ページ番号1009344 更新日 令和4年5月6日

原油市場他:OPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国が2022年6月についても5月同様前月比で日量43.2万バレル減産措置を縮小する旨決定(速報)

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レポートID 1009344
作成日 2022-05-06 00:00:00 +0900
更新日 2022-05-06 10:20:23 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
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国・地域 グローバル
2022/05/06 野神 隆之
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概要

  1. 2022年5月5日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合を開催し、2021年8月以降2022年4月まで毎月前月比で日量40万バレル、2022年5月については前月比で日量43.2万バレル、それぞれ規模を縮小しながら実施中である減産措置(2022年5月現在日量336万バレル)を、2022年6月についても5月同様前月比で日量43.2万バレル規模を縮小して実施する旨決定した。
  2. 次回のOPECプラス産油国閣僚級会合は6月2日に開催される予定である。
  3. 3月31日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合以降も、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻継続に伴う西側諸国等による対ロシア制裁強化の動きと、そのロシアからのエネルギー供給への影響に対する市場関係者間での懸念の増大が、原油価格に上方圧力を加えた。
  4. しかしながら、中国一部都市での新型コロナウイルス感染拡大に伴い、感染抑制のための都市封鎖措置を実施したことにより、同国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で広がったことが、原油相場の上昇を抑制する格好となった。
  5. この結果、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の3月30日には1バレル当たり107.82ドルの終値であった原油価格(WTI)は今回のOPECプラス産油国産油国閣僚級会合開催直前の5月4日には同107.81ドルの終値と、高水準を維持したものの、伸び悩み気味であった。
  6. そのような中で、4月のロシアの原油生産量が前月比で減少した一方、同月の同国の原油輸出量が前月比で増加するなど、ロシアの石油供給に関する指標類はまちまちな状態を示した。
  7. このため、OPECプラス産油国としても、ロシアの石油供給減少の兆候が見られるとは判断し切れなかったと見られる他、今後も西側諸国以外の消費国等へロシアの原油等の輸出が活発化し続ける結果現時点では減少すると予想されているロシアの原油生産も回復するといった展開となる可能性も否定できない中、OPECプラス産油国が、減産措置縮小ペースを加速すれば、ロシアの原油生産が減少することを見込んでも必ずしも引き締まるとは見込まれない2022年の石油需給バランスが、かえって供給過剰に振れることにより、既に伸び悩み気味となっている原油相場に下方圧力が加わる結果、OPECプラス産油国の石油収入に影響が及ぶといった展開となりうることが不安視された。
  8. このようなことから、OPECプラス産油国は2022年6月についても、前月比で日量43.2万バレル減産措置を縮小する旨の慎重な生産方針の決定を行ったものと考えられる。
  9. 2022年6月の減産措置を前月比で日量43.2万バレル縮小する旨の今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での決定は、当該会合開催前の時点で市場関係者から相当程度予想されており、実際そのような事前予想通りの結果となったことにより、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での結果の原油相場への影響は限定的なものとなった。

(OPEC、IEA、EIA他)

 

1. 協議内容等

 (1) 2022年5月5日にOPEC及び一部非OPEC(OPECプラス)産油国は閣僚級会合をテレビ会議形式で開催し、2021年8月以降2022年4月まで毎月前月比で日量40万バレル、2022年5月については前月比で日量43.2万バレル、それぞれ規模を縮小しながら実施中である減産措置(2022年5月現在日量336万バレル)を、2022年6月についても5月同様前月比で日量43.2万バレル規模を縮小して実施する旨決定した(表1及び参考1(巻末)参照)。

表1 OPECプラス産油国の減産幅

 (2) 当該会合では、足元の世界石油需給は十分に均衡している状態であるOPECプラス産油国間での認識は一致した他、継続する地政学的リスクの影響と新型コロナウイルス感染の継続に関連する事象にOPECプラス産油国は注目したとされるが、5月4日に行われた欧州連合(EU)加盟国によるロシアからの石油の段階的禁輸方針の発表を含めロシアのウクライナへの侵攻と原油価格の高騰等石油市場への影響については、具体的な言及はされなかった。

 (3) また、これまで減産目標を達成できていない減産措置参加産油国が2022年6月末までに減産目標未達成部分につき追加減産を実施(することにより減産目標を達成)することを含め、減産目標の完全遵守に固執することが極めて重要であることが当該会合で再確認されるとともに、(該当する産油国は減産目標を完全達成するための)追加減産計画を提出するよう、会合では要請された。

 (4) なお、今回の閣僚級会合は5月5日午後1時30分頃(オーストリア ウイーン時間)開始され、13分間で終了したが、これは3月31日に開催された前回閣僚級会合時の所要時間である12分間とほぼ同程度の短時間のものであった。

 (5) また、次回のOPECプラス産油国閣僚級会を6月2日に開催する旨今次閣僚級会合で決定した。

 

2. 今回の会合の結果に至る経緯及び背景等

 (1) 2022年2月24日以降のロシアのウクライナへの事実上の侵攻に対し、3月8日に米国のバイデン大統領がロシアからの原油等の輸入を禁止する旨の制裁の発動を発表したこと等もあり、この日原油価格(WTI)は1バレル当たり123.70ドルの終値と2008年8月1日(この時は同125.10ドル)以来の高水準の終値に到達した他、その後も概ね100ドルを超過して推移した(図1参照)。

図1 原油価格の推移(2021~22年)

 (2) それに伴い、2月28日時点では1ガロン当たり3.701ドルであった全米平均ガソリン小売価格も上昇傾向となり、3月14日には同4.414ドルと1993年4月以降の同国週間統計史上最高水準に到達した他、その後も同4ドルを超過して推移するなど、米国の消費者の不満が高まっても不思議ではない状況となるなどしたことを含め、消費国では石油製品価格が高騰した(図2参照)。

図2 米国ガソリン平均小売価格(2019~22年)

 (3) このようなことから、一部石油消費国はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)等に対し増産を働きかけた(3月16日に英国のジョンソン首相がサウジアラビアのムハンマド皇太子及びUAEのムハンマド皇太子と会談、エネルギー問題につき協議している)。

 (4) 他方、3月16日には、国際エネルギー機関(IEA)が、2022年のロシア石油供給が日量230万バレル減少すると見込む一方、ロシアを中心とした旧ソ連諸国の石油需要が2022年に日量52万バレル下振れすることを含め同年の世界石油需要を日量95万バレル下方修正するとの展望を明らかにしたこともあり、2022年の世界石油需給バランスは、OPECプラス産油国が毎月前月比で日量40万バレル(2022年4月まで)及び同43.2万バレル(同年5月以降)減産措置を縮小しても、年全体として概ね均衡するものと想定された(表2参照)。

表2 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(3月31日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

 (5) また、3月初頭以降のロシアの原油生産量(コンデンセートを含む)が日量1,111万バレルと推定され、2月の同1,106万バレルから微増となっている旨しばしば示されたこともあり、ロシアからの石油供給自体が減少しているとの証拠は見出せなかった。

 (6) さらに、大部分のOPEC産油国は、足元の原油価格の大幅上昇は、(世界石油需給の引き締まりと石油供給不足が実際に発生していることに伴うものではなく、)地政学的リスク要因(に伴う石油需給の引き締まりの可能性に対する石油市場の懸念が先行したこと)によるものであるとして、従来の減産措置の縮小方針の変更には消極的であることが示唆される旨3月22日に伝えられた。

 (7) このようなこともあり、西側諸国等の要請に応えて減産措置の縮小ペースを足元の日量40万バレルから拡大した場合、2022年の世界石油需給バランスが供給過剰に振れてしまうことにより、原油価格に下方圧力が加わるとの懸念がOPECプラス産油国間で広がったと見られたことから、2021年7月18日に開催されたOPECプラス産油国閣僚級会合時に決定した、減産措置の基準となる原油生産量の引き上げに伴い、2022年5月については、減産措置縮小量をそれまでの日量40万バレルから同43.2万バレルへと拡大する旨3月31日に開催された前回のOPECプラス産油国閣僚級会合で決定したものの、それ以上の減産措置縮小幅の拡大は見送られることとなった。

 (8) 前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催以降も、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻継続に伴う西側諸国等による対ロシア制裁強化の動きのロシアからのエネルギー供給への影響に対する市場関係者間での懸念の増大が、原油価格に上方圧力を加えた。

 (9) ただ、中国の上海市では、新型コロナウイルス感染が拡大したこともあり、3月28日以降都市封鎖措置を実施、その後市内一部地域では当該措置は緩和されつつあるとされるものの、5月5日に至るまで依然として個人の外出制限及び経済活動は継続した。

(10) 加えて、中国北京市朝陽区においても新型コロナウイルス感染拡大により、同区の住民に対し新型コロナウイルス感染の有無を検査するよう当局が指示するとともに、同市の複数の地区を封鎖する旨4月25日に報じられた他、朝陽区以外の北京市の11区についても新型コロナウイルス感染検査を実施する旨4月25日夜(現地時間)に伝えられた他、4月30日~5月4日の同国の労働節(メーデー)に伴う連休期間には北京市の映画館等娯楽施設の営業が制限された他、依然として感染が拡大している可能性があるとして、5月4日以降も同市の当該施設の営業制限を継続する旨5月4日に報じられるなど、個人の外出規制や経済活動の制限が強化されつつあった。

(11) 上海市の都市封鎖の影響を受け、4月30日に中国国家統計局が発表した同国の製造業購買担当者指数(50が当該部門好不況の分岐点は47.4と3月の49.5から低下しており、同国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で発生、原油相場の上昇を抑制する格好となったこともあり、前回のOPECプラス産油国閣僚級会合開催直前の3月30日には1バレル当たり107.82ドルの終値であった原油価格(WTI)は今回のOPECプラス産油国産油国閣僚級会合開催直前の5月4日には同107.81ドルの終値と、高水準を維持したものの、伸び悩み気味であった。

(12) そして、今後も中国北京市等で新型コロナウイルス感染抑制のための都市封鎖等が継続もしくは新たに実施された場合(そして同国では新型コロナウイルス感染抑制のための厳格な規制措置(いわゆる「ゼロコロナ」政策)を引き続き推進していく旨4月21日に同国の習近平国家主席が示唆しているところからすると、厳格な規制実施の可能性はそれなりにある)、中国経済成長減速及び石油需要の伸びの鈍化懸念が継続する結果、石油需給バランスの緩和感が市場で醸成されることを通じ、原油相場に下方圧力を加える可能性があることが懸念された。

(13) 他方、4月1~29日のロシアの原油生産量(コンデンセート含む)は推定日量1,011万バレルと3月(同1,108万バレル)から同97万バレル減少した旨4月30日に報じられており、これは3月8日に米国バイデン大統領がロシアからの石油輸入を禁止することを内容とする制裁を発動した他、西側諸国等の石油会社がロシアから石油を調達することに伴う評判リスクを負うことを回避しようとして、同国からの石油の調達を敬遠したことが一因であるとされる。

(14) また、2022年1月には日量1,007万バレルであったロシアの原油生産量(コンデンセートを除く)は同年3月は同1,001万バレルへと減少した旨2022年4月16日にIEAが明らかにした他、IEAは、ロシアの原油生産量が、2022年2月11日時点の見通しに比べ、2022年4月が日量174万バレル、5月以降同年末にかけては日量303~304万バレル程度、それぞれ減少することにより、2022年全体では当該生産量が同220万バレル下振れする結果、2022年のロシアの原油生産量は日量803万バレルと2021年(同962万バレル)から同159万バレルの減少となる旨示唆された。

(15) ただ、ロシア側では、2022年末にかけ同国の原油生産量は推定日量876~960万バレル(年間4.338~4.753億トン)と2021年の同1,058万バレル(同5.24億トン)から日量98~182万バレル程度の減少となる旨認識していると4月27日に伝えられており、同国の原油生産量見通しを巡っては不透明感が強いことが窺われた。

(16) 他方、ロシアがウクライナに対し事実上侵攻した後西側諸国等による制裁が強化されるまでの間に、西側諸国がロシア石油会社との間で売買契約を締結した分の原油がその後輸出されたり、米国等による対ロシア制裁の実施や企業の評判リスクの高まりに伴い、欧米諸国等がロシア産原油購入を敬遠したこともあり、ロシア産原油の代表的な油種であるウラル原油の価格が欧州の代表的な油種であるブレント原油の価格を1バレル当たり40ドル近く下回る(図3参照)など、ロシア産原油価格が他の原油価格に比べ割安になったこともあり、西側諸国以外の消費国によるロシアの原油購入が活発化したりした(インドは、ロシアのウクライナ侵攻開始以降2021年全体の2倍を超えるロシア産原油を購入するなど、ロシアからの原油調達を積極化させつつある旨4月25日に報じられる)ことから、4月1~28日においては、ロシアからの原油輸出は日量466万バレルと前月から17%(推定日量68万バレル)増加するなど、輸出は好調であった。

図3 ロシアのウラル原油のブレント原油の価格差(2021~22年)

(17) このように、ロシアの原油生産と輸出の状況がまちまちであったこともあり、OPECプラス産油国としても、ロシア石油供給減少の兆候が見られるとは判断し切れなかったと見られる他、今後も西側諸国以外の消費国等へ原油等の輸出が活発化し続ける結果、今後減少すると予想されるロシアの原油生産がかえって回復する可能性がある中で、OPECプラス産油国が減産措置縮小ペースを加速すれば、ロシアの原油生産が減少することを見込んでも必ずしも引き締まるとは示唆されない2022年の石油需給バランス(表3参照)が供給過剰に振れることにより、既に伸び悩み気味となっている原油相場に下方圧力が加わる結果、OPECプラス産油国の石油収入に影響が及ぶといった展開となりうることが不安視された。

表3 世界石油需給バランスシナリオ(2022年)(5月5日OPECプラス産油国閣僚級会合開催時点)

(18) 5月4日のOPECプラス産油国合同技術委員会(JTC: Joint Technical Committee)開催に際し用意された資料では、新型コロナウイルス感染抑制のために実施される中国の都市封鎖に伴う同国の経済成長減速もあり、2022年の世界石油需要の伸びが日量48万バレル下方修正されたことから、ウクライナへの事実上の侵攻に伴う西側諸国等による制裁等によりロシアの原油生産量が減少するとの予想の下、OPECプラス産油国を構成する非OPECプラス産油国の原油生産量が日量1,820万バレルと日量60万バレル下方修正されたにもかかわらず、2022年は世界の石油供給が需要を日量190万バレル上回るとし、以前の見通しよりも日量60万バレル供給過剰幅が拡大する旨示唆するシナリオが提示されたとされる(但し、JTCにおいては、最終的には2022年の世界石油需要見通しは据え置きのままとなったとされ、それを受けて閣僚級会合の声明でも「世界石油需給は均衡している」旨の認識が示された)。

(19) 以上のような状況を考慮した、世界石油需給バランスに対する認識の下、OPECプラス産油国は2022年6月についても、前月比で日量43.2万バレルの減産措置を縮小する旨の慎重な決定を行ったものと考えられる。

(20) また、ウクライナを巡り西側諸国と対立するロシアがOPECプラス主要産油国であることもあり、サウジアラビアやUAE等とロシアとの間で石油市場における利害が一致していることにより、OPECプラス産油国間での結束をOPECプラス構成産油国が重視したことが、今般のOPECプラス産油国閣僚級会合での方針決定に影響していると示唆する向きもある。

 

3. 原油価格の動き等

 (1) 2022年6月の減産措置を前月比で日量43.2万バレル縮小する旨の今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での決定は、当該会合開催前の時点で市場関係者から相当程度予想されており、実際そのような事前予想通りの結果となったことにより、今回のOPECプラス産油国閣僚級会合での結果の原油相場への影響は限定的なものとなった。

 (2) そして、この日(5月5日)は、EU加盟国のロシアからの石油輸入の段階的禁止等を内容とする制裁実施方針が5月4日に発表されたことにより、欧州等での石油需給引き締まり観測が市場で増大した流れが引き継がれたことに加え、2022年秋にも米国戦略石油備蓄(SPR)用に6,000万バレル相当の原油を購入する方針である旨5月5日に米国バイデン政権が発表したことにより、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことが、原油相場に上方圧力を加えた反面、5月3~4日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)で決定された0.5%の政策金利引き上げでは、物価上昇抑制には不十分であるとの見方が強まるとともに、今後さらなる積極的な政策金利引き上げが実施されることに対する観測が市場で増大したこともあり、米国株式相場が下落するとともに、米ドルが上昇したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日朝(米国東部時間)の取引では原油価格は一時1バレル当たり111.37ドルと前日終値比で3.56ドル上昇する場面が見られた反面、同日昼前(同)には1バレル当たり106.45ドルと前日終値比で1.36ドル下落する場面が見られるなど、原油価格は乱高下気味であった。

 (3) なお、この日の終値は1バレル当たり108.26ドルと前日終値比0.45ドルの上昇となったが、これは3月25日(この時は同113.90ドル)以来の高水準なものであった。

 (4) 当面の石油市場での注目点の一つは、ロシアの実際の石油供給状況であろう。

 (5) 4月1~29日のロシアの原油生産量(コンデンセート含む)は推定日量1,011万バレルと3月(同1,108万バレル)から同97万バレル減少しており、これは3月8日に米国バイデン大統領がロシアからの石油輸入を禁止することを内容とする制裁を発動した他、西側諸国等の石油会社がロシアから石油を調達することにより評判リスクを負うことを回避しようとして、同国からの石油の調達を敬遠したことが一因であるとされる。

 (6) 今後中国及びインド等西側諸国等以外の石油消費国がロシアからの石油調達を活発化させるようであれば、従来中国及びインド等がロシア以外の産油国から調達していた石油を両国が調達しなくなる反面、そのような石油が中国及びインド等以外の石油消費国に向かう結果、ある程度石油需給が平準化に向かう可能性はあろう。

 (7) 因みに、ロシアの黒海沿岸ノボロシイスク(Novorosiiysk)、バルト海沿岸のプリモルスク(Primorsk)及びウスチ・ルーガ(Ust-Luga)の各主要原油輸出ターミナル、及び港湾へと原油を輸送するパイプラインの能力を考慮すれば、日量58万バレル程度は海上輸送による世界各国及び地域への石油供給拡大が可能であると試算される(表4参照)ことに加え、ロシアからカザフスタン経由のパイプラインによる中国に向け原油追加輸出(日量10~20万バレル程度とされる)や、鉄道貨車に原油を積載することによる中国方面への原油輸出が可能であると見られることから、ロシアからドルージュバ(Druzhba:友好)パイプライン経由で欧州に向かう原油輸送量日量72万バレル程度(2021年実績)が欧州諸国による制裁等で途絶しても、大半の量は迂回した経路で原油を輸出できることになる。

表4 ロシアからの主な余剰海上原油出荷能力

 (8) また、従来から海上輸送により西側諸国等に輸出されていたロシア産原油は仕向地を変更することにより西側諸国等に向かうことも可能である。

 (9) 他方、中国は日量1,120万バレル程度、インドは同410万バレル程度の原油を、それぞれ輸入している(2020年実績)が、ロシアからの原油輸入量は中国で日量170万バレル程度、インドで同10万バレル程度となっており(図4参照)、仮に欧州が日量278万バレル程度のロシアからの原油輸入(同)を完全に禁止したとしても、理論上は両国が西側諸国等で受け入れらなくなった原油を受け入れる余地はありそうである。

図4 中国及びインドの原油輸入(2020年、単位:日量100万バレル)

(10) もちろん、欧州に向かわなくなったロシアの原油が全て中国及びインド等に向かうというのは、両国の石油供給安全保障の面からも問題となる恐れもあることから、そのような展開となる可能性はそれほど高くはないものと見られるが、ロシア産のウラル原油(ロッテルダム着価格)はブレント原油価格を1バレル当たり40ドル程度下回っていることから、タンカー費用を考慮しても、経済性はある程度確保される結果、ロシアから大型タンカー等で喜望峰等を経由することにより、ある程度の量の原油がインドや中国に原油が向かう、といった展開はありうるものと考えられる。

(11) もっとも、ロシアから中国に向かう原油を輸送するために新たなタンカーの手配が必要になるなど、原油輸送上の混乱が発生することにより、石油需給が平準化に向かい始めるまでには、それなりの時間を要する可能性があり、それまで少なくとも短期的には一部地域における石油需給引き締まり感が市場で強まる結果、原油相場が下支えされる可能性はある。

(12) また、冬場になれば、ロシア近海は少なくとも部分的には凍結する可能性が高まる結果、砕氷船級タンカーが必要となる場合があり、西側諸国船籍以外のそのようなタンカーが容易に調達できるかどうかということも課題となりうるものと考えられる。

(13) さらに、ロシアのウクライナへの事実上の侵攻の長期化に伴い、米国等の対ロシア制裁強化の一環として、ロシア産原油を輸入する第三国に対し制裁(いわゆる「二次制裁」)を発動する方針が発表されることにより、中国及びインド等も事実上ロシア産原油引き取りを敬遠する事態に陥る結果、ロシアから供給される石油が行き場を失うとともに、事実上供給が失われたロシアからの石油の代替供給源確保に石油消費国側が苦慮するととともに、そのような状況が原油相場に織り込まれるといった展開となる可能性も否定できない。

(14) また、EU加盟国はロシアからの原油輸入を6ヶ月以内に、石油製品輸入を2022年末までに段階的に禁止する(ロシアからの石油輸入依存度の高いハンガリー及びスロバキアは2023年末までに禁止とされる)方針である旨5月4日に欧州委員会のフォンデアライエン委員長が発表(遅くとも5月9日までに当該方針につき取り纏める意向である旨5月4日に伝えられる)したものの、石油輸入の完全禁止まで少なくとも6ヶ月間の猶予があることもあり、中国やインドに向かうロシアからの石油供給増加の可能性と併せ、短期的にはロシアの石油供給の落ち込み幅が限定される結果、OPECプラス産油国としても、ロシアの石油供給落ち込みの兆候が明確にならないことにより、世界石油供給が不足しつつあるとの判断が下せないことから、次回閣僚級会合においても、例えば、2022年7月の減産措置につき、前月比で日量43.2万バレルの減産措置の縮小を決定する、といった慎重な決定がなされる可能性もある。

(15) また、OPECプラス産油国の主要構成国であるロシアに配慮することもあり、政治的要因の石油供給への影響に対しOPECプラス産油国は関与しない旨、サウジアラビアのアブドルアジズ エネルギー相が3月28日に示唆しており、このような観点からも、OPECプラス産油国はロシアのウクライナへの事実上の侵攻といった政治的な事象に対して慎重に対応していくものと考えられる。

(16) その他、OPECプラス産油国構成国の原油生産状況(2022年3月のOPECプラス減産措置参加20産油国の原油生産量は前月比で日量5万バレルの増加とOPECプラス産油国閣僚級会合で決定された同日量40万バレルの増加を大幅に下回った他、4月のOPEC減産措置参加10産油国の原油生産量は前月比で日量20万バレルの増加と閣僚級会合で定められている同25.4万バレルの増加を下回っている)、リビアを含む一部産油国もしくはイエメンのフーシ派武装勢力とサウジアラビア等中東湾岸産油国を巡る地政学的リスク要因の石油供給に与える影響、中国での新型コロナウイルス感染抑制のための一部都市の封鎖措置実施に伴う同国の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化に対する市場の懸念等も原油相場に影響を与える可能性があるものと見られる。

 

(参考1:2022年5月5日開催OPECプラス産油国閣僚級会合時声明)

28th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

No 10/2022
Vienna, Austria
05 May 2022

Following the conclusion of the 28th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting, held via videoconference on 5th May, it was noted that continuing oil market fundamentals and the consensus on the outlook pointed to a balanced market. It further noted the continuing effects of geopolitical factors and issues related to the ongoing pandemic.

The OPEC  and participating non-OPEC oil producing countries therefore decided to:

  1. Reaffirm the decision of the 10th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 12th April 2020 and further endorsed in subsequent meetings, including the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on the 18th July 2021.
  2. Reconfirm the production adjustment plan and the monthly production adjustment mechanism approved at the 19th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting and the decision to adjust upward the monthly overall production by 0.432 mb/d for the month of June 2022, as per the attached schedule.
  3. Reiterate the critical importance of adhering to full conformity and to the compensation mechanism, taking advantage of the extension of the compensation period until the end of June 2022. Compensation plans should be submitted in accordance with the statement of the 15th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting.
  4. Hold the 29th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting on 2 June 2022.

 

以上

(この報告は2022年5月6日時点のものです)

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