ページ番号1009354 更新日 令和4年5月20日

メジャー企業各社の2022年第一四半期決算について

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レポートID 1009354
作成日 2022-05-20 00:00:00 +0900
更新日 2022-05-20 11:32:26 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業
著者 鑓田 真崇
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年度
Vol
No
ページ数 12
抽出データ
地域1 欧州
国1
地域2 北米
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 欧州北米
2022/05/20 鑓田 真崇
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概要

  1. 前期を上回る高油価(期中平均でBrentは102ドル/バレル、前期比+28%)により、石油・天然ガス生産量は前年同期より減少したものの、bpを除き全社純利益で黒字を確保。bpについても、ロシア事業からの撤退に伴う調整項目を除いたアンダーライイング・リプレースメント・コスト利益では、62億ドルとなり前年同期の26億ドルを上回った。
  2. また、全社とも前期と同等またはこれを上回るフリーキャッシュフローを確保。Shell、ExxonMobil及びbpはそれぞれ35億ドル、21億ドル、16億ドルの自社株買いを実施することで一株当たりの当期利益を増加させ、利益の一部を株主に還元した。
  3. ウクライナ危機による対ロシア経済制裁等の影響により、各社ロシア事業からの撤退または新規投資凍結を相次いで表明。2月27日に、bpは保有するRosneft株19.75%の売却方針とすべてのロシア事業からの撤退を発表。これに伴いRosneft株の評価額をゼロとしたことや、合弁会社の株式売却により今期決算で204億ドルの損失を計上した。
  4. Shellは極東のSakhalin-2等のロシア事業からの撤退により税引き後39億ドルの減損を計上。同じくExxonMobilはSakhalin-1事業からの撤退に伴い税引き後34億ドルの減損を計上。また、TotalEnergiesも対露制裁によりArctic LNG 2の事業実施に影響があるとして、41億ドルの減損を計上した。
  5. ウクライナ危機による対ロシア経済制裁等の影響が今後どの程度の期間において継続するか見通しが立たないなか、bpが保有するRosneft株の売却動向やExxonMobilが保有するSakhalin-1及びShellが保有するSakhalin-2事業の権益売却の動きがどのように進展するか、注視していく。

(出所 EvaluateEnergy、各社資料、各種報道)

 

1. ExxonMobil

2022年第一四半期において、高油価を背景に148億ドルの事業キャッシュフローを創出し、55億ドルの純利益を達成。極東ロシアにおけるSakhalin-1事業における34億ドルの税引き後調整(減損)を除いた総利益は88億ドルに達し、前年同期を60億ドルほど上回る結果となった。今期のフリーキャッシュフローは107億ドルに達し、同社は前年同期同様の配当水準(今期0.88ドル/株、前年同期0.87ドル/株)を維持しつつ、2023年までに総額300億ドルの自社株買いプログラムを発表することで、株主への還元を行う方針を示し、今期は配当に38億ドル、自社株買いに21億ドルを充てた。

上流開発事業からの当期売上高は45億ドルと、前期(2021年第四四半期)の61億ドルと比較して減少した。これは、2022年3月1日に、ロシアによるウクライナ侵攻を受け、極東ロシアにおけるSakhalin-1事業からの撤退とロシアでの新規事業停止を発表[1]したことに伴い、これらに係る34億ドルの減損を計上したことによるものである。当該減損分を除くと、高油価と低投資を背景に、上流開発事業からの当期売上高は77億ドルとなり、前期より11億ドル上回る結果となった。

今期の石油換算生産量は日量367.5万boeとなり、前期比2%程度の減少となった。一方、米国においては、引き続きPermian盆地からの生産拡大を継続。2022年3月現在の同盆地からの生産量は56万boe/dとなり、2021年比25%増の水準となっている。

主要な事業の進捗としては、2022年2月にガイアナにおけるLiza Phase 2事業からのファーストオイルを達成し、プロジェクト全体の生産能力は日量34万バレルとなった[2]。また、同国Stabroek鉱区における開発案件となるYellowtail事業について2022年4月に最終投資決定を行い、2025年に日量25万バレル規模の生産を開始する見込み[3]であるほか、2020年9月に最終投資決定を行った同国のPayara事業に投入するFPSO(Floating Production, Storage and Offloading system(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備))の建造が当初計画より5か月ほど前倒しして進捗しており、2023年中の生産開始(日量22万バレル)を見込んでいる。また、2022年に新規に発見した5構造をポートフォリオに加え、110億boeの推定可採埋蔵量を追加したと発表した[4]

LNG事業については、年産340万トンのモザンビークのCoral South FLNG (Floating LNG(浮体式天然ガス液化設備)に用いる船体が2022年1月に設置海域に到着し、現在コミッショニング作業を継続中。2022年第四四半期にファーストカーゴの出荷が見込まれている[5]

このほか、低炭素事業として日量10憶cfの水素製造能力を持つと期待される米国テキサス州Baytownにおける大規模プラントの建設を今期発表、年1000万トン規模のCCS(Carbon, Capture and Storage (二酸化炭素の回収貯留))を併せて実施することで、Houston CCSハブ構想の基礎的な投資と位置付けている[6]

表1:2022年第一四半期決算概要(ExxonMobil)
表1:2022年第一四半期決算概要(ExxonMobil)
出所:決算資料及びEvaluateEnergyに基づきJOGMEC作成

[1] ExxonMobil, ExxonMobil to discontinue operations at Sakhalin-1, make no new investments in Russia,
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0301_ExxonMobil-to-discontinue-operations-at-Sakhalin-1_make-no-new-investments-in-Russia(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[2] ExxonMobil, ExxonMobil starts production at Guyana's second offshore development,
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0211_ExxonMobil-starts-production-at-Guyanas-second-offshore-development(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[3] ExxonMobil, ExxonMobil makes final investment decision on fourth Guyana offshore project,
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0404_ExxonMobil-makes-final-investment-decision-on-fourth-Guyana-offshore-project(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[4] ExxonMobil, ExxonMobil announces first-quarter 2022 results,
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0429_ExxonMobil-announces-first-quarter-2022-results(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[5] 同上

[6] ExxonMobil, ExxonMobil planning hydrogen production, carbon capture and storage at Baytown complex,
https://corporate.exxonmobil.com/News/Newsroom/News-releases/2022/0301_ExxonMobil-planning-hydrogen-production-carbon-capture-and-storage-at-Baytown-complex(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

 

2. Shell

2022年第一四半期は、主に高油価と好調なトレーディングを背景に148億ドルの事業キャッシュフローを創出し、71億ドルの純利益を達成した。前期(2021年第四四半期)と比較して純利益は38%減となったが、これは同社が参画する極東ロシアにおけるSakhalin-2事業からの撤退方針を受け、39億ドルの税引き後調整(減損)を計上したことによるものである。今期のフリーキャッシュフローは105億ドルとなり、同社は前年同期を上回る水準(今期0.25ドル/株、前年同期0.17ドル/株)で配当を行うとともに、2022年上半期中に総額85億ドルの自社株買いプログラムを実施し株主への還元を行っており、今期は配当に20億ドル、自社株買いに35億ドルを充てた。

上流開発事業からの当期売上高は31億ドルと、前期(2021年第四四半期)の49億ドルと比較して減少した。これは、ウクライナ危機を受け2022年3月8日に、Gazpromとロシアにおいて実施するガスパイプライン事業Nord Stream2の事業体(Shellを含め5社)からの撤退のほか、ロシアにおけるサービスステーション事業・潤滑油製造事業、極東ロシアにおけるSakhalin-2事業を含むロシア事業からの撤退の意図を発表[7]したことに伴い、全セグメントでこれらに係る39億ドルの減損を計上(Integrated Gasセグメントで26億ドル、Upstreamセグメントで4.3億ドル等)したことによるものである。

今期の石油換算生産量は日量296.2万boeとなり、前期比5%程度の減少となった。主にUpstreamセグメントにおけるPermian盆地からの撤退と、暖冬による製品需要の低下及び米国に襲来したハリケーン・アイダによる操業停止の影響である。2022年第二四半期の生産量は、季節要因によるガス需要の低下と、米国メキシコ湾における定期点検により、今期を下回ると見られている[8]

主要な事業の進捗としては、2022年3月29日に米国メキシコ湾におけるPowerNap構造からの生産を開始したと発表。同構造は、ニューオリンズからおよそ240キロメートルのMississippi Canyon中央南部に位置し、水深約1,280メートルにおける開発作業を経て、既存のOlympus生産ハブに繋ぎこみ、ピーク時の生産量は日量2万boeに達する見通し[9]。また、3月31日にトリニダード・トバゴのNorth Coast Marine Area(NCMA)Block 22及びNCMA-4におけるColibri事業からのガス生産を開始(3月30日)したと発表[10]。当該プロジェクトからのガスは国内向けに供給されるほか、Atlantic LNG(Shellは計4トレインにそれぞれ46%~57.5%のシェアを保有[11])から国際市場向けに販売される。これに加え、2022年第二四半期中の実績として、5月2日にブラジルのSantos盆地Mero構造からの生産開始を発表。Mero構造はLibra生産物分与契約の一部として、オペレーターのPetrobras他とFPSO Guanabaraにより段階的に開発される大水深(水深2,100メートル)事業である[12]

このほか、Shellは再生可能エネルギーへの投資も旺盛に行っており、2022年1月には同社とScottishPowerが共同で英国における5GWの洋上風力発電開発事業を落札したほか、中国において20MW規模のPower to hydrogen事業の立ち上げを行っている。また2月には、EDF Renewables North Americaとの共同事業で、米国ニューヨークのNew York Bright OCS-0541鉱区の洋上風力発電事業を落札している[13]

表2:2022年第一四半期決算概要(Shell)
表2:2022年第一四半期決算概要(Shell)
出所:決算資料及びEvaluateEnergyに基づきJOGMEC作成

[7] Shell, Shell announces intent to withdraw from Russian oil and gas,
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/shell-announces-intent-to-withdraw-from-russian-oil-and-gas.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[9] Shell, Shell Adds Deep-Water Production in the Gulf of Mexico with PowerNap,
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/shell-adds-deep-water-production-in-the-gulf-of-mexico-with-powernap.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[10] Shell, Shell Trinidad and Tobago delivers first gas from Colibri Project,
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/shell-trinidad-and-tobago-delivers-first-gas-from-colibri-project.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[11] Atlantic LNG, Our Business – Our Trains, https://atlanticlng.com/our-business/our-trains/(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

[12] Shell, Libra Consortium announces first production at Mero field’s FPSO Guanabara in Brazilian pre-salt,
https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2022/libra-consortium-announces-first-production-at-mero-fields.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月10日閲覧

 

3. bp

bpはロシアによるウクライナ侵攻を受け、2022年2月27日に保有するRosneft株19.75%の売却方針とRosneftの取締役のうちbpが派遣する2名の辞任、そしてRosneft株の持ち分に応じた埋蔵量、生産量及び利益をbpの決算における報告対象としないことを発表した[14]。これに伴いRosneft株の評価額をゼロとしたことや、合弁会社の株式売却により2022年第一四半期決算で204億ドルの損失を計上した。一方、他社同様に高油価及び好調なトレーディングを背景に、ロシア事業からの撤退に伴う調整項目を除いたアンダーライイング・リプレースメント・コスト利益では、62億ドルとなり前年同期の26億ドルを上回った。事業キャッシュフローは、前期及び前年同期を上回る82億ドルを創出した。同社は前年同期を上回る水準(今期5.46セント/株(前期同様)、前年同期5.25セント/株)で配当を行うとともに、16億ドルの自社株買いを実施。同社は2022年の余剰キャッシュフローのうち60%以上を自社株買いに向けることを約束しており、バランスシートの健全化に努めつつ、株主への還元を行う方針を明確にしている。

今期の石油換算生産量は日量300.2万boeとなり、前期比13%程度の減少となった。2022年第二四半期の生産量は、主にガス生産施設の定期メンテナンス及び需要の季節変動要因や、ロシアにおけるJV事業からの生産減少の影響等により当期より減少する見込みである[15]

主要な事業の進捗としては、2022年2月22日に米国メキシコ湾におけるHerschel Expansion事業からの生産開始を発表した。同事業は、同社の炭化水素事業における資産の選択と強靭性の強化に資する案件として、ニューオリンズから255キロメートルの海上に位置するMississippi Canyon 520鉱区において実施されている拡張事業であり、ピーク時の生産量は日量1.06万boeに達する見込みである。同社は米国メキシコ湾の大水深域における主要な生産者であり、2020年代中頃まで同地域からの生産量は日量40万boeに達する見通しである[16]。また、3月11日には、同社はイタリアのEniとともに、両社のアンゴラ事業を独立的に手掛けるAzure Energyを50%ずつの出資比率で設立することに合意した。共同持ち株会社の設立は、2021年5月に合意し、覚書(MOU)に署名して以来検討が進められてきたものであり、Azure Energyが設立されれば、アンゴラで16のライセンスを保有するほかAngola LNGへの参画やEniが保有している太陽光発電事業者Solenova(国営石油会社のSonangolと共同保有)も傘下に持ち、石油換算埋蔵量20億バレル、生産量日量20万boeを有する同国最大の生産者となることが見込まれる[17]

このほか、bpは2030年までに再生可能エネルギーによる発電設備容量を50GWに引き上げる目標の下、2022年1月17日に、英国スコットランドにおける大規模洋上風力発電開発事業(ScotWind)をEnBW社とともに落札したと発表[18]したことに加え、3月23日には日本における洋上風力発電事業の機会を追求するために丸紅株式会社と戦略的パートナーシップを締結したと発表した[19]

表3:2022年第一四半期決算概要(bp)
表3:2022年第一四半期決算概要(bp)
出所:決算資料及びEvaluateEnergyに基づきJOGMEC作成

[14] bp, bp to exit Rosneft shareholding,
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-to-exit-rosneft-shareholding.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月11日閲覧

[15] bp, BP p.l.c. Group results First quarter 2022,
https://www.bp.com/content/dam/bp/business-sites/en/global/corporate/pdfs/investors/bp-first-quarter-2022-results.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月11日閲覧

[16] bp, bp announces successful start-up of Herschel Expansion in Gulf of Mexico,
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-announces-successful-start-up-of-herschel-expansion-in-gulf-of-mexico.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月11日閲覧

[17] bp, Eni and bp finalise agreement to create new independent joint venture in Angola,
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/eni-and-bp-finalise-agreement-to-create-new-independent-joint-venture-in-angola.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月11日閲覧

[18] bp, bp and EnBW successful in ScotWind offshore wind bid,
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-and-enbw-successful-in-scotwind-offshore-wind-bid.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月11日閲覧

[19] bp, bp and Marubeni form strategic partnership to pursue offshore wind in Japan,
https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-and-marubeni-form-strategic-partnership-to-pursue-offshore-wind-in-japan.html(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月11日閲覧

 

4. Chevron

2022年第一四半期は、他社同様、高油価を背景として81億ドルの事業キャッシュフローを創出し、63億ドルの純利益を確保した。前期(2021年第四四半期)と比較して純利益は24%増を達成し、これは米国における石油・天然ガスの生産量が前年同期比10%程度上昇したこと等による。特にPermian盆地における非在来型資源からの今期の生産は、過去最高の日量69.2万バレルに達し、ウクライナ危機を受けた国内生産の増加を呼びかける米国エネルギー省の方針とも一致している。同社のPermian盆地からの生産は、2025年までに日量100万バレルを達成する見込みである[20]。今期のフリーキャッシュフローは61億ドルとなり、同社は前年同期を上回る水準(今期1.42ドル/株、前年同期1.34ドル/株)で配当を行うこととし、今期は配当に27億ドル、自社株買いに13億ドルを充てた。

今期の石油換算生産量は日量306万boeとなり、前期比2%程度の減少(前年同期比においても2%程度の減少)となった。米国を除く世界の生産量は前年同期比8%の減少となったが、米国内の生産量が同10%の増加となったことで、一部が相殺された。2022年の生産量は、インドネシア及びタイにおける契約終結に伴う生産減(日量160百万boe)を除き、Permian盆地等からの生産増加(日量80百万boe)により、前年比2~5%の増加を見込んでいる[21]

主要な事業の進捗としては、ネットゼロ達成に向けた技術や再生可能エネルギーへの投資が多くみられる。2022年2月24日、Chevron U.S.A. Inc.は炭素回収について世界的な知見を有するCarbon Clean(セメント、鉄鋼、精製事業などにおける炭素回収を専門とし、排出源規模に応じた回収事業の提案やモジュール工法を採用することによる許認可取得や用地取得に係る諸課題への対応に強みを有する)に対する新たな投資を実施すると発表。Carbon Cleanに対しては、2020年からChevron Technology Venturesが初期段階の投資を行っており、Chevronは2020年代終わりまでに年間2500万トンの二酸化炭素を回収することを目標としている[22]

また、Chevron U.S.A. Inc.及びIwatani Corporation of America(岩谷産業の米国子会社)は、2022年2月24日に、カリフォルニア州における水素ステーションを2026年までに30か所設置することを発表。当初は乗用車向けの水素供給を行い、大型車への供給を可能とする柔軟性を持たせるとしている。Chevron U.S.A. Inc.は既存のサービスステーションに隣接する水素ステーションの整備のほか、Richmond製油所からの余剰水素や、北部カリフォルニアで実施中の水素製造パイロット事業からの水素供給を行い、Iwatani Corporation of Americaは水素ステーションの運営のほか、水素輸送にかかるロジスティクスを担当する[23]

このほか、2022年2月28日にChevronは、再生可能燃料事業を手掛けるRenewable Energy Group, Inc.の発行済株式を31.5億ドルで取得することに合意。これにより、2030年までに日量10万バレルの再生可能燃料生産能力を保有することを目指すとしている[24]

表4:2022年第一四半期決算概要(Chevron)
表4:2022年第一四半期決算概要(Chevron)
出所:決算資料及びEvaluateEnergyに基づきJOGMEC作成

[20] Chevron, Chevron 2022 Investor Presentation,
https://chevroncorp.gcs-web.com/static-files/768cade8-1672-4382-b754-ff9b3db4ee3f(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月13日閲覧

[21] 同上

[22] Chevron, chevron announces investment in carbon clean CO2 capture technology business
https://www.chevron.com/newsroom/2022/q1/chevron-announces-investment-in-carbon-clean-co2-capture-technology-business(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月13日閲覧

[23] Chevron, chevron, iwatani announce agreement to build 30 hydrogen fueling stations in california
https://www.chevron.com/newsroom/2022/q1/chevron-iwatani-announce-agreement-to-build-30-hydrogen-fueling-stations-in-california(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月13日閲覧

[24] Chevron, chevron announces agreement to acquire renewable energy group
https://www.chevron.com/newsroom/2022/q1/chevron-announces-agreement-to-acquire-renewable-energy-group(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月13日閲覧

 

5. TotalEnergies

TotalEnergiesの2022年第一四半期決算は、主に高油ガス価格と好調なトレーディングを背景に116億ドルの事業キャッシュフローを創出し、49億ドルの純利益を達成した。前期(2021年第四四半期)と比較して純利益は15%減となったが、これは対露制裁により同社が参画するArctic LNG 2の事業実施に影響があるとして、41億ドルの税引き後調整(減損)を計上したこと等によるものである。今期のフリーキャッシュフローは58億ドルとなり、同社は前年同期を上回る水準(今期0.69ユーロ/株、前年同期0.66ユーロ/株)で配当を行うとともに、2022年上半期中に総額30億ドルの自社株買いを実施し株主への還元を行う方針を決定した。

今期の石油換算生産量は日量284.3万boeとなり、前期比ほぼ横ばい(前年同期比1%減)となった。アンゴラ及びブラジルからの生産開始等のほか、OPECプラス産油国の生産枠引き上げにより、生産量が伸びた一方、資産入替や自然減退による減少がこれを相殺した。

主要な石油・天然ガス上流事業の進捗としては、2022年2月21日、スリナム海上Block58中央エリアにおける試掘井Krabdagu-1においてネットペイ層厚90mの油層を発見した旨発表。Block58における一連の発見を受け、開発に必要な追加埋蔵量の確保を継続する方針である[25]。また、2月24日には、ナミビア海上 Block 2913BにおけるVenus構造に対する試掘井Venus 1-Xにおいて、ネットペイ層厚84メートルの油層を発見、軽質で良好な性状の原油と随伴ガスの存在を確認した[26]。このほか、LNGについては、Sempra社との間で北米戦略協定(MOU)2件を締結したと3月31日に発表。1件目は、天然ガスの需要地であるアジア及び南アメリカ向けに輸出が可能なメキシコ西海岸においてSempra社が計画するVista Pacífico LNGについて、同事業から将来的に生産されるLNGのうち三分の一のオフテイク権取得及び同事業の16.6%権益の取得に係るものである。2件目は、北米におけるSempra社との再生可能エネルギー事業の協力枠組み構築を意図したものである[27]。また、2022年第二四半期には、ブラジルにおける大規模油田Mero Phase 1からの操業開始による生産量の上乗せが期待される(Phase 2は2023年、Phase 3は2024年、Phase 4は2025年の生産開始予定)[28]

再生可能エネルギーへの投資も旺盛に継続しており、米国東海岸ニューヨーク州及びニュージャージー州における3GW規模程度の洋上風力発電所開発を目的としたリースの獲得や、英国スコットランドにおけるGreen Investment Group(GIG)等との2GW規模程度の洋上風力発電事業へ参画を決定している[29]

表5:2022年第一四半期決算概要(TotalEnergies)
表5:2022年第一四半期決算概要(TotalEnergies)
出所:決算資料及びEvaluateEnergyに基づきJOGMEC作成

[25] TotalEnergies, Suriname: TotalEnergies announces another significant discovery in Block 58
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/suriname-totalenergies-announces-another-significant-discovery-block-58(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月16日閲覧

[26] TotalEnergies, Namibia: TotalEnergies makes a significant discovery in offshore Block 2913B
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/namibia-totalenergies-makes-significant-discovery-offshore-block-2913b(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月16日閲覧

[27] TotalEnergies, TotalEnergies and Sempra Expand North American Strategic Alliance for the Development of LNG Exports and Renewables
https://totalenergies.com/media/news/press-releases/totalenergies-and-sempra-expand-north-american-strategic-alliance(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月16日閲覧

[28] TotalEnergies, First quarter 2022 results
https://totalenergies.com/system/files/documents/2022-04/1Q22_Results.pdf(外部リンク)新しいウィンドウで開きます 2022年5月16日閲覧

[29] 同上

 

6. まとめ:フリーキャッシュフローの向かう先

ウクライナ危機による対ロシア経済制裁等による各社事業への影響はありながら、Brent価格は期中平均で102ドル/バレル(前期比+28%)となったことを受け、今期決算では全社とも前期と同等またはこれを上回るフリーキャッシュフローを確保した。

2022年第二四半期以降も、(1)ウクライナ危機がどの程度の期間継続するか不透明なこと、(2)これを受けたロシアに対する経済制裁の強化や緩和といった方向性が見いだせないこと、(3)月次のOPECプラス産油国閣僚級会合において減産措置緩和(増産)が継続して決定されると見られるものの余剰生産能力の不足等の問題から実質的な増産ができず、需給バランスが引き続きひっ迫する懸念があること、(4)中国を中心として新型コロナウイルス感染症の再拡大が依然として継続しており、2022年世界経済成長見通しが鈍化する懸念等があるものの、現在の資源価格水準が継続する蓋然性は高く、潤沢なキャッシュフローを生み出すと考えられる。

こうした不確実性が高い状況において、各社ともに、投資家や金融機関等からの要請により、財務規律を重視した経営を求められていることに加え、地政学リスクや石油天然ガスの需給ひっ迫懸念等による高まっている資源価格のボラティリティの高さに対応するために、健全な財務基盤確保を意識した経営方針を取っている。また、高資源価格を背景とした高水準の利益に対する株主からの還元要請にも、増配や自社株買いなどを通じて応えていく必要がある。

他方、新型コロナウイルス感染症の世界規模での拡大以降、経済活動の停滞やこれに伴うエネルギー需要の低下を背景に、長期のリードタイムが必要な上流資源開発への十分な投資が行われていなかった状況が続いていた。今期決算では、各社とも設備投資額は前期を下回る水準となったが、前年同期との比較においては、これを上回る投資額を確保した企業も見られた。今後、各社が発表している2022年の投資目標とその達成状況を引き続き注視したい。

表6:各社生産量・純利益・設備投資額の比較(2022年第一四半期決算)
表6:各社生産量・純利益・設備投資額の比較(2022年第一四半期決算)
出所:決算資料及びEvaluateEnergyに基づきJOGMEC作成

参考資料

 

以上

(この報告は2022年5月17日時点のものです)

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