした。税関への計上は2020年12月(1,197万バレル)以来1年ぶりのことであった。輸入計上は米国の出方を窺ったものであり、今後さらに増加するとの見方が出ている。また、実際には税関には計上されていないものの、地方製油所がより多くのイラン原油を不正に輸入していると見られる。地方製油所は中東、シンガポール、マレーシアなどの沖合で船舶間輸送による原油の積み替え、原産地の偽装ならびに原油のブレンドなどの手法により割安なイラン原油を輸入している模様である。マレーシアやオマーンの輸出量を大きく上回る量の原油を輸入している。例えば中国税関ではマレーシアから2021年12月に日量72万バレルの原油を輸入したことになっているが、Energy Intelligenceによると同月のマレーシアの生産量は日量40万バレルであり、また同国は生産原油のほとんどを自国製油所で処理しているという(図8)。また中国はオマーンから12月に日量85万バレルの原油を輸入している。しかし、11月のオマーン(12月に中国に到着する原油の多くは11月積み)の生産量は日量80万バレルであり中国はオマーンの生産を上回る量を輸入していることになる。

図 8:中国のイラン、マレーシア、オマーン、ベネズエラからの原油輸入(万b/d)
図 8:中国のイラン、マレーシア、オマーン、ベネズエラからの原油輸入(万b/d)
百川、EIG、East &West Report等に基づき作成

中国のイランからの原油輸入量は税関上2017年の日量62万バレルから2021年は1万バレルと約60万バレル落ち込んでいるが、航跡調査会社の情報などから日量60~80万バレル程度の輸入が続いている模様だ。2021年のマレーシアとオマーンからの輸入は2017年に比べ、それぞれ日量24万バレル、28万バレル増加しており、他にも原油をブレンドするなどの手法が講じられていることから上記の輸入量推計は違和感がない(表3)。こうしたイランからの原油輸入によりアンゴラやガボンなど西アフリカの原油輸入が割を食い減少しているとも報じられている。

表 3:イラン、マレーシア、オマーンの原油生産・消費と中国の原油輸入
表 3:イラン、マレーシア、オマーンの原油生産・消費と中国の原油輸入
2020年の生産・消費はBP統計、2021年生産はIEA、中国の輸入は中国税関

1-6. 国家備蓄原油、初の入札による放出(2021年9月)

2021年9月、中国は原材料価格上昇の緩和や国内の需給安定を目的に国家備蓄原油を入札により放出した。入札による石油備蓄の放出は今回が初めてのことであった。中国の原油・石油製品の在庫は公表されていないが、国家備蓄と商業在庫を合わせ、9億3,800万バレル(2020年9月)をピークに2021年7月には約8億6,300万バレルまで減少したと報じられている。なお、油価が60ドルを超えた2021年4月に国有石油企業が商業在庫を取り崩し、油価が70ドルを超えた6月以降政府が国家備蓄原油を国有石油企業に払い出したと報じられているが、これらは競売方式ではなく、詳細は公表されていない。

2021年9日9日、国国家食糧物資備蓄局(National Food and Strategic Reserves Administration ; NFSRA)が国家備蓄原油を入札(競売)方式により複数回に分けて放出すると発表した。NFRSAは国家発展改革委員会傘下で中国の備蓄を管理する政府機関で傘下に国家石油備蓄中心(NORC)などの管理組織が存在する。中国の国家原油備蓄基地は2010年までに1期4基地(貯蔵容量1億332万バレル)が完成し、2期8基地(増強を含む、貯蔵容量2億万バレル)が2019年までに完成した。IEAが2021年3月に公表したOil 2021によると貯蔵容量は民間タンクの借り上げを含め約4億バレルである(図9、表4)。備蓄量は2017年12月に国家統計局が民間タンクの借り上げを含み2億7,500万バレルと公表後更新されていないが、調査会社Kplerによると2022年2月時点で約3億5000万バレルとされる。

9月24日、NFRSAはUAEのUpper Zakum原油など遼寧省大連港(大連新港、長興島港)に貯蔵されている原油738万バレルについて入札を実施した(表5)。国有PetroChinaおよび地方製油所大手の恒力石化が計443万バレルを落札した。Murban原油約295万バレルはロットの多さ(保証金(40元≒5.7ドル/バレル)を事前に納めなければならない)などの理由から落札がなかった模様である。

中国は今後も石油消費(原油輸入)が必要であり、備蓄放出は一時的なものである」という見方や「中国による備蓄原油放出は需給バランスの調整に十分な現物供給量とはならず、ハリケーン「アイダ」による米生産減少を部分的に相殺するに過ぎないという見方により、中国の備蓄放出は価格上昇緩和や需給安定には寄与しなかった。しかし入札対象の原油は2020年の低油価期(20~40ドル/bbl)に民間借り上げタンクに備蓄したもので当局は利益を確保(9月24日のWTIは73.98ドル)、また備蓄原油放出・活用の知見を得た模様である。

図9 中国の国家石油備蓄基地位置
図 9:中国の国家石油備蓄基地位置
表4 中国の国家石油備蓄基地概要
表 4:中国の国家石油備蓄基地概要
表 5:2021年の入札対象原油内訳
表 5:2021年の入札対象原油内訳
APIは華氏60度以下
出所:2021年第1回国家備蓄原油競売取引公告(NORC、2021年9月14日)に基づき作成

1-7. 米政府との協調放出は動きなし、新たな備蓄原油にイラン、ロシア原油?

2021年11月、米政府は中国や日本などと協調して石油備蓄を放出すると発表した。中国外交部は「中国は自国の需要に基づいて石油備蓄を放出する」と表明し、米国の要請に応じるかは明言しなかったものの、日米など主要消費国と足並みをそろえる考えを示唆した(ロイター2022年1月14日)。しかし、NFRSAは現時点で備蓄放出について計画を含め公表していない。

2022年に入り新たな備蓄原油としてイラン、ロシア原油の可能性が浮上している。2021年12月から1月の数週間にわたり広東省湛江(Zhanjiang)の国家備蓄タンクに約400万バレルのイラン産原油を注入していると報じられた(ロイター2022年1月25日)。中国側のコメントはない。

2022年2月にはオリンピック開幕に合わせプーチン大統領が訪中し、2月4日に習近平主席と会談した。双方の関係省庁と企業は15の関連協力文書に調印した。エネルギー関連では以下の3件(1. CNPCがGazpromと天然ガス購入販売取り決め、2. CNPCとRosneftが原油購入販売契約、3. CNPCとRosneftが低炭素発展分野における協力了解覚書)に調印した(表6)。

原油供給契約は既存契約の期間延長だが2035年前後までロシアと中国の原油長期供給契約は日量50万~70万バレルの安定的な供給が維持される。また原油供給契約は海上からの原油輸入減少にはつながらないが、新疆など北西部の戦略的石油備蓄の増強・置き換えに役立つ可能性が指摘されている。

なおロシア極東から中国向けの天然ガス供給は交渉段階であり、制裁対象のサハリン3鉱区の場合実際の供給までには時間を要すると思われる。ロシアは天然ガスパイプラインについて別途モンゴル経由中国向けの“Soyuz Vostok”(年50Bcmとされる)についても交渉中であり、将来中国向けの供給は現在の38Bcmから98Bcmに拡大する可能性がある。LNG長期契約量は合計910万トン(うち600万トンはArctic-2)に拡大しており、天然ガス輸入に占めるロシアのシェアは原油以上に高まる可能性がある。

表 6:中露エネルギー関連合意(2022年2月)
表 6:中露エネルギー関連合意(2022年2月)
各種報道に基づき作成

1-8. 政府の需給調整によりガソリン・軽油輸出は前年割れ

中国は石油需給調整のため、主に国有石油企業に石油製品(ガソリン、軽油、ジェット燃料)輸出枠を発給。ガソリン、軽油の輸出は2016年以降拡大していたが2021年は政府が排出・石油製品輸出抑制を目的に輸出割り当てを削減(前年比57%減の3,761万トン)し、MA、LCO等輸入への消費税を賦課したことで国内需給が引き締まり、前年を下回った。ガソリン輸出は前年比35.2%減の1,454万トン、軽油は同78.1%減の1,721万トンであった(図10)。もっとも国内のガソリン、石化向けLPGの需要は堅調であった。新エネルギー車(NEV)販売は前年比1.6倍の350万台に急増したが、自動車販売も3年ぶりに増加に転じ前年比3.8%増の2,628万台であった(図11)。またPDH(プロパン脱水素)プラント新規稼働でLPGの需要も伸びた。なお中国では純電気自動車(Battery Electric Vehicle:BEV)、プラグインハイブリッド(Plug-in Hybrid Electric Vehicle:PHEV)、燃料電池車(Fuel Cell Vehicle:FCV)をNEVと位置付けている。

2022年1月には1期輸出枠について前年同期(2,950万トン)を56%下回る1,300万トンを発給した。政府は今後全産業の排出量上限を設定する計画であり、2025年までに石油製品の輸出を禁止することを検討している。

図 10:ガソリン・軽油輸出
図 10:ガソリン・軽油輸出
中国能源統計等に基づき作成
図 11:自動車・NEV販売
図 11:自動車・NEV販売
中国自動車工業協会等に基づき作成

1-9. ガソリン・軽油の国家備蓄放出

政府が地方製油所への原油輸入割り当てを抑制し、ガソリンや軽油にブレンドするMA、LCO等輸入に消費税を賦課したことに加え油価上昇で国内の需給が引き締まり、特に軽油について10月に一部地域で供給制限(配給制)が行われる状況となった。例えば福建省の給油所では軽油1回の給油が25リットルに相当する200元(31ドル)に制限された。トラックの燃料である軽油の供給逼迫は物流の混乱や経済圧迫要因となることが懸念された。

政府は供給のひっ迫や価格高騰の緩和を目的にガソリン・軽油の国家備蓄放出を実施、公表した。10月31日、国家食糧物資備蓄局(NFSRA)は国家発展改革員会と財政部の批准を経て、国家備蓄のガソリンと軽油の年度ローテーション(入替、市場への払い出し)を実施したと発表した。年度ローテーションについて公表されたのは今回が初めてである。年度ローテーションの詳細は不明だが、中央電視台(CCTV)はCNPC、Sinopecと協調し石油製品の供給を増加、供給逼迫緩和に効果が出たと報じた(CCTV2021/10/31)。政府は年度ローテーションに加え、国有石油企業に供給強化を働きかけた。国有石油企業傘下の製油所は9月以降軽油収率の引き上げを図った。これにより7月以降前月比減少が続いていた軽油生産量は10月に12%、11月に13%増加し、軽油収率も25%に上昇した。国内のひっ迫は11月には収まり12月の軽油生産は前月比2%増の水準にとどまり、国有石油企業は低水準ではあるが同月余剰の軽油輸出を再開した。

 

1-10. 中国の製品輸出減少で周辺国への影響は?

油価上昇が最大の要因だが、中国からの輸出減少もアジア地域での石油製品供給を逼迫させ、それが地域の軽油価格を高水準に押し上げる一因となった。シンガポールにおける軽油価格の上昇に加え、日本では独立系の給油所などが販売する輸入ガソリンの1割強が中国製となっており、割安な輸入品が減ることで足元のガソリン高の一因と報じられた(日経2022年1月28日)。

中国政府が石油需給・産業構造の調整、環境・排出抑制への対応を行うことで中国の石油製品輸出は今後縮小する可能性がある。アジア地域では一時的な製品需給の引き締まりによる影響が生じるであろうがその穴埋めは可能と見られている。例えば韓国はビジネスチャンスととらえるだろう。韓国は中国がガソリン、軽油、ジェット燃料の輸出を減らすことにより、韓国の石油製品のアジア市場におけるシェア拡大につながり、同国の精製業界にとり有利に働くと考えている。また、アジア市場の価格が他の市場より魅力的であれば、中東やインドがアジア市場に製品を振り向ける可能性もある。これは石油市場の流動性を反映している。

 

2. 国有石油大手、2025年石油需要ピークを示す

国有石油企業大手Sinopecは政府の“2030年の排出ピークアウト、2060年カーボンニュートラル”目標の実現と石油需給・産業構造調整に本腰を入れる姿勢から、石油需要ピークが2025年に到来すると見ている。PetroChinaは輸送燃料需要が2020年代半ばにピークを迎えるが、石化需要がけん引し、2030年まで石油需要は増加が続くと指摘しピークの時期に若干差異がある。

 

2-1. Sinopec、2025年の石油需要ピークを示す

2021年12月、中国SINOPEC経済技術研究院は「2022年中国エネルギー・化学産業発展報告」を発表した。同報告は中国政府が示した“2030年の排出ピークアウト、2060年カーボンニュートラル”の目標のもと、中国のエネルギー・化学産業の発展ルールと方向性に焦点を当てたものである。

同報告では中国の石油消費は2025年にピークを迎える。2030年までにガソリン需要は徐々にプラトーに到達、ジェット燃料は成長を続け、新エネルギー車(NEV)の大規模な開発が進むとしている。また2030年代に交通輸送分野の燃料代替が加速する。代替燃料の主役は電力。現在輸送燃料代替の58%を天然ガスが占めるが、今後EVによる代替が増え、2030年には代替の47%、2040年には73%を占めると見る。

石油消費は輸送燃料に代わり、今後は化学分野が主流となる。現在、化学分野は石油消費の16%を占めるが、2030年には28%、2060年には45%に上昇すると見る。

精製産業構造調整の方向性は大規模化、製油所・石化プラントの統合開発による最適化、燃料代替の加速、市場の監督・管理強化(輸出のコントロールと石油製品規格)としている。

また、将来はCCUSやPTX(電気化学・合成燃料技術)技術により炭素循環モデルで化学産業チェーンを再構築するとしている。

 

2-2. CNPC、2020年代の輸送燃料ピーク、石化需要伸長を示す

2021年12月、中国CNPCは「世界と中国のエネルギー展望」報告書2021版を発表した。同展望では中国政府が示した“2030年の排出ピークアウト、2060年カーボンニュートラル”目標の実現から逆算(バックキャスト)した「持続可能転換」シナリオが示された。

同シナリオでは交通輸送分野、特に乗用車の分野で電化や天然ガス・水素により石油の代替が進む。自動車の保有台数は2020年の2.8億台から2050年に4億4千万台に増加するが、新エネルギー車(NEV)のシェアは2029年に10%、2033年に20%、2036年に30%、2042年に50%を占めると指摘している(2021年末時点の自動車の保有台数は3億300万台で、このうちNEVは2.6%の784万台)。また輸送燃料需要は2020年代半ばにピークを迎えるが石化需要がけん引し2030年頃7.7億トン(日量1,560バレル)でピークに到達すると指摘している。過去10年石油需要が日量約50万バレル増加、世界の石油需要をけん引してきた中国だが今後10年の需要の伸びはその半分以下となる見通しである。国内原油の生産日量400万バレルが維持できていれば、輸入量は現状(2021年日量1,026万バレル)より日量130万バレル前後増加し、輸入比率は75%程度の見通しとなる。

図 12:輸送用エネルギーの変化
図 12:輸送用エネルギーの変化
「世界と中国のエネルギー展望」報告書2021版(CNPC2021年12月)
図 13:シナリオ別石油消費(億トン)
図 13:シナリオ別石油消費(億トン)
「世界と中国のエネルギー展望」報告書2021版(CNPC2021年12月)
図 14:シナリオ別分野別石油需要構造
図 14:シナリオ別分野別石油需要構造
「世界と中国のエネルギー展望」報告書2021版(CNPC2021年12月)

3. 石油産業への環境・排出抑制対応強化方針

中国政府は“2030年の排出ピークアウト、2060年カーボンニュートラル”の目標のもと、石油産業への規制強化、産業構造の調整、輸送燃料の代替加速を図ろうとしている(図15)。大手は再生可能エネルギーへの投資などにより一部の相殺が可能だが、中小の地方製油所は追加の炭素コストにより操業が影響を受ける可能性。複数の政策措置により石油消費のピークが早まる可能性がある。

図 15:石油産業への環境・排出抑制対応強化方針
図 15:石油産業への環境・排出抑制対応強化方針
各種情報に基づき作成

3-1. 排出権取引に石油精製・化学部門を組み込みへ

中国の排出権取引に石油精製・化学部門が2022~23年に組み込まれる可能性が出ている。中国は2021年7月16日に中国上海環境能源交易所(SEEE;Shanghai Environment Energy Exchange)において全国版の温室効果ガス排出権取引制度(ETS)を開始した。中国では全国版に先駆けて2011年以降、北京市、上海市、天津市、重慶市、湖北省、広東省、深圳市の7地域で地域版の排出権取引が試行されていた。2017年にこれらの地域版排出権取引所は全国版の排出権取引市場設立の権利を得た。2021年1月に生態環境保護部が「炭素排出権管理法」(試行)を公布し2月1日に施行した。これにより全国統一の排出権取引市場における排出権の分配、登録、取引、決済、温暖化ガス排出報告などの取引管理ルールが定められた。初日の7月16日の終値は排出量1t-CO2あたり52.73元(約6.9ユーロ、約900円)、欧州排出量取引市場(EU-ETS)における欧州炭素排出枠価格(EUA)53ユーロ(約6,900円)の約8分の1の価格で、出来高は414万t-CO2、2億1000万元であった。

現在の取引の対象は温室効果ガスの年間排出量2.6万t-CO2以上の発電事業者2,225社(自家発電設備保有事業者を含む)、年間総排出量は約40億t-CO2で中国の総排出量の4割に相当する。2019-20年の排出枠は2018年の発電(熱)の70%に基づいて計算され、無償で事前に割り当て(19-20年実績に基づき修正)られる。また自主的排出削減(CCER)は同年排出枠の5%まで使用が可能である。

2021年の取引は1億7,900万t-CO2、76億6,100万元(約1,390億円)、12月31日の終値は1トン当たり54.22元で初日に比べ13%上昇した。

政府は2025年までに地方版取引所と全国統一取引所を統合させる他、電力に次いで排出が多い鉄鋼、建材、石油化学、化学、非鉄金属、製紙、航空を追加する方針を示していた。追加業種を含む総排出量は50億t-CO2に達しEU-ETSと同様に排出量の5割をカバー(EU-ETSの取引量は年間約20億t-CO2で、EU量の排出の5割)する。

そして、石油精製・化学部門を2022年から23年に組み込む可能性が2021年11月に報じられた。同部門は中国のGHG排出の15%を占める。年間排出量2.6万t-CO2以上の企業が対象となる予定である。

SinopecやPetroChinaなどの大手国有石油企業は再生可能エネルギーや森林再生プロジェクトへの投資を拡大し、国内のボランタリークレジット(CCER)により排出義務の一部を相殺することが可能である。CNOOCも洋上風力発電への投資やカーボンニュートラルLNGの取引に取り組んでいる。しかし中小の地方製油所は追加の炭素コストにより操業が影響を受ける可能性がある。

 

3-2. メタン排出抑制行動計画策定へ

2021年11月25日、中国生態環境部は定例会見においてメタン排出削減に向けた行動計画を策定する方針を明らかにした。石炭採掘や農業、固形廃棄物、汚水処理、石油・天然ガスの各業界を対象にメタンの排出削減策を設定する。同部は「メタンの排出削減計画を策定することは気候変動に積極的に対応する上で重要な作業の一つであり、中米共同宣言を実行するための重要な措置だ」と強調した。

11月10日、米中は気候変動の協力強化に関する共同宣言を発表した。米中両国はメタン排出削減、再エネ・省エネ分野などで協力、両国が2035年の排出削減目標を2025年に国連に提出することを確認した。また共同で作業部会を設置し、今後10年の温暖化防止に向けた行動強化で定期的に意見交換を行うとした。2022年前半に会合を開く予定である。

生態環境部気候変動対応局の陸新明副局長は記者会見で、「排出抑制に向けた行動計画の策定は、気候変動に積極的に対応する戦略を実施する上で重要な作業であり、米中共同宣言を履行するための重要な施策だ」と説明した。また「中国国内のメタン排出抑制状況を徹底的に調査し、石炭採掘や農業、固形廃棄物、下水処理、石油ガスといった分野の効果的な排出削減策を定める」と述べた。さらに、石油ガス分野のメタン排出抑制や利用に基準を設けるとともに、市場取引を利用した排出削減を企業に促す考えを示した。具体的な方針はまだ示されていないが今後メタン排出規制が強化されることは間違いない。

 

3-3. 2025年に精製処理能力を10億トン以内に抑制へ

国務院は2021年10月26日に「2030年までの排出ピークアウトに向けた行動計画」(以下、「行動計画」)を発表した。省エネ・排出抑制、電源の非化石化、石炭の抑制、合理化、ガスシフト、工業分野の低炭素化、EV・バイオ燃料促進などの方針を示した。工業分野の低炭素化について「行動計画」では低炭素、電化を進めると示されている。また各産業が果たすべき取り組みが示されており、鉄鋼、非鉄金属、建築材料、石油化学製品について排出ピークアウト計画策定を課した。また石油産業については2025年に精製処理能力を10億トン以内に抑制することが示されている(表7)。

表 7:中国の2030年排出ピークアウトに向けた行動計画概要
表 7:中国の2030年排出ピークアウトに向けた行動計画概要
「2030年排出ピークアウトに向けた行動計画」(国務院2021年10月)に基づき作成

 

以上

(この報告は2022年2月16日時点のものです)

 

参考資料

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