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アルバート湖開発プロジェクト ―ウガンダ産油国への道―

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レポートID 1009346
作成日 2022-05-10 00:00:00 +0900
更新日 2022-05-10 14:05:03 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場探鉱開発
著者 野口 洋佑
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 13
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 ウガンダ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,ウガンダ
2022/05/10 野口 洋佑
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概要

  • ウガンダでは2014年に多くの生産ライセンス許可申請が提出・受理されたものの(1)Tullowの撤退時における契約や税金の問題、(2)石油の輸出や製油所に関する政府と投資家との意見の相違、(3)東アフリカ原油パイプライン(EACOP)の設置ルートにおける意見の相違、(4)原油価格の低迷を理由に現在まで生産には至っていない。しかし、2021年11月4日にCNOOCがKingfisherプロジェクトのFIDを宣言し、2022年2月1日にTotalEnergiesがTilengaプロジェクトのFIDを宣言したことにより、アルバート湖開発プロジェクトが始動し、ウガンダの産油国への道が開かれた。
  • Tilengaプロジェクト(以下、Tilenga)とKingfisherプロジェクト(以下、Kingfisher)では、2026年から2027年にかけてプラトー生産量である計23万b/dに達する見込みであり、2021年のアフリカの生産量に照らすと、アフリカの中堅生産国であるガボンの生産量(18.2万b/d)を抜いて、アフリカで第7位の産油国になる見通しである。
  • アルバート湖開発プロジェクト(上流:Tilenga、Kingfisher、中流:東アフリカ原油パイプライン)と下流(アルバートグラーベン製油所)のプロジェクトは現在順調に進展しているが今後、中流と下流は土地取得や資金調達の課題により計画が遅延する可能性がある。
  • 上流プロジェクトの稼働後(2025年予定)は同国の石油の安定供給に資することとなる。製油所稼働前はEACOPによる上流生産分の輸出による歳入が見込まれ、製油所稼働後は自国消費分を賄い、かつ、残りは輸出により歳入となる見込みである。ウガンダ政府は上流資産が枯渇するまで約20年間にわたる収入について、「収入を利用してコーヒー、畜産など、農業生産を拡大し、長期的な自国利益を拡大する考えだ。」と述べており、石油収入を梃に自国経済の発展を図る意向を示している。
  • 中流EACOPはFIDより36か月後である2025年2月に建設完成予定であり、今後、資金調達先の決定と円滑な土地取得が上流、中流、下流の進展を確固たるものにする。EACOPについては、ウガンダ、ケニア、タンザニア各国の環境・人権団体が建設の差し止めを求める訴訟を東アフリカ司法裁判所に提起しているが、当該裁判所は管轄権や本案前抗弁(訴訟要件が欠けていることを理由に訴訟そのものの却下を求める)を主張し、審理に至っていない。
  • 下流のAlbert Graben製油所は2027年の稼働開始を目標としており、現在、上流へのFIDにより、プロジェクトが進展し始めている。製油所の開発はウガンダだけでなく、EACや内陸のパートナー国の、石油製品の安定供給に貢献するため、迅速な開発が期待されるが資金調達の課題が残る。
  • UNOCは、アルバート湖南端のントロコ県にあるPelican-Crane海上鉱区における石油埋蔵の可能性を探るため、2022年4月初旬にCNOOCと共同申請協定を締結した。UNOCは同鉱区の探鉱許可取得に向け最終手続きを行う予定で、Pelican鉱区とCrane鉱区の可採埋蔵量は、それぞれ2,500万バレル、1.01億バレルと推定されており、アルバート湖周辺の開発への期待が高まっている。

(各社HP、Platts Oilgram News、International Oil Daily他)

 

1. はじめに

ウガンダでは2006年にアルバートグラーベン堆積盆地というアルバート湖周辺にある鉱区で初めて商業規模の石油が発見された。アルバート湖はウガンダとコンゴ民主共和国の間にある湖で総面積は琵琶湖の約8倍である5,600㎢を誇る。同国では2007年以降に探鉱活動が活発化し、OGJによるとウガンダにおける確認埋蔵量は25億バレルで、その内14億バレルが本稿で紹介するアルバート湖開発プロジェクト(Tilenga、Kingfisher)の可採埋蔵量である。また、政府の発表によると、探鉱中または探鉱済みの地域は40%ほどと探鉱の余地があり、かつ、ライセンスが供与されている地域は約12%と今後の追加探鉱によりさらに埋蔵量が増える可能性がある。

ウガンダでは2014年に生産ライセンス許可申請が提出・受理されたものの現在まで生産には至っていない。その理由としては(1)Tullowの撤退時における契約や税金の問題、(2)石油の輸出や製油所に関する政府と投資家との意見の相違、(3)EACOPの設置ルートにおける意見の相違、(4)原油価格の低迷が考えられる。しかし、2021年11月4日にCNOOCがKingfisherプロジェクト(以下、Kingfisher)のFIDを宣言し、2022年2月1日、TotalEnergiesがTilengaプロジェクト(以下、Tilenga)のFIDを宣言したことにより、アルバート湖開発プロジェクトが始動し、ウガンダの産油国への道が開かれた。

図 1:アルバート湖周辺の主要な油田
図 1:アルバート湖周辺の主要な油田
出所:各種資料を参考にJOGMEC作成

2. アルバート湖開発プロジェクト

アルバート湖開発プロジェクトは上流のTilenga、Kingfisherの開発に加えて中流の東アフリカ原油パイプライン(EACOP)と下流のAlbertine Graben製油所建設の開発計画のことを指しており、総事業費は100億ドルと推定されている。

 

(1) 上流プロジェクト(Tilenga、Kingfisher)

1. 概要

通称TilengaはBlock1、2のことを指し、多くの油田が存在している。Tilengaの開発は第1期と第2期に分かれており、第1期(Jobi-Rii、Gunya、Ngiri、Kasamene-Wahrindi、Kigogole-Ngara、Nsoga)は2025年に生産開始が予定されている。また、Tilengaでは31のウェルパッドで計約400坑井(生産井200、水圧入井200)を掘削し、Kingfisherでは4つのウェルパッドで計31抗井(生産井20本、水圧入井11本)を掘削する予定である。

権益比率はTilenga、Kingfisherともに同じ割合であり、TotalEnergiesが56.67%、CNOOCが28.33%、2013年3月に施行された石油法に基づき設立されたウガンダ国営石油会社(UNOC)が15%保有し、オペレーターはTilengaにつきTotalEnergiesが、KingfisherにつきCNOOCが勤める。

Tilengaのプラトー生産量は19万b/d、Kingfisherは4万b/dとなる見込みである。推定可採埋蔵量はTilengaが12.2億バレル、Kingfisherが1.96億バレルであり、両鉱区ともに2017年にFEEDが完成している。

TilengaとKingfisherでは、2026年から2027年にかけてプラトー生産量である計23万b/dに達する見込みであり、2021年のアフリカの生産量に照らすと、アフリカの中堅生産国であるガボンの生産量(18.2万b/d)を抜き、アフリカ第7位の産油国になる見通しである。

表 1:TilengaとKingfisherの概要
  Tilega(Block 1、2) Kingfisher(Block 3A)
可採埋蔵量 12.2億バレル 1.96億バレル
プラトー生産量予定 19万b/d 4万b/d
権益比率

TotalEnergies56.67%

CNOOC28.33%

UNOC15%

CNOOC28.33%

TotalEnergies56.67%

UNOC15%
発見年

2008年(Block 1)

2006年(Block 2)
2006年
FEED 2017年 完了 2017年 完了
FID 2022年2月1日 2021年11月4日
生産開始 2025年 2025年

出所:各種資料を参考にJOGMEC作成

表 2:アフリカ各国の生産量(2021年実績)
表 2:アフリカ各国の生産量(2021年実績)
出所:IEAを参考にJOGMEC作成

2. 過去の動向

Kingfisherでは2006年に石油が発見された。その後、2013年にCNOOCが生産ライセンスのオペレーターシップを獲得し、2021年11月CNOOCがFIDを発表した。その3か月後の2022年2月1日にはカンパラで行われたセレモニーにてプロジェクト関係者がアルバート湖開発プロジェクトへのFIDとプロジェクトの開始を発表した。

一方、Tilengaでは2006年にBlock2で石油が発見され、2008年にBlock1で石油が発見された。その後、2016年にはエネルギー鉱物資源開発省がTotalEnergiesに対して複数油田の生産ライセンスを発行し、2022年2月1日にプロジェクトのFIDとプロジェクトの開始を発表した。

 

3. 最新の動向

2022年3月8日にはTotalEnergiesがTilengaの掘削、仕上げ、生産のサービスにつきSchlumbergerと契約した。一方、Kingfisherにつき関係筋はTotalEnergiesがSinopecと設計・調達・供給・建設・コミッショニング(EPSCC)業務に関する6億1,100万ドルの契約を締結したと述べている。加えてCNOOCは親会社傘下のエンジニアリング会社COOECと、Kingfisherに関しての地上設備のエンジニアリング、調達、建設サービスに関する契約を締結するなど、開発は順調に進んでいる模様である。

 

4. Tullow Oilの撤退

Tullow Oil(以下、Tullow)の動向はアルバート湖開発プロジェクトの開発スケジュールに多大な影響を及ぼした。Tullowは2010年から2012年にウガンダにおいて3つのライセンスを取得した。この大半はHeritageからの権益の購入等により取得したものである。ウガンダ政府とHeritageは資産売却収入を巡るキャピタルゲイン税を巡り係争となりTullowも巻き込まれた。その後、先のキャピタルゲイン税を巡る問題は解決したが、2017年1月には別の係争の当事者となった。Tullowは保有する鉱区(1、1A、2、3A)の権益33.33%のうち、21.57%を9億ドルでTotalEnergiesとCNOOCに等分して売却することで合意した。ウガンダ政府はTullowが得る資産売却収入に対しキャピタルゲイン税として3億ドルを課税したが、Tullowは課税の対象ではないとして、支払いの要求に応じなかった。これを不服とするウガンダ政府は当該ファームアウトを承認せず、政府とTullowは合意に至らなかった。その後、2019年8月にはファームアウト契約の有効期限が切れた。2020年4月、Tullowはウガンダの資産について2020年1月1日を効力発生日としてTotalEnergiesに売却することに合意し、2020年10月21日、ウガンダ政府及び歳入庁はTullowのTotalEnergiesへのウガンダ資産売却を承認したと発表した。2021年11月10日には取引が完了したことで2010年から始まった税金や契約の問題が解決に至ったが、開発時期は大幅に遅れることとなった。

なおTullowは2022年2月16日にはアルバート湖開発プロジェクトFIDを受け、売却時の契約により、7,500万ドルを受領し、さらに生産開始後にはBrentの年平均価格に応じた対価を受領予定である旨を発表している。

 

(2) 中流プロジェクト(EACOP)

1. 概要

東アフリカパイプラインEACOPは、Tilenga(Block 1, 2)、Kingfisher(Block 3A)各油田から原油をHoimaで集荷し、Tanga港まで運ぶための世界最長の1,443キロメートルかつ輸送能力が21.6万b/dの電気加熱式パイプライン(絶縁・埋設)である。

このパイプラインが加熱式である理由にはウガンダの原油の性質が大きく関わっている。ウガンダの原油は粘度が高く流動点が40℃、APIが17~33°(ミディアム~ヘビー)、硫黄含有が少ない、原油である。Kingfisherの原油はワックス分を若干含む中程度の粘度の原油でありAPIは30~32°である。一方、Tilengaの原油は粘度が高くワックス分は30%、APIが30.4°であり、最低50℃で加熱をしないと固形状に固まる原油であるため、パイプラインは全線にわたって加熱式となっている。当該計画ではパイプライン以外に6つのポンプステーション(ウガンダ2つ、タンザニア4つ)の設置とタンガ港の出荷ターミナル建設も含まれる。EACOPはTotalEnergies、ウガンダ国営石油会社UNOC、国営タンザニア石油開発公社(TPDC)ならびにCNOOCが権益を保有している。

EACOPは約1.5メートルの深さに埋設される予定であるため、政府は、パイプラインによる原油輸送は、鉄道や道路による輸送よりも安全で環境にも優しい方法でコストも大幅に軽減できる、また、EACOP建設時には海外直接投資(FDI)が60%増える予定であると述べている。建設はFIDより36か月後と予定されていることから2025年2月となる予定である。

EACOPは加熱式であるため、多くの電力が必要とされることが予測されるが、2021年7月29日に、TotalEnergiesのPatrick Pouyanné CEOは「アルバート湖開発プロジェクトの炭素強度はCO2換算で1バレル当たり13キログラム」と述べている。これはTotalEnergiesの環境基準である1バレル当たり20キログラム以下を大きく下回っている。EACOPの施設の一部を電化し、その電気を太陽光で賄うことやバイオマス燃焼の代替として地域市場で使用する液化石油ガスを抽出することを予定している。2022年2月1日に、ウガンダ政府はTotalEnergiesが、2030年までに合計で1GWの発電能力を持つ太陽光、風力、地熱、その他の再生可能技術の発電プロジェクトを開発するための「大規模な再生可能エネルギー開発プロジェクト」に関する覚書に署名したと発表しており、これが施設電化の際の太陽光発電の供給源となると考えられる。

表 3:EACOPの概要
オペレーター TotalEnergies
パートナー TotalEnergies(62%)TPDC(15%)、UNOC(15%)、CNOOC(8%)
全長

1,445km(世界最長の加熱式パイプライン)

タンザニア1149km、ウガンダ296km
直径 24インチ
容量 Max 21.6万b/d
様式

加熱式パイプライン(絶縁・埋設)

深さは1.8-2.0Mに埋設予定
HGAの締結 2020年下半期
建設見込み 2025年2月

出所:各種資料を参考にJOGMEC作成

図 2:EACOPの建設ルート
図 2:EACOPの建設ルート
出所:各種資料を参考にJOGMEC作成

2. 過去の動向

EACOPにつき、計画当初の2016年にはケニアLamu港からの輸出ルートを検討していたが、建設コストの問題やケニアと国境を接するソマリアにおける地政学リスクのため別ルートを検討した。ケニアルートはウガンダのHoimaからケニアのLamuまで全長1,500キロメートル、コストは42億ドルと推定されており、タンザニア経由のルートが当初35.5億ドルと推定されていることから6.5億ドルほどコストが低減できると評価した。2017年にはウガンダ・タンザニアの間で政府間協定を締結し、2020年7月に正式にタンザニア経由のルートを選択した。2020年9月にTotalEnergiesとウガンダ政府との間でEACOPに関するホスト政府協定を締結し、商業的枠組みを明確化させたことでタンザニア経由のルートがほぼ確実となった。その後2021年12月にEACOP法案が可決し、2022年2月1日にアルバート湖開発プロジェクトの開始が発表されている。

 

3. EACOP法案の可決

アルバート湖開発プロジェクトの進展には中流EACOPの進展が不可欠であり、そのEACOPの開発を確実なものにするにはEACOP関連法案が不可欠であった。当該EACOP関連法案はEACOP特別条項報、公共財務管理法、所得税法の3つが含まれている。

(1) EACOP特別条項法:ウガンダとタンザニアとの間で締結された政府間協定とEACOP関係者との間で締結されたホスト政府協定中の特定条項を有効化し円滑に運用することを目的に2021年12月12日に可決された。タンザニア側も2021年8月に同様の法案を可決、2021年11月に承認した。従来の法律で十分な規定がなかった箇所を補い、かつ整合していない部分を補うことで建設開始の後押しとなり、既存の法律にとって代わるものではない。具体的には関税や収益の分配率について政府間協定、ホスト政府協定を参照して規定され、関税は1バレルあたり12.77米ドル、タンザニアとウガンダは収益を6:4で分配することなどが記載されている。

(2) 公共財務管理法:石油販売収入の一部をUNOCがプロジェクトの財政的義務を果たすために留保する修正法が2021年12月14日に可決された。

(3) 所得税法:原油価格がバレル当たり75ドル以上の場合、15%のウインドフォール税(超過利潤税)を導入する修正法が2021年12月14日に可決された。

 

4. 課題

一見順調に見えるアルバート湖開発プロジェクトの開発だが、土地取得と資金調達先の2つの問題が残っている。

(1) 土地取得への懸念

土地取得についてはEACOPとTilengaに対して懸念されている。EACOPとTilengaの開発のためには、約6,400haの土地を取得しなければならず、そこには723戸の住宅と計18,800人の利害関係者が存在する。そのため、土地取得は国際金融公社(IFC)の「Performance Standard」に則り、対象者に対し金銭または住居の移転のどちらかを選択させることにより進められる。TotalEnergiesのPatrick Pouyanné CEOは、2021年9月に2018年初めに開始した同土地取得計画につき、上流施設とパイプラインの両方の土地取得が間近であることを明らかにしているが、所有者に土地を売却するよう説得することは非常に困難であることは自明であり、さらに、アルバート湖周辺で最初の発見がなされたときに土地投機家が不動産を購入しており、特に金銭的補償において提示額に満足しない可能性もあり、交渉が難航する可能性がある。その他にもTilengaはマーチソン・フォールズ国立公園内に位置していることにより、施設の建設に制限が懸かっており、今後、追加の探鉱開発が難航する恐れもある。

(2) 資金調達先に対する課題

EACOP建設に係る費用は50億ドルであり、その内30%~40%をプロジェクト参入企業が支払い、残りの60%~70%の費用を金融機関等により調達する予定である。そのため最低でも30億ドルほどは金融機関からの融資により賄わなければならない。度重なる遅延とウクライナ侵攻に係る原料高の影響により当初予定コストの35.5億ドルからコストは膨れ上がっている。しかしNGOや環境団体からの抗議活動が資金調達先に対する課題となっている。アルバート湖周辺は漁業が盛んな地域であり、その水資源に生活基盤を依存している。そのためNGOや環境団体はEACOPの建設による環境への影響と土地取得により多くの住民がその土地から追い出されることを懸念している。これらNGOや環境団体の活動により複数の金融機関が当プロジェクトとの取引停止を宣言しており、銀行とその融資活動に焦点を当てた国際的な調査・キャンペーンを行うNGO支援組織であるBank truckやその他の報道機関によると、複数の世界的な銀行やアフリカにおいて名高い銀行がこのプロジェクトとの取引停止を宣言したという。

 

5. 融資の可能性が高い金融機関

一方で、取引停止を宣言していない金融機関もある。その中でEACOPへ融資する可能性の高い金融機関を2つほど紹介したい。

1つ目は、Standard Bank系列の銀行である。具体的にはStandard Bank Groupが所有するStanbic Africa Holdings Ltd.の子会社であるThe Stanbic Bank Ugandaと、Standard Charteredであり、「プロジェクトが自社の方針に合致すると判断すれば、支援を検討している」とのことBank truckに述べている。また、Stanbic Bank Ugandaは中国工商銀行(ICBC)、三井住友銀行(SMBC)とともに財務アドバイザーを務め、かつ、EACOPのリードアレンジャーとなると予想されることから融資の可能性が高いと考えられる。

2つ目は中国政府系銀行の国家開発銀行(ICBC)である。CNOOCがプロジェクトに参画していることに加えてICBCは2021年10月にEACOPへの資金調達について「グリーンで低炭素の未来に資金を提供する必要がある」と述べており、EACOPの融資に前向きな姿勢を示していることから融資の可能性が高いと考えられる。

この他にも融資する可能性がある金融機関は複数あるが、石油・ガス開発に関する融資基準の高まりを受けて、どの金融機関がグリーンフィールドであるアルバート湖開発プロジェクトに資金を融資するかは現在有望なグリーンフィールド油ガス田の発見が相次ぐアフリカでは非常に注目すべき動向である。

 

(3) 下流プロジェクト(アルバートグラーベン製油所)

ウガンダではアルバート湖開発プロジェクトに関連して下流の製油所の建設も予定されている。当製油所はホイマ県のカバアレ工業団地に建設予定であり、製油所からムピギ県の貯蔵ターミナルを結ぶ211キロメートルの石油製品パイプラインも製油所とともに設置される予定である。また、同工業団地内にはウガンダで2つ目となる国際空港が建設される他、石油化学・肥料産業の拠点となる予定である。

製油所の稼働は2027年を目標としており、処理能力は6万b/d、建設費は40億ドルを見込んでいる。製油所の権益はBaker HughesやGeneral Electricをはじめ、米国拠点のアフリカ向けのデベロッパー会社YAATRA AFRICA、アフリカ向けインフラ投資会社であるLionWorks Group、イタリアのEPC会社 Saipem のコンソーシアムであるAlbertine Graben Refinery Consortium(AGRC)とUNOCの子会社であるUganda Refinery Holding Co.(URHC)がそれぞれ60%、40%の権益を保有する。

当製油所の建設は歳入、経済の活性化、自国ならびに近隣諸国の石油製品安定供給に資することとなる。特に歳入の面では、製油所稼働前はEACOPにより上流生産分の100%を輸出することによる歳入が見込まれる。製油所が優先的に原油の供給を受ける権利があるため製油所稼働後は、自国の石油消費分を賄い、かつ、残りの石油精製品及び原油は輸出により国の歳入とすることができる。また、製油所の建設では延べ4,000〜6,000人の臨時雇用、完成後は製油所の操業により650人以上の常用雇用が創出される見込みである。

現在、東部アフリカ地域ではスーダンと南スーダンにある一部の製油所が稼働しているがいずれも自国向けであり、ウガンダをはじめとする東アフリカ共同体(EAC)のパートナー諸国は石油製品を輸入に依存している。本製油所の建設は、地域の精製能力を高め、特にルワンダやブルンジといった内陸のパートナー国にとって石油製品の安定供給確保に寄与すると考えられる。

 

1. 過去の動向

ウガンダの製油所の開発プロジェクトは2008年、国家石油・ガス政策が可決し、同年にエネルギー鉱物資源開発省により、製油所開発計画が作成をされたことにより始動した。

2010年から2011年には英国のFoster Wheeler Energy社によりFSが行われ、6万b/dの製油所開発は割引率10%で割引現在価値(NPV)が32億ドル、内部収益率(IRR)が33%と商業的に可能であることが提言され、製油所の規模等の方向性が固められた。その後、製油所を建設するための入札を行い、投資家候補を募ることになったが、選定した企業の撤退が続き、政府の計画は何度も苦戦を強いられることとなったが、2016年にAGRCが融資、建設、運営を担うリードインベスターに選定され、現在に至る。

最近では、2022年2月7日時点の報道では環境・社会影響評価(ESIA)、FEEDともに完了しているもののウガンダ石油当局(PAU)の承認が下りておらず、ナンカビルワエネルギー鉱物資源大臣がPAUに承認を速めるよう求めたとの報道があった。

 

2. 土地取得計画について

製油所の土地取得については順調に進んでいる。土地取得計画の大枠は経済活動や生計の損失を管理するための枠組みを開発することを目的に2012年に地元の多くのコミュニティと協力して調査を実施し策定された。土地取得に関係する人々は金銭または住居の移転に係る保証を受けることができる。これらは、既存の法律や、IFCの「Performance Standard」、赤道原則、世界銀行の業務ガイドラインや住民移転に関するセーフガード政策などの国際的なガイドラインに則って実施された。

2013年には金銭による保証を選択した関係者への補償金支払いが開始され、約4年の間で現金補償を選択した2,670人のうち2,625人と98.3%のプロジェクト影響者が補償を受けた。また、Buseruka Sub-countyの一部地域が再定住土地として選定され、住宅以外にも小学校やヘルスセンターが建設された後、移転を選択した関係者のため、再定住住宅が農地とともに関係者に引き渡され、製油所の土地取得計画はおおむね終了している。

以上のように2017年には土地取得計画がほとんど終了している一方で製油所建設計画の進展が遅かった理由としては(1)製油所の建設計画が立ち上がった当初、当時のアルバート湖開発プロジェクトの関係者であるTullow・TotalEnergies・CNOOCらがパイプラインによる原油輸出を優先させたい考えであり、国内需要を満たすために製油所の開発を優先させたいウガンダ政府との間に温度差があったこと、(2)Tullowの撤退、(3)油価の低迷等によりアルバート湖開発プロジェクト自体が進展しなかったこと、(4)新型コロナウイルスの影響が考えられる。しかし、アルバート湖開発プロジェクトが進展を見せた2022年2月から製油所建設プロジェクトも同様に進展の兆しを見せている。最近の動向としては、ナンカビルワエネルギー鉱物資源大臣は、アルバート湖開発プロジェクトの最終投資決定が発表された後、製油所プロジェクト枠組み協定の実施状況についてAGRC関係者とイタリアで協議を行ったのち、2023年のFIDを目標にAGRCとの協議が進んでいると表明し、製油所プロジェクトの進展をアピールした。

AGRCは現在、アンカー投資家を探しており、そのため、生産開始前の製油所の運転開始または稼働開始を目標としていないとの報道があり、アルバート湖開発プロジェクトの立ち上がり(2025年)と製油所の稼働開始(2027年)には少なくとも2年のタイムラグあると考えられる。

 

3. 課題

EACOPの資金調達に続き、製油所開発の資金調達も難航する可能性がささやかれており、リードインベスターであるAGRCの交渉力によっては製油所の稼働は2027年よりも遅くなる可能性がある。製油所建設に係る費用は約40億ドルと推定されており、その内30%をプロジェクト参入企業が支払い、残りの70%の費用を金融機関等により調達する予定である。特に、パイプラインと製油所に関して、ウガンダ政府はその権益比率に応じて双方のコストを負担しなければならず、その資金力に対して懸念の声も上がっている。加えて、①石油・ガス開発に関する融資基準の高まり、②アルバート湖開発プロジェクトに間接的に関連するプロジェクトであることも資金調達が資金困難を困難にしていると考えられる。また、EACOPへの投資を考える金融機関の他、欧州の輸出信用機関が引き続き関心を示している。また、EACパートナー諸国や機関投資家が資金を融資する可能性があるが、当製油所プロジェクトへ融資の可能性がある金融機関等はEACOPと同様に限定的であると考えられる。また、EACパートナーに関してはURHC持ち分40%の権益を一部取得する可能性があり、その場合、パイプラインと製油所双方のコストを負担するウガンダ政府の資金力への懸念は軽減されることとなる。

 

3. まとめ

上流、中流、下流のプロジェクトは上流プロジェクトの進展が遅れると中流、下流が遅れ、中流が遅れると上流のプロジェクトの開発が遅れるなど、相互に関連しているが現在は上流、中流、下流の開発はいずれも比較的順調に進展している。

上流のTilenga、Kingfisherは2025年に生産開始予定であり、プラトー生産量は23万b/dと、2018年のウガンダの石油消費量、3.7万b/dの約6倍と同国の石油の安定供給に資することとなる。製油所稼働前はEACOPによる上流生産分の輸出による歳入が見込まれ、製油所稼働後は自国消費分を賄い、かつ、残りは輸出により歳入となる見込みである。ウガンダ政府は上流資産が枯渇するまで約20年間にわたる収入について、「短期的な利益にこだわらず、収入を利用してコーヒーや畜産などの農業生産を拡大し、長期的な自国利益を拡大する考えだ。」と述べており、原油販売収入を通して自国経済の発展を志向している。

中流のEACOPはFIDより36か月後である2025年2月に建設完成予定であり、今後、資金調達先の決定と円滑な土地取得が上流、中流、下流の進展を確固たるものにするだろう。EACOPについては、ウガンダ、ケニア、タンザニアの環境及び人権団体が建設の差し止めを求める訴訟を東アフリカ司法裁判所に提起しているが、当裁判所は管轄権や本案前抗弁を主張し、審理を延期していることから、これらの団体の声が届くことは難しいと考えられる。

下流のAlbert Graben製油所は2027年の稼働開始を目標としており、現在、上流へのFIDにより、プロジェクトが進展し始めている。製油所の開発はウガンダだけでなく、EACや内陸のパートナー国の、石油製品の安定供給に貢献するため、迅速な開発が期待されるが資金調達の課題が残る。

また、同国では2021年4月初旬にアルバート湖南端のントロコ県にあるPelican-Crane海上鉱区における石油埋蔵の可能性を探るため、UNOCがCNOOCと共同申請協定を締結した。UNOCは同鉱区の探鉱許可取得に向け最終手続きを行う予定で、Pelican鉱区とCrane鉱区の可採埋蔵量は、それぞれ2,500万バレル、1.01億バレルと推定されており、アルバート湖周辺の開発への期待が高まっている。

今後もウガンダの動向に注目したい。

 

以上

(この報告は2022年5月10日時点のものです)

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