ページ番号1009325 更新日 令和4年4月18日

コロンビア:探鉱・開発に大きく影響を与える可能性がある大統領選挙

レポート属性
レポートID 1009325
作成日 2022-04-18 00:00:00 +0900
更新日 2022-04-18 11:52:03 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 非在来型探鉱開発
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 13
抽出データ
地域1 中南米
国1 コロンビア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,コロンビア
2022/04/18 舩木 弥和子
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概要

  • 2020年のCOVID-19感染拡大とそれに伴う原油価格下落、2021年の抗議行動やデモ、ストライキにより、コロンビアの探鉱・開発は停滞し、石油生産量も日量75万バレル弱で横ばいの状況が続いている。
  • 天然ガス生産量は2016年以降微増しているものの、確認埋蔵量は減少を続けている。沖合と非在来型の探鉱・開発が今後の天然ガス開発のカギを握ると見られている。沖合については、Shell、Ecopetrol、Petrobrasが間もなくカリブ海で掘削を開始する計画であるが、シェール開発については現在、環境面への配慮からパイロットプロジェクトの実施のみが認められている。
  • 政府は2019年6月以降、入札実施後、応札の詳細内容を発表し、カウンタービッドを受け付けた上で、最終結果を決定するPermanent Process for the Assignment of Areas(PPAA)方式の鉱区入札を実施している。これまでに4回の入札が盛況のうちに行われたが、今後の開発の鍵となる技術や資金を有するメジャーの参加が少ない等、課題も浮かび上がってきている。
  • 政府およびEcopetrolは、水素開発や再生可能エネルギーに積極的に参入しながらも、探鉱・開発に注力する方針を示している。しかし、5月に行われる大統領選挙の最有力候補とされるGustavo Petro氏は、大統領選挙で勝利した暁には、既存の油田、ガス田での生産は続けるものの、新規の探鉱や鉱区付与は行わず、これにより、約12年をかけて化石燃料からの脱却を図る計画であるという。大統領選挙の結果次第では、コロンビアの探鉱・開発の状況が一変する恐れもあり、状況を注視していく必要があろう。

(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas他)

 

COVID-19感染と抗議行動やデモの拡大で石油生産停滞

2014年後半からの原油価格下落で、コロンビアでの掘削活動は2015年から2016年にかけて低迷した。Baker Hughesによると、コロンビアの稼働リグ数は2016年1月から9月には1桁で推移した。その後、原油価格の回復により稼働リグ数は次第に回復し、2018年中頃以降は30基前後で推移するようになった。しかし、2014年前半以前の40基から50基程度には戻らなかった。

掘削の低迷を受けて、2013年から2015年にかけて日量100万バレル程度で推移していた石油生産量も、2016年以降は日量90万バレルを切り、日量85万バレルから89万バレルの間にとどまるようになった。石油確認埋蔵量も2017年の16億6,549万バレルを底に増加してはいるものの、可採年数は6年から7年程度で推移している。

図1石油確認埋蔵量、図2石油生産量
BP Statistical Review of World Energy June 2021を基にJOGMEC作成
図3コロンビア主要鉱区図
図3コロンビア主要鉱区図
各種資料を基にJOGMEC作成

石油生産量の減少や確認埋蔵量の低迷を受けて、コロンビア政府は探鉱・開発契約や入札方式を変更し、探鉱・開発促進を図った。2019年3月から4月にはカリブ海沖合5鉱区の探鉱・開発契約が締結され、6月と11月には新方式の鉱区入札により、それぞれ11鉱区と15鉱区が落札された。4年間にわたり、新規探鉱・開発契約の締結がなく、探鉱・開発が停滞していたコロンビアで、このように短期間に合計で30件の契約が締結される見通しとなったことから、ゲリラ組織によるインフラ攻撃、地域住民や環境保護団体の抗議行動が続き、環境許可の取得には時間がかかり、近年大規模な在来型油・ガス田の発見が無かった同国で探鉱・開発が再び活発になるのではないかとの見方が広がった。

しかし、2020年はCOVID-19感染拡大とそれに伴う原油価格下落により、掘削活動は再び低迷した。Baker Hughesによるとコロンビアの稼働リグ数は2020年5月には1基まで減少した。生産を停止する油井も現れ、石油生産量は2020年1月の日量88.4万バレルから6月には日量73万バレルまで減少した。

コロンビアの石油生産は以前より、資機材や生産物の輸送、石油や天然ガスの開発・生産において、これらとともに生産される随伴水の除去の他、参入企業の規模が小さく資金や技術面における課題を抱えている。

コロンビアでは過去数十年にわたって反政府勢力によるパイプラインへの攻撃が続いた上に、2010年前後に石油生産量が急増した際にはパイプラインの輸送能力が足りず、山の多い国土をタンクローリーに原油を積み込んで輸送したり、新たなパイプラインの建設を余儀なくされたりした。コロンビアの原油輸送コストは世界の石油産業の中でも最も高い部類とされており、パイプラインタリフはバレル当たり7ドルから15ドルであるという。原油価格の下落とCOVID-19の感染拡大による影響を緩和するため、石油会社は、政府、CENIT(Ecopetrolの100%子会社で、コロンビア全土に石油パイプライン網を所有)およびその系列会社に対してパイプラインタリフの引き下げを求めた。CENITは、パイプラインタリフを2020年5月と6月は半額にし、さらに、支払いに猶予期間を設けることに合意したものの、合意には業界全体が含まれておらず、パイプラインタリフをめぐる緊張が続いた。

また、コロンビア東部の産油地域では、生産者は石油を生産する際に石油よりも大量の随伴水を生産している。例えば、Rubiales/Quifa油田では、日量165,000バレルの石油を生産しているが、随伴水は日量200万バレル以上となっているという。この随伴水の除去がコスト高につながっている。

さらに、石油生産量、埋蔵量の低下を受けて、近年、メジャーをはじめとする大規模な石油会社のコロンビアへの関心が弱まってきている。そのため、国営石油会社Ecopetrolを除くとGeopark、Frontera Energy(旧Pacific E&P)、Parex Resources、カナダのGran Tierra EnergyやCanacol Energy等中小規模の企業が中心となってコロンビアの探鉱・開発を進めている。これらの企業の多くは、技術力や資金調達でメジャーズ等大手石油会社に劣っており、油価変動への耐性も弱い。

これらの課題があることから、コロンビアでは、油価下落が石油生産に及ぼす影響が、他国よりも大きくなったと見られている。

加えて、2020年5月に、地元住民等による抗議活動によりBarrancabermejaにあるEcopetrolの生産井42坑が破壊され、メンテナンス作業を行う作業員が現場に入ることを阻止される等、抗議行動も続いた。

2020年半ば以降、原油価格の回復に伴い、コロンビアでも稼働リグ数が増加、生産が再開されるようになり、若干ではあるが、石油生産は回復に向かった。しかし、2020年通年で見ると、コロンビアの石油生産量は2019年の日量885,850バレル比11.8%減の日量781,300バレルとなった。コロンビア石油協会(ACP)によると、2020年のコロンビアの石油・ガス上流部門への投資額は前年比49%減の20億5,000万ドルと2016年以来の低水準となった。内訳を見てみると、探鉱への投資額は、2019年の7億8,000万ドルから2020年には3億5,000万ドルに減少、2020年初頭には40億5,000万ドルと推計されていた2020年の生産への投資額は17億ドルとなり、2019年比で55%の減少となった。また、2020年に掘削された坑井数は試掘井32坑、生産井267坑、合計で299坑であった。

図4コロンビアの稼働リグ数推移
図4コロンビアの稼働リグ数推移
https://rigcount.bakerhughes.com/intl-rig-countを基にJOGMEC作成
図5コロンビアの石油生産量推移(単位:日量万バレル)
図5コロンビアの石油生産量推移(単位:日量万バレル)
ANH、鉱山エネルギー省websiteを基にJOGMEC作成、Ecopetrolの生産量には子会社を含む

2021年の石油生産量については、ACPが日量765,000~780,000バレル、IEAが日量750,000バレルとの見通しを発表していた。しかし、2021年に入っても、Caño Limón-Coveñasパイプライン等石油インフラに対する地元住民の攻撃が続いたり、機材の故障、環境対策、電力等の問題が生じたりしたことで、4月までのコロンビアの石油生産量は引き続き日量75万バレルを切る水準で推移した。

そのような状況下、コロンビアの大蔵・公債省は2021年4月15日、慢性的な財政赤字を解決、新型コロナウイルスの影響による経済的・社会的影響を受けた財政を立て直し、社会支出を強化するために、税制改正案を国会に提出した。この税制改革案を受けて、4月28日からコロンビアの主要都市で抗議行動やデモが発生、また、全国的なストライキが始まった。5月初旬に税制改革案が却下されたにもかかわらず、デモは継続、強化され、全国で道路封鎖などが実施され、物流やサプライチェーン全般に影響を与えた。当初、探鉱・開発、原油の輸送、生産設備や上流部門での人員の動員に影響はなかったが、5月中旬になると、主要道路の封鎖、抗議行動やデモにより、Meta、Putumayo、Huila、Tolima、Arauca、Boyacá、Cesar、Casanare等で一部の油井や油田が閉鎖に追い込まれ、ほぼ全ての石油会社に影響が及ぶようになった。石油生産量は減少し、5月は日量70万3,000バレル、さらに、6月には日量69万4,000バレルと2009年以来初めて日量70万バレルを下回ることとなった。

その後、7月には日量73万1,000バレル、8月には日量74万8,000バルレと石油生産量は増加し、2020年と同水準まで回復したものの、それ以降は横ばいの状態が続き、2021年通年のコロンビアの石油生産量は2020年比5.8%減の日量73万6,356バレルとなった。一方、2021年の石油・ガス上流部門への投資額はACPが事前に予測した31億~34.5億ドルよりも少ないものの、2020年比では50%増の30億9,000万ドル(探鉱5億,2000万ドル、生産25億7,000万ドル)となった。また、2021年に掘削された試掘井、生産井は合計で460坑と2020年より53.84%増加した。坑井の内訳は、生産井が425坑、試掘井が35坑であった。

表1主な石油会社の操業状況(2021年5~6月)
石油会社 操業状況
Ecopetrol 5月の生産量は日量65万1,000バレルで、第1四半期の日量67万5,000バレルから3.6%減少。治安悪化により、Cusiana、Floreñaガス田での生産、Putumayo、Meta、Arauca、Boyaca県での掘削に影響が生じる。パイプライン子会社CENITは一部のシステムでポンプを断続的に停止。Barrancabermeja製油所の5月の精製処理量は第1四半期の日量21万6,900バレルから20万7,000バレルに減少。
GeoPark 油田での活動を大幅に縮小。Llanos 34、CPO-5、Platanilloの各鉱区で5月8日から生産停止。コロンビアにおける同社の生産量の40~45%に相当する石油換算で日量12,000~15,000バレルの生産が停止。
Gran Tierra Putumayo BasinおよびMiddle Magdalena Valley Basinでの道路封鎖により、一時的に原油生産量が減少。5月中旬には、石油換算で日量約5,250バレルの生産を停止、同社の生産量は石油換算で日量約24,350バレルとなる。
Parex Resources 2021年4月から5月16日までの間、原油生産量が日量約41,100バレルから24.6%減少し日量31,000バレルとなった。
Frontera Energy Meta県Puerto Gaitánで発生している道路封鎖により、CPE-6鉱区の生産を中断、日量3,500バレルの生産が減少。

各種資料を基にJOGMEC作成

 

2022年1月、Diego Mesa鉱山エネルギー大臣は、2022年の石油生産量について、日量80万バレルに回復することを期待しているが、少なくとも日量78万~80万バレルの範囲に回復するだろうとの見通しを発表した。また、ACPは、2022年の探鉱への投資額は11.3億ドルと、2021年の投資額の2.2倍、2014年以来の最高額になるとした。さらに、生産向け投資額は、2021年より27%増加し32.7億ドルとなるとした。

コロンビアのリグ稼働数は2021年後半に増加し2022年1月時点では33基まで回復したが、石油生産量は、2022年1月が日量73万9,848バレル、推定値ではあるが、2月が日量73.5万バレルと増加するには至っていない。

 

天然ガスについても埋蔵量、生産量減少。沖合と非在来型の探鉱・開発がカギを握る

天然ガスに関しては、過去10年間、確認埋蔵量が減少を続けている。bp Statistical Review of World Energy July 2021によると、2020年末の天然ガス確認埋蔵量は862億立方メートルで、可採年数は6.5年となっている。

生産量は2016年以降微増しており2020年は133億立方メートルとなった。主要な天然ガス生産企業はEcopetrol、Canacol Energy、Hocolの3社で、Llanos、Lower Magdalena、Guajira Basinを中心に生産を行っている。Ecopetrolのグループ会社であるHocolは2019年11月、Chevronが保有するLa Guajira県Chuchupa、Ballenaガス田の権益43%を取得すると発表、コロンビア国内のガス市場でのシェアを10%として、同国第3位の生産者となった。

図6天然ガス確認埋蔵量、図7天然ガス生産量
BP Statistical Review of World Energy June 2021を基にJOGMEC作成

今後さらに増加するガス需要に対応するためには、沖合と非在来型の探鉱・開発が重要と考えられている。

沖合については、Ecopetrol、Occidental、Shell、Chevron、Repsol、Petrobras、Hocol等が鉱区権益を保有している。

このうち、ShellとEcopetrolは間もなく、COL5鉱区で評価井Gorgon 2号井の掘削を開始する計画である。COL5鉱区については、2019年3月に国家炭化水素庁(ANH)が、技術評価契約(technical evaluation agreements:TEA)を探鉱・生産契約へ変更することを承認し、Ecopetrolが同鉱区の権益100%を保有していた。2020年12月に、EcopetrolはこのCOL5鉱区と、同じく権益100%を保有するFuerte Sur鉱区、Purple Angel鉱区[1]の権益の50%をShellに譲渡した。これら3鉱区では、2015年にFuerte Sur鉱区で掘削されたKronos1号井、2017年にPurple Angel鉱区で掘削されたPurple Angel井とGorgon1号井でガスの埋蔵が確認されている。Gorgon 1号井については、水深2,150メートルの海域で掘削長3,675メートルまで掘削され、ネットペイ80~110メートルのガス層を確認、資源量は石油換算10億バレルと推定されている。

Ecopetrolはまた、PetrobrasとともにTayrona鉱区で探鉱井の掘削を準備中である。さらに、Repsol、Occidental、Hocol、Chevronもカリブ海沖合での掘削を計画しているという。

また、Occidentalは、カリブ海沖合の4鉱区、COL1、COL2、COL6、COL7鉱区のTEAを探鉱・生産契約に変更することをANHに要求していたが、2021年10月にこれが認められた。今後、14億ドルの投資が行われる予定である。

一方で、ExxonMobilは2020年第3四半期に、COL4鉱区の権益を放棄する意向を示したレターをコロンビア政府に提出した。COL4鉱区については、2019年4月に、ANHがTEAを探鉱・生産契約へ変更することを承認し、Repsolと探鉱・開発契約を締結した。その、ExxonMobilがRepsolから同鉱区の権益の50%を取得し、ファームインしていた。

図8カリブ海沖合鉱区
図8カリブ海沖合鉱区
各種資料を基にJOGMEC作成

シェールに関しては、水圧破砕に関連する環境規制により開発が制限されている。EcopetrolとExxonMobilが同国北部のPlateroおよびKaléプロジェクトについてパイロットプロジェクトの実施を承認されているが、商業的な開発は許可されておらず、あくまで研究目的のパイロットプロジェクトとなっている。両社は2021年10月に環境規制当局ANLAに環境影響評価書を提出し、環境面での許可を求めた。このうち、Kaléプロジェクトについては、2022年2月にANLAの承認が得られ、両社は少なくとも8,400万ドルを投じ、プラットフォーム1基の設置と水圧破砕井1本の掘削を実施する計画だ。

現状では、天然ガス消費量の増加が生産量の増加を上回っており、LNG輸入量は増加傾向にある。ただし、2021年についてはラニーニャ現象により降水量が増加したため、水力発電量が増加し、LNG輸入量は減少した。

現在、同国唯一のCartagena LNG輸入ターミナルは、Cartagena沖合に停泊する浮体式貯蔵再ガス化装置(FSRU)Hoegh Graceで再ガス化されたガスを、全長9.2キロメートルのパイプラインで地元の火力発電所(TPP)に供給している。同ターミナルの再ガス化能力は400万トン、貯蔵容量は17万立方メートルとなっており、Promigasが51%、オランダのVopakが49%を保有している。LNGはスポット市場で調達し、主にトリニダード・トバゴと米国から輸入している。Promigasは、コロンビアでのガス需要の増加に伴い、ターミナルを拡張する計画であるという。


[1] Ecopetrolは2018年に、Anadarko Petroleumが売却したFuerte Sur鉱区とPurple Angel鉱区の権益を取得し、権益保有比率を50%から100%に高めていた。

 

新方式の鉱区入札制度が定着

鉱区入札に関しては、2019年6月以降、Permanent Process for the Assignment of Areas(PPAA)方式に基づく鉱区入札が実施されている。PPAA方式に基づく鉱区入札は、ANPが入札を受けた後、その詳細を発表し、カウンタービッドを受付、その上で、最終結果を決定、発表する。

第1回目のPPAA方式の入札では、陸上18鉱区、沖合2鉱区の合計20鉱区のうち11鉱区にFrontera Energy、Parex Resources、Gran Tierra Energy、Geopark、Ecopetrol、Hocol、ONGC Videshの7社から19件の入札があり、落札された。

2019年11月の第2回目の入札では、対象とされた59鉱区中14鉱区をCanacol Energy、Parex Resources、GeoPark、Hocol、Ecopetrol、Gran Tierra Energy、Frontera Energy、Amerisur Resourcesが落札した。

そして、2020年11月実施の第3回入札では、VIM 43、VIM 44、VMM 47、LLA 134の4鉱区が公開され、Parex ResourcesがLLA134鉱区とVIM43鉱区、CNE Oil & Gas(Canacol Energy系列会社)がVIM44鉱区とVMM47鉱区に入札、カウンターオファーがなかったため、両社が落札した。

政府は2021年に53鉱区(陸上48鉱区、沖合5鉱区)を対象にPPAA方式による第4回鉱区入札Ronda Colombia 2021を実施、Ecopetrol、Parex Resources、Lewis Energy、Frontera Energy、CNE Oil & Gas、Hocol、Maurel & Prom Amérique Latineの7社に陸上30鉱区を付与した。7社による投資総額は、1億4,850万ドルに上るという。今回の入札では、対象鉱区の57%が落札され、PPAA方式に基づく鉱区入札が定着し、石油会社が引き続きコロンビア上流に関心を持っていることが明らかになった。しかし一方で、入札資格を取得した企業16社のうち7社しか入札を行わなかったこと、メジャー企業は1社も入札に参加しなかったこと等から、コロンビアが探鉱・開発を活発化するには多くの課題があることも明らかになった。具体的には限定的な上流ポテンシャル、インフラコストの高さに起因する経済性の低さ、技術を有するメジャーの不参加による開発の遅延等である。

 

政府は探鉱・開発促進の方針。2021年には水素戦略を発表

政府は、先に述べた通り、入札方式変更等により探鉱・開発を活性化し、埋蔵量減退を食い止め、石油・ガス生産増を図ろうとしてきた。

そして、2021年11月に、ANHのArmando Zamora長官が、コロンビア国内の原油、ガス生産量の増加を目指す政府の戦略Plan 2040を発表した。Plan 2040は、鉱山エネルギー省のリーダーシップの下、内務省、運輸省、労働省、環境省等の協力により実施され、地質情報取得のための投資、技術改革、戦略的パートナーシップ、鉱区の公開と再分配を4つの柱としている。同計画によると、コロンビアは今後20年間に200の鉱区を付与し、12億ドルの投資を行い、800坑の坑井を掘削、2040年までに石油換算30億バレルの埋蔵量を追加するという。そして、石油・ガスの埋蔵量を増加させるために、PPAA方式の入札のサイクルを加速、成熟油田での回収率向上、水圧破砕による非在来型鉱床の開発に力を入れるとしている。また、この目標は、COVID-19パンデミック後に業界が直面する新しい現実、新しい条件、新しい知識を踏まえて生まれたもので、コロンビアが2040年まで石油・ガスの自給自足を維持するためのものであるとしている。

その一方で、コロンビア政府は、エネルギートランジションにも積極的に取り組み、その政策の一環として水素開発を推進している。

2021年9月30日には、米州開発銀行(IDB)と共同で作成した水素戦略に関するロードマップ「Hoja de Ruta del Hidrógeno en Colombia」を発表した。このロードマップでは、2030年までに温室効果ガス排出を51%削減し、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目指すとしている。

そのために、2030年までは、国内で生産される石炭や天然ガス、CCS(二酸化炭素回収・貯留)を利用したブルー水素の生産に注力するという。2022年上半期に北部Cartagena市にEcopetrolが保有するReficar製油所で電気分解による水素製造を開始する他、2030年までに25億~55億5,000万ドルの投資により、電気分解設備の容量を合計1~3ギガワットとし、ブルー水素を年間50キロトン製造、水素を利用する一般自動車1,500~2,000台、大型車1,000~1,500台を導入して、250万~300万トンの二酸化炭素排出量を削減、7,000~1万5,000件の新規の雇用創出を目指すとしている。一方で、グリーン水素については、2030年までにLa Guajira県で、1キログラム当たり1.7ドルでグリーン水素製造が可能になるとしている。

そして、2030年から2040年までの間は、ブルー水素の生産を継続しながら、グリーン水素をエネルギーミックスに加えることを目指すという。そのために、グリーン水素の生成に必要となるクリーンエネルギーの確保に向けて、風力、太陽光発電のポテンシャルが高いエリアに新たな発電所を建設、グリーン水素のハブを設置するとしている。

さらに、2040年から2050年までの間は、ブルー水素の割合を減らして、グリーン水素の導入を促進するとしている。そして、将来的には北米、欧州、アジアに向けて水素を輸出することも視野に入れており、2050年には低炭素水素の輸出額を50億ドルとすることを目指すという。

 

探鉱・開発に軸足を置きながら、エネルギートランジションにも顧慮するEcopetrol

Ecopetrolは、探鉱・開発に注力しながらも、水素開発プロジェクトを始動したり、電力セクターに参入したりする等、新規事業に着手することで、脱炭素に取り組む方針を示している。Ecopetrolと並ぶ中南米を代表する国営石油会社Petrobrasが、沖合Santos Basinプレソルトの油田開発に注力、CCUS(Carbon dioxide Capture and Storage二酸化炭素回収・貯留)技術を活用して、二酸化炭素を再圧入することで脱炭素に取り組んでいるのとは対照的だ。Petrobrasが、原油・ガス埋蔵量が豊富で、今後も生産量を伸ばすことのできるプレソルトを抱えているのに対し、Ecopetrolが活躍の主たる舞台とするコロンビアは原油、ガスともに埋蔵量、生産量が減少、あるいは、伸び悩んでいる。その一方で、コロンビアは太陽光や風力等再生可能エネルギーに関しては資源が豊富と見られている。このような背景の違いから、両社は異なった戦略を取っていると考えられるが、Ecopetrolの取り組みは、中南米の主要国営石油会社の中ではメジャーの戦略に最も近いものと考えられ、興味深い。

Ecopetrolは、2021年7月に、中南米の国営石油会社としては初めて、2050年までにスコープ1、2の炭素排出量をネットゼロにするという目標を掲げた。

そして、同年8月に、同社初のグリーン水素製造のパイロットプロジェクトを立ち上げる計画を発表した。2022年3月には、この計画に基づいてCartagena製油所(Reficar)で同パイロットプロジェクトを開始している。グリーン水素製造用の電解槽(53.2kW)、270枚のソーラーパネル、水を使い、3カ月間のパイロットプロジェクト期間中、毎日20キログラムの高純度のグリーン水素を製造するというものだ。

同じく2021年8月にEcopetrolは、電力会社Interconexion Electrica S.A.(ISA)の政府保有株51.4%を36億ドルで買収する契約を締結した。ISAは、コロンビア国内の送電システムの47.9%を保有しており、さらに、ペルー、ブラジル、パナマ、ボリビア、チリにも進出、送電、通信、道路関連の事業を展開している。ISAの株式取得によりEcopetrolは、発電や送電事業に参入しているChevron、BP、Shell等のメジャーと同様、電力セクターに事業展開を図ことができるようになった。

そして、Ecopetrolは2022年1月に、PetroChinaにカーボンオフセット原油100万バレルを売却した。この原油から将来発生する二酸化炭素排出量32,000トンは、コロンビアの水力発電プロジェクトによるカーボンクレジットの購入で相殺されるという。2021年2月には、Occidental PetroleumがインドのReliance Industriesにカーボンニュートラル石油を、9月にINPEXがインドネシアの森林保全などのプロジェクトからの炭素クレジットによって相殺された液化天然ガスを販売しているが、これは中南米初のカーボンオフセット原油の販売となった。Ecopetrolは、カーボンオフセット原油に対する市場の関心を測っており、関心があれば、定期的に出荷を行う予定であるという。

Ecopetrolは、2022年2月に2040 Strategy “Energy that Transforms”と名付けた2040年に向けた戦略ビジョンと2022年から2024年の運営および財務目標を発表した。同社の目標は、エネルギー産業が直面する変化、クリーンエネルギーの生成と使用が進む世界の課題に、南米大陸でのリーダーシップを取り、成長の道を進みながら、タイムリーに適応する機敏でダイナミックな組織を確立することで、この目標達成のために、2040年までの18年間に年間52億~60億ドル、合計で最高1,080億ドルを投じるという。その69%を探鉱・開発に充て、同社の生産量を、2022年の目標、石油換算で日量70万〜70.5万バレルから2024年に73万バレル、2030年に85万バレルに増加させる計画である。

 

探鉱・開発に大きく影響を与える可能性がある大統領選挙

コロンビアでは、2022年5月29日に次期大統領を決める選挙が行われる。ここで過半数を獲得する候補者がいない場合には6月19日に大統領選挙の第2ラウンドが行われる。

今回の大統領選挙の最有力候補とされるのは、左翼ゲリラの元メンバーで前ボゴタ市長、現職の上院議員であるGustavo Petro氏だ。Petro氏は、資源開発と化石燃料消費に基づく経済モデルからの脱却を主張し、大統領選挙で勝利した暁には、コロンビアを知識集約型、観光型経済の国へと変貌させるとしている。そして、世界の気温上昇を1.5度以内に抑えるためには、コロンビアは化石燃料の8割を未開発のままにしておかなければならないとし、既存の油田、ガス田での生産は続けるものの、新規の探鉱や鉱区付与は行わず、これにより、約12年をかけて化石燃料からの脱却を図る計画であるとしている。Ecopetrolに対しては、太陽光や風力等再生可能エネルギープロジェクトに注力するよう呼びかけた。そして、二酸化炭素の排出量削減を促進する企業の投資を呼び込むことを目指すという。

また、観光を促進するためにはコロンビア国内に平和が確立される必要があると強調し、大統領選挙に勝利した際には、早期に左翼ゲリラ・コロンビア革命軍(FARC)の残党との対話を開始し、また組織解体に向け同じく左翼ゲリラ・民族解放軍(ELN)との対話も進める計画であることを明らかにしている。

さらに、化石燃料に基づく経済からグリーン経済への移行を中南米で達成するため、他の中南米諸国の指導者や世界の同じイデオロギーの政府と協力、連携して、気候変動と戦い、環境に配慮した政策を提唱するための同盟を立ち上げたいとしている。中南米でグリーン経済を推進するために提携する協力者候補として、Petro氏は、チリで2021年12月に選出され、2022年3月11日に就任したGabriel Boric Font大統領やブラジルのLula da Silva元大統領の名前を挙げている。

EcopetrolのCEOであるFelipe Bayón氏が、Petro氏の主張は一連の訴訟とエネルギー価格の上昇につながると述べる等、コロンビアの石油業界はPetro氏の主張を非難している。コロンビアの石油・ガス業界団体Campetrolも、大統領選挙の結果が同セクターへの投資に大きな影響を与える可能性があると指摘し、コロンビアの政治リスクが高まっていると警告している。

また、原油はコロンビアの主要輸出品であり、2021年1~9月には輸出収入全体の32%にあたる約90億ドルを稼ぎ出している。ワシントンに拠点を置くFTIコンサルティングは、Petro氏の計画によりコロンビアは経済の構造を大幅に変更することを迫られることになると警告し、2022年時点で探鉱を全て停止することになれば莫大なリスクをもたらすことになるだろうとしている。さらに、政府は、Ecopetrolを含む石油会社とこれまでに締結した探鉱・開発契約に違反する可能性があるとしている[2]

Petro氏は、2018年に行われた前回の大統領選挙の際にも同様の提案をし、5月27日の大統領選挙第1ラウンドで25%以上の得票率を獲得し第2位となったものの、6月17日の決選投票で敗れている。しかし、今回の大統領選挙では、Petro氏が第2ラウンドに進出するだけでなく、そこで勝利する可能性が高まっているという。2022年2月4日から13日にかけて1,200人を対象に行われた世論調査によると、Petro氏の支持率は42%となっている。

現政権およびEcopetrolは、エネルギートランジションに目を向けながらも、探鉱・開発に力を注いでいく方針を示している。水素関連の政策やプロジェクトは、Petro氏が大統領に就任しても、継続される可能性が高いが、探鉱・開発に関しては状況が一変する恐れもあり、探鉱・開発状況と併せて、大統領選挙の結果に注目していく必要があろう。


[2] BNamericas, 2022/2/19

 

以上

(この報告は2022年4月11日時点のものです)

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