ページ番号1009318 更新日 令和4年4月15日

膜が環境を救う! ―分離膜技術の環境適用―

レポート属性
レポートID 1009318
作成日 2022-04-15 00:00:00 +0900
更新日 2022-04-15 11:21:41 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 環境技術
著者
著者直接入力 三好 啓介 田中 勝哉 川村 和幸
年度 2022
Vol
No
ページ数 8
抽出データ
地域1 アジア
国1 日本
地域2 北米
国2 米国
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,日本北米,米国
2022/04/15 三好 啓介 田中 勝哉 川村 和幸
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概要

日本政府は、2020年に「2050年までにカーボンニュートラル達成」の目標を立ち上げました。この目標の実現は簡単なものではありませんが、環境面での持続可能な社会実現には避けて通れぬ課題であり、我々JOGMECとしても目標実現に向けた活動として、環境負荷低減やカーボンニュートラルに貢献する様々な取り組みを開始しています。

本記事では、巷で話題のクリーンエネルギーからは少し離れて、基本的な分離技術の一つである「膜分離技術」の観点から、環境問題に貢献しうるJOGMECの技術開発についてご紹介したいと思います。

 

1. JOGMEC施設技術課の環境への取り組みと膜技術

ご存じのとおり、気候変動を取り巻く動きやSDGs等の目標設定は、エネルギー関連、とりわけ資源開発業界に大きな影響を与え、資源開発会社等も対応に向けた動きを加速しています。JOGMECも2020年10月の菅前首相による2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、2021年4月にはカーボンニュートラル推進本部を設立しました。石油・天然ガスのみならず、金属や地熱等の分野も含めた組織全体での取組みを拡充させるとともに、基本方針としてカーボンニュートラル・イニシアティブを定めました。本イニシアティブでは、クリーンな資源エネルギーへの取組み強化、脱炭素燃料・技術への取組み強化、脱炭素に必要な制度整備への貢献、といった基本方針を設定し、それぞれの方針のもとでカーボンニュートラルの実現とクリーンなエネルギーの獲得にJOGMECとして貢献すべく活動を進めています。

一方、いわゆる「クリーンなエネルギー」は「環境負荷低減」と一対の話であり、クリーンエネルギーの導入拡大にばかり目を向けるのではなく、その過程で発生する環境負荷を如何に低減するか、という取組みもこれまで以上に推進していく必要があります。JOGMEC施設技術課では従前から資源開発に際しての環境対策に資する技術開発を行っており、環境対策のグランドデザインとして提唱しています。大きく「水処理」「ガス処理:CO2分離」「廃棄物処理:スラッジ減容」といった3つのカテゴリーで環境負荷低減に資する技術を開発しています。本記事では、環境対策やカーボンニュートラルに寄与する技術のなかでも、「分離膜技術」に焦点をあてて活動状況をご紹介します。

膜分離は基本的な単位操作の一つであり、気体もしくは液体を、選択性をもつ組織体(膜)に通して目的となる物や成分を濾し分ける操作を指します。コーヒーのドリップや透析などが身近な例です。古くから天然繊維や化学繊維を使って膜を生成し、膜中の細孔の径より小さな粒子は膜を通過、径より大きな粒子は膜の表面に捕捉させることで、微細粒子の分離を行ってきました。膜分離は分離対象となる物質の大きさや用途によって使用する膜の種類も異なり、精密ろ過膜(MF)、限外ろ過膜(UF)、ナノろ過膜(NF)のほか、逆浸透膜(RO)やイオン交換膜(IE)といったものがあります。

図1 分離膜の種類 (出展:日本ガイシWebsite)
図1 分離膜の種類 (出展:日本ガイシWebsite)

膜の材質は大きく分けて高分子を用いた有機膜や、セラミックスに代表される無機材料を用いた無機膜の2種類があります。既に有機膜は人工透析や食品製造等、様々な分野で商業化されており、軽くて安価な反面、適用温度範囲が狭く、薬品に弱いといった欠点があります。無機膜は有機膜と比べて高温高圧においても使用可能で、薬品への耐久性が高いといった優位性があります。アルミナ等基材を加工して板状型やチューブ型等の無機膜が製造され、上水処理等に使用されています。

JOGMECはこの無機膜に着目し、随伴水処理とCO2分離を対象とした技術開発を行っています。

本記事では、これらJOGMECが取り組んでいる膜技術の紹介と、それらがどのように環境負荷低減やカーボンニュートラルに活用できるか、についてご紹介します。

 

2. DDR膜によるCO2分離技術

まずはCO2分離膜についてのお話です。JOGMECは日揮グローバル株式会社(以後、「日揮」)と共同でDDR膜によるCO2分離回収技術のフィールド実証に取り組んでいます。DDR膜を用いたCO2分離回収技術は日揮と日本ガイシ株式会社(以後、「日本ガイシ」)が共同で開発を進めてきました。ここではその背景・概要を簡単にご紹介します。

石油・天然ガスの生産においては生産流体の分離は欠かせないものですが、CO2の分離は、今後活発化する高CO2含有ガス田の開発、CO2-EOR操業を行っている油田での随伴ガス分離などの分野において特に重要になっています。カーボンニュートラルを実現するには、石油・天然ガス生産の過程で発生するCO2を高効率に分離回収し、地中に封じ込めていくことが不可欠になります。DDR膜による分離技術がそのための有用なツールとなるでしょう。

 

DDR膜について

一般に、ゼオライト膜は、セラミックスなど多孔質支持体表面に水熱合成法でゼオライトの結晶を膜状に形成して作ります。分離性能を上げるためには可能な限り薄く、同時にピンホール、クラックなどの欠陥がないことが求められます。一方、多孔質支持体は、膜を支持する機械的強度、透過ガスの円滑な流動を可能とする空隙を保有することが必要です。

DDR膜は、DDR型ゼオライトをアルミナ基材の表面に薄く形成した無機膜です。DDR型ゼオライトはCH4の分子径に近い細孔径を持ち、CH4の透過を阻む一方、より小さな分子径のCO2は容易に透過できます。この分子篩効果により、透過性に大きな差が生まれ効率的なCO2/CH4分離が可能となります。

日本ガイシは、水処理用に蓮根のような形状のモノリス型のセラミックフィルターを開発しており、この製造技術をもとにDDR膜の大型エレメントを開発しました。チューブ状セラミック支持体外面に成形されていた従来のゼオライト膜と比べ1本あたりの大幅な膜面積拡大を可能とし、大量のガス分離処理へ対応できる道を開きました。(図2-1・2-2参照)

 

図2-1 DDR型ゼオライトの細孔径とDDR膜のガス透過性
図2-1 DDR型ゼオライトの細孔径とDDR膜のガス透過性
図2-2 DDR膜(サブナノセラミック膜)の構造(出展:日本ガイシWebsite)
図2-2 DDR膜(サブナノセラミック膜)の構造(出展:日本ガイシWebsite)

DDR膜を用いたCO2分離回収システムの開発は、日揮が日本ガイシの共同開発者として担当しています。DDR膜の分離特性データの集積、分析及びプロセス設計方法の構築、膜エレメントを格納する高圧容器(膜モジュール)構造などのハード機器の確立の他、フィールド条件に対応した前処理設備他を含む分離システムのエンジニアリング検討を実施してきました。

 

DDR膜による分離システムのフィールド実証

JOGMECと日揮は、米国テキサス州にてCO2-EOR操業に従事している事業者の協力を得て、2018年にラボ試験用の小型膜エレメントを現場に持ち込み簡易的な試験を行いました。2019年からは商業用大型膜エレメントを用いたフィールド実証試験に取り組んでおり、設備の設計・製作・据え付けを行ってきました。現場のガスに含まれる様々な不純物、或いは生産設備の運転条件等を考慮し、DDR膜の持つ優れた性能を発揮させるための適切な前処理設備、性能維持のための装置・運転方法の確立等現場での課題抽出とその対策を取りながら、技術実証のためのトータルなシステムを準備しています。

図2-3 実証準備作業状況 (日揮提供)
図2-3 実証準備作業状況 (日揮提供)

新型コロナウィルスの影響等を受けて進捗に遅れがでていますが、2022年の試験実施に向けて関係者一同鋭意作業を進めていきます。本実証試験でDDR膜の性能が証明されれば、様々なCO2分離のフィールドに展開していく予定です。

 

3. セラミック膜による随伴水処理技術

石油や天然ガスの開発・生産において、これらとともに生産されるのが地層水(一般的に、「随伴水」といわれています)です。石油・天然ガスの生産初期は、随伴水はほとんど付随しませんが、年月とともにその量が増してゆきます。そのメカニズムについてここでは述べませんが、世界では1日あたり約48百万立方メートル生産されていると言われています。日本における生活用水(飲料水、洗濯、風呂等)の使用量は年間約1億5千万立方メートルとの統計(日本の水資源の現況(国土交通省)より)があり、1日当たりに換算すると、約41万立方メートルとなり、世界で生産される随伴水の量はその約10倍以上の量に相当する水資源といえます。

しかし、随伴水には、原油分、ガス成分、固形物、有機物、無機物、菌類、塩分等の不純物及び人為的に加えた防食剤等の化学薬品等が含まれているため、これらを分離・除去しなければ水資源としての再利用ができません。このため、石油や天然ガスの生産現場では、随伴水の一部は、油層の圧力保持や原油の増進回収を目的として再圧入されていますが、それ以外のほとんどを生活用水等として利用している地下水の取水層よりも深い深度の水層に圧入処分しているのが現状です。一方で、水資源としての利活用が求められており、特に中東地域のように水資源に乏しい国では随伴水を適切に処理して再利用や油層等への再圧入水として利活用することへの要求が高くなっています。

そこで、JOGMECでは、株式会社INPEX(以後、「INPEX」)、千代田化工建設株式会社及びメタウォーター株式会社と共同で、セラミック膜を使用した随伴水処理技術の小規模実証試験プロジェクトを2015年度より開始しました。ここで使用するセラミック膜は、直径18センチメートル、長さ1.5メートルのモノリスタイプの膜(図3-1)で世界一大きな膜です。また、本セラミック膜は、国内外の上水場で実際に使用されている商業膜です。写真からもわかるように、円筒の側面に小さな穴が開いており、その数は約2,000にも及びます。それらひとつひとつの穴の内壁には薄い分離層(図3-2)が設けられていて、この分離層で0.1マイクロメートル以上の粒子を98%以上分離することができます。

図3-1 セラミック膜エレメント
図3-1 セラミック膜エレメント

図3-2 セラミック膜分離層、図3-3 小規模実証試験フロー図

図3-4 処理前後の水質比較
図3-4 処理前後の水質比較
左:随伴水原水、右:セラミック膜処理水

処理水(ろ過水)は膜の外側から排出されます。小規模実証試験は、INPEX秋田鉱場八橋油田外旭川プラントの隣接地にセラミック膜随伴水処理プラントを建設し、2017年1月より2018年3月まで実施しました。本実証試験の結果、図3-3に示すフロー図のように、一次処理後の随伴水をセラミック膜により処理(処理前後の水質を図3-4に示す)し、後段の逆浸透(RO)膜で処理した水が河川放流可能なレベルまで処理できることを確認しました。2018年4月からは、事後調査研究として断続的に運転を継続し、現在までに24時間連続運転に換算して2年間以上の記録を達成し、現在も記録更新中です。この間、セラミック膜の交換はなく、加えてこの記録は世界的にも例がありません。先に述べたとおり、セラミック膜ろ過水は、RO膜に供給可能なレベルの水質を維持できる結果が得られています。また、油層等への随伴水の再圧入にあたっては、油層内の孔隙が小さい場合には随伴水に含まれる油分や固形分を取り除く必要があり、そのために何段にもわたる水処理設備を組み合わせて処理を行わなければなりませんでしたが、セラミック膜だけでそのレベルの水質が得られることを確認しました。これは、省スペース且つ省エネルギーにつながり環境負荷低減に大きく貢献できる技術であると確信しています。

今後は、これらの結果を受けて、随伴水の再利用、有効活用に向けた提案活動を通じて実用化につなげてゆく予定です。

 

4. まとめ

今回は「膜技術」を例に、JOGMEC技術開発がどのようにカーボンニュートラルや環境負荷削減に貢献するか、をご紹介しました。冒頭に記載したように、今後のエネルギー業界を取り巻く環境は、ネットカーボンゼロの達成がベースとなることから、本邦企業を含むE&P企業が策定する中長期計画はすべからくネットカーボンゼロを考慮したものとなっています。日本への安定的なエネルギー供給と本邦企業支援を目的とするJOGMECもこの点に留意し、低環境負荷支援に加えて、カーボンニュートラル化やクリーンエネルギー導入拡大への支援を強化していく予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

参考資料

 

以上

(この報告は2022年4月6日時点のものです)

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