ページ番号1009324 更新日 令和4年4月18日

原油市場他:IEA加盟国による緊急時備蓄からの石油供給決定及び新型コロナウイルス感染抑制のための中国上海市の都市封鎖等により下落傾向となる原油価格

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レポートID 1009324
作成日 2022-04-18 00:00:00 +0900
更新日 2022-04-18 11:32:09 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
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年度 2022
Vol
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ページ数 36
抽出データ
地域1 グローバル
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国・地域 グローバル
2022/04/18 野神 隆之
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概要

  1. 米国では、戦略石油備蓄(SPR)から石油が供給されたことが一因となり、3月上旬から4月上旬にかけ原油在庫は増加したうえ、平年幅上限を超過する状態は維持されている。また、輸入が抑制された一方輸出が旺盛だったことにより、ガソリン及び留出油在庫は減少傾向を示し、ガソリン在庫は平年幅上限を超過する、そして留出油在庫は平年並みの、それぞれ量となっている。
  2. 2022年3月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国ではほぼ横這いとなった一方、欧州では、原油精製処理活動が不活発化したことが一因となり在庫が増加した他、日本でも3月16日の地震発生による一部製油所の稼働停止に伴い原油精製処理活動に支障が発生したこともあり、原油在庫は増加した。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は増加となり、平年幅上限付近に位置する量となっている。石油製品については、欧州では、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴うロシアからの軽油等の供給減少懸念を一因とする軽油需給引き締まり感の強まりに伴い、同地域での軽油価格が他の地域に比べ割高になったことから、かえって欧州に軽油が向かう格好となったと見られることにより、中間留分を中心として石油製品在庫は増加した。しかしながら、米国ではガソリン在庫が減少したことが影響し、また日本でも地震に伴う一部製油所での稼働停止による石油製品生産活動不活発化を一因として、両地域での石油製品在庫は減少した。結果として、OECD諸国全体の石油製品在庫は減少となり、平年並みの量となっている。
  3. 2022年3月中旬から4月中旬にかけての原油市場では、5月よりSPRから日量100万バレルの石油を供給する意向である旨3月30日に同国バイデン大統領が発表したうえ、新型コロナウイルス感染抑制のため3月28日以降中国上海市が都市封鎖を実施したことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことが、原油相場に下方圧力を加えた結果、3月11日に1バレル当たり109.33ドルの終値であった原油価格(WTI)は、4月14日の同106.95ドルの終値へと下落傾向となった。
  4. 今後、中国の一部都市における新型コロナウイルス感染抑制のための封鎖措置の実施状況によっては、同国の経済成長及び石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で拡大することにより、原油価格に下方圧力が加わる場面が見られる可能性がある。また、5月3~4日に開催される予定である米国連邦公開市場委員会(FOMC)に向け同国の物価上昇率が上振れしていることもあり、米国金融当局者による金融引き締め策が加速するとの観測が強まる結果、米ドルが上昇するとともに原油価格が抑制されやすくなるものと考えられる。しかしながら、米国で夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が接近するとともに、季節的に石油需給の引き締まり感が市場で強まると見られることから、この面では原油相場は下支えされやすいものと思われる。また、ロシアのウクライナに対する事実上の侵攻継続により、西側諸国による対ロシア制裁が強化される兆候が見られることもあり、今後ロシアからの石油や天然ガスの供給が制裁対象となる可能性が高まることにより、世界石油需給の引き締まり観測が市場で発生するとともに原油相場に上方圧力が加わるといった展開が見られる可能性も想定されうる。

(出所 IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

 

1. 基準原油生産量引き上げに伴いOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年5月につき前月比で日量43.2万バレル減産措置を縮小する旨決定

(1) 協議内容等

2022年3月31日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合をテレビ会議形式で開催し、2021年8月以降毎月前月比で日量40万バレル規模を縮小しながら実施中である減産措置(2022年4月現在日量216万バレル)を、2022年5月については日量43.2万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

減産措置縮小規模を従来の日量40万バレルから同43.2万バレルへと拡大した背景には、2022年5月より一部OPECプラス産油国基準原油生産量を引き上げた(合計で日量163万バレル)ことがあるとされ、消費国によるOPECプラス産油国に対する増産要求に対しOPECプラス産油国が譲歩したわけではない旨3月28日に伝えられていた。

また、基準原油生産量が増加した分だけ、2022年5月以降のOPECプラス産油国全体の減産幅は拡大することになり、基準原油生産量の拡大がなければ2022年5月の減産幅は日量176万バレルとなるところ、基準原油生産量の拡大により、減産幅は同336万バレルとなった。

別途、当該会合では、現状世界石油需給が十分に均衡している他、足元の原油価格の変動は石油需給によるものではなく継続する地政学的リスク要因の展開によるものであるとOPECプラス産油国が認識していることが示された。

また、これまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国が2022年6月末までに減産目標未達成部分につき追加減産を実施(することにより減産目標を達成)することを含め、減産目標の完全遵守に固執することが極めて重要であることを当該会合で再確認するとともに、(該当する産油国は減産目標を完全達成するための)追加減産計画を提出するよう当該会合では要請された。

なお、今回の閣僚級会合は3月31日午後1時50分頃(オーストリア ウイーン時間)開始され、12分間という短時間で終了したとされ、これは前回の閣僚級会合の開催時間である13分間を上回る記録的な短さであった。

また、次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は5月5日に開催する旨今次閣僚級会合で決定した。さらに、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催後に臨時OPEC総会が開催され、OPEC産油国の原油生産量を算出する際に利用される二次情報源(従来は国際エネルギー機関(IEA)、米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)、プラッツ(Platts)、アーガス・メディア(Argus Media)、エナジー・インテリジェンス(Energy Intelligence)及びIHSマークイット(IHS Markit)の6機関であった)に関し、IEAに代えてウッド・マッケンジー(Wood Mackenzie)及びライスタット・エナジー(Rystad Energy)のデータを利用することを決定した(即時適用)(米国の影響がIEAの石油市場分析に強く反映されており、そのような分析はOPECプラス産油国の認識から解離している部分があるとOPECプラス産油国が考えていることが今回の決定の背景にある旨OPECプラス産油国関係筋が明らかにしたと4月12日に報じられる)。

 

(2) 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を事実上開始したことにより、西側諸国等は対ロシア制裁を発動したが、その報復措置としてロシアからのエネルギー供給削減が実施される可能性があるとの懸念が市場で増大したことにより、前々回閣僚級会合開催(2月2日開催)直前の2月1日に1バレル当たり88.20ドルの終値であった原油価格(WTI)は前回閣僚級会合開催(3月2日開催)直前の3月1日には同103.41ドルの終値となるなど上昇傾向となった(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2020~22年)

しかしながら、この時点では、サウジアラビアを初めとするOPECプラス産油国は、以前に比べ供給過剰幅は縮小しつつあるものの、2022年の世界石油需給バランスはなお供給過剰になると予想していた。また、前回閣僚級会合開催時点では、ロシアからの石油供給を直接制限するような西側諸国等の制裁は発動されていなかったこともあり、足元の原油価格の上昇は実際の石油供給不足によるものではなく、ウクライナを巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりによる、ロシアからの石油供給途絶の可能性に対する市場関係者の懸念の先行等によるものであり、そのような先行した懸念が後退した場合、石油供給過剰感が市場で醸成される結果、原油価格が急落する恐れがあるとの認識を持っていたものとOPECプラス産油国は示唆していた。

また、この時点では、イラン核合意正常化に伴う西側諸国等とイランとの協議が妥結に向け最終段階にさしかかっていたことから、この先の協議妥結後米国による対イラン制裁が緩和されるとともにイランからの原油供給が拡大することにより、世界石油需給緩和感が市場で増大するとともに原油相場に下方圧力が加わる可能性がある旨OPECプラス産油国感では不安視されていた。

このようなOPECプラス産油国の減産措置縮小加速に対する慎重な姿勢を反映し、前回のOPEC産油国閣僚級会合では、従来の方針通り2022年4月のOPECプラス産油国減産措置につき前月比で日量40万バレルの規模での縮小が決定されたものと考えられる。

前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催以降、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に対し、3月8日に米国のバイデン大統領がロシアからの原油等の輸入を禁止する旨の新たな制裁の発動を発表したこともあり、この日原油価格(WTI)は1バレル当たり123.70ドルの終値と2008年8月1日(この時は同125.10ドル)以来の高値の終値に到達した他、その後も概ね100ドルを超過するなど高水準で推移した。

それに伴い、2月28日時点では1ガロン当たり3.701ドルであった全米平均ガソリン小売価格も上昇傾向となり、3月14日には同4.414ドルと1993年4月以来の同国週間統計史上最高水準に到達するなど、米国の消費者の不満が高まっても不思議ではない状況となるなど、石油消費国のガソリン小売価格等に上方圧力が加わるようになった(図2参照)。

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

このようなことから、一部石油消費国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)等に対し増産を働きかけており(3月16日に英国のジョンソン首相がサウジアラビアのムハンマド皇太子及びUAEのムハンマド皇太子と会談、エネルギー問題につき協議している)、この結果例えば、3月9日にはUAEのアルオタイバ(Al Otaiba)駐米大使が、同国は増産(加速)を支持しており、他のOPEC産油国に対しても増産(加速)の働きかけを行う旨表明した他、同日米国のブリンケン国務長官もUAEは増産(加速)を支持している旨明らかにしたといった場面も見られた(ただ、最近では米国は必ずしもサウジアラビア等に対し増産を強く働きかけていたわけではなく、むしろ米国等の緊急時備蓄からの石油供給の際にサウジアラビア等が減産措置を強化すること等により対抗しないよう働きかけを行っていた旨示唆する向きもある)。

他方、ウクライナへの事実上の侵攻に伴う西側諸国等のロシアに対する制裁措置への抵触の可能性や企業に対する評判リスク等により、西側諸国石油会社等がロシアにより販売される石油の購入を敬遠するようになりつつあったこともあり、3月16日にはIEAが、2022年のロシア石油供給が日量230万バレル減少すると見込む一方、ロシアを中心とした旧ソ連諸国の石油需要が2022年に日量52万バレル下振れすることを含め2022年の世界石油需要を日量95万バレル下方修正するとの見通しを明らかにしたこともあり、OPECプラス産油国が毎月前月比で日量40万バレル(2022年4月まで)及び同43.2万バレル(同年5月以降)減産措置を縮小しても、2022年の世界石油需給バランスは年全体として概ね均衡するものと想定された(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(3月31日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

また、イラン核合意正常化によるイラン原油供給拡大や中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う一部都市の封鎖の実施による同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化等から世界石油需給が緩和することに対して懸念を持つOPECプラス産油国関係者もいたとされる。

さらに、3月初頭以降のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)が日量1,111万バレルと推定され、2月の同1,106万バレルから微増となっている旨しばしば示されたこともあり、ロシアからの石油供給自体が減少しているとの証拠はOPECプラス産油国閣僚級会合開催時点では見出せなかった(ただ、実際には、原油及び石油製品がロシアの港湾から出荷されたものの、販売先が確定できない結果、事実上洋上でタンカーに貯蔵されたままの格好となっているものが相当量あるものと言われた)。

そして、世界石油市場での供給不足の証拠が必ずしも見出せない中、減産措置縮小加速に対する消極的な姿勢がOPECプラス産油国関係者によってしばしば示唆されるようになった。

3月9日のUAEのアルオタイバ駐米大使の発言の数時間後、UAEのマズルーイ エネルギー相がUAEはOPECプラス産油国の合意(この時点で毎月前月比日量40万バレルの減産措置縮小)に確約しているとして、同国のアルオタイバ駐米大使の発言には必ずしも同調していない旨示唆した。

また、サウジアラビア内閣は石油市場の安定と均衡においてOPECプラス産油国合意は基本的な役割を果たしていると確認した旨3月22日に国営サウジ通信が報じており、石油消費国等OPECプラス産油国以外の石油市場関係者からの圧力によっても既定のOPECプラス産油国の減産措置を巡る方針を容易に変更するべきではない旨示唆された。

さらに、大部分のOPEC産油国は、足元の原油価格の大幅上昇は、(世界石油需給の実際の引き締まりと石油供給不足に伴うものではなく、)地政学的リスク要因(に伴う石油需給の引き締まりの可能性に対する石油市場の懸念が先行したこと)によるものであるとして、従来の減産措置の縮小方針の変更には消極的であることが示唆される旨改めて3月22日に伝えられた。

また、ウクライナを巡り西側諸国と対立するロシアがOPECプラス主要産油国であることもあり、サウジアラビアやUAE等と石油市場における利害一致していることが、今般のOPECプラス産油国閣僚級会合での方針決定に影響していると示唆する向きもある。

3月28日にUAEのマズルーイ エネルギー相は、ロシアは(OPECプラス産油国の)重要な構成国である旨発言している他、サウジアラビアもロシアを重要視する結果減産措置縮小方策に慎重になっているとOPECプラス産油国関係筋が見ている旨3月28日に伝えられる(サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相は3月28日に、OEPCプラス産油国は政治問題(ロシアのウクライナへの事実上の侵攻を指しているものと見られる)に関与すべきではないとも発言している)。

また、3月25日には、イエメンのフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされ、サウジアラビアやUAE等が支援するイエメンのハディ暫定大統領派勢力と事実上の内戦状態となっている)がサウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが同国西部ジッダに保有する石油貯蔵施設を無人攻撃機等で攻撃し、貯蔵タンク2基で火災が発生するなど、フーシ派武装勢力によるサウジアラビアやUAEへの攻撃がしばしば行われているにもかかわらず、米国が2021年2月16日を以てフーシ派武装勢力に対するテロ組織指定を解除(同年2月12日に同国のブリンケン国務長官が発表)した他、イラン核合意正常化に向けて米国がイランと協議を進めることにつき、自国を含む中東湾岸諸国の安全保障が脅かされる恐れがある旨サウジアラビアが懸念していたことが、OPECプラス産油国の意思決定に影響していた部分もあるものと推察される。

従来の方針による減産措置縮小を超えた規模の縮小(つまり減産措置縮小ペースの加速)実施は、西側諸国等によるイエメンでの事実上の内戦におけるサウジアラビア等への支持とイラン核合意を巡るサウジアラビア等への安全保障の確保を条件とする旨関係筋が明らかにしたと3月28日に伝えられる(また、国際社会はフーシ派武装勢力による中東湾岸諸国石油施設攻撃に対し真剣に考えるべきである旨3月28日にサウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相も明らかにしている)ことが、前述のサウジアラビアの懸念を反映しているものと考えられる。

他方、2021年7月2日に開催されたOPECプラス産油国会合で、UAEが、自国の原油生産能力が拡大しているとして自国の基準原油生産量の引き上げを認めるよう主張、同年7月18日に改めて開催した閣僚級会合において2022年5月より、UAE、サウジアラビア、イラク、クウェート及びロシアといった一部OPECプラス産油国の基準原油生産量を引き上げる旨決定した。

従来UAEは、石油が消費されなくなる将来を見据えて、自国で発見され開発される石油資源につき、できるだけ速やかに生産し収益を確保することにより、それら資源が座礁資産となることを回避することを目指しているものと見られていた。

しかしながら、足元では、石油供給不足の証拠が見出せない一方、原油価格上昇は地政学的リスク要因に伴い市場の懸念が先行していることによるものであることもあり、無闇に減産措置縮小を加速してしまうと、市場の心理が急変する結果、原油価格が急落、産油国収入も急減する恐れがあると見られたことにより、UAEを含めOPECプラス産油国は原油生産拡大を図るよりもOPECプラス産油国での秩序立った方針に基づき原油生産を調整した方が、少なくとも短期的には相対的に原油収入を確保しやすいとの考え方の下、基準原油生産量の引き上げに従って減産措置を微調整した結果、2022年5月については前月比で日量43.2万バレルの減産措置の縮小方針を決定するに至ったものと考えられる。

 

(3) OPECプラス産油国閣僚級会合開催当日の原油価格の動き等

今回の閣僚級会合の結果は、ウクライナ情勢緊迫化に伴うロシアからの石油及び天然ガス等のエネルギー供給削減による石油需給引き締まりの可能性に対する懸念から原油価格が上昇しつつある中、OPECプラス産油国が原油価格上昇沈静化のための減産措置縮小加速に対し事実上消極的な姿勢を示したと市場関係者が受け取ることにより、原油相場に上方圧力を加えても不思議ではない状況であったものの、閣僚会合開催前日の3月30日夜(米国東部時間)以降米国が最大1.8億バレル(日量100万バレルを6ヶ月間)の戦略石油備蓄(SPR)放出を検討している旨しばしば伝えられた(その後米国バイデン大統領がSPRからの石油供給を正式発表した)ことが、OPECプラス産油国閣僚級会合開催当日の3月31日の原油相場に下方圧力を加える格好となったことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり100.28ドルと、前日終値比で7.54ドルの下落となった。

 

2. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2022年1月の米国ガソリン需要(確定値)は日量798万バレル、前年同月比で4.1%程度の増加と2021年12月の同895万バレル(同13.9%程度の増加)から需要量及び前年同月比での伸びともに縮小した(図3参照)。また、当該需要は速報値(前年同月比で8.8%程度増加の日量834万バレル)から下方修正された。1月の同国からのガソリン最終製品輸出量が速報値段階では日量48万バレル程度と推定されたところ、確定値では同81万バレルへと上方修正されたことにより、この部分が同国ガソリン需要の速報値から確定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、当該需要の下方修正の一因となったものと見られる。12月31日に446,567人であった同国の1日当たりの新型コロナウイルス新規感染者数が1月12日には880,274人の史上最高水準へと増加したこともあり個人の外出が敬遠された(1月の米国自動車運転距離数は1日当たり78億マイルと12月の同87億マイルから相当程度減少した他、前年同月比4.1%の増加と12月の同11.2%の増加から増加率が相当程度縮小した)ことが、同国ガソリン需要に反映されたものと考えられる。なお、2022年1月のガソリン需要は2020年1月の水準(日量872万バレル(確定値))を8.5%程度下回っている。他方、2022年3月の同国のガソリン需要(速報値)は日量869万バレル、前年同月比で1.3%程度の増加となっており、2月の当該需要(速報値)の日量895万バレル、前年同月比13.0%程度の増加から、需要量及び前年同月比での増加率が相当程度低下している。2020年12月14日に米国で新型コロナウイルスワクチン接種が開始されたこともあり、2021年1月2日には291,610人と当時としては史上最高水準に到達した同国での1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数は同年3月31日には67,936人へと大幅に減少したこともあり、2021年3月の同国推定自動車運転距離数が1日当たり87億マイルと同年2月の同82億マイルから相当程度伸びたことに伴い、2021年3月の同国ガソリン需要も日量858万バレルと同年2月の同774万バレルから相当程度増加した影響が、2022年3月の推定自動車運転距離数の前年同月比での伸び(1日当たり87億マイルと前年同月比0.4%の増加)及びガソリン需要の前年同月比での増加率に影響しているものと考えられる。また、2022年3月14日に全米平均ガソリン小売価格(週間値)が1ガロン当たり4.414ドルの史上最高水準に到達したことにより、米国の消費者が自動車を利用した外出を見合わせるようになったことも同月の米国ガソリン需要抑制をもたらしている側面があると見る向きもある。なお、2022年3月の同国ガソリン需要は2019年3月(2022年3月の2年前の同月は2020年3月であるが、2020年3月は既に新型コロナウイルス感染が米国で拡大するとともに同国の石油需要に影響を及ぼしつつあったことにより、3年前同月の2019年3月を採用することとする)の当該需要(日量918万バレル(確定値))を5.4%程度下回っている。一方、米国では春場の製油所のメンテナンス作業実施が終了に向かいつつあるとともに、夏場のドライブシーズン(2022年は5月30日の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)に伴う連休(5月28~30日)から9月5日の労働者の日(レイバー・デー)に伴う連休(9月3~5日)まで)に伴うガソリン需要期の到来が視野に入りつつある他、2月24日以降のロシアのウクライナに対する事実上の侵攻に伴い西側諸国等による対ロシア制裁の発動とロシアからの原油や留出油を含めたエネルギー供給への影響に対する懸念が市場で強まったこともあり、特に欧州を中心として留出油(軽油及び暖房油)需給に引き締まり感が発生したことにより、欧州に留出油を輸出する米国でも製油所での留出油生産を巡る利幅が拡大したことから、3月上旬から4月上旬にかけ製油所の稼働とともに原油精製処理活動は比較的堅調であった(図4参照)。このため、米国では製油所でのガソリン生産もそれなりには行われたと見られる(ガソリン最終製品生産量は図5参照)ものの、製造を巡る利幅が相対的に大きな留出油の生産が活発に行われる一方それに劣後する形でガソリンの生産が抑制される格好となったうえ、留出油ほどではないにせよガソリンについてもロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴う米国外での相対的な需給引き締まり懸念により、米国への輸入がもたつく一方、輸出は堅調であったことから、同時期米国ガソリン在庫は減少傾向となったが、平年幅上限を上回る量は維持されている(図6参照)。

図3 米国ガソリン需要の伸び(2006~22年)

図4 米国の原油精製処理量(2009~22年)

図5 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009~22年)

図6 米国ガソリン在庫推移(2003~22年)

2022年1月の同国留出油(軽油及び暖房油)需要(確定値)は日量408万バレルと前年同月比で3.7%程度の増加となり、2021年12月の日量393万バレル、同1.1%程度の増加から需要量も需要の前年同月比増加率も拡大したものの、2021年11月の日量417万バレル、前年同月比で7.6%の増加は下回っている他、2022年1月の当該需要速報値である日量444万バレル(同12.8%程度の増加)から相当程度下方修正された(図7参照)。1月の同国からの留出油輸出量が速報値段階では日量71万バレル程度と推定されたところ、確定値では同97万バレルへと上方修正されたことにより、この部分が同国留出油需要の速報値から確定値への移行段階で国内需要から輸出に振り替えられたことが、当該需要の下方修正の一因となったものと見られる。また、1月は米国の暖房用石油製品需要の中心地である北東部で気温がしばしば平年を下回った他、前年同月よりも冷え込んだと見られることが、同国の留出油需要を刺激する格好となったものの、オミクロン変異株等による新型コロナウイルス感染者数拡大に伴う工場等の労働者の欠勤が一因となり1月の同国鉱工業生産が前年同月比で3.3%の増加と12月(3.4%の増加)とほぼ同様の水準にとどまった(因みに2021年11月の同国鉱工業生産は前年同月比で5.0%の伸びであった)ことが、留出油需要を抑制する格好で作用したものと見られる。なお、2022年1月の米国留出油需要は2020年1月の当該需要(日量393万バレル(確定値))を1.4%程度上回っている。他方、2022年3月の留出油需要(速報値)は日量398万バレルと前年同月比で1.2%程度の減少となり、2月の当該需要(速報値)である前年同月比10.6%程度の増加から一転して減少となった。ロシアのウクライナへの事実上の侵攻を一因とするエネルギー等のコスト上昇(2022年2~3月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比10.3~11.2%の上昇と少なくとも2011年以降で最高水準に到達した)が同国の製造活動を圧迫したと見られ、3月の米国鉱工業生産(推定)は前年同月比5.5%程度の増加と2月の同7.5%程度の増加から伸びが鈍化していることに加え、3月は中旬後半を中心として米国の暖房油需要の中心地である北東部の気温が平年を相当程度上回る場面が見られたこともあり暖房油需要が抑制されたと見られることが、同月の留出油需要に影響を及ぼしたものと考えられる。なお、2022年3月の米国留出油需要は2019年3月の当該需要(日量418万バレル(確定値))を4.8%程度下回っている。このように、米国留出油需要がもたつき気味であったことに加え、製油所の稼働上昇とともに留出油生産が増加傾向となった(図8参照)ことにより、米国外からの輸入が低迷するとともに米国外への輸出は堅調であったものの、3月上旬から4月上旬にかけ留出油在庫は増加傾向となった(図9参照)他、平年並みの量となっている。

図7 米国留出油需要の伸び(2006~22年)

図8 米国の留出油生産量(2009~22年)

図9 米国留出油在庫推移(2003~22年)

2022年1月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で6.1%程度増加の日量1,973万バレルとなり、同年12月の同2,076万バレル(前年同月比10.4%程度の増加)から需要量及び需要の前年同月比での伸び率が縮小した(図10参照)。1月のガソリンの需要量及び前年同月比での増加率が12月の需要量及び前年同月比での増加率から大幅に低下したことが影響する格好となっている。また、ガソリン、留出油及びその他の石油製品等の需要が速報値から確定値に移行する段階で下方修正されたこともあり、米国石油需要は速報値(前年同月比で16.7%程度増加の日量2,170万バレル)から下方修正されている。なお、2022年1月の米国石油需要は、2020年1月の当該需要(日量1,993万バレル(確定値))を1.0%程度下回っている。他方、2022年3月の米国石油需要(速報値)は日量2,045万バレルと前年同月比で6.5%程度の増加となっている。その他の石油製品の需要が前年同月比で20.0%程度の伸びとなっていることが米国石油需要の前年同月比での需要増加率に寄与する格好となっているが、同月のその他の石油製品需要(速報値)は日量461万バレルと2021年2月~2022年1月の当該需要(確定値)である同308~462万バレルと比較しても高水準の部類に属することから、今後速報値から確定値に移行する段階で当該需要が下方修正される結果、同国の石油需要(確定値)が調整されることもありうる。なお、2022年3月の米国石油需要は、2019年3月の当該需要(日量2,013万バレル(確定値))を1.4%程度上回っている。また、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴う西側諸国等による対ロシア制裁の実施とロシアからのエネルギー供給への影響に対する懸念の増大から、特にロシアからの原油輸入依存度の高い欧州の指標原油であるブレントの価格が米国の指標原油であるWTIの価格を相当程度上回るようになったこともあり、3月上旬から4月上旬にかけ米国の原油輸入が抑制気味であった反面原油輸出が上向いた他、米国国内製油所での原油精製処理活動も比較的堅調に行われたものの、原油価格が上昇傾向となったこともあり米国国内原油生産が週間値で日量1,160万バレルから同1,180万バレルへと増加したうえ、米国戦略石油備蓄(SPR)からの石油供給も行われたことから、米国原油在庫は増加したり減少したりした結果、4月1日時点の当該在庫水準は2月25日もしくは3月4日時点と比較して概ね横這いの状態であったが、4月1日の週に米国原油輸出が大幅に増加した反動もあり4月8日の週の同国原油輸出が落ち込んだことが一因となったことにより、この週の原油在庫が押し上げられる格好となったことから、4月8日の当該在庫は3月4日に比べ増加となり、平年幅上限を上回る状態は継続している(図11参照)。そして、留出油在庫が平年並みの量となっているものの、原油在庫及びガソリン在庫が平年幅上限を超過する量となっていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図12及び13参照)。

図10 米国石油需要の伸び(2006~22年)

図11 米国原油在庫推移(2003~22年)

図12 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~22年)

図13 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~22年)

2022年3月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減に関しては、原油については、米国ではほぼ横這いとなった一方、欧州では、一部の製油所において、春場のメンテナンス作業が実施されたり、装置に不具合が発生したりした結果、操業が停止したことにより、原油精製処理活動が不活発化したことが一因となり、当該地域での原油在庫が増加した他、日本でも3月16日の福島県沖を震源とする地震の発生による一部製油所の稼働停止に伴い原油精製処理活動に支障が発生した結果、原油在庫は増加した。この結果、OECD諸国全体では原油在庫は増加となり、平年幅上限付近に位置する量となっている(図14参照)。石油製品については、欧州では、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴うロシアからの原油及び軽油等の石油製品の事実上の供給減少懸念を一因とする軽油需給引き締まり感の強まりに伴い、同地域での軽油価格が米国やアジアに比べ相対的に割高になったことから、かえって欧州に軽油が向かう格好となったと見られることにより、中間留分を中心として石油製品在庫は増加した。しかしながら、米国ではガソリン在庫が減少したことが影響し石油製品全体の在庫は減少した。日本でも、3月16日に発生した地震に伴う一部製油所での稼働停止により石油製品生産活動が不活発になった一方で、年度末を控え重機類向けの軽油需要が増加したと見られることにより、軽油をはじめとする石油製品の在庫は軒並み減少した。結果として、OECD諸国全体の石油製品在庫は減少となり、平年並みの量となっている(図15参照)。そして、原油在庫が平年幅上限付近に位置する量である一方、石油製品在庫が平年並みの量となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上方付近に位置する量となっている(図16参照)。なお、2022年3月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は57.4日と2月末の推定在庫日数(57.7日)から減少している。

図14 OECD諸国原油在庫推移(2005~22年)

図15 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~22年)

図16 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~22年)

3月9日に1,300万バレル台後半程度の水準であったシンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫は、3月16日は1,400万バレル強程度、3月23日には1,500万バレル弱程度の量へと、それぞれ増加した。しかしながら、3月30日には1,300万バレル台後半程度、4月6日には1,200万バレル台後半程度、そして4月13日には1,100万バレル強程度の、それぞれ量へと減少した。3月に入り中国で新型コロナウイルス感染者数が増加傾向となるとともに個人の外出が敬遠され始めたことに伴い同国のガソリン需要が下振れしたと見られることもあり、中国政府による2022年第一回の石油製品輸出枠(1月4日に付与されたと伝えられる)は、低硫黄重油を除く石油製品輸出枠は必ずしも多くはなかった(内訳はガソリン、ジェット燃料及び軽油が合計で1,300万トン、低硫黄重油が650万トンとなっており、ガソリン、ジェット燃料及び軽油輸出枠は2021年第一回の石油製品輸出枠(2,950万トン)の44%程度にとどまった一方、低硫黄重油輸出枠は前年第一回の輸出枠(500万トン)の1.3倍となった)ものの、2月後半から3月前半を中心として中国からのシンガポール向けのガソリン輸出が多少なりとも上向いたことが、3月16日及び23日の週のシンガポールの軽質留分在庫の増加に寄与したものと考えられる。しかしながら、その後は、2月24日のロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始に伴う西側諸国等の対ロシア制裁発動とロシアからの原油及び石油製品供給への影響に対する懸念とともに石油需給引き締まり感が市場で強まったことにより、アジア諸国が国内供給確保を重視し始めたことが、シンガポールへのガソリン等軽質留分の流入を抑制する形で作用したと見られることにより、当該在庫は減少傾向となったものと考えられる。そして、乱高下気味であったドバイ原油価格にシンガポールのガソリン価格が追い付かなかったことにより、アジア市場のガソリンとドバイ原油の価格差(この場合ガソリン価格がドバイ原油価格を上回っている)は拡大したり縮小したりした側面はあったものの、3月上旬から4月上旬にかけ米国等でガソリン在庫が減少傾向となったこともあり、世界的なガソリン需給引き締まり感が市場で増大した他、シンガポールの軽質留分在庫も減少し始めたことが、アジア市場でのガソリン価格に上方圧力を加えたことにより、3月中旬から4月中旬にかけガソリンとドバイ原油価格差は総じて堅調な状態で推移した。

また、半導体不足が自動車を含む製品の製造に影響を及ぼしたことや、3月28日以降新型コロナウイルス感染抑制のために上海で都市封鎖が実施されるなど、中国での経済活動が制限されたこともあり、プラスチックを含む石油化学製品需要がもたつき気味となったことに伴い、ナフサからプラスチック製品を製造する際の利幅が縮小したこともあり、アジア地域でのナフサ分解装置の稼働が低下した。加えて、3月16日深夜(現地時間)に日本の福島県沖を震源として強い地震が発生した影響で、同国の一部石油化学工場のナフサ分解装置の操業が停止した。さらに、アジア地域の一部石油化学工場においてもナフサ分解装置のメンテナンス作業実施により当該装置の稼働が停止した。このようなことから、アジア市場においては、原料となるナフサの需要が減少するとの観測が市場で発生したことが、アジア市場でのナフサ価格に下方圧力を加えた。このため、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻による西側諸国等のロシアに対する制裁措置発動に伴い、アジア(特に韓国)等にナフサを輸出するロシアからのナフサ供給が影響を受ける恐れがあるとの見方が市場で発生したことや、この先米国等での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期到来による製油所でのガソリン製造活動活発化とガソリンへのナフサ混入増加観測によるナフサ需給の相対的な引き締まり感の発生が、アジア市場でのナフサ価格を下支えしものの、3月中旬から4月中旬にかけてのナフサとドバイ原油の価格差は、概ね限られた範囲で推移しつつもナフサ価格がドバイ原油価格を下回る状態となった。

3月9日には800万バレル弱程度の水準であったシンガポールの中間留分在庫は、3月16日には700万バレル台半ば程度の量へと減少した。ただ、3月23日も700万バレル台半ば程度の量ではあったが前週比で増加した。それでも、3月30日及び4月6日には700万バレル強程度へと当該在庫水準は低下した。4月13日には700万バレル台半ば程度の量へと回復したが、それでも3月9日の水準は下回っている。2月24日のロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始により、西側諸国等が対ロシア制裁を発動したこともあり、その影響でロシアから欧州への原油及び留出油輸出が減少する恐れがあるとの懸念が市場で増大した(そして、実際西側石油会社等がロシアから販売される原油や軽油の購入を敬遠するようになったことにより、ロシアから欧州方面への供給は事実上減少したとされる)ことに伴い、欧州市場の軽油価格がアジア市場の軽油価格を上回る幅が拡大するとともにインド等アジア諸国から欧州方面へ軽油等が流出したことが、シンガポールでの中間留分在庫減少の背景にあるものと考えられる。そして、このように、シンガポールでの中間留分在庫が減少傾向となったことが、アジア市場での軽油価格に上方圧力を加えた結果、3月中旬から4月中旬にかけては、アジア市場の軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油価格がドバイ原油価格を上回っている)は拡大傾向となった。

3月9日に2,300万バレル強程度の量であったシンガポールの重油在庫は、3月16日には2,300万バレル台前半程度の量へと増加した。しかしながら、3月23日には2,200万バレル台半ば程度、3月30日には2,100万バレル弱程度、4月6日には2,000万バレル台半ば程度、4月13日には1,900万バレル台半ば程度の、それぞれ量へと減少した。2月24日のロシアのウクライナへの事実上の侵攻開始に対する西側諸国等による対ロシア制裁発動に伴い、ロシアからの重油輸出が事実上減少する恐れがあるとの市場の懸念が増大したこともあり、欧州地域の重油価格がアジア地域の重油価格を上回る場面が見られるようになったことから、欧州方面からアジア市場への重油の流入が低下した他、韓国等で春場の製油所メンテナンス作業が実施されたことに伴い重油製造活動が不活発化したこともあり、シンガポール方面への重油の供給が抑制されたと見られることが、シンガポールでの重油在庫の減少傾向を創出させたものと考えられる。そしてこのようにシンガポールでの重油在庫が減少傾向となったことに加え、パキスタン等の南アジア諸国でのこの先の気温の上昇による空調向け電力供給のための発電部門での燃料としての重油の需要の増加観測が市場で発生した他、3月16日に発生した日本での地震に伴う一部石炭火力発電所の稼働停止により代替電力供給のための石油火力発電稼働上昇に伴い燃料となる重油需要が増加する可能性があるとの見方が市場で発生したことが、アジア市場での重油価格に上方圧力を加えた結果、3月中旬から4月中旬にかけての低硫黄重油とドバイ原油の価格差(この場合低硫黄重油価格がドバイ原油価格を上回っている)は拡大傾向を示した。また、高硫黄重油とドバイ原油の価格差(この場合従来高硫黄重油価格がドバイ原油価格を下回っていた)も3月中旬から4月中旬にかけ縮小傾向を示した他、重油の種類によっては、重油価格がドバイ原油価格を上回る場面が見られた。

 

3. 2022年3月中旬から4月中旬にかけての原油市場等の状況

2022年3月中旬から4月中旬にかけての原油市場では、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻による西側諸国の対ロシア制裁の発動とロシアからの原油等を含むエネルギー供給への影響への懸念、及びイエメンのフーシ派武装勢力によるサウジアラビア石油関連施設等への無人攻撃機等による攻撃に伴う中東情勢不安定化と当該地域からの石油供給途絶に対する不安感、カザフスタン産原油を船積みするロシア黒海沿岸港での港湾施設破損に伴う出荷能力削減等が、原油相場に上方圧力を加えたものの、5月より米国戦略石油備蓄(SPR)から日量100万バレルの石油を供給する意向である旨3月30日に同国バイデン大統領が発表したうえ、他のIEA加盟国も6,000万バレルの緊急時備蓄からの石油供給実施を4月1日に決定したこと、新型コロナウイルス感染抑制のため3月28日以降中国上海市が都市封鎖を実施したことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことが、原油相場に下方圧力を加えた結果、3月11日に1バレル当たり109.33ドルの終値であった原油価格(WTI)は、4月14日の同106.95ドルの終値へと下落傾向となった(図17参照)。

図17 原油価格の推移(2003~22年)

3月14日には、新型コロナウイルス新規感染が拡大していることにより、中国深圳市が3月13日から20日にかけ都市封鎖を実施する旨3月13日に同市当局が発表したうえ、3月14日には同国吉林省も同様の理由で都市封鎖を実施したことにより、中国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、3月13日に行われたウクライナとロシアとの両国間での停戦を巡る協議で前向きな進展が得られた旨ウクライナ側交渉担当者であるポドリャク大統領顧問が3月13日明らかにした(3月14日にも継続して協議が実施されたうえ、両者で協議内容を持ち帰り検討するとして協議を一時中断、3月15日に再開される方向である旨示唆されると3月14日に伝えられる)ことにより、ウクライナ問題を巡る西側諸国等とロシアとの対立の高まりに伴うロシアからのエネルギー供給途絶に対する市場の懸念が後退したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり6.32ドル下落し終値は103.01ドルとなった。また、3月14日の中国の新型コロナウイルス新規感染者数が3,507人と前日の1,337人から倍増超となった旨3月15日に中国国家衛生健康委員会が発表したことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、ウクライナ問題を巡る米国の対ロシア制裁はイランとロシアとの原子力分野での取引を阻害することはない旨書面で米国がロシアに対し保証した旨3月15日にロシアのラブロフ外相が明らかにしたことにより、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議が妥結し、米国の対イラン制裁が緩和されるとともにイランからの原油供給が拡大する結果世界石油需給が緩和するとの期待が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり96.44ドルと前日終値比で6.57ドル下落した。3月16日も、この日リビアのドベイバ暫定政府首相が、エネルギー危機を解決するためにOPEC産油国に対し増産を加速する様呼びかける旨の背一名を発表したことにより、OPECプラス産油国による減産措置縮小加速と世界石油需給緩和への期待が市場で増大したことに加え、ウクライナとロシアとの間での停戦協議が進展しており、近いうちに停戦実施で合意すると確信している旨3月16日にウクライナのポドリャク大統領府顧問が表明したことにより、停戦に伴い西側諸国等による対ロシア制裁が緩和するとともにロシアからの石油供給が回復するとの期待が市場で発生したこと、3月16日にEIAから発表された米国石油統計(3月11日の週分)で、原油在庫が前週比435万バレルの増加と市場の事前予想(同140~180万バレル程度の減少)に反し増加していた他、同国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で179万バレルの増加と2021年12月31日以来10週間ぶりに前週比で増加している旨判明したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.40ドル下落し終値は1バレル当たり95.04ドルとなった。この結果原油価格は3月14~16日の3日間で1バレル当たり合計14.29ドル下落した。しかしながら、3月17日には、これまでの原油価格下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことに加え、3月16日現在の中国の1日当たり新型コロナウイルス新規感染者数が1,226人と2日連続で減少したこともあり、中国での新型コロナウイルス感染拡大に伴う同国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で後退したこと、ウクライナとロシアとの間での停戦交渉が進展しているとの情報は誤っている旨3月17日にロシア大統領府が明らかにしたことにより、停戦合意に伴う西側諸国等の対ロシア制裁緩和とロシアからのエネルギー供給回復に対する期待が市場で後退したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり7.94ドル上昇し、終値は102.98ドルとなった。3月18日には、ウクライナのジョフクワ(Zhovkva)大統領補佐官(外交政策担当)が、ウクライナとロシアとの間の停戦を巡る交渉の進捗が予想していたよりも遅い旨明らかにしたと3月18日に伝えられたことにより、両国間での停戦合意、そしてそれに伴う西側諸国等による対ロシア制裁緩和、及びロシアからの原油を含むエネルギー供給の回復に対する市場の期待が後退したことに加え、3月18日に米国石油サービス会社ベーカー・ヒューズ(Baker Hughes)から発表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で524基と前週比で3基減少(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は507基と同1基減少)となっている旨判明したこと、2022年2月のOPECプラス産油国による原油減産遵守率が136%と1月の129%から上昇するとともに、2月の原油生産量が生産目標を日量105万バレル下回り、1月の同97万バレルから下回る規模が拡大していることにより、OPECプラス産油国の減産措置縮小ペースが予定通りに進展していないとして、世界石油需給引き締まり感が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり104.70ドルと前日終値比で1.72ドル上昇した。この結果原油価格は3月17~18日の2日間で1バレル当たり合計9.66ドル上昇の上昇となった。

また、3月20日にサウジアラビアのYasref(Yanbu Aramco Sinopec Refining)製油所(原油精製処理量日量40万バレル)等に対し、イエメンのフーシ派武装勢力(サウジアラビア等が支援するハディ暫定政権と対立し、同国で事実上の内戦状態となっている)が無人攻撃機、弾道ミサイル及び巡航ミサイルで攻撃を行った結果、同製油所の稼働が低下した旨伝えられたことにより、サウジアラビアからの石油供給に対する懸念が市場で増大したことに加え、3月20日にロシアがウクライナ南東部の都市マリウポリに対し降伏するよう要求したが、同日ウクライナ政府が拒否したことにより、ロシアのウクライナへのさらなる攻撃の実施及び西側諸国等の対ロシア制裁の一層の強化による、ロシアからのエネルギー供給への影響に対する懸念が市場で増大したこと、欧州連合(EU)がロシア産原油輸入禁止を検討する旨3月21日に報じられたことにより、ロシアからの石油供給減少を巡る不安感が市場で増大したこと、新型コロナウイルス感染が抑制できたとして中国深圳市の新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖が3月20日に終了したうえ、香港も新型コロナウイルス感染抑制策を4月より部分的に緩和させる旨香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が3月21日に明らかにしたことにより、中国経済回復と石油需要増加期待が市場で拡大したことから、3月21日の原油価格の終値は1バレル当たり112.12ドルと前週末終値比で7.42ドル上昇した。ただ、3月22日には、この日の米国原油先物4月渡し契約の取引終了を控え、これまでの原油価格上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.36ドル下落し終値は111.76ドルとなった(この日を以てNYMEXの2022年4月渡し原油先物契約は取引を終了したが、5月渡し原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり109.27ドル(前日終値比0.70ドルの下落)であった)。それでも、3月23日には、カザフスタンで生産される原油を輸送するCPC(Caspian Pipeline Consortium)パイプライン(原油輸送量日量120~140万バレルとされる)の終点であるロシアのノボロシイスク近郊にある黒海沿岸出荷基地の海上係留装置3基中2基(第二及び第三1点係留装置(SPM:Single Point Mooring))でホース等が破損したことに伴い、当該装置の修理のため出荷基地の操業が停止する旨3月22日夜(米国東部時間)に報じられるとともに、同出荷基地からの原油供給が日量100万バレル程度減少する旨3月22日夜(同)にロシアエネルギー省のソローキン(Sorokin)次官が明らかにした他、当該装置の修理に最大2ヶ月間を要する旨3月23日にロシアのノバク副首相が発言したことにより、カザフスタンからの原油供給減少と世界石油需給の引き締まり感を市場が意識したことに加え、米国のバイデン大統領がロシアの政治家及び新興財閥幹部等に対する制裁を発動する旨3月24日(この日バイデン大統領が北大西洋条約機構(NATO)及びEU首脳会議に出席する予定であった)に発表する予定であると3月23日にバイデン政権のサリバン大統領補佐官が明らかにしたことにより、これら制裁発動によるロシアからのエネルギー供給への影響に対する懸念が市場で増大したこと、3月23日にEIAから発表された米国石油統計(3月18日の週分)で、原油在庫が前週比で251万バレル、ガソリン在庫が同295万バレル、留出油在庫が同207万バレルの、それぞれ減少と、市場の事前予想(原油在庫同10万バレル程度の増加、ガソリン在庫同200万バレル程度の減少、留出油在庫同140万バレル程度の減少)に反し、もしくは事前予想を上回って減少していた旨判明したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり114.93ドルと前日終値比で3.17ドル上昇した。ただ、3月24~25日に開催される予定のEU首脳会議においてはロシアからの原油輸入禁止については合意されない見通しであるとの観測が3月24日の市場で増大したことに加え、米国とその同盟国が戦略石油備蓄のさらなる放出を検討している旨米国エネルギー省のグランホルム長官が3月24日に明らかにしたことにより、世界石油需給緩和感が市場で醸成されたこと、5月渡しブレント原油先物取引の証拠金を3月25日より19%引き上げる旨インターコンチネンタル取引所(ICE)が発表したと3月24日に伝えられたことにより、原油先物取引費用増大を市場が意識したこと、3月23日に荒天による装置破損により操業を停止したCPCパイプラインの終点にあるノボロシイスク近郊の原油出荷施設が3月24日遅く(現地時間)には部分的に操業を再開する旨3月24日に伝えられたことにより、当該施設の操業停止長期化に伴う原油供給減少に対する懸念が市場で後退したこと、必要であれば0.5%の政策金利引き上げも受入可能である旨3月24日にシカゴ連邦準備銀行のエバンズ総裁が明らかにしたうえ、3月24日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(3月19日の週分)が18.7万件と前週比で2.8万件減少、1969年9月(この時は18.2万件)以来の低水準となった他市場の事前予想(21.0~21.2万件)を下回ったこと、同日米国金融サービス会社S&Pグローバルが発表した3月の米国製造業購買担当者指数(PMI)(50が当該部門好不況の分岐点)(速報値)が、58.5と2月の57.3から上昇した他市場の事前予想(56.3~56.6)を上回ったこともあり、米ドルが上昇したことから、この日(3月24日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.59ドル下落し、終値は112.34ドルとなった。それでも、3月25日には、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが同国西部ジッダに保有する石油貯蔵施設が3月25日に無人攻撃機により攻撃され、貯蔵タンク2基で火災が発生(その後鎮火)した一方、同日イエメンのフーシ派武装勢力が、サウジアラビアのジッダにあるサウジアラムコの施設、そして同国北東部ラス・タヌラ(Ras Tanura)及び同国西部ラービグ(Rabigh)にある製油所に対し無人攻撃機を発射したうえ、同国の首都リヤドの主要施設も攻撃対象となっていた旨表明した他、同日サウジアラビアのエネルギー省が、フーシ派武装勢力によるサウジアラビアでの石油関連施設への攻撃により発生した石油供給不足については責任を負わない旨発表したことにより、中東情勢の不安定化と当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり113.90ドルと前日終値比で1.56ドル上昇した。

しかしながら、3月26日にイエメンのフーシ派武装勢力が、サウジアラビア等への攻撃を3日間停止する旨発表したことにより、中東情勢不安定化による当該地域からの石油供給途絶懸念が3月28日の市場で後退したことに加え、中国上海市の黄浦江東岸と西岸の一部の地域につき3月28日~4月1日に、同市の残りの地域につき4月1~5日に、それぞれ新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖を実施する旨3月27日に同市当局が発表したことにより、同国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で拡大したこと、ウクライナとロシアとの停戦協議が3月29日からトルコのイスタンブールで開催される可能性がある旨ロシア大統領府のペスコフ報道官が明らかにしたと3月28日に伝えられたことにより、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻による西側諸国等による対ロシア制裁強化とロシアからのエネルギー供給への影響に対する市場の不安感が低下したことから、この日(3月28日)の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり7.94ドル下落し、終値は105.96ドルとなった。また、3月29日も、新型コロナウイルス感染抑制のための中国上海市の都市封鎖措置による同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で発生した流れを引き継いだことに加え、3月29日に開催されたウクライナとロシアとの停戦協議後、ロシア側交渉責任者である同国のメジンスキー大統領補佐官が、協議は建設的であった旨明らかにするとともに、今後両国の外相会談及び首脳会談開催を前向きに検討する旨表明した他、同国国防省のフォミン次官が、ウクライナの首都キエフ及び同国北部のチェルニヒウでのロシアによる軍事活動を大幅に縮小する方針である旨明らかにしたことにより、ロシアのウクライナ侵攻による西側諸国等による対ロシア制裁強化とロシアからのエネルギー供給への影響に対する市場の懸念が後退したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり104.24ドルと前日終値比で1.72ドル下落した。この結果原油価格は3月28~29日の2日間で1バレル当たり合計9.66ドルの下落となった。ただ、3月30日には、この日ドイツ政府が自国への天然ガス供給に対する緊急計画第一段階の実施を宣言し、ロシアからの天然ガス供給途絶時に向けた準備を開始したことにより、欧州での天然ガス需給引き締まり感の強まりと、燃料転換による石油需要増加観測が市場で発生したことに加え、3月29日に開催されたウクライナとロシアとの停戦協議に関しロシアのペスコフ大統領府報道官が当該協議は顕著に前進したわけではなかった旨明らかにしたと3月30日にロシア国営タス通信が伝えたことにより、両国の停戦と西側諸国等による対ロシア制裁の緩和、及びロシアからのエネルギー供給の正常化に対する市場の期待が後退したこと、3月30日にEIAから発表された米国石油統計(3月25日の週分)で、原油在庫が前週比で345万バレルの減少と、市場の事前予想(同100~200万バレル程度の減少)を上回って減少していた他、米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で101万バレル減少していた旨判明したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり107.82ドルと前日終値比で3.58ドル上昇した。それでも、米国が最大1.8億バレルの史上最大規模の戦略石油備蓄(SPR)放出を検討している旨3月30日夜(米国東部時間)に伝えられた他、その後5月より6ヶ月間にかけSPRから日量100万バレルの石油供給を実施する意向である旨3月31日に米国のバイデン大統領が発表したことにより、世界石油需給引き締まり感が市場で後退したことに加え、3月28~31日に中国上海工場の操業を停止した米国電気自動車製造大手テスラが4月1日も操業を停止する方針である旨3月31日に明らかになった他、同国上海市で3月28~31日に都市封鎖した地域の一部につき都市封鎖を延長する可能性がある旨上海市当局者が3月31日に示唆したことにより、中国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり7.54ドル下落し、終値は100.28ドルとなった。4月1日も、米国がSPRからの石油供給を実施する意向である3月31日にバイデン大統領が発表した流れを引き継いだことに加え、4月1日に国際エネルギー機関(IEA)加盟国が緊急時備蓄から石油を供給する旨合意したことにより、この先の相対的な石油需給緩和感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり99.27ドルと前日終値比で1.01ドル下落した。この結果原油価格は3月31日~4月1日の2日間で1バレル当たり合計8.55ドルの下落となった。

また、ロシア軍が撤退したウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャ他の都市で市民の集団虐殺が行われたと見られる旨ウクライナ検察当局が4月3日に明らかにするとともに、同日米国のブリンケン国務長官をはじめとする欧米諸国政府幹部がロシアが集団虐殺を実施したとして非難、ドイツのランブレヒト国防相はロシアからの天然ガス輸入を禁止すべきである旨4月3日に発言した他、フランスのマクロン大統領も、石油や石炭に関する対ロシア制裁の可能性につきEUは協議する意向である旨明らかにしたと4月4日に報じられたことに加え、ロシアからの石油供給途絶や、中国の新型コロナウイルス感染抑制による経済活動制限に対する景気刺激策等により、原油相場はさらに上昇する余地がある旨4月3日にVitolのアジア担当責任者が発言したこと、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが、アジア、欧州及び米国各地域の顧客に対し5月の原油販売価格を引き上げる意向である旨4月4日に伝えられたことにより、世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり103.28ドルと前週末終値比で4.01ドル上昇した。しかしながら、4月5日には、この日欧州連合(EU)欧州委員会が、ロシアからの石炭及び化学製品等の輸入を禁止する制裁案を発表したものの、石油及び天然ガスは対象外となっている旨判明したことにより、石油需給引き締まり感が市場で後退したことに加え、4月5日の欧州委員会の対ロシア制裁案発表により欧州経済減速懸念が市場で増大したことによりユーロが下落した他、同日米国連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が、5月に開始する予定であるFRB保有資産圧縮のペースがこの先相当程度加速する可能性がある旨発言したうえ、同日カンザスシティ連邦準備銀行のジョージ総裁も米国金融当局者は0.5%の政策金利引き上げを検討する必要がある旨示唆したことにより、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.32ドル下落し、終値は101.96ドルとなった。4月6日も、IEA加盟国が1.2億バレル(米国6,000万バレル、その他加盟国6,000万バレル)の緊急時備蓄からの石油供給実施で合意したとIEAのビロル事務局長がこの日明らかにしたことにより、世界石油需給引き締まり懸念が市場で後退したことに加え、4月6日にEIAから発表された米国石油統計(4月1日の週分)で、原油在庫が前週比242万バレル、留出油在庫が同77万バレルの、それぞれ増加と市場の事前予想(原油在庫同210万バレル程度、留出油在庫同82万バレル程度の、それぞれ減少)に反し増加していた他、米国オクラホマ州クッシングの原油在庫が前週比で165万バレルの増加となっていた旨判明したことにより、米国石油需給緩和感を市場が意識したこと、3月15~16日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)(この場において0.25%の政策金利引き上げを決定した)において、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻がなければ、多くの委員が0.5%の政策金利引き上げに賛成していた他、物価上昇が抑制されない場合には、今後1回以上の0.5%の政策金利引き上げが実施される可能性がある旨多くの委員が示唆していた旨、4月6日に発表された当該FOMC議事録で明らかになったことにより、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり96.23ドルと前日終値比で5.73ドル下落した。4月7日も、この日IEA加盟国による1.2億バレルの緊急時備蓄からの石油供給実施が正式に決定された旨発表されたことにより、世界石油需給引き締まり懸念が市場で後退し続けたことに加え、EU諸国のロシアからの石炭輸入禁止措置につき当該措置実施開始から実際の輸入停止までの猶予期間が当初予定であった3ヶ月から4ヶ月へと延長される方向で関係者間により議論されている旨4月7日に伝えられたことにより、欧州等でのエネルギー需給引き締まり感が市場で後退したこと、40年ぶりの高水準の物価上昇に対処するために、5月3~4日に開催される予定である次回FOMCにおいて0.5%の政策金利引き上げを決定することを支持する他、2022年後半に政策金利を3.00~3.25%へと引き上げるべきであるかもしれない旨4月7日に米国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁が示唆したこともあり、今後の米国金融当局による金融引き締め加速観測が市場で拡大するとともに、米ドルが上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.20ドル下落し、終値は96.03ドルとなった。この結果原油価格は4月5~7日の3日間で1バレル当たり合計ドル7.25下落した。それでも、4月8日には、これまでの原油価格の下落に対し値頃感から原油を買い戻す動きが市場で発生したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.23ドル上昇し、終値は98.26ドルとなった。

ただ、中国上海市において4月10日時点で26,087人の新型コロナウイルス感染者が確認され史上最高記録を更新した旨4月11日に報じられるなど、同市の新型コロナウイルス感染収束の兆候が見られないことにより、中国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことに加え、4月8日の週のロシアからの原油輸出が日量400万バレル超と前週比で増加し2022年初来最高水準に到達した旨4月11日に報じられたことにより、ロシアからの石油供給減少による世界石油需給引き締まり懸念が市場で後退したこと、4月12日に米国労働省から発表される予定である3月の米国消費者物価指数(CPI)が前年同月比8.4~8.5%の上昇と2月の前年同月比7.9%の上昇から上昇率が上振れしている旨判明するとの観測が市場で発生したこともあり、米ドルが上昇したことから、4月11日の原油価格の終値は1バレル当たり94.29ドルと前週末終値比で3.97ドル下落した。ただ、西側諸国等による対ロシア制裁発動により日量700万バレルのロシア石油供給が世界石油市場から排除される可能性があるが、それに対しOPEC産油国の余剰生産能力では対応が困難である他、足元の世界石油市場は政治的要因が影響を与えており、OPEC産油国が対応できる余地は殆どない旨バルキンドOPEC事務局長が欧州連合(EU)欧州委員会のエネルギー担当委員であるシムソン氏に対し示唆したと4月11日に報じられた流れを4月12日の市場が引き継いだことに加え、中国上海市の都市封鎖措置を部分的に緩和する旨同市当局が明らかにしたと4月11日に報じられたことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で後退した流れを4月12日の市場が引き継いだこと、ウクライナとロシアとの停戦交渉は行き詰まっている旨ウクライナのポドリャク大統領府顧問及びロシアのプーチン大統領が4月12日に明らかにした一方、ウクライナに対する特別軍事活動の目的を達成することに自信を持っている旨同日プーチン大統領が示唆したことにより、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻継続と西側諸国等による対ロシア制裁強化、及びロシアによるエネルギー供給への影響に対する懸念が市場で増大したこと、ロシアの原油生産量が4月11日に日量1,000万バレルを割り込み2020年7月以来の低水準に到達した旨4月12日に報じられたことにより、世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり6.31ドル上昇し、終値は100.60ドルとなった。また、4月13日も、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表されたオイル・マーケット・レポートで、5月のロシア石油供給が3月比で同300万バレル減少する他、2022年3月の減産措置参加OPECプラス産油国による減産措置縮小規模が前月比で日量5万バレルと、既定の方針である前月比日量40万バレルを大幅に下回る旨IEAが指摘したことにより、世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことに加え、3月15日に発表されたウクライナへの侵攻に伴うEUの対ロシア制裁(第四次制裁、ロシア大手石油会社ロスネフチを含むエネルギー企業との取引禁止(一部を除く)等を含む)が実質的に発効する5月15日までに、国際石油商社トラフィギュラ(Trafigura)がロスネフチからの原油購入を削減する意向である旨4月13日に報じられたことにより、ロシアからの事実上の石油供給減少と世界石油需給引き締まり懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり104.25ドルと前日終値比で3.65ドル上昇した。また、4月14日も、4月15日の聖金曜日(グッド・フライデー)に伴う連休を前にした持ち高調整が市場で発生したことに加え、EUがロシアからの石油調達の段階的禁止を検討している旨4月14日にニューヨーク・タイムスが報じたことで、欧州を中心とする世界石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.70ドル上昇し、終値は106.95ドルとなった。この結果原油価格は4月12~14日の3日間で1バレル当たり合計12.66ドル上昇した。なお、4月15日は、米国聖金曜日に伴う休日により休場となった。

 

4. 原油市場における主な注目点等

当面の石油市場での注目点の一つは、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻に伴う、西側諸国等の対ロシア制裁発動を巡る動向とロシアからの事実上の石油等の供給減少の可能性、そして市場での世界石油需給引き締まり感の増減具合となるであろう。

2月24日のロシアのウクライナ侵攻開始以降、ウクライナとロシアとの間での停戦を巡る交渉は3月12日以降オンライン形式により断続的に実施された。3月13日には、停戦協議を担当するウクライナのポドリャク大統領府顧問及びロシアのスルツキー議会下院外交委員長が、交渉が大きく前進した旨表明した。また、ウクライナはロシアとの間での停戦に向けた妥協案として、ウクライナが限定規模の軍隊を保有する中立国となる旨提案していると3月16日にロシアのメジンスキー大統領補佐官が明らかにした他、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念するとともに他国の軍事基地や軍事用資機材等を導入しないことを含む15項目からなる暫定和平案を示したことにより協議が大きく進展している旨3月16日に報じられた。ただ、依然として両国間で解決しなければならない懸案事項が残っているとされ、ウクライナとロシアとの間での停戦交渉が進展しているとの情報は誤りである旨3月17日にロシア大統領府が明らかにしている。また、ウクライナのポドリャク大統領府顧問は、ウクライナの領土問題、安全保障及びロシア軍の撤退等の問題解決を含め停戦交渉はなお少なくとも数週間継続するものと認識している旨3月18日に明らかにした。3月29日には、トルコのイスタンブールにおいて対面形式によりウクライナとロシアとの間での停戦交渉が実施された。停戦協議後、ロシアのメジンスキー大統領補佐官が、協議は建設的に行われた旨明らかにするとともに、今後両国の外相会談及び首脳会談実施を前向きに検討する旨表明した他、同国国防省のフォミン次官が、ウクライナの首都キーウ(キエフ)及び同国北部のチェルニヒウでのロシアによる軍事活動を今後大幅に縮小する方針である旨表明した。しかし、メジンスキー大統領補佐官は、キーウ等でのロシア軍の配備縮小は、停戦を意味するわけではなく、停戦交渉は依然それなりの期間を要する旨明らかにしている。また、停戦交渉に際しロシア側の真剣な姿勢が確認できない旨の認識を3月29日に米国のブリンケン国務長官が示唆した。さらに、ウクライナとロシアとの停戦協議に関しロシアのペスコフ大統領府報道官は協議が顕著に前進しているわけではなかった旨明らかにしたと3月30日にロシア国営タス通信が伝えた。ロシア国防省も3月30日にキーウ及びチェルニヒウで軍事活動に従事している同国軍部隊の一部を配置転換し、ウクライナ東部ドンバス地方等他の地域での(軍事)活動に従事させる意向である旨発表した。

他方、3月31日にロシアのプーチン大統領は、ロシア国外のロシア産天然ガス購入者は購入代金をルーブルで支払わなければならない旨の法令に署名、ロシアの最大手ガス会社ガスプロムの関係金融機関であるガスプロムバンクの特別銀行口座宛にルーブルにより購入代金の支払いを行う必要があり、支払いを行わない場合ロシアからの天然ガス供給は停止する旨発表した。同日ドイツ及びフランスはロシア産天然ガス購入代金のルーブルでの支払いを拒否している。

また、ロシア軍が撤退した後のウクライナの首都キーウ近郊の都市ブチャで多数(4月3日にウクライナ司法当局が明らかにしたところでは410人)の民間人の遺体が発見されたとして、4月3日にウクライナのゼレンスキー大統領がロシアによる集団虐殺が行われたとして非難、4月4日に同大統領は、これによりロシアとの和平協議は一層困難なものとなった旨明らかにした(これに対し、集団虐殺の情報は米国による謀略であると4月3日にロシア外務省のザハロワ報道官が発言、4月4日には同国のペスコフ大統領府報道官もロシアによる集団虐殺実施とのウクライナの主張を断固として拒否するなど、反発している)。欧米諸国等もゼレンスキー大統領の非難に同調し、4月6日に、米国バイデン政権は、ロシア最大手金融機関であるズベルバンク及び第四位のアルファバンクに対し米国国内資産凍結及び米国金融機関等との取引禁止(但しエネルギー関連分野については除外するとされる)を、そして、ロシアのプーチン大統領の娘及びラブロフ外相の配偶者及び子息に対し米国内資産凍結や米国人等との取引禁止を、それぞれ内容とする制裁を発動したうえ、4月8日に欧州連合(EU)が、8月第二週より、既存の契約に基づくものであってもロシアからの石炭の輸入を禁止(新規契約は4月8日以降禁止)することを含む、対ロシア制裁(第五次制裁)の発動を正式決定した。他方、ウクライナから提出されたロシアとの和平合意案はロシアが事実上支配するウクライナ南部のクリミア半島につきウクライナがロシアに対し要求する安全保障の適用対象外地域に当てはまらない旨示唆しているとして、ロシアにとって受け入れられない内容である旨4月7日にロシアのラブロフ外相が明らかにしている。

4月12日に、ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の(親ロシア派)住民をウクライナ政府から救出するとの目的を確実に達成することに自信を持っている旨示唆した。また、4月13日には、ロシア国防省が、ウクライナがロシア領を攻撃するようであれば、再度キーウを攻撃することになる旨警告した。他方、4月13日に米国のバイデン大統領は砲弾を含む榴弾砲をウクライナに初めて供給する他、ヘリコプターや装甲兵員輸送車等の軍事資機材等の提供を含め8億ドル規模の支援を行う旨表明した。また、EUはロシアからの石油調達を段階的に禁止する方向で検討している旨4月14日にニューヨーク・タイムスが報じている。他方、4月14日には、ロシア国防省が、同国黒海艦隊の旗艦「モスクワ」で爆発が発生し沈没したと発表した(ウクライナからのミサイル2発が着弾したことによるものであるとの見解を4月15日に米国国防省は明らかにしている)、4月15日には、ロシア国防省は、キーウへのミサイルによる攻撃を強化する意向である旨明らかにした。

このように、ロシアのウクライナへの侵攻は継続している他、ブチャでの住民の集団虐殺の発覚以降、ウクライナとロシアとの停戦は事実上行き詰まりの様相を呈しており、両国による戦闘は終結する兆候が見られない。そのような中で、2022年末までに最低150億立方メートル(約5,300億立方フィート、LNG換算約1,100万トン)、また、2030年に向け年間最低500億立方メートル(日量48億立方フィート、LNG換算約3700万トン)のLNGを米国はEU諸国に供給する旨、3月25日に米国とEUは合意した。しかしながら、ロシアからの石油輸入については禁止を主張するEU加盟国もある一方、ドイツ及びオランダ等は、輸入を禁止するには欧州はロシアからの石油供給に依存し過ぎているとして、輸入禁止に反対した結果、石油については輸入禁止が事実上見送られる場面も見られた(3月21日にEUのボレル外交安全保障上級代表が明らかにしている)。

ただ、将来的な欧米諸国の対ロシア制裁への抵触の可能性や企業に対する評判リスク等への懸念に加え、西側諸国の銀行が信用状の発行に消極的になっていることもあり、西側諸国等の石油会社がロシアからの石油購入を見送る傾向が見られると指摘される。このようなこともあり、特に西側石油消費国等のロシアからの石油供給が事実上減少する(2月のロシアの原油生産量(コンデンセート除く)が日量1,005万バレルと推定されるところ、4月11日には日量1,000万バレルを割り込み(コンデンセートを含んでいるかどうかは明らかにではない)2020年7月以来の低水準に到達した旨4月12日に報じられる)結果、石油需給引き締まり感が市場で強まることを通じ、この先も原油相場に上方圧力が加わる可能性がある。また従来ロシアは欧州に向け軽油日量60万バレルを輸出、これは欧州の当該製品消費量(日量626万バレル)の10%弱を占めており、ウクライナ侵攻に伴い、ロシアからの軽油輸入が減少することにより欧州での軽油需給が引き締まるとともに、軽油価格が上昇、その影響が原油価格に及びつつあると言われている他、欧州での軽油需給引き締まり感の増大により、米国及びアジアから欧州に向け軽油輸出が促進されることにより、世界的にも軽油需給が引き締まることにより、世界各地域の軽油価格が上昇するとともに、原油価格もその影響を受けるといった状態が当面発生しやすいものと見られる。

他方、イエメンのハディ暫定大統領派勢力(サウジアラビア等が支援)と対立し事実上の内戦状態となっているフーシ派武装勢力(イランが支援しているとされる)は、3月20日にサウジアラビアのYasref製油所に対し無人攻撃機、弾道ミサイル及び巡航ミサイルで攻撃を行った結果、同製油所の稼働が低下した旨伝えられた。また、サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコが同国西部ジッダに保有する石油貯蔵施設が3月25日に無人攻撃機により攻撃され、貯蔵タンク2基で火災が発生(その後鎮火)したが、同日フーシ派武装勢力が、サウジアラビアのジッダにあるサウジアラムコの施設、そして同国北東部ラス・タヌラ(Ras Tanura)及び同国西部ラービグ(Rabigh)にある製油所に向け、無人攻撃機を発射した他、サウジアラビアの首都リヤドの主要施設も攻撃対象となっていた旨表明した。ただ、3月26日にはフーシ派武装勢力が無人攻撃機やミサイルによるサウジアラビアに対する攻撃を3日間中断する他、サウジアラビアがフーシ派武装勢力の拠点に対する空爆を停止するとともに、イエメンの港湾封鎖(フーシ派武装勢力が事実上支配するイエメン西部の都市ホデイダの港湾をサウジアラビアが主導する有志連合軍が事実上封鎖している)を終結させるようであれば、継続的な停戦となる旨明らかにした。また、有志連合軍は、断食月(ラマダン)(2022年は概ね4月1日~4月30日)を控え、3月30日午前6時(現地時間)からフーシ派武装勢力に対する攻撃を停止すると発表した。そして、両者の停戦を仲介する国連が、両者が4月2日夜(現地時間)から2ヶ月間停戦を実施するとともに、ホデイダの港湾に対する有志連合軍による事実上の封鎖措置を有志連合軍が解除する他、フーシ派武装勢力が支配するイエメンの首都サヌアの国際空港(有志連合軍が空域を事実上封鎖していた)の民生用航空便の利用を有志連合軍が認めることで両者が合意した旨4月1日に発表した。このように、イエメンについては、フーシ派武装勢力とサウジアラビアが主導する有志連合軍との間ではひとまず一時的な停戦が図られる格好となっているが、今後恒久的な停戦に持ち込むべく両者による交渉の進展が見られようであれば、フーシ派武装勢力によるサウジアラビア等の中東湾岸産油国の石油関連施設攻撃が停止することにより、中東情勢不安定化増大に伴う当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で後退する結果、原油相場の上昇が抑制されやすくなる反面、交渉が不調に終わるようであれば、再びフーシ派武装勢力によるサウジアラビアの石油施設等への攻撃が活発化することにより、中東情勢不安定化増大に伴う当該地域からの石油供給途絶懸念が市場で再燃する結果、原油相場が上昇しやすくなるものと考えられる。

イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議については、ウクライナ問題を巡る米国の対ロシア制裁はイランとロシアとの原子力分野での取引を阻害することはない旨書面で米国がロシアに対し保証したと3月15日にロシアのラブロフ外相が明らかにした。また、イランが同国革命防衛隊の活動を抑制する旨保証するのであれば米国は革命防衛隊のテロ組織指定を解除する方向で検討していると3月16日に伝えられるが、これに対し3月18日にイスラエルのベネット首相が米国バイデン政権の行動を批判する旨表明した。他方、3月23日には、イラン核合意正常化に向けた西側諸国等とイランとの間での協議に関し、これまでの中でもっとも妥結に接近した旨イランのアブドラヒアン外相が表明した。しかしながら、当該協議は妥結に向け接近していない他、確実に妥結するというわけでもない旨米国国務省のプライス報道官が3月21日に明らかにするなどした。また、3月13日にイラン革命防衛隊がイラク北部クルド人自治区の都市アルビルを弾道ミサイルで攻撃したことに加え、3月25日にイエメンのフーシ派武装勢力がサウジアラビアの石油関連施設を攻撃したことに対し、イランが弾道ミサイルを開発する際に必要とされる資機材をイラン革命防衛隊研究施設に供給するなどしたとして、3月30日に米国財務省は、イラン人個人1人と企業4社に対し、米国国内資産凍結と米国人との取引禁止を内容とする制裁を発動する旨発表した。そして、イラン核合意正常化に際しイラン革命防衛隊の精鋭部隊である「コッズ部隊」に対する制裁解除を要求するイランに対し米国バイデン大統領は反対する姿勢を示した旨米国国務省のポーター副報道官が4月8日に明らかにした。さらに、4月6日に米国のブリンケン国務長官は、英国、ドイツ及びフランスの外相と協議し、イランとの核合意正常化を巡る交渉が不調に終わった場合に備え、代替の行動方針を策定すべく準備を行う意向である旨発表した。このように、イラン核合意正常化に向けた西側諸国とイランとの間での協議の行方は依然不透明感が漂う。また、協議が妥結したとしても、妥結後のイラン核合意正常化の手続きは段階的なものになると報じられており、米国による対イラン制裁の緩和によるイランからの原油供給増加までには時間を要する可能性がある。さらに、特にイランの陸上油田は老朽化しているとされており、増産を急ぐと地下の圧力が異常を来し、生産が伸び悩む恐れがあると見られることにより、イランが慎重に増産を進める結果、同国の原油生産増加ペースは緩やかなものになる可能性がある(2016年1月16日に到達したイラン核合意による米国の対イラン制裁の事実上の解除後のイラン原油生産は最終的には対イラン制裁時に比べ日量100万バレル(日量290万バレルから同385万バレルへ)拡大したものの、毎月の増産ペースは日量1~29万バレル程度であり、生産回復までに10ヶ月を要した)。このようなことから、少なくとも短期的にはロシアからの原油供給が相当程度減少する可能性があるとの懸念が市場で強い状況下において、イラン核合意正常化を巡る西側諸国等とイランとの協議妥結接近の情報は、時として原油相場に下方圧力を加えうるものの、その規模及び期間は限られたものになりやすいものと見られる。

中国では、上海市の黄浦江東岸と西岸の一部の地域につき3月28日~4月1日に、残りの地域につき4月1~5日に、それぞれ新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖を実施する旨3月27日に同市が発表したが、4月1日以降も同市では個人の外出及び経済活動制限は継続した。そして、中国上海市の住民2,600万人全員に対する新型コロナウイルス検査実施を完了するまで、新型コロナウイルス感染抑制のための規制は継続する意向である旨4月6日に同市当局者が明らかにした。その後同市の新型コロナウイルス感染者数は4月13日には27,719人の史上最高水準に到達したものの、4月14日には23,072人へと減少している。このように、中国では一部都市で新型コロナウイルス感染が拡大する場面が見られ、それに対し厳格な封鎖措置が実施された。4月13日には中国の習近平国家主席が、新型コロナウイルス感染抑制のための厳格な封鎖措置は緩和すべきではないものの、同時に新型コロナウイルス感染抑制措置による中国経済及び社会への影響を最小限に抑制するべく努力する必要がある旨明らかにした。そして、4月15日には、中国人民銀行が景気刺激策として4月25日より市中銀行の預金準備率を0.25%(中小銀行はさらに追加して0.25%)引き下げる旨発表した。今後も、中国国内の諸都市等において、新型コロナウイルス感染が拡大するとともに、個人の外出規制及び経済活動制限が強化されることのより、同国経済及び石油需要へ影響を及ぼす、もしくは及ぼす懸念が市場で増大する結果、その影響が原油相場に及ぶといった展開となる可能性も否定はできないことから、今後の同国での新型コロナウイルス感染拡大状況等には注目していく必要があろうが、反面、この先中国政府がさらなる景気刺激策を発表し実施に移すようであれば、その内容次第といった側面もあるが、中国での経済成長と石油需要回復に対する期待が市場で増大するとともに、原油相場が持ち直す場面が見られることもありうる。

3月15~16日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利を0.25%引き上げる旨決定した。しかしながら、3月21日には米国連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が、5月3~4日に開催予定の次回FOMCで0.5%の政策金利引き上げを含め、必要であれば政策金利引き上げを加速する用意がある旨示唆した。また、3月22日にもグリーブランド連邦準備銀行のメスター総裁が2022年中に開催されるFOMCでは、一時的に大幅な政策金利引き上げが必要となるであろう旨明らかにした。さらに、従来緩やかな政策金利引き上げを主張していたサンフランシスコ連邦準備銀行のデイリー総裁も物価上昇を抑制するために0.5%といった積極的な政策金利引き上げの必要がある旨3月22日に示唆したり、3月24日にはシカゴ連邦準備銀行のエバンズ総裁も0.5%の政策金利引き上げも受入可能である旨明らかにしりした。加えて、40年ぶりの物価上昇に対処するために、5月3~4日に開催される予定である次回FOMCでの0.5%の政策金利引き上げ決定を支持する他、2022年後半に政策金利を3.00~3.25%へと引き上げるべきであるかもしれない旨4月7日に米国セントルイス連邦準備銀行のブラード総裁が示唆した。4月14日には、ニューヨーク連邦準備銀行のウィリアムズ総裁も、物価上昇を抑制するため0.5%の金利引き上げを含め金利引き上げペースを加速することが妥当であると考えられる旨の見解を明らかにした。

他方、4月12日に米国労働省が発表した3月の同国消費者物価指数が前年同月比で8.5%の上昇と、1981年12月(この時は同8.9%の上昇)以来の高水準の物価上昇率に到達したうえ、市場の事前予想(同8.4%の上昇)を上回った。また、4月13日に米国労働省が発表した3月の同国生産者物価指数(PPI)が前年同月比11.2%の上昇と2010年11月以降の同国PPIの前年同月比上昇率統計史上最高水準に到達した他、市場の事前予想(同10.6%の上昇)も上回った。

このようなこともあり、5月3~4日に開催される予定である次回FOMCでは、政策金利を現水準(0.25~0.50%)から0.50%引き上げる(つまり0.75~1.00%となる)確率が4月15日時点で91.0%と極めて高くなっている(なお、0.25%の政策金利引き上げの確率は9.0%である)など、金利引き上げペースの加速観測が強まっている。このため、今後もこのような政策金利引き上げ加速期待から米ドルが上昇するとともに、原油相場に下方圧力を加える場面が見られることもありうる。

また、4月中旬以降米国主要企業等の2021年1~3月期業績等が発表され始めており、これは当面継続する予定であることから、業績(もしくは業績見通し)の内容等によって株式相場が変動するとともに、それが石油需要増加ペースに対する市場の見方に反映されることを通じ原油相場にその影響が織り込まれるといった展開も想定される。

米国では、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が市場関係者の視野に入るとともに、製油所が春場のメンテナンス作業実施を終了し稼働を上昇、原油精製処理量を増加させるとともに原油購入を活発化させることから、季節的に石油需給の引き締まり感が強まる。その結果、原油相場に上方圧力が加わりやすくなるものと考えられる。

OPECプラス産油国は5月5日に閣僚級会合を開催する予定である。西側諸国等がサウジアラビア等に対し減産措置縮小ペース加速等の働きかけを行っているものの、OPECプラス産油国側にウクライナとの紛争当事者であるロシアがいることにより、サウジアラビア等のOPECプラス産油国は構成国の結束維持を重要視するとともに石油収入等経済に苦慮するロシアに配慮する側面がある一方、イエメンのフーシ派武装勢力や同勢力を支援しているとされるイランと対峙するサウジアラビア等が、フーシ派武装勢力に対するテロ組織指定を解除したうえ、イランとの間で核合意正常化に向けた協議を進めつつある米国等に対し政治的に距離を置きつつあるように見受けられるところからすると、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻と、西側諸国等による対ロシア制裁、そしてそのような一種の政治問題に伴うロシアから西側諸国等へのエネルギー供給減少の可能性に対し、サウジアラビアをはじめとするOPECプラス産油国は、政治問題に起因する理由のために減産措置縮小(つまり増産)の加速を行う意向はない旨示唆したこともあり、次回OPECプラス産油国閣僚級会合では、3月31日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合で決定された、2022年5月についての前月比日量43.2万バレルの減産措置縮小を2022年6月にも適用する旨決定する可能性がそれなりにあるものと考えられる。

他方、中国が半ば秘密裏にロシアから原油を輸入している(石油を輸送するロシアのタンカーが位置情報装置の作動を停止させているとも指摘される)と言われており、今後もロシアから供給される原油等が相対的にロシアに友好的な中国及びインド等(3月28日にはインドネシア国営石油会社プルタミナも安価で原油を調達できる良い機会であるとして、ロシア産原油購入を検討している旨伝えられる)に向け輸出される結果、西側諸国等の石油会社によるロシアからの石油購入敬遠の動きに伴うロシアからの世界石油市場への石油供給の事実上の減少の影響が軽減される(ロシアからの石油供給が中国やインド等に向かう結果、従来中国やインドが輸入していたロシア以外の産油国等からの石油が中国やインド以外の消費国に向かうことを通じ世界石油供給が平準化に向かうことによる)可能性もあるものと考えられる(実際、4月8日の週のロシアからの原油輸出は日量400万バレル超と2022年の年初来最高水準に到達した旨4月11日に報じられている)が、少なくとも短期的にはタンカー配船等を含む輸送上の混乱等を含めロシアからの円滑な石油供給に支障が発生する結果、石油需給引き締まり感が市場で強まるとともに原油相場に上方圧力が加わる場面が見られることがありうる。さらに、ロシアから石油を購入する企業が拠点とする第三国に対し米国等の西側諸国等が制裁を発動する意向を示す(4月11日には米国のバイデン大統領がインドのモディ首相との間でテレビ会議形式による首脳会談を実施したが、その場でバイデン大統領は、具体的なロシアからの石油輸入上限を示すことはなかったとされるものの、インドのロシアからの石油輸入拡大はインドの利益にならない旨警告した)ようであれば、世界石油市場からロシア産石油供給が実質的に閉め出されることにより、石油需給引き締まり感が市場で強まるとともに、原油相場が上振れするといった展開となる可能性も否定できない。

全体としては、今後、中国の一部都市における新型コロナウイルス感染抑制のための封鎖措置の実施状況によっては、同国の経済成長及び石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で拡大することにより、原油価格に下方圧力が加わる場面が見られる可能性がある。また、5月3~4日に開催される予定であるFOMCに向け同国の物価上昇率が上振れしていることもあり、米国金融当局者による金融引き締め策が加速するとの観測が強まる結果、米ドルが上昇するとともに原油価格が抑制されやすくなるものと考えられる。しかしながら、米国で夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が接近するとともに、季節的に石油需給の引き締まり感が市場で強まると見られることから、この面では原油相場は下支えされやすいものと思われる。また、ロシアのウクライナに対する事実上の侵攻継続により、西側諸国による対ロシア制裁が強化される兆候が見られることもあり、今後ロシアからの石油や天然ガスの供給が制裁対象となる可能性が高まることにより、世界石油需給の引き締まり観測が市場で発生するとともに原油相場に上方圧力が加わるといった展開が見られる可能性も想定されうる。

 

以上

(この報告は2022年4月18日時点のものです)

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