ページ番号1009356 更新日 令和4年5月24日

ベネズエラ:原油生産の状況と増産の可能性 ―昨今のウクライナ情勢を踏まえて―

レポート属性
レポートID 1009356
作成日 2022-05-23 00:00:00 +0900
更新日 2022-05-24 10:31:40 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2022
Vol
No
ページ数 15
抽出データ
地域1 中南米
国1 ベネズエラ
地域2
国2 ブラジル
地域3
国3 コロンビア
地域4
国4 メキシコ
地域5
国5 ガイアナ
地域6
国6 アルゼンチン
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ベネズエラ,ブラジル,コロンビア,メキシコ,ガイアナ,アルゼンチン
2022/05/23 舩木 弥和子
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概要

  1. ベネズエラの原油生産量は、イラン産コンデンセート入手と国内サービス会社の利用により2021年第4四半期に日量88万バレルまで増加した。しかし、2021年11月末から2022年1月末まではイランからのコンデンセートの供給がなく、1月の原油生産量は日量69万バレルに減少した。その後、イラン産コンデンセートの供給を受け、原油生産量は若干回復した。ただし、停電、事故、火災の発生、部品不足、盗難の頻発、原油輸出の滞り、希釈剤貯蔵設備の不足、コンデンセート供給のタイミング等課題は多く、生産は不安定となっている。
  2. Chevronは、原油生産を拡大すべく制裁を緩和するように、米政府に働きかけている。RepsolとEniは、Perlaガス田で生産されるガスを国内市場に供給する等、ベネズエラでの活動を継続している。CNPC、ONGC、Roszarubezhneft等中国、インド、ロシア企業も権益を保持している。一方、Equinorはベネズエラから撤退、TotalEnergiesも保有権益を削減した。
  3. ロシアのウクライナ侵攻に伴い、原油価格が急騰する中、米政府は2022年3月5日、ベネズエラに対する経済制裁の緩和、ベネズエラの原油増産に向けてベネズエラと協議を行った。5月中旬には、米政府が対ベネズエラ制裁の一部緩和に動いたことから、Maduro大統領が野党側との協議を再開することとなった。野党との交渉進展次第では、米国は制裁を大幅解除する可能性がある。
  4. 他の中南米諸国では、ブラジルは、Petrobrasが2026年までに日量50万バレル増産する目標ではあるが、短期的には自然減退と相殺され輸出量増加の可能性は低い。コロンビアは1年以内に日量8万バレルを増産、うち日量4万バレルは輸出可能、メキシコは半減させるとしていた原油輸出量を維持するとしているが、現状維持となろう。ガイアナは2022年中に日量24万バレルの増産が見込まれ、2023年以降も開発中の油田の生産開始で日量47万バレルの増産が期待できる。アルゼンチンは中西部Neuquén州Vaca Muertaシェールの原油生産増に伴い、同州からの原油輸出量が少ないながらも急増しており、状況次第ではこれがさらに増加する可能性がある。

(出所 Platts Oilgram News、International Oil Daily、BNamericas他)

 

1 原油生産状況

(1) イラン産コンデンセートの供給により2021年第4四半期は原油生産量増加

Chávez前政権以降の失政で、ベネズエラの石油・ガス産業は資金、人材、技術力、資機材等が恒常的に不足している。それでも、2015年まで原油生産量は日量250万バレル程度で推移していた。2016年に石油サービス会社が、支払いが行われていないことを理由に、ベネズエラでの操業を縮小したことで原油生産量は減少を始めた。そして、2019年1月のPDVSAに対する米国制裁、同年3月の大規模停電により原油生産量はさらに減少することとなった。同年8月には米国制裁が強化され、タンカー調達が難しくなり、輸出量がさらに減少、貯蔵設備が満杯となり、生産を調整せざるを得ない状況が生じた。しかし、その後、主にRosneft子会社Rosneft Trading SA及びTNK Trading International SAがベネズエラ原油を引き取ったことで貯蔵設備に空きが生じ、原油生産は一旦、回復に向かった。ところが、2020年2月、3月にRosneft子会社に対し米国が制裁を課したことにより、両社による原油取引が中断したことを契機に原油生産量は減少することとなった[1]。それ以降、原油生産量は日量50万バレル程度で推移していたが、2021年第4四半期には急回復を見せた。

図1 原油生産量及び稼働リグ数の推移
図1 原油生産量及び稼働リグ数の推移
IEA統計及びBaker Hughes Websiteを基にJOGMEC作成

これは、2021年9月にベネズエラがイランと、イラン産コンデンセートとMerey16原油を交換する協定を締結し、イランからベネズエラにコンデンセートが供給されるようになったことによるものだ。

ベネズエラ産の原油、特に東部Orinoco Oil Belt(OOB)で生産される原油は超重質原油で、比重が非常に重く、輸送するには軽質原油やコンデンセートで希釈する必要がある。ところが希釈剤が不足するようになり、これが、ベネズエラの原油生産減少の要因の一つとなった。以前は、ベネズエラ国内で生産される軽質原油や米国等から輸入されるコンデンセートでこれに対応していたが、国内産原油については生産量が減少したり、国内製油所への供給量が増加したりしたことにより、希釈剤として供給する余裕がなくなった。輸入コンデンセートについては米国による制裁が発動され輸入ができなくなった。

一方、イランには余剰のコンデンセートがあるものの、米国の制裁により他国に販売できない状況が続いていた。

イランは2021年9月、10月、11月にそれぞれ約200万バレルのコンデンセートをベネズエラのJose港に供給した[2]。その結果、9月には1.2万バレルまで減少していた希釈剤の在庫は、11月には170万バレルまで増加した。そして、2021年第4四半期はOOBを中心に原油生産量が増加、日量88万バレルまで回復した。2021年12月24日と31日には、Maduro大統領が目標としていた原油生産量、日量100万バレルを達成したという。

原油生産量急回復の背景には、もう一つ要因があるとされている。それは、PDVSAが大手石油サービス会社の代わりに、ベネズエラ国内の知名度の低い小規模なサービス会社を利用したことだ。

米国の制裁下ではあるが、大手石油サービス会社4社、Schlumberger、Halliburton、Baker Hughes、Weatherford Internationalは同国での活動を期限付きで認められており、現在は2022年6月1日までの間、活動することができる[3]。ただし、2020年4月23日以降は掘削、生産、輸送、販売等は禁じられ、資産保全等にかかる活動のみが認可されている。先述したとおり、これらのサービス会社は、すでに活動を縮小、あるいは、停止しており、Baker Hughesによる稼働リグ数も減少の一途をたどり、2020年10月以降は0となっている。

しかし、国内燃料販売とアジア向け原油輸出により得られた収益で、PDVSAは国内の小規模サービス会社の債務の一部を償却し、これらのサービス会社により掘削等を進めているというのだ。Baker Hughesは、制裁によりリスクが高すぎるため、ベネズエラで掘削中のリグはないとしているが、Baker Hughesの稼働リグ数に反映されていないリグが稼働しているという。2021年6月初めの時点では、PDVSAはサービス契約40件を締結したが、契約締結先は国内のサービス会社等で、契約締結により小規模な修理チームが到着しているものの、リグの到着はなく、生産に強い影響を与えることはないと見られていた[4]。しかし、同年6月末になると、2019年から中断していた掘削キャンペーンをPDVSAが再開すると報じられた。PDVSAはOOBに97基のリグを保有しているが、この時点ではいずれも稼働しておらず、メンテナンス費用844万ドルを投じ、短期的には10基を再稼働させることができるという。このうち3基とベネズエラ企業Corporacion Panthersと1基あたり150万ドルで契約をしたリグ14基の合計17基のリグで、掘削キャンペーンを実施するというのだ。さらに、OOBには掘削が中断し未仕上げの坑井が184坑、生産を停止している坑井が2,000坑あり、国内企業にこれらの坑井の仕上げ及び繋ぎこみ等を実施させることで、日量40万バレルの生産回復が見込まれる[5]と伝えられた。

これらの国内企業に対する支払いに関しては、石油副産物や残留燃料等のスクラップで現物支払いし、サービス会社はこれを国内外で販売した、銀行口座凍結等のためバックパック一杯の米ドルで支払いを行った、現地銀行が石油関連企業向けに特別口座を開設、2021年10月以降、入金が確認されている[6]、といった情報が伝えられている。

ただし、PDVSAが油井復旧のために国内企業と締結した13のサービス契約は期待された成果を上げることができなかった[7]との報道もあり、国内のサービス会社がどの程度生産増に寄与しているかについて、詳細は明らかではない。

一方で、イランから定期的にコンデンセートが到着することで、また、原油生産量が増加したことで、貯蔵、港湾インフラに負担がかかり、原油輸出に遅延が発生した。また、品質問題で出港したタンカーが返品扱いになったりするケースも出るようになった。その結果、在庫が増加、貯蔵設備が充溢となり生産に影響が及んだ時期もあった。

また、安定して電力が供給されないことが原油生産停滞の一因となっていたが、2021年後半に、中国から機器を輸入、発電設備等の修復が行われ、電力供給は改善してきたと伝えられていた。しかし、12月17日にベネズエラ全土で大停電が発生し、同国の電力セクターは、なお課題が多いことが判明した。


[1] 石油・天然ガス資源情報:ベネズエラ石油産業の最近の動向 ―石油大臣及びPDVSA総裁更迭、石油産業改革に向けての動向等―
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1008604/1008780.html

[2] イランは2020年9月にもベネズエラにコンデンセートを供給。その後、2021年7月にパナマ船籍のスーパータンカーReneがJose港においてコンデンセートを引き渡したが、このコンデンセートの出所は不明。

[3] これらの企業のうちHalliburtonは2020年12月末にベネズエラにおける原油生産にかかるサービス事業を停止し、全従業員を解雇したと発表、12月下旬にはHalliburtonの同国内の人員はゼロとなった。

[4] Platts Oilgram News, 2021/6/3

[5] Platts Oilgram News, 2021/6/30

[6] IPD, 2021/11/8

[7] Platts Oilgram News, 2021/12/30

 

(2) コンデンセートの供給がなく2022年1月は原油生産量減少

2022年も1月、2月、3月、4月に各約200万バレルのコンデンセートがイランからベネズエラのJose港に到着した。ただし、コンデンセートが届けられたのは1月末で、2021年11月末から約2カ月間コンデンセートの供給がなかったため、1月の原油生産量は日量69万バレルに減少した。その後、原油生産量は若干回復したものの、2月、3月は日量72万バレル、4月は日量75万バレルとなった。

従来から原油生産減少や停滞の要因とされていた停電、事故、火災の発生、資機材の不足、盗難の頻発に加え、上述したように原油輸出が滞り、在庫が飽和状態となって、生産に影響を及ぼしている。また、利用できるアップグレーダーの生産能力が不足していることも、原油輸出に影響を与えているという。Petropiar以外の3プロジェクトのアップグレーダーは過去数年にわたり稼働が停止していたが、2021年6月にPetrocedeñoのアップグレーダーが再稼働し、現在は2基が稼働している。ただし、Petrocedeñoに関しては、生産能力の1/10程度の稼働状況となっている(表1)。さらに、希釈剤貯蔵用のインフラが限界に達しつつあり、希釈剤保管のめにタンカーを使用せざるを得なくなったり、コンデンセートの荷揚げを一度に行うことができなくなったりするという状況も生じている。このような要因から、原油生産は不安定な状態が続いている。

表1 OOBのアップグレーダーを備えるプロジェクトの状況

プロジェクト
(旧名称)

参加企業権益比率 超重質油生産能力
(API比重)
改質後の原油生産量
(API比重)
原油生産等の状況
Petrocedeño (Sincor) PDVSA 100% 20.2万b/d
(8~8.5度)
18万b/d
(32度)
2018年から停止していたアップグレーダーが2021年6月29日に再稼働(2万b/d)。原油生産は4万b/d程度まで回復。
Petromonagas (Cerro Negro) PDVSA 60%
Roszarubezhneft 40%
12万b/d
(9.3度)
10.4万b/d
(19~25度)
2019年以降アップグレーダー停止。ブレンディング設備として利用。原油生産は続けているものの減少傾向にあったが、希釈剤確保で9万b/d程度まで回復。
Petropiar (Hamaca) PDVSA 70%
Chevron 30%
19万b/d
(8.7度)
18万b/d
(26度)
2021年のAmana Operating Center (COA)での火災時を除きアップグレーダーが継続的に稼働。原油生産量8万b/d程度。
Petro San Felix(Petroanzoátegui, Petrozuata) PDVSA 60%
Corp Venezolana de Guayana 40%
12万b/d
(8.5度)
10.5万b/d
(16度)
2017年末以降、資金不足と希釈剤の入手が困難なため原油生産停止。2021年に入り少量で生産再開。2021年末は2万b/d程度。アップグレーダーは停止。

各種資料を基にJOGMEC作成

 

図2 OOB主要鉱区図
図2 OOB主要鉱区図
各種資料を基にJOGMEC作成

2 主な外資の石油・ガス上流部門への参入状況

(1) Chevron:生産増に向け米政府に働きかけ

Exxon MobilとConoco Phillipsが、ベネズエラがすべての石油プロジェクトの過半を国有化することを義務付けた2007年に同国から撤退したため、現在、ベネズエラで活動中の米国の石油会社はChevronのみとなっている。Chevronは、表2、図2に示したとおり、複数のプロジェクトの権益を保有、ベネズエラで日量5万バレル程度を生産している。

米国財務省は、制裁下であるが、2022年6月1日までChevronがベネズエラで活動することを認めている。ただし、2020年4月23日以降は掘削、生産、輸送、販売等は禁じられ、資産維持、設備メンテナンス等のみを実施している。Chevronは、2021年11月より、数カ月以内にベネズエラの原油生産量を日量80万バレルから倍増させることに貢献できるとして、ベネズエラでの生産を拡大できるように制裁を緩和するよう米国政府にロビー活動を実施している[8]

表2 Chevron参入プロジェクト
プロジェクト 油田、鉱区 Chevron権益
Petroboscan Boscan油田 39.2%
Petroindependiente LL-652油田 25.2%
Petropiar(元Hamaca) Huyapari油田 30%
Petroindependencia OOB Carabobo3 34%
Loran Plataforma Deltana Block 2 60%

各種資料を基にJOGMEC作成

図3 Chevron参入プロジェクト図
図3 Chevron参入プロジェクト図
出所:https://www.chevron.com/worldwide/venezuela

[8] Wall Street Journal, 2022/3/22

 

(2) Repsol、Eni:Perlaガス田で生産されるガスを国内市場に供給

RepsolとEniも、表3、表4に示したように、ベネズエラで複数のプロジェクトに参入している。

EniとRepsolが参入するプロジェクトの中で注目すべきは、両社が西部沖合Cardon IV鉱区で2009年に発見したPerlaガス田だ。埋蔵量は16.9兆立方フィートとされ、2015年7月に生産を開始した。EniとRepsolは2011年12月にPDVSAとガス販売契約(8.7兆立方フィート)を締結、2036年まで国内市場にガスを供給することとなっている。

表3 epsol参入主要プロジェクト
プロジェクト 油田、ガス田、鉱区 Repsol権益
Perla Cardon IV 50%
Quiriquire Gas San Luis、Quiriquire Deepガス田 60%
Petrocarabobo OOB Carabobo 1 11%
Petroquiriquire Quiriquire、Somero油田等 40%
Ypergas Yucal-Placerガス田 15.001%

各種資料を基にJOGMEC作成

図4 Repsol参入プロジェクト図
図4 Repsol参入プロジェクト図
出所:https://www.repsol.com/en/about-us/repsol-worldwide/the-americas/venezuela/index.cshtml
表4 Eni参入主要プロジェクト
プロジェクト 油田、ガス田、鉱区 Eni権益
Perla Cardon IV 50%
Junin 5 OOB Junin 5 40%
Corocoro Golfo de Paria Oeste 26%

各種資料を基にJOGMEC作成

 

(3) Equinorは撤退 TotalEnergiesも保有権益削減

TotalEnergiesとEquinorは、ベネズエラでの開発を積極的に推し進めていこうとするChevronや、ベネズエラでの事業を粛々と継続していくRepsolやEniとは異なる動きを取っている。

TotalEnergiesとEquinorは2021年第3四半期に、OOBのPetrocedeñoの権益をPDVSA子会社CVPに譲渡し、ベネズエラの超重質油開発から撤退すると発表した。TotalEnergiesは、政治的な判断ではなく、炭素強度が高いことが撤退の理由だと説明した。

両社は、2021年12月、東部沖合ガスプロジェクトDeltana Platformのライセンスを政府に返還することとした。これにより、Equinorはベネズエラから撤退することとなった。

さらに、TotalEnergiesは2022年2月、カラカスにオフィスを構えるプライベートエクイティSucre EnergyとYPergas SAの売却について交渉中であることが明らかになった。YPergas SAはグアリコ州Yucal Placerガス田で日量5,000万立方フィートのガスを生産している。

 

(4) 中印露企業は権益保持

2019年の米国制裁後も、中国、インド、ロシアの国営石油会社はベネズエラの上流事業の権益を維持または増加させている。

CNPCはOOBのPetrosinovensaとJunin 4、Intercampo油田、Caracoles油田等の権益を保有しており、2021年12月時点で日量47,400バレルを生産、Chevronに次ぐ原油生産量を誇っている。

ONGCはOOBのCarabobo-1、San Cristóbal(Junin Norte)の権益を保有している。

CNPCとONGCの原油生産量は、今後数年間、増加すると見られている。

Roszarubezhneftは、2020年3月にRosneftのベネズエラにおける全権益(Petromonagas(40%)、Petroperija(40%)、Boqueron(26.7%)、Petromiranda(Junin6、26.7%)、Petrovictoria(Carabobo、40%)等)を取得、開発、生産を引き継いだ。

 

3 ウクライナ情勢を踏まえての動向

(1) 米国と制裁緩和について協議 米国が支持する野党との交渉次第で米国は制裁大幅解除か

ロシアのウクライナ侵攻に伴い、原油価格が急騰する中、米政府高官が2022年3月5日にベネズエラを訪問し、Maduro大統領、Rodriguez副大統領と会談、ベネズエラに対する経済制裁の緩和やベネズエラの原油増産に向けて協議を行った。米国側は、ロシア産原油の禁輸に備え、ベネズエラへの制裁を緩和し代替調達先を確保して、原油価格の高騰を和らげることを狙い、ベネズエラに公正な大統領選の実施や石油産業の改革、ウクライナ侵攻を行ったロシアを非難するよう求め、ベネズエラ側は原油禁輸の全面解除やMaduro大統領への制裁撤回等を求めたという。

Maduro大統領は3月9日、2022年のベネズエラの石油生産目標は日量200万バレルであると発言した。Maduro大統領は1月15日の国民議会での年次報告と会計の発表の際にも同じ発言を行ったが、このタイミングで再度表明を行った。

3月中旬になると、このベネズエラからの原油輸入再開について、反米のMaduro政権に対する制裁を緩和することになるとして、米国議会の与野党議員から反発する意見が表明されるようになった。そして、「米国はベネズエラからの石油輸入を選択肢から除外[9]」、「Maduro政権との対話は継続していない[10]」との報道がある一方、「Biden米大統領はベネズエラに対する制裁緩和の可能性を模索し続けている[11]」との報道もなされた。

このような中、先述したとおり、Chevronが数カ月以内にベネズエラの石油生産量、日量80万バレルを倍増させるのに貢献できるとして、米国政府にベネズエラでの生産を拡大できるよう制裁緩和を求めていることが明らかになった。

さらに、4月には、サービス会社、Schlumberger、Halliburton、Baker Hughes、Weatherford InternationalがPDVSA及びChevronとの事業再開を認めるようBiden政権に要請しているとの報道もあった[12]。そして、Chevronは、Biden政権に対しPDVSAとのプロジェクトの運営管理の許可を求めるとともに、米国への原油輸出に向けチームの準備に着手したとのことであった。

5月中旬には、米政府が対ベネズエラ制裁の一部緩和に動いた(ChevronとMaduro政権の協議再開を一時的に認めた)ことから、Maduro大統領は2021年10月に停止した野党側との協議を再開する見通しであることが明らかにされた。米国は、同国が支持する野党側との交渉の進展次第では、制裁を大幅に解除する可能性があるとしている。


[9] Oil&GasMagazine, 2022/3/15

[10] Wall Street Journal, 2022/3/31

[11] NorthAmOil, 2022/3/22

[12] BNamericas, 2022/4/21

 

(2) 原油増産可能性について、カギを握るのは制裁緩和、解除か

では、米国がベネズエラ、PDVSAに対する制裁を緩和、あるいは、解除した場合、ベネズエラの原油生産量はどの程度増加するのだろうか。

ベネズエラの原油生産量を増加させるための要素は種々あるが、主なものは、希釈剤入手、上・中流から貯蔵、輸出、電力部門までを含めたインフラの整備、大手石油会社やサービス会社の資産保全だけではなく探鉱・開発全般への参加、輸出市場の確保ではないだろうか。

希釈剤に関しては、現状、イランから月に200万バレル程度のコンデンセートが供給されているが、イランのOwji石油相が2022年5月にベネズエラを訪問した際に締結した新たな協定では、イランはベネズエラに月300万バレルのコンデンセートと200万バレルの原油を供給すると定められており、今後、イランからのコンデンセート供給量が増加する可能性もある。ただし、すでに、希釈剤貯蔵用のインフラが限界に達しているといった問題が報告されており、スムーズにこれを受け入れられるか、否かは課題となろう。また、イラン産コンデンセートは、これまでベネズエラで利用してきた希釈剤に比べて水分を多く含んでおり、品質面で若干問題があるという。

インフラの整備に関しては、修繕やメンナンスを行うのに必要な機器や部品が入手できない状態が続いている。ベネズエラはイランと、5月にPDVSAのEl Palito製油所(精製能力、日量14.6万バレル)を改修する契約(総工費1.1億ユーロ)に調印した。El Palito製油所の稼働率は50%程度となっているが、この改修により精製能力での精製、処理が可能となるという。改修後、同製油所ではイランから供給される原油も処理されるという。このように、イランがベネズエラのインフラの一部の修繕を手助けするというケースが今後も出てくるかもしれないが、中国から機器を輸入し、修復が行われた電力部門のように、十分な修繕が行われないことがあるのではないかと懸念されている。

2021年第4四半期の原油増産にあたって、ベネズエラ国内のサービス会社が大きな役割を果たしたが、原油生産量をさらに大幅に増加させるのであれば、大手サービス会社の参入は不可欠であろう。また、Chevron等大手石油会社が探鉱・開発に参加することで効率が改善され、スムーズな増産につながることになると考えられる。

現在、石油輸出の約90%が直接またはマレーシアやシンガポールを経由して中国へ向かっているが、市場が限られているため、在庫が増加し、思うように原油生産を行えない事態も生じている。

米国による制裁が解除、あるいは、部分的にでも緩和されれば、これらの課題の多くは解決され、ベネズエラは原油生産量を増加させることが可能となるだろう。

では、原油生産量はどの程度まで増加、回復するのだろうか。この点についてコンサルタント等の見方は様々である。制裁緩和の状況に対する見方にもよるが、短期的には日量15万~20万バレル、中期的には日量40万~50万バレル程度の増産が可能であると見る向きが多い。中には、制裁緩和により原油生産量を最大で日量150万バレル程度まで回復させることが可能との見方もあった。

ただし、政権が変わったり、制裁が解除されたりしても、原油生産量を日量200~300万バレル、あるいはそれ以上に回復させるには、年間50億ドル以上の投資と5年以上の年月、さらに人材の確保が必要であるとの見方は共通して見られる。

 

(3) 他の中南米諸国の原油増産、供給増の可能性

最後に、ベネズエラ以外の中南米諸国で米国から原油増産や供給増について働きかけがあった国はどこなのか、当該国はこれにどのように対応したのか、また、中南米に、実際に原油生産を増加させられる国はあるのかについて見てみる。

1. ブラジル

ブラジルの原油生産量は日量300万バレル程度、石油消費量は240万バレル程度で推移している。成熟油田の減退が著しいとされるものの、Santos Basinプレソルトの生産増がそれを上回っており、原油生産量は増加傾向にある。

ブラジルは、2022年3月中旬、米国からより多く原油を市場に供給するよう求められ、増産を約束した。ただし、時期や増産量、輸出増加量には言及しなかった。Albuquerque鉱山・エネルギー相も、IEAの会合で、ブラジルは2022年に原油生産量を日量30万バレル増加させると発言した。

これについては、実現は不可能ではないが、可能性は低いと見られている。

というのも、ブラジルの成熟油田の生産量は年に5〜8%の割合で自然減退をしており、これを補いながら、さらに日量30万バレルの増産を達成するには、日量50万バレルの追加生産が必要となる。一方で、2022年に追加生産が見込まれるブラジルのプロジェクトはPetrobrasのMero油田Guanabara FPSO(生産能力は日量15万バレル)、EquinorのPeregrino1の再稼働とPeregrino2の生産開始(生産能力は合計で日量11万バレル)の3件で、生産能力は合計で日量26万バレルとなっている。

ブラジル国家石油庁(ANP)の長官も、「ブラジルの原油生産量は増加するだろうが、ロシア産原油を補うために原油生産増のペースを速めようとしてできることはあまりない」と発言している。

さらに、5月に入ってから、米政府関係者が3月にPetrobrasに、少なくとも短期的に増産するよう要請を行っていたことが明らかになった。Petrobrasはこれに対して否定的な回答を行ったという。Petrobrasは、外交よりも事業戦略を主に置いているとし、さらに、中期計画で2026年までに日量50万バレルの生産増を目指しているが、一時的に原油生産を増やすための余裕はない、と米当局者に伝えたという。

ブラジルは、プレソルトの油田開発により今後、原油生産量を伸ばしていくと考えられるが、ANPやPetrobrasの発言から、一時的に原油生産量や輸出量を急増させる意志や余力はないと考えられる。

2. コロンビア

2020年の新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う原油価格下落、2021年の抗議行動やデモ、ストライキにより、コロンビアの探鉱・開発は停滞し、石油生産量も日量75万バレル弱で横ばいの状況が続いている。一方、石油消費量は日量30万バレル程度で推移している。コロンビアから米国へは現在、日量20万バレルの石油が輸出されている。

Diego Mesa鉱山エネルギー相は2022年3月中旬、今後12か月の間に、コロンビアの石油生産量は日量8万バレル増加する可能性があり、その半分が米国に輸出されるであろうと語った。

Duque大統領は4月に、ベネズエラとコロンビアを比較し、米国によるベネズエラ石油セクターへの制裁以来、PDVSAの生産・処理インフラは劣化、PDVSAは技術的な問題を抱えており、ベネズエラの石油産業が急速に生産を拡大しようとすれば、深刻な障害に直面するだろうと述べた。これとは対照的に、コロンビアはすでに原油生産を増大させるために必要な基盤を築いているとし、米国などの企業と共同で新たな上流資産を開発する計画が実現すれば、原油生産量は今後4年以内に日量150万バレルから200万バレルに増加する可能性もあるとした。

コロンビアでは5月末に大統領選挙が実施される。最有力候補とされるPetro氏は、大統領選挙で勝利した暁には、既存の油田、ガス田での生産は続けるものの、新規の探鉱や鉱区付与は行わず、これにより、約12年をかけて化石燃料からの脱却を図る計画であるという。大統領選挙の結果次第では、コロンビアの探鉱・開発の状況が一変し、新規の探鉱・開発が停止し、生産量が減少に向かう可能性がある。コロンビアの石油業界団体ACPによると、政府が探鉱・生産を促進しなければ、コロンビアの石油生産量は2026年までに47%、ガス生産量は27%減少し、ガスは2026年から、石油は2028年から輸入されることになるという。

コロンビアについては、2023年初めまでに石油生産量が日量8万バレル、米国への輸出量が日量4万バレル増加する可能性があるが、その後については、大統領選挙の結果や新大統領の政策を待つ必要があろう。

3. メキシコ

原油価格上昇を受けて、メキシコは3月中旬に、Andrés Manuel López Obrador(AMLO)大統領のエネルギー自給目標の一環として原油輸出量を半減させる計画を一時的に遅らせ、原油輸出量を日量100万バレルで維持することとした。AMLO大統領は2021年12月に、2022年中にPemexの原油輸出量を日量43万5,000バレルと半分以下に削減し、メキシコ国内で精製する原油を十分に確保するとしていた。そして、最終的に石油輸入をゼロにできるようにすると述べていた。メキシコの原油輸出量は、2021年の日量102万バレルから、1月には日量83万2,000バレルに減少している。ただし、その分、石油製品の輸入量は増加することになり、供給量の増加にはつながらないと考えられる。

4. ガイアナ

今後、確実に石油生産量の増加が見込まれるのがガイアナだ。

2019年12月に生産を開始したStabroek鉱区Lizaフェーズ1は、現在、FPSOの生産能力を日量12万バレルから14万バレルに拡張中である。また、2022年2月に生産を開始したLizaフェーズ2は、ランプアップ中で、2022年第3四半期に石油生産量がFPSOの生産能力、日量22万バレルに達する予定である。2022年中に日量24万バレルの増産が期待できることになる。

2023年以降で見てみても、同鉱区3番目の開発となるPayara油田(FPSOの生産能力、日量22万バレル)が2024年に、4番目の開発となるYellowtail油田(FPSOの生産能力、日量25万バレル)が2025年に生産を開始する予定となっている。

ガイアナ国内に製油所はなく、生産された石油は全量輸出されている。

5. アルゼンチン

アルゼンチン中西部Neuquén州の原油生産量が、Vaca Muertaシェールの生産増を受けて、急増している。2022年第1四半期の同州の原油生産量は前年同期の日量178,670バレルから43%増加し日量254,877バレル(うち86%がVaca Muertaシェールからの生産)となった。これを受けて、同州からの原油輸出量は前年同期の980,500バレル(日量8,170バレル)から4倍増の390万バレル(日量32,500バレル)となった[13]

Vaca Muertaシェールから原油を輸送するパイプラインの輸送能力は日量31万バレルで、現在の原油生産量を上回っているが、国営石油会社YPFは今後の増産に備えて、パイプライン輸送能力の増強を図っている。YPFはNeuquén州からチリへ原油を輸送するパイプラインOleoducto Trasandino Estenssoro-Pedrals(OTA)を2022年末から2023年初めに輸送能力、日量約35,000バレルで再稼働する計画だ。2023年末にはVaca Muertaシェール中心部まで同パイプラインを150キロメートル延長し、原油日量10万バレル以上をチリに輸送する計画である[14]。OTAはNeuquen州Puesto HernándezとチリのConcepción近郊のENAPのBío Bío製油所を結ぶパイプラインだ。1994年に建設され、1996年に操業を開始したが、送油量がピーク時の日量115,000バレルから日量35,000バレルに減少したため、2000年10月に稼働を停止、その後、放置されていた。2019年に、アルゼンチンとチリは、Vaca Muertaシェールの生産増に伴い、チリへの石油輸出を再開するため同パイプラインを再開する計画を発表した。チリ側では2020年2月までにパイプライン再開の準備が完了したが、アルゼンチン側では資金不足と新型コロナウイルス感染拡大から作業が進まず、操業は停止したままとなっている。2021年11月になると、アルゼンチンでも同パイプライン再開のための計画が進行するようになり、YPFはパイプライン延長に必要な150キロメートルのパイプをすでに購入している。


[13] Platts Oilgram News, 2022/5/12

[14] BNamericas, 2022/5/13

 

以上

(この報告は2022年5月23日時点のものです)

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