ページ番号1009314 更新日 令和4年4月1日

原油市場他:基準原油生産量引き上げに伴いOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年5月につき前月比で日量43.2万バレル減産措置を縮小する旨決定(速報)

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レポートID 1009314
作成日 2022-04-01 00:00:00 +0900
更新日 2022-04-01 10:43:21 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 12
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
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地域3
国3
地域4
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地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2022/04/01 野神 隆之
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概要

  1. 2022年3月31日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、2021年8月以降毎月前月比で日量40万バレル規模を縮小しながら実施している減産措置(2022年3月現在日量256万バレル)を、2022年5月については前月比で日量43.2万バレル規模を縮小して実施する旨決定した。
  2. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は5月5日に開催される予定である。
  3. 減産措置縮小規模を従来の日量40万バレルから同43万バレルへと引き上げた背景には、2022年5月よりOPECプラス産油国基準原油生産量が一部産油国で増加(従来のものよりも合計で日量163万バレル拡大)したことがある。
  4. 前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催以降、2月24日のロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始に対し、3月8日に米国のバイデン大統領がロシアからの原油等の輸入を禁止する旨発表したこともあり、原油価格(WTI)はこの日1バレル当たり123.70ドルの終値と2008年8月1日以来の高値の終値に到達した他、その後も概ね1バレル当たり100ドルを超過するなど高水準で推移した。
  5. これに伴い、2月28日時点では1ガロン当たり3.701ドルであった全米平均ガソリン小売価格も上昇傾向となり、3月14日には同4.414ドルの週間統計史上最高水準に到達した他、米国以外の消費国でも石油製品価格が高騰するなどした。
  6. このようなことから、一部の石油消費国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)等に対し増産の働きかけを行ったものと見られ、例えば、3月9日にはUAEのアルオタイバ駐米大使が、同国は増産(加速)を支持しており、他のOPEC産油国に対しても増産(加速)の働きかけを行う旨表明した他、同日米国のブリンケン国務長官もUAEは増産(加速)を支持している旨明らかにした。
  7. しかしながら、アルオタイバ駐米大使の発言の数時間後、UAEのマズルーイ エネルギー相が同国AEはOPECプラス産油国の合意に確約しているとして、アルオタイバ駐米大使の発言には必ずしも同調せず、OPECプラス産油国間では、ロシアからの供給が減少する兆候が見られる部分はあるものの、3月の同国のからの原油生産量はむしろ前月比で増加している旨示唆されたこともあり、足元世界石油供給不足が深刻化しているとの証拠が必ずしも見出せない状況となっていたことにより、今次閣僚級会合においても、5月の減産措置につき前月比で日量43万バレルの縮小と、基準原油生産量拡大に伴う減産措置縮小規模の微調整を行うにとどまったものと考えられる。
  8. 今回の閣僚級会合開催前日の3月30日夜(米国東部時間)に米国が最大1.8億バレル(日量100万バレルを6ヶ月間)の戦略石油備蓄(SPR)放出を検討している旨伝えられた(その後米国バイデン大統領が正式発表した)ことが、OPECプラス産油国閣僚級会合開催当日の3月31日の原油相場に下方圧力を加える格好となったことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり100.28ドルと、前日終値比で7.54ドルの下落となった。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2022年3月31日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合をテレビ会議形式で開催し、2021年8月以降毎月前月比で日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置(2022年3月現在日量256万バレル)を、2022年5月については日量43.2万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1及び参考1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (2) 減産措置縮小規模を従来の日量40万バレルから同43.2万バレルへと拡大した背景には、2022年5月より一部OPECプラス産油国基準原油生産量を引き上げた(合計で日量163万バレル)ことがあるとされ、消費国によるOPECプラス産油国に対する増産要求に対しOPECプラス産油国が譲歩したわけではない旨3月28日に伝えられた。

 (3) また、基準原油生産量が増加した分だけ、2022年5月以降のOPECプラス産油国全体の減産幅は拡大することになり、基準原油生産量の拡大がなければ2022年5月の減産幅は日量176万バレルとなるところ、基準原油生産量の拡大により、減産幅は同339万バレルとなった。

 (4) 別途、当該会合では、現状世界石油需給が十分に均衡している他、足元の原油価格の変動は石油需給によるものではなく継続する地政学的リスク要因の展開によるものであるとOPECプラス産油国が認識していることが示された。

 (5) また、これまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国が2022年6月末までに減産目標未達成部分につき追加減産を実施(することにより減産目標を達成)することを含め、減産目標の完全遵守に固執することが極めて重要であることを当該会合で再確認するとともに、(該当する産油国は減産目標を完全達成するための)追加減産計画を提出するよう要請した。

 (6) なお、今回の閣僚級会合は3月31日午後1時50分頃(オーストリア ウイーン時間)開始され、12分間という短時間で終了したとされ、これは前回の閣僚級会合の開催時間である13分間を上回る記録的な短さであった。

 (7) また、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は5月5日に開催する旨今次閣僚級会合で決定した。

 (8) さらに、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後に臨時OPEC総会が開催され(参考2参照)、OPEC産油国の原油生産量を算出する際に利用される二次情報源(従来は国際エネルギー機関(IEA)、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)、プラッツ(Platts)、アーガス・メディア(Argus Media)、エナジー・インテリジェンス(Energy Intelligence)及びIHSマークイット(IHS Markit)の6機関であった)に関し、IEAに代えてウッド・マッケンジー(Wood Mackenzie)及びライスタット・エナジー(Rystad Energy)を利用することを決定した(即時適用)(OPECプラス産油国と米国等西側諸国等との対立が背景にあると指摘する向きもある)。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を事実上開始したことにより、西側諸国等は対ロシア制裁を発動したが、その報復措置としてロシアからのエネルギー供給削減が実施される可能性があるとの懸念が市場で増大したことにより、前々回閣僚級会合開催(2月2日開催)直前の2月1日に1バレル当たり88.20ドルの終値であった原油価格(WTI)は前回閣僚級会合開催(3月2日開催)直前の3月1日には同103.41ドルの終値となるなど上昇傾向となった(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

 (2) しかしながら、この時点では、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、以前に比べ供給過剰幅は縮小しつつあるものの、2022年の世界石油需給バランスはなお供給過剰になると予想していた。

 (3) また、前回閣僚級会合開催時点では、ロシアからの石油供給を直接制限するような西側諸国等の制裁は発動されていなかったこともあり、足元の原油価格の上昇は実際の石油供給不足によるものではなく、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりによる、ロシアからの石油供給途絶の可能性に対する市場関係者の懸念等によるものであり、そのような懸念が後退した場合、石油供給過剰感が市場で醸成される結果、原油価格が急落する恐れがあるとの認識を持っているものとOPECプラス産油国は示唆していた。

 (4) また、イラン核合意正常化に伴う西側諸国等とイランとの協議が妥結に向け最終段階にさしかかっていたことから、この先の協議妥結後米国による対イラン制裁が緩和されるとともにイランからの原油供給が拡大することにより、世界石油需給緩和感が市場で増大するとともに原油相場に下方圧力が加わる可能性がある旨OPECプラス産油国感では不安視された。

 (5) このようなOPECプラス産油国の減産措置縮小加速に対する慎重な姿勢を反映し、前回のOPEC産油国閣僚級会合では、従来の方針通り前月比で日量40万バレルの規模での減産措置の縮小が決定されたものと考えられる。

 (6) 前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催以降、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に対し、3月8日に米国のバイデン大統領がロシアからの原油等の輸入を禁止する旨の新たな制裁の発動を発表したこともあり、この日原油価格(WTI)は1バレル当たり123.70ドルの終値と2008年8月1日以来の高値の終値に到達した他、その後も概ね100ドルを超過するなど高水準で推移した。

 (7) それに伴い、2月28日時点では1ガロン当たり3.701ドルであった全米平均ガソリン小売価格も上昇傾向となり、3月14日には同4.414ドルと1993年4月以来の同国週間統計史上最高水準に到達するなど、米国の消費者の不満が高まっても不思議ではない状況となるなど、石油消費国のガソリン小売価格等に上方圧力が加わるようになった(図2参照)。

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

 (8) このようなことから、一部石油消費国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)等に対し増産を働きかけており(3月16日に英国のジョンソン首相がサウジアラビアのムハンマド皇太子及びUAEのムハンマド皇太子と会談、エネルギー問題につき協議している)、この結果例えば、3月9日にはUAEのアルオタイバ(Al Otaiba)駐米大使が、同国は増産(加速)を支持しており、他のOPEC産油国に対しても増産(加速)の働きかけを行う旨表明した他、同日米国のブリンケン国務長官もUAEは増産(加速)を支持している旨明らかにしたといった場面も見られた(ただ、最近米国は必ずしもサウジアラビア等に対し増産を強く働きかけていたわけではなく、むしろ米国等の戦略石油備蓄(SPR)放出の際に減産措置の強化で以て対抗するような方策を行わないような働きかけを行っていた旨示唆する向きもある)。

 (9) 他方、ウクライナへの事実上の侵攻に伴う西側諸国等のロシアに対する制裁措置への抵触の可能性や評判リスク等により、西側諸国石油会社等がロシアにより販売される石油の購入を敬遠するようになりつつあったこともあり、3月16日にはIEAが、2022年のロシア石油供給が日量230万バレル減少すると見込む一方、ロシアを中心とした旧ソ連諸国の石油需要が2022年に日量52万バレル下振れすることを含め2022年の世界石油需要を日量95万バレル下方修正するとの見通しを明らかにしたこともあり、2022年の世界石油需給バランスは、OPECプラス産油国が毎月前月比で日量40万バレル(2022年4月まで)及び同43.2万バレル(同年5月以降)減産措置を縮小しても、年全体として概ね均衡するものと想定された(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(3月31日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

(10) また、イラン核合意正常化によるイラン原油供給拡大や中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う都市封鎖の実施による同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化等から世界石油需給が緩和することに対して懸念を持つOPECプラス産油国関係者もいたとされる。

(11) さらに、3月初頭以降のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)が日量1,111万バレルと推定され、2月の同1,106万バレルから微増となっている旨しばしば示されたこともあり、ロシアからの石油供給自体が減少しているとの証拠は見出せなかった(ただ、実際には、原油及び石油製品がロシアの港湾から出荷されたものの、販売先が確定できない結果、事実上洋上でタンカーに貯蔵されたままとなる格好となっているものが相当量あるものと言われている)。

(12) そして、世界石油市場での供給不足の証拠が必ずしも見出せない中、減産措置縮小加速に対する消極的な姿勢がOPECプラス産油国関係者によってしばしば示唆されるようになった。

(13) 3月9日のUAEのアルオタイバ駐米大使の発言の数時間後、UAEのマズルーイ エネルギー相がUAEはOPECプラス産油国の合意(この時点で毎月前月比日量40万バレルの減産措置縮小)に確約しているとして、同国のアルオタイバ駐米大使の発言には必ずしも同調していない旨示唆した。

(14) また、サウジアラビア内閣は石油市場の安定と均衡においてOPECプラス産油国合意は基本的な役割を果たしていると確認した旨3月22日に国営サウジ通信が報じており、石油消費国等OPECプラス産油国以外の石油市場関係者からの圧力によっても既定のOPECプラス産油国の減産措置を巡る方針を容易に変更するべきではない旨示唆された。

(15) さらに、大部分のOPEC産油国は、足元の原油価格の大幅上昇は、(世界石油需給の実際の引き締まりと石油供給不足に伴うものではなく、)地政学的リスク要因(に伴う石油需給の引き締まりの可能性に対する石油市場の懸念が先行したこと)によるものであるとして、従来の減産措置の縮小方針の変更には消極的であることが示唆される旨改めて3月22日に伝えられた。

(16) また、ウクライナを巡り西側諸国と対立するロシアがOPECプラス主要産油国であることもあり、サウジアラビアやUAE等と石油市場における利害一致していることが、今般のOPECプラス産油国閣僚級会合での方針決定に影響していると示唆する向きもある。

(17) 3月28日にUAEのマズルーイ エネルギー相は、ロシアは(OPECプラス産油国の)重要な構成国である旨発言している他、サウジアラビアもロシアを重要視する結果減産措置縮小方策に慎重になっているとOPECプラス産油国関係筋が見ている旨3月28日に伝えられる(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は3月28日に、OEPCプラス産油国は政治問題に関与すべきではないとも発言している)。

(18) また、3月25日には、イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされ、サウジアラビアやUAE等が支援するイエメンのハディ暫定大統領派勢力と事実上の内戦状態となっている)がサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが同国西部ジッダに保有する石油貯蔵施設を無人攻撃機等で攻撃し、貯蔵タンク2基で火災が発生するなど、フーシ派武装勢力によるサウジアラビアやUAEへの攻撃がしばしば行われているにもかかわらず、米国が2021年2月16日を以てフーシ派武装勢力に対するテロ組織指定を解除(同年2月12日に同国のブリンケン国務長官が発表)した他、イラン核合意正常化に向けて米国がイランと協議を進めることにつき、サウジアラビアが懸念していたことが、OPECプラス産油国の意思決定に影響していた部分もあるものと推察される。

(19) 従来の方針による減産措置縮小を超えた規模の縮小実施は、西側諸国等によるイエメン内戦でのサウジアラビア等への支持とイラン核合意を巡るサウジアラビア等への安全保障の確保を条件とする旨関係筋が明らかにしたと3月28日に伝えられる(また、国際社会はフーシ派武装勢力による中東湾岸諸国石油施設攻撃に対し真剣に考えるべきである旨3月28日にサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相も明らかにしている)ことが、前述のサウジアラビアの懸念を反映しているものと考えられる。

(20) 他方、2021年7月2日に開催されたOPECプラス産油国会合で、UAEが、自国の原油生産能力が拡大しているとして自国の基準原油生産量の引き上げを認めるよう主張、同年7月18日に改めて開催した閣僚級会合において2022年5月より、UAE、サウジアラビア、イラク、クウェート及びロシアといった一部OPECプラス産油国の基準原油生産量を引き上げる旨決定した。

(21) 従来UAEは、石油が消費されなくなる将来を見据えて、自国で発見され開発される石油資源につき、できるだけ速やかに生産し収益を確保することにより、それら資源が座礁資産となることを回避することを目指しているものと見られていた。

(22) しかしながら、足元では、石油供給不足の証拠が見出せない一方、原油価格上昇は地政学的リスク要因に伴う市場の懸念によるものであることにより、無闇に減産措置縮小を加速してしまうと、市場の心理が急変する結果、原油価格が急落、産油国収入も急減する恐れがあると見られたことにより、UAEを含めOPECプラス産油国は原油生産拡大を図るよりもOPECプラス産油国での秩序立った方針に基づき原油生産を調整した方が、少なくとも短期的には相対的に原油収入を確保しやすいとの考え方の下、基準原油生産量の引き上げに従って減産措置を微調整した結果、2022年5月については前月比で日量43.2万バレルの減産措置の縮小方針を決定するに至ったものと考えられる。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 今回の閣僚級会合の結果は、ウクライナ情勢緊迫化に伴うロシアからの石油及び天然ガス等のエネルギー供給削減による石油需給引き締まりの可能性に対する懸念から、原油価格が上昇しつつある中、OPECプラス産油国が原油価格上昇沈静化のための減産措置縮小加速に対し事実上消極的な姿勢を示したと市場関係者が受け取ることにより、原油相場に上方圧力を加えても不思議ではない状況であったものの、閣僚会合開催前日の3月30日夜(米国東部時間)以降米国が最大1.8億バレル(日量100万バレルを6ヶ月間)の戦略石油備蓄(SPR)放出を検討している旨伝えられた(その後米国バイデン大統領が正式発表した)ことが、OPECプラス産油国閣僚級会合開催当日の3月31日の原油相場に下方圧力を加える格好となったことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり100.28ドルと、前日終値比で7.54ドルの下落となった。

 (2) 当面の石油市場での注目点の一つは、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴う、西側諸国等の対ロシア制裁発動状況とロシアからの事実上の石油供給の減少、及び市場での世界石油需給引き締まり感の増大具合になるであろう。

 (3) 両国による停戦協議は3月12日以降オンライン形式により断続的に実施された他、3月29日にはトルコのイスタンブールでウクライナとロシアが停戦に向けた対面での協議を実施、その後ロシアはウクライナの首都キエフ周辺及び同国北部のチェルニヒウ近郊での軍の配備を大幅に削減する旨発表したが、ロシアの大幅な軍の撤退は見られない旨3月30日にウクライナ国防省が発表するなど、戦闘状態が収束する兆候は見られない。

 (4) そのような中、3月17~23日のロシアからの原油輸出量が前週比で26.4%減少し1日当たり49.53万トンと推定日量365万バレル程度に減少した(減少幅は同131万バレルと推定される)旨3月28日に報じられるなど、ロシアからの石油供給が事実上減少している旨示唆されることもあり、少なくとも短期的にはロシアを含むOPECプラス産油国による減産遵守率が上昇するとともに、世界石油需給の引き締まり感が市場で強まる結果、原油価格が下支えされるといった展開が想定される。

 (5) また、OPECプラス産油国の主要構成国であるサウジアラビア及びUAEは、ロシアとの協力関係を維持しつつ、イエメンのフーシ派武装勢力に対する防衛問題及び核合意正常化に向けた協議が行われているイランに対する安全保障問題に対し米国等から納得の行く方策の提案等が得られないようであれば、今後開催される予定のOPECプラス産油国においても、減産措置縮小の取り扱いにつき慎重な姿勢を続ける可能性があるものと考えられる。

 (6) 他方、中国が秘密裏にロシアから原油を輸入しているうえ、インドもロシア産原油購入を活発化している他、一部の石油商社が原油の売買を実施していると言われており、今後もロシア産原油が中国及びインド(但しインドのロシアからの石油購入活発化に対し、具体的な制限量を提示することはなかったものの、望ましくない旨3月30~31日に米国が警告した旨伝えられる)等に向け輸出される(また、3月28日にはインドネシア国営石油会社プルタミナが安価で原油を調達できる良い機会であるとして、ロシア産原油購入を検討している旨伝えられる)ことにより、中長期的には西側諸国等の石油会社によるロシアからの石油購入敬遠の動きに伴うロシアからの世界石油市場への石油供給の事実上の減少の影響をある程度相殺する可能性もあるものと考えられるが、少なくとも一時的にはタンカー配船等を含めた輸送上の混乱等を含め、ロシアからの円滑な石油供給に支障が発生する結果、石油需給引き締まり感が市場で強まるとともに原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることがありうる。

 (7) さらに、ロシアから石油を購入する企業が拠点とする第三国に対しても制裁を発動する等米国等が対ロシア制裁を強化するといったことになるようであれば、世界石油市場からロシア産石油供給が実質的に閉め出されることにより、石油需給引き締まり感が市場で強まるとともに、原油相場が上振れするといった展開となる可能性も否定できない。

 (8) 他方、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議は、これまでの中でもっとも妥結に接近した旨、3月23日にイランのアブドラヒアン外相が表明した。

 (9) しかしながら、当該協議は妥結に向け接近していない他、確実に妥結するというわけでもない旨米国国務省のプライス報道官が3月21日に明らかした他、イラン側から米国に対しイラン革命防衛隊への制裁解除の要求があるとして、イラン核合意正常化が直ちに達成されるわけではない旨米国バイデン政権のイラン担当特使のマレー氏が3月27日に示唆するなど、当該協議の行方は依然不透明感が漂う。

(10) また、協議が妥結したとしても、妥結後のイラン核合意正常化の手続きは段階的なものになると報じられており、第一段階としては、既存の核合意から逸脱している核開発活動をイランが核合意に定められている水準に戻すとともに、米国は現在実施中であるイランの対外資産の凍結を解除することになる、と言われており、その後手続きの遵守状況が順調であれば、米国が対イラン制裁を緩和することにより事実上イラン産原油の輸出が認められると言った段取りになると見られることから、イラン核合意正常化に向けた協議妥結により、イランからの原油供給が直ちに拡大し始める訳ではない可能性がある。

(11) さらに、特にイラン陸上の油田は老朽化しているとされており、増産を急ぐと地下の圧力が異常を来し、生産が伸び悩む恐れがあると見られることにより、イランが慎重に増産を進める結果、同国の原油生産増加ペースは緩やかなものになる可能性がある(2016年1月16日に到達したイラン核合意による米国の対イラン制裁の事実上の解除後のイラン原油生産は最終的には対イラン制裁時に比べ日量100万バレル(日量290万バレルから同385万バレルへ)拡大したものの、毎月の増産ペースは日量1~29万バレル程度であり、最終的には生産回復には10ヶ月を要した)。

(12) このようなことから、特にロシアからの原油供給が相当程度減少する可能性があるとの懸念が市場で強い状況下においては、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議妥結接近の情報は、時として原油相場に下方圧力を加える場面が見られる可能性はあるものの、その規模及び期間は限られたものになる可能性がある。

(13) その他、中国の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖に伴う同国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化に対する市場の観測等にも原油相場が影響を受けるものと見られる。

 

(参考1:2022年3月31日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

27th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 08/2022
Vienna, Austria
31 Mar 2022

Following the conclusion of the 27th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting, held via videoconference on March 31, it was noted that continuing oil market fundamentals and the consensus on the outlook pointed to a well-balanced market, and that current volatility is not caused by fundamentals, but by ongoing geopolitical developments.

The OPEC and participating non-OPEC oil-producing countries decided to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12th April 2020 and further endorsed in subsequent meetings including the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on the 18th July 2021.
  2. Reconfirm the baseline adjustment, the production adjustment plan and the monthly production adjustment mechanism approved at the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting and the decision to adjust upward the monthly overall production by 0.432 mb/d for the month of May 2022, as per the attached schedule.
  3. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism taking advantage of the extension of the compensation period until the end of June 2022. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
  4. Hold the 28th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 5 May 2022.

 

(参考2:2022年3月31日開催OPEC臨時総会時声明)

Outcome of the Extraordinary 183rd Meeting of the OPEC Conference

No 09/20222
Vienna, Austria
31 Mar 2022

At the Extraordinary 183rd Meeting of the OPEC Conference held via videoconference today, the Conference, in a short meeting, approved with immediate effect, the replacement of the International Energy Agency (IEA) with Wood Mackenzie and Rystad Energy as secondary sources used to assess OPEC Member Countries crude oil production.

 

以上

(この報告は2022年4月1日時点のものです)

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